(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114510
(43)【公開日】2022-08-08
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 9/00 20060101AFI20220801BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20220801BHJP
C08K 5/053 20060101ALI20220801BHJP
C08K 5/54 20060101ALI20220801BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
C08L9/00
C08K3/36
C08K5/053
C08K5/54
B60C1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021010784
(22)【出願日】2021-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】鹿久保 隆志
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA01
3D131AA02
3D131BA02
3D131BA05
3D131BA12
3D131BB03
3D131BB04
3D131BC02
3D131BC33
3D131BC39
4J002AC01W
4J002AC03Y
4J002AC06Z
4J002AC08X
4J002DJ016
4J002EC007
4J002EX008
4J002FD016
4J002FD157
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】近年、重荷重用または建設車両用の空気入りタイヤにおいて、天然ゴムにシリカを配合する事例が増加している。しかし、天然ゴム中にシリカを良好に分散させるのは極めて困難であり、例えばシランカップリング剤を使用しても所望の分散性を得るのは難しい。
【解決手段】天然ゴムを50質量部以上含むジエン系ゴム100質量部に対し、特定のアセチレン系化合物を0.1~20質量部、シリカを20~120質量部、およびシランカップリング剤を1~15質量部配合してなるタイヤ用ゴム組成物によって上記課題を解決した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴムを50質量部以上含むジエン系ゴム100質量部に対し、
下記式(1)で表されるアセチレン系化合物を0.1~20質量部、
シリカを20~120質量部、および
シランカップリング剤を1~15質量部
配合してなることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
【化1】
(式(1)中、m+nは0~20である)
【請求項2】
前記ジエン系ゴム100質量部に対し、カーボンブラックを5~60質量部配合してなることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記ジエン系ゴム100質量部中、天然ゴムが70質量部以上を占め、残部がスチレン-ブタジエン共重合体ゴム、ブタジエンゴムおよび合成イソプレンゴムから選択された1種以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記式(1)で表されるアセチレン系化合物において、m+nが1~20であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のゴム組成物を使用したタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤに関するものであり、詳しくは、天然ゴムを配合した場合であっても耐摩耗性に優れ、モジュラスが向上し、かつ低発熱性を有するタイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、重荷重用または建設車両用の空気入りタイヤにおいて、天然ゴムにシリカを配合する事例が増加している(例えば特許文献1参照)。しかし、天然ゴム中にシリカを良好に分散させるのは極めて困難であり、例えばシランカップリング剤を使用しても所望の分散性を得るのは難しい。
一方、タイヤ用ゴム組成物は、高モジュラスであるとともに、低転がり抵抗性を獲得して環境負荷を低減するという観点から、低発熱性であることも要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって本発明の目的は、天然ゴムを配合した場合であっても耐摩耗性に優れ、モジュラスが向上し、かつ低発熱性を有するタイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、天然ゴム、シリカおよびシランカップリング剤を特定量で配合するとともに、特定の構造を有するアセチレン系化合物を特定量でもって配合したゴム組成物が、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
【0006】
すなわち本発明は、天然ゴムを50質量部以上含むジエン系ゴム100質量部に対し、
下記式(1)で表されるアセチレン系化合物を0.1~20質量部、
シリカを20~120質量部、および
シランカップリング剤を1~15質量部
