IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工業株式会社の特許一覧

特開2022-114525積層構造体の造形方法及び積層構造体
<>
  • 特開-積層構造体の造形方法及び積層構造体 図1
  • 特開-積層構造体の造形方法及び積層構造体 図2
  • 特開-積層構造体の造形方法及び積層構造体 図3
  • 特開-積層構造体の造形方法及び積層構造体 図4
  • 特開-積層構造体の造形方法及び積層構造体 図5
  • 特開-積層構造体の造形方法及び積層構造体 図6
  • 特開-積層構造体の造形方法及び積層構造体 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114525
(43)【公開日】2022-08-08
(54)【発明の名称】積層構造体の造形方法及び積層構造体
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/106 20170101AFI20220801BHJP
   B29C 64/336 20170101ALI20220801BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220801BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20220801BHJP
【FI】
B29C64/106
B29C64/336
B33Y10/00
B33Y80/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021010806
(22)【出願日】2021-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加茂 宗太
(72)【発明者】
【氏名】春日 洋祐
(72)【発明者】
【氏名】青木 勇磨
(72)【発明者】
【氏名】滝澤 峻也
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AB11
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL24
(57)【要約】
【課題】加工コストの低減を図りつつ、機能性部位を有する積層構造体を造形する。
【解決手段】単位層を積層方向に積層して積層構造体を造形する積層構造体の造形方法であって、前記積層構造体は、第1樹脂及び強化繊維を含む複合材からなる複合材部位と、前記複合材部位の前記積層方向に亘って設けられる所定の機能を有する機能性部位と、を含み、前記単位層を形成するステップを、繰り返し行って、前記積層構造体を形成し、前記単位層を形成するステップは、前記複合材を用いて前記複合材部位を造形するステップと、前記複合材に比して柔らかい第2樹脂を用いて前記機能性部位を造形するステップと、を含む。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単位層を積層方向に積層して積層構造体を造形する積層構造体の造形方法であって、
前記積層構造体は、第1樹脂及び強化繊維を含む複合材からなる複合材部位と、前記積層方向に亘って設けられる所定の機能を有する機能性部位と、を含み、
前記単位層を形成するステップを、繰り返し行って、前記積層構造体を形成し、
前記単位層を形成するステップは、
前記複合材を用いて前記複合材部位を造形するステップと、
前記複合材に比して柔らかい第2樹脂を用いて前記機能性部位を造形するステップと、を含む積層構造体の造形方法。
【請求項2】
前記第1樹脂と前記第2樹脂とは、異なるものである請求項1に記載の積層構造体の造形方法。
【請求項3】
前記単位層には、前記複合材部位と前記機能性部位との境界が形成されており、
前記単位層を形成するステップでは、
前記積層方向において隣接する前記単位層同士の前記境界が、前記単位層の面内方向において異なる位置となるように、前記単位層を形成する請求項1または2に記載の積層構造体の造形方法。
【請求項4】
前記機能性部位は、締結部材が締結される被締結機能を有する部位、加工される被加工機能を有する部位、他の部材に接合される被接合機能を有する部位、前記複合材部位を覆う被覆機能を有する部位のうち、少なくともいずれかの機能を有する請求項1から3のいずれか1項に記載の積層構造体の造形方法。
【請求項5】
前記機能性部位は、前記積層方向に亘って貫通して設けられる貫通孔である請求項4に記載の積層構造体の造形方法。
【請求項6】
前記機能性部位は、前記積層構造体の端部である請求項4に記載の積層構造体の造形方法。
