(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114678
(43)【公開日】2022-08-08
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20220801BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
B41J2/165 203
B41J2/01 207
B41J2/01 401
B41J2/165 207
B41J2/165 211
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021011064
(22)【出願日】2021-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 善一郎
(72)【発明者】
【氏名】洞出 賢太
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼▲崎▼ 啓典
(72)【発明者】
【氏名】上田 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】新藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】洞田 竜児
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA25
2C056EB07
2C056EB23
2C056EB29
2C056EB30
2C056EB38
2C056EB39
2C056EB40
2C056EB49
2C056EB59
2C056EC22
2C056EC24
2C056EC54
2C056EC57
2C056FA10
2C056KC02
(57)【要約】
【課題】液体吐出装置において無駄な液体の排出を極力抑える。
【解決手段】プリンタでは、待機時において所定時刻となったときに、検査用駆動を行わせる(S201,S202:YES)。検査用駆動時に出力された判定用信号が、異常ノズルが存在していることを示しているときに(S205:YES)、異常ノズルが存在することを示すフラグ情報を記憶させる(S206)。また、回復動作のうちの一部であるフラッシングを行わせる(S208)。そして、その後、プリンタの電源がオンになったときに、フラグ情報が記憶されている場合に、回復動作のうち上記一部を除いた部分である吸引パージを行わせる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、
前記ノズルが液体の吐出に異常のある異常ノズルであるか否かを確認するための検査用駆動を前記液体吐出ヘッドに行わせた際に、前記ノズルが前記異常ノズルであるか否かを示す判定用信号を出力する信号出力部と、
前記ノズルから液体を排出させる回復動作を行う回復手段と、
記憶部と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
第1信号を受信したときに、前記検査用駆動を行わせ、前記信号出力部から送信された前記判定用信号が、前記異常ノズルが存在することを示している場合に、前記回復動作を行わせる必要があることを示すフラグ情報を前記記憶部に記憶させ、
前記第1信号とは別の第2信号を受信したときに、前記記憶部に前記フラグ情報が記憶されている場合には、前記回復手段に前記回復動作を行わせることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記回復手段は、複数種類の前記回復動作のいずれかを選択的に行い、
前記制御装置は、
前記検査用駆動時に前記信号出力部から送信された前記判定用信号が、前記異常ノズルが存在することを示している場合に、前記記憶部に、前記フラグ情報を記憶させるとともに、当該判定用信号に基づいて前記回復動作の種類を示す種類情報を記憶させ、
前記第2信号を受信したときに、前記記憶部に前記フラグ情報が記憶されている場合には、前記回復手段に前記種類情報が示す前記回復動作を行わせることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記検査用駆動時に前記信号出力部から送信された前記判定用信号が、前記異常ノズルが存在することを示している場合に、前記記憶部に前記フラグ情報を記憶させるとともに、前記回復手段に前記回復動作のうちの一部を行わせ、
前記第2信号を受信したときに、前記記憶部に前記フラグ情報が記憶されている場合には、前記回復手段に前記回復動作のうち前記一部を除いた残りの部分を行わせることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記回復手段は、
前記液体吐出ヘッドを含み、
前記液体吐出ヘッドと接続可能なポンプを有し、
前記制御装置は、
前記回復動作のうち前記一部として、前記液体吐出ヘッドに前記ノズルから液体を排出させるフラッシングを行わせ、
前記回復動作うち前記残りの部分として、前記ポンプを駆動させて、前記ノズルから前記液体吐出ヘッド内の液体を排出させるパージを行わせることを特徴とする請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記第2信号は、前記液体吐ヘッドに前記複数のノズルから被吐出媒体に向けて液体を吐出させることを指示する吐出指示信号であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記第2信号は、前記第1信号を受信した後に初めて受信する前記吐出指示信号であることを特徴とする請求項5に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記第2信号は、電源がオンにされたことを示す電源オン信号であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項8】
時刻を示す時刻信号を出力する時計部、を備え、
前記第1信号が、所定時刻であることを示す前記時刻信号であることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記第1信号が、電源がオンにされたことを示す電源オン信号であることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記制御装置は、
最後に前記検査用駆動を行わせてからの、液体吐出ヘッドによって液体が吐出された被吐出媒体の数が所定数に達した後に、再度、前記検査用駆動を行わせることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項11】
前記制御装置は、
前記液体吐出ヘッドに前記複数のノズルから複数の被吐出媒体の各々に向けて順に液体を吐出させている途中で、最後に前記検査用駆動を行わせてからの、液体吐出ヘッドによって液体が吐出された被吐出媒体の数が前記所定数に達した場合には、複数の被吐出媒体への液体の吐出が完了した後に、前記検査用駆動を行わせることを特徴とする請求項10に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
