(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114680
(43)【公開日】2022-08-08
(54)【発明の名称】液滴吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20220801BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
B41J2/01 207
B41J2/01 451
B41J2/165 203
B41J2/165 207
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021011068
(22)【出願日】2021-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】上田 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】洞田 竜児
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 善一郎
(72)【発明者】
【氏名】洞出 賢太
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼▲崎▼ 啓典
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EA15
2C056EB29
2C056EB38
2C056EB40
2C056EC06
2C056EC28
2C056EC54
2C056EC57
2C056EC59
2C056EC60
2C056FA10
(57)【要約】
【課題】液体吐出装置において、時刻を把握することができなくなった場合でも、適切にメンテナンスを行う。
【解決手段】時計部への電力の供給が途絶えて、時計部が時刻を見失うときに、消失フラグ情報を記憶させる。時計部が時刻を見失った後、プリンタの電源がオンになったときに、そのときの時刻を第2時刻として、時計部に仮の時刻を計時させる。消失フラグ情報が記憶されていないときには(S201:NO)、時計部が示す時刻が第1時刻となったときに(S202:YES)、検査処理を実行する(S205)。消失フラグ情報が記憶されているときには(S201:YES)、時計部が示す仮の時刻が第2時刻となったときに(S203:YES)、検査処理を実行する(S205)。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、
前記ノズルが液体の吐出に異常のある異常ノズルであるか否かを確認するための検査用駆動を前記液体吐出ヘッドに行わせた際に、前記ノズルが前記異常ノズルであるか否かを示す判定用信号を出力する信号出力部と、
前記ノズルから液体を排出させる回復動作を行う回復手段と、
時刻を計時する時計部と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記時計部が示す時刻が正しいと判断した場合には、前記時計部が示す時刻が第1時刻となったときに前記検査用駆動を行わせ、前記信号出力部から出力された前記判定用信号を取得する検査処理を実行し、
前記時計部への電力供給が途絶えたことによって前記時計部が時刻を見失っていると判断した場合には、電源がオンにされた後の所定タイミングに前記検査処理を実行することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記時計部に電力供給を行うバッテリーと、
記憶部と、を備え、
前記制御装置は、
コンセントからの電力供給が途絶えて前記バッテリーがバッテリー切れとなるときに、前記時計部が時刻を見失っていることを示す消失フラグ情報を前記記憶部に記憶させ、
コンセントからの電力供給が再開されたときに、前記記憶部に前記消失フラグ情報が記憶されていない場合には、前記時計部が示す時刻が正しいと判断して、前記時計部が示す時刻が第1時刻となったときに、前記検査処理を実行し、
コンセントからの電力供給が再開されたときに、前記記憶部に前記消失フラグ情報が記憶されている場合には、前記時計部が時刻を見失っていると判断して、前記所定タイミングに、前記検査処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置
【請求項3】
前記制御装置は、
電源がオンにされたときに、前記時計部が時刻を見失っている場合には、
前記時計部に、電源がオンにされた時刻を第2時刻として、仮の時刻を計時させ、
前記所定タイミングとしての、前記時計部が示す前記仮の時刻が前記第2時刻となるタイミングに、前記検査処理を実行することを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記制御装置は、
電源がオンにされたときに、前記時計部が時刻を見失っていると判断した場合には、
前記時計部に、電源がオンにされた時刻を第2時刻として、仮の時刻を計時させ、
前記所定タイミングとしての、前記時計部が示す前記仮の時刻が前記第2時刻よりも前の第3時刻となるタイミングに、前記検査処理を実行することを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記時計部が、前記仮の時刻を計時している状態から正しいと判断される時刻を計時している状態に復帰したときに、それ以降、前記時計部が示す時刻が前記第1時刻になったときに、前記検査処理を実行することを特徴とする請求項3又は4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記制御装置は、
電源がオンにされたときに、前記液体吐出ヘッドに所定の復帰動作を行わせ、
前記所定タイミングは、前記電源がオンにされてから前記復帰動作が開始されるまでの期間内のタイミング、又は、前記復帰動作後のタイミングであることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記所定タイミングは、電源がオンにされた時点から所定時間が経過したタイミングであることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記制御装置は、
