(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114485
(43)【公開日】2022-08-08
(54)【発明の名称】車両のステアリング装置の支持構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/08 20060101AFI20220801BHJP
【FI】
B62D25/08 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021010746
(22)【出願日】2021-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】南 智規
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA01
3D203BB35
3D203BB37
3D203CA23
3D203CA29
3D203CA38
3D203CB09
3D203CB19
3D203DA13
3D203DA57
(57)【要約】 (修正有)
【課題】車両前突時に、ステアリングコラムの後端が上方に回転することを抑制できる車両のステアリング装置の支持構造を提供する。
【解決手段】ステアリングコラム2はデッキクロスメンバ10に支持される。コラムブラケット12は、デッキクロスメンバ10に固定される。接続ブラケット14は、ダッシュパネル4から車両後方に向けて突設する。コラムブリッジ16は、コラムブラケット12の上方に位置し、デッキクロスメンバ10と接続ブラケット14とを繋ぐ。コラムブラケット12は、コラム支持部20と、を有する。コラム支持部20は、デッキクロスメンバ10より車両前方側でステアリングコラム2を上方から支持する。コラムブリッジ16は、接続部25と、スライド部26と、を有する。接続部25は、接続ブラケット14に接続される。スライド部26は、接続部25から車両後方かつ下方に傾斜するように延在し、コラム支持部20の近傍に連結される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイールにエアバッグが内蔵された車両のステアリング装置の支持構造であって、
車室の前部を区画するダッシュパネルと、
前記ダッシュパネルの車両後方で車幅方向に延びるデッキクロスメンバと、
前記デッキクロスメンバに支持されるステアリングコラムと、
前記デッキクロスメンバより車両前方側で前記ステアリングコラムを上方から支持するコラム支持部を有し、前記デッキクロスメンバに固定されるコラムブラケットと、
前記ダッシュパネルから車両後方に向けて突設する接続ブラケットと、
前記コラムブラケットの上方に位置し、前記デッキクロスメンバと前記接続ブラケットとを繋ぐコラムブリッジと、
を備え、
前記コラムブリッジは、前記接続ブラケットに接続される接続部と、前記接続部から車両後方かつ下方に傾斜するように延在し、前記コラム支持部の近傍に連結されるスライド部とを有し、
前記接続ブラケットから車両後方に向けて所定以上の荷重が作用した場合、前記接続部と前記接続ブラケットとの接続が解除されて前記接続ブラケットが前記スライド部に当接しつつ後退し、前記スライド部の傾斜に沿って前記コラムブリッジが上方に変位する、
車両のステアリング装置の支持構造。
【請求項2】
前記ステアリングコラムは、前記ステアリングホイールの上下位置を調節可能なチルト機構を有し、
前記コラムブラケットの前記コラム支持部が前記チルト機構の回動中心を支持している、請求項1に記載の車両のステアリング装置の支持構造。
【請求項3】
前記スライド部は、前記接続部と前記接続ブラケットとの接続が解除された際の前記コラムブリッジに対する前記接続ブラケットの車幅方向の移動を規制する第1規制部を含んでいる、
請求項1または2に記載の車両のステアリング装置の支持構造。
【請求項4】
前記スライド部は、前記接続部と前記接続ブラケットとの接続が解除された際の前記接続ブラケットに対する前記コラムブリッジの車両前後方向の移動を規制する第2規制部を含んでいる、
