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特開2022-114505環状シール部材および流体機器接続構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114505
(43)【公開日】2022-08-08
(54)【発明の名称】環状シール部材および流体機器接続構造
(51)【国際特許分類】
   F16L 25/01 20060101AFI20220801BHJP
【FI】
F16L25/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021010775
(22)【出願日】2021-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩田 洋輝
(72)【発明者】
【氏名】野口 詩織
(72)【発明者】
【氏名】竹田 秀行
(72)【発明者】
【氏名】安江 博人
(57)【要約】
【課題】
流体機器を通過する流体の帯電を防止することができる環状シール部材および流体機器接続構造を提供すること。
【解決手段】
第1流体機器(例えば、配管2)に形成された第1接続部21と、第2流体機器(例えば、流量調整弁3)に形成された第2接続部31(例えば入力ポート31A、出力ポート31B)と、をシール状態で接続するために、第1接続部21と第2接続部31との間に介在する環状シール部材4において、環状シール部材4の内周面48は、第1接続部21と第2接続部31とが接続されてなる、制御流体と接触する一連の接触面40の一部を形成しており、前記制御流体(例えば薬液)に接触可能であること、環状シール部材4は、導電性材料を分散させた樹脂からなり、静電気を外部に逃がすためのアース要素8を接続することが可能なアース接続部45を備えること、を特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1流体機器に形成された第1接続部と、第2流体機器に形成された第2接続部と、をシール状態で接続するために、前記第1接続部と前記第2接続部との間に介在する環状シール部材において、
前記環状シール部材の内周面は、前記第1接続部と前記第2接続部とが接続されてなる、制御流体と接触する一連の接触面の一部を形成しており、前記制御流体に接触可能であること、
前記環状シール部材は、導電性材料を分散させた樹脂からなり、静電気を外部に逃がすためのアース要素を接続することが可能なアース接続部を備えること、
を特徴とする環状シール部材。
【請求項2】
請求項1に記載の環状シール部材において、
前記導電性材料は、カーボンナノチューブであること、
前記樹脂は、フッ素樹脂であること、
を特徴とする環状シール部材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の環状シール部材において、
前記環状シール部材の外周面は、前記第1接続部および前記第2接続部の少なくともいずれか一方の外部に露出していること、
前記外周面が前記アース接続部であること、
を特徴とする環状シール部材。
【請求項4】
請求項3に記載の環状シール部材において、
前記アース要素は、前記アース接続部に取り付け可能な取付部を備えること、
前記取付部は、その内周面が前記アース接続部と接触可能とされたC型リング状に形成されており、その内径は、前記アース接続部の直径よりも小さくされていること、
前記取付部は、前記アース接続部に取り付けられた際、前記アース接続部によって拡径され、弾性変形することで生じる反力により前記アース接続部と接触可能なこと、
を特徴とする環状シール部材。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つに記載の環状シール部材において、
前記環状シール部材は、前記第1接続部と前記第2接続部との間に、着脱可能に介在すること、
を特徴とする環状シール部材。
【請求項6】
第1接続部を有する第1流体機器と、第2接続部を有する第2流体機器と、前記第1接続部及び前記第2接続部の間に介在する環状シール部材と、前記環状シール部材を介して前記第1接続部及び前記第2接続部を接続する連結部材と、を有する流体機器接続構造において、
前記環状シール部材は、請求項1乃至5のいずれか1つに記載の環状シール部材であること、
を特徴とする流体機器接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1流体機器に形成された第1接続部と、第2流体機器に形成された第2接続部と、をシール状態で接続するために、前記第1接続部と前記第2接続部との間に介在する環状シール部材および該環状シール部材を用いた流体機器接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体製造工程においては、ウエハの洗浄に用いられる洗浄液や、回路パターンの現像に用いられる現像液など、種々の薬液が用いられている。薬液を供給するためには、流量制御弁や開閉弁等のバルブ類や、圧力センサや流量センサ等のセンサ類や、配管等、多くの流体機器が使用されており、これら流体機器は、半導体製造装置のコンパクト化のため、流体機器の接続部同士を、連結部材を用いて直接連結し、ユニット化することが一般的に行われている。連結部材としては、例えば、特許文献1に開示されるものが知られている。
