(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114515
(43)【公開日】2022-08-08
(54)【発明の名称】転がり軸受
(51)【国際特許分類】
F16C 41/00 20060101AFI20220801BHJP
F16C 19/16 20060101ALI20220801BHJP
F16C 33/58 20060101ALI20220801BHJP
G01L 5/00 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
F16C41/00
F16C19/16
F16C33/58
G01L5/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021010792
(22)【出願日】2021-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 陽平
【テーマコード(参考)】
2F051
3J217
3J701
【Fターム(参考)】
2F051AB06
2F051BA07
3J217JA14
3J217JA24
3J217JB16
3J701AA02
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA62
3J701BA54
3J701BA56
3J701FA25
(57)【要約】
【課題】外輪にセンサを設けることによる外輪の強度低下や変形を抑制することができる転がり軸受を提供する。
【解決手段】 転がり軸受1は、転動体4と、転動体4が転動する内輪軌道2aを有する内輪2と、内輪2に同心に配置され、転動体4が転動する外輪軌道3aを有する外輪3と、を備える。外輪3は、外輪軌道3aを有する外輪本体10と、面状のセンサ本体14aを有し、センサ本体14aの静電容量がセンサ本体14aの変形に応じて変化するセンサ14と、外輪本体10の外周面10aを覆うように設けられ、センサ本体14aを外輪本体10の外周側で保持する樹脂からなる円筒部材12と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転動体と、
前記転動体が転動する内側軌道を有する内輪と、
前記内輪に同心に配置され、前記転動体が転動する外側軌道を有する外輪と、
を備え、
前記外輪は、
前記外側軌道を有する外輪本体と、
面状のセンサ本体を有し、前記センサ本体の静電容量が前記センサ本体の変形に応じて変化するセンサと、
前記外輪本体の外周面を覆うように設けられ、前記センサ本体を前記外輪本体の外周側で保持する樹脂からなる円筒部材と、
を備える
転がり軸受。
【請求項2】
前記円筒部材は、弾性を有する誘電体からなる保持部材を介して前記センサ本体を保持する
請求項1に記載の転がり軸受。
【請求項3】
前記センサ本体は、
ポリスチレンスルホン酸を混和したポリエチレンジオキシチオフェンを含む一対の電極層と、
前記一対の弾性電極層間に介在するとともにシリコーンゴム、ウレタンゴム、ニトリルゴムの少なくともいずれかを含む誘電体層と、
を備える
請求項1又は請求項2に記載の転がり軸受。
【請求項4】
前記円筒部材は、前記円筒部材の外周面に凹部を有し、
前記センサ本体は、前記凹部内で保持されている
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の転がり軸受。
【請求項5】
前記円筒部材は、前記凹部の内側面と前記円筒部材の側面との間に亘って切り欠かれた切欠部を有する
請求項4に記載の転がり軸受。
【請求項6】
前記円筒部材は、外周壁部と、前記外周壁部との間で内部空間を構成する内周壁部と、を有し、
前記センサ本体は、前記内部空間内で保持されている
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の転がり軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転がり軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、面状の静電容量型センサが開示されている。このような面状の静電容量型センサは、構造部材に取り付け、その変形や歪みを検出するためのセンサとして用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第WO2011/125725号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような静電容量型センサを、例えば、転がり軸受の軌道輪の周面に設ければ、軌道輪に生じる変形や歪みを示す情報、あるいは、転がり軸受が支持する部材から与えられる荷重等を示す情報を取得することができる。
例えば、静電容量型センサを、転がり軸受の外輪の外周面に設ける場合、外周面の一部に溝を設け、その溝に静電容量型センサを設けることが考えられる。
【0005】
しかし、外輪の外周面の一部に溝を設ければ、外輪の強度が低下したり、変形が生じたりするおそれが生じる。