温度を示す温度信号を出力する温度信号出力部、を備え、
前記制御装置は、
前記温度信号が示す温度が第1温度範囲内の温度である状態で、前記検査用駆動を行わせた後、前記温度信号が示す温度が前記第1温度範囲内の温度から、前記第1温度範囲とは別の第2温度範囲内の温度に切り換わったときに、再度、前記検査用駆動を行わせることを特徴とする請求項1~11のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項13】
時刻を示す時刻信号を出力する時計部、を備え、
前記制御装置は、
前記第1信号として、前記時計部から送信される所定時刻であることを示す前記時刻信号を受信したときに、前記検査用駆動を行わせるための検査処理を実行し、
電源がオンにされたときに、電源がオンにされる前の最後の前記所定時刻において前記検査用駆動が行われていない場合には、前記検査処理を実行することを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項14】
時刻を示す時刻信号を出力する時計部、を備え、
前記制御装置は、
前記第1信号として、前記時計部から送信される所定時刻であることを示す前記時刻信号を受信したときに、前記検査用駆動を行わせるための検査処理を実行し、
前記第2信号として、前記液体吐ヘッドに前記複数のノズルから被吐出媒体に向けて液体を吐出させることを指示する吐出指示信号を受信したときに、前記吐出指示信号を受信する前の最後の前記所定時刻において前記検査用駆動が行われていない場合には、前記検査処理を実行することを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を吐出する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルから液体を吐出する液体吐出装置の一例として、特許文献1には、ノズルからインクを吐出して用紙に記録を行うプリンタが記載されている。特許文献1のプリンタでは、予め設定された所定時刻となったとき等に、ポンプを駆動して圧力を加えることでヘッドからインクを強制的に排出させるパージを含むメンテナンス動作を行わせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のプリンタでは、上述したように、予め設定された所定時刻となったときにメンテナンス動作を行わせている。しかしながら、上記所定時刻となった後、プリンタにおいて用紙への記録が行われるまでの期間が長いと、この期間にヘッド内のインクが増粘してしまい、用紙への記録の直前に再度メンテナンス動作を行わせる必要があることがある。そして、この場合には、結果として、上記所定時刻となったときに行わせるメンテナンス動作によるインクの排出が無駄なものとなってしまう。
【0005】
本発明の目的は、無駄な液体の排出を極力抑えることが可能な液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液体吐出装置は、液体を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、前記ノズルが液体の吐出に異常のある異常ノズルであるか否かを確認するための検査用駆動を前記液体吐出ヘッドに行わせた際の判定用信号を出力する信号出力部と、前記ノズルから液体を排出させる回復動作を行う回復手段と、記憶部と、制御装置と、を備え、前記制御装置は、第1信号を受信したときに、前記検査用駆動を行わせ、前記信号出力部から送信された前記判定用信号が、前記異常ノズルが存在することを示している場合に、前記回復動作を行わせる必要があることを示すフラグ情報を前記記憶部に記憶させ、前記第1信号とは別の第2信号を受信したときに、前記記憶部に前記フラグ情報が記憶されている場合には、前記回復手段に前記回復動作を行わせる。
【発明の効果】
【0007】
第1信号を受信したときに、検査用駆動を行わせ、判定用信号が、異常ノズルが存在することを示している場合に、本発明と異なり、直ちに回復動作を行わせると、第1信号を受信してから第2信号を受信するまでの期間が長い場合に、この期間に液体吐出ヘッド内の液体が増粘してしまう虞がある。そして、この場合、第2信号を受信したときに、改めて回復動作を行わせる必要があり、結果として、第1信号を受信したときに行わせた回復動作による液体の排出が無駄なものとなってしまう。
【0008】
本発明では、第1信号を受信したときに、検査用駆動を行わせ、判定用信号が、異常ノズルが存在することを示している場合に、フラグ情報を記憶させる。そして、第2信号を受信したときに、フラグ情報が記憶されている場合に回復動作を行わせる。これにより、第1信号を受信してから第2信号を受信するまでの期間が長い場合でも、上述したような、無駄な液体の排出が行われることがない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係るプリンタの概略構成図である。
【
図2】キャップ内に配置された検出用電極、及び、検出用電極と高電圧電源回路及び判定回路との接続関係を説明するための図である。
【
図3】(a)はノズルからインクが吐出された場合の検出用電極の電圧値の変化を示す図であり、(b)はノズルからインクが吐出されなかった場合の検出用電極の電圧値の変化を示す図である。
【
図4】プリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【
図5】(a)は少なくとも制御装置及び時計部に電源供給されている状態での処理の流れを示すフローチャートであり、(b)は記憶されている温度範囲の情報を説明するための図である。
【
図6】
図5(a)の処理Aの流れを示すフローチャートである。
【
図7】
図5(a)の処理Bの流れを示すフローチャートである。
【
図8】記録時の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】変形例1の
図5(a)に対応するフローチャートである。
【
図10】変形例2の
図5(a)に対応するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0011】
<プリンタの全体構成>
図1に示すように、本実施形態に係るプリンタ1(本発明の「液体吐出装置」)は、キャリッジ2、サブタンク3、インクジェットヘッド4(本発明の「液体吐出ヘッド」)、プラテン5、搬送ローラ6,7、メンテナンスユニット8などを備えている。
【0012】
キャリッジ2は、走査方向に延びた2本のガイドレール11,12に支持されている。キャリッジ2は、図示しないベルトなどを介してキャリッジモータ86(
図4参照)に接続されており、キャリッジモータ86を駆動させると、キャリッジ2がガイドレール11,12に沿って走査方向に移動する。なお、以下では、