前記被吐出媒体に液体を吐出することを指示する吐出指示信号を受信したときに、前記液体吐出ヘッドに、前記複数のノズルから被吐出媒体に液体を吐出させ、
前記所定タイミングは、電源がオンにされた後、最初に受信した前記吐出指示信号に基づいて、前記液体吐出ヘッドに、前記複数のノズルから被吐出媒体に液体を吐出させる直前のタイミングであることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
記憶部、を備え、
前記制御装置は、
前記検査処理において、前記判定用信号出力部から送信された前記判定用信号が、異常ノズルが存在していることを示しているときに、前記回復動作が必要であることを示す回復フラグ情報を記憶部に記憶させ、
その後、所定の信号を受信したときに、前記記憶部に前記回復フラグ情報が記憶されている場合には、前記回復手段に前記回復動作を行わせることを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記所定の信号は、被吐出媒体に液体を吐出することを指示する吐出指示信号であり、
前記制御装置は、
前記吐出指示信号を受信したときに、前記記憶部に前記回復フラグ情報が記憶されている場合には、前記回復手段に前記回復動作を行わせてから、前記液体吐出ヘッドに、前記複数のノズルから被吐出媒体に液体を吐出させることを特徴とする請求項9に記載の液体吐出装置。
【請求項11】
前記所定の信号は、前記検査処理の実行後、最初に受信する前記吐出指示信号であることを特徴とする請求項10に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
前記制御装置は、
前記検査処理において、前記検査用駆動時に前記判定用信号出力部から送信された信号が、異常ノズルが存在していることを示しているときに、前記回復動作が必要であることを示す回復フラグ情報を記憶部に記憶させるとともに、前記回復手段に前記回復動作の一部を行わせ、
その後、前記所定の信号を受信したときに、前記記憶部に前記回復フラグ情報が記憶されている場合には、前記回復手段に前記回復動作の前記一部を除いた残りを行わせることを特徴とする請求項8~11のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項13】
前記回復手段は、
前記液体吐出ヘッドと接続可能なポンプと、を有し、
前記回復動作が、前記ポンプを駆動させることによって前記ノズルから前記液体吐出ヘッド内の液体を排出させるパージを含むことを特徴とする請求項1~12のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項14】
前記回復手段は、
前記液体吐出ヘッド、を有し、
前記回復動作が、前記液体吐出ヘッドを駆動させて前記ノズルから液体を排出させるフラッシングを含むことを特徴とする請求項1~13のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項15】
前記回復手段は、
前記液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドと接続可能なポンプを有し、
前記回復動作の前記一部は、前記液体吐出ヘッドを駆動させて前記ノズルから液体を排出させるフラッシングであり、
前記回復動作の前記一部を除いた残りは、前記ポンプを駆動させて、前記ノズルから前記液体吐出ヘッド内の液体を排出させるパージであることを特徴とする請求項12に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液滴を吐出する液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルから液体を吐出する液体吐出装置の一例として、特許文献1には、ノズルからインクを吐出して用紙に記録を行うプリンタが記載されている。特許文献1のプリンタでは、予め設定された所定時刻となったとき等に、ポンプを駆動して圧力を加えることで、ヘッドからインクを強制的に排出させるパージを含むメンテナンス動作を行わせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のプリンタでは、上述したように、予め設定された所定時刻となったときにメンテナンス動作を行わせている。しかしながら、特許文献1のようなプリンタでは、コンセントが抜かれる、あるいは、コンセントが抜かれてさらに内蔵されているバッテリーがバッテリー切れになったとき等に、内部の時計において時刻を計時することができなくなる。以下、この状態を、「時刻を見失っている」とする。この場合には、この後、コンセントが挿されてプリンタへの電力供給が再開しても、正確な時刻を把握することができず、適切な時刻にメンテナンス動作を行わせることができなくなってしまう。
【0005】
本発明の目的は、時計部が時刻を見失っている場合でも、適切にメンテナンスを行うことが可能な液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液体吐出装置は、液体を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、前記ノズルが液体の吐出に異常のある異常ノズルであるか否かを確認するための検査用駆動を前記液体吐出ヘッドに行わせた際に判定用信号を出力する信号出力部と、前記ノズルから液体を排出させる回復動作を行う回復手段と、時刻を計時する時計部と、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記時計部が示す時刻が正しいと判断した場合には、前記時計部が示す時刻が第1時刻となったときに前記検査用駆動を行わせ、前記信号出力部から出力された前記判定用信号を取得する検査処理を実行し、前記時計部への電力供給が途絶えたことによって前記時計部が時刻を見失っていると判断した場合には、電源がオンにされた後の所定タイミングに前記検査処理を実行する。
【発明の効果】
【0007】