請求項1から3のいずれか1項に記載の車両のステアリング装置の支持構造。
【請求項5】
前記スライド部は、前記接続部から車両後方に延びるとともに前記接続部の下面の傾斜に合わせて傾斜された第1傾斜部と、前記第1傾斜部から車両後方に延びるとともに水平面に対する傾斜角度が前記第1傾斜部よりも大きい第2傾斜部とを有し、
前記接続ブラケットから車両後方に向けて所定以上の荷重が作用した場合、前記接続部と前記接続ブラケットとの接続が解除されて前記接続ブラケットが前記第1傾斜部を経て前記第2傾斜部に当接しつつ後退し、前記第2傾斜部の傾斜に沿って前記コラムブリッジが上方に変位する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の車両のステアリング装置の支持構造。
【請求項6】
前記接続部を挟み込んだ状態で前記接続ブラケットに締結され、前記接続部と前記接続ブラケットとを接続する締結部材をさらに備え、
前記接続部は、前記締結部材が貫通される貫通孔を有し、
前記スライド部は、前記貫通孔から連続して車両前後方向に延びる長尺状のスライド孔を有し、
前記締結部材は、前記接続ブラケットから車両後方へ所定以上の荷重が作用すると、前記接続部から離脱されて接続を解除するとともに前記接続ブラケットの後退に応じて前記スライド孔に沿って後方に移動される、
請求項1から5のいずれか1項に記載の車両のステアリング装置の支持構造。
【請求項7】
前記締結部材は、頭部と軸部を有するボルトであり、
前記接続部の前記貫通孔は、前記ボルトの軸部が貫通可能で前記ボルトの頭部より小さい径に形成され、
前記スライド孔は、前記ボルトの頭部の径より大きい幅に形成される、
請求項6に記載の車両のステアリング装置の支持構造。
【請求項8】
前記コラムブラケットは、前記コラムブラケットの変形を誘発させる第1脆弱部をさらに有する、
請求項1から7のいずれか1項に記載の車両のステアリング装置の支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両のステアリング装置の支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両前突時の衝撃力を吸収することのできる車両のステアリング装置の支持構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の車両のステアリング装置の支持構造は、ダッシュパネルに取り付けられるアッパブラケットと、ロアブラケットと、を備える。特許文献1の車両のステアリング装置の支持構造は、ステアリングコラムをアッパブラケットとロアブラケットとによって支持する。また、特許文献1の車両のステアリング装置の支持構造は、車両前突時にダッシュパネルが後方に進入することによって、アッパブラケットがロアブラケットに対してスライドし、衝撃力を吸収する。
【0003】
さらに、近年、ステアリングホイールに取り付けられるエアバッグが知られている。このようなエアバッグは、車両前突時に、ステアリングホイールから車両の運転席に向けて膨張展開することによって、運転席の乗員がステアリングから受ける衝撃を緩める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の車両のステアリング装置の支持構造では、車両前突時にステアリングコラムのロアブラケットがアッパブラケットから脱落する。ロアブラケットがアッパブラケットから脱落すると、ステアリングコラムの位置を規制できない。このため、例えば、ステアリングコラムが後方に進入してきたダッシュボードに押された場合、ステアリングコラムの後端が上方に向けて回転するおそれがある。ステアリングコラムの後端が上方に向けて回転すると、ステアリングホイールが上方に向く。
【0006】
このように、ステアリングホイールが上方に向くと、ステアリングホイールから運転席に向けて展開するエアバッグの位置が、乗員の着座位置に対し上方にずれるおそれがある。
【0007】
