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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114532
(43)【公開日】2022-08-08
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20220801BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021010825
(22)【出願日】2021-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100195648
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 悠太
(74)【代理人】
【識別番号】100175019
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 健朗
(74)【代理人】
【識別番号】100104329
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 卓治
(72)【発明者】
【氏名】鶴見 英昭
【テーマコード(参考)】
2H199
3D344
【Fターム(参考)】
2H199DA03
2H199DA15
2H199DA28
2H199DA32
2H199DA46
2H199DA48
3D344AA08
3D344AA19
3D344AB01
3D344AC25
(57)【要約】
【課題】レーザ光を発する光源を良好な温度に保ちつつ、消費電力を低減できるヘッドアップディスプレイ(HUD)装置を提供する。
【解決手段】HUD装置の制御部は、光源温度Tが目標温度Ttに近付くようにペルチェ素子の動作を制御する。制御部は、前回の制御期間でペルチェ素子を冷却駆動し、且つ、前回目標温度Tt_Lに変化幅ΔTを加算した値が温度範囲Rtの上限値Tmax以下である場合には、今回の制御期間では、前回目標温度Tt_Lに変化幅ΔTを加算した値を目標温度Ttに決定する。制御部は、前回の制御期間でペルチェ素子を加熱駆動し、且つ、前回目標温度Tt_Lから変化幅ΔTを減算した値が温度範囲Rtの下限値Tmin以上である場合には、今回の制御期間では、前回目標温度Tt_Lから変化幅ΔTを減算した値を目標温度Ttに決定する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光によって生成された画像を表す表示光を放射し、前記画像の虚像を表示するヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記レーザ光を発する光源と、
前記光源を冷却又は加熱するペルチェ素子と、
前記光源の温度である光源温度を検出する温度検出部と、
所定の制御期間毎に前記温度検出部から前記光源温度を取得するとともに前記光源の目標温度を決定し、前記光源温度が前記目標温度に近付くように前記ペルチェ素子の動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
予め定められた温度範囲に含まれる前記目標温度を決定するとともに、前記目標温度を設定された変化幅で変更可能であり、
前回の制御期間で前記ペルチェ素子を冷却駆動し、且つ、前記前回の制御期間で決定した前記目標温度である前回目標温度に前記変化幅を加算した値が前記温度範囲の上限値以下である第1条件を満たす場合には、今回の制御期間では、前記前回目標温度に前記変化幅を加算した値を前記目標温度に決定し、
前記前回の制御期間で前記ペルチェ素子を加熱駆動し、且つ、前記前回目標温度から前記変化幅を減算した値が前記温度範囲の下限値以上である第2条件を満たす場合には、前記今回の制御期間では、前記前回目標温度から前記変化幅を減算した値を前記目標温度に決定する、
ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記今回の制御期間において取得した前記光源温度が前記上限値よりも大きい場合には前記上限値を前記目標温度に決定し、
前記今回の制御期間において取得した前記光源温度が前記下限値よりも小さい場合には前記下限値を前記目標温度に決定する、
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
前記ペルチェ素子に駆動電流を供給する駆動部をさらに備え、
前記制御部は、前記駆動部に出力するPWM信号のデューティ比を決定し、
前記駆動部は、前記デューティ比に応じた大きさの前記駆動電流を前記ペルチェ素子に供給する、
請求項1又は2に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記前回の制御期間での前記デューティ比である前回デューティ比が予め定められた閾値以上であって前記第1条件を満たしている場合に、前記今回の制御期間では、前記前回目標温度に前記変化幅を加算した値を前記目標温度に決定し、
前記前回デューティ比が前記閾値以上であって前記第2条件を満たしている場合に、前記今回の制御期間では、前記前回目標温度から前記変化幅を減算した値を前記目標温度に決定し、
前記前回デューティ比が前記閾値未満であって前記今回の制御期間で取得した前記光源温度が前記温度範囲に含まれている場合には、前記今回の制御期間においても前記前回目標温度をそのまま維持する、
請求項3に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記ペルチェ素子を冷却駆動する場合の前記デューティ比の制限である冷却時制限値と、前記ペルチェ素子を加熱駆動する場合の前記デューティ比の制限である加熱時制限値とを、互いに異なる値に設定する、
