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特開2022-114583ターゲット計測用デバイスの製造方法、及びターゲット計測用キット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114583
(43)【公開日】2022-08-08
(54)【発明の名称】ターゲット計測用デバイスの製造方法、及びターゲット計測用キット
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20220801BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20220801BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALN20220801BHJP
【FI】
C12M1/34 Z
C12N15/09 200
C12Q1/6876 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021010913
(22)【出願日】2021-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 壮男
(72)【発明者】
【氏名】宮内 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】蓼沼 崇
(72)【発明者】
【氏名】田口 朋之
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029AA23
4B029BB20
4B029CC03
4B029FA12
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA18
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR55
4B063QR56
4B063QS28
4B063QS34
4B063QX02
(57)【要約】
【課題】計測精度が向上したターゲット計測用デバイスの製造方法及びターゲット計測用キットを提供する。
【解決手段】サンプルに含まれるターゲットを計測するターゲット計測用デバイスの製造方法であって、基板結合部及び蛍光分子結合部を有し、前記ターゲットと特異的に結合する捕捉分子の、前記基板結合部と基板の固相面とを結合させる捕捉分子固定化工程と、捕捉分子固定化工程後に、前記捕捉分子の前記蛍光分子結合部に蛍光分子を結合させる蛍光分子結合工程と、を含む、ターゲット計測用デバイスの製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルに含まれるターゲットを計測するターゲット計測用デバイスの製造方法であって、
基板結合部及び蛍光分子結合部を有し、前記ターゲットと特異的に結合する捕捉分子の、前記基板結合部と基板の固相面とを結合させる捕捉分子固定化工程と、
捕捉分子固定化工程後に、前記捕捉分子の前記蛍光分子結合部に蛍光分子を結合させる蛍光分子結合工程と、
を含む、ターゲット計測用デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記捕捉分子固定化工程と前記蛍光分子結合工程との間に、
前記基板の前記固相面の未反応の結合部を、ブロッキング液を用いてブロッキングするブロッキング工程を含む、請求項1に記載のターゲット計測用デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記捕捉分子の前記蛍光分子結合部が、前記捕捉分子の前記基板結合部とは異なる、請求項1又は2に記載のターゲット計測用デバイスの製造方法。
【請求項4】
基板結合部及び所定の位置に付加された消光分子を有し、前記捕捉分子に特異的に結合する捕捉分子結合分子の前記基板結合部を、前記捕捉分子の前記蛍光分子結合部に前記蛍光分子が結合したときに、前記蛍光分子に接近した前記消光分子により前記蛍光分子が呈する蛍光が消光される位置関係となるように前記基板の前記固相面に結合させる捕捉分子結合分子固定化工程を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のターゲット計測用デバイスの製造方法。
【請求項5】
前記ターゲットが、特定の核酸配列を有する核酸であり、
前記捕捉分子が、前記核酸配列と相補的な核酸配列である検出配列を有する検出プローブである、請求項1~4のいずれか1項に記載のターゲット計測用デバイスの製造方法。
【請求項6】
前記ターゲットが、特定の核酸配列を有する核酸であり、
前記捕捉分子が、前記核酸配列と相補的な核酸配列である検出配列を有する検出プローブであり、
前記捕捉分子結合分子が、前記検出プローブが有する核酸配列と相補的な核酸配列を有する消光プローブである、請求項4に記載のターゲット計測用デバイスの製造方法。
【請求項7】
サンプルに含まれるターゲットを計測する際に用いられるターゲット計測用キットであって、
基板結合部及び蛍光分子結合部を有し、前記ターゲットと特異的に結合する捕捉分子と、
前記捕捉分子の前記蛍光分子結合部に結合する蛍光分子と、
前記捕捉分子の前記基板結合部が固定される固相面を有する基板と、
を含むターゲット計測用キット。
【請求項8】
前記捕捉分子は、前記捕捉分子の前記基板結合部で前記基板に結合されている、請求項7に記載のターゲット計測用キット。
【請求項9】
前記基板の固相面の未反応の結合部がブロッキングされている、請求項8に記載のターゲット計測用キット。
【請求項10】
基板結合部及び所定の位置に付加された消光分子を有し、前記捕捉分子に特異的に結合する捕捉分子結合分子を含む、請求項7~9のいずれか1項に記載のターゲット計測用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターゲット計測用デバイスの製造方法、及びターゲット計測用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
サンプルに含まれる特定の核酸配列を有するターゲットを計測する方法として、DNAマイクロアレイ(特定の核酸配列の相補配列を有する検出プローブが基板等の固相面に設けられたもの)を用いる方法が広く知られている。この方法は、DNAマイクロアレイに添加されたサンプルに含まれるターゲットが、ハイブリダイズ反応によりDNAマイクロアレイの検出プローブに捕集される性質を利用してターゲットを計測する方法である。この方法では、ターゲットがサンプルに含まれるか否かに加えて、サンプルに含まれるターゲットの量を計測することができる。以下の特許文献1には、DNAマイクロアレイを用いてターゲットを計測する従来の計測方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-43702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1の核酸配列計測方法は、捕集されていないターゲットを除去するための洗浄操作を必要としないため、洗浄操作による計測精度の悪化は生じない。しかしながら、上記特許文献1の核酸配列計測方法では、作製したDNAマイクロアレイから発せられるオフセット光がノイズとなって計測精度を悪化させてしまうことがあるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、オフセット光を低減することによりサンプルに含まれるターゲットの計測精度を従来よりも向上させることができる、ターゲット計測用デバイスの製造方法、及びターゲット計測用キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1] サンプルに含まれるターゲットを計測するターゲット計測用デバイスの製造方法であって、
