(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114506
(43)【公開日】2022-08-08
(54)【発明の名称】ゲート装置
(51)【国際特許分類】
B61L 29/04 20060101AFI20220801BHJP
E01F 13/04 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
B61L29/04 Z
E01F13/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021010777
(22)【出願日】2021-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000196587
【氏名又は名称】西日本旅客鉄道株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391054464
【氏名又は名称】株式会社てつでん
(71)【出願人】
【識別番号】000131027
【氏名又は名称】株式会社サンポール
(74)【代理人】
【識別番号】100113712
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 裕弘
(72)【発明者】
【氏名】片山 健二
(72)【発明者】
【氏名】廣本 勝昭
(72)【発明者】
【氏名】久保 暁
(72)【発明者】
【氏名】杉本 恭彦
(72)【発明者】
【氏名】松本 卓也
(72)【発明者】
【氏名】楠藤 正伯
(72)【発明者】
【氏名】大江 卓浩
(72)【発明者】
【氏名】安藤 裕造
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼崎 晋太朗
【テーマコード(参考)】
2D101
5H161
【Fターム(参考)】
2D101HB02
2D101HB06
5H161AA01
5H161RR13
5H161RR24
(57)【要約】
【課題】設置が容易なゲート装置を提供する。
【解決手段】ゲート装置1は、可動アーム2で通路を開閉する装置である。ゲート装置1は、可動アーム2と、支持部3と、付勢部4と、制動部5とを備える。支持部3は、可動アーム2を水平回転可能にその基端部を支持する。付勢部4は、可動アーム2を定位置に戻す方向に付勢力を発生する。制動部5は、可動アーム2を制動する。可動アーム2は、定位置において通路を閉じ、押されることによってその定位置からの偏角θが変化する。そして、偏角θが変化しなくなった時、制動部5は、その偏角θを保持するように可動アーム2を所定時間制動し、その所定時間が経過した時、制動を解除する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動アームで通路を開閉するゲート装置であって、
前記可動アームを水平回転可能にその基端部を支持する支持部と、
前記可動アームを定位置に戻す方向に付勢力を発生する付勢部と、
前記可動アームを制動する制動部とを備え、
前記可動アームは、前記定位置において通路を閉じ、押されることによってその定位置からの偏角が変化し、そして、
前記偏角が変化しなくなった時、前記制動部は、その偏角を保持するように前記可動アームを所定時間制動し、その所定時間が経過した時、制動を解除することを特徴とするゲート装置。
【請求項2】
前記偏角が所定の非検知範囲内であるとき、前記制動部は、前記可動アームを制動しないことを特徴とする請求項1に記載のゲート装置。
【請求項3】
前記制動部は、前記可動アームを制動している時にその可動アームが開く方向に押されたとき、前記所定時間の経過を待たずに、制動を解除することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のゲート装置。
【請求項4】
前記制動部は、前記可動アームを制動している時にその可動アームが閉じる方向に押されたとき、前記所定時間の経過を待たずに、制動を解除することを特徴とする請求項3に記載のゲート装置。
【請求項5】
前記制動部は、前記偏角を検知する回転角度センサと、制動トルクを発生するモータと、前記回転角度センサの出力が入力されて前記モータの制動トルクを制御する制御部とを有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のゲート装置。
【請求項6】
前記回転角度センサは、前記偏角に応じて抵抗値が変化する可変抵抗器を有することを特徴とする請求項5に記載のゲート装置。
【請求項7】