図1に示すように、走査方向の右側及び左側を定義して説明を行う。
【0013】
サブタンク3は、キャリッジ2に搭載されている。ここで、プリンタ1は、カートリッジホルダ13を備えており、カートリッジホルダ13に4つのインクカートリッジ14が取り外し可能に装着されている。4つのインクカートリッジ14は、走査方向に並んでおり、走査方向の右側に配置されたものから、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインク(本発明の「液体」)を貯留している。サブタンク3は、4本のチューブ15を介してカートリッジホルダ13に装着された4つのインクカートリッジ14と接続されている。これにより、4つのインクカートリッジ14からサブタンク3に上記4色のインクが供給される。
【0014】
インクジェットヘッド4は、キャリッジ2に搭載され、サブタンク3の下端部に接続されている。インクジェットヘッド4には、サブタンク3から上記4色のインクが供給される。また、インクジェットヘッド4は、その下面であるノズル面4aに形成された複数のノズル10からインクを吐出する。より詳細に説明すると、複数のノズル10は、走査方向と直交する搬送方向に配列されることによってノズル列9を形成しており、ノズル面4aにおいて、4列のノズル列9が走査方向に並んでいる。複数のノズル10からは、走査方向の右側のノズル列9を構成するものから、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが吐出される。
【0015】
プラテン5は、インクジェットヘッド4の下方に配置され、複数のノズル10と対向している。プラテン5は、走査方向に記録用紙P(本発明の「被吐出媒体」)の全長にわたって延び、記録用紙Pを下方から支持する。搬送ローラ6は、インクジェットヘッド4及びプラテン5よりも搬送方向の上流側に配置されている。搬送ローラ7は、インクジェットヘッド4及びプラテン5よりも搬送方向の下流側に配置されている。搬送ローラ6,7は、図示しないギヤなどを介して搬送モータ87(
図4参照)に接続されている。搬送モータ87を駆動させると、搬送ローラ6,7が回転し、記録用紙Pが搬送方向に搬送される。
【0016】
メンテナンスユニット8は、キャップ71と、吸引ポンプ72と、廃液タンク73とを備えている。キャップ71は、プラテン5よりも走査方向の右側に配置されている。そして、キャリッジ2を、プラテン5よりも走査方向の右側のメンテナンス位置に位置させると、複数のノズル10がキャップ71と対向する。
【0017】
また、キャップ71は、キャップ昇降機構88(
図4参照)によって昇降可能となっている。そして、キャリッジ2を上記メンテナンス位置に位置させることによって複数のノズル10とキャップ71とを対向させた状態で、キャップ昇降機構88によりキャップ71を上昇させると、キャップ71の上端部がノズル面4aに密着し、複数のノズル10がキャップ71に覆われる。なお、キャップ71はノズル面4aに密着することで複数のノズル10を覆うものであることには限られない。キャップ71は、例えば、インクジェットヘッド4のノズル面4aの周囲に配置される図示しないフレーム等に密着することで、複数のノズル10を覆うものであってもよい。
【0018】
吸引ポンプ72はチューブポンプなどであり、キャップ71及び廃液タンク73と接続されている。そして、メンテナンスユニット8では、上述したように複数のノズル10がキャップ71によって覆われた状態で吸引ポンプ72を駆動させると、複数のノズル10からインクジェットヘッド4内のインクを排出させる、いわゆる吸引パージを行うことができる。吸引パージによって排出されたインクは廃液タンク73に貯留される。
【0019】
また、本実施形態では、インクの排出量の異なる複数種類の吸引パージのいずれかを選択的に行わせることができる。複数種類の吸引パージ間では、例えば、吸引ポンプ72の駆動時間及び吸引ポンプ72の回転速度の少なくとも一方が異なっていることにより、インクの排出量が異なる。
【0020】
なお、ここでは、便宜上、キャップ71が全てのノズル10をまとめて覆い、吸引パージにおいて、全てのノズル10からインクジェットヘッド4内のインクを排出させるものとして説明を行ったが、これには限られない。例えば、キャップ71が、ブラックインクを吐出する最も右側のノズル列9を構成する複数のノズル10を覆う部分と、カラーインク(イエロー、シアン、マゼンタのインク)を吐出する左側3列のノズル列9を構成する複数のノズル10を覆う部分とを別々に備えており、吸引パージにおいて、インクジェットヘッド4内のブラックインク及びカラーインクのいずれかを選択的に排出させることができるようになっていてもよい。あるいは、例えば、キャップ71が、ノズル列9毎に個別に設けられ、吸引パージにおいて、ノズル列9毎に個別に、ノズル10からインクを排出させることができるようになっていてもよい。
【0021】
また、
図2に示すように、キャップ71内には、矩形の平面形状を有する検出用電極76が配置されている。検出用電極76は、抵抗79を介して高電圧電源回路77に接続されている。そして、検出用電極76には、後述する判定用駆動の際に、高電圧電源回路77により所定の正の電位(例えば600V程度)が付与される。一方で、インクジェットヘッド4は、グランド電位に保持されている。これにより、インクジェットヘッド4と検出用電極76との間に所定の電位差が生じる。検出用電極76には、判定回路78が接続されている。判定回路78は、検出用電極76から出力された信号の電位と、閾値Vtとを比較し、その結果に応じた信号を出力する。
【0022】
より詳細に説明すると、インクジェットヘッド4と、検出用電極76との間には電位差が生じているため、ノズル10から吐出されたインクは帯電している。キャリッジ2を上記メンテンナンス位置に位置させた状態で、ノズル10から検出用電極76に向けてインクを吐出させると、
図3(a)に示すように、帯電したインクが検出用電極76に近づき、検出用電極76にインクが着弾するまで、検出用電極76の電位が、インクジェットヘッド4が駆動されていないときの電位Vaから低下し、電位Vaよりも低い電位Vbに達する。そして、帯電したインクが検出用電極76に着弾した後、検出用電極76の電位が徐々に上昇して電位Vaに戻る。すなわち、インクジェットヘッド4の駆動期間Tdにおいて、検出用電極76の電位が変化する。
【0023】
一方で、ノズル10からインクが吐出されていない場合には、
図3(b)に示すように、インクジェットヘッド4の駆動期間Tdにおいて、検出用電極76の電位は、電位Vaからほとんど変化しない。そこで、判定回路78は、これらを区別するために閾値Vt(Va<Vt<Vb)が設定されている。そして、判定回路78は、インクジェットヘッド4の駆動期間Tdにおいて、検出用電極76から出力される電圧信号の最大の電位と閾値Vtとを比較し、その判定結果に応じた判定用信号を出力する。なお、本実施形態では、検出用電極76と、高電圧電源回路77と抵抗79と判定回路78とを合わせたものが、本発明の「信号出力部」に相当する。そして、この信号出力部は、ノズル10が、インクが吐出されない異常ノズルであるか否かに応じた判定用信号を出力する。
