(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114582
(43)【公開日】2022-08-08
(54)【発明の名称】子供用育児器具
(51)【国際特許分類】
B60N 2/26 20060101AFI20220801BHJP
B60N 2/42 20060101ALI20220801BHJP
B60R 22/10 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
B60N2/26
B60N2/42
B60R22/10 105
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021010911
(22)【出願日】2021-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】310019730
【氏名又は名称】グラコ・チルドレンズ・プロダクツ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 裕司
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087CD04
3B087CE06
3B087DE06
(57)【要約】
【課題】簡易な構造であり、子供を座らせる場合に、肩ベルトが邪魔になることがなく、肩ベルトで確実に子供を拘束することができる子供用育児器具を提供すること。
【解決手段】子供用育児器具(1)は、座席(3)と、肩ベルト(10)と、肩ベルト(10)に沿って設けられ、拘束位置(
図2(A))と開放位置(
図2(B))とを取り得るように、背もたれ部(5)に回動可能に支持された肩ベルト保持部材(71)と、肩ベルト保持部材(71)と背もたれ部(5)とが交差する領域に設けられ、肩ベルト保持部材(71)を拘束位置に対応する第1位置(
図2(A))と、開放位置に対応する第2位置(
図2(B))とに切り替える切り替え手段とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座面部と背もたれ部とを含む座席と、
前記座席に着座した子供の肩を拘束する肩ベルトと、
前記肩ベルトとともに動くように前記肩ベルトに沿って設けられ、前記肩ベルトが子供の体を拘束する拘束位置と、前記座席上に開放空間を形成する開放位置とを取り得るように、前記背もたれ部に回動可能に支持された肩ベルト保持部材と、
前記肩ベルト保持部材と前記背もたれ部とが交差する領域に設けられ、前記肩ベルト保持部材を前記拘束位置に対応する第1位置と、前記開放位置に対応する第2位置とに切り替える切り替え手段とを備え、
前記切り替え手段は、前記肩ベルト保持部材の基端に設けられる当接部と、前記背もたれ部に設けられ、前記第2位置にある前記肩ベルト保持部材の前端部が下方へ移動しないように前記当接部に当接する当たり止め部とを含む、子供用育児器具。
【請求項2】
前記背もたれ部は、前記切り替え手段の当接部を受け入れて案内する案内領域が設けられており、前記案内領域は、前記当たり止め部を含む、請求項1に記載の子供用育児器具。
【請求項3】
前記案内領域は、前記肩ベルト保持部材の前端部が下方へ移動することを禁止する移動禁止領域と、前記移動禁止領域から幅方向にずれて位置し、前記肩ベルト保持部材の前端部が下方へ移動することを許容する移動許容領域とを有する、請求項2に記載の子供用育児器具。
【請求項4】
前記移動禁止領域と前記移動許容領域との間には、前記当接部の幅方向への移動を禁止する凸部を有する、請求項3に記載の子供用育児器具。
【請求項5】
前記背もたれ部は、背部と、前記背部の前面上に重なって、上下方向に摺動可能なスライド部材とを含み、
前記肩ベルト保持部材は、前記スライド部材に回動可能に支持されている、請求項1~4のいずれかに記載の子供用育児器具。
【請求項6】
前記スライド部材は、子供の背中側に位置する前方部分と、前記背部側に位置する後方部分と、前記前方部分と前記後方部分の間に位置するプレートとを含み、