本開示は、このような事情を鑑みてなされたものであり、外輪にセンサを設けたことによる外輪の強度低下や変形を抑制することができる転がり軸受を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態である転がり軸受は、
転動体と、
前記転動体が転動する内側軌道を有する内輪と、
前記内輪に同心に配置され、前記転動体が転動する外側軌道を有する外輪と、
を備え、
前記外輪は、
前記外側軌道を有する外輪本体と、
面状のセンサ本体を有し、前記センサ本体の静電容量が前記センサ本体の変形に応じて変化するセンサと、
前記外輪本体の外周面を覆うように設けられ、前記センサ本体を前記外輪本体の外周側で保持する樹脂からなる円筒部材と、
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、外輪にセンサを設けたことによる外輪の強度低下や変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る転がり軸受の一例を示す正面図である。
【
図4】
図4は、円筒部材における凹部の部分を示す周方向に沿った断面図である。
【
図5】
図5は、
図4中、センサ本体の部分を拡大した断面図である。
【
図6】
図6は、転がり軸受1を無負荷で回転させたときにおけるセンサ本体により得られる静電容量の測定結果の一例を示すグラフであり、(a)は、転がり軸受の回転数を徐々に大きくしたときの静電容量の経時変化を示すグラフ、(b)は、転がり軸受の回転数を徐々に小さくしたときの静電容量の経時変化を示すグラフである。
【
図7】
図7は、他の実施形態に係る円筒部材の周方向に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
最初に実施形態の内容を列記して説明する。
[実施形態の概要]
(1)実施形態である転がり軸受は、
転動体と、
前記転動体が転動する内側軌道を有する内輪と、
前記内輪に同心に配置され、前記転動体が転動する外側軌道を有する外輪と、
を備え、
前記外輪は、
前記外側軌道を有する外輪本体と、
面状のセンサ本体を有し、前記センサ本体の静電容量が前記センサ本体の変形に応じて変化するセンサと、
前記外輪本体の外周面を覆うように設けられ、前記センサ本体を前記外輪本体の外周側で保持する樹脂からなる円筒部材と、
を備える。
【0010】
上記構成によれば、外輪本体の外周面を覆うように設けられる樹脂からなる円筒部材によってセンサを保持することができるので、外側軌道を有する外輪本体の外周面にセンサを設けるための溝等を設ける必要がない。
この結果、外輪にセンサを設けたことによる外輪全体としての強度低下や変形を抑制することができる。
【0011】
(2)上記転がり軸受において、
前記円筒部材は、弾性を有する誘電体からなる保持部材を介して前記センサ本体を保持することが好ましい。
この場合、センサは、保持部材に伝達する外輪の変形や歪みを静電容量の変化として出力する。つまり、センサは、円筒部材に接触する保持部材の接触面から伝達する外輪の変形や歪みを静電容量の変化として出力することができる。
よって、円筒部材に接触する保持部材の接触面をより広範囲にすることで、センサによって外輪の変形や歪みを検出可能な検出範囲を広くすることができる。
【0012】
(3)上記転がり軸受において、
前記センサ本体は、
ポリスチレンスルホン酸を混和したポリエチレンジオキシチオフェンを含む一対の電極層と、
前記一対の弾性電極層間に介在するとともにシリコーンゴム、ウレタンゴム、ニトリルゴムの少なくともいずれかを含む誘電体層と、
を備えていてもよい。
この場合、フィルム片等の表面に容易に電極層を形成することができ、センサ本体の薄肉化を図ることができる。
【0013】
(4)上記転がり軸受において
前記円筒部材は、前記円筒部材の外周面に凹部を有し、
前記センサ本体は、前記凹部内で保持されていてもよい。
この場合、センサ本体を円筒部材の内部に容易に設けることができる。
【0014】
(5)上記転がり軸受において、
前記円筒部材は、前記凹部の内側面と前記円筒部材の側面との間に亘って切り欠かれた切欠部を有していてもよい。
この場合、一対の電極層と、前記一対の電極層が接続される装置とを接続するためのリード端子を円筒部材の側面側から外部へ引き出すことができる。これにより、転がり軸受が装着されるハウジング等に干渉することなく、リード端子を外部へ引き出すことができる。
【0015】
(6)上記転がり軸受において、
前記円筒部材は、外周壁部と、前記外周壁部との間で内部空間を構成する内周壁部と、を有し、
前記センサ本体は、前記内部空間内で保持されていてもよい。
この場合、センサ本体を円筒部材の内部空間に収容することができ、センサ本体を外部環境から遮断するのが容易となる。
【0016】
[実施形態の詳細]
以下、好ましい実施形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、以下に記載する各実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0017】
