(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114527
(43)【公開日】2022-08-08
(54)【発明の名称】噴出容器
(51)【国際特許分類】
B65D 47/42 20060101AFI20220801BHJP
【FI】
B65D47/42 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021010810
(22)【出願日】2021-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】宮入 圭介
(72)【発明者】
【氏名】桑原 和仁
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA05
3E084AA12
3E084AA24
3E084AB01
3E084BA01
3E084CA02
3E084DA02
3E084DB08
3E084DB13
3E084DB14
3E084DB17
3E084EA02
3E084EB02
3E084FC07
3E084FD02
3E084GB12
3E084GB23
3E084HA03
3E084HB09
3E084HC01
3E084HD04
3E084KA16
3E084KA17
3E084KB01
3E084LC01
3E084LD22
3E084LF09
(57)【要約】
【課題】内容物の詰め替え作業が行い易く、また周辺を内容物で汚してしまう不具合が生じにくい噴出容器を提案する。
【解決手段】本発明の噴出容器は、容器2A、ディスペンサ3A、及びディスペンサ3Aに係合する係合部4hを有するカバー4を備え、容器2A及びカバー4の何れか一方は軸部5jを有し、容器2A及びカバー4の何れか他方は軸部5jが挿入される縦溝部4bを有し、軸部5jと縦溝部4bは、容器2Aに対してカバー4を、係合部4hがディスペンサに係合する下位置と係合したディスペンサ3Aが口部5aの内側から抜け出す上位置との間でスライド可能に支持し且つ上位置において軸部5jを中心として揺動可能に支持する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方を開放した口部と、該口部に通じるとともに内容物を収容する収容空間とを有する容器と、
前記口部の内側に挿入され、噴出ヘッドを押し下げることによって前記収容空間の内容物を噴出させるディスペンサと、
前記ディスペンサに係合する係合部を有するカバーと、を備え、
前記容器及び前記カバーの何れか一方は、軸部を有し、
前記容器及び前記カバーの何れか他方は、前記軸部が挿入される縦溝部を有し、
前記軸部と前記縦溝部は、前記容器に対して前記カバーを、前記係合部が前記ディスペンサに係合する下位置と係合した該ディスペンサが前記口部の内側から抜け出す上位置との間でスライド可能に支持し且つ該上位置において該軸部を中心として揺動可能に支持する、噴出容器。
【請求項2】
前記容器は、厚みよりも幅が大きい扁平形状の胴部を有し、
前記胴部は、厚み方向外側に位置する一対の厚み方向側壁部と、幅方向外側に位置して前記軸部及び前記縦溝部の何れか一方が設けられる一対の幅方向側壁部とを有し、
前記カバーは、前記胴部の外側に位置して前記軸部及び前記縦溝部の何れか他方が設けられる外壁部を有し、
前記厚み方向側壁部は、前記外壁部に対して内側に向けて傾き、前記口部の軸線回りへの前記カバーの捻りを許容する傾斜部を有し、
前記縦溝部は、前記下位置において前記カバーを捻る際に該縦溝部に対して前記軸部の移動を許容する横溝部を有する、請求項1に記載の噴出容器。
【請求項3】
前記ディスペンサは、前記収容空間の内容物を吸い上げる屈曲可能なパイプを有する請求項1又は2に記載の噴出容器。
【請求項4】
前記容器は、前記口部の内側に、前記収容空間に向けて延在するパイプを備えるとともに前記ディスペンサが着脱可能に装着されるホルダーを有する請求項1又は2に記載の噴出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物を噴出させるディスペンサを備える噴出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