前記プレートは、前記肩ベルト保持部材が回動可能に支持され、前記切り替え手段の当たり止め部が設けられている、請求項5に記載の子供用育児器具。
【請求項7】
前記肩ベルトと前記肩ベルト保持部材とを外方から覆い、前記肩ベルト保持部材の動作を前記肩ベルトに伝える覆い部材をさらに備える、請求項1~6のいずれかに記載の子供用育児器具。
【請求項8】
前記肩ベルト保持部材は、弾性変形可能な棒状部材である、請求項1~7のいずれかに記載の子供用育児器具。
【請求項9】
前記肩ベルト保持部材は、前記背もたれ部に球体軸部を介して回動可能に支持されている、請求項1~8のいずれかに記載の子供用保持器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、子供用育児器具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、チャイルドシートなどの子供用育児器具には、子供を座席に支持するための肩ベルトが設けられている。子供をチャイルドシートの座席に座らせる場合、肩ベルトの上に子供を座らせた後、子供の下になった肩ベルトを外側に引き出して連結するか、肩ベルトを座席の側方に避けた後に子供を座らせて連結する必要があり、手間がかかっていた。
【0003】
このような問題を解決するため、子供をチャイルドシートに座らせる場合に、肩ベルトが邪魔にならないようにしたチャイルドシートとして、たとえば、特開2008-290587号公報(特許文献1)、米国特許7445286号公報(特許文献2)および特開2019-26147号公報(特許文献3)などが知られている。
【0004】
特許文献1,2のチャイルドシートは、肩ベルトに常に開放させる方向にテンションがかかっているため、肩ベルトを開放した場合に、肩ベルトが上方に跳ね上がる。そのため、子供をチャイルドシートに座らせて肩ベルトを装着する場合に、肩ベルトが邪魔になることがない。
【0005】
特許文献3のチャイルドシートは、操作部を操作することで、肩ベルトを上方に跳ね上げる跳ね上げ保持部が跳ね上がった状態で保持されるため、座席シート上に解放空間が形成される。そのため、子供をチャイルドシートに座らせて肩ベルトを装着する場合に、肩ベルトが邪魔になることがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-290587号公報
【特許文献2】米国特許第7445286号公報
【特許文献3】特開2019-26147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1,2のチャイルドシートは、ベルトを子供に装着した状態であっても、肩ベルトに常に開放させる方向にテンションがかかっているため、子供をチャイルドシートにしっかりと拘束することができない。また、特許文献3のチャイルドシートは、座席シート上に解放空間するために操作部で操作する必要があるため、構造が複雑である。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、簡易な構造であり、子供を座らせる場合に、肩ベルトが邪魔になることがなく、肩ベルトで確実に子供を拘束することができる子供用育児器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のため本発明の一態様に係る子供用育児器具は、座面部と背もたれ部とを含む座席と、座席に着座した子供の肩を拘束する肩ベルトと、肩ベルトとともに動くように肩ベルトに沿って設けられ、肩ベルトが子供の体を拘束する拘束位置と、前記座席上に開放空間を形成する開放位置とを取り得るように、背もたれ部に回動可能に支持された肩ベルト保持部材と、肩ベルト保持部材と背もたれ部とが交差する領域に設けられ、肩ベルト保持部材を拘束位置に対応する第1位置と、開放位置に対応する第2位置とに切り替える切り替え手段とを備え、切り替え手段は、肩ベルト保持部材の基端に設けられる当接部と、背もたれ部に設けられ、第2位置にある肩ベルト保持部材の前端部が下方へ移動しないように当接部に当接する当たり止め部とを含む。
