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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114615
(43)【公開日】2022-08-08
(54)【発明の名称】多機能床材
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/16 20060101AFI20220801BHJP
【FI】
E04F15/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021010977
(22)【出願日】2021-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】519428122
【氏名又は名称】株式会社Magic Shields
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】平山 洋介
(72)【発明者】
【氏名】下村 明司
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 太紀
【テーマコード(参考)】
2E220
【Fターム(参考)】
2E220AA01
2E220AA19
2E220AA44
2E220AC01
2E220BA04
2E220BA22
2E220DA02
2E220EA03
2E220FA01
2E220GA01X
2E220GA08X
2E220GA22X
2E220GB13X
2E220GB26X
2E220GB34X
2E220GB43X
2E220GB45X
(57)【要約】
【課題】保温性、防振性、消音性などの床としての基本的な機能を損なうことなく、転倒時には高い衝撃吸収能を発揮する、多機能床材を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、ユーザの転倒による衝撃を緩和する機能を有する多機能床材であって、複数の凸構造を有する構造層を備え、前記凸構造は、設置する場所と略並行な上面部を備え、隣り合う前記凸構造同士は部分的に繋がっており、復元性のある材料で構成されること、を特徴とする、多機能床材を提供する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの転倒による衝撃を緩和する機能を有する多機能床材であって、
複数の凸構造を有する構造層を備え、
前記凸構造は、設置する場所と略並行な上面部を備え、隣り合う前記凸構造同士は部分的に繋がっており、復元性のある材料で構成されること、
を特徴とする、多機能床材。
【請求項2】
前記凸構造は、角錘台状の構造であり、
前記角錐台の、地面と略水平ではない辺に窪みを持つこと、
を特徴とする、請求項1に記載の多機能床材。
【請求項3】
前記上面部は多角形からなり、
前記多角形に外接する最小の正方形の辺の長さは10mmから50mmであること、
を特徴とする、請求項1または2に記載の多機能床材。
【請求項4】
前記窪みの最深部は、前記凸構造の高さを四等分した時に、上から2番目から4番目の区画の両端を含む区画内にあること、
を特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の多機能床材。
【請求項5】
1辺に2個以上の前記凸構造を隣り合わせたユニットを単位とし、
前記構造層は、前記ユニットを隣接させることで形成すること、
を特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の多機能床材。
【請求項6】
複数の前記ユニットを連結する連結体と、
を更に備えることを特徴とする、請求項5に記載の多機能床材。
【請求項7】
前記連結体は、隣接する複数の前記ユニットにそれぞれ存在する、複数の前記凸構造に同時に触れること、
を特徴とする、請求項6に記載の多機能床材。
【請求項8】
前記構造層の上部に、前記ユーザの歩行性を高める硬質性材料を含む上部層と、
衝撃緩衝性素材からなる中間層と、
をさらに備えること特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の多機能床材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多機能床材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、患者や高齢者等が転倒した際の怪我を防ぐため、衝撃を吸収するマットや床材が提案されている。
【0003】
特許文献1には、簡単な組成で、優れた衝撃吸収性とキャスター走行性を確保し、更に歩行性に優れる床材が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、かけられた力を減衰し衝撃エネルギーを吸収するためのシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-178519号公報