【0024】
また、ここでは、高電圧電源回路77により、検出用電極76に正の電位が付与されているが、高電圧電源回路77により、検出用電極76に負の電位(例えば-600V程度)が付与されていてもよい。この場合には、上述したのとは逆に、キャリッジ2を上記メンテンナンス位置に位置させた状態で、ノズル10から検出用電極76に向けてインクを吐出させると、帯電したインクが検出用電極76に近づき、検出用電極76にインクが着弾するまで、検出用電極76の電位が電位Vaから上昇し、検出用電極76にインクが着弾した後、検出用電極76の電位が徐々に低下して電位Vaに戻る。
【0025】
<プリンタの電気的構成>
次に、プリンタ1の電気的構成について説明する。
図4に示すように、プリンタ1は、制御装置80を備えている。制御装置80は、CPU(Central Processing Unit)81、ROM(Read Only Memory)82、RAM(Random Access Memory)83、フラッシュメモリ84、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)85などからなる。制御装置80は、キャリッジモータ86、インクジェットヘッド4、搬送モータ87、キャップ昇降機構88、吸引ポンプ72、高電圧電源回路77、ドライバIC89等の動作を制御する。なお、本実施形態では、制御装置80は、ドライバIC89を制御することによって、インクジェットヘッド4を制御している。また、制御装置80には、判定回路78から判定用信号が入力される。
【0026】
また、プリンタ1は、以上で説明した構成のほかに、表示部69と操作部70と時計部68と温度センサ67とバッテリー66とを備えている。表示部69は、例えば、プリンタ1の筐体に設けられた液晶ディスプレイなどである。制御装置80は、表示部69を制御して、プリンタ1の動作に必要な情報等を表示する。操作部70は、例えば、プリンタ1の筐体に設け設けられたボタン、表示部69に設けられたタッチパネルなどである。ユーザが操作部70を操作することによって、制御装置80に対する信号の入力を行うことができる。
【0027】
また、本実施形態では、操作部70が、図示しない電源スイッチを含んでいる。そして、ユーザが電源スイッチを操作することにより、プリンタ1の電源のオンとオフとを切り換えることができる。また、ユーザが操作部70の電源スイッチを操作してプリンタ1の電源をオンにしたときには、操作部70から、プリンタ1の電源がオンになったことを示す電源オン信号(本発明の「第2信号」)が出力され、制御装置80が、この電源オン信号を受信する。
【0028】
時計部68は時刻を計時しており、制御装置80は、時計部68から時刻を示す時刻信号(本発明の「第1信号」)を受信する。温度センサ67は、例えば、インクジェットヘッド4の温度を検出する。制御装置80は、温度センサ67から温度を示す温度信号を受信する。
【0029】
バッテリー66は、少なくとも制御装置80及び時計部68と接続されている。プリンタ1には、図示しないコンセントから電源供給が行われ、このときバッテリー66が充電される。プリンタ1においてコンセントが抜かれた状態では、バッテリー66から少なくとも制御装置80及び時計部68に電力供給が行われる。
【0030】
なお、制御装置80は、CPU81のみが各種処理を行うものであってもよいし、ASIC85のみが各種処理を行うものであってもよいし、CPU81とASIC85とが協働して各種処理を行うものであってもよい。また、制御装置80は、1つのCPU81が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のCPU81が処理を分担して行うものであってもよい。また、制御装置80は、1つのASIC85が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のASIC85が処理を分担して行うものであってもよい。
【0031】
<待機時の制御>
次に、プリンタ1において、記録用紙Pへの記録などが行われていない待機時の制御装置80による制御について説明する。プリンタ1では、上記待機時に、制御装置80が
図5(a)のフローに沿って処理を行う。ここで、
図5(a)のフローは、例えば、プリンタ1において最初にコンセントが挿されてプリンタ1への電力供給が開始され、これ以降、コンセントあるいはバッテリー66から、制御装置80及び時計部68への電力供給が行われている間継続される。
【0032】
図5(a)のフローについてより詳細に説明すると、制御装置80は、時計部68から受信した時刻信号が所定時刻であることを示しておらず(S101:NO)、温度センサ67から受信した温度信号が示す温度を含む温度範囲が、最後に後述する検査用駆動が行われたときに温度センサ67から受信した温度信号が示す温度を含む温度範囲と同じ度範囲となっており(S102:NO)、電源オン信号を受信していない間は(S103:NO)、待機している。
【0033】
ここで、フラッシュメモリ84には、例えば、
図5(b)に示すような、温度範囲1~4の情報が記憶されている。
図5(b)のT1,T2,T3は、T1<T2<T3の大小関係にある。また、制御装置80は、後述する検査用駆動を行わせたときに温度センサ67から受信した温度信号が示す温度Tの情報をフラッシュメモリ84に記憶させている。制御装置80は、温度センサ67から受信した温度信号が示す温度Tと、フラッシュメモリ84に記憶されている
図5(b)の温度範囲の情報と、検査用駆動時に記憶させた温度Tとに基づいて、S102の判定を行う。
【0034】
なお、本実施形態では、
図5(b)に示す温度範囲のうち、後述する検査用駆動を行わせたときに温度センサ67から受信した温度信号が示す温度Tを含む温度範囲が、本発明の「第1温度範囲」に相当する。また、本実施形態では、その後、温度センサ67から受信した温度信号が示す温度Tが、上記第1温度範囲とは別の温度範囲に含まれる温度となったときの当該別の温度範囲が、本発明の「第2温度範囲」に相当する。
【0035】
そして、時計部68から受信した時刻信号が所定時刻であることを示しているときに(S101:YES)、制御装置80は処理Aを実行する(S102)。なお、本実施形態では、所定時刻であることを示す時刻信号が、本発明の「第1信号」に相当する。
【0036】
また、温度センサ67から受信した温度信号が示す温度を含む温度範囲が、最後に後述する検査用駆動が行われたときに温度センサ67から受信した温度信号が示す温度を含む温度範囲と異なる温度範囲となったときにも(S102:YES)、制御装置80は処理Aを実行する(S102)。また、電源オン信号を受信したときに(S103:YES)、制御装置80は、処理Bを実行する(S104)。
【0037】
<処理A>
次に、処理Aについて説明する。