内容物を収容する容器にディスペンサを設けた噴出容器が既知である。例えば特許文献1には、内容物を収容する容器と、容器の口部に取り外し可能にねじ付けられる装着筒を備えるディスペンサとを有する噴出容器が示されている。
【0003】
この噴出容器では、ねじが緩む方向に装着筒を回転することによって、容器からディスペンサを取り外すことができる。すなわちこの噴出容器によれば、容器に収容した内容物が少なくなっても、ディスペンサを取り外した後に容器の口部から内容物を再充填することができるため、繰り返し利用することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、内容物の詰め替え作業を行う際は、取り外したディスペンサを手に持ったまま内容物を再充填することは困難であるため、予めディスペンサの置き場を確保しなければならない。また、ディスペンサが置き場の上で転がってしまわないようにバランスをとりながら置く等の気を配った作業を行わなければならず、作業性の点でも難がある。更にディスペンサには内容物が付着しているため、内容物が付着した部位が触れたり内容物が垂れ落ちたりすることによって置き場を汚してしまうことがある。
【0006】
このような問題点に鑑み、本発明は、内容物の詰め替え作業が行い易く、また周辺を内容物で汚してしまう不具合が生じにくい噴出容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上方を開放した口部と、該口部に通じるとともに内容物を収容する収容空間とを有する容器と、
前記口部の内側に挿入され、噴出ヘッドを押し下げることによって前記収容空間の内容物を噴出させるディスペンサと、
前記ディスペンサに係合する係合部を有するカバーと、を備え、
前記容器及び前記カバーの何れか一方は、軸部を有し、
前記容器及び前記カバーの何れか他方は、前記軸部が挿入される縦溝部を有し、
前記軸部と前記縦溝部は、前記容器に対して前記カバーを、前記係合部が前記ディスペンサに係合する下位置と係合した該ディスペンサが前記口部の内側から抜け出す上位置との間でスライド可能に支持し且つ該上位置において該軸部を中心として揺動可能に支持する、噴出容器である。
【0008】
前記容器は、厚みよりも幅が大きい扁平形状の胴部を有し、
前記胴部は、厚み方向外側に位置する一対の厚み方向側壁部と、幅方向外側に位置して前記軸部及び前記縦溝部の何れか一方が設けられる一対の幅方向側壁部とを有し、
前記カバーは、前記胴部の外側に位置して前記軸部及び前記縦溝部の何れか他方が設けられる外壁部を有し、
前記厚み方向側壁部は、前記外壁部に対して内側に向けて傾き、前記口部の軸線回りへの前記カバーの捻りを許容する傾斜部を有し、
前記縦溝部は、前記下位置において前記カバーを捻る際に該縦溝部に対して前記軸部の移動を許容する横溝部を有することが好ましい。
【0009】
前記ディスペンサは、前記収容空間の内容物を吸い上げる屈曲可能なパイプを有することが好ましい。
【0010】
前記容器は、前記口部の内側に、前記収容空間に向けて延在するパイプを備えるとともに前記ディスペンサが着脱可能に装着されるホルダーを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の噴出容器によれば、容器に対してカバーを持ち上げて更にカバーを揺動させると、ディスペンサを口部から引き上げた後、これを口部の外側に移動させることができる。すなわち、カバーの移動に伴って、ディスペンサを容器から取り外して内容物の詰め替えができる状態にすることができる。また取り外したディスペンサはカバーで保持されているため、従来のようにディスペンサの置き場に困ることがなく、作業性の点でも優れている。また内容物が付着した部位が噴出容器の周辺に触れることもないため、周辺を汚してしまう不具合も有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る噴出容器の第一実施形態に関する半断面図である。