前記付勢部は、円筒カムと、付勢力を発生するための弾性体とを有し、
前記円筒カムは、円筒状のカムと、前記カムに接触して動くカムフォロアとを有し、前記可動アームの水平回転と前記カムフォロアの直線変位とを相互に変換し、
前記弾性体は、前記カムフォロアに接続された可動端と、固定された固定端とを有し、前記可動アームの偏角に応じて前記直線変位によって弾性変形されることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のゲート装置。
【請求項8】
前記弾性体は、ばねであり、
前記弾性体の弾性変形は、前記ばねの圧縮であることを特徴とする請求項7に記載のゲート装置。
【請求項9】
前記カムフォロアは、前記カムに接触する接触子を有し、
前記円筒カムは、前記接触子が前記カムの円筒端面と接触する円筒端面カムであり、
前記円筒端面は、周方向の角度に対する高さで表されるカム曲線が形成されており、
前記カム曲線は、前記可動アームの偏角の絶対値が大きいほど前記カムフォロアの直線変位が大きくなる傾斜を有することを特徴とする請求項7又は請求項8に記載のゲート装置。
【請求項10】
前記カム曲線の傾斜は、前記可動アームの偏角の絶対値が大きいほど緩やかであることを特徴とする請求項9に記載のゲート装置。
【請求項11】
前記円筒端面は、前記定位置において前記接触子がはまり込む凹部を有し、
前記接触子は、前記可動アームが押されることにより前記凹部から出ることを特徴とする請求項9又は請求項10に記載のゲート装置。
【請求項12】
前記円筒端面は、前記前記接触子の周方向の角度範囲を限定するストッパ部を有することを特徴とする請求項9乃至請求項11のいずれか一項に記載のゲート装置。
【請求項13】
前記制動部に電力を供給する電源部を有し、
前記電源部は、ソーラーパネルと、前記ソーラーパネルが発電した電力を蓄えるための蓄電部とを有することを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載のゲート装置。
【請求項14】
第4種踏切道に設置されることを特徴とする請求項1乃至請求項13のいずれか一項に記載のゲート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通路を開閉するゲート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
踏切道(踏切)は、踏切保安装置の内容によって第1種~第4種に区分される(非特許文献1参照)。第1種踏切道には、自動遮断機(自動的に開閉する踏切遮断機)が設けられている(例えば特許文献1参照)。第3種踏切道には、踏切警報機が設けられている(例えば特許文献2参照)。第4種踏切道には、自動遮断機も踏切警報機も設けられてない。なお、現在、第2種踏切道は無い。
【0003】
踏切障害事故の件数のうち、第4種踏切道での事故(第4種踏切事故)の割合が高い。第4種踏切事故の主な原因は直前横断である。第4種踏切事故における通行形態は、自転車や自動二輪等の軽車両等が多い。第4種踏切道では、軽車両等が一時停止せずに踏切内に進入して事故が発生している。しかし、第4種踏切道の廃止や格上げ等の抜本対策は、地元の同意を得るのに時間がかかる。このため、地元の同意を得やすい暫定対策が望まれる。
【0004】
従来から、第4種踏切道に使用する踏切用標識板が知られている(特許文献3参照)。この踏切用標識板は、再帰性反射フィルムと発光ダイオードとを有し、視認性の向上を図っている。しかし、通行者が、踏切用標識板を認識しても、踏切手前で一時停止するとは限らない。
【0005】
また、踏切の出入口側にゲート装置を設置することが提案されている(特許文献4参照)。このゲート装置では、開閉指令信号が駆動回路に与えられ、駆動回路がモータを回転し、阻止棒を上方に開く(同文献の明細書段落0024等参照)。しかし、このゲート装置は、阻止棒を開閉させるための開閉指令信号を発生する装置が必要であり、阻止棒を上方に駆動するための電力を供給する必要もあるので、装置が大掛かりになり、設置が容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-188032号公報
【特許文献2】特開2012-166768号公報
【特許文献3】特開2012-188827号公報