【請求項7】
前記機能性部位は、前記複合材部位を覆う被覆部である請求項4に記載の積層構造体の造形方法。
【請求項8】
前記単位層を形成するステップでは、
前記第1樹脂の溶融温度と前記第2樹脂の溶融温度とのうち、低い溶融温度となる樹脂を用いたステップを先に実行し、高い溶融温度となる樹脂を用いたステップを後に実行する請求項1から7のいずれか1項に記載の積層構造体の造形方法。
【請求項9】
前記単位層を形成するステップでは、
前記複合材部位を造形するステップにおける造形のための移動速度が、前記機能性部位を造形するステップにおける造形のための移動速度に比して速い請求項1から8のいずれか1項に記載の積層構造体の造形方法。
【請求項10】
単位層を積層方向に積層して造形される積層構造体において、
前記単位層は、
第1樹脂及び強化繊維を含む複合材を用いて形成される複合材部位と、
前記積層方向に亘って設けられ、前記複合材に比して柔らかい第2樹脂を用いて形成されると共に、所定の機能を有する機能性部位と、を備え、
前記単位層には、前記複合材部位と前記機能性部位との境界が形成されており、
前記積層方向において隣接する前記単位層同士の前記境界は、前記単位層の面内方向において異なる位置となっている積層構造体。
【請求項11】
前記境界は、前記機能性部位に付与される荷重分布に応じた、前記面内方向における位置となっている請求項10に記載の積層構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層構造体の造形方法及び積層構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、積層構造体の造形方法として、樹脂を含む第1連続材料と繊維を含む第2連続材料とを、個別に、ノズルを有するヘッドにフィードし、第1連続材料及び第2連続材料に基づくプリント材料をプラットフォーム上に積層して、構造物を成形する三次元プリンティング方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この三次元プリンティング方法では、例えば、ハニカムボードを成形する場合、板状の部位をCFRP(Carbon-fiber-reinforced plastic)またはCFRTP(Carbon-fiber-reinforced thermoplastics)によって形成し、ハニカム構造の部位を樹脂によって形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2015/065300号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、三次元プリンティング方法等の三次元積層造形法によって造形される積層構造体には、締結部材を挿通するための貫通孔が設けられる場合がある。貫通孔が積層構造体の積層方向に亘って設けられる場合、特許文献1の造形方法では、全ての層(単位層)を複合材の層(特許文献1における繊維層)とする必要がある。
【0005】
しかしながら、全ての層が繊維層となる、貫通孔を含む積層構造体を成形した場合、貫通孔の造形精度が要求精度よりも低いと、貫通孔に対して要求精度を満足するための後加工を行う必要がある。この場合、後加工が、複合材の層に対する加工となることから、加工の難易度が高くなることによって加工コストが増加してしまう問題がある。
【0006】
そこで、本開示は、加工コストの低減を図りつつ、機能性部位を有する積層構造体を造形することができる積層構造体の造形方法及び積層構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の積層構造体の造形方法は、単位層を積層方向に積層して積層構造体を造形する積層構造体の造形方法であって、前記積層構造体は、第1樹脂及び強化繊維を含む複合材からなる複合材部位と、前記複合材部位の前記積層方向に亘って設けられる所定の機能を有する機能性部位と、を含み、前記単位層を形成するステップを、繰り返し行って、前記積層構造体を形成し、前記単位層を形成するステップは、前記複合材を用いて前記複合材部位を造形するステップと、前記複合材に比して柔らかい第2樹脂を用いて前記機能性部位を造形するステップと、を含む。
【0008】