【
図2】
図1に示した噴出容器に関し、(a)は左側面図であり、(b)は右側面図(一部半断面図)である。
【
図3】カバーを捻って更に持ち上げる状況について示した図であって、(a)は
図1のA-Aに沿う断面図であり、(b)は右側面図である。
【
図4】カバーを持ち上げた状態での半断面図である。
【
図5】持ち上げたカバーを揺動させた状態での右側面図である。
【
図6】本発明に係る噴出容器の第二実施形態に関する半断面図である。
【
図7】
図6に示した噴出容器に関し、カバーを捻って更に持ち上げる状況について示した図であって、(a)は右側面図であり、(b)は
図7のB部における部分拡大断面図である。
【
図8】持ち上げたカバーを揺動させた状態での右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る噴出容器の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお本明細書等における「上」「下」とは、
図1に示すように噴出容器を正立させた状態での位置関係である。また「前」とは、後述する噴出口が位置する側であり、「後」とはその逆側である。また「左」「右」は、前から後に向かって噴出容器を見た際の左右方向である。
【0014】
まず、
図1~
図5を参照しながら本発明に係る噴出容器の第一実施形態について説明する。本実施形態の噴出容器1Aは、容器2A、ディスペンサ3A、カバー4を備えている。以下、容器2A、ディスペンサ3A、カバー4の順に、詳細に説明する。
【0015】
容器2Aは、複数の部材で構成することも可能であるが、本実施形態では単一の容器本体5Aで構成される。容器本体5Aは、軸線Oに沿って延在する上方を開放した円筒状の口部5aと、口部5aの下端部から水平方向に延在する肩部5bと、肩部5bの外縁部から下方に向けて延在する胴部5cと、胴部5cの下端部を閉鎖する板状の底部5dを備えていて、肩部5b、胴部5c、及び底部5dの内側に、口部5aに通じるとともに内容物を収容する収容空間Sを有している。
【0016】
口部5aの外周面には、軸線Oを周回する向きに延在する環状の凸部5eが設けられている。
【0017】
胴部5cは、
図3(a)に示すように、軸線Oを中心とし、厚み(前後方向長さ)が幅(左右方向長さ)よりも大きくなる扁平形状である。また胴部5cは、厚み方向外側に位置する一対の厚み方向側壁部5fと、幅方向外側に位置する一対の幅方向側壁部5gとを備えている。そして
図3(a)に示すように後方に位置する厚み方向側壁部5fは、平面視においてその右側部分は左右方向に延在する一方、左側部分は幅方向外側に向かうにつれて前方に向けて傾いている。また前方に位置する厚み方向側壁部5fは、平面視においてその左側部分は左右方向に延在する一方、右側部分は幅方向外側に向かうにつれて後方に向けて傾いている。すなわち胴部5cは、平面視において略平行四辺形の如き形状で形作られている。ここで、後方に位置する厚み方向側壁部5fの左側部分と前方に位置する厚み方向側壁部5fの右側部分を、傾斜部5hと称する。
【0018】
幅方向側壁部5gの上部には、
図1に示すように幅方向外側に向けて突出する円柱状の軸部5jが設けられていて、軸部5jの先端部には、軸部5jよりも大径になる円板状の抜け止め部5kが設けられている。
【0019】
また幅方向側壁部5gは、
図1に示すように、その中間部に段差部5mを備えていて、対向する幅方向側壁部5gの幅は、上部よりも下部の方が大きくなっている。
【0020】
次にディスペンサ3Aについて説明する。
図1に示すようにディスペンサ3Aは、シリンダー7Aを備えている。シリンダー7Aの内側には、逆止弁8、下部スプリング9、ポペット10、ピストン11、上部スプリング12、ステム13が配置されていて、シリンダー7Aの下端部には、パイプ14Aが設けられている。またディスペンサ3Aは、シリンダー7Aの上端部に取り付けられる保持部材15と、ステム13に取り付けられる噴出ヘッド16と、噴出ヘッド16に取り付けられるノズルチップ17(