【0003】
また、一般的に、流体機器の薬液が接触する部分(接液部)は、耐薬品性を有するフッ素樹脂材料により形成されている。例えば、特許文献1の連結部材の環状シール部材は、内周面が接液部となっており、例えばPFA、PTFEなどのフッ素樹脂を材質とすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-91482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
薬液等の流体が流体機器の内部を流れる際に、流体と接液部の接触界面において、正負どちらか一方の電荷が接液部に吸着され、流体には接液部に吸着された電荷とは逆極性の電荷が残る。流体が流れることにより、接触していた流体と接液部が引き離されるため、外部に電界が現れ、接液部および流体が帯電した状態となる。すなわち静電気の発生である。特に、接液部に用いられるPFA、PTFEなどフッ素樹脂は、絶縁性が高く帯電しやすくなっている。また、近年、半導体の微細化が進むにつれて、より帯電しやすい有機溶剤系の現像液が用いられるケースが多くなっている。また、近年、半導体製造装置内の洗浄等に用いられる純水の純度が高められおり、これによっても流体が帯電しやくなっている。
【0006】
静電気が発生することで、以下の問題が生じることが考えられる。
まず第1に、流体が帯電すると流体機器に絶縁破壊が発生するおそれがあるという問題がある。詳しく説明すると、例えば、流体機器としてダイアフラム弁体の開弁動作または閉弁動作により流体の流量制御を行う流量制御弁を用いた場合、該流量制御弁は、絶縁体であるダイアフラム弁体によって、接液部と非接液部とに区画されている。このような場合、流体が帯電すると、流体機器内部の接液部と非接液部との間の電位差が増大する。電位差が増大すると、ダイアフラムの厚みは非常に薄いため、絶縁破壊を起こす可能性がある。絶縁破壊を起こすと、急激にダイアフラムの内部を移動する電荷により熱が発生し、発生した熱によって、絶縁破壊が起きた箇所で微小な孔が発生する。孔が発生すると、接液部から非接液部へ流体の漏れが発生するおそれがある。
【0007】
そして第2に、流体機器が帯電すると、流体機器の接液部にパーティクルが付着するおそれがあるという問題がある。詳しく説明すると、例えば、環状シール部材が帯電し、接液部である環状シール部材の内周面に、静電気によりパーティクルが付着したとする。静電気により付着したパーティクルは、例えば半導体製造工程で使用する薬液の切換時に、流体機器のパージを行っても除去することが出来ずに、付着したまま残存することがある。そうすると、パージ後に新たに薬液等を流したときにパーティクルが薬液に乗って流れてしまうおそれがある。パーティクルが薬液に乗って流れてしまうと、ウエハの製造不良等、製造効率に悪影響を与えるおそれがある。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、流体機器を通過する流体の帯電を防止することができる環状シール部材および流体機器接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の環状シール部材は、次のような構成を有している。
(1)第1流体機器に形成された第1接続部と、第2流体機器に形成された第2接続部と、をシール状態で接続するために、前記第1接続部と前記第2接続部との間に介在する環状シール部材において、前記環状シール部材の内周面は、前記第1接続部と前記第2接続部とが接続されてなる、制御流体と接触する一連の接触面の一部を形成しており、前記制御流体に接触可能であること、前記環状シール部材は、導電性材料を分散させた樹脂からなり、静電気を外部に逃がすためのアース要素を接続することが可能なアース接続部を備えること、を特徴とする。なお、第1流体機器、第2流体機器としては、例えば、流量調整弁やマスフローコントローラ等の流体機器、配管や管継手等の配管接続機器、流量計や圧力計等の計測機器等が含まれる。
【0010】
(2)(1)に記載の環状シール部材において、前記導電性材料は、カーボンナノチューブであること、前記樹脂は、フッ素樹脂であること、を特徴とする。
【0011】
(1)または(2)に記載の環状シール部材によれば、環状シール部材の内周面は、前記第1接続部と前記第2接続部とが接続されてなる、制御流体と接触する一連の接触面の一部を形成している。つまり、環状シール部材の内周面は、制御流体を例えば薬液とすれば、接液部である。また、環状シール部材は、導電性材料(例えばカーボンナノチューブ)を分散させた樹脂からなるため、導電性を持つ。さらに、環状シール部材には、静電気を外部に逃がすためのアース要素が接続されている。よって、流体が流路を通過するうちに帯電したとしても、流体が環状シール部材に接触することで、環状シール部材およびアース要素を介して流体機器の外部に放電が行われる。放電が行われることで、流体機器に絶縁破壊が発生するおそれが低減される。
【0012】
また、環状シール部材が導電性を持つとともに、アース要素が接続されているため、環状シール部材自体の帯電を防止することが可能である。環状シール部材の帯電を防止することが出来れば、環状シール部材に静電気によってパーティクルが付着することを防止することが出来る。
【0013】