請求項3又は4に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記光源温度が第1設定温度以下の場合には、前記冷却時制限値を第1の値に設定し、
前記光源温度が前記第1設定温度よりも高い第2設定温度以上の場合には、前記冷却時制限値を前記第1の値よりも低い第2の値に設定し、
前記光源温度が前記第1設定温度と前記第2設定温度の間である場合には、前記光源温度及び前記制限値の関係を示す関数と、取得した前記光源温度とに基づいて算出した値を前記冷却時制限値に設定し、
前記関数は、前記第2の値及び前記第1の値の差分と、前記第2設定温度及び前記第1設定温度の差分とを除算して得られる傾きを有する直線を示す、
請求項5に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記目標温度と前記光源温度との差分を偏差とするフィードバック制御を実行して前記PWM信号の暫定デューティ比を算出し、
前記偏差に基づき前記ペルチェ素子を冷却駆動すると決定すると、前記暫定デューティ比が前記冷却時制限値を超える場合には前記冷却時制限値を前記デューティ比に決定する一方で、前記暫定デューティ比が前記冷却時制限値を超えない場合には前記暫定デューティ比を前記デューティ比に決定し、
前記偏差に基づき前記ペルチェ素子を加熱駆動すると決定すると、前記暫定デューティ比が前記加熱時制限値を超える場合には前記加熱時制限値を前記デューティ比に決定する一方で、前記暫定デューティ比が前記加熱時制限値を超えない場合には前記暫定デューティ比を前記デューティ比に決定する、
請求項5又は6に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘッドアップディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、レーザ光によって画像を生成するヘッドアップディスプレイ(HUD:Head-Up Display)装置が記載されている。特許文献1に記載のHUD装置は、レーザ光を発する光源をペルチェ素子によって冷却又は加熱することで、光源の温度を、良好にレーザ光を出力可能な目標温度に近づける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-228674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光源の温度を目標温度に速やかに近づけるようにペルチェ素子を駆動するだけでは消費電力が増す虞があるため、改善の余地がある。
【0005】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、レーザ光を発する光源を良好な温度に保ちつつ、消費電力を低減できるヘッドアップディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示に係るヘッドアップディスプレイ装置は、
レーザ光によって生成された画像を表す表示光を放射し、前記画像の虚像を表示するヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記レーザ光を発する光源と、
前記光源を冷却又は加熱するペルチェ素子と、
前記光源の温度である光源温度を検出する温度検出部と、
所定の制御期間毎に前記温度検出部から前記光源温度を取得するとともに前記光源の目標温度を決定し、前記光源温度が前記目標温度に近付くように前記ペルチェ素子の動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
予め定められた温度範囲に含まれる前記目標温度を決定するとともに、前記目標温度を設定された変化幅で変更可能であり、
前回の制御期間で前記ペルチェ素子を冷却駆動し、且つ、前記前回の制御期間で決定した前記目標温度である前回目標温度に前記変化幅を加算した値が前記温度範囲の上限値以下である第1条件を満たす場合には、今回の制御期間では、前記前回目標温度に前記変化幅を加算した値を前記目標温度に決定し、
前記前回の制御期間で前記ペルチェ素子を加熱駆動し、且つ、前記前回目標温度から前記変化幅を減算した値が前記温度範囲の下限値以上である第2条件を満たす場合には、前記今回の制御期間では、前記前回目標温度から前記変化幅を減算した値を前記目標温度に決定する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、レーザ光を発する光源を良好な温度に保ちつつ、消費電力を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態に係るヘッドアップディスプレイ(HUD)装置の車両への搭載態様を示す図。
図2】同上実施形態に係るHUD装置の概略構成図。
図3】同上実施形態に係る合成レーザ光出力部の構成図。
図4】同上実施形態に係るHUD装置の制御構成を示すブロック図。
図5】同上実施形態に係るペルチェ制御処理のフローチャート。
図6】同上実施形態に係るデューティ制限処理を説明するための図。
図7】同上実施形態に係る目標温度決定処理のフローチャート。
図8】同上実施形態に係る目標温度決定処理を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0010】