【0010】
好ましくは、背もたれ部は、切り替え手段の当接部を受け入れて案内する案内領域が設けられており、案内領域は、当たり止め部を含む。
【0011】
好ましくは、案内領域は、肩ベルト保持部材の前端部が下方へ移動することを禁止する移動禁止領域と、移動禁止領域から幅方向にずれて位置し、肩ベルト保持部材の前端部が下方へ移動することを許容する移動許容領域とを有する。
【0012】
好ましくは、移動禁止領域と移動許容領域との間には、当接部の幅方向への移動を禁止する凸部を有する。
【0013】
好ましくは、背もたれ部は、背部と、背部の前面上に重なって、上下方向に摺動可能なスライド部材とを含み、肩ベルト保持部材は、スライド部材に回動可能に支持されている。
【0014】
好ましくは、スライド部材は、子供の背中側に位置する前方部分と、背部側に位置する後方部分と、前方部分と後方部分の間に位置するプレートとを含み、プレートは、肩ベルト保持部材が回動可能に支持され、切り替え手段の当たり止め部が設けられている。
【0015】
好ましくは、肩ベルトと肩ベルト保持部材とを外方から覆い、肩ベルト保持部材の動作を肩ベルトに伝える覆い部材をさらに備える。
【0016】
好ましくは、肩ベルト保持部材は、弾性変形可能な棒状部材である。
【0017】
好ましくは、肩ベルト保持部材は、背もたれ部に球体軸部を介して回動可能に支持されている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、簡易な構造であり、子供を座らせる場合に、肩ベルトが邪魔になることがなく、肩ベルトで確実に子供を拘束することができる子供用育児器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施の形態に係るチャイルドシートの斜視図である。
【
図2】実施の形態に係るチャイルドシートの肩ベルトの位置変更を示す模式図であり、(A)は肩ベルトが拘束位置に位置することを示し、(B)は肩ベルトが開放位置に位置することを示す。
【
図4】(A)は肩ベルト保持ユニットの分解斜視図であり、(B)は案内領域の拡大図である。
【
図5】実施の形態に係るチャイルドシートの肩ベルト保持部材の位置変更を示す模式図であり、(A)は肩ベルト保持部材が第1位置(拘束位置)に位置することを示し、(B)は肩ベルト保持部材が途中位置に位置することを示し、(C)は肩ベルト保持部材が第2位置(開放位置)に位置することを示す。
【
図6】肩ベルト保持部材が第1位置(拘束位置)に位置することを示し、(A)は肩ベルト保持ユニットを正面から見た斜視図であり、(B)は裏面から見た斜視図であり、(C)
図6(B)のVc線から見た断面図である。
【
図7】肩ベルト保持部材が途中位置に位置することを示し、(A)は肩ベルト保持ユニットを正面から見た斜視図であり、(B)は裏面から見た斜視図であり、(C)
図7(B)のVIc線から見た断面図である。
【
図8】肩ベルト保持部材が第2位置(開放位置)に位置することを示し、(A)は肩ベルト保持ユニットを正面から見た斜視図であり、(B)は裏面から見た斜視図であり、(C)は
図8(B)のVIIc線から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0021】
(チャイルドシートの概要について)
図1,
図2を参照して、本実施の形態に係る子供用育児器具としてのチャイルドシート1の概要について説明する。チャイルドシート1の説明において、前後方向は、チャイルドシート1の前後方向に対応し、左右方向(幅方向)は、チャイルドシート1の前方から見た左右方向に対応し、上下方向は、チャイルドシート1の上下方向に対応している。
【0022】
チャイルドシート1の基本構造としては、一般的なチャイルドシートの構造と同様であってよく、自動車の座席の上に配置され、乳児や幼児などの子供を安全に乗車させるための装置である。チャイルドシート1は、ベース本体2および座席3を備える。
【0023】
