(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114635
(43)【公開日】2022-08-08
(54)【発明の名称】可逆変色性ペーパークラフト
(51)【国際特許分類】
A63H 33/22 20060101AFI20220801BHJP
A63H 33/00 20060101ALI20220801BHJP
A63H 33/16 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
A63H33/22 K
A63H33/00 302C
A63H33/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021011004
(22)【出願日】2021-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】浅井 菜緒
【テーマコード(参考)】
2C150
【Fターム(参考)】
2C150BA17
2C150BA42
2C150BC01
2C150CA02
2C150CA08
2C150DC17
2C150FB45
2C150FC20
2C150FD04
2C150FD12
(57)【要約】
【課題】 温度の変化により複雑な色変化を付与できるため、遊戯性に富み、商品価値を高めた可逆熱変色性ペーパークラフトを提供する。
【解決手段】 紙、合成紙、樹脂シート等からなるペーパークラフト基材2から立体模型が形成されるペーパークラフトであって、前記ペーパークラフト基材の糊代部3が接着される箇所の基材表面、及び、糊代部が接着されない箇所の基材表面に可逆熱変色性材料を含む可逆熱変色層5を設けてなる可逆熱変色性ペーパークラフト1。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペーパークラフト基材から立体模型が形成されるペーパークラフトであって、前記ペーパークラフト基材の糊代部が接着される箇所の基材表面、及び、糊代部が接着されない箇所の基材表面に可逆熱変色性材料を含む可逆熱変色層を設けてなる可逆熱変色性ペーパークラフト。
【請求項2】
前記ペーパークラフト基材が耐水性基材により形成されてなる請求項1記載の可逆熱変色性ペーパークラフト。
【請求項3】
前記糊代部の形状がペーパークラフトの外観に関連する形状である請求項1又は2記載の可逆熱変色性ペーパークラフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペーパークラフト基材から立体模型が形成される可逆熱変色性ペーパークラフトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ペーパークラフト紙に印刷した展開図を切り取って立体的に組み立てるペーパークラフトが耐水性を有するとともに前記展開図が少なくとも一部に可逆性の示温インクを用いて印刷されてなるペーパークラフトが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
前記ペーパークラフトは、触って楽しむことができると共に色変化を楽しむことができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、この種の色変化を楽しむことができるペーパークラフトに複雑な色変化を付与して遊戯性を高めた可逆熱変色性ペーパークラフトを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ペーパークラフト基材から立体模型が形成されるペーパークラフトであって、前記ペーパークラフト基材の糊代部が接着される箇所の基材表面、及び、糊代部が接着されない箇所の基材表面に可逆熱変色性材料を含む可逆熱変色層を設けてなる可逆熱変色性ペーパークラフトを要件とする。
更には、前記ペーパークラフト基材が耐水性基材により形成されてなること、前記糊代部の形状がペーパークラフトの外観に関連する形状であること等を要件とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、温度の変化により複雑な色変化を付与できるため、遊戯性に富み、商品価値を高めた可逆熱変色性ペーパークラフトを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】加熱消色型の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の変色挙動を示す説明図である。
【
図2】色彩記憶性を有する加熱消色型の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の変色挙動を示す説明図である。
【
図3】加熱発色型の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の変色挙動を示す説明図である。
【
図4】本発明の可逆変色性ペーパークラフトの正面図である。
【
図5】
図4の可逆変色性ペーパークラフトの要部縦断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
前記ペーパークラフト基材としては、紙、合成紙、樹脂シート等が用いられる。
前記合成紙としては、ポリオレフィン系樹脂やポリスチレン系樹脂等の合成樹脂を主原料として製造された紙が挙げられ、不透明の他、半透明であってもよい。
前記樹脂シートの材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、アクリロニトリル-スチレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデン、ポリアセタール、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリアクリル、ポリスチレン、ポリカーボネートとポリブチレンテレフタレートの混合物、ポリカーボネートとアクリロニトリル-ブタジエン-スチレンの混合物等の樹脂或いは前記樹脂の混合物が用いられる。
また、耐水性基材として耐水紙を用いることにより、温水や冷水等の液体を用いて色変化させることができる。
前記耐水紙としては、パルプに変成ロジン系エマルジョン等の耐水剤を適量内部添加して製造した耐水原紙、或いは、前記耐水原紙に合成ゴムやアクリル系樹脂等の耐水性樹脂を表面塗工した印刷用耐水紙が挙げられる。
【0009】
前記ペーパークラフト基材表面には、必要により非変色性インキを用いて輪郭像を設けることができ、前記輪郭像に沿ってペーパークラフトを切り出すことができる。