本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置(HUD:Head-Up Display)装置1は、図1に示すように、例えば、車両2のダッシュボードに設けられ、ウインドシールド3に向けて表示光Lを放射する。ウインドシールド3で反射した表示光Lは、ユーザ4に表示光Lが表す画像の虚像Vを視認させる。虚像Vは、車両2に関する各種情報(以下、車両情報と言う。)を示し、ウインドシールド3を介して車両2の前方に表示される。
【0011】
HUD装置1は、図2図4に示すように、合成レーザ光出力部10と、ペルチェ素子20と、ヒートシンク30と、温度検出部40と、光強度検出部50と、走査部60と、透過スクリーン70と、反射部80と、筐体90と、制御ユニット100と、光源ドライバ210と、ペルチェ素子20を駆動する駆動部220と、走査制御部260と、を備える。
【0012】
合成レーザ光出力部10は、合成レーザ光RGBを出力する構成であり、図3に示すように、レーザ光を発する光源11と、集光部12と、合成部13と、透過膜14とを備える。
【0013】
光源11は、LD(Laser Diode)からなり、複数設けられている。複数の光源11のうち、赤色レーザ光Rを発するものを光源11aとし、緑色レーザ光Gを発するものを光源11bとし、青色レーザ光Bを発するものを光源11cとする。光源11a~11cは、光源ドライバ210によって駆動され、それぞれの発光強度及び発光タイミングが調整される。
【0014】
集光部12は、合成レーザ光RGBを収束光とするための構成であり、赤色レーザ光Rを集光する集光レンズ12aと、緑色レーザ光Gを集光する集光レンズ12bと、青色レーザ光Bを集光する集光レンズ12cとを備える。
【0015】
合成部13は、赤色レーザ光R、緑色レーザ光G及び青色レーザ光Bを合成することで生成した合成レーザ光RGBを放射する。合成部13は、赤色レーザ光Rを反射する反射鏡13aと、赤色レーザ光Rを透過し、緑色レーザ光Gを反射するダイクロイックミラー13bと、赤色レーザ光R及び緑色レーザ光Gを透過し、青色レーザ光Bを反射するダイクロイックミラー13cとを有する。
【0016】
透過膜14は、合成レーザ光RGBの光路上に設けられ、例えば5%程度の反射率を有する透光性の部材である。透過膜14を透過した合成レーザ光RGBは、走査部60へ向かう。透過膜14で反射した合成レーザ光RGBの一部は、光強度検出部50へ向かう。
【0017】
図3に示すペルチェ素子20は、ペルチェ効果を利用した板状の熱電素子であり、駆動電流が供給されると一方の面が吸熱し、その反対面が発熱する。なお、駆動電流の向きを逆にすることで、ペルチェ素子20の吸熱する面と発熱する面とを逆にすることができる。ペルチェ素子20は、光源11a~11cの各々に対応して複数設けられている。ペルチェ素子20は、駆動部220から供給される駆動電流に応じて、対応する光源11を冷却又は加熱する。複数のペルチェ素子20のうち、光源11aに接続されるものをペルチェ素子20aとし、光源11bに接続されるものをペルチェ素子20bとし、光源11cに接続されるものをペルチェ素子20cとする。
【0018】
なお、ペルチェ素子20は、対応する光源11を冷却又は加熱することができれば、対応する光源11に接触していなくともよく、基板などの部材を介して対応する光源11の近傍に設けられていてもよい。また、本実施形態においては、光源11a~11cの各々に対応してペルチェ素子20を設けた例を示したが、光源11a~11cを冷却又は加熱することができれば、ペルチェ素子20の数は任意である。
【0019】
ヒートシンク30は、熱伝導率に優れる金属等の部材により形成され、ペルチェ素子20a~20cの各々に対応して複数設けられている。複数のヒートシンク30のうち、ペルチェ素子20aに接続されるものをヒートシンク30aとし、ペルチェ素子20bに接続されるものをヒートシンク30bとし、ペルチェ素子20cに接続されるものをヒートシンク30cとする。ヒートシンク30のペルチェ素子20から離れる端部は、筐体90の外部に突出するとともに、表面積を大きくするフィン形状を有する。ヒートシンク30は、ペルチェ素子20からの熱を吸収し、筐体90の外部に放出することにより、ペルチェ素子20による光源11の冷却を補助する。
【0020】
温度検出部40は、サーミスタ等を用いた周知の温度センサから構成され、光源11の温度である光源温度を検出する。温度検出部40は、検出した光源温度を示す信号を制御ユニット100の制御部110へ出力する。温度検出部40は、光源11a~11cの各々に対応して複数設けられている。複数の温度検出部40のうち、光源11aの温度を検出するものを温度検出部40aとし、光源11bの温度を検出するものを温度検出部40bとし、光源11cの温度を検出するものを温度検出部40cとする。なお、温度検出部40は、光源11a~11cの周囲温度を纏めて検出する構成であってもよい。
【0021】
光強度検出部50は、フォトダイオード、フォトトランジスタ等から構成され、合成レーザ光RGBを受け、受けた光の強度(光強度)を検出する。後述のように、光源11a~11cはフィールドシーケンシャル方式で駆動されるため、光強度検出部50は、赤色レーザ光R、緑色レーザ光G及び青色レーザ光Bの各々の光強度を順次検出することができる。
【0022】
図2に示す走査部60は、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical System)ミラーから構成される。走査部60は、合成レーザ光出力部10から出力された合成レーザ光RGBを受け、合成レーザ光RGBを走査して透過スクリーン70上に画像Mを生成する。また、走査部60は、自身が有する各ミラーを動かすピエゾ素子の時間毎の振れ位置を検出する機能を有し、検出した位置を示す走査位置検出データを走査制御部260に出力する。