【特許文献4】特開2001-344623号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】JIS E 3013:2001「鉄道信号保安用語」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題を解決するものであり、設置が容易なゲート装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のゲート装置は、可動アームで通路を開閉する装置であって、前記可動アームを水平回転可能にその基端部を支持する支持部と、前記可動アームを定位置に戻す方向に付勢力を発生する付勢部と、前記可動アームを制動する制動部とを備え、前記可動アームは、前記定位置において通路を閉じ、押されることによってその定位置からの偏角が変化し、そして、前記偏角が変化しなくなった時、前記制動部は、その偏角を保持するように前記可動アームを所定時間制動し、その所定時間が経過した時、制動を解除することを特徴とする。
【0010】
このゲート装置において、前記偏角が所定の非検知範囲内であるとき、前記制動部は、前記可動アームを制動しないことが好ましい。
【0011】
このゲート装置において、前記制動部は、前記可動アームを制動している時にその可動アームが開く方向に押されたとき、前記所定時間の経過を待たずに、制動を解除することが好ましい。
【0012】
このゲート装置において、前記制動部は、前記可動アームを制動している時にその可動アームが閉じる方向に押されたとき、前記所定時間の経過を待たずに、制動を解除してもよい。
【0013】
このゲート装置において、前記制動部は、前記偏角を検知する回転角度センサと、制動トルクを発生するモータと、前記回転角度センサの出力が入力されて前記モータの制動トルクを制御する制御部とを有することが好ましい。
【0014】
このゲート装置において、前記回転角度センサは、前記偏角に応じて抵抗値が変化する可変抵抗器を有することが好ましい。
【0015】
このゲート装置において、前記付勢部は、円筒カムと、付勢力を発生するための弾性体とを有し、前記円筒カムは、円筒状のカムと、前記カムに接触して動くカムフォロアとを有し、前記可動アームの水平回転と前記カムフォロアの直線変位とを相互に変換し、前記弾性体は、前記カムフォロアに接続された可動端と、固定された固定端とを有し、前記可動アームの偏角に応じて前記直線変位によって弾性変形されることが好ましい。
【0016】
このゲート装置において、前記弾性体は、ばねであり、前記弾性体の弾性変形は、前記ばねの圧縮であることが好ましい。
【0017】
このゲート装置において、前記カムフォロアは、前記カムに接触する接触子を有し、前記円筒カムは、前記接触子が前記カムの円筒端面と接触する円筒端面カムであり、前記円筒端面は、周方向の角度に対する高さで表されるカム曲線が形成されており、前記カム曲線は、前記可動アームの偏角の絶対値が大きいほど前記カムフォロアの直線変位が大きくなる傾斜を有することが好ましい。
【0018】
このゲート装置において、前記カム曲線の傾斜は、前記可動アームの偏角の絶対値が大きいほど緩やかであることが好ましい。
【0019】
このゲート装置において、前記円筒端面は、前記定位置において前記接触子がはまり込む凹部を有し、前記接触子は、前記可動アームが押されることにより前記凹部から出ることが好ましい。
【0020】
このゲート装置において、前記円筒端面は、前記前記接触子の周方向の角度範囲を限定するストッパ部を有することが好ましい。
【0021】
このゲート装置において、前記制動部に電力を供給する電源部を有し、前記電源部は、ソーラーパネルと、前記ソーラーパネルが発電した電力を蓄えるための蓄電部とを有することが好ましい。
【0022】
このゲート装置において、第4種踏切道に設置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明のゲート装置によれば、可動アームが水平回転するので、可動アームを持ち上げるために外部からエネルギーを供給する必要がない。また、可動アームは、定位置において通路を閉じ、押されることによってその定位置からの偏角が変化するので、可動アームの開閉を指令する装置が不要である。したがって、このゲート装置は、設置が極めて容易である。さらに、可動アームが押された後に偏角が変化しなくなった時、その偏角が所定時間保持されるので、可動アームが開いた後に直ぐに閉じず、通行が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係るゲート装置のアイソメトリック図。
【
図4】同ゲート装置における可動アームの水平回転を示す平面図。
【
図5】同ゲート装置の制動部による制動制御を示すフローチャート。
【
図7】実施形態の変形例に係るゲート装置の状態変化を示す状態遷移図。
【
図8】同ゲート装置のカバーを取り外した状態のアイソメトリック図。
