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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114645
(43)【公開日】2022-08-08
(54)【発明の名称】展示装置
(51)【国際特許分類】
   G09B 9/00 20060101AFI20220801BHJP
   F24F 7/00 20210101ALI20220801BHJP
   F24F 7/10 20060101ALI20220801BHJP
   E04H 1/12 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
G09B9/00 L
F24F7/00 Z
F24F7/10 Z
E04H1/12 302Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021011022
(22)【出願日】2021-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100168321
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】喜多 裕美
(72)【発明者】
【氏名】岩山 遼太郎
(72)【発明者】
【氏名】中原 みまえ
【テーマコード(参考)】
3L056
【Fターム(参考)】
3L056BA03
3L056BA04
3L056BC04
(57)【要約】
【課題】建物の室内空間における化学物質の濃度の低減の仕組みを見学者に認識させることが可能な展示装置を提供する。
【解決手段】展示装置1は、第1模擬室内空間S1内を換気するための第1換気機構25を含む第1建物模型2と、第2模擬室内空間S2内を換気するための第2換気機構35を含む第2建物模型3と、化学物質を可視化する物質可視化体4とを備えている。第1換気機構25の換気量は、第2換気機構35の換気量よりも大きい。そして、第1建物模型2は、第1換気機構25による換気に応じて第1模擬室内空間S1内を移動する物質可視化体4を種類ごとに区分けして回収する第1回収部27を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の室内空間における化学物質の濃度の低減の仕組みを示す展示装置であって、
吸気口及び排気口を有する第1模擬室内空間を区画する第1模型本体と、前記第1模擬室内空間内を換気するための第1換気機構と、を含む第1建物模型と、
吸気口及び排気口を有する第2模擬室内空間を区画する第2模型本体と、前記第2模擬室内空間内を換気するための第2換気機構と、を含む第2建物模型と、
前記第1模擬室内空間及び前記第2模擬室内空間内に配置され、前記化学物質を可視化して示す物質可視化体と、を備え、
前記第1換気機構の換気量は、前記第2換気機構の換気量よりも大きい値に設定されており、
前記物質可視化体は、前記第1換気機構及び前記第2換気機構のうちの少なくとも前記第1換気機構の換気に応じて移動可能に構成されるものであって、前記第1模擬室内空間及び前記第2模擬室内空間内に設けられた前記化学物質の複数種類の発生源ごとに異なる特性を有する複数種類の可視化体を含み、
前記第1建物模型及び前記第2建物模型のうちの少なくとも前記第1建物模型は、前記第1換気機構による換気に応じて前記第1模擬室内空間内を移動して前記排気口から導出される前記物質可視化体を種類ごとに区分けして回収する回収部を含む、展示装置。
【請求項2】
前記第1模型本体は、前記化学物質の放散量が所定の基準放散量以下の建材から構成され、前記第1模擬室内空間内に面するように配置される第1放散量規定材と、前記化学物質の吸着量が所定の基準吸着量以上の建材から構成され、前記第1模擬室内空間内に面するように配置される第1吸着量規定材と、を有し、
前記第2模型本体は、前記化学物質の放散量が前記基準放散量を超える建材から構成され、前記第2模擬室内空間内に面するように配置される第2放散量規定材と、前記化学物質の吸着量が前記基準吸着量未満の建材から構成され、前記第2模擬室内空間内に面するように配置される第2吸着量規定材と、を有し、
前記物質可視化体は、前記第1模擬室内空間内への配置数が前記第2模擬室内空間内への配置数よりも少なくなるように、各模擬室内空間内に配置される、請求項1に記載の展示装置。
【請求項3】
前記第1模型本体は、前記第1放散量規定材及び前記第1吸着量規定材をそれぞれ着脱可能に支持する第1支持部を有し、
前記第2模型本体は、前記第2放散量規定材及び前記第2吸着量規定材をそれぞれ着脱可能に支持する第2支持部を有している、請求項2に記載の展示装置。
【請求項4】
前記第1模型本体は、床面を有し、
前記第1模型本体の前記排気口は、前記床面を移動する前記物質可視化体を受入可能な位置に設けられ、
前記回収部は、前記床面よりも下方の位置に配置される、請求項1~3のいずれか1項に記載の展示装置。
【請求項5】
前記物質可視化体は、種類ごとに大きさが異なる特性を有しており、
前記回収部は、大きさごとに前記物質可視化体を回収可能に複数段の回収部が重ねられた多重構造を有し、
前記複数段の回収部において最下段の回収部以外の回収部には、前記物質可視化体の通過を許容する孔が形成されており、当該孔の孔径は、上方に配置された回収部ほど大きい、請求項4に記載の展示装置。
【請求項6】
前記第1模型本体は、前記物質可視化体を収容可能な内部空間を有するとともに、当該内部空間を開放する第1物質導出口と、前記第1物質導出口を開閉する第1蓋体とを有し、前記第1蓋体による前記第1物質導出口の開放により、前記第1模擬室内空間内への前記物質可視化体の導出を許容する第1模擬壁構造体を含み、
前記第2模型本体は、前記物質可視化体を収容可能な内部空間を有するとともに、当該内部空間を開放する第2物質導出口と、前記第2物質導出口を開閉する第2蓋体とを有し、前記第2蓋体による前記第2物質導出口の開放により、前記第2模擬室内空間内への前記物質可視化体の導出を許容する第2模擬壁構造体を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の展示装置。
【請求項7】
前記第1建物模型は、前記第1換気機構の換気量を可視化する第1換気可視化部を含み、