図1は、実施形態に係る転がり軸受の一例を示す正面図であり、
図2は、
図1中、II-II線矢視断面図である。
本実施形態において、転がり軸受1の中心線Cに沿った方向及び中心線Cに平行な方向を「軸方向」と定義する。また、中心線Cに直交する方向を「径方向」と定義し、中心線Cを中心とする円に沿う方向を「周方向」と定義する。
【0018】
図1及び
図2中、転がり軸受1は、内輪2と、外輪3と、複数の転動体4とを備える。
内輪2は、軸受鋼や機械構造用鋼等を用いて形成された環状の部材であり、その外周には、複数の転動体4が転動する内輪軌道2aが設けられている。
外輪3は、環状の部材であり、内輪2に同心に配置されている。外輪3の内周には、内輪軌道2aに対向し複数の転動体4が転動する外輪軌道3aが設けられている。
複数の転動体4は、軸受鋼等を用いて形成された部材であり、内輪2及び外輪3の間に介在し、内輪軌道2a及び外輪軌道3aを転動する。複数の転動体4は図示しない保持器によって周方向に一定の間隔で保持されている。
【0019】
外輪3は、外輪軌道3aを有する外輪本体10と、外輪本体10の外周側に設けられた円筒部材12と、静電容量型センサ14とを備える。
【0020】
外輪本体10は、軸受鋼や機械構造用鋼等を用いて形成された環状の部材であり、内周面に外輪軌道3aを有している。
円筒部材12は、ポリアミドや、ポリアセタールといった樹脂を用いて形成された環状の部材であり、外輪本体10の外周面10aを覆うように設けられている。
円筒部材12は、外輪本体10と転がり軸受1が装着されるハウジングとの間に介在することでクリープを防止する。
円筒部材12は、射出成形等によって外輪本体10の外周面10a上に形成されている。
【0021】
円筒部材12は、外周面12aに凹部16を有する。
図3は、円筒部材12の凹部16を示す図である。なお、
図3では、理解を容易とするため、凹部16内に収容される部材を省略し、又は、分解して示している。
円筒部材12の外周面12aは、円筒部15と、凹部16とを有する。
凹部16は、円筒部15に対して径方向に凹んでいる。凹部16は、周方向に沿って矩形状に延びている。
また、円筒部材12には、凹部16の周方向に沿う内側面16aと、円筒部材12の側面12bとの間に亘って切り欠かれた切欠部18が設けられている。
【0022】
静電容量型センサ14は、凹部16内で保持されている。
図4は、円筒部材12における凹部16の部分を示す周方向に沿った断面図である。
図4に示すように、静電容量型センサ14(以下、単にセンサ14ともいう)は、凹部16内で保持されている。これにより、円筒部材12は、センサ14を外輪本体10の外周側で保持する。
凹部16内には、センサ14を保持するための保持部材20が設けられている。保持部材20は、弾性を有する誘電体により形成されている。弾性を有する誘電体としては、シリコーンゴムや、ウレタンゴム、ニトリルゴム等のエラストマーが用いられる。
保持部材20は、凹部16及び切欠部18の内部空間に充填されており、保持部材20の外面20aは、円筒部15と面一となっている。
【0023】
センサ14は、保持部材20内に埋め込まれており、これによってセンサ14は、保持部材20によって保持されている。このように、円筒部材12は、保持部材20を介してセンサ14を保持する。
【0024】
本実施形態では、外輪本体10の外周面10aを覆うように設けられる樹脂からなる円筒部材12によってセンサ14を保持することができるので、外輪軌道3aを有する金属製の外輪本体10の外周面10aにセンサ14を設けるための溝等を設ける必要がない。
この結果、外輪3にセンサ14を設けることによる外輪3全体としての強度低下や変形を抑制することができる。
【0025】
また、本実施形態では、センサ本体14aが凹部16内で保持されるので、センサ本体14aを円筒部材12の外周側から凹部16内に配置することができ、センサ本体14aを円筒部材12の内部に容易に設けることができる。
【0026】
図2に示すように、センサ14は、面状(矩形帯状)のセンサ本体14aと、センサ本体14aから延びる一対のリード端子14bとを有する。
一対のリード端子14bは、
図1及び
図2に示すように、切欠部18を通過して円筒部材12の側面12bから突出している。
一対のリード端子14bは、センサ14からの信号を受け付けて処理を行う処理装置100に接続される。
【0027】
センサ本体14aは、
図4に示すように、周方向に沿って円弧状となるように保持部材20に保持されている。センサ本体14aの短辺は軸方向に沿っており、センサ本体14aの長辺は周方向に沿っている。
【0028】
図5は、
図4中、センサ本体14aの部分を拡大した断面図である。
図5中、センサ本体14aは、第1フィルム片24と、第1電極層26と、誘電体層28と、第2電極層30と、第2フィルム片32とを有する。
図5に示すように、各相は積層されている。
【0029】