さらにまた、流体の帯電防止のためには、第1流体機器の第1接続部と第2流体機器の第2接続部とを、導電性を有するチューブを介して接続することも考えられるが、(1)または(2)に記載の環状シール部材によれば、第1流体機器の第1接続部と第2流体機器の第2接続部とを直接接続することが出来るため、導電性を有するチューブを用いるよりも第1流体機器および第2流体機器の設置スペースを最小限にしつつ、流体の帯電を防止することが可能である。
【0014】
(3)(1)または(2)に記載の環状シール部材において、前記環状シール部材の外周面は、前記第1接続部および前記第2接続部の少なくともいずれか一方の外部に露出していること、前記外周面が前記アース接続部であること、を特徴とする。
【0015】
(3)に記載の環状シール部材によれば、前記環状シール部材の外周面は、接触面の外部に露出しているため、アース要素との接続が容易となる。また、アース要素を着脱可能なものとして、必要に応じてアース要素の要否を選ぶことが出来るなど、流体機器の選択に自由度を持たすことが出来る。
【0016】
(4)(3)に記載の環状シール部材において、前記アース要素は、前記アース接続部に取り付け可能な取付部を備えること、前記取付部は、その内周面が前記アース接続部と接触可能とされたC型リング状に形成されており、その内径は、前記アース接続部の直径よりも小さくされていること、前記取付部は、前記アース接続部に取り付けられた際、前記アース接続部によって拡径され、弾性変形することで生じる反力により前記アース接続部と接触可能なこと、を特徴とする。
【0017】
(4)に記載の環状シール部材によれば、アース要素の取付部は、環状シール部材の外周面(アース接続部)に取り付けられた際、環状シール部材の外周面によって拡径され、弾性変形することで生じる反力により環状シール部材の外周面と接触する。これにより、環状シール部材とアース要素との接続が安定化され、静電気を安定的に流体機器の外部に逃がすことが出来る。
【0018】
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載の環状シール部材において、 前記環状シール部材は、前記第1接続部と前記第2接続部との間に、着脱可能に介在すること、を特徴とする。
【0019】
(5)に記載の環状シール部材によれば、環状シール部材を、例えば従来の環状シール部材と置き換えが可能であるなど、アース要素の接続を行わない環状シール部材と互換性のある形状としておけば、アース接続の要否に応じて、流体機器の選択に自由度を持たすことが出来る。
【0020】
さらに、上記課題を解決するために、本発明の流体機器接続構造は、次のような構成を有している。
(6)第1接続部を有する第1流体機器と、第2接続部を有する第2流体機器と、前記第1接続部及び前記第2接続部の間に介在する環状シール部材と、前記環状シール部材を介して前記第1接続部及び前記第2接続部を接続する連結部材と、を有する流体機器接続構造において、前記環状シール部材は、(1)乃至(5)のいずれか1つに記載の環状シール部材であること、を特徴とする。
【0021】
(6)に記載の流体機器接続構造によれば、環状シール部材の内周面は、前記第1接続部と前記第2接続部とが接続されてなる、制御流体と接触する一連の接触面の一部を形成している。つまり、環状シール部材の内周面は、接液部である。また、環状シール部材は、カーボンナノチューブを分散させた樹脂からなるため、導電性を持つ。さらに、環状シール部材には、静電気を外部に逃がすためのアース要素が接続されている。よって、流体が流路を通過するうちに帯電したとしても、流体が環状シール部材に接触することで、環状シール部材およびアース要素を介して流体機器の外部に放電が行われる。放電が行われることで、流体機器に絶縁破壊が発生するおそれが低減される。
【0022】
また、環状シール部材が導電性を持つとともに、アース要素が接続されているため、環状シール部材自体の帯電を防止することが可能である。環状シール部材の帯電を防止することが出来れば、環状シール部材に静電気によってパーティクルが付着することを防止することが出来る。
【0023】
さらにまた、流体の帯電防止のためには、第1流体機器の第1接続部と第2流体機器の第2接続部とを、導電性を有するチューブを介して接続することも考えられるが、(6)に記載の流体機器接続構造によれば、第1流体機器の第1接続部と第2流体機器の第2接続部とを直接接続することが出来るため、導電性を有するチューブを用いるよりも第1流体機器および第2流体機器の設置スペースを最小限にしつつ、流体の帯電を防止することが可能である。
【発明の効果】
【0024】
本発明の環状シール部材および流体機器接続構造によれば、流体機器を通過する流体の帯電を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本実施形態に係る環状シール部材を用いて構成された流体機器接続構造により、配管(第1流体機器)と流量調整弁(第2流体機器)とを接続した状態を示した図である。
図2図1の流体機器接続構造付近の部分拡大図である。
図3図2の部分Kの部分拡大図である。
図4図2のA-A断面図である。
図5】係止状態にある連結部材の斜視図である。
図6】係止状態にある連結部材の斜視図である。
図7】開状態にある連結部材の斜視図である。
図8図5のB-B断面図である。