時計部が示す時刻が正しいと判断した場合(時刻を見失っていない場合)には、時計部が示す時刻が第1時刻となったときに検査処理を実行することにより、例えば、ユーザが液体吐出装置を使用していない時間帯等、所望の時刻に異常ノズルであるか否かの検査を行うことができる。一方、時計部が時刻を見失っていると判断した場合には、電源がオンにされた後の所定タイミングに検査処理を実行することにより、時計部が時刻を見失っている場合にも、異常ノズルであるか否かの検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係るプリンタの概略構成図である。
【
図2】キャップ内に配置された検出用電極、及び、検出用電極と高電圧電源回路及び判定回路との接続関係を説明するための図である。
【
図3】(a)はノズルからインクが吐出された場合の検出用電極の電圧値の変化を示す図であり、(b)はノズルからインクが吐出されなかった場合の検出用電極の電圧値の変化を示す図である。
【
図4】プリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【
図5】コンセント又はバッテリーから電力が供給されているときに行われる処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】コンセントから電力が供給されているときに行われる処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】変形例1の
図6に対応するフローチャートである。
【
図8】変形例2の
図6に対応するフローチャートである。
【
図9】変形例3の
図5に対応するフローチャートである。
【
図10】変形例3の
図6に対応するフローチャートである。
【
図11】変形例4の
図6に対応するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0010】
<プリンタの全体構成>
図1に示すように、本実施形態に係るプリンタ1(本発明の「液体吐出装置」)は、キャリッジ2、サブタンク3、インクジェットヘッド4(本発明の「液体吐出ヘッド」)、プラテン5、搬送ローラ6,7、メンテナンスユニット8、コンセント19等を備えている。
【0011】
キャリッジ2は、走査方向に延びた2本のガイドレール11,12に支持されている。キャリッジ2は、図示しないベルトなどを介してキャリッジモータ86(
図4参照)に接続されており、キャリッジモータ86を駆動させると、キャリッジ2がガイドレール11,12に沿って走査方向に移動する。なお、以下では、
図1に示すように、走査方向の右側及び左側を定義して説明を行う。
【0012】
サブタンク3は、キャリッジ2に搭載されている。ここで、プリンタ1は、カートリッジホルダ13を備えており、カートリッジホルダ13に4つのインクカートリッジ14が取り外し可能に装着されている。4つのインクカートリッジ14は、走査方向に並んでおり、走査方向の右側に配置されたものから、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインク(本発明の「液体」)を貯留している。サブタンク3は、4本のチューブ15を介してカートリッジホルダ13に装着された4つのインクカートリッジ14と接続されている。これにより、4つのインクカートリッジ14からサブタンク3に上記4色のインクが供給される。
【0013】
インクジェットヘッド4は、キャリッジ2に搭載され、サブタンク3の下端部に接続されている。インクジェットヘッド4には、サブタンク3から上記4色のインクが供給される。また、インクジェットヘッド4は、その下面であるノズル面4aに形成された複数のノズル10からインクを吐出する。より詳細に説明すると、複数のノズル10は、走査方向と直交する搬送方向に配列されることによってノズル列9を形成しており、ノズル面4aにおいて、4列のノズル列9が走査方向に並んでいる。複数のノズル10からは、走査方向の右側のノズル列9を構成するものから、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが吐出される。
【0014】
プラテン5は、インクジェットヘッド4の下方に配置され、複数のノズル10と対向している。プラテン5は、走査方向に記録用紙P(本発明の「被吐出媒体」)の全長にわたって延び、記録用紙Pを下方から支持する。搬送ローラ6は、インクジェットヘッド4及びプラテン5よりも搬送方向の上流側に配置されている。搬送ローラ7は、インクジェットヘッド4及びプラテン5よりも搬送方向の下流側に配置されている。搬送ローラ6,7は、図示しないギヤなどを介して搬送モータ87(
図4参照)に接続されている。搬送モータ87を駆動させると、搬送ローラ6,7が回転し、記録用紙Pが搬送方向に搬送される。
【0015】
メンテナンスユニット8は、キャップ71と、吸引ポンプ72と、廃液タンク73とを備えている。キャップ71は、プラテン5よりも走査方向の右側に配置されている。そして、キャリッジ2を、プラテン5よりも走査方向の右側のメンテナンス位置に位置させると、複数のノズル10がキャップ71と対向する。
【0016】
また、キャップ71は、キャップ昇降機構88(
図4参照)によって昇降可能となっている。そして、キャリッジ2を上記メンテナンス位置に位置させることによって複数のノズル10とキャップ71とを対向させた状態で、キャップ昇降機構88によりキャップ71を上昇させると、キャップ71の上端部がノズル面4aに密着し、複数のノズル10がキャップ71に覆われる。なお、キャップ71はノズル面4aに密着することで複数のノズル10を覆うものであることには限られない。キャップ71は、例えば、インクジェットヘッド4のノズル面4aの周囲に配置される図示しないフレーム等に密着することで、複数のノズル10を覆うものであってもよい。
【0017】
吸引ポンプ72はチューブポンプなどであり、キャップ71及び廃液タンク73と接続されている。そして、メンテナンスユニット8では、上述したように複数のノズル10がキャップ71によって覆われた状態で吸引ポンプ72を駆動させると、複数のノズル10からインクジェットヘッド4内のインクを排出させる、いわゆる吸引パージ(を行うことができる。吸引パージによって排出されたインクは廃液タンク73に貯留される。