前記第2建物模型は、前記第2換気機構の換気量を可視化する第2換気可視化部を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の展示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の室内空間における化学物質の濃度の低減の仕組みを示す展示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、住宅やマンション等の建物の室内空間における空気環境を調整する技術が知られている。このような技術が室内空間における空気環境の調整にどの程度有効であるのかを実感することは難しいものである。そこで、室内空間における空気環境の状態を見学者に認識させるための展示設備が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示される展示設備は、換気体験装置と熱交換体験装置とを備えている。この展示設備では、換気体験装置によって住宅模型内の換気状態を認識させることができるとともに、熱交換体験装置によって空気の温度を体感させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-132079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年では、建物の室内空間における空気環境を、例えばシックハウス症候群の原因物質と考えられる化学物質の濃度が低減された空気環境とすることが求められている。このため、展示設備においては、建物の室内空間における化学物質の濃度の低減の仕組みを見学者に認識させることを可能とするという点において、改善の余地がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、建物の室内空間における化学物質の濃度の低減の仕組みを見学者に認識させることが可能な展示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の局面に係る展示装置は、建物の室内空間における化学物質の濃度の低減の仕組みを示す装置である。この展示装置は、吸気口及び排気口を有する第1模擬室内空間を区画する第1模型本体と、前記第1模擬室内空間内を換気するための第1換気機構と、を含む第1建物模型と、吸気口及び排気口を有する第2模擬室内空間を区画する第2模型本体と、前記第2模擬室内空間内を換気するための第2換気機構と、を含む第2建物模型と、前記第1模擬室内空間及び前記第2模擬室内空間内に配置され、前記化学物質を可視化して示す物質可視化体と、を備える。前記第1換気機構の換気量は、前記第2換気機構の換気量よりも大きい値に設定されている。そして、前記物質可視化体は、前記第1換気機構及び前記第2換気機構のうちの少なくとも前記第1換気機構の換気に応じて移動可能に構成されるものであって、前記第1模擬室内空間及び前記第2模擬室内空間内に設けられた前記化学物質の複数種類の発生源ごとに異なる特性を有する複数種類の可視化体を含み、前記第1建物模型及び前記第2建物模型のうちの少なくとも前記第1建物模型は、前記第1換気機構による換気に応じて前記第1模擬室内空間内を移動して前記排気口から導出される前記物質可視化体を種類ごとに区分けして回収する回収部を含む。
【0008】
この展示装置によれば、建物を模した建物模型として、第1模擬室内空間を有する第1建物模型と、第2模擬室内空間を有する第2建物模型とを備えるとともに、化学物質を可視化して示す物質可視化体を備えている。第1建物模型は第1模擬室内空間内を換気するための第1換気機構を含み、第2建物模型は第2模擬室内空間内を換気するための第2換気機構を含む。この際、第1換気機構の換気量が第2換気機構の換気量よりも大きい値に設定されており、物質可視化体は第1換気機構及び第2換気機構のうちの少なくとも第1換気機構の換気に応じて移動可能に構成されている。
【0009】
このような構成では、第1換気機構の換気に応じて第1模擬室内空間内に生じる第1換気流によって当該第1模擬室内空間内に配置された物質可視化体が移動される。一方、第2模擬室内空間内に配置された物質可視化体は、第2換気機構の換気に応じて第2模擬室内空間内に生じる第2換気流によって移動されるか、若しくは、第2換気流によっては移動しない。第2換気流によって物質可視化体が移動する場合であっても、第1換気機構の換気量が第2換気機構の換気量よりも大きいので、第1模擬室内空間内における物質可視化体の移動速度が、第2模擬室内空間内における物質可視化体の移動速度よりも高速となる。このような物質可視化体の移動速度の違いを視覚的に見学者に認識させることが可能であるので、第1換気機構と第2換気機構との間の換気構造の違いに応じて室内空間からの化学物質の排出速度に違いが生じることを、視覚的に見学者に認識させることができる。特に、第1模擬室内空間及び第2模擬室内空間内に設けられた化学物質の発生源ごとに物質可視化体の種類を変えて各模擬室内空間内の所定位置に配置することにより、化学物質の発生から排出までを視覚的に見学者に認識させることができる。以上のように、展示装置を用いることにより、当該展示装置の見学者に、建物の室内空間における化学物質の濃度の低減の仕組みを視覚的に認識させることが可能となる。
【0010】
しかも、展示装置においては、複数種類の物質可視化体を回収するための構成として、第1建物模型及び第2建物模型のうちの少なくとも第1建物模型が回収部を含む。これにより、第1換気機構の換気に応じて第1模擬室内空間内に生じる第1換気流によって当該第1模擬室内空間内を移動する物質可視化体を、回収部を用いて、物質可視化体の種類ごとに区分けして回収することができる。このため、第1模擬室内空間内の移動後の物質可視化体を所定位置に戻す作業を効率よく行うことができる。
【0011】
上記の展示装置において、前記第1模型本体は、前記化学物質の放散量が所定の基準放散量以下の建材から構成され、前記第1模擬室内空間内に面するように配置される第1放散量規定材と、前記化学物質の吸着量が所定の基準吸着量以上の建材から構成され、前記第1模擬室内空間内に面するように配置される第1吸着量規定材と、を有している。また、前記第2模型本体は、前記化学物質の放散量が前記基準放散量を超える建材から構成され、前記第2模擬室内空間内に面するように配置される第2放散量規定材と、前記化学物質の吸着量が前記基準吸着量未満の建材から構成され、前記第2模擬室内空間内に面するように配置される第2吸着量規定材と、を有している。そして、前記物質可視化体は、前記第1模擬室内空間内への配置数が前記第2模擬室内空間内への配置数よりも少なくなるように、各模擬室内空間内に配置される。
【0012】
この態様では、第1建物模型と第2建物模型とは、化学物質の放散量が異なる放散量規定材を用いるとともに、化学物質の吸着量が異なる吸着量規定材を用いてそれぞれ作製されている。このため、第1建物模型の第1模擬室内空間と第2建物模型の第2模擬室内空間との間においては化学物質の濃度が異なっている。つまり、化学物質の放散量が少ない第1放散量規定材を含み、且つ化学物質の吸着量が多い第1吸着量規定材を含む第1建物模型の第1模擬室内空間が、第2建物模型の第2模擬室内空間よりも化学物質の濃度が低い。これにより、第1模擬室内空間と第2模擬室内空間との間の化学物質の濃度差に応じて化学物質由来の臭いの差が生じるため、当該臭いの差に基づいて、建物の建設の際に用いられる建材における化学物質の放散量及び吸着量が、室内空間における化学物質の濃度と関係していることを嗅覚的に認識させることができる。
【0013】
しかも、物質可視化体は、第1模擬室内空間と第2模擬室内空間との間の化学物質の濃度差を、各空間への配置数によって可視化することが可能である。つまり、第1模擬室内空間が第2模擬室内空間よりも化学物質の濃度が低いので、この場合は、第1模擬室内空間への物質可視化体の配置数が第2模擬室内空間への物質可視化体の配置数よりも少なくされる。このような、第1模擬室内空間と第2模擬室内空間との間の物質可視化体の配置数の差に基づいて、建物の建設の際に用いられる建材における化学物質の放散量及び吸着量が、室内空間における化学物質の濃度と関係していることを視覚的に認識させることができる。