基板結合部及び蛍光分子結合部を有し、前記ターゲットと特異的に結合する捕捉分子の、前記基板結合部と基板の固相面とを結合させる捕捉分子固定化工程と、
捕捉分子固定化工程後に、前記捕捉分子の前記蛍光分子結合部に蛍光分子を結合させる蛍光分子結合工程と、
を含む、ターゲット計測用デバイスの製造方法。
[2] 前記捕捉分子固定化工程と前記蛍光分子結合工程との間に、
前記基板の前記固相面の未反応の結合部を、ブロッキング液を用いてブロッキングするブロッキング工程を含む、[1]に記載のターゲット計測用デバイスの製造方法。
[3] 前記捕捉分子の前記蛍光分子結合部が、前記捕捉分子の前記基板結合部とは異なる、[1]又は[2]に記載のターゲット計測用デバイスの製造方法。
[4] 基板結合部及び所定の位置に付加された消光分子を有し、前記捕捉分子に特異的に結合する捕捉分子結合分子の前記基板結合部を、前記捕捉分子の前記蛍光分子結合部に前記蛍光分子が結合したときに、前記蛍光分子に接近した前記消光分子により前記蛍光分子が呈する蛍光が消光される位置関係となるように前記基板の前記固相面に結合させる捕捉分子結合分子固定化工程を含む、[1]~[3]のいずれか1項に記載のターゲット計測用デバイスの製造方法。
[5] 前記ターゲットが、特定の核酸配列を有する核酸であり、
前記捕捉分子が、前記核酸配列と相補的な核酸配列である検出配列を有する検出プローブである、[1]~[4]のいずれか1項に記載のターゲット計測用デバイスの製造方法。
[6] 前記ターゲットが、特定の核酸配列を有する核酸であり、
前記捕捉分子が、前記核酸配列と相補的な核酸配列である検出配列を有する検出プローブであり、
前記捕捉分子結合分子が、前記検出プローブが有する核酸配列と相補的な核酸配列を有する消光プローブである、[4]に記載のターゲット計測用デバイスの製造方法。
[7] サンプルに含まれるターゲットを計測する際に用いられるターゲット計測用キットであって、
基板結合部及び蛍光分子結合部を有し、前記ターゲットと特異的に結合する捕捉分子と、
前記捕捉分子の前記蛍光分子結合部に結合する蛍光分子と、
前記捕捉分子の前記基板結合部が固定される固相面を有する基板と、
を含むターゲット計測用キット。
[8] 前記捕捉分子は、前記捕捉分子の前記基板結合部で前記基板に結合されている、[7]に記載のターゲット計測用キット。
[9] 前記基板の固相面の未反応の結合部がブロッキングされている、[8]に記載のターゲット計測用キット。
[10] 基板結合部及び所定の位置に付加された消光分子を有し、前記捕捉分子に特異的に結合する捕捉分子結合分子を含む、[7]~[9]のいずれか1項に記載のターゲット計測用キット。
【発明の効果】
【0007】
本発明のターゲット計測用デバイスの製造方法、及びターゲット計測用キットによれば、オフセット光を低減させることができるため、サンプルに含まれるターゲットの計測精度を従来よりも向上させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明のターゲット計測用デバイスの製造方法の一例を示すフローチャートである。
図2】本発明のターゲット計測用デバイスの製造方法において、蛍光分子結合工程を示す図である。
図3】蛍光分子で修飾したDNAプローブ(ドナー蛍光プローブ)と、消光分子を有し、DNAプローブと特異的に結合する消光プローブを基板の固相面に固定化し、ターゲットをドナー蛍光プローブに結合させる方法を示す図である。
図4】ターゲット計測用デバイスによるターゲット計測方法の一例を示す図である。
図5】ターゲット計測装置の構成の一例を示す図である。
図6】実施例1のブロッキングを行わない場合とブロッキングを行った場合とにおける、蛍光分子を滴下した基板が呈するスポット光量を測定したグラフである。
図7】実施例2で製造したターゲット計測用デバイスに、ターゲットを含まない場合のスポット光量、ターゲットを含む溶液を反応させた場合のスポット光量、及び消光プローブを固定化しないターゲット計測用デバイスが呈するスポット光量を測定したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態によるターゲット計測用デバイスの製造方法、及びターゲット計測用キットについて詳細に説明する。以下では、まず本発明の実施形態の概要について説明し、続いて本発明の実施形態の詳細について説明する。
【0010】
〔概要〕
本発明の実施形態は、オフセット光を低減することによりサンプルに含まれるターゲットの計測精度を従来よりも向上させることができるようにするものである。上述した特許文献1に開示された方法は、検出プローブとして、蛍光分子が付加された蛍光プローブと、蛍光分子の蛍光を消光する消光分子が付加された消光プローブとが設けられた核酸配列計測デバイス(DNAマイクロアレイ)を用いてターゲットを計測するものである。この方法では、ターゲットに対する蛍光分子の付加、及びDNAマイクロアレイの洗浄(捕集されていないターゲット等を除去するための洗浄)を行うことなくターゲットを計測することが可能である。
【0011】
この方法では、DNAマイクロアレイを用いて特定の核酸の有無や量を計測する核酸配列計測デバイスにおいて、ターゲットが存在しないときは、互いに独立したドナー蛍光プローブ及び消光プローブが、結合部を介して結合が維持されて消光分子により蛍光分子の蛍光が消光されている。ターゲットが供給された場合には、検出部にターゲットが結合して、結合部を介するドナー蛍光プローブと消光プローブとの結合が解消され、消光分子がドナー蛍光分子から離れることによりドナー蛍光分子が蛍光を呈する。この核酸配列計測デバイスを用いることにより、サンプルに含まれるターゲットを計測することができる。
【0012】
特許文献1に記載された核酸配列計測用デバイスの製造方法では、まず、蛍光分子がDNAプローブに付加された蛍光プローブ液を調製し、蛍光プローブ液をDNAマイクロアレイにスポッターを使用しスポッティングする。そしてスポッティングされた蛍光プローブ液を乾燥させてドナー蛍光プローブを基板固相面に固定化する。次に、核酸配列計測デバイスをブロッキング液に液浸し、未反応の固相表面の結合部を不活性化する。次に、核酸配列計測デバイス基板固相面を洗浄し、固定化されていない余剰の蛍光プローブを除去し洗浄液を除去する。
【0013】