【0018】
なお、ここでは、便宜上、キャップ71が全てのノズル10をまとめて覆い、吸引パージにおいて、全てのノズル10からインクジェットヘッド4内のインクを排出させるものとして説明を行ったが、これには限られない。例えば、キャップ71が、ブラックインクを吐出する最も右側のノズル列9を構成する複数のノズル10を覆う部分と、カラーインク(イエロー、シアン、マゼンタのインク)を吐出する左側3列のノズル列9を構成する複数のノズル10を覆う部分とを別々に備えており、吸引パージにおいて、インクジェットヘッド4内のブラックインク及びカラーインクのいずれかを選択的に排出させることができるようになっていてもよい。あるいは、例えば、キャップ71が、ノズル列9毎に個別に設けられ、吸引パージにおいて、ノズル列9毎に個別に、ノズル10からインクを排出させることができるようになっていてもよい。
【0019】
また、
図2に示すように、キャップ71内には、矩形の平面形状を有する検出用電極76が配置されている。検出用電極76は、抵抗79を介して高電圧電源回路77に接続されている。そして、検出用電極76には、後述する判定用駆動の際に、高電圧電源回路77により所定の正の電位(例えば600V程度)が付与される。一方で、インクジェットヘッド4は、グランド電位に保持されている。これにより、インクジェットヘッド4と検出用電極76との間に所定の電位差が生じる。検出用電極76には、判定回路78が接続されている。判定回路78は、検出用電極76から出力された信号の電位と、閾値Vtとを比較し、その結果に応じた信号を出力する。
【0020】
より詳細に説明すると、インクジェットヘッド4と、検出用電極76との間には電位差が生じているため、ノズル10から吐出されたインクは帯電している。キャリッジ2を上記メンテンナンス位置に位置させた状態で、ノズル10から検出用電極76に向けてインクを吐出させると、
図3(a)に示すように、帯電したインクが検出用電極76に近づき、検出用電極76にインクが着弾するまで、検出用電極76の電位が、インクジェットヘッド4が駆動されていないときの電位Vaから低下し、電位Vaよりも低い電位Vbに達する。そして、帯電したインクが検出用電極76に着弾した後、検出用電極76の電位が徐々に上昇して電位Vaに戻る。すなわち、インクジェットヘッド4の駆動期間Tdにおいて、検出用電極76の電位が変化する。
【0021】
一方で、ノズル10からインクが吐出されていない場合には、
図3(b)に示すように、インクジェットヘッド4の駆動期間Tdにおいて、検出用電極76の電位は、電位Vaからほとんど変化しない。そこで、判定回路78は、これらを区別するために閾値Vt(Vb<Vt<Va)が設定されている。そして、判定回路78は、インクジェットヘッド4の駆動期間Tdにおいて、検出用電極76から出力される電圧信号の最大の電位と閾値Vtとを比較し、その判定結果に応じた判定用信号を出力する。なお、本実施形態では、検出用電極76と、高電圧電源回路77と抵抗79と判定回路78とを合わせたものが、本発明の「信号出力部」に相当する。そして、この信号出力部は、ノズル10が、インクが吐出されない異常ノズルであるか否かに応じた判定用信号を出力する。
【0022】
また、ここでは、高電圧電源回路77により、検出用電極76に正の電位が付与されているが、高電圧電源回路77により、検出用電極76に負の電位(例えば-600V程度)が付与されていてもよい。この場合には、上述したのとは逆に、キャリッジ2を上記メンテンナンス位置に位置させた状態で、ノズル10から検出用電極76に向けてインクを吐出させると、帯電したインクが検出用電極76に近づき、検出用電極76にインクが着弾するまで、検出用電極76の電位が電位Vaから上昇し、検出用電極76にインクが着弾した後、検出用電極76の電位が徐々に低下して電位Vaに戻る。
【0023】
コンセント19は、図示しない商用電源に接続可能である。そして、プリンタ1では、コンセント19が挿されて商用電源に接続されているときには、コンセント19から電力が供給される。コンセント19が抜かれると、コンセント19からの電力の供給が途絶える。
【0024】
<プリンタの電気的構成>
次に、プリンタ1の電気的構成について説明する。
図4に示すように、プリンタ1は、制御装置80を備えている。制御装置80は、CPU(Central Processing Unit)81、ROM(Read Only Memory)82、RAM(Random Access Memory)83、フラッシュメモリ84、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)85などからなる。制御装置80は、キャリッジモータ86、インクジェットヘッド4、搬送モータ87、キャップ昇降機構88、吸引ポンプ72、高電圧電源回路77等の動作を制御する。また、制御装置80には、判定回路78から判定用信号が入力される。
【0025】
また、プリンタ1は、以上で説明した構成のほかに、表示部69と操作部70と時計部68とバッテリー67とを備えている。表示部69は、例えば、プリンタ1の筐体に設けられた液晶ディスプレイなどである。制御装置80は、表示部69を制御して、プリンタ1の動作に必要な情報等を表示する。操作部70は、例えば、プリンタ1の筐体に設け設けられたボタン、表示部69に設けられたタッチパネルなどである。ユーザが操作部70を操作することによって、制御装置80に対する信号の入力を行うことができる。
【0026】
また、本実施形態では、操作部70が、図示しない電源スイッチを含んでいる。そして、ユーザが電源スイッチを操作することにより、プリンタ1の電源のオンとオフとを切り換えることができる。また、ユーザが操作部70の電源スイッチを操作してプリンタ1の電源をオンにしたときには、制御装置80は、操作部70から、プリンタ1の電源がオンになったことを示す電源オン信号(本発明の「所定の信号」)を受信する。時計部68は時刻を計時しており、制御装置80は、時計部68から時刻を示す時刻信号を受信する。