【0014】
上記の展示装置において、前記第1模型本体は、前記第1放散量規定材及び前記第1吸着量規定材をそれぞれ着脱可能に支持する第1支持部を有し、前記第2模型本体は、前記第2放散量規定材及び前記第2吸着量規定材をそれぞれ着脱可能に支持する第2支持部を有している。
【0015】
この態様では、第1建物模型においては、第1放散量規定材及び第1吸着量規定材が第1支持部に対して着脱可能である。例えば、経時変化などに起因して第1模擬室内空間における化学物質の濃度が変化した場合に、第1放散量規定材及び第1吸着量規定材の第1支持部に対する着脱によって、第1放散量規定材及び第1吸着量規定材の交換が可能である。一方、第2建物模型においては、第2放散量規定材及び第2吸着量規定材が第2支持部に対して着脱可能である。例えば、経時変化などに起因して第2模擬室内空間における化学物質の濃度が変化した場合に、第2放散量規定材及び第2吸着量規定材の第2支持部に対する着脱によって、第2放散量規定材及び第2吸着量規定材の交換が可能である。
【0016】
上記の展示装置において、前記第1模型本体は、床面を有し、前記第1模型本体の前記排気口は、前記床面を移動する前記物質可視化体を受入可能な位置に設けられ、前記回収部は、前記床面よりも下方の位置に配置される。
【0017】
また、上記の展示装置において、前記物質可視化体は、種類ごとに大きさが異なる特性を有しており、前記回収部は、大きさごとに前記物質可視化体を回収可能に複数段の回収部が重ねられた多重構造を有し、前記複数段の回収部において最下段の回収部以外の回収部には、前記物質可視化体の通過を許容する孔が形成されており、当該孔の孔径は、上方に配置された回収部ほど大きい。
【0018】
この態様では、回収部は、第1模擬室内空間の外側において床面よりも下方の位置に配置されている。このため、第1換気機構の換気に応じて第1模擬室内空間内に生じる第1換気流によって床面に沿って移動する物質可視化体は、排気口から回収部に向かって落下する。回収部は、排気口から落下する物質可視化体を受け入れて、複数段の回収部において物質可視化体の種類ごとに区分けして回収することができる。
【0019】
上記の展示装置において、前記第1模型本体は、前記物質可視化体を収容可能な内部空間を有するとともに、当該内部空間を開放する第1物質導出口と、前記第1物質導出口を開閉する第1蓋体とを有し、前記第1蓋体による前記第1物質導出口の開放により、前記第1模擬室内空間内への前記物質可視化体の導出を許容する第1模擬壁構造体を含む。また、前記第2模型本体は、前記物質可視化体を収容可能な内部空間を有するとともに、当該内部空間を開放する第2物質導出口と、前記第2物質導出口を開閉する第2蓋体とを有し、前記第2蓋体による前記第2物質導出口の開放により、前記第2模擬室内空間内への前記物質可視化体の導出を許容する第2模擬壁構造体を含む。
【0020】
この態様では、第1建物模型においては、第1蓋体による第1物質導出口の開放により、第1模擬壁構造体の内部に配置されていた物質可視化体が第1物質導出口を介して第1模擬室内空間内に導出される。一方、第2建物模型においては、第2蓋体による第2物質導出口の開放により、第2模擬壁構造体の内部に配置されていた物質可視化体が第2物質導出口を介して第2模擬室内空間内に導出される。このような、第1模擬室内空間及び第2模擬室内空間内への物質可視化体の導出によって、実際の建物における壁構造体の内部から化学物質が放散されることを、見学者に認識させることができる。
【0021】
上記の展示装置において、前記第1建物模型は、前記第1換気機構の換気量を可視化する第1換気可視化部を含み、前記第2建物模型は、前記第2換気機構の換気量を可視化する第2換気可視化部を含む。
【0022】
この態様では、第1換気機構と第2換気機構との間の換気量の違いが、第1換気可視化部と第2換気可視化部とによって可視化される。これにより、第1換気機構と第2換気機構との間の換気量の違いを視覚的に認識させることができる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、建物の室内空間における化学物質の濃度の低減の仕組みを見学者に認識させることが可能な展示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係る展示装置の全体構成を示す斜視図である。
図2】展示装置に備えられる第1建物模型の構成を示す斜視図である。
図3図2のIII-III線に沿った断面図である。
図4】展示装置に備えられる第2建物模型の構成を示す斜視図である。
図5図4のV-V線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図1図5を参照しながら、本発明の一実施形態に係る展示装置1について説明する。なお、以下では、方向関係については、上下方向、前後方向及び左右方向を用いて説明する。上下方向は鉛直方向を示し、前後方向は上下方向と直交する水平面上の一方向を示し、左右方向は水平面上において前後方向と直交する方向を示す。
【0026】
本実施形態に係る展示装置1は、当該展示装置1の見学者に対し、住宅やマンション等の建物の室内空間における化学物質の濃度の低減の仕組みを認識させるために用いられる装置である。建物の室内空間における化学物質としては、例えば、トルエン、キシレン、ホルムアルデヒドなどの揮発性有機化合物が挙げられる。
【0027】
展示装置1は、建物を模した第1建物模型2及び第2建物模型3と、化学物質を可視化Hして示す物質可視化体4と、を備えている。展示装置1では、化学物質の濃度が第1濃度の第1模擬室内空間S1を第1建物模型2によって再現し、化学物質の濃度が第1濃度よりも高い第2濃度の第2模擬室内空間S2を第2建物模型3によって再現している。そして、第1建物模型2の第1模擬室内空間S1と第2建物模型3の第2模擬室内空間S2との間における化学物質の濃度差を、物質可視化体4を用いて可視化することにより、建物の室内空間における化学物質の濃度の低減の仕組みを見学者に認識させる。
【0028】
図2に示されるように、第1建物模型2は、第1模型本体21と、第1模擬床材22と、第1模擬壁材23と、第1模擬家具24とを含む。
【0029】
第1模型本体21は、第1建物模型2の本体部分を構成する。第1模型本体21は、一対の第1模擬壁構造体211a,211bと、前壁部212と、後壁部213と、底壁部214と、天壁部215とによって矩形箱状に形成されている。
【0030】