ベース本体2は、乗用自動車の座席シート上に載置され、座席3を下方から支持する。図示は省略するが、ベース本体2の前方端には、乗用自動車の床面に向かって伸びるレッグサポートが設けられ、ベース本体2の後方端には、乗用自動車の座席シートのアンカーに連結するISOFIXが設けられていてもよい。ベース本体2の上方には、ベース本体2に対して回転可能に支持される座席3が設けられている。
【0024】
座席3は、ベース本体2の上側に取り付けられ、ベース本体2に対して回転自在に支持される。
図1では、座席3上において、柔らかい布製部材、たとえばクッション材などの被覆部材が装着されている状態が示されている。
【0025】
座席3は、座面部4と背もたれ部5と含む。座席3には、子供が着座する。そのため、座面部4は、子供の臀部を支持し、背もたれ部5は、座面部4の後方から立ち上がり、子供の背部を支持する。座面部4と背もたれ部5とが交わるコーナー部には、クッション構造体20が着脱可能に設けられる。クッション構造体20は、クッション体22とクッション体22の上面以外を取り囲むハウジング21とを含む。
【0026】
背もたれ部5は、背部50と、背部50の前面上に重なって、上下方向に摺動可能なスライド部材6とを含む。スライド部材6は、背もたれ部5の前面に重なって、上下方向に摺動可能である。スライド部材6は、ヘッドレストとして機能する。そのため、スライド部材6は、子供の後頭部を保護する立壁部61と、子供の側頭部を保護する一対の側壁部66とを含む。側壁部66は、立壁部61の左右方向両端部に取り付けられ、前方に向かって突出する。なお、スライド部材6上においても、座席3と同様に、やわらかい布製部材、たとえばクッション材などの被覆部材が装着されていてもよい。スライド部材6については、後述する。
【0027】
図1に示すように、背もたれ部5には、座席3に着座した子供の両肩を拘束する肩ベルト10が設けられる。また、座面部4には、座席3に着座した子供の股(両太腿)の間を延びる股ベルト11と、子供の腰を拘束する一対の腰ベルト12とが設けられる。これらのベルト10,11,12は、股ベルト11の先端に設けられるバックル14により、子供の腹部付近で連結される。これらのベルト10,11,12は、いわゆる5点ベルトである。
【0028】
肩ベルト10は、たとえば長尺状の帯状の紐である。具体的には、
図2(A),(B)に示すように、肩ベルト10は、ループ状に設けられ、スライド部材6および背部50に設けられる肩ベルト通し穴62を貫通して、背もたれ部5の裏面側を通り、座面部4内を延びている。
【0029】
腰ベルト12は、肩ベルト10と同様に、たとえば長尺状の帯状の紐である。肩ベルト10と腰ベルト12は、それぞれ別のベルトで形成されていなくてもよく、たとえば1本のベルトで連続して設けられていてもよい。
【0030】
股ベルト11は、典型的には、肩ベルト10と同様に帯状の紐であるが、たとえば板状部材および筒状部材などであってもよく、ベルトタイプに限定されない。
【0031】
従来は、子供をチャイルドシートに座らせる場合に、子供の下になったベルトを外側に引き出すか、ベルトを座席の側方に避けた後に子供を座らせる必要があり、特に肩ベルトが邪魔になっていた。それに対し、本実施の形態のチャイルドシート1は、
図2に示すように、肩ベルト10が子供の体を拘束する「拘束位置(
図2(A))」と、背もたれ部5から立ち上がって開放空間を形成する「開放位置(
図2(B))」とを取り得る。これにより、子供をチャイルドシート1に座らせる場合に、座席3に開放空間が形成されるため、肩ベルト10が邪魔にならない。
【0032】
肩ベルト10を拘束位置と開放位置とに位置変更するために、肩ベルト保持ユニット7が設けられている。本実施の形態の肩ベルト保持ユニット7は、スライド部材6に設けられる。肩ベルト保持ユニット7の説明に先立ち、スライド部材6の構成について説明する。
【0033】
(スライド部材について)
図3を参照して、スライド部材6について詳細に説明する。
図3は、スライド部材6の分解斜視図である。
【0034】