前記ペーパークラフト基材表面には、可逆熱変色性材料を含む可逆熱変色層を設けてなる
前記可逆熱変色性材料としては、Ag
2HgI
4、Cu
2HgI
4、VO
2等の無機材料、液晶、電子供与性呈色性有機化合物と、電子受容性化合物と、前記両者の呈色反応を可逆的に生起させる有機化合物媒体との三成分を含む加熱消色型の可逆熱変色性材料、或いは、電子供与性呈色性有機化合物と、電子受容性化合物と、前記両者の呈色反応を可逆的に生起させる有機化合物媒体との三成分を含む加熱発色型の可逆熱変色性材料が用いられる。
そのうち、電子供与性呈色性有機化合物と、電子受容性化合物と、前記両者の呈色反応を可逆的に生起させる有機化合物媒体を含む可逆熱変色性材料について説明する。
前記可逆熱変色性材料は、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性組成物を内包させた有色から無色に変色する可逆熱変色性マイクロカプセル顔料(可逆熱変色性顔料)が挙げられる。
前記可逆熱変色性組成物としては、特公昭51-44706号公報、特公昭51-44707号公報、特公平1-29398号公報等に記載された、所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、高温側変色点以上の温度域で消色状態、低温側変色点以下の温度域で発色状態を呈し、前記両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在せず、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要した熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、ヒステリシス幅が比較的小さい特性(ΔH=1~7℃)を有する加熱消色型(加熱により消色し、冷却により発色する)の可逆熱変色性組成物を適用できる(
図1参照)。
【0010】
また、特公平4-17154号公報、特開平7-179777号公報、特開平7-33997号公報、特開平8-39936号公報等に記載されている大きなヒステリシス特性(ΔH
B=8~50℃)を示す、即ち、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、完全発色温度(t
1)以下の低温域での発色状態、又は完全消色温度(t
4)以上の高温域での消色状態が、特定温度域〔t
2~t
3の間の温度域(実質的二相保持温度域)〕で色彩記憶性を有する加熱消色型(加熱により消色し、冷却により発色する)の可逆熱変色性組成物も適用できる(
図2参照)。
【0011】
前記可逆熱変色性組成物の色濃度-温度曲線におけるヒステリシス特性について説明する。
図2において、縦軸に色濃度、横軸に温度が表されている。温度変化による色濃度の変化は矢印に沿って進行する。ここで、Aは完全消色状態に達する温度t
4(以下、完全消色温度と称す)における濃度を示す点であり、Bは消色を開始する温度t
3(以下、消色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Cは発色を開始する温度t
2(以下、発色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Dは完全発色状態に達する温度t
1(以下、完全発色温度と称す)における濃度を示す点である。
変色温度域は前記t
1とt
4間の温度域であり、着色状態と消色状態のいずれかの状態を呈することができ、色濃度の差の大きい領域であるt
2とt
3の間の温度域が実質変色温度域である。
また、線分EFの長さが変色のコントラストを示す尺度であり、線分EFの中点を通る線分HGの長さがヒステリシスの程度を示す温度幅(以下、ヒステリシス幅ΔHと記す)であり、このΔH値が小さいと変色前後の両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在しえない。また、前記ΔH値が大きいと変色前後の各状態の保持が容易となる。
【0012】
以下に前記可逆熱変色性組成物の(イ)、(ロ)、(ハ)成分について具体的に化合物を例示する。
前記(イ)成分、即ち電子供与性呈色性有機化合物は、色を決める成分であって、顕色剤である(ロ)成分に電子を供与し、発色する化合物である。
前記電子供与性呈色性有機化合物としては、フタリド化合物、フルオラン化合物、スチリノキノリン化合物、ジアザローダミンラクトン化合物、ピリジン化合物、キナゾリン化合物、ビスキナゾリン化合物等が挙げられ、これらのうちフタリド化合物およびフルオラン化合物が好ましい。
前記フタリド化合物としては、例えばジフェニルメタンフタリド化合物、フェニルインドリルフタリド化合物、インドリルフタリド化合物、ジフェニルメタンアザフタリド化合物、フェニルインドリルアザフタリド化合物、およびそれらの誘導体などが挙げられ、これらの中でも、フェニルインドリルアザフタリド化合物、ならびにそれらの誘導体が好ましい。
また、フルオラン化合物としては、例えば、アミノフルオラン化合物、アルコキシフルオラン化合物、およびそれらの誘導体が挙げられる。
以下にこれらの化合物を例示する。
3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、
3-(4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、
3,3-ビス(1-n-ブチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、
3,3-ビス(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-4-アザフタリド、
3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、
3-(2-ヘキシルオキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、
3-〔2-エトキシ-4-(N-エチルアニリノ)フェニル〕-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、
3-(2-アセトアミド-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-プロピルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、
3,6-ビス(ジフェニルアミノ)フルオラン、