【0023】
透過スクリーン70は、走査部60に走査された合成レーザ光RGBを背面(図2の下方に向く面)で受けることで、その反対面(図2の上方に向く面)に画像Mを表示する。これにより、透過スクリーン70から画像Mを表す表示光Lが反射部80に向かって放射される。透過スクリーン70は、例えば、ホログラフィックディフューザ、マイクロレンズアレイ、偏光板等から構成される。
【0024】
反射部80は、表示光Lを反射してウインドシールド3へ導く構成であり、光路変更鏡81と、凹面鏡82とを有する。光路変更鏡81は、透過スクリーン70から放射された表示光Lの光路を変更する。具体的に、光路変更鏡81で反射した表示光Lは、凹面鏡82に向かう。光路変更鏡81は、例えば平面鏡であるが、画像Mの像歪みを補正する曲面を有する曲面鏡であってもよい。光路変更鏡81からの表示光Lをウインドシールド3に向けて反射する凹面鏡82の機能により、虚像Vは、透過スクリーン70に表示されている画像Mが拡大されたサイズでユーザ4に視認される。凹面鏡82は、制御部110の制御で動作する凹面鏡駆動部82aによって回転駆動される。制御部110は、凹面鏡駆動部82aを介して凹面鏡82の回転位置を変更することで、ユーザ4から見た虚像Vの表示位置を調整可能である。
【0025】
筐体90は、上記の各部を収容する構成であり、合成樹脂、金属等から遮光性を有して箱状に形成される。なお、筐体90は、複数の部材の組み合わせで構成されてもよい。筐体90には、ウインドシールド3に向かって開口する開口部90aが設けられている。筐体90には、開口部90aを塞ぐ透光板91が取り付けられる。透過スクリーン70から発せられ、光路変更鏡81、凹面鏡82の順で反射した表示光Lは、透光板91を透過して、ウインドシールド3に向かって放射される。
【0026】
図4に示す制御ユニット100は、HUD装置1の全体動作を制御するコンピュータであり、制御部110と、記憶部120とを備える。制御部110は、CPU(Central Processing Unit)を含むプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等から構成される。記憶部120は、Flashメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等から構成され、制御部110のCPUの処理手順を定める動作プログラム、後述の各種設定値、閾値、関数等の種々のデータを記憶する。動作プログラムは、後述のペルチェ制御処理を実行するためのプログラムを含む。
【0027】
制御部110は、例えば、車両2のECU(Electronic Control Unit)等から映像信号を取得する。制御部110は、取得した映像信号に基づき、光源ドライバ210を介して光源11a~11cの各々を制御すると共に、走査制御部260を介して走査部60を制御することで、映像信号が要求する画像Mを透過スクリーン70上に生成する。
【0028】
光源ドライバ210は、制御部110の制御の下で、光源11a~11cの各々に電流を供給する周知の駆動回路から構成される。光源ドライバ210は、例えば、PAM(Pulse Amplitude Modulation)、PWM(Pulse Width Modulation)等の方式で光源11a~11cを駆動する。光源ドライバ210は、制御部110の制御の下で光源11a~11cのそれぞれを所望の発光強度及びタイミングで駆動する。具体的に、光源ドライバ210は、光源11a~11cのそれぞれを順次点灯させるフィールドシーケンシャルカラー方式で光源11a~11cを駆動する。制御部110は、光源ドライバ210の動作を制御する際に、光強度検出部50から取得した光源11a~11cの各々の光強度に基づきフィードバック制御を行うことで、光源11a~11cが所望の発光強度になるように監視制御を行う。
【0029】
走査制御部260は、制御部110の制御の下で走査部60を駆動するドライバIC(Integrated Circuit)等から構成される。走査制御部260は、走査部60から出力される走査位置検出データに基づいてフィードバックデータを生成し、制御部110へ出力する。制御部110は、走査制御部260から供給されるフィードバックデータに基づいて、透過スクリーン70上における現在の合成レーザ光RGBの走査位置を特定する。
【0030】
駆動部220は、ペルチェ素子20a~20cの各々に対応するスイッチング素子を有する駆動回路からなる。駆動部220は、制御部110の制御の下でペルチェ素子20a~20cの各々に供給する駆動電流を調整する。制御部110は、駆動部220のスイッチング素子を切り替えるためのPWM信号を生成し、駆動部220に出力する。駆動部220は、PWM信号に応じてスイッチング素子を切り替えることで、ペルチェ素子20a~20cの各々に供給する駆動電流を調整する。
【0031】
なお、駆動部220とペルチェ素子20a~20cの各々との間に、ローパスフィルタ回路を設けてもよい。ローパスフィルタ回路は、例えば、LC回路又はRC回路であればよい。また、制御ユニット100、光源ドライバ210、走査制御部260及び駆動部220の電源は、バッテリー等からの入力電圧を降圧する電源回路(図示せず)から供給される。
【0032】
この実施形態の制御部110は、図5に示すペルチェ制御処理を所定の制御周期で(つまり、所定の制御期間毎に)実行し、温度検出部40から光源温度を取得するとともに光源11の目標温度を決定し、光源温度が目標温度に近付くようにペルチェ素子20の動作を制御する。制御周期は、例えば50msecである。ペルチェ制御処理を実行する際に制御部110が持つ機能は、以下に述べるペルチェ制御処理とともに説明する。