図6に示すように、処理Aでは、制御装置80は、まず、検査処理を実行する(S201)。検査処理では、制御装置80は、インクジェットヘッド4を、複数のノズル10の各々から順にインクを吐出させるように駆動させる検査用駆動を行わせるための駆動信号をドライバIC89に送信する。
【0038】
続いて、制御装置80は、S201の検査処理によって実際に検査用駆動が行われたか否かを判定する(S202)。ここで、検査処理によって実際に検査用駆動が行われる場合とは、例えば、コンセントが挿されていて、コンセントから供給された電力によってインクジェットヘッド4に検査用駆動を行わせることができる場合である。一方、検査処理によって実際に検査用駆動が行われない場合とは、例えば、コンセントが抜かれていて、インクジェットヘッド4に検査用駆動を行わせることができない場合である。
【0039】
検査処理によって実際に検査用駆動が行われなかった場合には(S202:NO)、
図5(a)のフローに戻る。検査処理によって実際に検査用駆動が行われた場合には(S202:YES)、制御装置80は、検査履歴情報を更新する(S203)。より詳細に説明すると、フラッシュメモリ84には、最後に検査用駆動が行われた時刻の情報である検査履歴情報が記憶されている。S203では、制御装置80は、時計部68からの時刻信号に基づいて、フラッシュメモリ84に記憶されている、最後に検査用駆動が行われた時刻の情報を更新する。
【0040】
続いて、制御装置80は、変数Cを0にリセットする(S204)。変数Cは、最後に検査用駆動が行われてからの、記録が行われた記録用紙Pの枚数に対応している。
【0041】
続いて、検査用駆動時に判定回路78から出力された判定用信号が、異常ノズルが存在しないことを示している場合には(S205:NO)、
図5(a)のフローに戻る。一方、検査用駆動時に判定回路78から出力された判定用信号が、異常ノズルが存在することを示している場合には(S205:YES)、制御装置80は、異常ノズルが存在していることを示すフラグ情報をフラッシュメモリ84に記憶させる(S206)。
【0042】
続いて、制御装置80は、行わせる吸引パージの種類を示す種類情報をフラッシュメモリ84に記憶させる(S207)。処理詳細に説明すると、S207では、制御装置80は、検査用駆動時に判定回路78から出力された判定用信号が、異常ノズルであることを示しているノズル10の数が多いときほど、インクの排出量の多い吸引パージの情報を、上記種類情報としてフラッシュメモリ84に記憶させる。
【0043】
続いて、制御装置80はフラッシング処理を実行し(S208)、
図5(a)のフローに戻る。フラッシング処理では、制御装置80は、ドライバIC89を制御して、インクジェットヘッド4に、ノズル10からインクを排出させるフラッシングを行わせる。このとき、制御装置80は、異常ノズルのみからインクを排出させてもよいし、異常ノズルを含むインクジェットヘッド4の全てノズル10からインクを排出させてもよい。
【0044】
<処理B>
次に、処理Bについて説明する。
図7に示すように、処理Bでは、まず、上述の検査履歴情報に基づいて、電源がオンになる前の最後の所定時刻において検査用駆動が行われたか否かを判定する(S301)。
【0045】
電源がオンになる前の最後の所定時刻において検査用駆動が行われている場合(S301:YES)、続いて、制御装置80は、フラッシュメモリ84に上記フラグ情報が記憶されているか否かを判定する(S302)。
【0046】
フラグ情報がフラッシュメモリ84に記憶されていない場合には(S302:NO)、
図5(a)のフローに戻る。フラグ情報がフラッシュメモリ84に記憶されている場合には(S302:YES)、制御装置80は、上記種類情報に基づいて、吸引パージの種類を決定し(S303)、パージ処理を実行する(S304)。S304のパージ処理では、制御装置80は、S303で決定した吸引パージを行わせる。そして、S304のパージ処理の完了後、制御装置80は、フラッシュメモリ84に記憶されているフラグ情報を消去し(S305)、
図5(a)のフローに戻る。
【0047】
電源がオンになる前の最後の所定時刻において検査用駆動が行われていない場合(S301:NO)、続いて、制御装置80は、S201と同様の検査処理を実行し(S306)、S203,S204と同様、検査履歴情報を更新し(S307)、変数Cを0にリセットする(S308)。ここで、処理Bは、電源がオンになったときに行われる処理、すなわち、コンセントから電力供給が行われている状態で行われる処理である。したがって、S306の検査処理を実行したときには、インクジェットヘッド4において検査用駆動が行われる。
【0048】
続いて、制御装置80は、S304の検査処理によって行われた検査用駆動時に判定回路78から出力された判定用信号が、異常ノズルが存在しないことを示している場合には(S309:NO)、
図5(a)のフローに戻る。
【0049】
上記判定用信号が、異常ノズルが存在することを示している場合には(S309:YES)、制御装置80は、続いて、S304の検査処理によって行われた検査用駆動時に判定回路78から出力された判定用信号に基づいて、行わせる吸引パージの種類を決定する(S310)。S310では、制御装置80は、上記判定用信号が、異常ノズルであることを示しているノズル10の数が多いときほど、インクの排出量の多い吸引パージを、行わせる吸引パージに決定する。
【0050】
続いて、制御装置80は、S208と同様のフラッシング処理を実行し(S311)、パージ処理を実行する(S312)。S312のパージ処理では、制御装置80は、S310で決定した吸引パージを行わせる。そして、S312のパージ処理の完了後、
図5(a)のフローに戻る。
【0051】
なお、本実施形態では、フラッシングを行うインクジェットヘッド4、及び、吸引パージを行うメンテナンスユニット8が、本発明の「回復手段」に相当する。また、本実施形態では、フラッシングと吸引パージとを合わせたものが、本発明の「回復動作」に相当し、このうち、フラッシングが本発明の「回復動作のうちの一部」に相当し、吸引パージが本発明の「回復動作のうち一部除いた残りの部分」に相当する。
【0052】
<記録時の制御>
次に、プリンタ1において記録用紙Pに記録を行うときの制御について説明する。プリンタ1では、記録用紙Pに記録を行うことを指示する記録指令(本発明の「吐出指示」)を受信したときに、制御装置80が、
図8のフローに沿って処理を行う。
【0053】
図8のフローについてより詳細に説明すると、制御装置80は、まず、給紙処理を実行する(S401)。給紙処理では、制御装置80は、図示しない給紙機構、及び、搬送モータ87を制御して、給紙機構に記録用紙Pを供給させるとともに、搬送ローラ6,7に、記録用紙Pを、記録用紙Pの最初の記録パスで画像が記録される領域がインクジェットヘッド4の複数のノズル10と対向する位置まで搬送させる。
【0054】