本開示の積層構造体は、単位層を積層方向に積層して造形される積層構造体において、前記単位層は、第1樹脂及び強化繊維を含む複合材を用いて形成される複合材部位と、前記複合材部位の前記積層方向に亘って設けられ、前記複合材に比して柔らかい第2樹脂を用いて形成されると共に、所定の機能を有する機能性部位と、を備え、前記単位層には、前記複合材部位と前記機能性部位との境界が形成されており、前記積層方向において隣接する前記単位層同士の前記境界は、前記単位層の面内方向において異なる位置となっている。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、加工コストの低減を図りつつ、機能性部位を有する積層構造体を造形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態1に係る積層構造体に関する一例の斜視図である。
図2図2は、実施形態1に係る積層構造体に関する模式的な断面図である。
図3図3は、積層構造体の貫通孔に関する模式的な断面図である。
図4図4は、積層構造体の端部に関する模式的な断面図である。
図5図5は、積層構造体の被覆部に関する模式的な断面図である。
図6図6は、実施形態1に係る積層構造体の造形方法に関する説明図である。
図7図7は、実施形態2に係る積層構造体の貫通孔に関する模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能であり、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせることも可能である。
【0012】
[実施形態1]
実施形態1に係る積層構造体10の造形方法は、単位層11を積層方向に積層することにより積層構造体10を造形する、いわゆる三次元積層造形法を用いた造形方法となっている。先ず、図1及び図2を参照して、造形される積層構造体10について説明する。
【0013】
(積層構造体)
図1は、実施形態1に係る積層構造体に関する一例の斜視図である。図2は、実施形態1に係る積層構造体に関する模式的な断面図である。積層構造体10は、単位層11が積層方向に複数積層された構造体となっており、例えば、板状の部材となっている。積層構造体10は、複合材からなる複合材部位14と、樹脂からなる機能性部位15とを有している。このため、複合材部位14及び機能性部位15の一部は、所定の単位層11に設けられている。
【0014】
複合材部位14は、第1樹脂及び強化繊維を含む複合材を用いて形成されている。複合材部位14は、単位層11に含まれる複合材部位14の一部が積層されることで形成される。第1樹脂は、例えば、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂等の樹脂である。具体的に、第1樹脂は、PPS(Polyphenylenesulfide)、PEI(Polyetherimide)、PEEK(Poly Ether Ether Ketone)、PAEK(Poly Aryl Ether Ketones)、PEKK(Poly Ether Ketone Ketone)、ナイロン等を適用してもよく、三次元積層造形法で複合材を成形する際に用いられる樹脂材料であれば、何れであってもよい。強化繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等のいずれの繊維であってもよく、特に限定されない。硬化後の複合材は、機能性部位15に比して硬いものとなっている。
【0015】
機能性部位15は、所定の機能を有する部位であり、例えば、締結部材が締結される被締結機能を有する部位、加工される被加工機能を有する部位、他の部材に接合される被接合機能を有する部位、複合材部位14を覆う被覆機能を有する部位である。具体的に、実施形態1では、機能性部位15として、貫通孔17と、端部18とを適用している。
【0016】
図3は、積層構造体の貫通孔に関する模式的な断面図である。図3に示すように、貫通孔17は、締結部材が締結される被締結機能を有する部位となっており、積層方向に亘って貫通して設けられている。貫通孔17は、例えば、中空円柱形状となっている。図2に示すように、この貫通孔17には、締結部材としてのボルトが挿通される。
【0017】
図4は、積層構造体の端部に関する模式的な断面図である。図4に示すように、端部18は、積層構造体10の積層方向に直交する面内方向における端部である。端部18は、加工される被加工機能を有する部位、及び被接合機能を有する部位となっている。図2に示すように、この端部18は、造形後に接合するための加工が施され、他の部材に接合される。
【0018】