図9図7のC-C断面図である。
図10】環状シール部材を用いた流体機器接続構造の変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係る環状シール部材および流体機器接続構造の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る環状シール部材4を用いて構成された流体機器接続構造1により、配管2(第1流体機器の一例)と流量調整弁3(第2流体機器の一例)とを接続した状態を示した図である。図2は、図1の流体機器接続構造1付近の部分拡大図である。図3は、図2の部分Kの部分拡大図である。図4は、図2のA-A断面図である。図5および図6は、係止状態にある連結部材5の斜視図である。図7は、開状態にある連結部材5の斜視図である。図8は、図5のB-B断面図である。図9は、図7のC-C断面図である。
【0027】
流体機器接続構造1は、図1および図2に示すように、配管2(第1流体機器の一例)の第1接続部21と、流量調整弁3(第2流体機器の一例)の入力ポート31Aまたは出力ポート31B(いずれも第2接続部の一例)とを、環状シール部材4を介して接続している。そして、第1接続部21と入力ポート31Aの外周および第1接続部21と出力ポート31Bとの外周に連結部材5を取り付けて接続状態を維持している。また、環状シール部材4は、アース要素8によりアース10に接続されている。
【0028】
流量調整弁3は、半導体製造工程に用いられる薬液等の制御流体を入力可能な入力ポート31Aおよび入力ポート31Aと連通した出力ポート31Bを備えている。また、内部に、図1中の上下方向に動作可能なダイアフラム弁体301を有している。ダイアフラム弁体301は薄膜部302を有しており、薄膜部302は、流量調整弁3の内部を、接液部と非接液部に区画している(薄膜部302より下方が接液部であり、薄膜部302より上方が非接液部である)。そして、ダイアフラム弁体301が上下方向に動作可能であるため、ダイアフラム弁体301の弁座303に対する距離(すなわちダイアフラム弁体301の開度)を調整することで、入力ポート31Aから入力された制御流体の、出力ポート31Bから出力される流量を調整することが可能である。なお、以下の説明においては、入力ポート31Aと出力ポート31Bをまとめて、第2接続部31という。
【0029】
第1接続部21と第2接続部31の外形は、円形状に構成されている。第1接続部21の管状部28には流路29が形成され、第2接続部31の管状部38には流路39が形成されている。この流路29と流路39とは、配管2と流量調整弁3とが流体機器接続構造1により接続されることで、一連の流路とされている。この一連の流路の内壁は、制御流体と接触する接触面40である。
【0030】
環状シール部材4は、直径0.4~50nmのカーボンナノチューブを分散させたフッ素樹脂(例えばPTFEまたはPFA)により形成されている。カーボンナノチューブを分散させることにより、体積低効率は1.0×10~1.0×10Ω・cmとなっている。また、環状シール部材4は、図3に示すように、本体部43と、本体部43の外周面から外径方向に張り出す張出部44と、張出部44の外周縁部に設けられたアース接続部45とを備える。さらに、本体部43には、環状シール溝46,47が形成されている。
【0031】
環状シール部材4は、流路29,39と同軸上に位置しており、環状シール部材4の内周面48(本体部43の内周面)が、流路29および流路39により形成される一連の流路の内壁(すなわち接触面40)の一部を形成している。この接触面40は、流路29および流路39を流れる薬液等の制御流体に接触する接液部であるため、内周面48も接液部である。この接液部(内周面48)は、軸方向の長さを約3~4mm、直径を約2~10mmとし、該直径に対する該軸方向の長さの比が、約0.4~1.5であることが望ましい。さらには、接液部(内周面48)は、軸方向の長さを約3mmとし、直径は約2~3mmであり、該直径に対する該軸方向の長さの比が、約1.0~1.4であることがより望ましい。また、この接液部(内周面48)の面粗は、Rz6.3以下であることが望ましい。
【0032】
また、環状シール部材4の直径は、後述するフランジ部25,35よりも大きくされており、アース接続部45は、第1接続部21および第2接続部31の外部に露出した状態となる。さらに、アース接続部45の、環状シール部材4の軸線方向の両端部のうちの一端には、凸部451が、環状シール部材4の径方向内側に向かって突設されている。なお、この凸部451は、環状シール部材4の全周において設けられるものでなく、例えば、円周方向の90度おきに等間隔に設けられるものである。
【0033】
第1接続部21の管状部28の先端部(流量調整弁3側の端部)には、フランジ部25が形成されている。フランジ部25の端面22が環状シール部材4を装着する面である。端面22には、第1接続部21の径方向外側に突出した係止凸部27が形成されている。また、端面22の径方向内側には、環状シール部材4の本体部43の環状シール溝46に圧入される圧入部24が形成されている。圧入部24が環状シール溝46に圧入されることで、環状シール部材4が端面に固定されることとなるが、圧入部24が環状シール溝46に圧入される前の環状シール部材4は、係止凸部27に、環状シール部材4の凸部451を引っ掛けることで、フランジ部25に仮止めすることが可能となっている。さらにまた、フランジ部25の、端面22の反対側には、連結部材5を装着するための装着溝23が環状に形成されている。さらに、フランジ部25には、接続側テーパ面26が形成されている。