一対の第1模擬壁構造体211a,211bは、建物の壁体を模したものであって、上下方向及び前後方向に広がる面を有し、左右方向に互いに間隔をあけて対向配置される。前壁部212は、一対の第1模擬壁構造体211a,211bの前後方向の前端に接続される板状の壁である。後壁部213は、一対の第1模擬壁構造体211a,211bの前後方向の後端に接続される板状の壁である。底壁部214は、一対の第1模擬壁構造体211a,211bの上下方向の下端に接続される板状の壁である。天壁部215は、左右方向に延びる回動軸2151回りの回動が可能となるように、一対の第1模擬壁構造体211a,211bの上下方向の上端に取付けられる板状の壁である。天壁部215は、回動軸2151回りの回動によって、第1模擬室内空間S1を開放又は閉鎖する。なお、前壁部212及び天壁部215は、第1模擬室内空間S1内の様子を視認することが可能となるように、透明部材から構成されている。
【0031】
第1模型本体21においては、一対の第1模擬壁構造体211a,211bの後端部分には、後壁部213が接続された状態で、当該後壁部213よりも前側に第1壁材支持部2131が設けられている。第1壁材支持部2131は、第1模型本体21において第1模擬壁材23を着脱可能に支持する部分である。第1模擬壁材23は、第1模擬室内空間S1内に面するように配置される第1吸着量規定材の一例である。第1模擬壁材23は、化学物質の吸着量が所定の基準吸着量以上の建材から構成される板状の壁材である。具体的には、第1模擬壁材23は、化学物質の吸着量が基準吸着量以上の石膏ボード上に、化学物質の透過性を有する壁クロス材が設けられた壁材である。なお、第1模擬壁材23は、化学物質の吸着量が基準吸着量以上となるように構成されていればよく、化学物質の吸着量が基準吸着量未満の石膏ボードを用い、当該石膏ボード上に化学物質の高い吸着性を有する珪藻土などを塗った壁材であってもよい。第1模擬壁材23は、第1壁材支持部2131に挿し込まれた状態において、後壁部213よりも前側で一対の第1模擬壁構造体211a,211bの後端部分に当接する一方、第1壁材支持部2131からの抜き取りが可能である。
【0032】
また、第1模型本体21においては、一対の第1模擬壁構造体211a,211bの下端部分には、底壁部214が接続された状態で、当該底壁部214よりも上側に第1床材支持部2141が設けられている。第1床材支持部2141は、第1模型本体21において第1模擬床材22を着脱可能に支持する部分である。第1模擬床材22は、第1模擬室内空間S1内に面するように配置される第1放散量規定材の一例である。第1模擬床材22は、化学物質の放散量が所定の基準放散量以下の建材から構成される板状の床材である。第1模擬床材22は、第1床材支持部2141に挿し込まれた状態において、底壁部214よりも上側で一対の第1模擬壁構造体211a,211bの下端部分に当接する一方、第1床材支持部2141からの抜き取りが可能である。
【0033】
第1建物模型2では、第1模擬壁材23が第1壁材支持部2131に挿し込まれるとともに第1模擬床材22が第1床材支持部2141に挿し込まれた状態で、一対の第1模擬壁構造体211a,211b、前壁部212、天壁部215、第1模擬床材22、及び第1模擬壁材23によって第1模擬室内空間S1が区画される。この第1模擬室内空間S1には、物質可視化体4が配置されるとともに、第1模擬家具24が設置される。第1模擬家具24は、建物の室内空間に設置される家具を模したものである。
【0034】
上記の通り、第1建物模型2においては、第1模擬床材22が第1床材支持部2141に対して着脱可能(挿抜可能)であるとともに、第1模擬壁材23が第1壁材支持部2131に対して着脱可能(挿抜可能)である。例えば、経時変化などに起因して第1模擬室内空間S1における化学物質の濃度が変化した場合に、第1模擬床材22及び第1模擬壁材23の各支持部2131,2141に対する着脱によって、第1模擬床材22及び第1模擬壁材23の交換が可能である。
【0035】
また、第1建物模型2においては、一対の第1模擬壁構造体211a,211bのうちの一方の第1模擬壁構造体211aは、その下端部分に、物質可視化体4を収容可能な内部空間を有するとともに、当該内部空間を開放する第1物質導出口216と、当該第1物質導出口216を開閉する第1蓋体2161とを有している。第1模擬壁構造体211aは、第1蓋体2161による第1物質導出口216の開放により、第1模擬壁構造体211aの内部から第1模擬室内空間S1内への物質可視化体4の導出を許容する。一方、第1蓋体2161によって第1物質導出口216が閉鎖されることにより、第1模擬壁構造体211aの内部から第1模擬室内空間S1内への物質可視化体4の導出が規制される。
【0036】
また、第1建物模型2においては、一対の第1模擬壁構造体211a,211bのうちの他方の第1模擬壁構造体211bの後端部分に、上下方向に延びる建具2171が設けられている。建具2171の下端部分には、第1模擬室内空間S1内から外部への空気の排出を許容する排気口217が形成されている。この排気口217は、建具2171に取付けられた排気開閉部2172によって開閉される。排気開閉部2172によって排気口217が開放されることにより、第1模擬室内空間S1内の空気が外部へ排出される。一方、排気開閉部2172によって排気口217が閉鎖されることにより、第1模擬室内空間S1内の空気の外部への排出が規制される。
【0037】
図2及び図3に示されるように、第1建物模型2は、第1換気機構25と、第1換気可視化部26とを更に含む。
【0038】
第1換気機構25は、給気ファン251と第1排気ファン252とを有し、給気ファン251及び第1排気ファン252の作動により、第1模擬室内空間S1内を換気する。給気ファン251は、一対の第1模擬壁構造体211a,211bのうちの一方の第1模擬壁構造体211aの前方上端部分に形成された吸気口に設けられている。給気ファン251は、外部の空気を第1模擬室内空間S1内に供給するためのファンである。第1排気ファン252は、一対の第1模擬壁構造体211a,211bのうちの他方の第1模擬壁構造体211bの外方に設けられた排気経路部2521内に設置されている。排気経路部2521は、排気口217と連通する経路であって、排気口217から排出される空気が流れる排気経路を形成する。第1排気ファン252は、第1模擬室内空間S1内の空気を、排気口217を介して排出するためのファンである。
【0039】
第1換気機構25は、給気ファン251及び第1排気ファン252の作動に応じた換気動作に基づいて、給気ファン251が設けられた第1模擬壁構造体211aの前側上端付近から排気口217に向かって流れる第1換気流250を第1模擬室内空間S1内に生じさせることにより、第1模擬室内空間S1を換気する。
【0040】
第1換気可視化部26は、排気口217の近傍に位置するように、建具2171に取付けられる。第1換気可視化部26は、第1換気機構25の換気動作によって第1模擬室内空間S1内に生じる第1換気流250の強さ(換気量)を可視化するものである。第1換気可視化部26は、例えば、第1換気流250によって回転する風車である。第1換気可視化部26が風車から構成されている場合には、第1換気流250の強さが大きいほど高速で回転するため、この回転状態によって第1換気流250の強さを見学者に認識させることができる。
【0041】
次に、図4及び図5を参照しながら第2建物模型3について説明する。第2建物模型3は、第2模型本体31と、第2模擬床材32と、第2模擬壁材33と、第2模擬家具34とを含む。