3,6-ジメトキシフルオラン、
3,6-ジ-n-ブトキシフルオラン、
2-メチル-6-(N-エチル-N-p-トリルアミノ)フルオラン、
3-クロロ-6-シクロヘキシルアミノフルオラン、
2-メチル-6-シクロヘキシルアミノフルオラン、
2-(2-クロロアミノ)-6-ジブチルアミノフルオラン、
2-(2-クロロアニリノ)-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン、
2-(3-トリフルオロメチルアニリノ)-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-(3-トリフルオロメチルアニリノ)-6-ジペンチルアミノフルオラン、
2-(ジベンジルアミノ)-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-(N-メチルアニリノ)-6-(N-エチル-N-p-トリルアミノ)フルオラン、
1,3-ジメチル-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-クロロ-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-アニリノ-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-アニリノ-3-メトキシ-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-アニリノ-3-メチル-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン、
2-アニリノ-3-メトキシ-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン、
2-キシリジノ-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-アニリノ-3-メチル-6-(N-エチル-N-p-トリルアミノ)フルオラン、
1,2-ベンツ-6-ジエチルアミノフルオラン、
1,2-ベンツ-6-(N-エチル-N-イソブチルアミノ)フルオラン、
1,2-ベンツ-6-(N-エチル-N-イソアミルアミノ)フルオラン、
2-(3-メトキシ-4-ドデコキシスチリル)キノリン、
スピロ〔5H-(1)ベンゾピラノ(2,3-d)ピリミジン-5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕-3′-オン,2-(ジエチルアミノ)-8-(ジエチルアミノ)-4-メチル、
スピロ〔5H-(1)ベンゾピラノ(2,3-d)ピリミジン-5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕-3′-オン,2-(ジ-n-ブチルアミノ)-8-(ジ-n-ブチルアミノ)-4-メチル、
スピロ〔5H-(1)ベンゾピラノ(2,3-d)ピリミジン-5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕-3′-オン,2-(ジ-n-ブチルアミノ)-8-(ジエチルアミノ)-4-メチル、
スピロ〔5H-(1)ベンゾピラノ(2,3-d)ピリミジン-5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕-3′-オン,2-(ジ-n-ブチルアミノ)-8-(N-エチル-N-i-アミルアミノ)-4-メチル、
スピロ〔5H-(1)ベンゾピラノ(2,3-d)ピリミジン-5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕-3′-オン,2-(ジブチルアミノ)-8-(ジペンチルアミノ)-4-メチル、
4,5,6,7-テトラクロロ-3-〔4-(ジメチルアミノ)-2-メトキシフェニル〕-3-(1-ブチル-2-メチル-1H-インドール-3-イル)-1(3H)-イソベンゾフラノン、
4,5,6,7-テトラクロロ-3-〔4-(ジエチルアミノ)-2-エトキシフェニル〕-3-(1-エチル-2-メチル-1H-インドール-3-イル)-1(3H)-イソベンゾフラノン、
4,5,6,7-テトラクロロ-3-〔4-(ジエチルアミノ)-2-エトキシフェニル〕-3-(1-ペンチル-2-メチル-1H-インドール-3-イル)-1(3H)-イソベンゾフラノン、
4,5,6,7-テトラクロロ-3-[4-(ジエチルアミノ)-2-メチルフェニル]-3-(1-エチル-2-メチル-1H-インドール-3-イル)-1(3H)-イソベンゾフラノン、
3′,6′-ビス〔フェニル(2-メチルフェニル)アミノ〕-スピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9′-〔9H〕キサンテン]-3-オン、
3′,6′-ビス〔フェニル(3-メチルフェニル)アミノ〕-スピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9′-〔9H〕キサンテン]-3-オン、
3′,6′-ビス〔フェニル(3-エチルフェニル)アミノ〕-スピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9′-〔9H〕キサンテン]-3-オン、
2,6-ビス(2′-エチルオキシフェニル)-4-(4′-ジメチルアミノフェニル)ピリジン、
2,6-ビス(2′,4′-ジエチルオキシフェニル)-4-(4′-ジメチルアミノフェニル)ピリジン、
2-(4′-ジメチルアミノフェニル)-4-メトキシ-キナゾリン、
4,4′-(エチレンジオキシ)-ビス〔2-(4-ジエチルアミノフェニル)キナゾリン〕
等を挙げることができる。
なお、フルオラン類としては、キサンテン環を形成するフェニル基に置換基を有する前記化合物の他、キサンテン環を形成するフェニル基に置換基を有すると共にラクトン環を形成するフェニル基にも置換基(例えば、メチル基等のアルキル基、クロロ基等のハロゲン原子)を有する青色や黒色を呈する化合物であってもよい。
【0013】
前記(ロ)成分、即ち電子受容性化合物は、(イ)成分から電子を受け取り、(イ)成分の顕色剤として機能する化合物である。
前記電子受容性化合物としては、活性プロトンを有する化合物群及びその誘導体、偽酸性化合物群(酸ではないが、組成物中で酸として作用して(イ)成分を発色させる化合物群)、電子空孔を有する化合物群等から選択される化合物があり、これらの中でも活性プロトンを有する化合物群から選択される化合物が好ましい。