また、機能性部位15は、第2樹脂を用いて形成されている。機能性部位15は、単位層11に含まれる機能性部位15の一部が積層されることで形成される。第2樹脂は、第1樹脂と同様に、例えば、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂等の樹脂である。第2樹脂は、第1樹脂と異なるものが用いられる。具体的に、第2樹脂は、硬化後の複合材部位14に比して柔らかいものとなっている。ここで、第2樹脂の柔らかさは、硬化後の複合材に比して硬度が低いものであればよく、さらに、ヤング率が低いものであってもよい。なお、第2樹脂として、以下の樹脂を選択することで機能性部位15に機能を付与してもよい。第2樹脂として、PPSを適用することで、耐熱性を付与してもよい。また、第2樹脂として、PEEKを適用することで、自己潤滑性、高硬度、高強度(被削性は低い)な機能を付与してもよい。さらに、第2樹脂として、PEIを適用することで、高い塗布性を有する機能を付与してもよい。
【0019】
なお、実施形態1では、機能性部位15に用いる第2樹脂を一種類としているが、特に限定されず、複数種用いてもよい。
【0020】
また、機能性部位15は、図5に示すものとしてもよい。図5は、積層構造体の被覆部に関する模式的な断面図である。図5に示す機能性部位15は、被覆部19として適用されている。被覆部19は、複合材部位14を覆う被覆機能を有する部位となっており、複合材部位14の表面を覆って設けられている。被覆部19は、例えば、電磁波を吸収する機能を有していたり、電流の導通を遮断する絶縁性の機能を有していたりする。
【0021】
次に、単位層11について説明する。積層構造体10の所定の単位層11は、複合材部位14の一部と機能性部位15の一部とが層状に形成されている。複合材部位14と機能性部位15とが形成される単位層11は、複合材部位14と機能性部位15との間に境界21が形成される。
【0022】
ここで、積層方向において隣接する単位層11同士の境界21は、単位層11の面内方向において、異なる位置となっている。例えば、図3に示すように、貫通孔17としての機能性部位15は、複合材部位14に対して接合性を向上させるべく、複合材部位14に対する形状を、段部25を有する凹凸形状としている。具体的に、図3に示す凹凸形状とする場合、隣接する単位層11の一方の境界を、面内方向において、貫通孔17から遠い側に位置させ、隣接する単位層11の他方の境界を、面内方向において、貫通孔17から近い側に位置させる。そして、隣接する単位層11の一方と他方とを交互に積層することで、機能性部位15の複合材部位14側の形状を、積層方向に沿って波状となる凹凸形状となる。換言すれば、複合材部位14の機能性部位15側の形状を、積層方向に沿って波状となる凹凸形状となり、機能性部位15と相補的な形状となる。つまり、段部25は、単位層11の境界と、単位層11同士の界面とが交わることで形成される。ここで、段部25は、面内方向において、隣接する単位層11の一方の境界と、隣接する単位層11の他方の境界との間の長さが、0.2mm以上となっている。なお、隣接する単位層11の一方の境界と、隣接する単位層11の他方の境界との間の長さを、0.2mm以上3mm以下としてもよい。
【0023】
(積層構造体の造形方法)
次に、図6を参照して、上記した積層構造体10の造形方法について説明する。図6は、実施形態1に係る積層構造体の造形方法に関する説明図である。この造形方法では、単位層11を形成するステップを、繰り返し行って、積層構造体10を形成している。また、図6では、機能性部位15として、貫通孔17を適用している。
【0024】
単位層11を形成するステップでは、複合材部位14を造形するステップS11と、機能性部位15を造形するステップS12と、を実行している。なお、造形する単位層11によっては、複合材部位14のみであったり、機能性部位15のみであったりすることから、全ての単位層11において、複合材部位14を造形するステップS11、及び機能性部位15を造形するステップS12を実行するとは限らない。
【0025】
複合材部位14を造形するステップS11では、図示しない造形装置に設けられる吐出ノズル31が積層方向に直交する面内方向に移動しつつ、吐出ノズル31から複合材26を吐出することで、単位層11における複合材部位14(の一部)の造形を行う。なお、複合材部位14を造形するステップS11では、面内方向における移動速度が、機能性部位15を造形するステップS12よりも速くなるようにしてもよい。
【0026】
機能性部位15を造形するステップS12では、吐出ノズル31、または吐出ノズル31とは別の吐出ノズル32が積層方向に直交する面内方向に移動しつつ、吐出ノズル31,32から第2樹脂27を吐出することで、単位層11における機能性部位15(の一部)の造形を行う。なお、吐出ノズル31,32は、複合材26及び第2樹脂27を切り替えて吐出可能であれば、単体のノズルを用いてもよいし、複合材26及び第2樹脂27をそれぞれ吐出する複数のノズルを用いてもよい。また、機能性部位15を造形するステップS12では、面内方向における移動速度が、複合材部位14を造形するステップS11よりも遅くなるようにしてもよい。機能性部位15を造形するステップS12において、移動速度を遅くすることで、機能性部位15の造形精度を複合材部位14に比して高くすることが可能となる。