上記の特許文献1に記載された核酸配列計測用デバイスの製造方法では、蛍光プローブが、その末端修飾結合部によってDNAマイクロアレイの固相面に固定化されるとは限らず、蛍光分子を介して非特異的に、DNAマイクロアレイの固相面に固定化される場合がある。この場合、核酸配列計測デバイスの蛍光プローブとターゲットとのハイブリダイズ反応の際に、蛍光プローブと消光プローブとの乖離が阻害される可能性がある。また、核酸配列計測用デバイスを製造する際には、蛍光プローブと消光プローブがハイブリダイズ反応して1対1の状態でスポットを形成することが望ましいが、蛍光プローブが、その末端修飾結合部によって、DNAマイクロアレイの固相面に固定化されていないと、蛍光プローブが過多になり、スポットのオフセット光を高めて検出下限を低下させる可能性がある。また、蛍光プローブを、DNAマイクロアレイの固相面に固定化した後、固相面表面の洗浄の際に洗い流される余剰の蛍光プローブが、スポット周辺のDNAマイクロアレイの固相面表面に非特異的に固定化され、バックグランド光を上昇させて検出下限を低下させる可能性がある。また、DNAマイクロアレイの固相表面上に蛍光プローブを固定化後、前記固相表面の洗浄の前に、DNAマイクロアレイの固相表面の結合部を失活させてブロッキングを行う場合も、同様に、余剰の蛍光プローブが、スポット周辺のDNAマイクロアレイの固相表面に非特異的に固定化され、バックグランド光を上昇させて検出下限を低下させる可能性がある。また、DNAマイクロアレイの固相表面上に蛍光プローブを固定化後にDNAマイクロアレイの固相表面の結合部を失活させてブロッキングを行うため、ブロッキングで使用するアルカリ液などの試薬によって、蛍光分子の蛍光シグナルが不安定になる可能性がある。
【0014】
〔実施形態〕
本実施形態のターゲット計測デバイスの製造方法は、サンプルに含まれるターゲットを計測するターゲット計測用デバイスの製造方法であって、基板結合部及び蛍光分子結合部を有し、前記ターゲットと特異的に結合する捕捉分子の、前記基板結合部と基板の固相面とを結合させる捕捉分子固定化工程と、捕捉分子固定化工程後に、前記捕捉分子の前記蛍光分子結合部に蛍光分子を結合させる蛍光分子結合工程と、を含む。これにより、オフセット光を低減することができ、サンプルに含まれるターゲットの計測精度を従来よりも向上させることができるターゲット計測用デバイスを製造することができる。また、基板の固相面のバックグランド光を低減させることができるターゲット計測用デバイスを製造することができる。また、ブロッキングでアルカリ液を使用することにより蛍光シグナルが不安定になることがないターゲット計測用デバイスを製造することができる。
【0015】
以下、本実施形態のターゲット計測用デバイスの製造方法で製造されるターゲット計測用デバイスについて説明する。
本実施形態のターゲット計測用デバイスの製造方法で製造されるターゲット計測用デバイスは、基板結合部及び蛍光分子結合部を有する、前記ターゲットと特異的に結合する捕捉分子と、前記捕捉分子の前記蛍光分子結合部に結合する蛍光分子と、前記捕捉分子の前記基板結合部が固定される固相面を有する基板と、を備える。
【0016】
ターゲットしては、サンプル中の検出の対象となるものであれば、特に制限はないが、例えば、DNA、RNA等の核酸、ペプチド、タンパク質等が挙げられる。ターゲットに特異的に結合する捕捉分子としては、核酸とハイブリダイズする検出プローブ、ペプチド、タンパク質等の抗原と特異的に結合する抗体若しくは抗体フラグメント、核酸と特異的に結合するアプタマー等が挙げられる。前記抗体としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のいずれも用いることができるが、モノクローナル抗体が好ましい。抗体フラグメントとしては、例えば、F(ab’)、F(ab)、Fab’、Fab、Fv、scFv、これらの変異体、抗体部分を含む融合タンパク質又は融合ペプチド等が挙げられる。また、ターゲットが抗体又は抗体フラグメントであって、捕捉分子が該抗体又は抗体フラグメントと特異的に結合するペプチド、タンパク質等の抗原であってもよい。
【0017】
ターゲットと前記ターゲットに特異的に結合する捕捉分子の組み合わせとしては、例えば、ターゲットが特定の核酸配列を有する核酸であって、捕捉分子が前記特定の核酸配列と相補的な核酸配列を有する検出プローブである組み合わせ、ターゲットが抗原であって、捕捉分子が前記抗原と特異的に結合する抗体又は抗体フラグメントである組み合わせ等が挙げられる。ターゲットが特定の核酸配列を有する核酸であって、捕捉分子が前記特定の核酸配列と相補的な核酸配列を有する検出プローブである場合、ターゲットである核酸は捕捉分子である検出プローブにハイブリダイズ反応により結合する。
【0018】
本実施形態のターゲット計測用デバイスの製造方法では、基板結合部及び蛍光分子結合部を有する、前記ターゲットと特異的に結合する捕捉分子を使用する。捕捉分子の基板結合部は、捕捉分子が結合する基板の固相表面の、捕捉分子との結合部(以下、捕捉分子結合部とも称する)に結合できるものであれば、特に制限はなく、用いる捕捉分子の基板結合部の種類に応じて適宜選択される。基板の捕捉分子結合部としては、例えば、アミノシラン、エポキシシラン、3次元ポリマーやゲルなどが用いられる。表1に、捕捉分子の基板結合部と基板の捕捉分子結合部の組み合わせの一例を示す。捕捉分子の基板結合部と基板の捕捉分子結合部は、それぞれ逆になっていてもよい。
【0019】
【表1】
【0020】
捕捉分子の蛍光分子結合部は、捕捉分子の基板結合部と異なるものであることが好ましい。捕捉分子の蛍光分子結合部が、捕捉分子の基板結合部と異なっていることにより、捕捉分子の蛍光分子結合部が、基板の捕捉分子結合部と結合することを防止することができる。例えば、捕捉分子の基板結合部がアミノ基である場合には、捕捉分子の蛍光分子結合部としては、アミノ基と結合する基板の捕捉分子結合部と結合しないチオールやアルキン、ビオチン(Biotin)等を選択することが好ましい。また逆に、捕捉分子の蛍光分子結合部が、アミノ基である場合には、捕捉分子の基板結合部としては、アミノ基と結合する蛍光分子が結合しないチオールやアルキン、ビオチン(Biotin)等を選択することが好ましい。
【0021】
また、捕捉分子の蛍光分子結合部は、捕捉分子の基板結合部と、基板の捕捉分子結合部とを結合させる際に、捕捉分子の蛍光分子結合部が、基板の捕捉分子結合部と結合しないように、保護することもできる。捕捉分子の蛍光分子結合部を保護した場合は、蛍光分子を捕捉分子の蛍光分子結合部に結合させる前に、脱保護する。
【0022】
捕捉分子の基板結合部及び蛍光分子結合部は、それぞれ基板、蛍光分子に結合するためのリンカーを含んでいてもよい。
【0023】
前記ターゲット計測用デバイスは、さらに、基板結合部及び所定の位置に付加された消光分子を有し、前記捕捉分子に特異的に結合する捕捉分子結合分子を備えていてもよい。消光分子は、捕捉分子結合分子の基板結合部を基板の固相面に結合させ、前記捕捉分子の蛍光分子結合部に蛍光分子が結合したときに、前記蛍光分子に接近した前記消光分子により前記蛍光分子が呈する蛍光が消光される位置関係となるように、捕捉分子結合分子に付加する。
【0024】
前記捕捉分子結合分子としては、例えば、ターゲットが、特定の核酸配列を有する核酸であり、前記捕捉分子が前記核酸配列と相補的な核酸配列である検出配列を有する検出プローブである場合には、前記検出プローブが有する核酸配列と相補的な核酸配列を有する消光プローブ等が挙げられる。
【0025】