上述のように、スライド部材6は、背部50の前面上に重なって、上下方向に摺動可能な部材である。スライド部材6には、肩ベルト10を貫通させる肩ベルト通し穴62が設けられており、子供の成長に応じて、スライド部材6を上下に摺動することができる。
【0035】
図3に示すように、スライド部材6は、子供の背中側に位置する前方部分60と、背部側に位置する後方部分64と、前方部分60と後方部分64の間に位置するプレート80とを含む。換言すると、スライド部材6は、前方部分60と後方部分64とに分かれており、前方部分60と後方部分64の間にプレート80が挟まれている。
【0036】
前方部分60は、前方立壁部61aと、前方立壁部61aの下方に設けられる一対の前方穴部62aと、一対の前方穴部62aの上方に位置する一対の開口部63とを含む。一対の前方穴部62aは、肩ベルト10が貫通する。一対の開口部63は、後述する肩ベルト保持ユニット7の肩ベルト保持部材70が貫通する。
【0037】
後方部分64は、後方立壁部61bと、後方立壁部61bの側端から前方に突出する一対の側壁部66と、後方立壁部61bの側端から下方に突出する一対の脚部67とを含む。後方立壁部61bは、前方立壁部61aと重なり合って立壁部61が形成される。後方立壁部61bの下方には、一対の後方穴部62bが設けられている。一対の後方穴部62bは、前方部分60の一対の前方穴部62aと対応する位置に設けられる。これにより、前方穴部62aおよび後方穴部62bが前後に合体して、一対の肩ベルト通し穴62が形成され、肩ベルト10を貫通させることができる。図示は省略するが、一対の脚部67には、背部50の前面を覆うように設けられ、薄手の素材からなるカバー部材が張り渡されている。
【0038】
前方部分60と後方部分64の間に挟まれているプレート80は、肩ベルト保持ユニット7の一部を構成するとともに、肩ベルト10を開放位置と拘束位置に位置変更させる肩ベルト保持部材70をスライド部材6に対して回動可能に支持している。肩ベルト保持ユニット7について詳細に説明する。
【0039】
(肩ベルト保持ユニットについて)
次に、
図4~
図8をさらに参照して、スライド部材6に設けられる肩ベルト保持ユニット7について説明する。肩ベルト保持ユニット7は、肩ベルト10を開放位置と拘束位置に位置変更させる部材である。
図4(A)は、スライド部材6から幅方向左側に位置する肩ベルト保持ユニット7を取り出して示す分解斜視図であり、
図4(B)は肩ベルト保持ユニット7の案内領域90を説明する図である。なお、
図4(A)以降の矢印Aは、幅方向外方を示している。
図5(A)および
図6が肩ベルト10の拘束位置を示し、
図5(B)および
図7が開放位置と拘束位置の間の途中位置を示し、
図5(C)および
図8が肩ベルト10の開放位置を示している。
図5~
図8では、肩ベルト10の図示を省略している。
【0040】
図4(A)に示すように、肩ベルト保持ユニット7は、肩ベルト10を保持する肩ベルト保持部材70と、スライド部材6に設けられるプレート80と、肩ベルト保持部材70をプレート80に対して可動可能にする可動部72とを備える。
【0041】
肩ベルト保持部材70は、肩ベルト10とともに動くように肩ベルト10に沿って設けられ、スライド部材6に回動可能に支持される。具体的には、肩ベルト保持部材70は、肩ベルト10の上方に設けられ、肩ベルト10の上げ下げおよび左右方向への移動を行う。
【0042】
肩ベルト保持部材70は、弾性変形可能であり、可撓性を有する撓み可能な合成樹脂で形成されている。これにより、肩ベルト10をバックル14に連結して拘束位置にした場合であっても、肩ベルト保持部材70が子供の体にフィットするため、子供が不快にならない。肩ベルト保持部材70は、前端部と後端部とを含む長尺状の棒状部材である。肩ベルト保持部材70の後端部は、上述した可動部72に固定されており、背もたれ部5に対して回動可能である。なお、肩ベルト保持部材70と可動部72とは一体的に形成されていてもよい。
【0043】