【0027】
ここで、複合材部位14を造形するステップS11と、機能性部位15を造形するステップS12との順序について説明する。複合材部位14を造形するステップS11と、機能性部位15を造形するステップS12とを行う順序は、樹脂の溶融温度に基づいて定められる。具体的に、単位層を形成するステップでは、第1樹脂の溶融温度と第2樹脂の溶融温度とのうち、低い溶融温度となる樹脂を用いたステップを先に実行し、高い溶融温度となる樹脂を用いたステップを後に実行している。例えば、第1樹脂の溶融温度が第2樹脂の溶融温度よりも高い場合、機能性部位15を造形するステップS12を先に実行した後、複合材部位14を造形するステップS11を実行する。一方で、例えば、第2樹脂の溶融温度が第1樹脂の溶融温度よりも高い場合、複合材部位14を造形するステップS11を先に実行した後、機能性部位15を造形するステップS12を実行する。
【0028】
また、積層構造体10の造形方法では、上記した単位層11を形成するステップを、繰り返し実行するにあたって、積層方向において隣接する単位層11同士の境界21が、単位層11の面内方向において異なる位置となるように、単位層11を造形している。図3及び図6に示すように、積層構造体10の造形方法では、隣接する単位層11の一方の境界が、面内方向において、貫通孔17から遠い側に位置するように造形される。この後、積層構造体10の造形方法では、隣接する単位層11の他方の境界が、面内方向において、貫通孔17から近い側に位置するように造形される。そして、積層構造体10の造形方法では、隣接する単位層11の一方と他方とを交互に積層することで、図3に示す積層構造体10を造形することができる。
【0029】
なお、実施形態1では、単位層11の面内方向における境界21の位置を異ならせたが、同じ位置であってもよい。
【0030】
[実施形態2]
次に、図7を参照して、実施形態2に係る積層構造体40について説明する。なお、実施形態2では、重複した記載を避けるべく、実施形態1と異なる部分について説明し、実施形態1と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。図7は、実施形態2に係る積層構造体の貫通孔に関する模式的な断面図である。
【0031】
(積層構造体)
実施形態2の積層構造体40は、単位層11の境界21が、機能性部位15に付与される荷重分布に応じて、面内方向における位置が異なっている。具体的に、機能性部位15が、締結部材が締結される貫通孔17である場合、積層構造体40の外層側において荷重が大きく、内層側において荷重が小さいものとなる。この場合、荷重パスを形成するために、積層構造体40の外層側において、単位層11の境界21が機能性部位15側となり、積層構造体40の内層側において、単位層11の境界21が複合材部位14側となるように、積層構造体40が造形される。つまり、積層構造体40は、外層側の単位層11における機能性部位15の割合が高く、内層側の単位層11における機能性部位15の割合が低いものとなっている。
【0032】
以上のように、本実施形態に記載の積層構造体10、40の造形方法及び積層構造体10、40は、例えば、以下のように把握される。
【0033】
第1の態様に係る積層構造体10、40の造形方法は、単位層11を積層方向に積層して積層構造体10、40を造形する積層構造体10、40の造形方法であって、前記積層構造体10、40は、第1樹脂及び強化繊維を含む複合材からなる複合材部位14と、前記積層方向に亘って設けられる所定の機能を有する機能性部位15と、を含み、前記単位層11を形成するステップを、繰り返し行って、前記積層構造体40を形成し、前記単位層11を形成するステップは、前記複合材を用いて前記複合材部位14を造形するステップS11と、前記複合材に比して柔らかい第2樹脂を用いて前記機能性部位15を造形するステップS12と、を含む。
【0034】
この構成によれば、複合材に比して柔らかい第2樹脂を用いて機能性部位15を造形することができる。このため、機能性部位15の変形により、機能性部位15の要求精度を許容することが可能となるため、後加工が不要となることから、加工コストの低減を図ることができる。また、機能性部位15に要求される精度がより高い場合であっても、機能性部位15は、加工し易いものであることから、後加工による加工が容易となり、加工コストの低減を図ることができる。以上のように、加工コストの低減を図りつつ、機能性部位15を有する積層構造体10、40を造形することができる。