【0034】
第2接続部31の管状部38の先端部(配管2側の端部)には、フランジ部35が形成されている。フランジ部35の端面32が環状シール部材4を装着する面である。端面32には、径方向外側に突出した係止凸部37が形成されている。この係止凸部37は、上記の係止凸部27同様に、環状シール部材4の仮止めすることが可能である。また、端面32の径方向内側には、本体部43の環状シール溝47に圧入される圧入部34が形成されている。さらにまた、フランジ部35の、端面32の反対側には、連結部材5を装着するための装着溝33が環状に形成されている。さらに、フランジ部35には、接続側テーパ面36が形成されている。
【0035】
なお、環状シール部材4は、端面22,32に対して着脱可能とされている。よって、環状シール部材4が経年劣化等により交換が必要となった場合には、新しい環状シール部材4を端面22,32に装着することが可能である。その他にも、例えば、カーボンナノチューブを分散させていない一般的なフッ素樹脂(PTFEやPFA等)からなる環状シール部材(アース要素の接続を行わない環状シール部材)と互換性のある形状としておけば、アース接続の要否に応じて、環状シール部材の付け替えも可能である。
【0036】
アース要素8は、図4に示すように、環状シール部材4のアース接続部45に取り付け可能な取付部81と、アース10に接続するアース接続経路部82と、からなる。取付部81は、円環状で、一部にスリット81aが設けられることでC型リング状に形成されている。また、取付部81の内周面は、アース接続部45と接触可能とされている。取付部81の内径は、環状シール部材4のアース接続部45の直径よりも小さくされているため、取付部81は、アース接続部45に取り付けられると、アース接続部45によって拡径される。これにより、取付部81は弾性変形し、弾性変形により生じる反力によってアース接続部45と接触している。そして、アース接続経路部82は、取付部81のスリット81aが設けられている箇所の反対側から延伸されている。
【0037】
連結部材5は、図5に示すように、円筒形状をしており、第1連結片6と第2連結片7とからなる。第1連結片6と第2連結片7は、強度と耐腐食性があるフッ素樹脂を材質とする。第1連結片6と第2連結片7は、第1接続部21と第2接続部31の外周に沿って取り付けられるように内周面が円弧状に形成されている。
【0038】
連結部材5の第1連結片6は、図9に示すように、連結部材5の軸方向に直交する断面において、開口部6aを有する概U字形状を成す。第2連結片7は、第1連結片6の開口部6aを覆う形状を成す。図8に示すように、第1連結片6の周方向の一端には、端部65が形成され、端部65の軸方向両端には第1ヒンジ部63が形成されている。第2連結片7の周方向の一端には、第2ヒンジ部73が形成されており、第2ヒンジ部73が第1ヒンジ部63に係合されることで、第2連結片7は第1連結片6に、図5に示す係止状態と図7に示す開状態との間で回動可能に保持されている。
【0039】
図7に示すように、第1連結片6の周方向の他端(端部65とは反対側の端部)には、連結部材5の軸方向両端に、一対の第1係止部64(64A,64B)が立設されている。なお、第1係止部64A,64Bは同じ形状を有するため、以下では第1係止部64として記載する。第1係止部64の先端は、径方向外側に折れ曲がった先端部64aaが形成されている。
【0040】
第2連結片7の周方向の他端(第2ヒンジ部73とは反対側の端部)には、図7に示すように、連結部材5の軸方向両端に、第1連結片6の第1係止部64と係合する一対の第1係止受け部75A,75Bが設けられている。なお、第1係止受け部75A,75Bは同じ形状を有するため、以下では第1係止受け部75として記載する。第1係止受け部75の先端は、径方向内側に折れ曲がった先端部75aaが形成されている。この先端部75aaは、第1係止部64の先端部64aaと係合可能であり、先端部75aaと先端部64aaとが係合した状態が、連結部材5の係止状態である。
【0041】
第1連結片6は、図2に示すように、連結部材5の軸心方向の両端部のうち、一方の端部に径方向内方に向かって突設される第1突部60を備え、他方の端部に径方向内方に向かって突設される第2突部61を備える。これにより第1連結片6は、軸心方向の断面が略U字形状となっている。また、第2連結片7は、連結部材5の軸心方向の両端部のうち、一方の端部に径方向内方に向かって突設される第1突部70を備え、他方の端部に径方向内方に向かって突設される第2突部71を備える。これにより第2連結片7は、軸心方向の断面が略U字形状となっている。
【0042】
以上のような連結部材5は、環状シール部材4のアース接続部45およびアース接続部45に取り付けられたアース要素8を覆うようにして、第1接続部21および第2接続部31に装着される。装着手順を説明すると、まず、図9に示すように、開状態の連結部材5を、開口部6aに管状部28(管状部38)を挿入するようにして取り付ける。そして最後に、第2連結片7を回動させ、第1係止部64と第1係止受け部75を係合させ、連結部材5を係止状態とする。