図2に示すように、肩ベルト10と肩ベルト保持部材70は覆い部材13により覆われている。覆い部材13は、肩ベルト10と肩ベルト保持部材70とを外方から覆い、肩ベルト保持部材70の動作を肩ベルト10に伝える。本実施の形態の覆い部材13は、筒状に縫製された布材であるが、たとえば2つ折りされた布材であってもよい。覆い部材13は、肩ベルト10のパッドとしての役割を果たし、子供への肩の当たり具合を柔らかくすものであってもよい。覆い部材13は、肩ベルト通し穴62の位置から肩ベルト保持部材70の先端部分を覆う位置まで延びていることが好ましい。肩ベルト保持部材70と肩ベルト10とは、覆い部材13を介して当接しているだけでもよいし、縫い付けたり接着したりするなど、直接接続されていてもよい。
【0044】
図4(A)に示すように、プレート80は、前プレート81と後プレート85とを含む。
図6(B),(C)に示すように、前プレート81はスライド部材6の前方部分60側に位置し、後プレート85はスライド部材6の後方部分64側に位置する。後プレート85は、前プレート81の裏面でかつ下半分の位置に固定されている。
【0045】
図4(A)に示すように、前プレート81は、前プレート本体82と、前プレート本体82の下方に設けられ、前方に突出する前半ドーム部83と、前半ドーム部83に設けられる穴部84とを含む。また、後プレート85は、後プレート本体86と、後プレート本体86の略中央部に設けられ、後方に突出する後半ドーム部87と、後半ドーム部87に設けられる案内領域90とを含む。案内領域90については、可動部72を説明した後に説明する。
【0046】
前プレート81と後プレート85の間に設けられる可動部72は、肩ベルト保持部材70を保持する固定部73と、固定部73の先端に設けられる球体軸部74とを含む。
図5(B)に示すように、可動部72は、肩ベルト通し穴62の直上に位置し、肩ベルト10を根元から上げ下げすることができる。
【0047】
図4(A)に戻って、固定部73は、円柱状であり、球体軸部74とは反対側の先端に凹部73aが設けられる。この凹部73aは、肩ベルト保持部材70の後端部を保持する。球体軸部74には、外方に向かって突出する凸部(当接部)75が設けられている。当接部75は、固定部73(肩ベルト保持部材70)が延びる方向とは反対の方向に突出している。球体軸部74は、前プレート81の前半ドーム部83と後プレート85の半ドーム部86内に回転可能に保持されている。これにより、肩ベルト保持部材70は、背もたれ部5に対して回動可能に保持される。さらに、球体軸部74に設けられる当接部75は、後プレート85に設けられる案内領域90内に受け入れられており、案内領域90内を移動する。
【0048】
なお、本実施の形態の当接部75は、肩ベルト保持部材70の後端部に固定される可動部72に設けられたが、肩ベルト保持部材70の基端に設けられていればよい。ここで基端とは、背もたれ部5と肩ベルト保持部材70とが交差する領域において、肩ベルト保持部材70の回動点近傍に設けられる部分であり、回動点近傍であれば後端部に限定されない。
【0049】
図4(B)には、後プレート85に設けられる案内領域90が示されている。本実施の形態の案内領域90は、貫通穴であるが、たとえば溝やレールなどであってもよく、当接部75の動きをガイドするものであればよい。案内領域90は、たとえば正面視V字状であり、2つに分岐する移動禁止領域91と移動許容領域93とを有する。
【0050】
移動禁止領域91は、肩ベルト保持部材70の前端部が下方へ移動することを禁止する領域である。つまり、移動禁止領域91は、肩ベルト保持部材70を開放位置に位置させる領域である。
【0051】
移動許容領域93は、移動禁止領域91から幅方向にずれて位置し、肩ベルト保持部材70の前端部が下方へ移動することを許容する領域である。つまり、移動許容領域93は、肩ベルト保持部材70を拘束位置に位置させる領域である。移動禁止領域91は、移動許容領域93よりも幅方向外方に位置することが好ましい。これにより、可動部72の当接部75が移動禁止領域91に位置する間は、肩ベルト保持部材70が幅方向外方に位置し、その先端が外方に向かうため、より効果的に肩ベルト10を開放位置にすることができる。