図2(b)参照)と、ヘッドカバー18を備えている。
【0021】
シリンダー7Aは、
図1の部分拡大図に示すように、外周面から水平方向に延在するフランジ部7aを備えている。またシリンダー7Aの上端部には、外周面を外側に向けて膨出させて保持部材15に嵌合保持される嵌合部7bが設けられている。
【0022】
パイプ14Aは、横断面形状が円形状になるものであって、その上端部はシリンダー7Aの下端部に嵌合保持され、その下端部は、底部5dの近傍に位置している。パイプ14Aは、柔軟性を有する素材で形成されていて、屈曲させることが可能である。
【0023】
保持部材15は、嵌合部7bの内周面及び外周面を取り囲んでこれを嵌合保持する有蓋筒状の基部15aと、基部15aの上面から上方に向けて延在する筒状部15bと、基部15aの外周面から水平方向外側に向けて延在した後、下方に向けて延在して、口部5aの凸部5eに係合する係合爪部15cを備えている。
【0024】
噴出ヘッド16は、有蓋筒状になるヘッド本体16aを備えている。ヘッド本体16aの下面には、ステム13を取り囲んでこれに嵌合保持される筒状内部壁16bが設けられている。なお、ヘッド本体16aの内部には、
図2(b)に示すように筒状内部壁16bの内側に通じるとともに噴出ヘッド16の前面で開口する内部通路16cが設けられている。
【0025】
ノズルチップ17は、
図2(b)に示すように噴出ヘッド16の前面に取り付けられる。ノズルチップ17には、内部通路16cにつながる噴出口17aが設けられている。
【0026】
ヘッドカバー18は、有蓋筒状になるものであって、ノズルチップ17を取り囲んでこれに保持される。
【0027】
次に、カバー4について説明する。カバー4は、胴部5cの上部を取り囲む外壁部4aを備えている。外壁部4aは、胴部5cと同様に、厚み(前後方向長さ)が幅(左右方向長さ)よりも大きくなる扁平形状である。外壁部4aの幅方向外側に位置する部位には、外壁部4aを貫通して軸部5jが挿通される縦溝部4bと横溝部4cが設けられている。縦溝部4bと横溝部4cの溝幅は、抜け止め部5kの外径よりも小さくなっている。なお本明細書等での「縦溝部」は、概ね縦方向に向かって延在する(水平方向よりも上下方向に向かう成分の方が大きい)溝部を意味し、上下方向に延在する溝部だけでなく、上下方向に対して斜めに傾いて延在する溝部を含む。また「横溝部」は、概ね横方向に向かって延在する(上下方向よりも水平方向に向かう成分の方が大きい)溝部を意味し、水平方向に延在する溝部だけでなく、水平方向に対して斜めに傾いて延在する溝部を含む。
【0028】
縦溝部4bは、
図2(a)に示すように外壁部4aの左側では、外壁部4aの幅方向中央部よりも後方から下方に向けて延在した後、下方に向かうにつれて前方に向けて傾いて延在し、その後は下方に向けて延在する形状で形作られている。また横溝部4cは、縦溝部4bの上端部から前方に向けて、外壁部4aの幅方向中央部まで水平方向に延在している。
【0029】
そして
図2(b)に示すように外壁部4aの右側において、縦溝部4bは、外壁部4aの幅方向中央部よりも前方から下方に向けて延在した後、下方に向かうにつれて後方に向けて傾いて延在し、その後は下方に向けて延在する形状で形作られている。また横溝部4cは、縦溝部4bの上端部から後方に向けて、外壁部4aの幅方向中央部まで水平方向に延在している。
【0030】
またカバー4は、
図1に示すように、外壁部4aの上端部から幅方向内側に向けて延在する頂壁部4dを備えている。頂壁部4dの内縁部には、下方に向けて延在する内壁部4eが設けられていて、内壁部4eの下端部には、幅方向内側に向けて延在する内向きフランジ部4fが設けられている。内向きフランジ部4fの下面には、保持部材15を取り囲む環状壁4gが設けられている。環状壁4gの内周面下端部には、保持部材15の下端部に係合する爪状の係合部4hが設けられている。