【0035】
第2の態様として、前記第1樹脂と前記第2樹脂とは、異なるものである。
【0036】
この構成によれば、複合材部位14の造形に適した第1樹脂を用いることができ、また、機能性部位15の造形に適した第2樹脂を用いることができる。このため、複合材よりも柔らかい樹脂となる機能性部位15を好適に造形することができる。
【0037】
第3の態様として、前記単位層11には、前記複合材部位14と前記機能性部位15との境界21が形成されており、前記単位層11を形成するステップでは、前記積層方向において隣接する前記単位層11同士の前記境界21が、前記単位層11の面内方向において異なる位置となるように、前記単位層11を形成する。
【0038】
この構成によれば、複合材部位14と機能性部位15との接合を強固なものとすることができる。
【0039】
第4の態様として、前記機能性部位は、締結部材が締結される被締結機能を有する部位、加工される被加工機能を有する部位、他の部材に接合される被接合機能を有する部位、前記複合材部位を覆う被覆機能を有する部位のうち、少なくともいずれかの機能を有する。
【0040】
この構成によれば、様々な機能を有する機能性部位15に適用することができ、汎用性の高いものとすることができる。
【0041】
第5の態様として、前記機能性部位15は、前記積層方向に亘って貫通して設けられる貫通孔17である。
【0042】
この構成によれば、貫通孔17を有する積層構造体10、40を、加工コストの低減を図りつつ、造形することができる。
【0043】
第6の態様として、前記機能性部位は、前記積層構造体の端部である。
【0044】
この構成によれば、端部18を有する積層構造体10、40を、加工コストの低減を図りつつ、造形することができる。
【0045】
第7の態様として、前記機能性部位は、前記複合材部位を覆う被覆部である。
【0046】
この構成によれば、被覆部19を有する積層構造体10、40を、加工コストの低減を図りつつ、造形することができる。
【0047】
第8の態様として、前記単位層を形成するステップでは、前記第1樹脂の溶融温度と前記第2樹脂の溶融温度とのうち、低い溶融温度となる樹脂を用いたステップを先に実行し、高い溶融温度となる樹脂を用いたステップを後に実行する。
【0048】
この構成によれば、高い溶融温度となる樹脂を、低い溶融温度となる樹脂に溶け込み易くすることができるため、複合材部位14と機能性部位15との接合を強固なものとすることができる。
【0049】
第9の態様として、前記単位層を形成するステップでは、前記複合材部位14を造形するステップS11における造形のための移動速度が、前記機能性部位15を造形するステップS12における造形のための移動速度に比して速い。
【0050】
この構成によれば、複合材部位14を造形するステップS11においては、移動速度を速くすることで、強化繊維を繊維方向に伸ばすようにして造形することができる。このため、複合材部位14を適切に造形することができる。また、機能性部位15を造形するステップS12においては、移動速度を遅くすることで、機能性部位15において精度の高い造形を行うことができる。
【0051】
第10の態様に係る積層構造体は、単位層を積層方向に積層して造形される積層構造体において、前記単位層は、第1樹脂及び強化繊維を含む複合材を用いて形成される複合材部位と、前記積層方向に亘って設けられ、前記複合材に比して柔らかい第2樹脂を用いて形成されると共に、所定の機能を有する機能性部位と、を備え、前記単位層には、前記複合材部位と前記機能性部位との境界が形成されており、前記積層方向において隣接する前記単位層同士の前記境界は、前記単位層の面内方向において異なる位置となっている。
【0052】
この構成によれば、複合材部位14と機能性部位15との接合を強固なものにした積層構造体10、40を造形することができる。
【0053】
第11の態様として、前記境界は、前記機能性部位に付与される荷重分布に応じた、前記面内方向における位置となっている。
【0054】
この構成によれば、機能性部位15に付与される荷重分布に適した積層構造体10、40を造形することができる。
【符号の説明】
【0055】
10 積層構造体
11 単位層
14 複合材部位
15 機能性部位
17 貫通孔
18 端部
19 被覆部
21 境界
25 段部
26 複合材
27 第2樹脂
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7