【0027】
バッテリー67は、少なくとも制御装置80及び時計部68と接続されている。プリンタ1では、コンセント19から電力が供給されているときには、バッテリー67が充電される。また、プリンタ1では、コンセント19が抜かれて、コンセント19からの電力の供給が途絶えた状態では、バッテリー67がバッテリー切れとなっていなければ、バッテリー67から少なくとも制御装置80及び時計部68に電力が供給される。
【0028】
なお、制御装置80は、CPU81のみが各種処理を行うものであってもよいし、ASIC85のみが各種処理を行うものであってもよいし、CPU81とASIC85とが協働して各種処理を行うものであってもよい。また、制御装置80は、1つのCPU81が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のCPU81が処理を分担して行うものであってもよい。また、制御装置80は、1つのASIC85が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のASIC85が処理を分担して行うものであってもよい。
【0029】
<コンセント又はバッテリーからの電力供給時の処理>
次に、プリンタ1において、コンセント19又はバッテリー67から制御装置80及び時計部68に電力が供給されているときの処理について説明する。
【0030】
このとき、制御装置80は、
図5のフローに沿って処理を実行する。
図5のフローは、例えば、バッテリー67がバッテリー切れの状態で、コンセント19が商用電源に挿されてプリンタ1への電力供給が開始されたときに開始される。
【0031】
図5のフローについてより詳細に説明すると、制御装置80は、フラッシュメモリ84(本発明の「記憶部」)に消失フラグ情報が記憶されているか否かを判定する(S101)。消失フラグ情報とは、コンセント19が抜かれ、且つ、バッテリー67がバッテリー切れとなって、時計部68への電力の供給が途絶えたことにより、時計部68が時刻を見失っていることを示す情報である。
【0032】
フラッシュメモリ84に消失フラグ情報が記憶されていない場合(S101:NO)、制御装置80は、続いて、バッテリー67がバッテリー切れになるか否かを判定する(S102)。S102では、例えば、コンセント19が抜かれていて、且つ、バッテリー67の充電率が所定の閾値未満である場合に、バッテリー67がバッテリー切れになると判断する。また、S102では、例えば、コンセント19が挿されている状態、及び、バッテリー67の充電率が所定の閾値以上である場合に、バッテリー67がバッテリー切れにならないと判断する。
【0033】
そして、バッテリー67がバッテリー切れにならない場合には(S102:NO)、S101に戻る。バッテリー67がバッテリー切れになる場合には(S102:YES)、制御装置80は、フラッシュメモリ84に消失フラグ情報を記憶させ(S103)、S101に戻る。
【0034】
フラッシュメモリ84に消失フラグが記憶されている場合(S101:YES)、制御装置80は、電源オン信号、時刻設定信号、及び、時刻情報を含む記録指令のいずれをも受信していなければ(S104:NO、S105:NO、S106:NO)、S101に戻る。
【0035】
電源オン信号は、ユーザにより操作部70が操作されることによって入力される、プリンタ1の電源をオンすることを指示する信号である。時刻設定信号は、ユーザにより操作部70が操作されることによって入力される、時刻を設定するための受信である。時刻情報を含む記録指令は、例えば、プリンタ1に接続された図示しないPCなどからプリンタ1に入力される、送信時刻の情報を含む記録指令である。
【0036】
また、制御装置80は、電源オン信号を受信したときに(S104:YES)、時計部68において仮の時刻の計時中であるか否かを判定する(S107)。仮の時刻とは、時計部68が上記のように時刻を見失った後、次に説明するS108で計時が開始される時刻のことである。
【0037】
時計部68が仮の時刻の計時中である場合には(S107:YES)、S101に戻る。時計部68が仮の時刻の計時中でない場合には(S107:NO)、制御装置80は、時計部68に、現在の時刻を第2時刻(例えば、0時0分)として、仮の時刻の計時を開始させ(S108)、S101に戻る。
【0038】
また、制御装置80は、時刻設定信号を受信したとき(S105:YES)、及び、時刻情報を含む記録指令を受信したときに(S106:YES)、時計部68の時刻を設定して、時計部68に計時を開始させる(S109)。このとき、制御装置80は、時計部68の時刻を、時刻設定信号が示す時刻、又は、上記記録指令に含まれる時刻情報が示す時刻に設定する。その後、制御装置80は、フラッシュメモリ84に記憶されている消失フラグ情報を消去し(S110)、S101に戻る。
【0039】
<コンセントからの電力供給時の処理>
次に、コンセント19から電力が供給されているときの処理について説明する。このとき、制御装置80は、
図6のフローに沿って処理を行う。
図6のフローは、コンセント19が挿されて商用電源に接続されたときに開始される。なお、コンセント19から電力が供給されているときには、制御装置80は、
図5のフローに示す処理と
図6のフローに示す処理とを並行して行う。
【0040】
図6のフローについてより詳細に説明すると、制御装置80は、フラッシュメモリ84に消失フラグ情報が記憶されているか否かを判定する(S201)。フラッシュメモリ84に消失フラグ情報が記憶されていない場合(S201:NO)、制御装置80は、時計部68が示す時刻が第1時刻であるか否かを判定する(S202)。
【0041】
また、フラッシュメモリ84に消失フラグ情報が記憶されている場合(S201:YES)、制御装置80は、時計部68が示す上記仮の時刻が第2時刻であるか否かを判定する(S203)。また、制御装置80は、S202において、時計部68が示す時刻が第1時刻でないと判定された場合(S202:NO)、及び、S203において、時計部68が示す上記仮の時刻が第2時刻でないと判定された場合(S203:NO)、制御装置80は、記録指令を受信したか否かを判定する(S204)。記録指令を受信していないときには(S204:NO)、S201に戻る。