【0031】
また
図1に示すように外壁部4aの前面には、噴出口17aを露出させる円形の開口4jが設けられている。
【0032】
このような部材で構成される噴出容器1Aは、組み立てられることができれば手順は問わないが、一例として以下のようにして組み立てることができる。まずシリンダー7Aの内側に、逆止弁8、下部スプリング9、ポペット10、ピストン11、上部スプリング12、ステム13を配置した後、保持部材15の基部15aをシリンダー7Aの嵌合部7bに嵌合させる。この状態においてステム13は、下部スプリング9と上部スプリング12によって上方付勢され、また保持部材15の基部15aによって抜け止め保持される。そして、カバー4の係合部4hを保持部材15の下端部と係合させ、縦溝部4b(横溝部4cでもよい)に軸部5jを挿通させ、更にシリンダー7Aを口部5aに挿入してフランジ部7aが口部5aの上端部に当接する状態で係合爪部15cを凸部5eに係合させる。その後は、ノズルチップ17とヘッドカバー18を取り付けた噴出ヘッド16をステム13に取り付けることにより、噴出容器1Aとしての組み立てが完了する。なお組み立てが完了した際、
図2(a)、(b)に示すように軸部5jは、横溝部4cの内側における前後方向中央部に位置している。従って、この状態でカバー4に上方に向けて力を付与しても、容器本体5Aに対してカバー4が持ち上がることはない。なお、この状態における容器本体5Aに対するカバー4の上下方向の位置(すなわち、軸部5jが横溝部4cに収まっている上下方向の位置)を、本明細書等では「下位置」と称する。
【0033】
そして内容物を噴出させるにあたっては、ヘッドカバー18を押圧して噴出ヘッド16を押し下げる。これにより、噴出ヘッド16とともにステム13も押し下げられ、シリンダー7A内でピストン11が下方に移動してシリンダー7Aの内部が加圧されるため、シリンダー7A内の内容物は、ステム13から内部通路16cを経て、噴出口17aから噴出される。またステム13は、下部スプリング9や上部スプリング12によって上方付勢されていて、ヘッドカバー18への押圧を解除すると、ステム13は元の位置へ上昇し、それに伴ってピストン11もシリンダー7A内で上方へ移動してシリンダー7Aの内部は減圧されるため、収容空間Sに収容されている内容物は、パイプ14Aを通してシリンダー7A内に吸引される。このようにしてヘッドカバー18への押圧と押圧解除を繰り返すことによって、収容空間Sに収容されている内容物を順次噴出させることができる。
【0034】
収容空間Sの内容物が少なくなって内容物の詰め替えを行うにあたっては、まず
図3(a)に示すようにカバー4を捩る作業を行う。本実施形態では、平面視において軸線Oを中心としてカバー4を反時計回りに捩ることとする。なお、
図1に示すようにカバー4の外壁部4aは、容器本体5Aにおける胴部5cの上部を取り囲んでいるが、
図3(a)に示すように、胴部5cの厚み方向側壁部5fには傾斜部5hが設けられていて、外壁部4aと傾斜部5hとの間には隙間が設けられているため、容器本体5Aに対してカバー4を捩ることができる。そしてカバー4を捩ることによって、横溝部4cの内側に位置していた軸部5jは、横溝部4cと縦溝部4bとの連結部まで移動する。
【0035】
その後は、容器本体5Aに対してカバー4を持ち上げる。ここでカバー4の係合部4hは、保持部材15の下端部に係合しているため、カバー4を持ち上げることによって保持部材15にも上方に向かう力が作用し、
図3(b)及び
図4に示すようにシリンダー7Aが口部5aの内側から引き上げられる。なお、カバー4は、軸部5jが縦溝部4bの下端部まで移動するところまでしか持ち上がらないため、容器本体5Aからカバー4が外れてしまうことはない。なお、この状態における容器本体5Aに対するカバー4の上下方向の位置(すなわち、軸部5jが縦溝部4bの下端部に移動した位置)を、本明細書等では「上位置」と称する。
【0036】
そしてカバー4を持ち上げた後は、