【
図11】同ゲート装置における筐体内のアイソメトリック図。
【
図13】同ゲート装置におけるカムのアイソメトリック図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の一実施形態に係るゲート装置について
図1乃至
図13を参照して説明する。
図1及び
図2に示すように、ゲート装置1は、可動アーム2で通路を開閉する装置である。
【0026】
図3に示すように、ゲート装置1は、可動アーム2と、支持部3と、付勢部4と、制動部5と、電源部6とを備える。支持部3は、可動アーム2を水平回転可能にその基端部を支持する。付勢部4は、可動アーム2を定位置に戻す方向に付勢力を発生する(付勢する)。制動部5は、可動アーム2を制動する(可動アーム2にブレーキを掛ける)。電源部6は、制動部5に電力を供給する。
【0027】
図4に示すように、可動アーム2は、定位置において通路を閉じ、押されることによってその定位置からの偏角θが変化する。
【0028】
水平回転は、平面視で回転軸を原点とする極座標で表される。定位置は、偏角θ=0°である。本実施形態では、可動アーム2の水平回転の可動範囲は、偏角θがプラス・マイナス135°以内である(-135°≦θ≦135°)。偏角θの絶対値が小さいとき、ゲート装置1は、通路を閉じた閉状態である。偏角θの絶対値が大きくなることにより通路が開く。通行者の進入方向が定位置の可動アーム2に対して垂直である場合、偏角θの絶対値が90°の時、ゲート装置1は、通路を最大に開いた全開状態である。すなわち、可動アーム2が通行者の進入方向と平行になった時、ゲート装置1は全開状態である。通行者の進入方向は、定位置の可動アーム2に対して垂直であるとは限らず、例えば45°である場合、偏角θが-135°又は45°の時、ゲート装置1は、全開状態である。
【0029】
ゲート装置1の構成について詳述する。本実施形態では、可動アーム2は、基端部から先端部に向かう水平方向(水平回転の動径方向)に長い長尺状である。この可動アーム2は、板状であり、アームパネルとも呼ばれる(
図1参照)。可動アーム2は、棒(バー)であってもよい。
【0030】
ゲート装置1を片開きとして用いる場合、可動アーム2で通路を閉じる幅範囲は、例えば約1.5mである。対向する一対のゲート装置1を観音開き(両開き)として用いると、通路を閉じる幅範囲は、約3.0mとなる。水平方向に短い可動アーム2を用いて、通路を閉じる幅範囲を狭くしてもよい。
【0031】
可動アームは、風に対する抗力(空気抵抗)が小さい形状等を有することが望ましい。可動アーム2には、押して通行できることが文字等により表示される。
【0032】
なお、可動アーム2は、水平方向に長い長尺状に限定されず、例えば、上下方向に長い板状であってもよい。上下方向に長い可動アーム2は、例えば、可動アーム2の上又は下から通り抜けることを防ぐために用いられる。
【0033】
支持部3は、支柱31と、ベースプレート32とを有する。ベースプレート32は、支柱31の基部を地面に固定するための板である。
【0034】
本実施形態では、付勢部4は、弾性力により付勢力を発生する。制動部5は、電磁力により制動トルクを発生する。
【0035】
制動部5は、回転角度センサ51と、モータ52と、制御部53とを有する(
図3参照)。回転角度センサ51は、可動アーム2の偏角θを検知する。モータ52は、可動アーム2を制動するための制動トルクを発生する。モータ52は、回転駆動をする回転機や、高速回転を減速させる制動機としてではなく、偏角θを保持するためのロータリーアクチュエータとして機能するので、それに適した特性を有するものが用いられる。制御部53は、回転角度センサ51の出力が入力されてモータ52の制動トルクを制御する。制御部53は、ハードウェアとしてマイクロコントローラを有し、プログラムを実行することにより動作する。
【0036】
電源部6は、ソーラーパネル61と、蓄電部62と、充放電回路63とを有する。蓄電部62は、ソーラーパネル61が発電した電力を蓄える。本実施形態では、蓄電部62は、電気二重層キャパシタである。蓄電部62は、蓄電池(二次電池)であってもよい。充放電回路63は、蓄電部62の充放電を制御する電子回路である。充放電回路63には、例えば電源ICが用いられる。蓄電部62の出力は、充放電回路63を介して制動部5に供給される。
【0037】
上記のように構成されたゲート装置1の制御についてフローチャートを参照して説明する。