なお、本発明において相補的であるとは、一方の核酸配列が、他方の核酸配列と2本鎖状態を形成することのできる核酸配列を持つことを意味し、必ずしも完全に相補的である必要はなく、いくつかのミスマッチ塩基対を含んでいてもよい。
【0026】
本発明で用いられる蛍光分子としては、特定の励起光で励起され蛍光を発生する分子であれば特に制限はないが、Alexa Fluor(登録商標)シリーズ、ATTOシリーズ、Brilliantシリーズ、Chromeo(登録商標)シリーズ、Bacteriochlorinシリーズ、FAM、TAMRA、Cy色素シリーズ、FITC、HiLyte Fluor(登録商標)シリーズ、Rhodamineシリーズ、Tide Fluor(登録商標)シリーズ、iFluor(登録商標)シリーズ、DY色素シリーズ、Qdot(登録商標)シリーズ、Allophycocyanin、B-Phycoerythrin、R-Phycoerythrin等の公知の物質を使用できる。
【0027】
本発明で用いられる消光分子としては、特に制限はないが、例えば、Dabcyl、TQ1、TQ2、TQ3、Eclipse(登録商標)、BHQ1、BHQ2、BHQ3、Cy5Q、Cy7Q、Iowa Black(登録商標) FQ、Iowa Black(登録商標) RQ、IRDye QC-1、QSY7、QSY21、QXL570、QXL570、QXL570等の公知の物質を使用できる。
【0028】
蛍光分子と消光分子の組み合わせについても特に制限はないが、例えば、EDANS、CoumarinまたはTF2とDabcylまたはTQ1との組み合わせ、FAM、FITC、TET、Alexa Fluor(登録商標) 532、Cy2、Cy3、TF2またはTF3とTQ2との組み合わせ、Alexa Fluor(登録商標) 532、Cy3、HEX、JOE、TF2、TF3、TF4またはTETとTQ3との組み合わせ、Alexa Fluor(登録商標) 532、TF2、Cy3、FAMまたはHEXとEclipse(登録商標)との組み合わせ、Alexa Fluor(登録商標) 532、TF2、TF3、Cy3、FAM、HEX、TETまたはCy3とBHQ1との組み合わせ、TF3、TF4、Cy3、Cy5またはHEXとBHQ2との組み合わせ、Cy5、Alexa Fluor(登録商標) 647、TF5とIowa Black(登録商標) RQ、IRDye QC-1、QSY21、TQ4、TQ5、BHQ2またはBHQ3との組み合わせ、Cy3、TF3、TF4とCy5Q、Iowa Black(登録商標) FQ、Iowa Black(登録商標) RQ、IRDye QC-1、QSY7またはQXL570との組み合わせ、Alexa Fluor(登録商標) 532とCy5Q、TQ2、TQ3、Iowa Black(登録商標) FQ、Iowa Black(登録商標) RQ、IRDye QC-1、QSY7またはQXL570との組み合わせ、TF3とBHQ1、BHQ2またはCy5Qとの組み合わせ等が挙げられる。
【0029】
本発明で用いられる基板としては、平面視したときの形状が矩形形状に形成された板状の石英、ガラス、シリコン、フッ化カルシウム及びサファイア等の単結晶、セラミックス、及び樹脂材料等を用いることができる。樹脂材料としては、光学的特性、化学的及び熱的安定性に優れたCOP(シクロオレフィンポリマー)、COC(環状オレフィンコポリマー)、ポリカーボネイト、アクリル系樹脂、ポリエチレン樹脂等が挙げられる。なお、基板を平面視したときの形状は任意の形状であってよい。
【0030】
捕捉分子の蛍光分子結合部は、捕捉分子の先端の位置に設けていなくてもよく、捕捉分子の途中の位置に設けてもよい。ただし、消光分子を有する捕捉分子結合分子を用いる場合は、消光作用が生じるように、捕捉分子の蛍光分子結合部に蛍光分子が結合したときに、捕捉分子及び捕捉分子結合分子がそれぞれ結合した状態において、消光分子が蛍光分子に接近するように互いに向き合う位置となるように設計することが望ましい。蛍光分子結合部もしくは消光分子をそれぞれ捕捉分子、捕捉分子結合分子の先端以外の位置に設ける場合には、捕捉分子及び捕捉分子結合分子の先端にはさらに別の修飾が可能となる利点がある。
【0031】
蛍光分子結合部は複数種類・複数個所に設けてもよい。蛍光分子結合部を複数個所に設ける場合は、捕捉分子結合分子に結合させる消光分子を、複数の蛍光分子結合部に対応して、捕捉分子結合分子の複数個所に付加させることができる。複数の消光分子を1つの捕捉分子結合分子に付加する場合、消光分子の種類を異なるものとしてもよい。1つの捕捉分子結合分子に複数の消光分子を結合させた場合、蛍光分子に対する消光分子の消光効果を高めることができるため、オフセット光をより低くすることができる。そのため、検出可能な最小光量を小さくすることができ、検出感度を向上させることができる。また、捕捉分子に複数の蛍光分子結合部位を設け、捕捉分子結合分子に複数の消光分子を付加した場合、ターゲットが結合した際の蛍光量が増加し、より高感度な検出が可能となる。また、消光分子の数を蛍光分子結合部の数より多くすることにより、ターゲットが存在しないときのオフセット光を低くすることができる。
【0032】
次に、本実施形態のターゲット計測用デバイスの製造方法について説明する。
本実施形態のターゲット計測用デバイスの製造方法は、前記ターゲット計測用デバイスの製造方法であって、前記捕捉分子の前記基板結合部と前記基板の前記固相面とを結合させる捕捉分子固定化工程と、捕捉分子固定化工程後に、前記捕捉分子の前記蛍光分子結合部に蛍光分子を結合させる蛍光分子結合工程と、を含む。
【0033】
前記捕捉分子固定化工程と前記蛍光分子結合工程の間には、前記基板の前記固相面の未反応の結合部を、ブロッキング液を用いてブロッキングするブロッキング工程を含むことが好ましい。ブロッキング工程を含むことにより、蛍光分子結合工程で、蛍光分子を捕捉分子の蛍光分子結合部に結合させる際に、基板の固相面の未反応の結合部に、蛍光分子が結合することを抑制することができる。ブロッキング工程で得られた基板の固相面は、洗浄し、基板に固定化されていない余剰の捕捉分子及びブロッキング液を除去することが好ましい。
ブロッキング液としては、基板の固相面の未反応の結合部を不活性化できれば、特に制限はなく、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ホウ酸ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化リチウム、リン酸水素二ナトリウム等のアルカリ溶液等が挙げられる。ブロッキング液としては、前記アルカリ溶液の他に、前記基板の固相面の未反応の結合部と反応するダミーの分子含む溶液を用いてもよい。例えば、基板の固相面の未反応の結合部が、活性エステル基を有する高分子物質である場合、前記ダミーの分子としては、一級アミノ基を有する化合物等が挙げられる。前記一級アミノ基を有する化合物としては、例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)、グリシン、エタノールアミン等が挙げられる。
【0034】