【特許文献2】特表2019-525783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示される技術は、構造中にポリウレタンフォーム層が含まれ、これによって衝撃を吸収している。また、特許文献2に開示される技術は、特許文献1に開示された技術とは異なるメカニズムで衝撃を吸収するものではあるが、これらの技術は衝撃を吸収することに技術の主眼が置かれたものである。
【0007】
一方で、床は人が歩くだけではなく、生活を行う場所であれば生活に必要な家具など、事業などを行う場所であれば事業に必要な器具、機材、また、転倒が大きなリスクとなる高齢者の介護施設などであれば介護用器具、医療用器具などの物が設置される。また、床の上では多種多様な活動が行われ、更に床は、建物に影響のある地震や火災等の災害の影響も受けることとなる。この際、衝撃吸収機能だけに着目していては、様々な活動に支障を来たすことや、災害等の影響を多大に受けてしまう可能性もある。
【0008】
本発明は、このような背景を鑑みてなされたものであり、保温性、防振性、消音性などの床としての基本的な機能を損なうことなく、転倒時には高い衝撃吸収能を発揮する、多機能床材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ユーザの転倒による衝撃を緩和する機能を有する多機能床材であって、複数の凸構造を有する構造層を備え、前記凸構造は、設置する場所と略並行な上面部を備え、隣り合う前記凸構造同士は部分的に繋がっており、復元性のある材料で構成されること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、保温性、防振性、消音性などの床としての基本的な機能を損なうことなく、転倒時には高い衝撃吸収能を発揮する、多機能床材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】床材システム1の全体像を示す図である。
図2】構造層10を横から見た図である。
図3】構造体11の構造の一例を示す図である。
図4】構造体11の構造の一例を示す他の図である。
図5】構造体11の構造の一例を示す他の図である。
図6】構造体11の構造の一例を示す他の図である。
図7】柱部114の構造を示す図である。
図8】凹部115の形状の例を示す図である。
図9】構造層ユニット12の構造の一例を示す図である。
図10】連結体40の構造の一例を示す図である。
図11】構造層ユニット12の構造の一例を示す他の図である。
図12】構造層ユニット12の構造の一例を示す他の図である。
図13】実施例に用いた構造体11aの構造を示す図である。
図14】実施例に用いた構造体11aの構造を示す他の図である。
図15】実施例に用いた構造体11aの柱部114の構造を示す図である。
図16】実施例に用いた連結体40の構造を示す図である。
図17】実施例の試験方法を説明する模式図である。
図18】実施例の衝撃吸収試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態の内容を列記して説明する。本発明は、以下のような構成を備える。
[項目1]
ユーザの転倒による衝撃を緩和する機能を有する多機能床材であって、
複数の凸構造を有する構造層を備え、
前記凸構造は、設置する場所と略並行な上面部を備え、隣り合う前記凸構造同士は部分的に繋がっており、復元性のある材料で構成されること、
を特徴とする、多機能床材。
[項目2]
前記凸構造は、角錘台状の構造であり、
前記角錐台の、地面と略水平ではない辺に窪みを持つこと、
を特徴とする、請求項1に記載の多機能床材。
[項目3]
前記上面部は多角形からなり、
前記多角形に外接する最小の正方形の辺の長さは10mmから50mmであること、
を特徴とする、請求項1または2に記載の多機能床材。
[項目4]
前記窪みの最深部は、前記凸構造の高さを四等分した時に、上から2番目から4番目の区画の両端を含む区画内にあること、
を特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の多機能床材。
[項目5]
1辺に2個以上の前記凸構造を隣り合わせたユニットを単位とし、
前記構造層は、前記ユニットを隣接させることで形成すること、
を特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の多機能床材。
[項目6]
複数の前記ユニットを連結する連結体と、
を更に備えることを特徴とする、請求項5に記載の多機能床材。
[項目7]
前記連結体は、隣接する複数の前記ユニットにそれぞれ存在する、複数の前記凸構造に同時に触れること、
を特徴とする、請求項6に記載の多機能床材。
[項目8]
前記構造層の上部に、前記ユーザの歩行性を高める硬質性材料を含む上部層と、
衝撃緩衝性素材からなる中間層と、
をさらに備えること特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の多機能床材。
【0013】
<実施の形態の詳細>
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
<概要>
本発明の実施の形態による床材システム1は、複数の機能の異なる層を備える。図1は、一例として、床材システム1の一部を横から見た図であり、床材システム1の3つの基本構成要素を示す。