第1フィルム片24は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)からなるフィルムを矩形帯状に形成した小片である。第1フィルム片24の厚みは、第1フィルム片24が弾性変形可能であるとともに、第1電極層26が積層された状態で第1フィルム片24の形態を維持する程度に弾性復元力を有する値にされている。第1フィルム片24の厚みは、例えば、50ミクロン以上、150ミクロン以下とすることが好ましい。より好ましくは、100ミクロンである。第1フィルム片24の厚みが50ミクロンよりも小さい場合、第1フィルム片24は自重によって弾性変形し、自己の形態を維持できないおそれがある。また、第1フィルム片24の厚みが150ミクロンよりも大きい場合、第1フィルム片24の剛性が大きくなりすぎ、構造部材の変形に対する感度を低下させるおそれがある。第1フィルム片24の厚みを50ミクロン以上、150ミクロン以下とすることで、一定の形態を保持できる程度の剛性としつつ構造部材の変形に対する感度を適切に維持することができる。
【0030】
第1電極層26は、第1フィルム片24の一面24aに設けられている。
第1電極層26は、有機導電性高分子により構成されている。有機導電性高分子は、導電性を有している。よって、第1電極層26は、導電性を有する。
有機導電性高分子としては、PSS(ポリスチレンスルホン酸)を混和したPEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)が用いられる。
第1電極層26の厚みは、0.2~0.5ミクロン程度である。
【0031】
第2フィルム片32も、第1フィルム片24と同様、PETからなるフィルムを矩形帯状に形成した小片である。第2フィルム片32の幅寸法及び長手方向の寸法は、第1フィルム片24とほぼ同じである。
第2電極層30は、第2フィルム片32の一面32aに設けられている。
第2電極層30は、第1電極層26と同様、有機導電性高分子により構成される。第2電極層の厚みは、0.2~0.5ミクロン程度である。
【0032】
このように、本実施形態では、両電極層26、30を、PSSを混和したPEDOTで構成することで、フィルム片24、32の表面に容易に電極層26、30を形成することができ、センサ14(センサ本体14a)の薄肉化を図ることができる。
【0033】
誘電体層28は、第1電極層26及び第2電極層30の間に介在している。誘電体層28は、弾性を有する誘電体により形成されている。弾性を有する誘電体としては、シリコーンゴムや、ウレタンゴム、ニトリルゴム等のエラストマーが用いられる。
誘電体層28の厚みは、100~200ミクロン程度である。
【0034】
図3に示すように、センサ14は、一面24aに第1電極層26が設けられた第1フィルム片24と、一面32aに第2電極層30が設けられた第2フィルム片32との間に誘電体層28を形成し、両フィルム片24、32を貼り合わせるように積層することで形成される。
第1フィルム片24は、一対のリード端子14bのうちの一方のリード端子14bを有する。
第2フィルム片32は、一対のリード端子14bのうちの他方のリード端子14bを有する。
第1フィルム片24の一面24aに設けられた第1電極層26は一方のリード端子14bの一面にも一体的に形成されている。第2フィルム片32の一面32aに設けられた第2電極層30は他方のリード端子14bの一面にも一体的に形成されている。
よって、両電極層26、30は、一対のリード端子14bを通じて処理装置100に電気的に接続することができる。
一対のリード端子14bは、上述したように、切欠部18を通過して円筒部材12の側面12bから突出している。
【0035】
本実施形態では、円筒部材12が切欠部18を有しているので、一対の電極層26、b0と、一対の電極層26、30がリード端子14bを円筒部材12の側面12b側から外部へ引き出すことができる。これにより、転がり軸受1が装着されるハウジング等に干渉することなく、リード端子14bを外部へ引き出すことができる。
【0036】
上記構成の静電容量型センサ14は、第1電極層26と、第2電極層30と、これら電極層26、30の間に介在する誘電体層28とを備えた面状のセンサ本体14aを有しており、センサ本体14aの静電容量がセンサ本体14aの変形に応じて変化するセンサを構成する。
【0037】
第1電極層26及び第2電極層30は、第1フィルム片24及び第2フィルム片32とともに弾性変形する。
センサ本体14aが変形すると、第1電極層26と第2電極層30との間隔や、第1電極層26及び第2電極層30の面積に変化が生じる。これにより、センサ本体14aの静電容量はセンサ本体14aの変形に応じて変化する。
【0038】
よって、外輪3に変形や歪みが生じると、それに応じて円筒部材12及び保持部材20にも変形や歪みが生じる。保持部材20は、センサ本体14aと、円筒部材12との間に介在してセンサ本体14aを保持するので、保持部材20に変形や歪が生じると、センサ本体14aにその変形や歪が伝達しセンサ本体14aの静電容量も変化する。