以下、本実施形態のターゲット計測用デバイスの製造方法について、前記ターゲットが、特定の核酸配列を有する核酸であり、前記捕捉分子が前記核酸配列と相補的な核酸配列である検出配列を有する検出プローブである、核酸配列計測用デバイスの製造方法を例にして説明する。図1は、前記ターゲットが、特定の核酸配列を有するDNAであり、前記捕捉分子が前記核酸配列と相補的な核酸配列である検出配列を有するDNAプローブである場合の核酸配列計測用デバイスの製造方法を示したフローチャートである。以下、各工程について説明する。
【0035】
(1)捕捉分子固定化工程(ステップS11~S13)
捕捉分子固定化工程は、前記捕捉分子の前記基板結合部と前記固相の前記固相面とを結合させる工程である。
(1-1)溶液調製
まず、ターゲットに特異的に結合する捕捉分子を含む溶液を調製し、捕捉分子の濃度を調整する。例えば、ターゲットが特定の核酸配列を有するDNAであって、捕捉分子が、ターゲットの特定の核酸配列と相補的な検出配列を有するDNAプローブである場合は、DNAプローブ溶液を調製し、DNAプローブ溶液の濃度を調整する(ステップS11)。また、捕捉分子結合分子として、DNAプローブが有する塩基配列と相補的な核酸配列を有する消光プローブを用いる場合は、DNAプローブと消光プローブを混合したプローブ液を調製し、プローブ濃度を調整する。プローブ溶液を調製する際の、捕捉分子を溶解する溶媒としては、適宜捕捉分子の固相面への固定に適した溶媒を用いることができる。前記溶媒としては、例えば、リン酸緩衝液などの緩衝液や界面活性剤、粘度調製用のエチレングリコールやグリセリンなどを含む溶液等が挙げられる。
【0036】
(1-2)固相面への固定
捕捉分子の基板結合部と、基板の捕捉分子結合部とを結合させ、捕捉分子を基板の固相面に固定化する。捕捉分子の基板結合部と、基板の捕捉分子結合部との結合は、基板の捕捉分子結合部が有する結合部と、捕捉分子の基板結合部の結合部とを反応させることにより行うことができる。基板ターゲット計測用デバイスが、さらに、基板結合部及び所定の位置に付加された消光分子を有し、前記捕捉分子に特異的に結合する捕捉分子結合分子を備える場合には、捕捉分子の基板結合部と、基板の捕捉分子結合部とを結合させ、捕捉分子を基板の固相面に固定化するとともに、前記捕捉分子結合分子の基板結合部を、前記捕捉分子の前記蛍光分子結合部に前記蛍光分子が結合したときに、蛍光分子に接近した消光分子により蛍光分子が呈する蛍光が消光される位置関係となるように基板の固相面に結合させる。捕捉分子と捕捉分子結合分子とは、結合させた後に、各々の基板結合部を介して、基板の固相面に固定化してもよい。
【0037】
例えば、DNAプローブを基板の固相面に固定化する場合は、DNAプローブを基板の固相面にスポッター等を用いてスポットする(ステップS12)。次に、基板を乾燥させることにより、DNAプローブを基板の固相面に固定化する(ステップS13)。捕捉分子結合分子として、消光プローブを用いる場合は、上記(1-1)で得られたプローブ液を加熱後、急冷し、DNAプローブと消光プローブをカップリングさせた後、カップリングしたDNAプローブと消光プローブとを、基板の固相面に固定させる。消光プローブは、DNAプローブが有する塩基配列と相補的な核酸配列を有するため、DNAプローブとカップリングする。例えば、プローブ液を95℃に加熱後、5分間温度を保持し、その後、氷冷することで、DNAプローブと消光プローブとをカップリングさせる。カップリングしたDNAプローブと消光プローブとは、それぞれが有する基板結合部を介して基板に固定化される。
【0038】
捕捉分子をスポットする固相面上の領域は、予め規定された数を単位としたブロック毎に区分けされていてもよい。ターゲット計測用デバイスに対するターゲット溶液の添加は、ブロック毎に行われる。また、ターゲット計測用デバイスの画像取得は、ブロック毎に行われることが多い。つまり、ブロックは、画像取得領域であるということができる。
【0039】
(2)ブロッキング工程
ブロッキング工程は、基板の固相面の未反応の結合部をブロッキングする工程である。ブロッキング工程では、(1)で得られた基板の固相面を、ブロッキング液に液浸し、未反応の結合部を不活性化する(ステップS14)。
【0040】
(3)洗浄工程
洗浄工程は、(2)で得られた基板を洗浄する工程である。洗浄工程では、ブロッキング工程で得られた基板の固相面を洗浄液で洗浄し、固定化されていない余剰の捕捉分子及びブロッキング液を除去し、洗浄液も除去する(ステップS15)。捕捉分子としてDNAプローブを用いる場合は、基板に固定化されていない余剰のDNAプローブ、及びブロッキング液を除去し、洗浄液も除去する。捕捉分子結合分子として、前記消光プローブを用いる場合は、基板に固定化されていない余剰の消光プローブも除去される。
【0041】
(4)蛍光分子結合工程
蛍光分子結合工程は、捕捉分子の蛍光分子結合部に蛍光分子を結合させる工程である。捕捉分子を基板の固相面に結合させた後に、捕捉分子の蛍光分子結合部に蛍光分子を結合させることにより、余剰の蛍光プローブが、スポット周辺のDNAマイクロアレイの固相面表面に非特異的に固定化されることが抑制される。これにより非特異的に吸着された蛍光プローブによりバックグランド光を上昇させて検出下限を低下させる可能性を少なくすることができる。また、蛍光分子結合工程を、前記ブロッキング工程の後に行うことにより、ブロッキングで使用するアルカリ液などの試薬によって、蛍光分子の蛍光シグナルが不安定になることを抑制することができる。捕捉分子がDNAプローブである場合は、DNAプローブの蛍光分子結合部に蛍光分子を結合させる(ステップS16)。捕捉分子と蛍光分子との結合は、捕捉分子が有する蛍光分子結合部と蛍光分子の捕捉分子結合部とを反応させることで行うことができる。捕捉分子への蛍光分子の結合方法としては、前記ブロッキング工程で得られた、固相表面がブロッキングされた基板の、捕捉分子がスポットとして固定化された面に対して蛍光分子を含む溶液を接液することで実施することができる。例えば、カバーガラスや専用の容器を使用することで蛍光分子を含む溶液と、表面がブロッキングされた基板とを接液した状態でインキュベートすることで、蛍光分子を捕捉分子の蛍光分子結合部に結合させることができる。捕捉分子の蛍光分子結合部を保護した場合は、蛍光分子を捕捉分子の蛍光分子結合部に結合させる前に、脱保護する。例えば、蛍光分子結合部が、チオールである捕捉分子に、蛍光分子を結合させる場合には、蛍光分子を結合させる前に、予めチオールの脱保護を基板表面で実施する。
【0042】
蛍光分子を結合させた後は、製造されたターゲット計測用デバイスの基板の固相面を洗浄し、捕捉分子に結合されなかった余剰の蛍光分子を除去し、洗浄液を除去する(ステップS17)。
以上の手順により製造された基板は、遮光、温度、湿度条件等、基板、基板に固定化した捕捉分子や捕捉分子結合分子等の性質に適した環境下で使用まで適宜保存される(ステップS18)。
【0043】
図2に、捕捉分子が、ターゲットの特定の核酸配列と相補的な検出配列を有するドナー蛍光プローブ2であって、捕捉分子結合分子が、前記ドナー蛍光プローブが有する塩基配列と相補的な核酸配列を有する消光プローブ3を用いる場合の、蛍光分子結合工程を示す。
【0044】
図2(a)に示すように、ドナー蛍光プローブ2と消光プローブ3とを、結合部22を介してカップリングさせる。その後、ドナー蛍光プローブ2の基板結合部と、消光プローブ3の基板結合部とを、各々の基板結合部を介して、DNAマイクロアレイ8と結合させる。ドナー蛍光プローブ2及び消光プローブ3とDNAマイクロアレイ8とは、リンカー21を介して結合させてもよい。