配合してなることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物を提供するものである。
【0007】
【0008】
(式(1)中、m+nは0~20である)
【発明の効果】
【0009】
本発明のゴム組成物は、天然ゴム、シリカおよびシランカップリング剤を特定量で配合するとともに、前記式(1)で表される特定の構造を有するアセチレン系化合物を特定量でもって配合したので、耐摩耗性に優れ、モジュラスが向上し、かつ低発熱性を有するタイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤを提供することができる。
一般的に、天然ゴムとカーボンブラックとは親和性を有することが知られている。一方、本発明における前記式(1)で表されるアセチレン系化合物は、カーボンブラックとシリカとの親和性を高めることができ、結果として天然ゴム中にシリカを良好に分散させることができる。このように、本発明のゴム組成物がとくにカーボンブラックを含有する場合、優れた効果を奏することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
(ジエン系ゴム)
本発明で使用されるジエン系ゴムは、天然ゴム(NR)を必須成分とする。NRの配合量は、ジエン系ゴム全体を100質量部としたときに、50質量部以上が好ましく、70質量部以上がさらに好ましい。
また、本発明の効果向上の観点から、ジエン系ゴム100質量部中、天然ゴムが70質量部以上を占め、残部がスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)および合成イソプレンゴム(IR)から選択された1種以上であることが好ましい。
また、本発明で使用されるジエン系ゴムは、上記以外にも、ゴム組成物に配合することができる任意のジエン系ゴムを用いることができ、例えば、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ゴム(NBR)、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー(EPDM)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、その分子量やミクロ構造はとくに制限されず、アミン、アミド、シリル、アルコキシシリル、カルボキシル、ヒドロキシル基等で末端変性されていても、エポキシ化されていてもよい。
【0011】
(アセチレン系化合物)
本発明で使用されるアセチレン系化合物は、下記式(1)で表される。
【0012】
【0013】
式(1)中、m+nは0~20であり、好ましくは1~20であり、さらに好ましくは2~12である。m+nが1以上、すなわちエチレンオキサイド基を含有するアセチレン系化合物は、シリカの分散性をさらに良好にすることができる。
本発明で使用されるアセチレン系化合物は、市販されているものを利用することができ、例えば川研ファインケミカル株式会社製商品名アセチレノール、エボニックインダストリーズ社製商品名サーフィノール等が挙げられる。
【0014】
(シリカ)
本発明で使用されるシリカとしては、本発明の効果向上の観点から、CTAB吸着比表面積が100~240m2/gであるのが好ましく、120~220m2/gであるのがさらに好ましい。
なお、CTAB吸着比表面積は、シリカ表面への臭化n-ヘキサデシルトリメチルアンモニウムの吸着量をJIS K6217-3:2001「第3部:比表面積の求め方-CTAB吸着法」にしたがって測定した値である。
【0015】
(シランカップリング剤)
本発明で使用されるシランカップリング剤としては、とくに制限されないが、含硫黄シランカップリング剤が好ましく、例えばビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイル-テトラスルフィド、トリメトキシシリルプロピル-メルカプトベンゾチアゾールテトラスルフィド、トリエトキシシリルプロピル-メタクリレート-モノスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイル-テトラスルフィド、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン等を例示することができる。シランカップリング剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0016】
(カーボンブラック)
本発明のゴム組成物は、カーボンブラックを配合することができる。カーボンブラックは、本発明の効果向上の観点から、窒素吸着比表面積(N2SA)が30~180m2/gであるのが好ましく、40~140m2/gであるのがさらに好ましい。
なお窒素吸着比表面積(N2SA)は、JIS K 6217-2:2001「第2部:比表面積の求め方-窒素吸着法-単点法」にしたがって測定した値である。
【0017】
(ゴム組成物の配合割合)
本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴム100質量部に対し、前記式(1)で表されるアセチレン系化合物を0.1~20質量部、シリカを20~120質量部、およびシランカップリング剤を1~15質量部配合してなることを特徴とする。
ジエン系ゴム100質量部に対し、アセチレン系化合物の配合量が0.1質量部未満では、配合量が少なすぎて本発明の効果を奏することができず、逆に20質量部を超えると耐摩耗性が悪化する。