活性プロトンを有する化合物及びその誘導体としては、例えばフェノール性水酸基を有する化合物及びその金属塩、カルボン酸及びその金属塩、好ましくは、芳香族カルボン酸、炭素数2~5の脂肪族カルボン酸及びそれらの金属塩、酸性リン酸エステル及びその金属塩、並びにアゾ-ル系化合物及びその誘導体、1、2、3-トリアゾール及びその誘導体が挙げられ、これらの中でも、有効な熱変色特性を発現させることができることから、フェノール性水酸基を有する化合物が好ましい。
前記フェノール性水酸基を有する化合物はモノフェノール化合物からポリフェノール化合物まで広く含まれ、更にビス型、トリス型フェノール等およびフェノール-アルデヒド縮合樹脂等もこれに含まれる。フェノール性水酸基を有する化合物の中でも、少なくともベンゼン環を2以上有するものが好ましい。また、これら化合物は置換基を有していてもよく、置換基としてアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基及びそのエステル又はアミド基、ハロゲン基等が挙げられる。
前記活性プロトンを有する化合物の金属塩が含む金属としては、例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛、ジルコニウム、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、コバルト、スズ、銅、鉄、バナジウム、チタン、鉛およびモリブデン等が挙げられる。
【0014】
以下に具体例を挙げる。
フェノール、o-クレゾール、ターシャリーブチルカテコール、ノニルフェノール、n-オクチルフェノール、n-ドデシルフェノール、n-ステアリルフェノール、p-クロロフェノール、p-ブロモフェノール、o-フェニルフェノール、p-ヒドロキシ安息香酸n-ブチル、p-ヒドロキシ安息香酸n-オクチル、レゾルシン、没食子酸ドデシル、4,4-ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ヘプタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-オクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ノナン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-デカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ドデカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルプロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-メチルブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-メチルペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,3-ジメチルペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-エチルブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-エチルヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,7-ジメチルオクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1-フェニル-1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-へプタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-オクタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ノナン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-デカン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ドデカン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、1,1-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、ビス(2-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、3,3-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)ブタン等がある。
前記フェノール性水酸基を有する化合物が最も有効な熱変色特性を発現させることができるが、芳香族カルボン酸及び炭素数2~5の脂肪族カルボン酸、カルボン酸金属塩、酸性リン酸エステル及びそれらの金属塩、1、2、3-トリアゾール及びその誘導体から選ばれる化合物等であってもよい。
【0015】
前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体の(ハ)成分について説明する。
前記(ハ)成分としては、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類を挙げることができる。
前記化合物を以下に例示する。
アルコール類としては、炭素数10以上の脂肪族一価の飽和アルコールが有効であり、具体的にはデシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ペンタデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、ヘプタデシルアルコール、オクタデシルアルコール、エイコシルアルコール、ドコシルアルコール等が挙げられる。
【0016】