【0052】
移動禁止領域91と移動許容領域93との間には、当接部75の幅方向への移動を禁止する凸部95が設けられている。本実施の形態では、凸部95は下向きの凸部であるが、たとえば左右方向向きの凸部、前後方向向きの凸部などであってもよい。凸部95が設けられることで、移動禁止領域91と移動許容領域93に切り替えるために、凸部95を乗り越えるための動作が必要となるため、操作性がよい。
【0053】
図4(B)に示すように、移動禁止領域91の最上端には、可動部72の当接部75が当接する当たり止め部92が設けられている。本実施の形態では、当たり止め部92は、段差であるが、当接部75の移動を止める形状であればよい。当たり止め部92に可動部72の当接部75が当接した状態は、
図5(C)および
図8に示されている。当たり止め部92に可動部72の当接部75が当接することで、第2位置にある肩ベルト保持部材70の前端部が下方へ移動しないようにすることができる。つまり、肩ベルト保持部材70を「開放位置」にすることができる。
【0054】
当たり止め部92の高さ位置は、肩ベルト保持部材70が背もたれ部5から立ち上がる位置、具体的には、背もたれ部5と肩ベルト保持部材70との角度が50°以上、より好ましくは60°以上となるような位置に設定されていることが好ましい。
【0055】
図4(B)に示すように、移動許容領域93の最上端には、可動部72の当接部75が当接する被当接部94が設けられている。本実施の形態では、被当接部94は、当たり止め部92と同様に段差であるが、当接部75の移動を止める形状であればよい。被当接部94に可動部72の当接部75が当接した状態は、
図5(A)、
図6に示されている。被当接部94に可動部72の当接部75が当接することで、肩ベルト10が子供の体を拘束する位置で保持することができる。つまり、肩ベルト保持部材70を「拘束位置」にすることができる。
【0056】
被当接部94の高さ位置は、肩ベルト保持部材70が座席3に着座した子供の厚み分だけ立ち上がる位置、具体的には、背もたれ部5と肩ベルト保持部材70との角度が45°以下、より好ましくは40°以下となるような位置に設定されていることが好ましい。なお、本実施の形態では、肩ベルト10を拘束位置で保持するために、被当接部94が設けられたが、被当接部94は設けられていなくてもよい。
【0057】
本実施の形態では、可動部72の当接部75と、案内領域90の当たり止め部92とを合わせて「切り替え手段」という。切り替え手段は、肩ベルト保持部材70を拘束位置に対応する第1位置と、開放位置に対応する第2位置とに切り替えるものである。以下の説明では、理解容易の観点から、肩ベルト保持部材70の第1位置を拘束位置、第2位置を開放位置として説明する。
【0058】
(動作について)
次に、
図5~
図8を参照して、肩ベルト保持ユニット7の動作について説明する。
【0059】
まず、肩ベルト10を拘束位置から開放位置へ切り替える方法について説明する。この動作は、子供をチャイルドシート1に乗せ下ろしする前に肩ベルト10が邪魔にならないようにするために行う。簡単に説明すると、拘束位置にある
図5(A)の一対の肩ベルト10(肩ベルト保持ユニット7の肩ベルト保持部材70、
図5~
図8では肩ベルト10の図示を省略)を手で握って少し上方に移動させ(途中位置:
図5(B))、
図5(C)に示すように一対の肩ベルト10をそれぞれ幅向外方(左右方向)に移動させて開放位置にすることにより行う。
【0060】
具体的には、
図5(A)および
図6を参照して、拘束位置の肩ベルト10を手で握る。肩ベルト10が拘束位置にある場合、肩ベルト保持部材70は、その前端部が下方を向いている。さらに、
図6(B),(C)に示すように、当接部75は、移動許容領域93に位置し、被当接部94に当接している。
【0061】
次に、
図5(B)および