図5に示すように、先ず、可動アーム2が定位置にあるときに、制動部5が起動される(ステップS100)。そして、制動部5に内蔵されたマイクロコントローラ(マイコン)が初期化される(ステップS101)。そして、制動部5は、ブレーキ(制動)を解除する(ステップS102)。これにより、制動部5の制御モードが待機モードとなる(ステップS103)。
【0038】
なお、待機モードにおいて、可動アーム2が風を受けて動くことがある。可動アーム2が風によって動いても、可動アーム2にブレーキを掛ける必要は無い。このため、可動アーム2の偏角θが所定の非検知範囲内であるとき、制動部5は、待機モードを維持する(ステップS104でYES)。非検知範囲内では、制動部5は、可動アーム2にブレーキを掛けない。非検知範囲内では、制動部5は、偏角θを検知するが、偏角θの時間変化を検知しないので、その角度範囲が非検知範囲と呼ばれる。非検知範囲の具体的な角度の数値は、付勢力の大きさの設定、ゲート装置1の設置環境等に応じて決められる設計事項である。なお、ゲート装置1の設置環境等によっては、このような非検知範囲を省略してもよい。
【0039】
可動アーム2は、押されることによってその定位置からの偏角θが変化する。可動アーム2が押されて、偏角θが非検知範囲を超えると(ステップS104でNO)、制動部5の制御モードが動作モードとなる(ステップS105)。可動アーム2が動いている間、偏角θの絶対値が時間とともに増加する。制動部5は、偏角θの絶対値を時間微分することによって、可動アーム2が動いていることを検出する。制動部5は、可動アーム2が動いている間、動作モードを維持し、ブレーキを掛けない(ステップS106でNO)。
【0040】
そして、偏角θが変化しなくなった時、すなわち可動アーム2が止まった時(ステップS106でYES)、制動部5の制御モードがブレーキモードとなる(ステップS107)。制動部5は、ブレーキを掛けるタイマの値(所定時間)を設定する(ステップS108)。タイマの値は、例えば数十秒程度(最大1分程度)である。そして、制動部5は、可動アーム2の偏角θを保持するように可動アーム2にブレーキを掛ける。
【0041】
ブレーキモード、すなわち、制動部5が可動アーム2を制動している時に、可動アーム2が押されたとき(ステップS109でYES)、タイマの時間切れを待たずに(所定時間の経過を待たずに)、ブレーキ(制動)を解除する(ステップS110)。ブレーキモードにおいて、制動トルクを超える力で可動アーム2が押されることにより可動アーム2が回転する。その回転による偏角θの変化を回転角度センサ51が検知することにより、可動アーム2が押されたことが検出される。なお、ブレーキモードにおいて制動トルクの大きさが、通行者が可動アーム2を押して通行することができる程度であれば、可動アーム2が押されたときのブレーキの解除(ステップS109及びS110)を省略しても構わない。後述するように、本実施形態では、可動アーム2が開く方向に押されたときにステップS109及びS110が実行される。また、本実施形態の変形例では、可動アーム2がいずれの方向に押されたときもステップS109及びS110が実行される。
【0042】
ブレーキモードにおいて、タイマが時間切れになった時(所定時間が経過した時)(ステップS111でYES)、制動部5は、ブレーキを解除する(ステップS112)。これにより、可動アーム2は、付勢部4の付勢力によって定位置に戻る。そして、制動部5の制御モードは、待機モードに復帰する(ステップS113からステップS103)。
【0043】
なお、可動アーム2が付勢力によって定位置に戻る時、その可動アーム2の動きをモータ52で電力回生して、蓄電部62を充電してもよい。
【0044】
上記のように制御されるゲート装置1の状態変化について状態遷移図を参照して説明する。
図6に示すように、ゲート装置1の初期状態及び定常状態は、可動アーム2が通路を閉じた閉状態である(状態st0)。閉状態において、可動アーム2は定位置にあり(偏角θ=0°)、制動部5は制動を解除している。偏角θが所定の非検知範囲内(所定の角度範囲内)であるとき、閉状態のままである(イベントe00)。
【0045】
可動アーム2が押されると(イベントe01)、可動アーム2の偏角θの絶対値が非検知範囲を超えて増加し、ゲート装置1は開動作状態となる(状態st1)。
【0046】
そして、偏角θが変化しなくなった時(イベントe12)、制動部5は、可動アーム2を制動する。可動アーム2の偏角θは一定となり、ゲート装置1は開状態となる(状態st2)。開状態(状態st2)は、所定時間保持される(イベントe22)。
【0047】
可動アーム2が追加で押されたとき(イベントe21)、制動部5は、制動を解除する(状態st1)。すなわち、ゲート装置1の開状態(状態st2)において、可動アーム2が開く方向に押されたとき、制動部5は制動を解除する。