【0042】
フラッシュメモリ84に消失フラグ情報が記憶されておらず(S201:NO)、且つ、時計部68が示す時刻が第1時刻である場合(S202:YES)、制御装置80は、続いて、検査処理を実行する(S205)。検査処理では、制御装置80は、インクジェットヘッド4に、複数のノズル10の各々から順にインクを吐出させるように駆動させる検査用駆動を行わせる。また、このとき、制御装置80は、検査用駆動時に判定回路78から出力された判定用信号を受信する。
【0043】
続いて、制御装置80は、検査処理の際に受信した判定用信号に基づいて、インクジェットヘッド4の複数のノズル10の中に異常ノズルが存在するか否かを判定する(S206)。異常ノズルが存在しない場合(S206:NO)、S201に戻る。
【0044】
異常ノズルが存在する場合(S206:YES)、制御装置80は、フラッシュメモリ84に、回復動作が必要なことを示す回復フラグ情報を記憶させる(S207)。続いて、制御装置80は、フラッシング処理を実行し(S208)、S201に戻る。S208のフラッシング処理では、制御装置80は、インクジェットヘッド4に、複数の異常ノズルからインクを排出させるフラッシングを行わせる。このフラッシングでは、異常ノズルのみからインクを排出させてもよいし、異常ノズルに加えて、異常ノズルでないノズル10の少なくとも一部からインクを吐出させてもよい。
【0045】
また、フラッシュメモリ84に消失フラグ情報が記憶されており(S201:YES)、且つ、時計部68が示す仮の時刻が第2時刻である場合にも(S203:YES)、制御装置80は、S205~S208の処理を実行する。
【0046】
一方、記録指令を受信したときには(S204:YES)、制御装置80は、受信した記録指令が、検査処理が実行された後の最初の記録指令(本発明の「所定の信号」)でない場合には(S209:NO)、S213に進む。また、受信した記録指令が、検査処理が実行された後の最初の記録指令であり(S209:YES)、且つ、フラッシュメモリ84に回復フラグ情報が記憶されていない場合にも(S210:NO)、S213に進む。
【0047】
受信した記録指令が、最後に検査処理が実行された後の最初の記録指令であり(S209:YES)、且つ、フラッシュメモリ84に回復フラグ情報が記憶されている場合には(S210:YES)、制御装置80は、続いて、パージ処理を実行し(S211)、フラッシュメモリ84に記憶されている回復フラグ情報を消去してから(S212)、S213に進む。
【0048】
S213では、制御装置80は、記録処理を実行する。記録処理では、制御装置80は、キャリッジモータ86を制御して、キャリッジ2を走査方向に移動させつつ、インクジェットヘッド4に複数のノズル10から記録用紙Pに向けてインクを吐出させる記録パスと、搬送モータ87を制御して、搬送ローラ6,7に記録用紙Pを所定量搬送させる搬送動作とを繰り返し行わせることによって、記録用紙Pへの画像の記録を行わせる。そして、記録処理の後、S201に戻る。
【0049】
なお、本実施形態では、フラッシングを行うインクジェットヘッド4、及び、吸引パージを行うメンテナンスユニット8が、本発明の「回復手段」に相当する。また、本実施形態では、フラッシングと吸引パージとを合わせたものが、本発明の「回復動作」に相当し、このうち、フラッシングが本発明の「回復動作のうちの一部」に相当し、吸引パージが本発明の「回復動作のうち一部除いた残りの部分」に相当する。
【0050】
<効果>
本実施形態では、時計部68が示す時刻が正しいと判断した場合(時刻を見失っていない場合)には、時計部68が示す時刻が第1時刻となったときに検査処理を実行する。これにより、例えば、第1時間を、ユーザがプリンタ1を使用していない時間帯等、所望の時刻に設定すれば、ユーザが所望する時間に、異常ノズルであるか否かの検査を行うことができる。一方、時計部68が時刻を見失っていると判断した場合には、電源がオンにされた時刻を第2時刻として、時計部68に仮の時刻を計時させる。そして、これ以降、時計部68が示す仮の時刻が第2に時刻になったときに検査処理を実行する。これにより、時計部68が時刻を見失っている状態でも定期的に検査処理を実行することができる。
【0051】
さらに、本実施形態では、時計部68が、時刻を見失っている状態から、時刻を見失っていない状態(時計部68が示す時刻が正しいと判断される状態)に復帰したときには、時計部68が示す時刻が第1時刻になったときに検査処理を実行するように、検査処理を実行するタイミングを戻す。これにより、時計部68が、時刻を見失っていない状態に復帰した後には、ユーザの所望する適切なタイミングで検査処理を実行することができる。
【0052】
また、本実施形態では、バッテリー切れになるときに消失フラグ情報をフラッシュメモリ84に記憶させる。これにより、フラッシュメモリ84に消失フラグ情報が記憶されているか否かによって、時計部が時刻を見失っているか否かを判断することができる。
【0053】
また、検査用駆動を行わせ、判定用信号が、異常ノズルが存在することを示している場合に、本実施形態と異なり、直ちに回復動作を行わせると、検査用駆動後、記録指令を受信するまでの期間が長い場合に、この期間にインクジェットヘッド4内の液体が増粘してしまう虞がある。そして、この場合、記録指令を受信したときに、改めて回復動作を行わせる必要があり、結果として、検査用駆動の直後に行わせた回復動作によるインクの排出が無駄なものとなってしまう。
【0054】
これに対して、本実施形態では、検査用駆動を行わせ、判定用信号が、異常ノズルが存在することを示している場合に、フラッシュメモリ84に回復フラグ情報を記憶させる。そして、検査用駆動の後、最初の記録指令を受信したときに、フラッシュメモリ84に回復フラグ情報が記憶されている場合に回復動作を行わせる。これにより、検査用駆動から、当該検査用駆動の後、最初の記録指令を受信するまでの期間が長い場合でも、上述したような、無駄なインクの排出が行われることがない。
【0055】