続いて、制御装置80は、記録パス処理を実行する(S402)。記録パス処理では、制御装置80は、キャリッジモータ86を制御してキャリッジ2を走査方向に移動させつつ、ドライバIC89を制御して複数の駆動素子22aを駆動させることによってインクジェットヘッド4に複数のノズル10から記録用紙Pに向けてインクを吐出させる記録パス、を行わせる。
【0055】
続いて、制御装置80は、1枚の記録用紙Pへの記録が完了していない場合には(S403:NO)、搬送処理を実行し(S404)、S402に戻る。搬送処理では、制御装置80は、搬送モータ87を制御して、搬送ローラ6,7に記録用紙Pを所定距離搬送させる。
【0056】
1枚の記録用紙Pへの画像の記録が完了している場合には(S403:YES)、制御装置80は、排紙処理を実行し(S405)、変数Cの値1増加させる(S406)。S405排紙処理では、制御装置80は、搬送モータ87を制御して、搬送ローラ6,7に記録が完了した記録用紙Pを排出させる。
【0057】
そして、次の記録用紙Pに記録を行うための記録データがある場合には(S407:YES)、S401に戻る。上記記録データがない場合(S407:NO)、変数Cの値が所定値Ct未満であれば(S408:NO)、処理を終了する。
【0058】
変数Cの値が所定値Ct以上である場合には(S408:YES)、制御装置80は、S306~S312と同様の、S409~S415の処理を実行し、処理を終了する。
【0059】
<効果>
所定時刻であることを示す時刻信号を受信したときに、検査用駆動を行わせ、当該検査用駆動時に判定回路78から出力される判定用信号が、異常ノズルが存在することを示している場合に、本発明と異なり、直ちに回復動作を行わせる場合を考える。この場合、所定時刻であることを示す時刻信号を受信してから、電源オン信号を受信するまでの期間が長いと、この期間にインクジェットヘッド4内のインクが増粘してしまう虞がある。そして、この場合、電源オン信号を受信したときに、改めて回復動作を行わせる必要があり、結果として、所定時刻であることを示す時刻信号を受信したときに行わせた回復動作によるインクの排出が無駄なものとなってしまう。
【0060】
これに対して、本実施形態では、所定時刻であることを示す時刻信号を受信したときに、検査用駆動を行わせ、当該検査用駆動時に判定回路78から出力される判定用信号が、異常ノズルが存在することを示している場合に、フラグ情報を記憶させる。そして、その後、電源オン信号を受信したときに、フラグ情報が記憶されている場合に回復動作を行わせる。これにより、所定時刻であることを示す時刻信号を受信してから電源オン信号を受信するまでの期間が長い場合でも、上述したような、無駄なインクの排出が行われることがない。
【0061】
また、所定時刻に検査用駆動を行わせる場合には、例えば、ユーザがプリンタ1を使用する可能性の低い夜間などの時間帯が望ましい。ただし、夜間には小さな音でもうるさく感じるため、検査用駆動の直後に回復処理を実行すると騒音となることがある。そのため、検査用駆動の後、すぐに回復処理をせず、ユーザがプリンタ1を使用する際の、電源オン信号を受信したタイミングで回復処理をすることで、上記騒音の問題を解決している。
【0062】
また、本実施形態では、所定時刻であることを示す時刻信号を受信したときに、検査用駆動を行わせ、当該検査用駆動時に判定回路78から出力される判定用信号に基づいて、吸引パージの種類の情報を記憶させておく。そして、その後、電源オン信号を受信したときに、フラグ情報が記憶されている場合に、記憶された吸引パージを行わせる。これにより、異常ノズルの数などに応じて適切な吸引パージを行わせることができる。
【0063】
また、本実施形態では、所定時刻であることを示す時刻信号を受信したときに、検査用駆動を行わせ、当該検査用駆動時に判定回路78から出力される判定用信号が、異常ノズルが存在することを示している場合に、回復動作のうちの一部であるフラッシングを行わせる。そして、その後、電源オン信号を受信したときに、回復動作のうち上記一部を除いた残りの部分である吸引パージを行わせる。これにより、電源オン信号の受信時に行わせる回復動作に必要な時間を短くすることができる。
【0064】
また、上述したように、所定時刻が夜間などの時間帯に設定されていた場合には、小さな音でもユーザが騒音と感じる場合がある。回復動作として吸引ポンプ72を駆動させるパージと、吸引ポンプ72を駆動させないフラッシングとを行わせる場合、吸引ポンプ72を駆動させるパージの方が、吸引ポンプ72を駆動させないフラッシングよりも音が大きい。そこで、フラッシングだけを所定時刻(検査用駆動の直後)に行わせる。これにより、ユーザが騒音を感じにくい。
【0065】
また、本実施形態では、所定時刻となったときに検査用駆動を行わせるので、例えば、ユーザがプリンタ1を使用する頻度が低い時刻に検査用駆動を行わせることができる。ユーザがプリンタ1を使用する頻度が低い時刻は、例えば、夜間、昼の休憩時間、早朝などである。またユーザが使用サイクルに応じて所定時刻を設定してもよい。
【0066】
また、多数の記録用紙Pへの記録を行うと、記録用紙Pから発生した紙粉が、ノズル10内に溜まり、異常ノズルとなってしまうことがある。そこで、本実施形態では、最後に検査用駆動を行わせてからの、インクジェットヘッド4によって記録を行った記録用紙Pの枚数が所定枚数に達したときに(C≧Ctとなったときに)、再度、検査用駆動を行わせる。これにより、異常ノズルを正確に把握することができる。
【0067】
また、本実施形態では、複数枚の記録用紙Pへの記録を行っている途中で、インクジェットヘッド4によって記録を行った記録用紙Pの枚数が所定枚数に達したときに、これら複数枚の記録用紙Pへの記録が全て完了してから、再度の検査用駆動を行わせる。これにより、複数枚の記録用紙Pへの記録の途中で、インクジェットヘッド4によって記録を行った記録用紙Pの枚数が所定枚数に達した場合でも、記録が中断されないようにすることができる。
【0068】
また、インクジェットヘッド4の温度が大きく変化したときには、ノズル10内のインクの粘度が変わって、異常ノズルであるか否かの状態が変わることがある。そこで、本実施形態では、温度センサ67から受信した温度信号が示す温度を含む温度範囲が、最後に検査用駆動が行われたときに温度センサ67から受信した温度信号が示す温度を含む温度範囲と異なる温度範囲となったときに、再度検査用駆動を行わせる。これにより、異常ノズルを正確に把握することができる。
【0069】
また、所定時刻となったときに、プリンタ1のコンセントが抜かれていた場合、バッテリー66から制御装置80へ電力供給が行われている場合には、検査処理が実行されるが、検査用駆動は行われない。さらに、バッテリー66がバッテリー切れの状態となっている場合には、所定時刻となっても、検査処理が実行されず、当然、検査用駆動も行われない。
【0070】
そこで、本実施形態では、電源オン信号を受信したときに、電源オン信号を受信する前の最後の所定時刻に検査用駆動が行われていない場合に、検査用駆動を行わせる。これにより、異常ノズルを把握して、必要な回復動作を行わせることができる。