本開示の課題は、車両前突時に、ステアリングコラムの立ち上がりを抑制して、ステアリングホイールと乗員との正対状態を維持し、エアバッグを適正角度で展開して乗員を保護することができる車両のステアリング装置の支持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る車両のステアリング装置の支持構造は、ステアリングホイールにエアバッグが内蔵されている。車両のステアリング装置の支持構造は、ダッシュパネルと、デッキクロスメンバと、ステアリングコラムと、コラムブラケットと、接続ブラケットと、コラムブリッジと、を備える。ダッシュパネルは、車室の前部を区画する。デッキクロスメンバは、ダッシュパネルの車両後方で車幅方向に延びる。ステアリングコラムはデッキクロスメンバに支持される。コラムブラケットは、デッキクロスメンバに固定される。接続ブラケットは、ダッシュパネルから車両後方に向けて突設する。コラムブリッジは、コラムブラケットの上方に位置し、デッキクロスメンバと接続ブラケットとを繋ぐ。コラムブラケットは、コラム支持部と、を有する。コラム支持部は、デッキクロスメンバより車両前方側でステアリングコラムを上方から支持する。コラムブリッジは、接続部と、スライド部と、を有する。接続部は、接続ブラケットに接続される。スライド部は、接続部から車両後方かつ下方に傾斜するように延在し、コラム支持部の近傍に連結される。車両のステアリング装置の支持構造は、接続ブラケットから車両後方に向けて所定以上の荷重が作用した場合、接続部と接続ブラケットとの接続が解除されて接続ブラケットがスライド部に当接しつつ後退し、スライド部の傾斜に沿ってコラムブリッジが上方に変位する。
【0009】
この車両のステアリング装置の支持構造によれば、車両前突時に、コラムブリッジを接続ブラケットによって押し上げることができる。これに伴い、コラムブリッジが連結されたコラム支持部、および、コラム支持部によって支持されたステアリングコラムのデッキクロスメンバより前側部分が押し上げられる。このため、ステアリングコラムが回動する。これにより、デッキクロスメンバからみて上記前側部分の車両前後方向逆側に相当するステアリングコラムの後方側、すなわち、ステアリングホイールが設けられた側を下側に下げることができる。この結果、ステアリングコラムの立ち上がりを抑制してステアリングホイールと乗員との正対状態を維持し、エアバッグを適正角度で展開して乗員を保護することができる車両のステアリング装置の支持構造を提供できる。
【0010】
ステアリングコラムは、ステアリングホイールの上下位置を調整可能なチルト機構を有してもよい。車両のステアリング装置の支持構造は、コラムブラケットのコラム支持部が、チルト機構の回動中心を支持してもよい。
【0011】
この構成によれば、前突時、接続ブラケットによるコラム支持部の押し上げに伴い、コラム支持部が支持するステアリングコラムのチルト機構の回動中心が押し上げられることにより、チルト機構の回動中心を支点としてステアリングコラムが回動する。これによって、ステアリングコラムの後方側、すなわち、ステアリングホイールが設けられる側を下側に下げることができる。この結果、ステアリングコラムの立ち上がりを抑制することができる。
【0012】
スライド部は、接続部と接続ブラケットとの接続が解除された際のコラムブリッジに対する接続ブラケットの車幅方向の移動を規制する第1規制部を含んでいてもよい。
【0013】
この構成によれば、接続部と接続ブラケットとの接続解除後、接続ブラケットの車幅方向の移動範囲を第1規制部によって規制することができる。これにより、車幅方向に逸脱することなく、接続ブラケットをスライド部に確実に当接および後退させることができる。
【0014】
スライド部は、接続部と接続ブラケットとの接続が解除された際の接続ブラケットに対するコラムブリッジの車両前後方向の移動を規制する第2規制部を含んでいてもよい。
【0015】
この構成によれば、前突時、ステアリングホイールが設けられた側が過度に押し下げられることを防止することができる。したがって、ステアリングホイールを同ステアリングホイールと乗員との正対状態が維持できる適正範囲内の角度で保持することができる。