よって、センサ14は、保持部材20に伝達する外輪3の変形や歪みを静電容量の変化として出力する。つまり、センサ14は、円筒部材12に接触する保持部材20の接触面から伝達する外輪3の変形や歪みを静電容量の変化として出力することができる。
よって、円筒部材12に接触する保持部材20の接触面をより広範囲にすることで、センサ14によって外輪3の変形や歪みを検出可能な検出範囲を広くすることができる。
【0039】
センサ14の出力は、処理装置100によって取得される。処理装置100は、センサ14に所定の交流電圧を印加する。センサ14は、印可された交流電圧に応じてセンサ本体14aの静電容量を示す信号を処理装置100へ出力する。
処理装置100は、センサ14から与えられる出力に基づいて、外輪3の変形や歪を示す静電容量の変化を取得する。
【0040】
図6は、転がり軸受1を無負荷で回転させたときにおけるセンサ本体14aにより得られる静電容量の測定結果の一例を示すグラフであり、(a)は、転がり軸受1の回転数を徐々に大きくしたときの静電容量の経時変化を示すグラフ、(b)は、転がり軸受1の回転数を徐々に小さくしたときの静電容量の経時変化を示すグラフである。
【0041】
図6(a)では、1400r/minから2500r/minまで回転数を大きくした場合を示している。また、
図6(b)では、2500r/minから400r/minまで回転数を小さくした場合を示している。
これらを見ると、回転数が相対的に大きい場合、小さい場合と比較して静電容量の変化の振れ幅が大きくなっていることが判る。つまり、回転数が相対的に大きい場合に、外輪3の変形や歪みが小さくなり、回転数が相対的に小さい場合に、外輪3の変形や歪みが大きくなることが判る。
このように、本実施形態では、外輪3に生じる変形や歪みを示す情報を取得することができる。
【0042】
図7は、他の実施形態に係る円筒部材12の周方向に沿った断面図である。
本実施形態は、円筒部材12が内部空間40を有している点、及びセンサ14が内部空間40内で保持されている点において上記実施形態と相違する。
【0043】
図7に示すように、円筒部材12は、周方向の一部に外周壁部12dと、外周壁部12dに対向する内周壁部12eとを有する。
内部空間40は、外周壁部12dと内周壁部12eとの間で構成される空間である。
内部空間40には、保持部材20が充填されている。センサ14(センサ本体14a)は、周方向に沿って円弧状となるように保持部材20に保持されている。
この場合、センサ本体14a及び保持部材20を内部空間40に収容することができるので、センサ本体14aを外部環境から遮断するのが容易となる。
【0044】
円筒部材12には、内部空間40と、外部とを連通する貫通孔(図示せず)が設けられる。この貫通孔は、円筒部材12の側面12bに開口する。貫通孔には、一対のリード端子14bが挿通されて外部へ引き出される。
【0045】
なお、本発明は、上記各実施形態に限定されることはない。
上記各実施形態では、センサ本体14aが、周方向に沿って円弧状となるように保持される場合を例示したが、センサ本体14aを凹部16内又は内部空間40内において直線状となるように配置してもよい。
また、上記各実施形態では、センサ本体14aが、センサ本体14aの短辺が軸方向に沿うように保持される場合を例示したが、センサ本体14aの短辺が軸方向に対して交差する方向に沿うようにセンサ本体14aを凹部16内又は内部空間40内に配置してもよい。
このように、センサ本体14aを、直線状に配置したり、短辺が軸方向に対して交差する方向に沿うように配置したりすることで、センサ本体14aに径方向や周方向以外の歪みや変形を取得するための感度を高めることができる。
【0046】
また、上記各実施形態では、円筒部材12は、保持部材20を介してセンサ14を保持する場合を例示したが、センサ14を凹部16の内面及び内部空間40の内面に直接設けてもよい。
また、例えば、内外輪2、3間に内外輪2、3の相対回転によって発電する発電ユニットを設けてもよい。この場合、発電ユニットは、センサ14に印加するための所定の交流電圧を発生させる。これによって、センサ14に対して外部から交流電圧を印加する必要がなくなる。
また、発電ユニットとともに、センサ14から得られる出力を外部へ送信する無線送信機を設けてもよい。この場合、センサ14を外部の処理装置100に配線等によって接続せずともセンサ14からの出力を得ることができる。
【0047】
本発明の権利範囲は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0048】
1 転がり軸受
2 内輪
2a 内輪軌道
3 外輪
3a 外輪軌道
4 転動体
10 外輪本体
10a 外周面
12 円筒部材
12a 外周面
12b 側面
12d 外周壁部
12e 内周壁部
14 静電容量型センサ
14a センサ本体
14b リード端子
15 円筒部
16 凹部
16a 内側面
18 切欠部
20 保持部材
20a 外面
24 第1フィルム片
24a 一面
26 第1電極層
28 誘電体層
30 第2電極層
32 第2フィルム片
32a 一面
40 内部空間
100 処理装置
C 中心線