【0043】
連結部材5が第1接続部21および第2接続部31に装着されると、第1連結片6の第1突部60と第2連結片7の第1突部70は、装着溝23に配置され、第1連結片6の第2突部61と第2連結片7の第2突部71は、装着溝33に配置される。これにより、第1突部60,70が、フランジ部25を、フランジ部25の端面22とは反対側の端面から抑え込み、第2突部61,71が、フランジ部35を、フランジ部35の端面32とは反対側の端面から抑え込むため、第1接続部21と第2接続部31の間に圧入された環状シール部材4の、流路29,39の軸心方向に第1接続部21と第2接続部31を遠ざけるように作用する力に抗して、連結部材5は、第1接続部21と第2接続部31の接続状態を維持している。
【0044】
また、アース要素8のアース接続経路部82は、図4に示すように、第1連結片6の端部65とは反対側の隙間(第1係止部64と第1係止受け部75とが係合している側の隙間)から連結部材5の外部に延伸されており、アース10に接続される。
【0045】
(実験結果について)
図1に示すように、配管2と流量調整弁3とを流体機器接続構造1により接続した状態で、エアパージを行い、エアパージにより環状シール部材に発生する静電気について実験を行った。図10は、実験結果を表す表であり、環状シール部材の電圧値の測定結果を示したものである。表中の「従来技術」とは、環状シール部材4の代わりに、カーボンナノチューブが分散されておらず導電性を有しない従来技術に係る環状シール部材を用いて実験を行ったことを意味する。表中の「本実施形態」とは、本実施形態に係る環状シール部材4(接液部(内周面48)の、直径に対する該軸方向の長さの比を約0.4~1.5としたもの)を用いて実験を行ったことを意味する。また、表中の「IN」とは、流量調整弁3の入力ポート31A側を意味しており、「OUT」は、流量調整弁3の出力ポート31B側を意味する。
【0046】
電圧値の測定結果を説明すると、従来技術に係る環状シール部材を用いて実験を行った場合、入力ポート31A側の環状シール部材および出力ポート31B側の環状シール部材の電圧値は、ともに数千~数万Vであった。
【0047】
次に本実施形態に係る環状シール部材4を用いて実験を行った場合、入力ポート31A側の環状シール部材4および出力ポート31B側の環状シール部材4の電圧値は、ともに±1.0kV以下であり、静電気が抑えられていることが分かる。この環状シール部材4の電圧値は、人体には衝撃が感じられない程度のものである。
【0048】
次に、本発明に係る環状シール部材を用いた流体機器接続構造の変形例について説明する。図10は、環状シール部材を用いた流体機器接続構造の変形例を示す図である。
【0049】
上に説明した流体機器接続構造1は、制御流体の給排を行う第1接続部21と第2接続部31の接続のために用いられているが、図10に示す流体機器接続構造100のように、T字配管200(第1流体機器の一例)の、制御流体を給排しないポート208を、蓋材600(第2流体機器の一例)によって封止するために用いることも可能である。
【0050】
流体機器接続構造100は、図10に示すように、T字配管200のポート208に設けられた第1接続部201と、蓋材600に設けられた第2接続部601とを、環状シール部材4を介して接続している。そして、第1接続部201と第2接続部601との外周に連結部材5を取り付けて接続状態を維持している。また、環状シール部材4は、アース要素8によりアース10に接続されている。
【0051】
T字配管200は、内部に、図10中の左右方向に伸びる流路209を有しており、薬液等の制御流体は、流路209内を、例えば矢印Fの方向に流れる。ポート208は、流路209に対して垂直方向に突設されており、流路209に連通している。制御流体は、流路209を流れる際に、ポート208にも流入されるため、ポート208の内壁210は接液部である。また、ポート208の先端部にはフランジ部205が形成されている。そして、フランジ部205の端面222には、上記した流体機器接続構造1のフランジ部25の端面22に環状シール部材4が圧入されるのと同様に、環状シール部材4が圧入されている。
【0052】
蓋材600は、T字配管200側の端部が開放された有頂筒状に形成されており、開放された側の端部の内壁609は、ポート208に流入した制御流体と接触する接液部である。また、蓋材600のT字配管200側の端部にはフランジ部605が形成されている。そして、フランジ部205の端面622には、上記した流体機器接続構造1のフランジ部35の端面32に環状シール部材4が圧入されるのと同様に、環状シール部材4が圧入されている。
【0053】
環状シール部材4は、上記した流体機器接続構造1に用いられるものと同一のものであり、アース接続部45は、第1接続部201および第2接続部601の外部に露出した状態されている。そして、アース接続部45には、アース要素8は、上記した流体機器接続構造1に用いられるものと同一のアース要素8が取り付けられている。また、連結部材5は、上記した流体機器接続構造1に用いられるものと同一のものであり、環状シール部材4のアース接続部45およびアース接続部45に取り付けられたアース要素8を覆うようにして、第1接続部201および第2接続部601に装着される。
【0054】