【0016】
スライド部は、第1傾斜部と、第2傾斜部と、を有してもよい。第1傾斜部は、接続部から車両後方に延びるとともに接続部の下面の傾斜に合わせて傾斜してもよい。第2傾斜部は、第1傾斜部から車両後方に延びるとともに水平面に対する傾斜角度が第1傾斜部よりも大きくてもよい。車両のステアリング装置の支持構造は、接続ブラケットから車両後方に向けて所定以上の荷重が作用した場合、接続部と接続ブラケットとの接続が解除されて接続ブラケットが第1傾斜部を経て第2傾斜部に当接しつつ後退し、第2傾斜部の傾斜に沿ってコラムブリッジが上方に変位してもよい。
【0017】
この構成によれば、第1傾斜部によって引っ掛かりなく接続部と接続ブラケットとの接続を確実に解除しつつ、第1傾斜部よりも傾斜の大きい第2傾斜部に接続ブラケットが当接されつつスライドする。これによって、車両衝突時におけるステアリングコラムの立ち上がりを、より確実に防止することができる。
【0018】
車両のステアリング装置の支持構造は、締結部材を備えてもよい。締結部材は、接続部を挟み込んだ状態で接続ブラケットに締結され、接続部と接続ブラケットとを接続する。接続部は、締結部材が貫通される貫通孔を有してもよい。スライド部は、スライド孔を有してもよい。スライド孔は、貫通孔から連続して車両前後方向に延びる長尺状であってもよい。締結部材は、接続ブラケットから車両後方へ所定以上の荷重が作用すると、接続部から離脱されて接続を解除するとともに、接続ブラケットの後退に応じてスライド孔に沿って後方に移動してもよい。
【0019】
この構成によれば、接続ブラケットから車両後方へ所定以上の荷重が作用した際、簡易的な構造で接続部から締結部材を離脱させて接続を解除し、接続ブラケットの後退に応じてスライド孔に沿って後方に移動させることができる。
【0020】
締結部材は、頭部と軸部を有するボルトであってもよい。貫通孔は、ボルトの軸部が貫通可能で、ボルトの頭部より小さい径に形成されてもよい。スライド孔は、ボルトの頭部の径より大きい幅に形成されてもよい。
【0021】
この構成によれば、接続時には、接続部と接続ブラケットとの接続が解除されることを防止しつつ、接続解除時には、スライド孔に引っ掛かることなく、接続ブラケットを後方へ円滑に後退させることができる。
【0022】
コラムブラケットは、コラムブラケットの変形を誘発する第1脆弱部を有してもよい。
【0023】
この構成によれば、傾斜部がコラムブラケットを押し下げる際、コラムブラケットが変形しやすい。これによって、コラム支持部が持ち上がりやすい。
【発明の効果】
【0024】
本開示によれば、車両前突時に、ステアリングコラムの立ち上がりを抑制して、ステアリングホイールと乗員との正対状態を維持し、エアバッグを適正角度で展開して乗員を保護することができる車両のステアリング装置の支持構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本開示の実施形態による車両のステアリング装置の支持構造の概略構成を示す図。
【
図2】本開示の実施形態によるスライド部上面簡略図。
【
図3】本開示の実施形態による車両前突時の車両のステアリング装置の支持構造の概略構成を示す図。
【
図4】本開示の実施形態による車両前突時のスライド部上面簡略図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下明細書において、車両の前後方向をQと図面に記し、前方をFと記す。また、車両の車幅方向をPと図面に記し、車両の後方からみて右側をRと記す。さらに、車両の上下方向をGと図面に記し、上方をUと記す。
【0027】
図1に示すように、車両のステアリング装置の支持構造1は、ステアリングコラム2と、ダッシュパネル4と、ステアリングホイール6と、ステアリングシャフト8と、デッキクロスメンバ10と、コラムブラケット12と、接続ブラケット14と、コラムブリッジ16と、ボルト(締結部材の一例)18と、を備える。
【0028】