【0048】
開状態(状態st2)において所定時間が経過した時(イベントe23)、制動部5は、制動を解除する。ゲート装置1は、閉動作状態となる(状態st3)。
【0049】
可動アーム2は、付勢部4の付勢力によって偏角θの絶対値が減少し、定位置(偏角θ=0°)に復帰する(イベントe30)。
【0050】
本実施形態では、開状態(状態st2)において可動アーム2が反対側に押されたときには、制動部5は、制動を解除しない。風等の外乱によって制動が不要に解除されることを防ぐためである。このため、反対側に通行しようとする通行者が可動アーム2を押し戻して通行することができるように制動トルクの最大値が設定される。
【0051】
本実施形態の変形例として、開状態において可動アーム2が反対側に押されたときに制動を解除してもよい。
【0052】
図7に示すように、開状態(状態st2)において可動アーム2が反対側に押されたとき(イベントe23a)、制動部5は、制動を解除する(状態st3)。すなわち、ゲート装置1の開状態(状態st2)において、可動アーム2が閉じる方向に押されたとき、制動部5は制動を解除する。ゲート装置1は、閉動作状態となる(状態st3)。
【0053】
開状態(状態st2)において所定時間が経過した時(イベントe23b)、制動部5は、制動を解除する。ゲート装置1は、閉動作状態となる(状態st3)。
【0054】
可動アーム2は、付勢部4の付勢力によって偏角θの絶対値が減少し、定位置(偏角θ=0°)に復帰する(イベントe30)。
【0055】
このように開閉するゲート装置1は、例えば、第4種踏切道に設置される。踏切道に設置されたゲート装置1は、踏切ゲートと呼ばれる。可動アーム2は、定位置において通路を閉じているので、踏切道の通行者に一時停止が促される。そして、通行者は、可動アーム2を押しながら、踏切道に進入する。可動アーム2の水平回転が止まると、その時の偏角θが保持され、可動アーム2がそれ以上開かないので、可動アーム2が閉じた状態が通常であることがいっそう明確になる。その偏角θが所定時間保持されるので、その間は可動アーム2が閉じる方向に戻らず、例えば、自転車等が可動アーム2に引っ掛かることが防がれる。なお、ゲート装置1は、線路の建築限界を支障しない位置に設置される。
【0056】
ゲート装置1の構成についてさらに詳述する。付勢部4、制動部5、及び電源部6の蓄電部62及び充放電回路63は、筐体7内に収容される(
図3参照)。
【0057】
図8及び
図9は、筐体7のカバーを取り外した状態のゲート装置1を示す。ソーラーパネル61は、筐体7の頂部に設けられる。本実施形態では、筐体7は、支持部3に支持され、可動アーム2と共に回転する。
【0058】
ゲート装置1における詳細な内部構成を
図10に示す。筐体7内の上部に基板ボックス71が設置される。基板ボックス71内に電源部6の蓄電部62及び充放電回路63、制動部5の制御部53が収容される。基板ボックス71は、内部の電子装置を保護する。
【0059】
筐体7の中央にメインシャフト33(主軸)が設けられる。メインシャフト33は、上下方向(鉛直方向)に長い。メインシャフト33は、支柱31の上端に固定されており、回転しない。筐体7は、平面視で、メインシャフト33の周りを回転する。
【0060】
制動部5のモータ52の本体は、筐体7に固定され、モータ52の回転軸は、メインシャフト33に結合されている。
【0061】
制動部5の回転角度センサ51は、回転軸の回転角度に応じて抵抗値が変化する可変抵抗器を有する。可動アーム2のメインシャフト33に対する水平回転は、プーリー54を介して、回転角度センサ51の回転軸に伝達される。したがって、回転角度センサ51の可変抵抗器は、可動アーム2の偏角θに応じて抵抗値が変化する。角度を検知するセンサとして、可変抵抗器(ロータリーポテンショメータ)は、アブソリュート形ロータリーエンコーダより非常に安価である。回転角度センサ51の出力は、制御部53に入力される。制御部53は、可動アーム2を制動する時、付勢部4が発生する付勢力に対抗する制動トルクをモータ52に発生させる。
【0062】
図11に示すように、付勢部4は、円筒カム8と、弾性体9とを有する。円筒カム8は、運動方向を変換するための機械要素である。弾性体9は、付勢力を発生するための機械要素である。
【0063】
円筒カム8は、円筒状のカム81と、カムフォロア82とを有する。カムフォロア82は、カム81に接触して動く部分である。円筒カム8は、可動アーム2の水平回転とカムフォロア82の直線変位とを相互に変換する。弾性体9は、可動端91と、固定端92とを有する(