シリカの前記配合量が20質量部未満では、ゴム組成物の機械的特性や耐摩耗性が悪化し、逆に120質量部を超えると破断物性が悪化する。
シランカップリング剤の前記配合量が1質量部未満では、配合量が少なすぎて本発明の効果を奏することができず、逆に15質量部を超えると破断物性が悪化する。
【0018】
アセチレン系化合物の配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、0.5~15質量部が好ましく、1~10質量部がさらに好ましい。
シリカの配合量の配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、40~80質量部が好ましい。
シランカップリング剤の配合量の配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、1~10質量部が好ましい。
カーボンブラックを配合する場合、その配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、5~60質量部が好ましく、10~50質量部がさらに好ましい。
【0019】
(その他成分)
本発明におけるゴム組成物には、前記した成分に加えて、加硫又は架橋剤;加硫又は架橋促進剤;酸化亜鉛;老化防止剤;可塑剤などのゴム組成物に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0020】
また本発明のタイヤは、本発明のゴム組成物を使用して調製することができ、空気入りタイヤであることが好ましく、空気、窒素等の不活性ガス及びその他の気体を充填することができる。また本発明のタイヤは、トレッド、とくに重荷重用または建設車両用タイヤのキャップトレッドに適用するのがよい。
【実施例0021】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0022】
実施例1~15、比較例1~2
表1、2に示す配合(質量部)において、加硫系(加硫促進剤、硫黄)と硬化剤を除く成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練した後、ミキサー外に放出させて室温冷却した。続いて、該組成物を同バンバリーミキサーに再度入れ、加硫系を加えて混練し、ゴム組成物を得た。得られたゴム組成物を160℃、20分の条件でプレス加硫し、以下に示す試験法で物性を測定した。
【0023】
発熱性:(株)東洋精機製作所製の粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪=10%、振幅=±2%、周波数=20Hzの条件下でtanδ(60℃)を測定し、この値をもって発熱性を評価した。結果は、比較例1または2の値を100として指数で示した。指数が小さいほど、低発熱性であることを示す。
100%モジュラス(M100):JIS K6251に従い、23℃にて引張試験を実施し、伸び100%時の引張応力を測定した。結果は、比較例1または2を100として指数で示した。指数が大きいほど、高モジュラスであることを示す。
耐摩耗性:JIS K6264-2に準拠して、岩本製作所社製ランボーン摩耗試験機を使用し、荷重49N、スリップ率25%、時間4分、室温の条件で測定した。結果は、比較例1または2の値を100として指数で示した。指数が大きいほど耐摩耗性に優れることを意味する。
結果を表1、2に示す。なお、比較例1は、実施例1~7と比較され、比較例2は、実施例8~15と比較される。
【0024】
【0025】
【0026】
*1:NR(STR20)
*2:SBR(日本ゼオン株式会社製Nipol 1502)
*3:シリカ(UNITED SILICA INDUSTRIAL社製ULTRASIL VN-3G、CTAB比表面積=147m2/g)
*4:カーボンブラック(東海カーボン株式会社製シーストKH、N2SA=92m2/g)
*5:酸化亜鉛(正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種)
*6:ステアリン酸(日油(株)製ビーズステアリン酸)
*7:老化防止剤(フレキシス社製サントフレックス6PPD)
*8:シランカップリング剤(エボニックデグッサジャパン社製Si69)
*9:硫黄(四国化成工業株式会社製ミュークロンOT-20)
*10:加硫促進剤(大内新興化学工業(株)製ノクセラーCZ-G)
*11:アセチレン系化合物1(川研ファインケミカル株式会社製商品名アセチレノールE60、式(1)で表されるアセチレン系化合物において、m=3、n=3の化合物)
*12:アセチレン系化合物2(川研ファインケミカル株式会社製商品名アセチレノールE100、式(1)で表されるアセチレン系化合物において、m=5、n=5の化合物)
*13:アセチレン系化合物3(川研ファインケミカル株式会社製商品名アセチレノールE00、式(1)で表されるアセチレン系化合物において、m=0、n=0の化合物)
【0027】
表1、2の結果から、各実施例のゴム組成物は、天然ゴムを50質量部以上含むジエン系ゴム100質量部に対し、前記式(1)で表されるアセチレン系化合物を0.1~20質量部、シリカを20~120質量部、およびシランカップリング剤を1~15質量部配合してなるものであるので、比較例1または2に比べて、耐摩耗性に優れ、モジュラスが向上し、かつ低発熱性を有する。
なお、比較例1、2は、前記式(1)で表されるアセチレン系化合物を配合していない例である。