図5に示すようにカバー4を揺動させる。上述したように、カバー4の縦溝部4bには容器本体5Aの軸部5jが挿入されているため、軸部5jを中心としてカバー4を揺動させることができる。なお、図示例ではカバー4を前方から後方に向けて揺動させているが、後方から前方に向けて揺動させることも可能である。このようにしてカバー4を揺動させた際、シリンダー7Aは保持部材15を介してカバー4に保持されているため、図示したようにシリンダー7Aを口部5aの外側に移動させることができる。なお、カバー4を持ち上げた状態でもパイプ14Aは口部5aに挿入されているが、パイプ14Aは屈曲可能であるため、シリンダー7Aの外側への移動が妨げられることはない。
【0037】
このようにしてカバー4を揺動させることによって、図示したように口部5aの上方を大きくあけることができるため、口部5aから内容物を容易に充填することができる。また、シリンダー7Aを含むディスペンサ3Aは揺動させたカバー4に保持されているため、従来のようにディスペンサの置き場に困ることがない。またシリンダー7A等に内容物が付着していても噴出容器1Aの周辺に触れることがないため、周辺を内容物で汚してしまう不具合を防止することができる。
【0038】
次に本発明に係る噴出容器の第二実施形態である噴出容器1Bについて、
図6~
図8を参照しながら説明する。なお、噴出容器1Bに関して上述した噴出容器1Aと機能等が共通する部位については、図面に同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0039】
本実施形態の噴出容器1Bは、容器2B、ディスペンサ3B、及びカバー4を備えている。
【0040】
本実施形態の容器2Bは、容器本体5B、ホルダー6、パイプ14Bで構成される。容器本体5Bは、上述した容器本体5Aと略同一形状になるものであるが、口部5aの上部外周面に係合凹部5nを備える点が相違する(
図7(b)参照)。
【0041】
ホルダー6は、筒状をなすホルダー筒状部6aを備えている。ホルダー筒状部6aは、上部は口部5aに挿入される程度の外径である一方、中間部は下方に向けて縮径していて、下部は上部よりも小径になっている。また、ホルダー筒状部6aの中間部周辺には、上下方向に延在してホルダー筒状部6aを貫く貫通孔6bが設けられている。そして
図7(b)に示すようにホルダー筒状部6aの上端部には、水平方向外側に延在した後、下方に向けて延在し、内周面に設けた突起が係合凹部5nに係合するホルダー係合部6cが設けられている。またホルダー筒状部6aの下端部には、パイプ14Bを嵌合保持する筒状嵌合部6dが設けられている。
【0042】
パイプ14Bは、横断面形状が円形状になるものであって、その上端部は筒状嵌合部6dに嵌合保持され、その下端部は、底部5dの近傍に位置している。本実施形態のパイプ14Bは、パイプ14Aと同様に柔軟性を有する素材で形成してもよいし、比較的硬質の素材で形成してもよい。
【0043】
ディスペンサ3Bは、上述したディスペンサ3Aに対して、シリンダー7Aに替えてシリンダー7Bを備えるとともに、パイプ14Aを廃止したものである。
【0044】
シリンダー7Bは、上述したシリンダー7Aと略同一形状になるものであって、
図7(b)に示すように嵌合部7bを備える一方、フランジ部7aは廃止している。なおシリンダー7Bは、
図6に示すように口部5aの内側に設けられたホルダー6に挿入されるものであり、挿入時においてシリンダー7Bの下端部は、ホルダー6の内周面に当接する。
【0045】
このような構成になる噴出容器1Bにおいてディスペンサ3Bは、上述したディスペンサ3Aと同様の手順で組み立てられる。また容器本体5B、ホルダー6及びパイプ14Bは、筒状嵌合部6dにパイプ14Bを嵌合させ、ホルダー6を口部5aに挿入してホルダー係合部6cを係合凹部5nに係合させて、容器2Bとして組み立てられる。そして、カバー4の係合部4hを保持部材15の下端部と係合させ、縦溝部4b(横溝部4cでもよい)に軸部5jを挿通させ、更にシリンダー7Bをホルダー6に挿入して係合爪部15cを凸部5eに係合させ、ノズルチップ17とヘッドカバー18を取り付けた噴出ヘッド16をステム13に取り付けることにより、噴出容器1Bとして組み立てられる。