【0042】
第2模型本体31は、第2建物模型3の本体部分を構成する。第2模型本体31は、一対の第2模擬壁構造体311a,311bと、前壁部312と、後壁部313と、底壁部314と、天壁部315とによって矩形箱状に形成されている。第2模型本体31は、上記の第1建物模型2の第1模型本体21と同様に構成されているので、詳細な説明については省略する。
【0043】
第2模型本体31においては、一対の第2模擬壁構造体311a,311bの後端部分には、後壁部313が接続された状態で、当該後壁部313よりも前側に第2壁材支持部3131が設けられている。第2壁材支持部3131は、第2模型本体31において第2模擬壁材33を着脱可能に支持する部分である。第2模擬壁材33は、第2模擬室内空間S2内に面するように配置される第2吸着量規定材の一例である。第2模擬壁材33は、化学物質の吸着量が基準吸着量未満の建材から構成される板状の壁材である。具体的には、第2模擬壁材33は、化学物質の吸着量が基準吸着量未満の石膏ボード上に、化学物質の透過性を有しない壁クロス材が設けられた壁材である。第2模擬壁材33は、第2壁材支持部3131に挿し込まれた状態において、後壁部313よりも前側で一対の第2模擬壁構造体311a,311bの後端部分に当接する一方、第2壁材支持部3131からの抜き取りが可能である。
【0044】
また、第2模型本体31においては、一対の第2模擬壁構造体311a,311bの下端部分には、底壁部314が接続された状態で、当該底壁部314よりも上側に第2床材支持部3141が設けられている。第2床材支持部3141は、第2模型本体31において第2模擬床材32を着脱可能に支持する部分である。第2模擬床材32は、第2模擬室内空間S2内に面するように配置される第2放散量規定材の一例である。第2模擬床材32は、化学物質の放散量が基準放散量を超える建材から構成される板状の床材である。第2模擬床材32は、第2床材支持部3141に挿し込まれた状態において、底壁部314よりも上側で一対の第2模擬壁構造体311a,311bの下端部分に当接する一方、第2床材支持部3141からの抜き取りが可能である。
【0045】
第2建物模型3では、第2模擬壁材33が第2壁材支持部3131に挿し込まれるとともに第2模擬床材32が第2床材支持部3141に挿し込まれた状態で、一対の第2模擬壁構造体311a,311b、前壁部312、天壁部315、第2模擬床材32、及び第2模擬壁材33によって第2模擬室内空間S2が区画される。この第2模擬室内空間S2には、物質可視化体4が配置されるとともに、第2模擬家具34が設置される。第2模擬家具34は、建物の室内空間に設置される家具を模したものである。
【0046】
上記の通り、第2建物模型3においては、第2模擬床材32が第2床材支持部3141に対して着脱可能(挿抜可能)であるとともに、第2模擬壁材33が第2壁材支持部3131に対して着脱可能(挿抜可能)である。例えば、経時変化などに起因して第2模擬室内空間S2における化学物質の濃度が変化した場合に、第2模擬床材32及び第2模擬壁材33の各支持部3131,3141に対する着脱によって、第2模擬床材32及び第2模擬壁材33の交換が可能である。
【0047】
また、第2建物模型3においては、一対の第2模擬壁構造体311a,311bのうちの一方の第2模擬壁構造体311aは、その下端部分に、物質可視化体4を収容可能な内部空間を有するとともに、当該内部空間を開放する第2物質導出口316と、当該第2物質導出口316を開閉する第2蓋体3161とを有している。第2模擬壁構造体311aは、第2蓋体3161による第2物質導出口316の開放により、第2模擬壁構造体311aの内部から第2模擬室内空間S2内への物質可視化体4の導出を許容する。一方、第2蓋体3161によって第2物質導出口316が閉鎖されることにより、第2模擬壁構造体311aの内部から第2模擬室内空間S2内への物質可視化体4の導出が規制される。
【0048】
また、第2建物模型3においては、一対の第2模擬壁構造体311a,311bのうちの他方の第2模擬壁構造体311bの後端部分に、上下方向に延びる建具3171が設けられている。建具3171の下端部分には、第2模擬室内空間S2内から外部への空気の排出を許容する排気口317が形成されている。この排気口317は、建具3171に取付けられた排気開閉部3172によって開閉される。排気開閉部3172によって排気口317が開放されることにより、第2模擬室内空間S2内の空気が外部へ排出される。一方、排気開閉部3172によって排気口317が閉鎖されることにより、第2模擬室内空間S2内の空気の外部への排出が規制される。
【0049】
図4及び図5に示されるように、第2建物模型3は、第2換気機構35と、第2換気可視化部36とを更に含む。
【0050】
第2換気機構35は、換気窓351と第2排気ファン352とを有し、換気窓351を開放した状態での第2排気ファン352の作動により、第2模擬室内空間S2内を換気する。換気窓351は、一対の第2模擬壁構造体311a,311bのうちの一方の第2模擬壁構造体311aの前方上端部分に形成された吸気口に設けられている。換気窓351は、外部の空気を第2模擬室内空間S2内に供給するための窓である。第2排気ファン352は、一対の第2模擬壁構造体311a,311bのうちの他方の第2模擬壁構造体311bの外方に設けられた排気経路部3521内に設置されている。排気経路部3521は、排気口317と連通する経路であって、排気口317から排出される空気が流れる排気経路を形成する。第2排気ファン352は、第2模擬室内空間S2内の空気を、排気口317を介して排出するためのファンである。
【0051】
第2換気機構35は、換気窓351を開放した状態での第2排気ファン352の作動に応じた換気動作に基づいて、換気窓351が設けられた第2模擬壁構造体311aの前側上端付近から排気口317に向かって流れる第2換気流350を第2模擬室内空間S2内に生じさせることにより、第2模擬室内空間S2を換気する。
【0052】
第2換気可視化部36は、排気口317の近傍に位置するように、建具3171に取付けられる。第2換気可視化部36は、第2換気機構35の換気動作によって第2模擬室内空間S2に生じる第2換気流350の強さ(換気量)を可視化するものである。第2換気可視化部36は、例えば、第2換気流350によって回転する風車である。第2換気可視化部36が風車から構成されている場合には、第2換気流350の強さが大きいほど高速で回転するため、この回転状態によって第2換気流350の強さを見学者に認識させることができる。
【0053】
以上説明したように、展示装置1において、第1建物模型2と第2建物模型3とは、化学物質の放散量が異なる模擬床材22,32を用いるとともに、化学物質の吸着量が異なる模擬壁材23,33を用いてそれぞれ作製されている。このため、第1建物模型2の第1模擬室内空間S1と第2建物模型3の第2模擬室内空間S2との間においては化学物質の濃度が異なっている。
【0054】