エステル類としては、炭素数10以上のエステル類が有効であり、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する一価カルボン酸と、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する一価アルコールの任意の組み合わせから得られるエステル類、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する多価カルボン酸と、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する一価アルコールの任意の組み合わせから得られるエステル類、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する一価カルボン酸と、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する多価アルコールの任意の組み合わせから得られるエステル類が挙げられ、具体的にはカプリル酸エチル、カプリル酸オクチル、カプリル酸ステアリル、カプリン酸ミリスチル、カプリン酸ドコシル、ラウリン酸2-エチルヘキシル、ラウリン酸n-デシル、ミリスチン酸3-メチルブチル、ミリスチン酸セチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸ネオペンチル、パルミチン酸ノニル、パルミチン酸シクロヘキシル、ステアリン酸n-ブチル、ステアリン酸2-メチルブチル、ステアリン酸3,5,5-トリメチルヘキシル、ステアリン酸n-ウンデシル、ステアリン酸ペンタデシル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸シクロヘキシルメチル、ベヘン酸イソプロピル、ベヘン酸ヘキシル、ベヘン酸ラウリル、ベヘン酸ベヘニル、安息香酸セチル、p-tert-ブチル安息香酸ステアリル、フタル酸ジミリスチル、フタル酸ジステアリル、シュウ酸ジミリスチル、シュウ酸ジセチル、マロン酸ジセチル、コハク酸ジラウリル、グルタル酸ジラウリル、アジピン酸ジウンデシル、アゼライン酸ジラウリル、セバシン酸ジ-(n-ノニル)、1,18-オクタデシルメチレンジカルボン酸ジネオペンチル、エチレングリコールジミリステート、プロピレングリコールジラウレート、プロピレングリコールジステアレート、ヘキシレングリコールジパルミテート、1,5-ペンタンジオールジステアレート、1,2,6-ヘキサントリオールトリミリステート、1,4-シクロヘキサンジオールジデシル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジミリステート、キシレングリコールジカプリネート、キシレングリコールジステアレート等が挙げられる。
また、飽和脂肪酸と分枝脂肪族アルコールのエステル、不飽和脂肪酸又は分枝もしくは置換基を有する飽和脂肪酸と分岐状であるか又は炭素数16以上の脂肪族アルコールのエステル、酪酸セチル、酪酸ステアリル及び酪酸ベヘニルから選ばれるエステル化合物も有効である。
具体的には、酪酸2-エチルヘキシル、ベヘン酸2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-エチルヘキシル、カプリン酸2-エチルヘキシル、ラウリン酸3,5,5-トリメチルヘキシル、パルミチン酸3,5,5-トリメチルヘキシル、ステアリン酸3,5,5-トリメチルヘキシル、カプロン酸2-メチルブチル、カプリル酸2-メチルブチル、カプリン酸2-メチルブチル、パルミチン酸1-エチルプロピル、ステアリン酸1-エチルプロピル、ベヘン酸1-エチルプロピル、ラウリン酸1-エチルヘキシル、ミリスチン酸1-エチルヘキシル、パルミチン酸1-エチルヘキシル、カプロン酸2-メチルペンチル、カプリル酸2-メチルペンチル、カプリン酸2-メチルペンチル、ラウリン酸2-メチルペンチル、ステアリン酸2-メチルブチル、ステアリン酸2-メチルブチル、ステアリン酸3-メチルブチル、ステアリン酸1-メチルヘプチル、ベヘン酸2-メチルブチル、ベヘン酸3-メチルブチル、ステアリン酸1-メチルヘプチル、ベヘン酸1-メチルヘプチル、カプロン酸1-エチルペンチル、パルミチン酸1-エチルペンチル、ステアリン酸1-メチルプロピル、ステアリン酸1-メチルオクチル、ステアリン酸1-メチルヘキシル、ラウリン酸1,1-ジメチルプロピル、カプリン酸1-メチルペンチル、パルミチン酸2-メチルヘキシル、ステアリン酸2-メチルヘキシル、ベヘン酸2-メチルヘキシル、ラウリン酸3,7-ジメチルオクチル、ミリスチン酸3,7-ジメチルオクチル、パルミチン酸3,7-ジメチルオクチル、ステアリン酸3,7-ジメチルオクチル、ベヘン酸3,7-ジメチルオクチル、オレイン酸ステアリル、オレイン酸ベヘニル、リノール酸ステアリル、リノール酸ベヘニル、エルカ酸3,7-ジメチルオクチル、エルカ酸ステアリル、エルカ酸イソステアリル、イソステアリン酸セチル、イソステアリン酸ステアリル、12-ヒドロキシステアリン酸2-メチルペンチル、18-ブロモステアリン酸2-エチルヘキシル、2-ケトミリスチン酸イソステアリル、2-フルオロミリスチン酸2-エチルヘキシル、酪酸セチル、酪酸ステアリル、酪酸ベヘニル等が挙げられる。
【0017】
また、色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を得るための(ハ)成分としては、5℃以上50℃未満のΔT値(融点-曇点)を示すカルボン酸エステル化合物、例えば、分子中に置換芳香族環を含むカルボン酸エステル、無置換芳香族環を含むカルボン酸と炭素数10以上の脂肪族アルコールのエステル、分子中にシクロヘキシル基を含むカルボン酸エステル、炭素数6以上の脂肪酸と無置換芳香族アルコール又はフェノールのエステル、炭素数8以上の脂肪酸と分岐脂肪族アルコール又はエステル、ジカルボン酸と芳香族アルコール又は分岐脂肪族アルコールのエステル、ケイ皮酸ジベンジル、ステアリン酸ヘプチル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジラウリル、アジピン酸ジミリスチル、アジピン酸ジセチル、アジピン酸ジステアリル、トリラウリン、トリミリスチン、トリステアリン、ジミリスチン、ジステアリン等が用いられる。
【0018】
また、炭素数9以上の奇数の脂肪族一価アルコールと炭素数が偶数の脂肪族カルボン酸から得られる脂肪酸エステル化合物、n-ペンチルアルコール又はn-ヘプチルアルコールと炭素数10乃至16の偶数の脂肪族カルボン酸より得られる総炭素数17乃至23の脂肪酸エステル化合物も有効である。