【0046】
噴出容器1Bから内容物を噴出させる場合も、噴出容器1Aと同様にヘッドカバー18を押圧すれば、噴出ヘッド16とともにステム13も押し下げられ、シリンダー7B内でピストン11が下方に移動してシリンダー7Bの内部が加圧されるため、噴出口17aから内容物が噴出される。またヘッドカバー18への押圧を解除すると、ステム13は元の位置へ上昇し、それに伴ってピストン11もシリンダー7B内で上方へ移動してシリンダー7Bの内部は減圧されるため、収容空間Sに収容されている内容物は、パイプ14Bを通過してシリンダー7B内に吸引される。このようにしてヘッドカバー18への押圧と押圧解除を繰り返すことによって、収容空間Sに収容されている内容物を順次噴出させることができる。
【0047】
また噴出容器1Bで内容物の詰め替えを行う場合も、噴出容器1Aと同様にカバー4を捩る作業を行い、更に
図7(a)に示すようにカバー4を持ち上げる。カバー4の係合部4hは、保持部材15の下端部に係合しているため、カバー4を持ち上げることによって保持部材15にも上方に向かう力が作用し、
図7(b)に示すようにシリンダー7Bはホルダー6の内側から引き上げられる。そして、
図8に示すように軸部5jが縦溝部4bの下端部まで移動するところまでカバー4を持ち上げた後、図示したようにカバー4を揺動させることによって、引き上げたシリンダー7Bを口部5aの外側に移動させることができる。なお、噴出容器1Aにおいてパイプ14Aはシリンダー7Aに取り付けられていたが、噴出容器1Bのパイプ14Bはホルダー6に取り付けられているため、シリンダー7Bとともに引き上げられることはない。
【0048】
このようにしてカバー4を揺動させることによって、図示したように口部5aの上方を大きくあけることができるため、口部5aの内側に設けたホルダー6から内容物を容易に充填することができる。なお、ホルダー6には、上下方向に延在する貫通孔6bが設けられていて、内容物を充填するにあたって収容空間Sの空気をこの貫通孔6bから外側に逃がして空気と内容物とを置換することができるため、内容物をスムーズに充填することができる。
【0049】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。また、上記の実施形態における効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
【0050】
例えば上述した実施形態においては、容器本体5A、5Bに対して外向きの軸部5jを設け、カバー4には外壁部4aを貫通する縦溝部4bを設けたが、容器本体5A、5Bの外周面に凹状の縦溝部を設け、カバー4の内周面に内向きの軸部を設けてもよい。またディスペンサ3A、3Bは、上述した構成になるものに限られず、タイプの異なるディスペンサを採用してもよい。
【符号の説明】
【0051】
1A、1B:噴出容器
2A、2B:容器
3A、3B:ディスペンサ
4:カバー
4a:外壁部
4b:縦溝部
4c:横溝部
4d:頂壁部
4e:内壁部
4f:内向きフランジ部
4g:環状壁
4h:係合部
4j:開口
5A、5B:容器本体
5a:口部
5b:肩部
5c:胴部
5d:底部
5e:凸部
5f:厚み方向側壁部
5g:幅方向側壁部
5h:傾斜部
5j:軸部
5k:抜け止め部
5m:段差部
5n:係合凹部
6:ホルダー
6a:ホルダー筒状部
6b:貫通孔
6c:ホルダー係合部
6d:筒状嵌合部
7A、7B:シリンダー
7a:フランジ部
7b:嵌合部
8:逆止弁
9:下部スプリング
10:ポペット
11:ピストン
12:上部スプリング
13:ステム
14A、14B:パイプ
15:保持部材
15a:基部
15b:筒状部
15c:係合爪部
16:噴出ヘッド
16a:ヘッド本体
16b:筒状内部壁
16c:内部通路
17:ノズルチップ
17a:噴出口
18:ヘッドカバー
O:軸線
S:収容空間