【0033】
なお、ペルチェ制御処理は、ペルチェ素子20a~20cの各々に対して同様の手順で実行される。そのため、以下では、ペルチェ素子20a~20cのうち任意のペルチェ素子20に対する制御について説明する。同様の理由により、以下では、光源11a~11cのうち任意のペルチェ素子20に対応するものを光源11と表記し、ヒートシンク30a~30cのうち任意のペルチェ素子20に対応するものをヒートシンク30と表記する。例えば、制御部110は、電源投入によって起動するとペルチェ制御処理を開始する。
【0034】
(ペルチェ制御処理)
制御部110は、ペルチェ制御処理を開始すると、デューティ制限設定処理(ステップS100)、目標温度決定処理(ステップS200)、デューティ決定処理(ステップS300)、ラッシュ電流対策処理(ステップS400)、PWM信号出力処理(ステップS500)の順で処理を実行する。
【0035】
(デューティ制限設定処理)
まず、制御部110は、デューティ制限設定処理(ステップS100)を実行することで、後のデューティ決定処理(ステップS300)でPWM信号のデューティ比を決定する際の、デューティ比の制限を設定する。デューティ比が大きい程、ペルチェ素子20に供給される駆動電流が大きくなる。そのため、デューティ比の制限は、ペルチェ素子20に供給される駆動電流の制限に相当する。
【0036】
ここで、ヒートシンク30の放熱特性によっては、必ずしもデューティ比が1(100%)である場合にペルチェ素子20の最大効率とはならない。ある閾値まではデューティ比の上昇に比例してペルチェ素子20による冷却能力が上昇する。しかしながら、ペルチェ素子20の冷却能力はヒートシンク30の放熱能力を超えることができない。ペルチェ素子20からヒートシンク30への排熱量が、ヒートシンク30の放熱能力を超えて飽和すると、ペルチェ素子20に供給される駆動電流の一部が無駄になり、冷却効率が低下する。この事項を考慮し、制御部110は、デューティ比の制限値を設定する。制御部110は、ペルチェ素子20を冷却駆動する場合のデューティ比の制限である冷却時制限値と、ペルチェ素子20を加熱駆動する場合のデューティ比の制限である加熱時制限値とを、互いに異なる値に設定する。具体的に、制御部110は、図6に示すように、加熱時制限値DLhを1未満の固定値(例えばDLh=0.86)に設定する。
【0037】
一方、制御部110は、温度検出部40で検出された光源温度Tに応じて、冷却時制限値DLcを以下(A)~(C)のように設定する。なお、制御部110は、ペルチェ素子20を冷却駆動する際に駆動部220に出力するPWM信号のデューティ比を負の値で表す。従って、図6に示すDLcは、デューティ比の大きさ(絶対値)を示す。
(A)制御部110は、温度検出部40で検出された光源温度Tが第1設定温度T1(例えばT1=100.75℃)以下の場合には、冷却時制限値DLcを第1の値D1(例えばD1=0.67)に設定する。つまり、T≦T1の場合、DLc=D1である。
(B)制御部110は、光源温度Tが第1設定温度T1よりも高い第2設定温度T2(例えばT2=120.75℃)以上の場合には、冷却時制限値DLcを第1の値D1よりも低い第2の値D2(例えばD2=0.45)に設定する。つまり、T≧T2の場合、DLc=D2である。
(C)制御部110は、光源温度Tが前記第1設定温度T1と第2設定温度T2の間である場合には、光源温度T及び制限値DLの関係を示す関数f(T)と、取得した光源温度Tとに基づいて算出した値を冷却時制限値DLcに設定する。関数f(T)は、第2の値D2及び第1の値D1の差分と、第2設定温度T2及び第1設定温度T1の差分とを除算して得られる傾きαを有する直線を示し、DL=f(T)=α(T-T2)+D2の式で表せる。但し、α=(D2-D1)/(T2-T1)である。つまり、T1<T<T2の場合、DLc=f(T)である。
【0038】
なお、DLhと、D1、D2、T1及びT2によって定まるDLcとは、消費電力、ペルチェ素子20の加熱又は吸熱効率、ヒートシンク30を鑑みて、実験により予め設定することができる。また、制御部110は、光源温度Tが何らかの理由により取得できない場合、安全面を考慮して、DLc=D2とすればよい。
【0039】
制御部110は、デューティ比の制限値である加熱時制限値DLh及び冷却時制限値DLcを設定するとデューティ制限設定処理(ステップS100)を終了する。
【0040】
(目標温度決定処理)
目標温度決定処理(ステップS200)は図7に示すフローチャートに従って実行される。まず、制御部110は、光源温度Tを取得できたか否かを判別する(ステップS201)。光源温度Tを取得した場合(ステップS201;Yes)、制御部110は、取得した光源温度Tが温度範囲Rtの上限値Tmaxより大きい(T>Tmax)か否かを判別する(ステップS202)。温度範囲Rtは、光源11がレーザ光を高出力可能な範囲として予め定められている。例えば、温度範囲Rtの上限値Tmaxは36℃であり、下限値Tminは-39℃である。
【0041】
T>Tmaxである場合(ステップS202;Yes)、制御部110は、上限値Tmaxを目標温度Ttに決定する(ステップ203)。このステップS203の処理は、図8に示すCase1に相当する。
【0042】
T≦Tmaxである場合(ステップS202;No)、制御部110は、取得した光源温度Tが温度範囲Rtの下限値Tminより小さい(T<Tmin)か否かを判別する(ステップS204)。T<Tminである場合(ステップS204;Yes)、制御部110は、下限値Tminを目標温度Ttに決定する(ステップ205)。このステップS205の処理は、図8に示すCase2に相当する。