図7を参照して、肩ベルト10を上方に移動させて、肩ベルト保持部材70の当接部75を案内領域90の移動許容領域93に沿って下方に移動させる。
図7(B),(C)に示すように、肩ベルト10が途中位置にある場合では、当接部75は凸部95の下方に位置する。
【0062】
続いて、
図5(C)および
図8を参照して、一対の肩ベルト10をそれぞれ幅方向外方に移動させる。当接部75は、案内領域90の凸部95を乗り越え、移動禁止領域91に案内される。肩ベルト保持部材70は、その自重でその前端部が下方に移動するため、その後端部に設けられる当接部75は自動的に上方に移動する。肩ベルト10が開放位置にある場合、
図8に示すように、肩ベルト保持部材70は、当接部75が当たり止め部92に当接し、肩ベルト保持部材70の前端部が下方へ移動することが禁止される。これにより、肩ベルト10は、開放位置で保持される。
【0063】
肩ベルト10を開放位置から拘束位置に切り替えるには、上述した方法と逆の手順を取ればよい。
【0064】
以上より、本実施の形態のチャイルドシート1は、肩ベルト保持部材70および切り替え手段が設けられており、肩ベルト10を開放位置に保持することができるため、肩ベルト10が邪魔になることなく、子供をチャイルドシート1に乗せ下ろしすることができる。さらに、肩ベルト10を手で持って上下左右に移動させるだけで、拘束位置から開放位置に移動することができるため、操作性がよい。また、肩ベルト保持ユニット7は、簡易な構造であり、部品点数をするなくすることができるため、コストを抑えることができる。
【0065】
さらに、肩ベルト10を手で持って幅方向外方に移動させるだけで、肩ベルト保持部材70の先端部が自重で下方に移動し、後端部が上方に移動して当接部75と当たり止め部92とを係合させることができるため、特に難しい操作は不要であり、簡単に肩ベルト10を開放位置で保持することができる。
【0066】
従来のチャイルドシートの肩ベルトは、常に開放させる方向にテンションがかかっているため、子供をチャイルドシートに座らせる場合に、子供をチャイルドシートにしっかりと拘束することができない。しかし、本実施の形態のチャイルドシート1は、肩ベルト10にテンションがかかっていないため、確実に肩ベルト10で子供を拘束することができる。
【0067】
なお、上記実施の形態では、子供用育児器具はチャイルドシートであるとして説明したが、これに限定されず、たとえば乳母車、ベビーラック、育児椅子などの座席付き育児器具であればよい。
【0068】
また、本実施の形態では、肩ベルト10が開放位置および拘束位置に位置する場合に位置保持されるとしたが、肩ベルトが開放位置に位置する場合にだけ保持されるような構成であってもよい。
【0069】
また、切り替え手段は、背もたれ部5のスライド部材6に設けられるとしたが、肩ベルト保持部材70と背もたれ部5とが交差する領域、つまり背もたれ部5の前方または後方に設けられていてもよい。
【0070】
また、本実施の形態の肩ベルト保持部材70は、肩ベルト10の上げ下げおよび左右方向の移動を行うものであったが、肩ベルト10を拘束位置および開放位置にするための移動を行うものであればよい。たとえば、肩ベルト保持部材70は、上下方向にのみ移動するものであってもよいし、左右方向にのみ移動するものであって、拘束位置の場合に幅方向内方を向き、開放位置の場合に幅方向外方を向くものであってもよい。
【0071】
以上、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明したが、この発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 チャイルドシート、3 座席、4 座面部、5 背もたれ部、6 スライド部材、7 肩ベルト保持ユニット、10 肩ベルト、13 覆い部材、50 背部、60 前方部分、62 ベルト通し穴、64 後方部分、70 肩ベルト保持部材、72 可動部、74 球体軸部、75 当接部、80 プレート、90 案内領域、91 移動禁止領域、92 当たり止め部、93 移動許容領域、94 被当接部、95 凸部。