また、本実施形態では、検査用駆動を行わせ、判定用信号が、異常ノズルが存在することを示している場合に、検査用駆動の直後に、回復動作の一部であるフラッシングを行わせる。そして、当該検査用駆動の後、最初の記録指令を受信したときに、記録処理の前に、回復動作の上記一部を除いた残りである吸引パージを行わせる。これにより、上記記録指令を受信したときに、記録処理の前に行わせる回復動作に必要な時間を短くすることができる。
【0056】
<変形例>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態には限られず、特許請求の範囲に記載の限りにおいて様々な変更が可能である。
【0057】
上述の実施形態では、フラッシュメモリ84に消失フラグ情報が記憶されており(S201:YES)、時計部68が示す仮の時刻が第2時刻となったときに(S203:YES)、S205~S208の処理を実行したが、これには限られない。
【0058】
変形例1では、制御装置80が、上述の実施形態の
図6のフローに沿った処理の代わりに、
図7のフローに沿った処理を行う。
図7のフローは、
図6のフローにおいて、S203をS301に置き換えたものである。
【0059】
S301では、制御装置80は、時計部68が示す仮の時刻が、第2時刻よりも前の第3時刻となったか否かを判定する。そして、時計部68が示す仮の時刻が第3時刻となっていないときに(S301:NO)、S204に進む。また、時計部68が示す仮の時刻が第3時刻となったときに(S301:YES)、制御装置80は、S205~S208の処理を実行する。
【0060】
変形例1では、電源がオンにされたときに、時計部68が時刻を見失っている場合には、電源がオンされた時刻を第2時刻として、時計部68に仮の時刻を計時させる。そして、これ以降、時計部68が示す仮の時刻が、第2時刻よりも前の第3に時刻になったときに検査処理を実行する。これにより、時計部68が時刻を見失っている状態でも定期的に検査処理を実行することができる。また、通常、ユーザは、プリンタを使用するときに電源をオンにするため、時計部68が示す仮の時刻が第2時刻よりも前の第3に時刻になったときに検査処理を実行するようにすれば、ユーザがプリンタを使用していない可能性の高いタイミングで、検査処理を実行することができる。
【0061】
また、上述の実施形態及び変形例1では、時計部68が、時刻を見失っている状態から、時刻を見失っていない状態(時計部68が示す時刻が正しいと判断される状態)に復帰したときに、時計部68が示す時刻が第1時刻になったときに検査処理を実行するように、検査処理を実行するタイミングを戻す。しかしながら、これには限られない。例えば、時計部68が、時刻を見失っている状態から、時刻を見失っていない状態に復帰した後にも、例えば第2時刻や第3時刻など、第1時刻と別の時刻に検査処理を行わせてもよい。
【0062】
また、時計部68が時刻を見失っているときに、時計部68に仮の時刻を計時させ、仮の計時に基づいて検査処理などを行わせることにも限られない。
【0063】
変形例2では、制御装置80が、上述の実施形態の
図6のフローに沿った処理の代わりに、
図8のフローに沿った処理を行う。
図8のフローでは、フラッシュメモリ8に消失フラグ情報が記憶されておらず(S201:NO)、且つ、時計部68が示す時刻が第1時刻でないときに(S202:NO)、電源オン信号を受信したか否かを判定する(S401)。電源オン信号を受信していないときには(S401)、S204に進む。
【0064】
電源オン信号を受信したときには(S401:YES)、制御装置80は、復帰処理を実行する(S402)。復帰処理では、制御装置80は、プリンタ1の構成要素の少なくとも一部を制御することで、プリンタ1を記録用紙Pへの記録が可能な状態に復帰させるための復帰動作を行わせる。復帰動作とは、例えば、キャリッジ2やキャップ71の原点位置の調整のための動作などである。
【0065】
続いて、制御装置80は、時計部68から受信した時刻信号に基づいて、前回プリンタ1の電源がオフになってから電源がオンにされるまでの経過時間Tが所定時間Thよりも長いか否かを判定する(S403)。経過時間Tが所定時間Th以下の場合には(S403:NO)、S204に進む。経過時間Tが所定時間Thよりも長い場合には(S403:YES)、S205に進む。
【0066】
一方、S201でフラッシュメモリ84に消失フラグ情報が記憶されていると判定されたときにも(S201:YES)、制御装置80は、電源オン信号を受信したか否かを判定する(S404)。
【0067】
電源オン信号を受信していないときには(S404:NO)、S204に進む。電源信号を受信したときに(S404:YES)、制御装置80は、S402と同様の復帰処理を実行したうえで(S405)、S205に進む。
【0068】
変形例2では、時計部68が時刻を見失っている場合に、電源がオン時の復帰動作の後のタイミングに、検査処理を実行する。バッテリーが切れた場合には、プリンタ1は前回の電源オフからの経過時間を把握できない。しかしながら、変形例2では、復帰動作の後のタイミングに、検査処理を実行するため、ノズル10が異常ノズルであるか否かの状態を把握することができ、必要な場合にのみ、その後回復動作を行わせることができる。これにより、不必要なインクの消費を抑えることができる。
【0069】
なお、変形例2では、復帰動作の後のタイミングに検査処理を実行しているが、これには限られない。変形例2において、例えば、S402,S405の処理の直前等、電源がオンにされてから復帰動作が開始されるまでの期間内のタイミングに、検査処理を実行してもよい。
【0070】
変形例3では、制御装置80が、上述の実施形態の
図5、
図6のフローに沿った処理の代わりに、
図9、
図10のフローに沿った処理を行う。
【0071】
図9のフローでは、
図5のフローにおけるS104,S107,S108の処理がなく、S101でフラッシュメモリ84に消失フラグ情報が記憶されていると判定したときに(S101:YES)、S105に進む。
【0072】
また、