【0043】
ステップS204でT≧Tminである場合(ステップS204;No)、つまり、Tmin≦T≦Tmaxである場合、制御部110は、前回の制御期間で取得した光源温度T_L(以下、前回光源温度T_Lと言う。)が存在するか否かを判別する(ステップS206)。
【0044】
前回光源温度T_Lが存在する場合(ステップS206;Yes)、制御部110は、前回の制御期間でのデューティ比である前回デューティ比の絶対値が予め定められた閾値以上であるか否かを判別する(ステップS207)。この閾値は、高デューティ駆動を実行しているか否かとなる基準値として予め定められる。前回デューティ比の絶対値が閾値未満である場合(ステップS207;No)、つまり、高デューティ駆動でないと見做せる場合には、制御部110は、目標温度決定処理を終了する。これにより、今回の制御期間においても、前回の制御期間で決定された目標温度Ttである前回目標温度Tt_Lがそのまま維持される。このようにステップS207でNoの場合は、図8に示すCase3に相当する。
【0045】
ステップS207で前回デューティ比の絶対値が閾値以上である場合(ステップS207;Yes)、つまり、高デューティ駆動であると見做せる場合には、制御部110は、前回デューティ比が0以下であるか(つまり、前回の制御期間でペルチェ素子20を冷却駆動していたか)否かを判別する(ステップS208)。
【0046】
前回の制御期間でペルチェ素子20を冷却駆動していた場合(ステップS208;Yes)、制御部110は、消費電力を低減する観点で過冷却か否かを判別する(ステップS209)。ここで、制御部110は、温度範囲Rtに含まれる目標温度Ttを決定する際に、目標温度Ttを設定された変化幅ΔTで変更することが可能である。変化幅ΔTは、熱衝撃試験で求めた温度勾配に追従可能な値に設定され、例えば、0.0625℃/50msec=1.25℃/secである。例えば、制御部110は、前回目標温度Tt_Lに変化幅ΔTを加算した値が上限値Tmax以下(Tt_L+ΔT≦Tmax)である場合に過冷却であると判別する。
【0047】
ステップS209で過冷却と判別すると(ステップS209;Yes)、制御部110は、今回の制御期間では、前回目標温度Tt_Lに変化幅ΔTを加算した値を目標温度Ttに決定する(ステップS210)。つまり、Tt=Tt_L+ΔTに決定する。このステップS210の処理は、図8に示すCase4に相当する。
【0048】
前回の制御期間でペルチェ素子20を加熱駆動していた場合(ステップS208;No)、制御部110は、消費電力を低減する観点で過加熱か否かを判別する(ステップS211)。例えば、制御部110は、前回目標温度Tt_Lから変化幅ΔTを減算した値が下限値Tmin以上(Tt_L-ΔT≧Tmin)である場合に過加熱であると判別する。
【0049】
ステップS211で過加熱と判別すると(ステップS211;Yes)、制御部110は、今回の制御期間では、前回目標温度Tt_Lから変化幅ΔTを減算した値を目標温度Ttに決定する(ステップS212)。つまり、Tt=Tt_L-ΔTに決定する。このステップS212の処理は、図8に示すCase5に相当する。
【0050】
ステップS209でNo、又は、ステップS211でNoの場合、制御部110は、目標温度決定処理を終了する。この場合、今回の制御期間においても、前回の制御期間で決定された目標温度Ttである前回目標温度Tt_Lがそのまま維持されるため、前述のCase3と同様である。
【0051】
ステップS206で前回光源温度T_Lが存在しない場合(ステップS206;No)、制御部110は、目標温度Ttを光源温度Tに決定する(ステップS213)。このようにステップS206でNoの場合、現在、光源温度Tが上昇しているか下降しているかを特定できないものの光源温度Tが温度範囲Rtの中で推移していると見做せるため、制御部110は、Tt=Tとする。
【0052】
ステップS201で光源温度Tを取得できなかった場合(ステップS201;No)、制御部110は、目標温度Ttを標準温度Tnに決定する(ステップS214)。標準温度Tnは、温度範囲Rtに含まれ、且つ、光源11が最大出力できる温度として予め定められる。例えば、Tn=30℃である。
【0053】
ステップS203、S205、S210、S212~S214の処理の実行後、制御部110は、目標温度決定処理(ステップS200)を終了する。続いて、制御部110は、図5に示すデューティ決定処理(ステップS300)を実行する。
【0054】
(デューティ決定処理)
デューティ決定処理(ステップS300)で、制御部110は、目標温度決定処理(ステップS200)で決定した目標温度Ttと、今回の制御期間で取得した光源温度Tとの差分を偏差e(e=Tt-T)とするフィードバック制御を実行して、PWM信号の暫定デューティ比Uを算出する。そして、制御部110は、算出した暫定デューティ比Uに基づいて、実際に出力するPWM信号のデューティ比Urを決定する。制御部110が実行するフィードバック制御は、周知の手法であればよく、例えば、P制御、PI制御、PID制御などを用いることができる。
【0055】
具体的に、制御部110は、偏差eがe<0である場合、ペルチェ素子20を冷却駆動すると決定する。この場合、算出した暫定デューティ比UがステップS100で設定した冷却時制限値DLcを超える場合(U>DLc)、制御部110は、冷却時制限値DLcをデューティ比Urに決定する(Ur=DLc)。一方で、暫定デューティ比Uが冷却時制限値DLcを超えない場合(U≦DLc)、制御部110は、暫定デューティ比Uをデューティ比Urに決定する(Ur=U)。なお、ここでのUとDLcの値の比較は、絶対値での比較である。