【0015】
本実施形態の床材システム1は、衝撃を吸収する主な機能を備える構造層10と、構造層10が持つ凹凸を均す効果を備える中間層20と、歩行性を高め、装飾性、滑り性、防水性、耐摩擦性などの床としての基本的な機能を備える上部層30から成る。
【0016】
本実施形態の構造層10は、一例として、床材システム1の下層を成し、図2のような構造を持つ。図2は、一例として、構造層10を横から見た図である。構造層10は、衝撃吸収能を持つ新規の構造体11が基本単位となっており、構造体11を隣り合う位置に複数備えることを特徴とする。
【0017】
本実施形態の構造体11の構造と機能について説明する。
【0018】
本実施形態の構造体11は、凸構造、一例として、錘台状の構造を基本とする。構造体11の構造の一例を図3に示す。図3(a)は、構造体11を真横から見た図である。図3(b)は、構造体11を斜め上方から見た図である。図3(c)は、構造体11を真上から見た図である。図3(d)は、構造体11を真下から見た図である。
【0019】
図4は、構造体11を横から見た図であり、表面から見えない線を破線で記載した。また、説明に用いるための補助線を一点破線で示し、各部の長さと角度(補助線を一点破線で示す)の位置を示した。なお、図3において本実施形態の構造体11の一例を、底面が正方形である四角錐台として記載しているが、底面が他の多角形からなる錘台状の構造でもよい。特に、水平面におけるあらゆる方向の剛性が一定になることが知られている、六角形の底面を備える六角錘台だとなおよい。
【0020】
本実施形態の構造体11の各部位について図4をもとに説明する。構造体11には、床などの構造物や地面などに接する部分であり、設置する部分と略並行である設置部111と、人が歩行する際に荷重を受ける部分であり、設置部111と略並行である上面部112と、錘台の壁面を構成する壁面部113と、設置部111の正方形の各角から対応する上面部112の各角を繋ぐ柱となる部分である柱部114と、柱部114に存在する凹部115と、が存在する。なお、設置部111と上面部112が柱部114で繋がっていれば、壁面部113は必須ではない。また、設置部111、上面部112、壁面部113、柱部114と別々のパーツのように記載しているが、構造体11は一体として製造することを想定しているため、設置部111、上面部112、壁面部113、柱部114のそれぞれの接点は一体として繋がった状態であるが、別々のパーツとして製造し、接着剤や部品で接続して、構造体11を形成してもよい。
【0021】
本実施形態の構造体11の各部位について、図4で定義する。図4において、構造体11の高さは高さh1とする。設置部111は、幅は幅w1、厚みは厚みt1とする。上面部112の上面の幅は幅w3、厚みは厚みt2とする。壁面部113、柱部114は厚みt3とする。設置部111の最下部から凹部115の窪みの最深部(図7において、辺114aの延長線と辺114bを通る面と、凹部115の窪みを構成する面との接点を二点鎖線で示してあり、辺114aの延長線から当該二点鎖線に垂直に降ろした直線が最も長くなる位置を指す。図15においても同様とする。)までの長さを高さh2、また凹部115の幅は幅L1とする。更に、設置部111の底面の内側の辺の長さを幅w2とする。柱部114は1辺が幅t3の正方形からなる四角柱を基本とするがこれに限定されず、設置部111と中間層20と接する場所は略並行に削り取られた構造となる。更に、図4において、設置部111と柱部114が成す角度をθ1とする。
【0022】
本実施形態の構造体11の柱部114について、更に図7をもとに定義する。図7は本実施形態の柱部114を示す図である。凹部115の幅は幅L1である。また、柱部114の角の辺(上面部112の角(例えば図6の112b)から設置部111(例えば図6の111c)に向かって伸びる辺)の、凹部115よりも下の辺を辺114a、内側の辺を辺114bとする。このとき、辺114aの任意の点から、柱部114の外側に面する側面114cと側面114dと等距離で、かつ辺114bに垂直に降ろした線が柱部114の太さにあたり、この長さを厚みt4とする。更に、凹部115の最深部から辺114aに垂直に降ろした線の長さを厚みt5とする。
【0023】
本実施形態の設置部111は、設置する部分と略並行であり、設置する部分に接する。設置する部分は床スラブや、その上にフローリングや塩化ビニル等を施工した床、OAフロアなどを設置した床などの構造物、木造においては床板や、その上部に畳などを設置した場所、地面などを想定しているが、人が歩行する場所であればこれに限定されない。なお、図3では、本実施例の設置部111は枠の部分しかないように記載しているが、上面部112や壁面部113に空隙を設け、上面部112に荷重が掛かった際に構造体11の変形できるよう空気が逃げるようになっていれば、設置部111は構造体11の底を塞いでいても良く、また、一部に空隙を備えて空気が逃げるようになっていてもよい。
【0024】