ダッシュパネル4は、車両の車室とエンジンルーム(図示せず)とを仕切る金属板であり、車両の上下方向Gに延びて、車室の前部を区画する。ダッシュパネル4の後方の車室内には、インストルメントパネル30が配置される。インストルメントパネル30は、ダッシュパネル4から後方に延びた後に下方に延びる。インストルメントパネル30は、ダッシュパネル4とともに、デッキクロスメンバ10およびステアリング装置の支持構造1を覆う。
【0029】
ステアリングコラム2は、コラムシャフト2aによって、前後方向Qに沿った軸芯S2回りに、ステアリングシャフト8を回転自在に支持する。ステアリングホイール6は、ステアリングシャフト8の後端(ステアリングシャフト8の車室内側端部)に固定される。ステアリングホイール6は、車両の運転席に着座した乗員によって操舵操作される。
図3に示すように、ステアリングホイール6は、ステアリングホイール6の略中央に格納(内臓)されるエアバッグ6aを有する。エアバッグ6aは車両前突時に、車両の運転席に向けて展開する。
【0030】
本実施形態のステアリングコラム2は、図示しないチルト機構を有する。チルト機構は、車両の運転席の乗員が図示しないロック機構を解除し、ステアリングホイール6を操作することによって、ステアリングホイール6の上下方向Gの位置(上下位置)を調整できる機構である。ステアリングコラム2は、チルト機構が操作された場合、後述するコラム支持部20を支点(回動中心)として上下に揺動する。
【0031】
ステアリングシャフト8は、
図1に示すように、後方(車室側)が上方Fに、前方(エンジンルーム側)が下方になるように、斜めに傾いた状態で配置されている。ステアリングシャフト8は、ジョイント8aによって、前方ステアリングシャフト8bと、後方ステアリングシャフト8cと、に分かれる。ジョイント8aは、チルト機構によって、後方ステアリングシャフト8cの位置が変化した場合に、前方ステアリングシャフト8bおよび後方ステアリングシャフト8cの角度を調整するために設けられる。前方ステアリングシャフト8bは、図示しないステアリングギヤボックスに接続される。前方ステアリングシャフト8bは、ステアリングホイール6の回転操作に合わせて回転することによって、車両の図示しない前輪を操舵方向に揺動させる。
【0032】
本実施形態のステアリングコラム2は、モータ2bを備える電動式のパワーステアリングシステムのステアリングコラム2である。モータ2bは、図示しない回転軸がステアリングシャフト8に接続され、ステアリングシャフト8の回転操作を補助する。
【0033】
デッキクロスメンバ10は、ダッシュパネル4の車両後方で車幅方向Pに延び、両端が車両の図示しない左右のフロントピラーに固定される。デッキクロスメンバ10は、軸心S1を中心とした断面円形の金属製の構造部材である。デッキクロスメンバ10は、ステアリングコラム2および空調装置(図示せず)などの装置を、ブラケットを介して支持する。デッキクロスメンバ10は、ステアリングコラム2よりも上方に配置され、コラムブラケット12およびコラムブリッジ16を介して、ステアリングコラム2を支持する。
【0034】
コラムブラケット12は、コラム支持部20と、第1脆弱部12dと、を有する。コラムブラケット12は、コラム支持部20からデッキクロスメンバ10まで延び、デッキクロスメンバ10に固定される。本実施形態では、コラムブラケット12は、断面が倒立U字型の板状金属部材である。
図1のA部に断面を拡大して示すように、コラムブラケット12は、左側面12aと、コラムブラケット12の上部に配置される上面12bと、左側面12aに対向する右側面12cと、を有する。
図1では、コラムブラケット12の右側面12cが見えている。
【0035】
コラム支持部20は、コラムブリッジ16の後述するスライド部26よりも下方かつ後方に配置されるとともに、デッキクロスメンバ10よりも前方に配置される。コラム支持部20は、デッキクロスメンバ10より車両前方側でステアリングコラム2を上方から支持するとともに、コラム支持部20を支点としてステアリングコラム2を上下に揺動可能に支持する。本実施形態では、コラム支持部20は、コラムブラケット12の左側面12aおよび右側面12cを貫通する貫通孔20aを有する。コラムブラケット12は、この貫通孔20aにステアリングコラム2の回動中心に締結されるボルトを挿通させることによって、ステアリングコラム2を車幅方向P(ボルトの差し込み方向)に沿った軸回りに揺動可能に支持する。