【0071】
<変形例>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態には限られず、特許請求の範囲に記載の限りにおいて様々な変更が可能である。
【0072】
上述の実施形態では、待機時において、電源オン信号を受信したときに、制御装置80が処理Bを実行するようになっていたが、これには限られない。
【0073】
変形例1では、
図9に示すように、制御装置80は、時計部68から受信した時刻信号が所定時刻であることを示しておらず(S101:NO)、温度センサ67から受信した温度信号が示す温度を含む温度範囲が、最後に後述する検査用駆動が行われたときに温度センサ67から受信した温度信号が示す温度を含む温度範囲と同じ度範囲となっており(S102:NO)、記録指令を受信していない間は(S501:NO)、待機している。
【0074】
そして、上述の実施形態と同様、時計部68から受信した時刻信号が所定時刻であることを示しているときに(S101:YES)、及び、温度センサ67から受信した温度信号が示す温度を含む温度範囲が、最後に後述する検査用駆動が行われたときに温度センサ67から受信した温度信号が示す温度を含む温度範囲と異なる温度範囲となったときに(S102:YES)、制御装置80は処理Aを実行する(S104)。
【0075】
一方、記録指令を受信したときには(S501:YES)、受信した記録指令が、所定時刻であることを示す時刻信号の受信によって検査処理を含む処理Aが実行された後、最初に受信した記録指令である場合には(S502:YES)、上述の実施形態と同様の処理Bを実行してから(S105)、記録処理を実行する(S503)。また、受信した記録指令が、所定時刻であることを示す時刻信号の受信によって検査処理を含む処理Aが実行された後、最初に受信した記録指令でない場合には(S502:NO)、処理Bを実行せずに記録処理を実行する(S503)。S503の記録処理は、上述の実施形態のS401~S415と同様の処理である。
【0076】
なお、変形例1では、上述の実施形態と同様、所定時刻であることを示す時刻信号が、本発明の「第1信号」に相当する。また、変形例1では、所定時刻であることを示す時刻信号の受信によって検査処理を含む処理Aが実行された後、最初に受信した記録指令が、本発明の「第2信号」に相当する。
【0077】
変形例1では、記録用紙Pへの記録の直前に吸引パージを行わせるため、所定時刻であることを示す時刻信号の受信から、記録指令の受信までの期間が長い場合でも、インクを無駄に排出させてしまうことがない。
【0078】
また、所定時刻となったときに、プリンタ1のコンセントが抜かれていた場合、バッテリー66から制御装置80へ電力供給が行われている場合には、検査処理が実行されるが、検査用駆動は行われない。さらに、バッテリー66がバッテリー切れの状態となっている場合には、所定時刻となっても、検査処理が実行されず、当然、検査用駆動も行われない。
【0079】
そこで、本実施形態では、記録指令を受信したときに、記録指令を受信する前の最後の所定時刻に検査用駆動が行われていない場合に、検査用駆動を行わせる。これにより、異常ノズルを把握することができる。
【0080】
変形例2では、
図10に示すように、制御装置80は、電源オン信号を受信しておらず(S601:NO)、温度センサ67から受信した温度信号が示す温度を含む温度範囲が、最後に後述する検査用駆動が行われたときに温度センサ67から受信した温度信号が示す温度を含む温度範囲と同じ温度範囲となっており(S102:NO)、記録指令を受信していない間は(S501:NO)、待機している。
【0081】
そして、電源オン信号を受信したとき(S601:YES)、及び、温度センサ67から受信した温度信号が示す温度を含む温度範囲が、最後に後述する検査用駆動が行われたときに温度センサ67から受信した温度信号が示す温度を含む温度範囲と異なる温度範囲となったときに(S102:YES)、制御装置80が処理Aを実行する(S104)。一方、記録指令を受信したときには(S501:YES)、変形例1と同様、S502、S105,S503の処理を実行する。
【0082】
変形例2では、電源オン信号の受信から、記録指令の受信までの期間が長い場合でも、インクを無駄に排出させてしまうことがない。
【0083】
なお、変形例2では、電源オン信号が、本発明の「第1信号」に相当する。また、変形例2では、変形例1と同様、所定時刻であることを示す時刻信号の受信によって、検査処理を含む処理Aが実行された後、最初に受信した記録指令が、本発明の「第2信号」に相当する。
【0084】
また、変形例1,2では、制御装置80が、第1信号(変形例1の所定時刻であることを示す時刻信号、変形例2の電源オン信号)の受信に応じて検査処理を含む処理Aが実行された後、最初に受信した記録指令を受信したときに、処理Bを実行したが、これには限られない。例えば、プリンタ1において低画質での記録と高画質での記録とのいずれかを選択的に行うことができるようになっており、第1信号に応じて検査処理を含む処理Aが実行された後、最初に高画質で記録を行うことを指示する記録指令を受信したときに、処理Bを実行するようにしてもよい。
【0085】
また、上述の実施形態では、温度センサ67から受信した温度信号が示す温度を含む温度範囲が、最後に検査用駆動が行われたときに温度センサ67から受信した温度信号が示す温度を含む温度範囲と異なる温度範囲となったときも、処理Aを実行するようにしたが、これには限られない。温度センサ67から受信した温度信号が示す温度を含む温度範囲が変わったときに処理Aを実行しないようにしてもよい。
【0086】
また、上述の実施形態では、複数枚の記録用紙Pへの記録時に、全ての記録用紙Pへの記録が完了した後、最後に検査用駆動が行われてからの、記録がされた記録用紙Pの枚数が所定枚数に達したとき(C≧Ctとなっているとき)に、検査用駆動を行わせたが、これには限られない。
【0087】
例えば、複数枚の記録用紙Pへの記録を行っている途中で、C≧Ctとなったときに、記録を中断して検査用駆動を行わせてもよい。
【0088】
あるいは、最後に検査用駆動が行われてからの、記録がされた記録用紙Pの枚数に基づく検査用駆動は行わせなくてもよい。
【0089】
また、上述の実施形態では、所定時刻となったときに行わせる検査用駆動時に判定回路78から出力された判定用信号が、異常ノズルが存在することを示しているときに、回復動作の一部としてフラッシングを行わせる。また、その後、電源がオンになったときに、回復動作の上記一部を除いた残りの部分として吸引パージを行わせる。しかしながら、これには限られない。
【0090】
例えば、回復動作を吸引パージとし、所定時刻となったときに行わせる検査用駆動時に判定回路78から出力された判定用信号が、異常ノズルが存在することを示しているときに、回復動作の一部として吸引パージの一部を行わせてもよい。また、その後、電源がオンになったときに、回復動作の上記一部を除いた残りの部分として吸引パージの残りの部分を行わせてもよい。