また、構造層ユニット12(詳細は後に記載する)の設置後のずれを防ぐため、設置部111の底面に凹凸を付け、また、両面シールなどの粘着性のある材料を付けることで、設置する部分との摩擦力が高めるなどの工夫を施してもよい。なお、構造体11は設置部111で隣接する他の構造体11と繋がる形で一体として製造されており、複数の構造体11からなる構造層ユニット12を形成するが、構造体11をそれぞれ別に製造した後に接着、または部品で接続することにより構造層ユニット12を形成してもよい。
【0025】
本実施形態の設置部111において、幅w1は5mm以上でよく、更に10mm以上であれば製造コストを低く抑えることができ、更に20mm以上であれば施工しやすい高さh1に収めることができ、更に25mm以上であれば、構造層ユニット12のどの部分に大腿骨の転子部を打ち付けたとしても、平均して4つの構造体11で衝撃吸収を行うことができ、骨折を防止する機能が高まる。また、幅w1は100mm以下でよく、更に80mm以下であれば製造コストを低く抑えることができ、更に50mm以下であれば施工しやすい高さh1に収めることができ、更に35mm以下であれば、構造層ユニット12のどの部分に大腿骨の転子部を打ち付けたとしても、平均して4つの構造体11で衝撃吸収を行うことができ、骨折を防止する機能が高まる。
【0026】
本実施形態の上面部112は、設置部111と略並行であり、その上部に中間層20と、上部層30を重ねることにより、その上から歩行などにより荷重がかかった際に上部層30と中間層20を経て、荷重を直接受ける部分である。なお、図3において上面部112は凹凸が無いように記載しているが、その上部に中間層20と上部層30を重ねられる状態であれば、凹凸や穴が存在し、その空隙から、構造体11が変形した際に内部の空気が抜けるように設計してもよい。
【0027】
図5は構造体11を横から見た図であり、図6は構造体11を上から見た図(a)と下から見た図(b)である。ここで図6(a)にて斜線で示した上面部112の上の面(面112aとする)は、1辺が幅w3の正方形であり、その角の点を点112bとする。また、図6(b)にて、上面部112の下の面(図中の中央の四角形、面112cとする)は、1辺が幅w4(上面部112の下の面の角を点112dとすると、点112dと隣あう、当該面112cの他の角との長さを幅w4とする)の正方形である。更に、図6(b)にて斜線で示した設置部111の底面の内側(面111aとする)は、1辺が幅w2(設置部111の内側の角を点111bとすると、点111bと隣あう、当該面111aの他の角との長さを幅w2とする)の正方形である。この時、衝撃吸収の能力を発揮するためには、式1の関係が成り立つ。また、構造体11に荷重が加わっていないとき、上から見ると112c面は111a面の内側に存在するように見える。
【0028】
[式1]
【0029】
更に、θ1は式1が成り立つ範囲であれば良く、80度以上90度未満の範囲であれば、構造体11の高い衝撃吸収性が発揮され、更に83度から87度の範囲であれば、歩行時に膝から垂直に降ろした線と、膝と踵を繋ぐ線が成す角度が約5度(非特許文献1)であることから、歩行による衝撃力に対して、構造体11の構造安定性を的確に確保できる。
【0030】
【非特許文献1】Kirsten GOetz-Neumann、月城慶一、山本澄子、江原義弘、畠中泰彦 訳、「観察による歩行分析」、医学書院、2005
【0031】
なお、後に記載する実施例の構造体11のように、図3から図8に記載の各部位が弧状の曲面となり、例えば、面111a、面112a、面112cが正方形にならない場合もある。その場合は、例えば、面111aの各辺をそれぞれ延長し、その交点を点111bとみなせばよい。点112b、点112dも同様にそれぞれの面の各辺を延長し、その交点を当該点であるとみなせばよい。
【0032】
本実施形態の壁面部113は角錐台の、地面と水平ではない4つの壁面を構成する。壁面部113は上面部112に掛かった荷重がかかる部分ではあるが、設置部111と上面部112の対応する角が柱部114で繋がっていて、柱部114が荷重を受ける十分な強度があれば、壁面部113は必須ではない。
【0033】
本実施形態の柱部114は、設置部111と上面部112の各角を繋ぐ。辺114aの上部で、柱部114の一部分が欠失する形で凹部115が存在する。
【0034】
本実施形態の凹部115は、柱部114に存在し、衝撃吸収における中心的な働きをする部位である。図7に示すように凹部115が存在することにより、凹部115の周辺は柱部114の中でも厚みが薄くなっており、このため、上面部112に一定の荷重がかかった際、凹部115の部分で柱部114が構造体11の内側に向けて屈曲する。
【0035】
また、図7に示すように、本実施形態の凹部115の窪みが最も深い部分(最深部)は、凹部115の中央付近に存在する。図7に二点破線で示したのは、辺114aと辺114bを通る面が凹部115と接する部分であり、凹部115の最深部は当該二点破線上に存在する。辺114aと辺114bに垂直に降ろした線の長さを厚みt4、凹部115の最深部から、辺114bに垂直に降ろした線の長さを厚みt5とすると、式2が成り立つ。
【0036】
[式2]
【0037】
また、図4において、本実施形態の設置部111の底面から凹部115の最深部までの距離を高さh2としたが、式3が成り立つ。つまり、凹部115の最深部は、構造体11の高さの半分及び半分より下の位置に存在する。これにより、上面部112に一定の荷重がかかった際、凹部115の部分で柱部114が構造体11の内側に向けて屈曲しやすくなる。