【0056】
制御部110は、偏差eがe≧0である場合、ペルチェ素子20を加熱駆動すると決定する。この場合、算出した暫定デューティ比UがステップS100で設定した加熱時制限値DLhを超える場合(U>DLh)、制御部110は、加熱時制限値DLhをデューティ比Urに決定する(Ur=DLh)。一方で、暫定デューティ比Uが加熱時制限値DLhを超えない場合(U≦DLh)、制御部110は、暫定デューティ比Uをデューティ比Urに決定する(Ur=U)。
【0057】
ここで一例として、制御部110が暫定デューティ比UをPI制御により算出する例を説明する。比例項をUp、比例ゲインをKp、積分項をUi、積分ゲインをKiとすると、制御部110は、U=Up+Uiの式から暫定デューティ比Uを算出する。但し、Up=e×Kpであり、Ui=Ui_L+e×Kiである。なお、Ui_Lは、前回の制御期間に算出した積分項を示す。この実施形態では、ペルチェ素子20を冷却駆動する場合と、加熱駆動する場合とで、Kp及びKiを異なる値に設定している。これは、冷却時と加熱時でペルチェ素子20の性能が異なるためである。具体的に、ペルチェ素子20を冷却駆動する場合のKpは加熱駆動する場合のKpよりも大きく、且つ、ペルチェ素子20を冷却駆動する場合のKiは加熱駆動する場合のKiよりも大きい。Kp及びKiは、ペルチェ素子20の性能、熱抵抗等を鑑みて、実験により予め定められる。なお、PID制御を採用する場合は、微分ゲインKdもペルチェ素子20を冷却駆動する場合と加熱駆動する場合とで異なる値に設定することができる。
【0058】
制御部110は、デューティ比Urを決定するとデューティ決定処理(ステップS300)を終了する。
【0059】
(ラッシュ電流対策処理)
ラッシュ電流対策処理(ステップS400)では、制御部110は、今回の制御期間がペルチェ制御処理を開始してから光源温度Tを何回目に取得した期間であるかをカウントし、カウント数nが所定数m(例えば、m=5)未満である場合(n<m)、必要に応じて、デューティ比Urをシステム起動時に専用の起動時デューティ比Usに変更する。これにより、ラッシュ電流を低減する。
【0060】
具体的に、制御部110は、ステップS300でペルチェ素子20を冷却駆動すると決定した場合、起動時デューティ比Usを、Us=DLc×n/mにより算出する。そして、ステップS300で決定したデューティ比Urが算出した起動時デューティ比Usよりも大きい場合(Ur>Us)、制御部110は、デューティ比Urを起動時デューティ比Usに変更する。一方で、ステップS300で決定したデューティ比Urが起動時デューティ比Us以下の場合(Ur≦Us)、制御部110は、デューティ比Urを変更しない。なお、ここでのUrとUsの値の比較は、絶対値での比較である。
【0061】
また、制御部110は、ステップS300でペルチェ素子20を加熱駆動すると決定した場合、起動時デューティ比Usを、Us=DLh×n/mにより算出する。そして、ステップS300で決定したデューティ比Urが算出した起動時デューティ比Usよりも大きい場合(Ur>Us)、制御部110は、デューティ比Urを起動時デューティ比Usに変更する。一方で、ステップS300で決定したデューティ比Urが起動時デューティ比Us以下の場合(Ur≦Us)、制御部110は、デューティ比Urを変更しない。
【0062】
制御部110は、システム起動時と見做せるカウント数nがn<mである期間には、上記のラッシュ対策処理を実行し、デューティ比の大きさを徐々に増やすことで、ラッシュ電流を低減する。なお、カウント数nがn≧mである場合、制御部110は、デューティ比Urを変更せずに、ラッシュ電流対策処理を終了する。
【0063】
(PWM信号出力処理)
PWM信号出力処理(ステップS500)で、制御部110は、以上の処理で決定したデューティ比UrのPWM信号を駆動部220に出力することでペルチェ素子20を冷却又は加熱駆動する。なお、ペルチェ素子20を冷却駆動する場合、駆動部220は、制御部110の制御の下で加熱駆動する場合と反対極性の駆動電流をペルチェ素子20に供給する。以上がペルチェ制御処理である。
【0064】
以上に説明したHUD装置1は、レーザ光によって生成された画像Mを表す表示光Lを放射し、画像Mの虚像Vを表示する。HUD装置1は、レーザ光を発する光源11と、光源11を冷却又は加熱するペルチェ素子20と、光源11の温度である光源温度Tを検出する温度検出部40と、所定の制御期間毎に温度検出部40から光源温度Tを取得するとともに光源11の目標温度Ttを決定し、光源温度Tが目標温度Ttに近付くようにペルチェ素子20の動作を制御する制御部110と、を備える。
【0065】
(1)HUD装置1の制御部110は、予め定められた温度範囲Rtに含まれる目標温度Ttを決定するとともに、目標温度Ttを設定された変化幅ΔTで変更可能である。制御部110は、前回の制御期間でペルチェ素子20を冷却駆動し、且つ、前回目標温度Tt_Lに変化幅ΔTを加算した値が温度範囲Rtの上限値Tmax以下である第1条件を満たす場合には、今回の制御期間では、前回目標温度Tt_Lに変化幅ΔTを加算した値を目標温度Ttに決定する。制御部110は、前回の制御期間でペルチェ素子20を加熱駆動し、且つ、前回目標温度Tt_Lから変化幅ΔTを減算した値が温度範囲Rtの下限値Tmin以上である第2条件を満たす場合には、今回の制御期間では、前回目標温度Tt_Lから変化幅ΔTを減算した値を目標温度Ttに決定する。
【0066】