つまり、化学物質の放散量が少ない第1模擬床材22を含み、且つ化学物質の吸着量が多い第1模擬壁材23を含む第1建物模型2の第1模擬室内空間S1における化学物質の第1濃度が、第2建物模型3の第2模擬室内空間S2における化学物質の第2濃度よりも低い。これにより、第1模擬室内空間S1と第2模擬室内空間S2との間の化学物質の濃度差に応じて化学物質由来の臭いの差が生じるため、当該臭いの差に基づいて、建物の建設の際に用いられる建材における化学物質の放散量及び吸着量が、室内空間における化学物質の濃度と関係していることを、嗅覚的に見学者に認識させることができる。なお、見学者が第1模擬室内空間S1及び第2模擬室内空間S2の各空間における化学物質由来の臭いを嗅ぐときには、第1建物模型2においては天壁部215の回動に応じて第1模擬室内空間S1を開放させ、第2建物模型3においては天壁部315の回動に応じて第2模擬室内空間S2を開放させる。これにより、見学者は、第1模擬室内空間S1及び第2模擬室内空間S2の各空間における化学物質由来の臭いを容易に嗅ぐことができる。
【0055】
しかも、展示装置1は、化学物質を可視化して示す物質可視化体4を備えている。この物質可視化体4は、第1模擬室内空間S1と第2模擬室内空間S2との間の化学物質の濃度差を、各空間への配置数によって可視化することが可能である。つまり、第1模擬室内空間S1が第2模擬室内空間S2よりも化学物質の濃度が低いので、この場合は、第1模擬室内空間S1への物質可視化体4の配置数が第2模擬室内空間S2への物質可視化体4の配置数よりも少なくされる。このような、第1模擬室内空間S1と第2模擬室内空間S2との間の物質可視化体4の配置数の差に基づいて、建物の建設の際に用いられる建材における化学物質の放散量及び吸着量が、室内空間における化学物質の濃度と関係していることを、視覚的に見学者に認識させることができる。
【0056】
以上のように、展示装置1を用いることにより、当該展示装置1の見学者に、建物の室内空間における化学物質の濃度の低減の仕組みを、嗅覚的のみならず視覚的にも認識させることが可能となる。
【0057】
また、第1建物模型2の第1換気機構25と第2建物模型3の第2換気機構35とを比較すると、各模擬室内空間S1,S2に外気を供給するための機構として、第1換気機構25が給気ファン251を有しているのに対し、第2換気機構35が換気窓351を有している点で異なっている。このような外気供給機構の違いによって、第1換気機構25によって第1模擬室内空間S1内に生じる第1換気流250の強さは、第2換気機構35によって第2模擬室内空間S2内に生じる第2換気流350の強さよりも大きくなる。つまり、第1換気機構25の換気量は、第2換気機構35の換気量よりも大きくなる。
【0058】
第1模擬室内空間S1における第1換気流250と第2模擬室内空間S2における第2換気流350との間の換気流の強さの違いについては、第1換気可視化部26と第2換気可視化部36とによって可視化される。これにより、第1換気機構25と第2換気機構35との間の換気構造の違いが換気流の強さと関係していることを視覚的に見学者に認識させることができるとともに、当該換気流の強さが室内空間における化学物質の濃度と関係していることについても見学者に認識させることができる。
【0059】
また、第1模擬室内空間S1及び第2模擬室内空間S2に配置される物質可視化体4は、例えば発泡スチロールなどの多孔質且つ低質量の材料から構成された球体である。物質可視化体4は、第1換気機構25及び第2換気機構35のうちの少なくとも第1換気機構25の換気に応じて移動可能に構成されている。すなわち、第1模擬室内空間S1内に配置された物質可視化体4は、第1換気機構25の換気に応じて第1模擬室内空間S1内に生じる第1換気流250によって、第1模擬床材22の上面に沿って移動される。第1模擬床材22の上面は、第1模型本体21における床面の一例である。一方、第2模擬室内空間S2内に配置された物質可視化体4は、第2換気機構35の換気に応じて第2模擬室内空間S2内に生じる第2換気流350によって第2模擬床材32の上面に沿って移動されるか、若しくは、第2換気流350によっては移動しない。
【0060】
本実施形態では、物質可視化体4は、第1換気流250によって移動可能であるとともに、第2換気流350によっても移動可能に構成されている。第2換気流350によって物質可視化体4が移動可能な場合であっても、第1換気流250の強さが第2換気流350の強さよりも大きいので、第1模擬室内空間S1内における物質可視化体4の移動速度が、第2模擬室内空間S2内における物質可視化体4の移動速度よりも高速となる。このような物質可視化体4の移動速度の違いを視覚的に見学者に認識させることが可能であるので、第1換気機構25と第2換気機構35との間の換気構造の違いに応じて室内空間からの化学物質の排出速度に違いが生じることを、視覚的に見学者に認識させることができる。
【0061】
また、物質可視化体4は、第1模擬室内空間S1及び第2模擬室内空間S2内に設けられた化学物質の複数種類の発生源ごとに異なる特性を有する複数種類の可視化体を含む。具体的には、物質可視化体4は、建材由来物質体41と、壁体由来物質体42と、家具由来物質体43とを含む。建材由来物質体41は、第1模擬床材22及び第2模擬床材32を構成する建材を発生源とした化学物質を想定したものである。壁体由来物質体42は、第1模擬壁構造体211a,211b及び第2模擬壁構造体311a,311bを発生源とした化学物質を想定したものである。壁体由来物質体42は、第1建物模型2においては第1蓋体2161が第1物質導出口216を開放した状態で第1模擬壁構造体211aの内部から第1模擬室内空間S1内へ導出され、第2建物模型3においては第2蓋体3161が第2物質導出口316を開放した状態で第2模擬壁構造体311aの内部から第2模擬室内空間S2内へ導出される。家具由来物質体43は、第1模擬家具24及び第2模擬家具34を発生源とした化学物質を想定したものである。
【0062】
建材由来物質体41、壁体由来物質体42、及び家具由来物質体43は、それぞれ異なる色に着色されていてもよい。建材由来物質体41、壁体由来物質体42、及び家具由来物質体43は可視化されているので、建物を構成する床材及び壁構造体などから化学物質が放散されることを視覚的に見学者に認識させることができるとともに、室内空間に設置される家具からも化学物質が放散されることを見学者に認識させることができる。
【0063】
本実施形態では、第1換気機構25及び第2換気機構35を作動させる前に、第1建物模型2の第1模擬室内空間S1と第2建物模型3の第2模擬室内空間S2との所定位置に、第1模擬室内空間S1と第2模擬室内空間S2との間の化学物質の濃度差に応じた配置数で、物質可視化体4が配置される。具体的には、建材由来物質体41は、第1模擬室内空間S1において第1模擬床材22上に配置されるとともに、第2模擬室内空間S2において第2模擬床材32上に配置される。壁体由来物質体42は、一対の第1模擬壁構造体211a,211bのうちの一方の第1模擬壁構造体211aの内部に配置されるとともに、一対の第2模擬壁構造体311a,311bのうちの一方の第2模擬壁構造体311aの内部に配置される。家具由来物質体43は、第1模擬室内空間S1において第1模擬家具24上に配置されるとともに、第2模擬室内空間S2において第2模擬家具34上に配置される。