【0038】
[式3]
【0039】
なお、凹部115の最深部が、高さh1を四等分した時に、下から2番目の区画の両端を含む区画内に存在してもよく、この場合、凹部115の最深部から柱部114の上下の両端までの距離が十分に取れるため、屈曲時に構造体11が十分に沈み込み、衝撃を吸収しやすい。更に、凹部115の最深部は、高さh1を四等分した時に、上から2番目の区画の上端を含む区画内に存在してもよく、この場合は、前記と同様に凹部115の最深部から柱部114の上下の両端までの距離が十分に取れるため、屈曲時に構造体11が十分に沈み込み、衝撃を吸収しやすい。
【0040】
なお、図8に示すように、凹部115は直線的にカットされた形状(図8a)をしていてもよいし、曲面的にカットされた形状(図8b)をしていてもよい。また、凹部115にはいくつかの凹形状(図8c)が存在していてもよい。なお、複数凹形状が存在する場合にも、その中でも一番上の凹形状の最深部には、式3が成り立つ。更に、凹形状は上下方向に対象になっていなくてもよい(図8d)。更に、図示していないが、凹形状は左右方向に対象になっていなくてもよい。
【0041】
更に、凹部115の最深部は1点でなくてもよく、複数あってもよく、連続的にあってもよい。なお、凹部115の最深部が複数、連続的にあるとき、[0038]、[0039]、[0040]、[0050]の対象となる最深部は、その中でも最も上側にある最深部の点のことを指す。
【0042】
構造体11は復元性のある材料で構成されることで、荷重を受けたのち、荷重が無くなると元の形状に戻ることができる。当該材料は、例えば、エラストマー系、スポンジなどからなり、一例として、NRゴムで構成されてもよい。構造体11がNRゴムで構成される場合、ゴム硬度は10から100の範囲でよく、50から80の範囲で衝撃吸収能と歩行時の安定性のバランスが高まる。
【0043】
なお、図3から図8に示した本実施形態の構造体11は、変形例として、全て直線で構成されていなくても良い。例えば、直線的に記載した各部位は弧を描いていても良い。また、その結果、説明に用いた点や辺が存在しない場合には、当該点や辺を規定していた直線を延長し、その交点を当該点や辺とみなせばよい。
【0044】
図9は、一例として、本実施形態の構造層10を上から見た図である。本実施形態の構造層10は、一例として、図9に示すように構造体11が1辺に複数個併設された正方形状の形状でユニット化しており、当該ユニット(構造層ユニット12と呼ぶ)を床等の構造体や地面に敷くことで用いる。
【0045】
また、構造層ユニット12は、一例として、設置したあとのズレを防止し、また構造層ユニット12を敷き詰めた場合にも部位によらず一定の衝撃吸収能を発揮するため、図10に一例を示す連結体40を用いて連結してもよい。異なる構造層ユニット12に存在する、それぞれ一つ以上の構造体11にはまる構造をしている。これにより連結体40は、ある構造層ユニット12を成す構造体11に水平方向に掛かる力を、隣の別の構造層ユニット12を成す構造体11に分散させることができる。
【0046】
なお、構造層ユニット12において、複数の構造層ユニット12を連結体40で連結するため、1辺に併設される構造体11は2個以上あればよく、更に5個以上であれば製造、設置コストの低減に繋がり、10個以上であればさらに製造、設置コストの低減に繋がる。
【0047】
さらに、構造層ユニット12において、設置する場所の形状に応じて、図11に示すように、各辺に併設される構造体11の個数を変えることで長方形状をしていてもよい。更に、より強固にユニット同士を連結するために、図12に示すように、正方形または長方形の各辺にさらに幾つかの構造体11を併設させ、隣のユニットと凹凸が嵌るような形としても良い。更に、敷き詰める際には、図9図11図12に例をしめす構造層ユニット12を組み合わせてもよいし、どれか1種類のみを用いてもよい。
【0048】
さらに、構造層ユニット12において、併設する構造体11は、全て同じ構造、素材(ものづくり上のばらつきの範囲内で同一)であってもよく、また、構造や素材を変えることで、衝撃吸収能の異なる構造体11を併設したものでもよい。更に、構造体11を列ごとに交互に一つ飛ばしに配置し、その飛び地の部分にスポンジなどの他の衝撃吸収体を用いた構造層ユニット12としてもよい。
【0049】
さらに、構造層ユニット12は目的によって連結する個数を変えてもよい。例えば、ベッドサイドでの起き上がり時や入床時に起きる転倒での骨折等を防ぐためにベッドサイドの一定の面積に対して前記ユニットを敷き詰めるなど、転倒が起きやすい場所を含む近隣の一定の面積をカバーしてもよい。また、例えば、部屋や廊下、階段などの全体に敷き詰めてもよい。
【0050】