【0045】
次に、DNAマイクロアレイ8を、ブロッキング液に液浸し、DNAマイクロアレイ8表面の未反応の結合部をブロッキングし、表面ブロッキングDNAマイクロアレイ8とする。その後、蛍光分子4を含む溶液を、表面ブロッキングDNAマイクロアレイ8に接液した状態でインキュベートする。これにより、図2(b)に示したように、蛍光分子4は、ドナー蛍光プローブ2の蛍光分子結合部7に結合する。蛍光分子4が、ドナー蛍光プローブ2の蛍光分子結合部7に結合した後、ドナー蛍光プローブ2の蛍光分子結合部7に結合していない余剰の蛍光分子4を洗浄して除去する。
【0046】
次に、本発明のターゲット計測用デバイスの製造方法により製造されたターゲット計測用デバイスによりターゲットを検出する原理について説明する。図3は、ターゲットが特定の核酸配列を有するDNAであって、捕捉分子が、蛍光分子で修飾された、前記ターゲットの特定の核酸配列と相補的な核酸配列である検出配列を有するドナー蛍光プローブである場合のターゲット検出原理を示している。以下、図3を用いてターゲット検出原理を説明する。
【0047】
図3に示したように、ドナー蛍光プローブ2は、基板であるDNAマイクロアレイ1にリンカー21を介して固定化されている。消光分子5で修飾されたドナー蛍光プローブ2の核酸配列と相補的な配列を有する消光プローブ3は、ドナー蛍光プローブ2と結合部22でハイブリダイズするように、基板であるDNAマイクロアレイ1に固定化されている。ターゲット6が存在しないときは、蛍光分子4が消光分子5によって消光された状態となっており、蛍光分子4を励起光で励起しても蛍光を呈さない。ターゲット6が存在する時は、ターゲット6が蛍光分子4で修飾されたドナー蛍光プローブ2の検出配列23にハイブリダイズ反応により結合し、前記消光プローブ3がドナー蛍光プローブ2から離れる。これによって、蛍光分子4で修飾されたドナー蛍光プローブ2を修飾している蛍光分子4を励起光で励起することにより蛍光を呈する。
【0048】
次に、本発明のターゲット計測用デバイスの製造方法により製造されたターゲット計測用デバイスによりターゲットを検出する操作手順について説明する。図4は、図3に示した核酸配列計測用デバイスを用いてターゲットを検出する手順を示すフローチャートである。
まず、ターゲット6を含むターゲット溶液を調製する(ステップS21)。ターゲット溶液を調製する際に、特定の核酸配列を有するターゲット6の増幅を行ってもよい。サンプル中にターゲット6が存在するか否かを確認するタイミングとしては、増幅終了後に限定されず、増幅中であってもよい。なお、ターゲット6の存在を確認する方法としては、電気泳動、抗原抗体反応、質量分析、リアルタイムPCR等を適宜利用することができる。
【0049】
調製したターゲット溶液を、蛍光分子4で修飾されたドナー蛍光プローブ2が固定化されたDNAマイクロアレイ1に供給する(ステップS22)。図3に示したように、ターゲット6が存在しないときは、ドナー蛍光プローブ2及び消光プローブ3は、結合部22で結合することにより、蛍光分子4と消光分子5が接近した状態にある。この状態では励起光が照射されても消光分子5の影響により蛍光分子4は蛍光を呈さない。
次に、ターゲット6とドナー蛍光プローブ2とをハイブリダイズ反応させる(ステップS23)。ターゲット6とドナー蛍光プローブ2とをハイブリダイズ反応させると、ターゲット6がドナー蛍光プローブ2の検出配列23に結合し、結合部22でのドナー蛍光プローブ2と消光プローブ3の結合が外れて、消光分子5と蛍光分子4の距離が離れる。これにより、蛍光分子4の消光状態が解かれ、励起光の照射により蛍光分子4が蛍光を呈するようになる。このDNAマイクロアレイ1の固相面からの蛍光画像を、蛍光読取装置で取得する(ステップS24)。次に、取得された蛍光画像から、蛍光量を算出する(ステップS25)。このように、ドナー蛍光プローブ2が蛍光を呈するか否かでサンプル中の対象核酸(ターゲット6)の有無を確認することができる。また、蛍光光量を定量することにより、サンプル中のターゲット量を定量することができる。また、この時、溶液中に含まれる捕集されていないターゲット6は蛍光を呈さないために、洗浄する必要がない。したがって、ターゲット溶液存在下で、溶液を通して固相表面を観察することが可能である。このため、洗浄の影響を排した状態での光量が測定できるとともに、ハイブリダイズ反応中のリアルタイム測定も可能となる。
【0050】
次に、ターゲット計測装置について説明する。
ターゲット計測装置としては、本発明のターゲット計測用デバイスの製造方法により製造されたターゲット計測用デバイスと、前記ターゲット計測用デバイスからの、蛍光分子の蛍光量を測定する蛍光読取装置とを有するもの等が挙げられる。
図5はターゲット計測装置を示す構成図の一例である。図5に示したターゲット計測装置はターゲット計測用デバイス10のターゲットと、捕捉分子とが結合する前後の画像を取得するため、結合前の画像を取得後、温調ステージによりターゲット計測用デバイス10の固相面の温度を上昇させて結合反応を進行させ、再び常温に下げた状態で結合後の画像を取得する。例えば、基板の固相面にドナー蛍光プローブ2を固定化されている場合は、ターゲット6をドナー蛍光プローブ2とハイブリダイズ反応させ、ハイブリダイズ反応前後の画像を取得する。
【0051】
温調ステージは、ターゲットと捕捉分子との結合を促進するために、ターゲットと捕捉分子との反応中に、振とうまたはターゲット計測用デバイスの回転、ボルテックスミキサー等による撹拌機能があることが好ましい。
【0052】
蛍光読取装置40の光学系では、レーザー光源41から出射されたレーザー光はミラー45を介してダイクロイックミラー44で反射されターゲット計測用デバイスの固相を照射する。照射された光がターゲット計測用デバイス10の固相面上にある蛍光分子4に対する励起光33となり、蛍光分子4が励起状態になって蛍光分子4が蛍光34を放射する。
【0053】
ターゲット計測用デバイス10の固相面から放出された蛍光は、ダイクロイックミラー44を透過し結像光学系43を介して、CCDカメラ42の検出素子上に蛍光画像が結像し検出される。ここで蛍光34中に励起光33が漏れ入るのを防ぐ目的で、励起光33側に励起光波長に合わせたバンドパスフィルタを設置してもよく、蛍光34側に検出したい蛍光波長に合わせたバンドパスフィルタを設置してもよい。
【0054】
ターゲット計測装置により得られる蛍光画像は、同一スポットのターゲットと捕捉分子の結合前後の画像を取得することができる。そのため、固相間、スポット間の光量のばらつきの影響を受けない。また、結合反応前後の蛍光画像から蛍光変化量を演算し、結合反応した分子数を算出することができる。蛍光変化量の演算は、スポット全体の平均光量を使用してもよいし、スポット画像の各ピクセルの蛍光変化量を使用してもよい。
【0055】
ターゲット計測装置は、CCDカメラ42をコントロールするコンピュータと、画像の光量を計算する演算装置、画像と光量等を保存する記録装置を備えていてもよい。
【0056】