【0064】
物質可視化体4を構成する建材由来物質体41、壁体由来物質体42、及び家具由来物質体43の所定位置への配置が完了すると、第1換気機構25及び第2換気機構35を作動させる。このように、第1模擬室内空間S1及び第2模擬室内空間S2内に設けられた化学物質の発生源ごとに物質可視化体4の種類を変えて各模擬室内空間S1,S2内の所定位置に配置した後に、第1換気機構25及び第2換気機構35を作動させることにより、化学物質の発生から排出までを視覚的に見学者に認識させることができる。
【0065】
また、建材由来物質体41、壁体由来物質体42、及び家具由来物質体43は、それぞれ大きさが異なるものである。例えば、建材由来物質体41が最も大きく、家具由来物質体43が最も小さく、壁体由来物質体42が建材由来物質体41と家具由来物質体43との間の大きさである。そして、展示装置1においては、第1建物模型2が第1回収部27を含むとともに、第2建物模型3が第2回収部37を含む。
【0066】
第1建物模型2において、第1回収部27は、第1換気流250によって第1模擬室内空間S1内を第1模擬床材22の上面に沿って移動して排気口217から導出される物質可視化体4を、建材由来物質体41、壁体由来物質体42、及び家具由来物質体43ごとに区分けして回収するものである。なお、第1模型本体21において排気口217は、第1模擬床材22の上面に沿って移動する物質可視化体4を受入可能な位置に設けられている。第1回収部27は、第1模擬室内空間S1の外側において第1模擬床材22の上面よりも下方の位置に配置される。第1回収部27は、第1回収筐体271と、第1上段回収部272と、第1中段回収部273と、第1下段回収部274とを有している。すなわち、第1回収部27は、建材由来物質体41、壁体由来物質体42、及び家具由来物質体43を大きさごとに回収可能に、複数段の回収部272,273,274が重ねられた多重構造を有している。
【0067】
第1回収筐体271は、排気口217を介して第1模擬室内空間S1から排出される空気が流れる排気経路部2521の下方且つ第1模擬床材22の下方に配置される筐体である。第1回収筐体271は、第1換気流250によって排気口217から排気経路部2521に導出された物質可視化体4を内部に受け入れる。この第1回収筐体271内には、第1上段回収部272、第1中段回収部273、及び第1下段回収部274が上下方向に重ねられて配置されている。第1回収筐体271内においては、第1上段回収部272が最上方に配置され、第1下段回収部274が最下方に配置され、第1中段回収部273が第1上段回収部272と第1下段回収部274との間に配置されている。
【0068】
第1上段回収部272は、建材由来物質体41の通過を阻止するとともに、壁体由来物質体42及び家具由来物質体43の通過を許容する孔径の上段孔2721を有している。これにより、第1回収筐体271が受け入れた物質可視化体4のうち、壁体由来物質体42及び家具由来物質体43は上段孔2721を通過して第1中段回収部273に導入されるとともに、建材由来物質体41は第1上段回収部272に回収される。
【0069】
第1中段回収部273は、壁体由来物質体42の通過を阻止するとともに、家具由来物質体43の通過を許容する孔径の中段孔2731を有している。これにより、第1中段回収部273に導入された壁体由来物質体42及び家具由来物質体43のうち、家具由来物質体43は中段孔2731を通過して第1下段回収部274に導入されるとともに、壁体由来物質体42は第1中段回収部273に回収される。
【0070】
第1上段回収部272の上段孔2721と第1中段回収部273の中段孔2731とを比較すると、上方に配置された第1上段回収部272の上段孔2721の孔径が、第1中段回収部273の中段孔2731の孔径よりも大きい。
【0071】
第1下段回収部274は、中段孔2731を通過して導入された家具由来物質体43を回収する。最下段の第1下段回収部274には孔が形成されていない。
【0072】
一方、第2建物模型3において、第2回収部37は、第2換気流350によって第2模擬室内空間S2内を第2模擬床材32の上面に沿って移動して排気口317から導出される物質可視化体4を、建材由来物質体41、壁体由来物質体42、及び家具由来物質体43ごとに区分けして回収するものである。なお、第2模型本体31において排気口317は、第2模擬床材32の上面に沿って移動する物質可視化体4を受入可能な位置に設けられている。第2回収部37は、第2模擬室内空間S2の外側において第2模擬床材32の上面よりも下方の位置に配置される。
【0073】
第2回収部37は、第2回収筐体371と、第2上段回収部372と、第2中段回収部373と、第2下段回収部374とを有している。すなわち、第2回収部37は、建材由来物質体41、壁体由来物質体42、及び家具由来物質体43を大きさごとに回収可能に、複数段の回収部372,373,374が重ねられた多重構造を有している。第2回収部37における複数段の回収部372,373,374は、上記の第1回収部27における複数段の回収部272,273,274と同様に構成されているので、詳細な説明については省略する。
【0074】
第1建物模型2が第1回収部27を含むとともに、第2建物模型3が第2回収部37を含んだ構成では、第1換気流250によって第1模擬室内空間S1内を移動する物質可視化体4、並びに、第2換気流350によって第2模擬室内空間S2内を移動する物質可視化体4を、第1回収部27及び第2回収部37を用いて、建材由来物質体41、壁体由来物質体42、及び家具由来物質体43ごとに区分けして回収することができる。このため、第1模擬室内空間S1及び第2模擬室内空間S2内の移動後の物質可視化体4を所定位置に戻す作業を効率よく行うことができる。
【0075】
なお、物質可視化体4が第1換気流250によって移動可能であり、第2換気流350によっては移動しないように構成されている場合には、第2回収部37の設置を省略しても構わない。
【0076】
次に、建物の室内空間における化学物質の濃度の低減の仕組みを展示装置1を用いて見学者に解説するときの手順を説明する。
【0077】
まず、第1建物模型2の第1模擬室内空間S1と第2建物模型3の第2模擬室内空間S2との所定位置に、第1模擬室内空間S1と第2模擬室内空間S2との間の化学物質の濃度差に応じた配置数で、物質可視化体4を配置する。この際、第1模擬室内空間S1が第2模擬室内空間S2よりも化学物質の濃度が低いので、第1模擬室内空間S1への物質可視化体4の配置数が第2模擬室内空間S2への物質可視化体4の配置数よりも少なくされる。建材由来物質体41は、第1模擬室内空間S1において第1模擬床材22上に配置されるとともに、第2模擬室内空間S2において第2模擬床材32上に配置される。壁体由来物質体42は、一対の第1模擬壁構造体211a,211bのうちの一方の第1模擬壁構造体211aの内部に配置されるとともに、一対の第2模擬壁構造体311a,311bのうちの一方の第2模擬壁構造体311aの内部に配置される。家具由来物質体43は、第1模擬室内空間S1において第1模擬家具24上に配置されるとともに、第2模擬室内空間S2において第2模擬家具34上に配置される。