【0036】
第1脆弱部12dは、コラムブラケット12の変形を誘発させるために設けられる。本実施形態では、第1脆弱部12dは、コラムブラケット12の前後方向Qの中央部に配置される。より具体的には、コラムブラケット12には、コラムブラケット12の前後方向Qの中央部に凹部12eが配置される。凹部12eの断面積は、コラムブラケット12の他の部位よりも小さいため、他の部位よりも強度が弱くなり変形しやすくなる。したがって、この凹部12eが第1脆弱部12dを構成する。
【0037】
接続ブラケット14は、ダッシュパネル4から車両の後方に向けて斜め下方に突設するとともに、ダッシュパネル4に固定される。本実施形態では、接続ブラケット14は、金属板の両側を下方に折り曲げて形成された部材である。接続ブラケット14は、第2支持部22を有する。第2支持部22は、コラムブリッジ16をスライド可能に支持する。本実施形態では、第2支持部22は、接続ブラケット14の上面14a、ボルト18、およびボルト18を締結するための螺子孔14bを有する。上面14aは、後方に向けて斜め下方に傾斜して配置される。
【0038】
コラムブリッジ16は、コラムブラケット12の上方に位置し、デッキクロスメンバ10と接続ブラケット14とを繋ぐ。コラムブリッジ16は、アッパーブリッジ24と、接続部25と、スライド部26と、ロアブリッジ28と、を有する。本実施形態では、接続部25、およびスライド部26は、ロアブリッジ28に形成される。
【0039】
図1のB部に示すように、本実施形態のアッパーブリッジ24およびロアブリッジ28は、コラムブラケット12と同様に、断面U字型の板状金属部材である。アッパーブリッジ24およびロアブリッジ28は、それぞれ左側壁16aと、底部16bと、右側壁16cとを有する。底部16bは、下方に向けて配置される。すなわち、コラムブリッジ16は、U字型の開口が上に向けて配置される。接続部25は、ロアブリッジ28の前部の底部16bに設けられる。
【0040】
図1に示すように、アッパーブリッジ24は、デッキクロスメンバ10と接続ブラケット14と、を繋ぐ。アッパーブリッジ24は、後部がデッキクロスメンバ10と溶接固定され、前部がロアブリッジ28の前部と溶接固定される。本実施形態では、コラムブリッジ16は、アッパーブリッジ24とロアブリッジ28とが側面視でV字状になるように固定され、V字の頂点が車両の前方に向いている。アッパーブリッジ24は、ロアブリッジ28を介してデッキクロスメンバ10と接続ブラケット14とを繋ぐ梁として機能する。また、本実施形態では、アッパーブリッジ24は、第2脆弱部24aを有する。第2脆弱部24aは、第1脆弱部12dと同様に、アッパーブリッジ24の前後方向Qの中央部に配置された凹部24bである。
【0041】
ロアブリッジ28は、接続部25と、スライド部26と、を含む。接続部25は、底部16bが接続ブラケット14と対向する。ロアブリッジ28は、接続部25を介して接続ブラケット14に接続される。また、スライド部26は、接続部25から車両後方かつ下方に傾斜するように延在し、コラム支持部20の近傍に連結される。本実施形態では、スライド部26の接続部25と反対側の端部が、コラムブラケット12に固定されることによって、コラム支持部20の近傍に連結される。
【0042】
スライド部26は、車両前突時に接続ブラケット14の第2支持部22を後方にスライドさせる。スライド部26は、第1傾斜部26aと、第2傾斜部26bと、を含む。第1傾斜部26aは、接続部25の後端から、車両後方に延びるとともに接続部25の下面の傾斜に合わせて傾斜して延びる。第2傾斜部26bは、第1傾斜部26aの後端から車両後方に延びる。第2傾斜部26bの水平面に対する傾斜角度は、第1傾斜部26aよりも大きい。第2傾斜部26bは、円弧状に形成された曲面を含み、この曲面によって第1傾斜部26aから第2傾斜部26bの直線部分までが滑らかに繋がる。