【0091】
あるいは、回復動作をフラッシングとし、所定時刻となったときに行わせる検査用駆動時に判定回路78から出力された判定用信号が、異常ノズルが存在することを示しているときに、回復動作の一部としてフラッシングの一部を行わせてもよい。また、その後、電源がオンになったときに、回復動作の上記一部を除いた残りの部分としてフラッシングの残りの部分を行わせてもよい。
【0092】
さらには、所定時刻となったときに行わせる検査用駆動時に判定回路78から出力された判定用信号が、異常ノズルが存在することを示しているときに、回復動作の一部を行わせることにも限られない。例えば、所定時刻となったときに行わせる検査用駆動時に判定回路78から出力された判定用信号が、異常ノズルが存在することを示しているときには、回復動作の一部を行わせず、その後、電源がオンになったときに、回復動作の全てを行わせてもよい。
【0093】
また、上述の実施形態では、検査用駆動時に判定回路78から出力された判定用信号に基づいて、吸引パージの種類の情報をフラッシュメモリ84に記憶させたり、吸引パージの種類を決定したりしたが、これには限られない。例えば、検査用駆動時に判定回路78から出力された判定用信号が、異常ノズルが存在することを示している場合に、その後のパージ処理において一律の吸引パージを行わせてもよい。
【0094】
また、上述の実施形態及び変形例1では、所定時刻であることを示す時刻信号の受信に応じて検査処理を含む処理Aを実行したときに検査用駆動が行われなかった場合に、その後、電源オン信号を受信したときに実行する処理Bにおいて、検査処理を実行した。また、変形例2では、電源オン信号の受信に応じて検査処理を含む処理Aを実行したときに検査用駆動が行われなかった場合に、その後、記録指令を受信したときに実行する処理Bにおいて、検査処理を実行した。しかしながら、これには限られない。
【0095】
第1信号(上述の実施形態及び変形例1の場合の、所定時刻であることを示す時刻信号、変形例2の場合の、電源オン信号)の受信に応じて検査処理を実行したときに検査用駆動が行われなかった場合に、その後、第2信号(上述の実施形態及び変形例1の場合の、電源オン信号、変形例2の場合の記録指令)を受信したときに検査処理を実行しなくてもよい。なお、この場合には、第2信号を受信したときに、フラッシュメモリ84にフラグ情報が記憶されていないため、回復動作も行われない。
【0096】
また、上述の実施形態では、インクジェットヘッド4の全てのノズル10について、検査用駆動を行わせたが、これには限られない。例えば、各ノズル列9における1つおきのノズル10等、インクジェットヘッド4の一部のノズル10についてのみ、検査用駆動を行わせ、それ以外のノズル10については、当該検査用駆動時に判定回路78から出力された判定用信号に基づいて、異常ノズルであるか否かを推定してもよい。
【0097】
また、制御装置80は、種類情報として、行わせる吸引パージの種類を示す情報そのものをフラッシュメモリ84に記憶させたたが、これには限られない。例えば、異常ノズルの数や、異常ノズルの位置の情報等、吸引パージの種類が決定できる情報を、種類情報として記憶させてもよい。
【0098】
また、上述の実施形態では、ノズル10から検出用電極76に向けてインクを吐出させたときの検出用電極76の電位に応じて、判定回路78が異常ノズルであるか否かに応じた信号を出力したが、これには限られない。
【0099】
例えば、鉛直方向に延びた検出用電極を配置し、ノズル10から検出用電極と対向する領域を通過するようにインクを吐出させたときの検出用電極の電位に応じて、判定回路から、異常ノズルであるか否かに応じた信号を出力してもよい。あるいは、ノズル10から吐出されたインクを検出する光センサ(本発明の「信号出力部」)を設け、光センサから、異常ノズルであるか否かに応じた信号を出力してもよい。
【0100】
あるいは、例えば、特許第4929699号公報に記載されているのと同様に、インクジェットヘッドのノズルが形成されたプレートに、ノズルからインクが吐出されたときの電圧の変化を検出する電圧検出回路(本発明の「信号出力部」)を接続して、電圧検出回路から制御装置80に、異常ノズルであるか否かに応じた信号を出力するようにしてもよい。
【0101】
あるいは、例えば、特許第6231759号公報に記載されているのと同様に、インクジェットヘッドの基板を、温度検知素子(本発明の「信号出力部」)を備えたものとしてもよい。そして、インクの吐出のために第1印加電圧を印加してヒータを駆動した後に、インクが吐出されないように第2印加電圧を印加してヒータを駆動し、第2印加電圧を印加してから、その後、所定時間が経過するまでの間の、温度検知素子で検知された温度の変化に基づいて、ノズル10が異常ノズルであるか否かに応じた信号を出力するようにしてもよい。
【0102】
また、以上の例では、インクが吐出されないノズル10を異常ノズルと判定したが、これには限られない。例えば、ノズル10からのインクの吐出方向が正常であるか否かに応じた信号を出力する信号出力部を設け、この信号出力部からの信号に基づいて、吐出方向に異常のあるノズル10を異常ノズルと判定してもよい。
【0103】
また、以上の例では、パージ処理において吸引パージを行わせたが、これには限られない。例えば、サブタンク3とインクカートリッジ14とを接続するチューブ15の途中部分に加圧ポンプが設けられていてもよい。あるいは、プリンタにインクカートリッジと接続された加圧ポンプが設けられていてもよい。そして、複数のノズル10がキャップ71で覆われた状態で、上記加圧ポンプを駆動させることで、インクジェットヘッド4内のインクを加圧してノズル10からインクジェットヘッド4内のインクを排出させる、いわゆる加圧パージを行ってもよい。
【0104】
さらには、パージ処理において、吸引ポンプ72による吸引と加圧ポンプによる加圧の両方を行わせてもよい。
【0105】
また、以上では、キャリッジとともに走査方向に移動しつつ複数のノズルからインクを吐出する、いわゆるシリアルヘッドを備えたプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。例えば、走査方向に記録用紙Pの全長にわたって延びたいわゆるラインヘッドを備えたプリンタに本発明を適用することも可能である。
【0106】
また、以上では、ノズルからインクを吐出して記録用紙Pに記録を行うプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。Tシャツ、屋外広告用のシート、スマートフォン等の携帯端末のケース、段ボール、樹脂部材など、記録用紙以外の被記録媒体に画像を記録するプリンタにも適用され得る。また、インク以外の液体、例えば、液体状にした樹脂や金属を吐出する液体吐出装置にも適用され得る。
【符号の説明】
【0107】
1 プリンタ
4 インクジェットヘッド
8 メンテナンスユニット
10 ノズル
67 温度センサ
68 時計部
72 吸引ポンプ
78 判定回路
80 制御装置
84 フラッシュメモリ