図11参照)。弾性体9の可動端91は、カムフォロア82に接続される。固定端92は、筐体7に固定される。弾性体9は、可動アーム2の偏角θに応じて直線変位によって弾性変形される。
【0064】
弾性体9は、ばねである。弾性体9の弾性変形は、ばねの圧縮である。本実施形態では、弾性体9は、圧縮コイルばねであり、そのコイルの中心軸にメインシャフト33が位置する(
図10参照)。弾性体9は、中心軸が上下方向であり、可動端91が上昇することにより、圧縮されて弾性力を発生する(
図11参照)。
【0065】
図12に示すように、カムフォロア82は、上下方向に直動するスライドプレート821と、カム81に接触する接触子822とを有する。円筒カム8は円筒端面カムであり、接触子822がカム81の円筒端面811と接触する。本実施形態では、接触子822は、ローラ(円端)である。接触子822としてのローラがカム81の円筒端面811上を転動することによって、スライドプレート821が上下方向に直動する(直線変位する)。
【0066】
スライドプレート821には、リニアブッシュブラケット83が固定されている(
図11参照)。リニアブッシュブラケット83は、L型ブラケットであり、L字形状における鉛直部分がスライドプレート821に固定され、L字形状における水平部分にリニアブッシュ84が設けられる。リニアブッシュ84は、弾性体9の可動端91が取り付けられる。すなわち、弾性体9の可動端91は、リニアブッシュ84、リニアブッシュブラケット83を介して、カムフォロア82のスライドプレート821に接続される。
【0067】
図13に示すように、カム81の円筒端面811は、周方向の角度に対する高さhで表されるカム曲線が形成されている。円筒端面811における周方向の角度は、可動アーム2の偏角θと同じ大きさである。すなわち、カム曲線は、半径rが一定の円筒座標系(r,θ,h)で表すことができる。このカム曲線は、可動アーム2の偏角θの絶対値が大きいほどカムフォロア82の直線変位が大きくなる傾斜811aを有する。
【0068】
本実施形態では、カム曲線の形状は、偏角θ=0°(定位置)に対して対称である。すなわち、偏角θの絶対値が同じであれば、偏角θの符号(プラス・マイナス)が異なっても高さhが同じである。なお、カム曲線の形状は、このような対称に限定されず、偏角θ=0°に対して非対称にしてもよい。非対称形状のカム曲線により、例えば、進入時に必要な可動アーム2を押す力と、退出時に必要な押す力を、異なる大きさにすることができる。
【0069】
カム曲線の傾斜811aは、可動アーム2の偏角θの絶対値が大きいほど緩やかである。
【0070】
例えば、カム曲線の高さhは、偏角θの絶対値の平方根に比例するように設定される。このようなカム曲線の傾斜(dh/dθ)は、偏角θの絶対値の平方根に反比例するので、偏角θが大きいほど緩やかである。
【0071】
円筒端面811は、可動アーム2の定位置(θ=0°)において接触子822がはまり込む(係合する)凹部811bを有する。接触子822は、可動アーム2が押されることにより凹部811bから出る。
【0072】
円筒端面811は、ストッパ部811cを有する。ストッパ部811cは、接触子822の周方向の角度範囲を限定する。
【0073】
上記のように構成された付勢部4及び制動部5の動作を時系列順に説明する(
図10~
図13参照)。可動アーム2が押されると、可動アーム2が水平回転する。可動アーム2とともに筐体7もメインシャフト33に対して回転する。メインシャフト33に対する可動アーム2の回転は、プーリー54を介して回転角度センサ51に伝達される。可動アーム2の回転により、カムフォロア82がカム81に対して回転し、接触子822(ローラ)が円筒端面811の傾斜811aを上がる。接触子822が付いたスライドプレート821が上昇し、スライドプレート821とともに、リニアブッシュブラケット83とリニアブッシュ84が上昇する。これにより、弾性体9(圧縮コイルばね)の可動端91が上昇し、弾性体9が圧縮される。
【0074】
そして、可動アーム2が押されなくなると、制動部5の制御部53は、回転角度センサ51(可変抵抗器)が検知した偏角θから回転の終了を検出し、モータ52で可動アーム2を制動する。
【0075】
そして、所定時間が経過すると、制動部5は、制動を解除する。圧縮された弾性体9の弾性力がリニアブッシュ84を押し、その力は、リニアブッシュブラケット83、スライドプレート821、接触子822の順に伝達される。接触子822が円筒端面811の傾斜811aを下がり、可動アーム2が回転する。そして、可動アーム2が定位置に戻る。