具体的には、酢酸n-ペンタデシル、酪酸n-トリデシル、酪酸n-ペンタデシル、カプロン酸n-ウンデシル、カプロン酸n-トリデシル、カプロン酸n-ペンタデシル、カプリル酸n-ノニル、カプリル酸n-ウンデシル、カプリル酸n-トリデシル、カプリル酸n-ペンタデシル、カプリン酸n-ヘプチル、カプリン酸n-ノニル、カプリン酸n-ウンデシル、カプリン酸n-トリデシル、カプリン酸n-ペンタデシル、ラウリン酸n-ペンチル、ラウリン酸n-ヘプチル、ラウリン酸n-ノニル、ラウリン酸n-ウンデシル、ラウリン酸n-トリデシル、ラウリン酸n-ペンタデシル、ミリスチン酸n-ペンチル、ミリスチン酸n-ヘプチル、ミリスチン酸n-ノニル、ミリスチン酸n-ウンデシル、ミリスチン酸n-トリデシル、ミリスチン酸n-ペンタデシル、パルミチン酸n-ペンチル、パルミチン酸n-ヘプチル、パルミチン酸n-ノニル、パルミチン酸n-ウンデシル、パルミチン酸n-トリデシル、パルミチン酸n-ペンタデシル、ステアリン酸n-ノニル、ステアリン酸n-ウンデシル、ステアリン酸n-トリデシル、ステアリン酸n-ペンタデシル、エイコサン酸n-ノニル、エイコサン酸n-ウンデシル、エイコサン酸n-トリデシル、エイコサン酸n-ペンタデシル、ベヘニン酸n-ノニル、ベヘニン酸n-ウンデシル、ベヘニン酸n-トリデシル、ベヘニン酸n-ペンタデシル等を挙げることができる。
【0019】
ケトン類としては、総炭素数が10以上の脂肪族ケトン類が有効であり、2-デカノン、3-デカノン、4-デカノン、2-ウンデカノン、3-ウンデカノン、4-ウンデカノン、5-ウンデカノン、2-ドデカノン、3-ドデカノン、4-ドデカノン、5-ドデカノン、2-トリデカノン、3-トリデカノン、2-テトラデカノン、2-ペンタデカノン、8-ペンタデカノン、2-ヘキサデカノン、3-ヘキサデカノン、9-ヘプタデカノン、2-ペンタデカノン、2-オクタデカノン、2-ノナデカノン、10-ノナデカノン、2-エイコサノン、11-エイコサノン、2-ヘンエイコサノン、2-ドコサノン、ラウロン、ステアロン等を挙げることができる。
また、総炭素数が12乃至24のアリールアルキルケトン類、例えば、n-オクタデカノフェノン、n-ヘプタデカノフェノン、n-ヘキサデカノフェノン、n-ペンタデカノフェノン、n-テトラデカノフェノン、4-n-ドデカアセトフェノン、n-トリデカノフェノン、4-n-ウンデカノアセトフェノン、n-ラウロフェノン、4-n-デカノアセトフェノン、n-ウンデカノフェノン、4-n-ノニルアセトフェノン、n-デカノフェノン、4-n-オクチルアセトフェノン、n-ノナノフェノン、4-n-ヘプチルアセトフェノン、n-オクタノフェノン、4-n-ヘキシルアセトフェノン、4-n-シクロヘキシルアセトフェノン、4-tert-ブチルプロピオフェノン、n-ヘプタフェノン、4-n-ペンチルアセトフェノン、シクロヘキシルフェニルケトン、ベンジル-n-ブチルケトン、4-n-ブチルアセトフェノン、n-ヘキサノフェノン、4-イソブチルアセトフェノン、1-アセトナフトン、2-アセトナフトン、シクロペンチルフェニルケトン等を挙げることができる。
【0020】
エーテル類としては、総炭素数10以上の脂肪族エーテル類が有効であり、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、ジノニルエーテル、ジデシルエーテル、ジウンデシルエーテル、ジドデシルエーテル、ジトリデシルエーテル、ジテトラデシルエーテル、ジペンタデシルエーテル、ジヘキサデシルエーテル、ジオクタデシルエーテル、デカンジオールジメチルエーテル、ウンデカンジオールジメチルエーテル、ドデカンジオールジメチルエーテル、トリデカンジオールジメチルエーテル、デカンジオールジエチルエーテル、ウンデカンジオールジエチルエーテル等を挙げることができる。
【0021】
更に、電子受容性化合物として炭素数3乃至18の直鎖又は側鎖アルキル基を有する特定のアルコキシフェノール化合物を用いたり(特開平11-129623号公報、特開平11-5973号公報)、特定のヒドロキシ安息香酸エステルを用いたり(特開2001-105732号公報)、没食子酸エステル等を用いた(特公昭51-44706号公報、特開2003-253149号公報)加熱発色型(加熱により発色し、冷却により消色する)の可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料(可逆熱変色性顔料)を適用することもできる(
図3参照)。
【0022】
前記(イ)、(ロ)、(ハ)成分の配合割合は、濃度、変色温度、変色形態や各成分の種類に左右されるが、一般的に所望の変色特性が得られる成分比は、(イ)成分1に対して、(ロ)成分0.1~50、好ましくは0.5~20、(ハ)成分1~800、好ましくは5~200の範囲である(前記割合はいずれも質量部である)。
【0023】
マイクロカプセル化は、公知の界面重合法、in Situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等があり、用途に応じて適宜選択される。更にマイクロカプセルの表面には、目的に応じて更に二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与させたり、表面特性を改質させて実用に供することもできる。
前記マイクロカプセル顔料は、内包物/壁膜=7/1~1/1(質量比)の範囲であることが好ましく、壁膜の比率が前記範囲内にあることにより、発色時の色濃度及び鮮明性の低下を防止することができ、より好適には、内包物/壁膜=6/1~1/1(質量比)である。
また、前記可逆熱変色性組成物は、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂中に分散して可逆熱変色性樹脂粒子として用いることもできる。
【0024】
前記有色から無色に変色する熱変色性材料と、非熱変色性材料を併用することにより、有色から色の異なる有色に色変化する熱変色性材料が得られる。
前記非熱変色性材料は一般的な顔料または染料が用いられる。
【0025】
前記可逆熱変色性材料は、バインダー樹脂を含む水性又は油性ビヒクル中に分散させてインキ、塗料などの色材として適用され、汎用の印刷乃至塗布手段、例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、プロセス印刷、グラビヤ印刷、コーター、タンポ印刷、インクジェット印刷等の印刷手段、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、浸漬塗装等の手段によりペーパークラフト基材表面に可逆熱変色層を形成することができる。
前記可逆熱変色層は、層中に一種の可逆熱変色性材料を含有させたものに限らず、相異なる変色温度を示す複数の可逆熱変色性材料を含有させて段階的に変色させることもできる。
前記可逆熱変色層は、ベタ印刷されたものに限らず、文字、数字、記号、図柄等の印刷像であってもよい。