【0078】
物質可視化体4の配置が完了すると、展示装置1を用いた見学者に対する解説が開始される。この際、化学物質の放散量が少ない第1模擬床材22を含み、且つ化学物質の吸着量が多い第1模擬壁材23を含む第1建物模型2の第1模擬室内空間S1における化学物質の第1濃度が、第2建物模型3の第2模擬室内空間S2における化学物質の第2濃度よりも低いことを、見学者に説明する。そして、第1模擬室内空間S1と第2模擬室内空間S2との間の物質可視化体4の配置数の差に基づいて、建物の建設の際に用いられる建材における化学物質の放散量及び吸着量が、室内空間における化学物質の濃度と関係していることを、視覚的に見学者に認識させる。
【0079】
次に、第1建物模型2においては第1蓋体2161により第1物質導出口216を開放させる。これにより、第1模擬壁構造体211aの内部に配置されていた壁体由来物質体42が第1物質導出口216を介して第1模擬室内空間S1内に導出される。一方、第2建物模型3においては第2蓋体3161により第2物質導出口316を開放させる。これにより、第2模擬壁構造体311aの内部に配置されていた壁体由来物質体42が第2物質導出口316を介して第2模擬室内空間S2内に導出される。このような、第1模擬室内空間S1及び第2模擬室内空間S2への壁体由来物質体42の導出によって、実際の建物における壁構造体の内部から化学物質が放散されることを、見学者に認識させることができる。
【0080】
次に、第1建物模型2においては、排気開閉部2172により排気口217を開放させた状態で、第1換気機構25の給気ファン251及び第1排気ファン252を作動させる。これにより、給気ファン251が設けられた第1模擬壁構造体211aの前側上端付近から排気口217に向かって流れる第1換気流250が第1模擬室内空間S1内に生じるため、当該第1換気流250によって第1模擬室内空間S1内が換気される。一方、第2建物模型3においては、排気開閉部3172により排気口317を開放させた状態で、第2換気機構35の換気窓351を開放させて第2排気ファン352を作動させる。これにより、換気窓351が設けられた第2模擬壁構造体311aの前側上端付近から排気口317に向かって流れる第2換気流350が第2模擬室内空間S2内に生じるため、当該第2換気流350によって第2模擬室内空間S2内が換気される。
【0081】
第1模擬室内空間S1における第1換気流250と第2模擬室内空間S2における第2換気流350との間の換気流の強さの違いについては、第1換気可視化部26と第2換気可視化部36とによって可視化される。これにより、第1換気機構25と第2換気機構35との間の換気構造の違いが換気流の強さと関係していることを視覚的に見学者に認識させることができるとともに、当該換気流の強さが室内空間における化学物質の濃度と関係していることについても見学者に認識させることができる。
【0082】
また、第1模擬室内空間S1に配置された物質可視化体4が第1換気流250によって移動される一方、第2模擬室内空間S2に配置された物質可視化体4は第2換気流350によって移動される。この際、第1換気流250の強さが第2換気流350の強さよりも大きいので、第1模擬室内空間S1内における物質可視化体4の移動速度が、第2模擬室内空間S2内における物質可視化体4の移動速度よりも高速となる。このような物質可視化体4の移動速度の違いを視覚的に見学者に認識させることが可能であるので、第1換気機構25と第2換気機構35との間の換気構造の違いに応じて室内空間からの化学物質の排出速度に違いが生じることを、視覚的に見学者に認識させることができる。
【0083】
第1換気流250によって第1模擬室内空間S1内を移動する物質可視化体4は、排気口217から排気経路部2521に導出されて、建材由来物質体41、壁体由来物質体42、及び家具由来物質体43ごとに区分けして第1回収部27に回収される。一方、第2換気流350によって第2模擬室内空間S2内を移動する物質可視化体4は、排気口317から排気経路部3521に導出されて、建材由来物質体41、壁体由来物質体42、及び家具由来物質体43ごとに区分けして第2回収部37に回収される。
【0084】
次に、第1建物模型2においては天壁部215の回動に応じて第1模擬室内空間S1を開放させ、第2建物模型3においては天壁部315の回動に応じて第2模擬室内空間S2を開放させる。これにより、見学者は、第1模擬室内空間S1及び第2模擬室内空間S2の各空間における化学物質由来の臭いを容易に嗅ぐことができる。この際、第1模擬室内空間S1と第2模擬室内空間S2との間の化学物質の濃度差に応じて化学物質由来の臭いの差が生じるため、当該臭いの差に基づいて、建物の建設の際に用いられる建材における化学物質の放散量及び吸着量が、室内空間における化学物質の濃度と関係していることを、嗅覚的に見学者に認識させることができる。
【0085】
以上のように、展示装置1を用いることにより、当該展示装置1の見学者に、建物の室内空間における化学物質の濃度の低減の仕組みを、嗅覚的のみならず視覚的にも認識させることが可能となる。
【0086】
化学物質の濃度の低減の仕組みについての見学者に対する解説が終了すると、第1回収部27に回収された物質可視化体4を第1建物模型2における所定位置に戻す作業が行われる。同様に、第2回収部37に回収された物質可視化体4を第2建物模型3における所定位置に戻す作業が行われる。この際、第1回収部27及び第2回収部37においては、建材由来物質体41、壁体由来物質体42、及び家具由来物質体43ごとに区分けして物質可視化体4が回収されているので、物質可視化体4を所定位置に戻す作業を効率よく行うことができる。
【0087】
また、例えば、経時変化などに起因して第1模擬室内空間S1における化学物質の濃度が変化した場合には、第1模擬床材22及び第1模擬壁材23の各支持部2131,2141に対する着脱によって、第1模擬床材22及び第1模擬壁材23の交換が可能である。同様に、経時変化などに起因して第2模擬室内空間S2における化学物質の濃度が変化した場合には、第2模擬床材32及び第2模擬壁材33の各支持部3131,3141に対する着脱によって、第2模擬床材32及び第2模擬壁材33の交換が可能である。
【符号の説明】
【0088】
1 展示装置
2 第1建物模型
21 第1模型本体
211a,211b 第1模擬壁構造体
2131 第1壁材支持部
2141 第1床材支持部
22 第1模擬床材(第1放散量規定材)
23 第1模擬壁材(第1吸着量規定材)
25 第1換気機構
26 第1換気可視化部
27 第1回収部
3 第2建物模型
31 第2模型本体
311a,311b 第2模擬壁構造体
3131 第2壁材支持部
3141 第2床材支持部
32 第2模擬床材(第2放散量規定材)
33 第2模擬壁材(第2吸着量規定材)
35 第2換気機構
36 第2換気可視化部
37 第2回収部
4 物質可視化体
S1 第1模擬室内空間
S2 第2模擬室内空間
図1
図2
図3
図4
図5