さらに、構造層ユニット12は、これまで説明した向きと逆に倒立した状態で設置しても良い。この場合、設置部111が中間層20と接し、上面部112が床などと接する。更に、この場合、構造体11における凹部115の最深部の高さは、地面に接している上面部112に近づくように、構造体11の高さh1の半分の高さを含み、高さh1の半分の高さよりも下に位置する。または、凹部115の最深部は、高さh1を四等分した時に、下から2番目の区画の両端を含む区画内に存在してもよく、上から2番目の区画の上端を含む区画内に存在してもよい。構造層ユニット12をこれまで説明した向きと逆に設置して複数並べ、その上部に中間層20、上部層30を配置することで、同等の衝撃吸収能を維持しつつ、歩行面が連続的になり、より凹凸を感じにくく、歩行性が高まる効果がある。
【0051】
連結体40は、構造層ユニット12を繋ぎ合わせ、荷重があった際にもずれて歩行性や衝撃吸収性を失わせないようにする機能を持つ。連結体40は、2つ以上の構造層ユニット12に存在する、それぞれ一つ以上の構造体11の柱部114と物理的に接触するように配置し、柱部114が屈曲すると、連結体40を通じて隣の構造層ユニット12に存在する構造体11の柱部114が支えるように働く。また、連結体40を設置すると、設置部111に連結体40の下面で接するか、柱部114に連結体40の下面の内側の辺が接する。
【0052】
連結体40は構造層ユニット12を繋ぎ合わせ、荷重があった際にもずれて歩行性や衝撃吸収性を失わせないようにする機能を持つ。連結体40は、2つ以上の構造層ユニット12に存在する、それぞれ一つ以上の構造体11の柱部114と物理的に接触するように配置し、柱部114が屈曲すると、連結体40を通じて隣の構造層ユニット12に存在する構造体11の柱部114が支えるように働く。
【0053】
本実施形態の連結体40について、その1例を図10に示す。図10に示した連結体40には4つ穴が開いている構造をしており、例えば図9に示す正方形状の構造層ユニット12を縦に2個、横に2個、計4個並べたときに、それぞれの角の構造体11を一つずつ、その穴にはめるような形で設置する。これにより、4つの構造層ユニット12はそれぞれ独立しているものの、歩行などによってある構造層ユニット12に荷重がかかり、水平方向に力が掛かった際に、連結体40を通じて隣の構造層ユニット12を成す構造体11に力を分散させることとなり、構造層ユニット12自体がずれてしまうことを防ぐことに繋がる。この原理で、隣り合う各構造層ユニット12の角を成す構造体11を利用して、4つの構造層ユニット12を連結体40で連結していけば、構造層ユニット12を敷き詰めた範囲において、構造層ユニット12がずれにくい状況を作り出すことができる。連結体40において、幅w41は幅w1の約2倍の長さとなり、また、幅w42は、式4が成り立つ長さとなる。高さh41は、連結体40を構造層ユニット12に設置した際、当該連結体40の一部が面112aよりも高くならなければよい。なお、カタカナの「ロ」のように図10に示した連結体40の外枠だけからなる構造でもよい。
【0054】
[式4]
【0055】
なお、一例として4つの構造層ユニット12を連結体40で連結する説明をしたが、隣り合う2つの構造層ユニット12を同様の原理で連結するために、穴を2つもつ連結体40が存在しても良いし、3穴の連結体40によって3つの構造層ユニット12を連結してもよい。更に、図12のような構造の構造層ユニット12であれば、飛び出した構造体11を対象として、複数の穴を持つ連結体40で連結してもよいし、例えば、アルファベットの「H」、「S」、「T」のような、縦軸と横軸を持つ構造で、水平方向に掛かる力を分散させてもよい。
【0056】
さらに、連結体40は、柱部114が屈曲した際に、連結体40を通じて隣の構造層ユニット12に存在する構造体11の柱部114を通じて構造層ユニット12の移動を抑制できる程度の硬度が必要であり、一例として、樹脂、プラスチック、木材、金属などからなる。
【0057】
中間層20は、構造層10の上部に配置し、構造層10に存在する溝により生ずる凹凸感を無くすことで歩行性が下がることを防ぐ。また、通常の歩行時の主な衝撃吸収能を担っており、歩行時の荷重がかかったときに構造層10と中間層20で合わせて1mm程度沈み込む程度の厚さと硬さが必要となるが、沈み込みの80%以上は中間層20が担う。更に、中間層20は、複数の構造体11の上面部112と接しており、構造層10に対する荷重を幾つかの構造体11に分散させ、床材システム1の剛性を高める機能を持つ。なお、中間層20は構造体11の上面部112と接着して用いることを想定しているが、それに限定されない。
【0058】
中間層20は、衝撃緩衝性素材からなり、例えば、復元性のあるウレタンフォームなどの各種発泡剤、ゴムスポンジ、ポリウレタン、衝撃を吸収するゲルなどであってよい。
【0059】
また、中間層20は、構造層10の上部に配置せず、構造層10に存在する複数の構造体11によって形成される溝を埋めるように配置することで、目的を達成してもよい。この場合、中間層20は構造体11を形成する素材と同程度の剛性と復元性をもつ素材で形成されていれば、ある構造体11に荷重がかかった際に中間層20を通じて隣の構造体11に力が分散される。また、この場合、連結体40を用いずに隣の構造層ユニット12に力を分散させることも可能となり、連結体40を必須としない場合も想定される。また、この場合、中間層20は、構造体11に設置後、上面部112よりも少し高くなっていており、上部層30を配置すれば、一見凹凸は見えない。これによって通常の歩行時は衝撃吸収性を発揮できる。さらに、中間層20は、構造層10の上に配置するものと、前記溝を埋めるように配置するものを併用してもよい。