前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、バインダー樹脂中に0.5~40重量%、好ましくは1~30重量%含有させることができる。0.5重量%未満の配合量では鮮明な熱変色効果を視覚させ難いし、40重量%を越えると過剰であり、消色状態にあって残色がみられることがある。
【0026】
更に、前記可逆熱変色層上には透明性を損なわない範疇で透明性金属光沢性、虹彩性、ホログラム性等の光学的性状を示す光輝層や保護層を設けたり、光安定剤層を設けることもできる。
前記光安定剤層は紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、一重項酸素消光剤、スーパーオキシドアニオン消光剤、オゾン消光剤、可視光線吸収剤、赤外線吸収剤から選ばれる光安定剤を分散状態に固着した層である。
なお、老化防止剤、帯電防止剤、極性付与剤、揺変性付与剤、消泡剤等を必要に応じて各層に添加して機能を向上させることもできる。
【0027】
前記ペーパークラフト基材には、ペーパークラフト同士を接着するための糊代部を設けてなり、ペーパークラフト基材の糊代部が接着される箇所の基材表面と、糊代部が接着されない箇所の基材表面にそれぞれ可逆熱変色性材料を含む可逆熱変色層を設けてなる。
従って、ペーパークラフト基材を貼り合わせて立体的に作り上げた際、糊代部が下方に位置する基材表面の可逆熱変色層中に含まれる可逆熱変色性材料と、糊代部が下方に位置しない基材表面の可逆熱変色層中に含まれる可逆熱変色性材料は、基材の厚みと接着剤の有無によって伝熱速度に差を生じて色変化に要する時間に差を生じる。そのため、複雑な色変化を付与でき、意外性と遊戯性に富み、商品価値を高めることができる。
また、基材の厚みを変えることにより、色変化に要する時間を調整することも可能である。
なお、糊代部の形状は一般的な形状に留まらず、模様や図形、ペーパークラフトの外観に関連する形状であってもよく、ペーパークラフトの外観に関連する形状であることにより、変色の妙味を向上させて遊戯性を高めることができる。
【0028】
前記可逆熱変色性ペーパークラフトは、予め切り取られたものを貼り合せて立体的に作製したり、シート状の一枚の紙から所望の形状に切り抜き、貼り合せて立体的に作り上げることができ、人、動物、植物、果実、食料品、乗物、建物、アクセサリー、人形用付属品等の模型を作製するものである。
また、形状や彩色等のデザインをコンピュータ上で処理しプリンタで出力してペーパークラフトを作製することもできる。
【実施例0029】
以下に実施例を記載するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
尚、実施例中の部は質量部である。
実施例1(
図4、5参照)
ペーパークラフト基材2として合成紙に黒色の非変色性印刷インキを用いて糊代部3を有する車の展開図(輪郭像4)を印刷した。次いで、(イ)成分として3-シクロヘキシルアミノ-7-メチルフルオラン3.0部、(ロ)成分として2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン6.0部、(ハ)成分としてセチルアルコール25.0部、カプリン酸ステアリル25.0部からなる可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(30℃以下で橙色を呈し、30℃を超える温度で無色を示す)を含む可逆熱変色性印刷インキを用いてペーパークラフト基材の糊代部が接着される箇所の基材表面、及び、糊代部が接着されない箇所の基材表面に可逆熱変色性材料を含む可逆熱変色層5を設け可逆熱変色性ペーパークラフト1を得た。
前記可逆熱変色性ペーパークラフトの展開図に沿って切り抜き、貼り合せて立体的な車の模型を得た。
前記車の模型は、25℃の室温下では橙色の車が視認される。
前記橙色の車を指触すると可逆熱変色層が消色して合成紙による白色が視認されるが、糊代部が下方に位置しない基材表面の可逆熱変色層は鋭敏に変色して白色になり、糊代部が接着される箇所の基材表面の可逆熱変色層はやや遅れて変色して白色になる変色挙動を示した。
更に、指触を止めて放置すると、白色に変色した箇所は橙色に戻るが、糊代部が下方に位置しない基材表面の可逆熱変色層は鋭敏に変色して橙色になり、糊代部が接着される箇所の基材表面の可逆熱変色層はやや遅れて変色して橙色になる変色挙動を示し、温度の変化により複雑な色変化を付与することができた。
なお、この変化は温度変化により繰り返し行うことができた。
【0030】
実施例2
ペーパークラフト基材として紙に青色の非変色性印刷インキを用いて鳥の羽の形状を有する糊代部を有する鳥の展開図(輪郭像)を印刷した。次いで、(イ)成分として1,2-ベンツ-6-(N-エチル-N-イソブチルアミノ)フルオラン1.5部、(ロ)成分として1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)n-デカン6.0部、(ハ)成分としてカプリン酸セチル10.0部、カプリン酸ステアリル40.0部からなる可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(30℃以下でピンク色を呈し、30℃を超える温度で無色を示す)を含む可逆熱変色性印刷インキ、及び、(イ)成分として3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン3.0部、(ロ)成分として2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン6.0部、(ハ)成分としてセチルアルコール25.0部、カプリン酸ステアリル25.0部からなる可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(30℃以下で黒色を呈し、30℃を超える温度で無色を示す)を含む可逆熱変色性印刷インキを用いてペーパークラフト基材の糊代部が接着される箇所の基材表面、及び、糊代部が接着されない箇所の基材表面に可逆熱変色性材料を含む可逆熱変色層を設け可逆熱変色性ペーパークラフトを得た。
前記可逆熱変色性ペーパークラフトの展開図に沿って切り抜き、貼り合せて立体的な鳥の模型を得た。
前記鳥の模型は、25℃の室温下ではピンク色と黒色からなる鳥が視認される。
前記鳥の模型を指触すると可逆熱変色層が消色して合成紙による白色が視認されるが、糊代部が下方に位置しない基材表面の可逆熱変色層は鋭敏に変色して白色になり、糊代部が接着される箇所の基材表面の可逆熱変色層はやや遅れて変色して白色になる変色挙動を示した。