以上のように、流体機器接続構造100によって、T字配管200と蓋材600とが接続されることで、内壁210と内壁609とが、制御流体と接触する一連の接触面400とされている。さらに、環状シール部材4は、内壁210,609と同軸上に位置しており、環状シール部材4の内周面48が接触面400の一部を形成している。よって、内壁210,609とは、上記した通り接液部であるため、内周面48も接液部である。つまり、流路209を流れる制御流体は、ポート208に流入されると、カーボンナノチューブが分散された環状シール部材4と接触可能である。よって、制御流体が帯電したとしても、環状シール部材4に接触することで、環状シール部材4およびアース要素8を介してT字配管200や蓋材600の外部に放電することが可能となる。
【0055】
なお、第2流体機器として蓋材600を挙げているが、これに限定されるものではない。例えば、第2流体機器として圧力計等の測定機器をT字配管200のポート208に接続することも可能である。
【0056】
以上説明したように、本実施形態の環状シール部材4によれば、
(1)第1流体機器(例えば、配管2やT字配管200)に形成された第1接続部21,201と、第2流体機器(例えば、流量調整弁3や蓋材600)に形成された第2接続部31,601と、をシール状態で接続するために、第1接続部21,201と第2接続部31,601との間に介在する環状シール部材4において、環状シール部材4の内周面48は、第1接続部21,201と第2接続部31,601とが接続されてなる、制御流体と接触する一連の接触面40,400の一部を形成しており、制御流体(例えば半導体製造工程に用いられる薬液等)に接触可能であること、環状シール部材4は、導電性材料を分散させた樹脂からなり、静電気を外部に逃がすためのアース要素8を接続することが可能なアース接続部45を備えること、を特徴とする。
【0057】
(2)(1)に記載の環状シール部材4において、前記導電性材料は、カーボンナノチューブであること、前記樹脂は、フッ素樹脂(例えばPTFEやPFA)であること、を特徴とする。
【0058】
(1)または(2)に記載の環状シール部材4によれば、環状シール部材4の内周面48は、第1接続部21と第2接続部31とが接続されてなる、制御流体と接触する一連の接触面40,400の一部を形成している。つまり、環状シール部材4の内周面48は、接液部である。また、環状シール部材4は、導電性材料(例えばカーボンナノチューブ)を分散させた樹脂からなるため、導電性を持つ。さらに、環状シール部材4には、静電気を外部に逃がすためのアース要素8が接続されている。よって、流体が流路(例えば流路29や流路39)を通過するうちに帯電したとしても、流体が環状シール部材4に接触することで、環状シール部材4およびアース要素8を介して流体機器(配管2、流量調整弁3、T字配管200、蓋材600)の外部に放電が行われる。放電が行われることで、流体機器(例えばダイアフラム弁体301の薄膜部302)に絶縁破壊が発生するおそれが低減される。
【0059】
また、環状シール部材4が導電性を持つとともに、アース要素8が接続されているため、環状シール部材4自体の帯電を防止することが可能である。環状シール部材4の帯電を防止することが出来れば、環状シール部材4に静電気によってパーティクルが付着することを防止することが出来る。
【0060】
さらにまた、流体の帯電防止のためには、第1流体機器(配管2,T字配管200)の第1接続部21,201と第2流体機器(流量調整弁3,蓋材600)の第2接続部31,601とを、導電性を有するチューブを介して接続することも考えられるが、(1)または(2)に記載の環状シール部材4によれば、第1流体機器(配管2,T字配管200)の第1接続部21,201と第2流体機器(流量調整弁3,蓋材600)の第2接続部31,601とを直接接続することが出来るため、導電性を有するチューブを用いるよりも第1流体機器(配管2,T字配管200)および第2流体機器(流量調整弁3,蓋材600)の設置スペースを最小限にしつつ、流体の帯電を防止することが可能である。
【0061】
(3)(1)または(2)に記載の環状シール部材4において、環状シール部材4の外周面は、第1接続部21,201および第2接続部31,601の少なくともいずれか一方の外部に露出していること、前記外周面がアース接続部45であること、を特徴とする。
【0062】
(3)に記載の環状シール部材4によれば、環状シール部材4の外周面は、第1接続部21,201および第2接続部31,601の外部に露出しているため、アース要素8との接続が容易となる。また、アース要素8を着脱可能なものとして、必要に応じてアース要素8の要否を選ぶことが出来るなど、流体機器(配管2や流量調整弁3、T字配管200や蓋材600)の選択に自由度を持たすことが出来る。
【0063】
(4)(3)に記載の環状シール部材4において、アース要素8は、アース接続部45に取り付け可能な取付部81を備えること、取付部81は、その内周面がアース接続部45と接触可能とされたC型リング状に形成されており、その内径は、アース接続部45の直径よりも小さくされていること、取付部81は、アース接続部45に取り付けられた際、アース接続部45によって拡径され、弾性変形することで生じる反力によりアース接続部45と接触可能なこと、を特徴とする。
【0064】