【0043】
第2傾斜部26bは、後方かつ下方に向けて傾斜しながら固定部Xまで延び、コラムブラケット12と固定される。本実施形態では、固定部Xは、ロアブリッジ28の下部がL字型に形成され、L字型部分が、コラム支持部20の前方と上方を覆うように配置される。このように、コラム支持部20は、コラムブラケット12およびコラムブリッジ16を介して、デッキクロスメンバ10と第2支持部22の2点に固定される。これによって、ステアリング装置の支持構造1の剛性が高くなる。
【0044】
なお、本実施形態のステアリングコラム2は、第3支持部32によっても支持される。第3支持部32は、デッキクロスメンバ10から後方に延び、コラムシャフト2aを覆うブラケット32aを有する。ブラケット32aは、図示しないチルト機構のロック機構が解除された場合、コラムシャフト2aが上下に揺動できるように支持する。
【0045】
本実施形態では、
図2示すように、接続部25およびスライド部26は、ロアブリッジ28の底部16bに一体形成される。接続部25は、底部16bをボルト18のねじ部18bが貫通する貫通孔25aを含む。貫通孔25aの車幅方向Pの幅は、ボルト18の頭部18aよりも狭い。このため、ボルト18は、頭部18aが接続部25を挟み込んだ状態で螺子孔14bに締結される。このように、ボルト18によって接続部25を締め付け、上面14aに押し当てることによって、接続部25が接続ブラケット14に支持されるとともに固定される。
【0046】
スライド部26は、貫通孔25aに向けて開口し、貫通孔25aから連続して車両前後方向に延びる長尺状のスライド孔26cを有する。スライド孔26cは、スライド部26の第1傾斜部26a、および第1傾斜部26aと第2傾斜部26bの第1傾斜部26a側に設けられる曲面を通過して、第2傾斜部26bまで延びる。すなわち、スライド孔26cの後端は、第2傾斜部26bに形成される。スライド孔26cの車幅方向Pの幅は、ボルトの頭部18aよりも広い。スライド部26は、車両前突時に接続ブラケット14から所定以上の荷重が作用した場合、ボルト18の頭部18aが底部16b上を滑り、開口を通過することによって、接続部25と、接続ブラケット14との接続を解除し、第2支持部22をスライドさせる。スライド部26の第1傾斜部26aは、底部16bが接続ブラケット14の上面14aの角度に合わせて傾斜して形成されるため、スライド部26の下方を接続ブラケット14の上面14aがスライドしやすい。
【0047】
また、第2傾斜部26bの前後方向Qに対する傾斜角は、第1傾斜部26aの傾斜角よりも大きい。すなわち、車両前突時は、ダッシュパネル4が前後方向Qに沿って、後方に進入する。このため、第1傾斜部26aの前後方向Qに対する傾斜角は、小さいほど第2支持部22がスライドしやすい。一方、第2傾斜部26bの傾斜角は、第1傾斜部26aの傾斜角よりも大きければ、接続ブラケット14がロアブリッジ28に当接しやすい。
【0048】
スライド部26は、第1規制部26dと、第2規制部26eとを含む。第1規制部26dは、コラムブリッジ16に対する接続ブラケット14の、車幅方向Pの位置を規制する。第2規制部26eは、コラムブリッジ16に対する接続ブラケット14の、スライド量を規制する。本実施形態では、第1規制部26dおよび第2規制部26eは、ボルト18の頭部18aの位置を規制する。
【0049】
本実施形態では、第1規制部26dは、スライド孔26cの車幅方向Pの左右に延在する底部16bである。また、第2規制部26eは、スライド孔26cの後端に延在する底部16bである。
【0050】
このように構成されたステアリングコラム2の支持構造1は、