更に、指触を止めて放置すると、白色に変色した箇所はピンク色と黒色に戻るが、糊代部が下方に位置しない基材表面の可逆熱変色層は鋭敏に変色してピンク色と黒色になり、糊代部が接着される箇所の基材表面の可逆熱変色層はやや遅れて変色してピンク色と黒色になる変色挙動を示し、温度の変化により複雑な色変化を付与することができた。
なお、この変化は温度変化により繰り返し行うことができた。
【0031】
実施例3
ペーパークラフト基材として青色に着色した合成紙に黒色の非変色性印刷インキを用いて糊代部を有する恐竜の展開図(輪郭像)を印刷した。次いで、(イ)成分として9-エチル(3-メチルブチル)アミノ-スピロ[12H-ベンゾ(a)キサンテン-12,1′(3′H)イソベンゾフラン]-3′-オン1.5部、(ロ)成分として2,2-ビス(4′-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、(ハ)成分としてステアリン酸シクロヘキシルメチル50.0部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(t1:15℃、t2:21℃、t3:33℃、t4:39℃、ΔH:18℃、赤色から無色に変色する)を含む可逆熱変色性印刷インキを用いてペーパークラフト基材の糊代部が接着される箇所の基材表面、及び、糊代部が接着されない箇所の基材表面に可逆熱変色性材料を含む可逆熱変色層を設け可逆熱変色性ペーパークラフトを得た。
前記可逆熱変色性ペーパークラフトの展開図に沿って切り抜き、貼り合せて立体的な恐竜の模型を得た。
前記恐竜の模型は、15℃以下に冷却して紫色(青色と赤色が混色となった紫色)の恐竜が25℃の室温下で視認される。
前記紫色の恐竜に40℃の温水を付着させると可逆熱変色層が消色して合成紙による青色が視認されるが、糊代部が下方に位置しない基材表面の可逆熱変色層は鋭敏に変色して青色になり、糊代部が接着される箇所の基材表面の可逆熱変色層はやや遅れて変色して青色になる変色挙動を示した。
前記青色の恐竜は25℃の室温下で視認され、再び15℃以下に冷却すると紫色に戻るが、糊代部が下方に位置しない基材表面の可逆熱変色層は鋭敏に変色して紫色になり、糊代部が接着される箇所の基材表面の可逆熱変色層はやや遅れて変色して紫色になる変色挙動を示し、温度の変化により複雑な色変化を付与することができた。
なお、この変化は温度変化により繰り返し行うことができた。
【0032】
実施例4
ペーパークラフト基材として淡黄色に着色した耐水紙に黒色の非変色性印刷インキを用いて糊代部を有するバナナの展開図(輪郭像)を印刷した。次いで、(イ)成分として{4-[2,6-ビス(2,4-ジエトキシフェニル)ピリジン-4-イル]フェニル}ジメチルアミン1.0部、(ロ)成分として2,2-ビス(4′-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、(ハ)成分としてステアリン酸シクロヘキシルメチル50.0部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(t1:15℃、t2:21℃、t3:33℃、t4:39℃、ΔH:18℃、黄色から無色に色変化する)を含む可逆熱変色性印刷インキを含む可逆熱変色性印刷インキを用いてペーパークラフト基材の糊代部が接着される箇所の基材表面、及び、糊代部が接着されない箇所の基材表面に可逆熱変色性材料を含む可逆熱変色層を設け可逆熱変色性ペーパークラフトを得た。
前記可逆熱変色性ペーパークラフトの展開図に沿って切り抜き、貼り合せて立体的なバナナの模型を得た。
前記バナナの模型は、15℃以下に冷却して濃い黄色のバナナが25℃の室温下で視認される。
前記濃い黄色のバナナに40℃の温水を付着させると可逆熱変色層が消色して合成紙による淡黄色が視認されるが、糊代部が下方に位置しない基材表面の可逆熱変色層は鋭敏に変色して淡黄色になり、糊代部が接着される箇所の基材表面の可逆熱変色層はやや遅れて変色して淡黄色になる変色挙動を示した。
前記淡黄色のバナナは25℃の室温下で視認され、再び15℃以下に冷却すると濃い黄色に戻るが、糊代部が下方に位置しない基材表面の可逆熱変色層は鋭敏に変色して濃い黄色になり、糊代部が接着される箇所の基材表面の可逆熱変色層はやや遅れて変色して濃い黄色になる変色挙動を示し、温度の変化により複雑な色変化を付与することができた。
【0033】
実施例5
ペーパークラフト基材として黄色に着色した合成紙に黒色の非変色性印刷インキを用いて糊代部を有する恐竜の展開図(輪郭像)を印刷した。次いで、(イ)成分として9-エチル-(3-メチルブチル)アミノ-スピロ〔12H-ベンゾ〔a〕キサンテン-12,(3H)-イソベンゾフラン〕-3′-オン)1.5部、(ロ)成分として2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5部、(ハ)成分としてステアリン酸ネオペンチル50部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(t1:10℃、t2:18℃、t3:26℃、t4:36℃、ΔH:15℃、赤色から無色に色変化する)、及び、(イ)成分として7,7-ビス(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-5,7-ジヒドロフロ[3,4-b]ピリジン-5-オン2部、(ロ)成分として4,4′-(2-メチルプロピリデン)ビスフェノール6部、(ハ)成分としてn-ヘキサデシルアルコール25部、デカン酸オクタデシル15部、カプリン酸セチル10部からなる可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(27℃で淡青色から無色に色変化する)を含む可逆熱変色性印刷インキを用いてペーパークラフト基材の糊代部が接着される箇所の基材表面、及び、糊代部が接着されない箇所の基材表面に可逆熱変色性材料を含む可逆熱変色層を設け可逆熱変色性ペーパークラフトを得た。
前記可逆熱変色性ペーパークラフトの展開図に沿って切り抜き、貼り合せて立体的な恐竜の模型を得た。
前記恐竜の模型は、10℃以下に冷却すると黒色になり、恐竜が25℃の室温下で視認される。
前記黒色の恐竜を指触すると27℃以上で赤紫色、36℃以上で黄色になり、糊代部が下方に位置しない基材表面と、糊代部が接着される箇所の基材表面では異なる変色挙動を示す。
次いで、27℃以下に冷却すると緑色、10℃以下で黒色になり、糊代部が下方に位置しない基材表面と、糊代部が接着される箇所の基材表面では異なる変色挙動を示し、温度の変化により複雑な色変化を付与することができた。
なお、この変化は温度変化により繰り返し行うことができた。