上記(1)の構成により、ペルチェ素子20により光源11を必要以上に加熱又は冷却することを抑制できるため、レーザ光を発する光源11を良好な温度に保ちつつ、消費電力を低減できる。
【0067】
(2)制御部110は、今回の制御期間において取得した光源温度Tが上限値Tmaxよりも大きい場合には上限値Tmaxを目標温度Ttに決定し、今回の制御期間において取得した光源温度Tが下限値Tminよりも小さい場合には下限値Tminを目標温度Ttに決定する。
【0068】
上記(2)の構成により、ペルチェ素子20により光源11を必要以上に加熱又は冷却することを抑制できるため、消費電力を低減できる。
【0069】
(3)具体的に、HUD装置1は、ペルチェ素子20に駆動電流を供給する駆動部220をさらに備える。制御部110は、駆動部220に出力するPWM信号のデューティ比Urを決定し、駆動部220は、デューティ比Urに応じた大きさの駆動電流をペルチェ素子20に供給する。
【0070】
(4)制御部110は、前回の制御期間でのデューティ比Urである前回デューティ比が予め定められた閾値以上であって上記(1)の第1条件を満たしている場合に、今回の制御期間では、前回目標温度Tt_Lに変化幅ΔTを加算した値を目標温度Ttに決定する。また、制御部110は、前回デューティ比が閾値以上であって上記(1)の第2条件を満たしている場合に、今回の制御期間では、前回目標温度Tt_Lから変化幅ΔTを減算した値を目標温度Ttに決定する。また、制御部110は、前回デューティ比が閾値未満であって今回の制御期間で取得した光源温度Tが温度範囲Rtに含まれている場合には、今回の制御期間においても前回目標温度Tt_Lをそのまま維持する(つまり、Tt=Tt_L)。
【0071】
上記(4)の構成により、ペルチェ素子20により光源11を必要以上に加熱又は冷却することを抑制できるため、消費電力を低減できる。なお、閾値を0(ゼロ)とし、制御部110は、高デューティ駆動であるか否かに関わらずステップS207からS208に処理を進めて、消費電力を低減してもよい。
【0072】
(5)制御部110は、ペルチェ素子20を冷却駆動する場合のデューティ比の制限である冷却時制限値DLcと、ペルチェ素子20を加熱駆動する場合のデューティ比の制限である加熱時制限値DLhとを、互いに異なる値に設定する。
【0073】
(6)具体的に、制御部110は、光源温度Tが第1設定温度T1以下の場合には、冷却時制限値DLcを第1の値D1に設定する。また、制御部110は、光源温度Tが第2設定温度T2以上の場合には、冷却時制限値DLcを第2の値D2に設定する。また、制御部110は、光源温度Tが第1設定温度T1と第2設定温度T2の間である場合には、関数f(T)と、取得した光源温度Tとに基づいて算出した値を冷却時制限値DLcに設定する。
【0074】
上記(5)、(6)の構成により、ペルチェ素子20の性能を鑑みて、光源11の温度を良好に調整できる。
【0075】
(7)制御部110は、目標温度Ttと光源温度Tとの差分を偏差eとするフィードバック制御を実行してPWM信号の暫定デューティ比Uを算出する。制御部110は、偏差eに基づきペルチェ素子20を冷却駆動すると決定すると、暫定デューティ比Uが冷却時制限値DLcを超える場合には冷却時制限値DLcをデューティ比Urに決定する一方で、暫定デューティ比Uが冷却時制限値DLcを超えない場合には暫定デューティ比Uをデューティ比Urに決定する。また、制御部110は、偏差eに基づきペルチェ素子20を加熱駆動すると決定すると、暫定デューティ比Uが加熱時制限値DLhを超える場合には加熱時制限値DLhをデューティ比Urに決定する一方で、暫定デューティ比Uが加熱時制限値DLhを超えない場合には暫定デューティ比Uをデューティ比Urに決定する。
【0076】
上記(7)の構成により、ペルチェ素子20に過剰な駆動電流を供給することを回避できるため、消費電力を低減できる。
【0077】
なお、本開示は以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本開示の要旨を変更しない範囲で、実施形態に適宜の変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。
【0078】
制御部110は、ペルチェ素子20a~20cのそれぞれに対してペルチェ制御処理を順次実行してもよい。また、制御部110は、ペルチェ素子20a~20cに対してペルチェ制御処理を並列処理で実行してもよい。
【0079】
反射部80を構成する鏡を何枚用いるか、どのように表示光Lの光路を折り返すか等は、設計に応じて適宜変更可能である。
【0080】
表示光Lの投射対象は、ウインドシールド3に限定されず、板状のハーフミラー、ホログラム素子等により構成されるコンバイナであってもよい。
【0081】
HUD装置1が搭載される車両2の種類は限定されない。HUD装置1は、自動四輪車、自動二輪車など様々な車両に搭載可能である。また、HUD装置1は、航空機、船舶等、車両2以外の乗り物に搭載されてもよい。
【0082】
以上の説明では、本開示の理解を容易にするために、公知の技術的事項の説明を適宜省略した。
【符号の説明】
【0083】
1…HUD装置
10…合成レーザ光出力部
11,11a~11c…光源
20,20a~20c…ペルチェ素子
30,30a~30c…ヒートシンク
40,40a~40c…温度検出部
100…制御ユニット、110…制御部、120…記憶部
220…駆動部
T…光源温度、Tt…目標温度、Tt_L…前回目標温度、ΔT…変化幅
Rt…温度範囲、Tmax…上限値、Tmin…下限値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8