図3に示すように、車両前突時に、ダッシュパネル4が後方に進入する。ダッシュパネル4が後方に進入すると、接続ブラケット14が後方に進入する。接続ブラケット14が後方に進入すると、接続ブラケット14の上面14aおよび螺子孔14bに締結されたボルト18に所定以上の荷重が作用する。ボルト18に所定以上の負荷が作用すると、ボルト18がコラムブリッジ16に対して後方にスライドし、接続部25と接続ブラケット14の接続が解除される。スライドした接続ブラケット14は、接続ブラケット14と対向するロアブリッジ28の第1傾斜部26aおよび第2傾斜部26bの底面に当接しつつ後退する。
【0051】
図4に示すように、このとき、挿通孔28bの車幅方向Pに延在する第1規制部26dにボルト18の頭部18aが当接することによって、コラムブリッジ16と接続ブラケット14の、車幅方向Pの位置関係が規制される。これによって、接続ブラケット14がロアブリッジ28から車幅方向に外れることがない。
【0052】
上述したように、接続が解除された接続ブラケット14は、接続ブラケット14と対向するロアブリッジ28の第1傾斜部26aおよび第2傾斜部26bの底面に当接しつつ後退する。これにより、コラムブリッジ16を接続ブラケット14によって押し上げることができる。これに伴い、コラムブリッジ16が連結されたコラム支持部20、および、コラム支持部20によって支持されたステアリングコラム2のデッキクロスメンバ10より前側部分が押し上げられることにより、ステアリングコラム2が回動する。これにより、デッキクロスメンバ10からみて上記前側部分の車両前後方向逆側に相当するステアリングコラム2の後方側、すなわち、ステアリングホイール6が設けられた側を下側に下げることができる。以上により、ステアリングコラム2の立ち上がりを抑制してステアリングホイール6と乗員との正対状態を維持し、エアバッグ6aを適正角度で展開して乗員を保護することができる。
【0053】
上述したように、接続ブラケット14がコラムブリッジ16を押し上げると、コラムブリッジ16のロアブリッジ28は、コラムブラケット12を介して、コラム支持部20を上方に持ち上げる。このとき、コラムブラケット12は、第1脆弱部12dを起点として変形する。また、コラムブリッジ16のアッパーブリッジ24も、第2脆弱部24aを起点として変形する。
【0054】
接続ブラケット14は、ロアブリッジ28を上方に押し上げながら、スライド孔26cの後端にボルト18の頭部18aが当接する位置まで進入する(
図4参照)。このように、スライド孔26cの後端に延在する底部16bにボルト18の頭部18aが当接することによって、コラムブリッジ16に対する接続ブラケット14の、スライド量が規制される。これによって、接続ブラケット14が、ロアブリッジ28を過度に押し上げ、コラム支持部20が過度に上昇することを防止できる。
【0055】
以上説明した通り、本開示によれば、車両前突時に、ステアリングコラム2の後端が上方に回転することを抑制できる車両のステアリング装置の支持構造1を提供できる。
【0056】
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0057】
(a)上記実施形態では、コラムブラケット12、およびコラムブリッジ16は、断面U字型を例に説明したが、本開示はこれに限定されない。コラムブラケット12、およびコラムブリッジ16は、L字型などであってもよい。
【0058】
(b)上記実施形態では、第2支持部22は、接続ブラケット14の上面14a、ボルト18、およびボルト18を締結するための螺子孔14bを例に説明したが、本開示はこれに限定されない。第2支持部22は、接続ブラケット14が、スライド部26に対してスライド可能にスライド部26を支持する構造であればよい。
【符号の説明】
【0059】
1:支持構造,2:ステアリングコラム,4:ダッシュパネル
6:ステアリングホイール,6a:エアバッグ,8:ステアリングシャフト
10:デッキクロスメンバ,12:コラムブラケット,
12d:第1脆弱部,14:接続ブラケット,
16:コラムブリッジ,
18:ボルト(締結部材の一例),20:コラム支持部
25:接続部,25a:貫通孔
26:スライド部,26a:第1傾斜部,26b:第2傾斜部
26c:スライド孔,26d:第1規制部,28f:第2規制部
G:上下方向,P:車幅方向,Q:前後方向