【0076】
なお、一般的な円筒カムは、カム(原動節)の回転運動をカムフォロア(従動節)の直線運動に変換する。これに対して、本実施形態の円筒カム8では、カム81が固定され、カムフォロア82が回転運動と直線運動を同時にすることにより、回転運動と直線運動が相互に変換される。円筒カムにおいて、回転運動と直線運動は、カムとカムフォロアとの間の相対的な運動だからである。
【0077】
以上、本実施形態に係るゲート装置1によれば、可動アーム2が水平回転するので、可動アーム2を持ち上げるために外部からエネルギーを供給する必要がない。また、可動アーム2は、定位置において通路を閉じ、押されることによってその定位置からの偏角θが変化するので、可動アーム2の開閉を指令する装置が不要である。したがって、このゲート装置1は、設置が極めて容易である。さらに、可動アーム2が押された後に偏角θが変化しなくなった時、その偏角θが所定時間保持されるので、可動アーム2が開いた後に直ぐに閉じず、通行が容易である。
【0078】
可動アーム2は、偏角θが所定の非検知範囲内であるとき、制動部5は制動しないので、風等により非検知範囲内で開いたとき、付勢力によって定位置に戻る。
【0079】
制動部5は、可動アーム2を制動している時に可動アーム2が開く方向に押されたとき、所定時間の経過を待たずに、制動を解除するので、通行者は、可動アーム2をさらに押し開くことができる。
【0080】
制動部5は、可動アーム2を制動している時に可動アーム2が閉じる方向に押されたとき、所定時間の経過を待たずに、制動を解除することにより、反対側に通行しようとする通行者が可動アーム2を反対側に押し戻すことが一層容易になる。
【0081】
制動部5は、モータ52で制動トルクを発生する。一般的にモータは、回転子と固定子が直接結合されておらず、過負荷ですべりを生じる。このため、制動中に可動アーム2が強く押されても、制動部5が機械的に壊れることが防がれる。
【0082】
制動部5の回転角度センサ51は、可変抵抗器で偏角θを検知するので、構造がシンプルであり、低コストである。
【0083】
付勢部4は、弾性体9で付勢力を発生するので、ゲート装置1は、可動アーム2を定位置に戻す動作が省エネルギーである。
【0084】
弾性体9は、ばねであるので、弾性係数の設定が容易であり、また、耐久性が高い。
【0085】
円筒カム8は、円筒端面カムであり、円筒端面811にカム曲線が形成されるので、カム曲線の形状により、可動アーム2の偏角θに対する付勢力を容易に設定することができる。
【0086】
円筒カム8のカム曲線の傾斜は、可動アーム2の偏角θの絶対値が大きいほど緩やかであるので、偏角θの絶対値が大きいときに可動アーム2を押し開くために必要な力の増大が緩和される。
【0087】
円筒端面811は、可動アーム2の定位置において接触子822がはまり込む凹部811bを有するので、可動アーム2は、定位置において安定に静止する。
【0088】
円筒端面811は、接触子822の周方向の角度範囲を限定するストッパ部811cを有するので、可動アーム2が回転する角度範囲が限定される。
【0089】
電源部6は、ソーラーパネル61と蓄電部62とを有するので、外部からの電源供給が不要であり、ゲート装置1の設置が容易になる。
【0090】
ゲート装置1を第4種踏切道に設置することにより、通行者に一時停止を促すことができ、踏切事故防止に寄与する。また、ゲート装置1は、警報音や光を発生せず、可動アーム2を押せば通行できるので、設置することへの地元の同意が得られやすい。
【0091】
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限られず、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、付勢部4の円筒カム8は、円筒端面カムに限定されず、円筒状のカムの側面にカム曲線の形状の溝を形成した円筒溝カムであってもよい。また、付勢部4は、圧縮コイルばね及び円筒カム8を用いて付勢力を発生する構成に限定されず、例えば、ねじりばねを用いてもよく、錘及び滑車を用いてもよい。また、ゲート装置1を第4種踏切道以外に設置してもよい。
【符号の説明】
【0092】
1 ゲート装置
2 可動アーム
3 支持部
4 付勢部
5 制動部
51 回転角度センサ
52 モータ
53 制御部
6 電源部
61 ソーラーパネル
62 蓄電部
8 円筒カム
81 カム
811 円筒端面
811a カム曲線の傾斜
811b 凹部
811c ストッパ部
82 カムフォロア
822 接触子(ローラ)
9 弾性体
θ 偏角