【0060】
上部層30は、歩行面であり、直接表面に露出していることから、接触する面としての感触、度重なる歩行や物品の設置などへの一定の耐久性、設置場所のデザインや購入者の嗜好に応える意匠性、その他、防滑性、耐火性、耐水性、耐傷性、メンテナンス性などの機能を備えてもよい。
【0061】
上部層30は、転倒衝撃時の変形に耐えうる、上記機能を有した硬質性材料からなり、例えば、木材、合板、石材、塩化ビニル等からなるクッションフロア、タイル、カーペット、コルク、長尺シートなどの素材でよい。
【0062】
なお、中間層20と上部層30が一体となっていてもよい。例えば、一部の市販されている床材やタイルカーペット等には、中間層20と上部層30の機能を両方兼ね備えるものもあり、これらを構造層10の上部に配置してもよい。
【0063】
更に、床材システム1は、保温性、防振性、消音性を合わせ持つ。
【0064】
床材システム1は、上述のように複数の構造体11からなる構造層10を備える。構造層10には、構造体11の内部及び、隣り合う構造体11の間に空間を有する。当該空間には熱伝統率の低い空気の層が含まれるため、床材システム1は上部層30が直接構造物や地面と接触する場合と比較し、高い保温性を有する。
【0065】
上述のように複数の構造体11からなる構造層10を備える床材システム1は、その上に物体が置かれた際に、防振効果を発揮する。防振とは、振動源から当該物体に伝わる振動を絶縁・低減する効果をいう。この場合、振動源は床材システム1を設置している床などの構造物や地面などを指し、それら振動源が振動する原因としては、地震などの災害が想定されるがこれに限定されない。また、当該物体は家具、事業用、介護用、医療用などの機材を指すがこれに限定されない。
【0066】
通常、物体を床等の上に置くにあたって、一定の硬度が必要となる。これは、物体の重量によって床自体が変形することを防ぐことが目的の一つであるが、硬度は高いほど、一般的に固有振動数が高く、振動伝達性の特性により、防振効果が期待できる周波数帯は狭まってしまう。このため、現在防振において主流なのは、物体と床が接する面の全体または一部に、振動方向と振動数を一定の範囲に設定したゲルやゴムなどの素材を防振材として挟み込む手法である。これにより、振動源が持つ振動数範囲内で振動が伝わらないように設計する。
【0067】
なお、固有振動数を算定する式を以下に示す。F0を固有振動数(共振周波数、Hz)とし、mを質量(kg)、kをバネ定数(N/m)とする。
[式5]
構造体11の固有振動数は、式5におけるk(バネ定数)である。家具など、床材システム1の上に乗せるものの質量がmである。これにより構成される系全体をバネマス系と呼ぶ。構造体11の剛性が高まれば、kの値は大きくなり、これによって床材システム1の固有振動数(F0)は大きくなり、結果的に防振効果領域が狭くなる。
【0068】
通常の床の上に物体を置いた場合には、硬度が高いために床面全体で当該物体の重量を支えることとなり、k値は高く、防振効果領域は非常に狭くなる。一方で、床材システム1は複数の構造体11を含むため、当該物体の下部に存在する複数の構造体11で当該物体の重量を支えることとなり、床全体で当該物体の重量を支えるよりも、少ない面積(つまり構造体11の数)で支えることにより、kの値を小さくすることができる。なお、この効果は、例えば四角柱状の物体(タンスや棚など)においてはその四隅などに補助器具等で足を付けて、重量がかかる場所を限定することで、更に当該物体を支える構造体11の数を減らすことができ、k値の低減に繋がり、床材システム1と家具などの重量物によるバネマス系の固有振動数を小さくすることができる。これによって、床材システム1の防振領域が広がる。
【0069】
このように、床材システム1は衝撃吸収効果を有しながら、防振効果も併せ持つことができる構成となっており、床面全体に床材システム1を敷き詰めた場合にも、安心して家具等を設置することができる効果がある。
【0070】
なお、前記振動源は床材システム1の上部に設置した前記物体の場合もあり、この場合に振動が伝わる先は床材システム1を設置する床などの構造物や地面などとなる。これは、洗濯機や乾燥機、食器洗い洗浄機など、振動を伴う物品を置いた場合などが想定されるが、上述したものと同じメカニズムで、物品自体が振動した場合にも、床に伝わる振動を遮断または低減することができる。
【0071】
更に、床材システム1は、消音性を有する。床材システム1の構造層10は上述のように大きな衝撃荷重は変形による熱エネルギーに変換し、変形を伴わない重量衝撃はバネマス系の固有値が下がることで防振する。つまり、床材システム1の下の構造物への振動を低減することで、音のエネルギーを低減する。更に、構造層10の存在による空気の層によって音の伝わりを干渉することができ、固体音のみならず、空中音の消音性も併せ持つ。このことによって、重量衝撃音、軽量衝撃音どちらの消音も行うことができる。
【実施例0072】
(試験に用いた床材ユニット)