(4)に記載の環状シール部材4によれば、アース要素8の取付部81は、環状シール部材4の外周面(アース接続部45)に取り付けられた際、環状シール部材4の外周面(アース接続部45)によって拡径され、弾性変形することで生じる反力により環状シール部材4の外周面(アース接続部45)と接触する。これにより、環状シール部材4とアース要素8との接続が安定化され、静電気を安定的に流体機器(配管2や流量調整弁3、T字配管200や蓋材600)の外部に逃がすことが出来る。
【0065】
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載の環状シール部材4において、環状シール部材4は、第1接続部21,201と第2接続部31,601との間に、着脱可能に介在すること、を特徴とする。
【0066】
(5)に記載の環状シール部材4によれば、環状シール部材4を、例えば従来の環状シール部材と置き換えが可能であるなど、アース要素の接続を行わない環状シール部材と互換性のある形状としておけば、アース接続の要否に応じて、流体機器(配管2や流量調整弁3、T字配管200や蓋材600)の選択に自由度を持たすことが出来る。
【0067】
また、本実施形態の流体機器接続構造1によれば、
(6)第1接続部21,201を有する第1流体機器(例えば、配管2やT字配管200)と、第2接続部31,601を有する第2流体機器(例えば、流量調整弁3や蓋材600)と、第1接続部21,201及び第2接続部31,601の間に介在する環状シール部材4と、環状シール部材4を介して第1接続部21,201及び第2接続部31,601を接続する連結部材5と、を有する流体機器接続構造1,100において、環状シール部材4は、(1)乃至(5)のいずれか1つに記載の環状シール部材4であること、を特徴とする。
【0068】
(6)に記載の流体機器接続構造1,100によれば、環状シール部材4の内周面48は、第1接続部21,201と第2接続部31,601とが接続されてなる、制御流体と接触する一連の接触面40,400の一部を形成している。つまり、環状シール部材4の内周面48は、接液部である。また、環状シール部材4は、導電性材料(例えばカーボンナノチューブ)を分散させた樹脂からなるため、導電性を持つ。さらに、環状シール部材4には、静電気を外部に逃がすためのアース要素8が接続されている。よって、流体が流路を通過するうちに帯電したとしても、流体が環状シール部材4に接触することで、環状シール部材4およびアース要素8を介して流体機器(配管2、流量調整弁3、T字配管200、蓋材600)の外部に放電が行われる。放電が行われることで、流体機器(例えばダイアフラム弁体301の薄膜部302)に絶縁破壊が発生するおそれが低減される。
【0069】
また、環状シール部材4が導電性を持つとともに、アース要素8が接続されているため、環状シール部材4自体の帯電を防止することが可能である。環状シール部材4の帯電を防止することが出来れば、環状シール部材4に静電気によってパーティクルが付着することを防止することが出来る。
【0070】
さらにまた、流体の帯電防止のためには、第1流体機器(配管2、T字配管200)の第1接続部21,201と第2流体機器(流量調整弁3、蓋材600)の第2接続部31,601とを、導電性を有するチューブを介して接続することも考えられるが、(6)に記載の流体機器接続構造1,100によれば、第1流体機器(配管2、T字配管200)の第1接続部21,201と第2流体機器(流量調整弁3、蓋材600)の第2接続部31,601とを直接接続することが出来るため、導電性を有するチューブを用いるよりも第1流体機器(配管2、T字配管200)および第2流体機器(流量調整弁3、蓋材600)の設置スペースを最小限にしつつ、流体の帯電を防止することが可能である。
【0071】
なお、上記の実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。例えば、上記実施形態においては、流体機器接続構造1を、第1流体機器としての配管2と、第2流体機器としての流量調整弁3との接続を行うために用いているが、接続を行う流体機器はこれらに限定されるものではない。例えば、第1流体機器と第2流体機器とをともに配管として、流体機器接続構造1を配管同士の接続に用いることも可能である。
【0072】
また、上記実施形態においては、アース要素8と環状シール部材4の接続には、アース要素8の取付部81をC型リング状とし、取付部81がアース接続部45に拡径されることによる反力により接続されるものとしているが、
環状シール部材4をアース10に接続するための構成としてはこれに限定されるものではない。例えば、環状シール部材4のアース接続部45に第1コネクタを設け、アース要素の取付部を第1コネクタと嵌合可能な第2コネクタとして、第1コネクタと第2コネクタとを嵌合させることで、環状シール部材4をアース10に接続するものとしても良い。
【符号の説明】
【0073】
1 流体機器接続構造
2 配管(第1流体機器の一例)
3 流量調整弁(第2流体機器の一例)
4 環状シール部材
8 アース要素
21 第1接続部
31A 入力ポート(第2接続部の一例)
31B 出力ポート(第2接続部の一例)
45 アース接続部
48 内周面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10