ターゲット計測装置は、固相面上の検出スポットの固定化面と反対側の面から蛍光を検出するため、蛍光顕微鏡や共焦点顕微鏡、エバネッセント蛍光検出装置、薄膜斜光照明顕微鏡、シート照明顕微鏡、構造化照明顕微鏡、多光子励起顕微鏡などを使用することができる。ターゲット計測装置は以上の構成に限定されず、各機能に分割した装置によって実施されることでもよい。
【0057】
次に、本発明のターゲット計測用キットについて説明する。本発明のターゲット計測用キットは、本発明のターゲット計測用デバイスの製造方法に用いることができる。
本発明のターゲット計測用キットは、サンプルに含まれるターゲットを計測する際に用いられるターゲット計測用キットであって、基板結合部及び蛍光分子結合部を有し、前記ターゲットと特異的に結合する捕捉分子と、前記捕捉分子の前記蛍光分子結合部に結合する蛍光分子と、前記捕捉分子の前記基板結合部が固定される固相面を有する基板と、を含む。
【0058】
捕捉分子は、基板結合部で基板に結合されていてもよい。捕捉分子が、基板結合部で基板に結合されている場合は、捕捉分子が結合している基板の固相面の未反応の結合部は、ブロッキング液を用いてブロッキングされていることが好ましい。ブロッキング液としては、前述したブロッキング液が用いられる。
【0059】
本発明のターゲット計測用キットは、基板結合部及び所定の位置に付加された消光分子を有し、前記捕捉分子に特異的に結合する捕捉分子結合分子を含んでいてもよい。消光分子は、捕捉分子結合分子の基板結合部を基板の固相面に結合させ、前記捕捉分子の蛍光分子結合部に蛍光分子が結合したときに、前記蛍光分子に接近した前記消光分子により前記蛍光分子が呈する蛍光が消光される位置関係となるように、捕捉分子結合分子に付加する。
【0060】
ターゲット、捕捉分子、及び、捕捉分子結合分子としては、前述のターゲット、捕捉分子、及び、捕捉分子結合分子が挙げられる。本発明のターゲット計測用キットとしては、例えば、ターゲットが、特定の核酸配列を有するターゲットであり、捕捉分子として、前記特定の核酸配列と相補的な配列を有する検出プローブであるキット、ターゲットが、特定の核酸配列を有するターゲットであり、捕捉分子が、前記特定の核酸配列と相補的な配列を有する検出プローブであり、捕捉分子結合分子が、前記検出プローブと相補的な核酸配列を有する消光プローブであるキット等が挙げられる。
【0061】
本発明のターゲット計測用キットにおいて、基板、蛍光分子、及び、消光分子は前述したものが挙げられる。本発明のターゲット計測用キットは、さらに、ターゲットを定量するために必要な標準液、必要な緩衝液、製品説明書等を含んでいてもよい。
【0062】
次に、本発明のターゲット計測用キットの使用方法について説明する。
まず、捕捉分子の基板結合部と、基板の捕捉分子結合部とを結合させ、捕捉分子を基板の固相面に固定化する。ただし、本発明のターゲット測定用キットが、既に、捕捉分子が、捕捉分子の基板結合部で、基板に結合されているキットである場合は、この固定化工程は行わなくてよい。ターゲット計測用デバイスが、さらに、基板結合部及び所定の位置に付加された消光分子を有し、前記捕捉分子に特異的に結合する捕捉分子結合分子を備える場合には、捕捉分子の基板結合部と、基板の捕捉分子結合部とを結合させ、捕捉分子を基板の固相面に固定化するとともに、捕捉分子結合分子の基板結合部を、捕捉分子結合分子に蛍光分子が結合したときに、蛍光分子に接近した消光分子により蛍光分子が呈する蛍光が消光される位置関係となるように基板の固相面に結合させる。捕捉分子と捕捉分子結合分子とは、結合させた後に、各々の基板結合部を介して、基板の固相面に固定化してもよい。なお、本発明のターゲット測定用キットが、既に、基板結合部及び所定の位置に付加された消光分子を有し、捕捉分子に特異的に結合する捕捉分子結合分子を含むキットである場合は、この捕捉分子結合分子を基板の固相面に結合させる工程は行わなくてよい。
【0063】
例えば、DNAプローブを基板の固相面に固定化する場合は、DNAプローブを基板の固相面にスポッター等を用いてスポットする。次に、基板を乾燥させることにより、DNAプローブを基板の固相面に固定化する。捕捉分子結合分子として、消光プローブを用いる場合は、上記で得られたプローブ液を加熱後、急冷し、DNAプローブと消光プローブをカップリングさせた後、カップリングしたDNAプローブと消光プローブとを、基板の固相面に固定させる。消光プローブは、DNAプローブが有する塩基配列と相補的な核酸配列を有するため、DNAプローブとカップリングする。例えば、プローブ液を95℃に加熱後、5分間温度を保持し、その後、氷冷することで、DNAプローブと消光プローブをカップリングさせる。カップリングしたDNAプローブと消光プローブとは、それぞれが有する基板結合部を介して基板に固定化される。
【0064】
捕捉分子をスポットする固相面上の領域は、予め規定された数を単位としたブロック毎に区分けされていてもよい。ターゲット計測用デバイスに対するターゲット溶液の添加は、ブロック毎に行われる。また、ターゲット計測用デバイスの画像取得は、ブロック毎に行われることが多い。つまり、ブロックは、画像取得領域であるということができる。
【0065】
次に、基板の固相面の未反応の結合部をブロッキングする。ブロッキングは、前記で乾燥させた基板の固相面を、ブロッキング液に液浸し、未反応の結合部を不活性化する。ブロッキング剤としては、前述したブロッキング剤が用いられる。なお、本発明のターゲット計測用キットにおいて、既に捕捉分子が、捕捉分子の基板結合部で基板に結合されており、基板の固相面の未反応の結合部がブロッキングされているキットを用いる場合は、このブロッキング工程は行わなくてよい。
【0066】
次に、表面をブロッキングした基板の固相面を洗浄する。洗浄は、表面をブロッキングした基板の固相面を洗浄液で洗浄し、固定化されていない余剰の捕捉分子及びブロッキング液を除去し、洗浄液も除去する。捕捉分子としてDNAプローブを用いる場合は、基板に固定化されていない余剰のDNAプローブ、及びブロッキング液を除去し、洗浄液も除去する。捕捉分子結合分子として、前記消光プローブを用いる場合は、基板に固定化されていない余剰の消光プローブも除去される。
【0067】
次に、捕捉分子の蛍光分子結合部に蛍光分子を結合させる。捕捉分子がDNAプローブである場合は、DNAプローブの蛍光分子結合部に蛍光分子を結合させる。捕捉分子と蛍光分子との結合は、捕捉分子が有する蛍光分子結合部と蛍光分子の捕捉分子結合部とを反応させることで行うことができる。捕捉分子への蛍光分子の結合方法としては、固相表面がブロッキングされた基板の、捕捉分子がスポットとして固定化された面に対して蛍光分子を含む溶液を接液することで実施することができる。例えば、カバーガラスや専用の容器を使用することで蛍光分子を含む溶液と、表面がブロッキングされた基板とを接液した状態でインキュベートすることで、蛍光分子を捕捉分子の蛍光分子結合部に結合させることができる。捕捉分子の蛍光分子結合部を保護した場合は、蛍光分子を捕捉分子の蛍光分子結合部に結合させる前に、脱保護する。例えば、蛍光分子結合部が、チオールである捕捉分子に、蛍光分子を結合させる場合には、蛍光分子を結合させる前に、予めチオールの脱保護を基板表面で実施する。
【0068】
捕捉分子の蛍光分子結合部に蛍光分子を結合させた後は、製造された核酸配列計測デバイスの基板の固相面を洗浄し、捕捉分子に結合されなかった余剰の蛍光分子を除去し、洗浄液を除去する。