試験に用いた構造体11を構造体11aとし、図13に示す。図13(a)は、構造体11aを真横から見た図である。図13(b)は、構造体11aを斜め上方から見た図である。図13(c)は、構造体11aを真上から見た図である。図13(d)は、構造体11aを真下から見た図である。また、構造体11aの柱部14を図14に示す。なお、当該構造体11aで形成した構造層ユニット12を構造層ユニット12aとする。
【0073】
構造体11aの各部位の数値を以下に記載する。図14において、幅w1は30mm、幅w2は23mm、幅w3は20mm、幅w4は18mm、幅w5は1mm、高さh1は20mm、高さh2は10mm、厚みt1は3mm、厚みt2は1.5mm、厚みt3は1mm、幅L1は5mmである。素材は熱可塑性エラストマーで構成した。当該構造体11aを1辺に10個、正方形状に配置した構造層ユニット12aを製造した。構造層ユニット12aは幅300mm、高さは高さh1と一緒で20mmとなる。
【0074】
中間層20として、厚さ4.5mmのPVCが配合されたスポンジを用いた。
【0075】
上部層30は厚み2mmの軟質ビニル層を有した長尺シートを用いた。
【0076】
試験に用いた連結体40の構造を図16にしめす。連結体40は幅w41aが60mm、幅w42aが24mm、高さh41aは3mm、素材はポリプロピレンで構成した。
【0077】
4つの構造層ユニット12aの、それぞれの角の1つの構造体11aを跨ぐように、連結体40を配置し、構造層ユニット12aを接続した。その上に、中間層20、上部層30の順に重ねて固定したものを、試験床材ユニット13とする。
【0078】
(試験方法)
体重40kgの人間が直立状態から転倒し、床に大腿骨の転子部を打ち付ける状態を再現することを目的として試験を設計した。
【0079】
図17に示すように、試験床材ユニット13の設置部111側に治具50を取り付けることにより11kgの重量とした。また、治具50に加速度計80を2つ離れた場所に設置した。治具50を取り付けた試験床材ユニット13全体をひっくり返し、高さ230mmから自由落下させる。試験床材ユニット13の中央部が落下する場所に、模擬大腿骨60を設置した。模擬大腿骨の転子部側と遠位端の両方にひずみゲージ70a(6軸ロードセル)とひずみゲージ70b(1軸ロードセル)を取り付けてあり、試験床材ユニット13が落下することにより模擬大腿骨かかる応力を、ひずみゲージ70aとひずみゲージ70bを用いて測定(ひずみゲージ70aでは近位部荷重、ひずみゲージ70bでは遠位部荷重を測定)し、模擬大腿骨にかかる衝撃力(N)を測定する。なお、試験床材ユニット13の代わりに、衝撃吸収能の低いコントロールとして、一般的なフローリングを用い、同様の試験を行った。
【0080】
図18は衝撃吸収能の試験結果を示す。横軸は前記模擬大腿骨に衝撃が加わってからの経過時間(mS)、縦軸は前記模擬大腿骨に加わった荷重(kN)を示す。フローリングを用いた試験では、フローリングが模擬大腿骨に接触してから12msから荷重2000Nを超え、14.5ms後に荷重が3000Nを超えてピークとなり、18.5msからは荷重が2000Nを下回るという結果となった。一方で、試験床材ユニット13においては、23ms後に荷重のピークを迎えるが、その値は2000Nを大きく下回り、模擬大腿骨に加わった荷重は2000Nを超えない結果となった。
【0081】
なお、非特許文献2において、大腿骨表面に掛かる荷重は、体表面に掛かる荷重の約70%であるという報告がなされている。また、非特許文献3において、73歳の男性の大腿骨が、およそ2000Nで骨折しうるという報告がある。
【0082】
【非特許文献2】PLoS ONE 13(8): e0200952.
【0083】
【非特許文献3】The Journal of Bone and Joint Surgery, vol.,77-A. NO.3. MARCH 1995
【0084】
非特許文献2および非特許文献3のデータを考慮すると、実施例の結果は、フローリングにおいては転倒時に大腿骨が骨折しうる荷重がかかること、試験床材ユニット13においては転倒時に大腿骨が骨折しない程度に衝撃を吸収していることが証明された。なお、試験床材ユニット13の別の位置を模擬大腿骨に接触させた場合にも同様のデータが得られており、試験床材ユニット13のどの位置においても、転倒時に大腿骨が骨折しない程度の衝撃を吸収していると言える。
【0085】
上述した実施の形態は、本発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良することができると共に、本発明にはその均等物が含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0086】
1 床材ユニット
10 構造層
11 構造体
12 構造体ユニット
13 試験床材ユニット
20 中間層
30 上部層
40 連結体
50 治具
60 模擬大腿骨
70 ひずみゲージ
80 加速度計
111 設置部
112 上面部
113 壁層
114 柱部
115 凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
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図18