以上の手順により製造されたキットは、遮光、温度、湿度条件等、基板、基板に固定化したターゲットや捕捉分子等の性質に適した環境下で使用まで適宜保存される。
【0069】
本発明のターゲット計測用キットを用いて製造されたターゲット計測用デバイスは、前記したターゲット計測方法に使用することができる。
【0070】
本発明の適用範囲は上記実施形態に限定されることはない。本発明は、ターゲット計測用デバイスの製造方法、及びターゲット計測用キットに対し、広く適用することができる。
【0071】
本発明のターゲット計測用デバイスの製造方法で製造されるターゲット計測用デバイス、及びターゲット計測用キットは、蛍光分子光量計測におけるドライ画像測定、バイオチップの蛍光分子光量の液中観察、及び連続反応におけるリアルタイム観察等に使用することができる。具体的には、例えば、遺伝子・高分子分析による菌種判別、がん遺伝子、動植物判別、腸内細菌の検査等に用いることができる。
【0072】
また、本発明のターゲット計測用デバイスの製造方法で製造されたターゲット計測用デバイス、及びターゲット計測用キットは、臨床検査等に使用される標識抗体法等のような固相法にも適用される。例えば、組織や細胞内の特定の染色体や遺伝子の発現を、蛍光物質を用いて蛍光測定するFISH法(蛍光 in situ ハイブリダイゼーション)が一例として挙げられる。この他にも、ユーロピウム等の蛍光発光物質を標識として抗原抗体反応を測定するFIA法(蛍光免疫測定法)や、抗原となる病原体等に蛍光物質をラベルした血清(抗体)反応を測定するIFA法(間接蛍光抗体法)にも適用される。
【実施例0073】
以下、実施例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0074】
(実施例1)
基板表面の結合部として活性エステルを有する基板を、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液に5分間浸漬することでブロッキング処理を行い、基板表面上の結合部を不活化させた。その後100℃の蒸留水に2分間、0℃の蒸留水に2分間浸漬してエアブローで表面の水滴を除去することで洗浄を行った。
蛍光分子Cy3(GEヘルスケア社製)およびB-Phycoerythrin(AnaTag B-Phycoerythrin Labeling Kit:アナスペック社製)をそれぞれ終濃度10μMになるように0.7Mリン酸緩衝液に溶解し、蛍光分子溶液を調製した。
上記で得られたブロッキング処理済みの基板と、ブロッキング処理を行わない基板とを用意し、それぞれに蛍光分子溶液を1μL滴下して120分間、常温の湿潤チャンバでインキュベートした。その後、基板を常温の蒸留水に2分間浸漬してエアブローで表面の水滴を除去することで洗浄した。蛍光分子溶液の滴下スポットを励起波長532nm、蛍光検出波長563~633nmの蛍光読取装置により蛍光画像を取得し、スポットの光量から基板の非特異的な蛍光分子の吸着を確認した。その結果を図6に示す。
【0075】
図6に示したように、分子量の小さい蛍光色素であるCy3ではブロッキングによって1/10以下に非特異的な吸着が減少した。Cy3に比較して分子構造が複雑で分子中に多種多数の結合部を含む蛍光タンパク質の一種であるB-Phycoerythrinではブロッキングによって1/2以下に非特異的な吸着を減少させることができた。
【0076】
(実施例2)
5’末端にチオール基、3’末端にアミノ基が修飾された合成オリゴDNAからなるプローブと、5’末端にアミノ基、3’末端に消光分子である、BHQ2が修飾された合成オリゴDNAからなるプローブ(消光プローブ)をそれぞれ10μMになるように0.7Mリン酸バッファに溶解し、プローブ溶液を調製した。プローブ溶液を、基板に1μL滴下した。
基板を60分間、80℃に設定したヒートブロック上にプローブ溶液の滴下面を上にして設置し、遮光状態でインキュベートしてプローブを基板に固定化した。次に、得られたプローブが固定化された基板を0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液に5分間浸漬することで、ブロッキング処理を行い、基板表面上の結合部を不活化させた。その後、100℃の蒸留水に2分間、0℃の蒸留水に2分間浸漬してエアブローで表面の水滴を除去することで洗浄を行った。基板上に固定化されたプローブのチオール基の脱保護として、固定化面に0.1Mジチオトレイトール水溶液をギャップ付きカバーガラスで保持し、室温の湿潤チャンバで30分間インキュベートした。その後、常温の蒸留水に基板を2分間浸漬しエアブローで表面の水滴を除去することで、基板の洗浄を行った。
【0077】
次に、基板のプローブ固定化面に対して蛍光分子である、Cy3 Maleimide(GEヘルスケア社製)を10μMになるように0.7Mリン酸緩衝液に溶解した溶液をギャップ付きカバーガラスで保持し、室温の湿潤チャンバで、120分間常温でインキュベートし、Cys3とプローブとを反応させた。その後、100℃の蒸留水に2分間、0℃の蒸留水に2分間浸漬してエアブローで表面の水滴を除去することで、基板の洗浄を行った。以上の方法により基板上にドナー蛍光プローブと消光プローブがカップリングしたプローブが固定化されたターゲット計測用デバイスを作製した。
【0078】
次に、50nMのターゲット合成オリゴDNAの終濃度が5×SSCの溶液になるようにターゲット溶液を調製し、上記で作製したターゲット計測用デバイスのプローブ固定面に、チャンバでターゲット溶液を保持し、60℃、5rpm、30分間インキュベートすることにより、プローブとターゲットとをハイブリダイズ反応させた。基板のプローブが固定化されたスポットが呈する蛍光画像を、励起波長532nm、蛍光検出波長563~633nmの蛍光読取装置により取得し、スポットの光量を測定し、S/Nを評価した。その結果を図7に示す。
【0079】
図7に示したように、作製したターゲット計測用デバイスはターゲットを含まない状態では蛍光分子が消光された状態にあり、ターゲットとハイブリダイズすると光量が上昇し、S/Nが10程度で検出可能であった。また、消光プローブを含まずドナー蛍光プローブとしてチオール基が修飾されたプローブだけ固定化した後に、蛍光分子を結合させた場合は、ドナー蛍光プローブをスポットした箇所において蛍光が観察され、その光量は、ターゲットがプローブにハイブリダイズ反応したときにおける光量とほぼ一致した。このことにより、ドナー蛍光プローブに蛍光分子が結合しており、作製したターゲット計測用デバイスにより、正確にターゲットを計測できることが確認された。
【符号の説明】
【0080】
1 DNAマイクロアレイ
2 ドナー蛍光プローブ
3 消光プローブ
4 蛍光分子
5 消光分子
6 ターゲット
7 蛍光分子結合部
8 表面ブロッキングDNAマイクロアレイ
21 リンカー
23 検出配列
10 ターゲット計測用デバイス
40 蛍光読取装置
41 レーザー光源
42 CCDカメラ
43 結像光学系
44 ダイクロイックミラー
45 ミラー
46 ステージ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7