図10のフローでは、S201でフラッシュメモリ84に消失フラグ情報が記憶されていると判定したときに(S201:YES)、制御装置80は、電源オン信号を受信したか否かを判定する(S501)。
【0073】
電源オン信号を受信していないときには(S501:NO)、S204に進む。電源信号を受信したときに(S501:YES)、制御装置80は、所定時間が経過するまで待機し(S502:NO)、所定時間が経過したときに(S502:YES)、S205に進む。
【0074】
変形例3では、時計部68が時刻を見失っている場合でも、電源がオンにされてから所定時間が経過したタイミングに検査処理を実行することができる。また、電源がオンにされた直後は、ユーザがプリンタを使用する可能性が高いのに対して、変形例3のように電源がオンにされてから所定時間が経過したタイミングに検査処理を実行するようにすることで、ユーザがプリンタを使用していない可能性の高いときに検査処理を実行することができる。
【0075】
変形例4では、制御装置80が、上述の実施形態の
図6のフローに沿った処理の代わりに、
図11のフローに沿った処理を行う。
【0076】
図11のフローでは、S201でフラッシュメモリ84に消失フラグ情報が記憶されていると判定されたとき(S201:YES)、S202で時計部68が示す時刻が第1時刻でない場合に(S202:NO)、S204に進む。
【0077】
そして、S204で記録指令を受信していないと判定した場合には(S204:NO)、S201に戻る。S204で記録指令を受信したと判定した場合(S204:YES)、制御装置80は、受信した記録指令が、オン信号を受信した後最初に受信した記録指令であるか否かを判定する。ここで、「オン信号を受信した後最初に受信した記録指令」というのは、時計部68が時刻を見失った後にプリンタ1の電源がオンとなり、その後、最初に受信した記録指令のことである。
【0078】
受信した記録指令が、オン信号を受信した後最初に受信した記録指令でない場合には(S601:NO)、S213に進む。受信した記録指令が、オン信号を受信した後最初に受信した記録指令である場合には(S601:YES)、制御装置80は、記録を行うことを示す記録フラグ情報をフラッシュメモリ84に記憶させ(S602)S205に進む。
【0079】
また、変形例4では、S206で異常ノズルが存在しない判定した場合(S206:NO)、及び、S208のフラッシング処理を実行した後に、制御装置80は、フラッシュメモリ84に記録フラグ情報が記憶されているか否かを判定する(S603)。フラッシュメモリ84に記録フラグ情報が記憶されていない場合には(S603:NO)、S201に戻る。フラッシュメモリ84に記録フラグ情報が記憶されている場合には(S603:YES)、フラッシュメモリ84に記憶されている記録フラグ情報を消去したうえで(S604)、S210に進む。
【0080】
変形例4では、時計部68が時刻を見失っている場合でも、プリンタの電源がオンになった後、最初に記録用紙P記録を行う前に検査処理を実行することができる。
【0081】
また、上述の実施形態では、検査用駆動時に判定回路78から出力された判定用信号が、異常ノズルが存在することを示しているときに、回復動作の一部としてフラッシングを行わせる。そして、検査用駆動の後、最初に記録指令を受信したときに、回復動作の上記一部を除いた残りとして吸引パージを行わせる。しかしながら、これには限られない。
【0082】
例えば、プリンタ1において低画質での記録と高画質での記録とのいずれかを選択的に行うことができるようになっており、検査用駆動の後、最初に高画質で記録を行うことを指示する記録指令を受信したときに、S210~S213の処理を実行するようにしてもよい。
【0083】
また、回復動作の上記一部を除いた残りとしての吸引パージを行わせるのは、記録指令を受信したときであることにも限られない。例えば、記録指令以外の所定の信号を受信したときに、回復動作の上記一部を除いた残りとしての吸引パージを行わせてもよい。
【0084】
また、回復動作の一部がフラッシングであり、回復動作の上記一部を除いた残りが吸引パージであることにも限られない。
【0085】
例えば、回復動作を吸引パージとし、検査用駆動時に判定回路78から出力された判定用信号が、異常ノズルが存在することを示しているときに、回復動作の一部として吸引パージの一部を行わせてもよい。また、その後、所定の信号を受信したときに、回復動作の上記一部を除いた残りとして吸引パージの残りの部分を行わせてもよい。
【0086】
あるいは、例えば、回復動作をフラッシングとし、検査用駆動時に判定回路78から出力された判定用信号が、異常ノズルが存在することを示しているときに、回復動作の一部としてフラッシングの一部を行わせてもよい。また、その後、所定の信号を受信したときに、回復動作の上記一部を除いた残りとしてフラッシングの残りの部分を行わせてもよい。
【0087】
また、検査用駆動時に判定回路78から出力された判定用信号が、異常ノズルが存在することを示しているときには、回復動作の一部を行わせ、その後、所定の信号を受信したときに、回復動作の上記一部を除いた残りを行わせることにも限られない。
【0088】
例えば、検査用駆動時に判定回路78から出力された判定用信号が、異常ノズルが存在することを示しているときには、回復動作の一部を行わせず、その後、所定の信号を受信したときに、回復動作の全てを行わせてもよい。
【0089】
あるいは、例えば、検査用駆動時に判定回路78から出力された判定用信号が、異常ノズルが存在することを示しているときに、直ちに回復動作の全てを行わせ、その後、所定の信号を受信したときには回復動作を行わせなくてもよい。
【0090】
また、上述の実施形態では、インクジェットヘッド4の全てのノズル10について、検査用駆動を行わせたが、これには限られない。例えば、各ノズル列9における1つおきのノズル10等、インクジェットヘッド4の一部のノズル10についてのみ、検査用駆動を行わせ、それ以外のノズル10については、当該検査用駆動時に判定回路78から出力された判定用信号に基づいて、異常ノズルであるか否かを推定してもよい。
【0091】
また、上述の実施形態では、ノズル10から検出用電極76に向けてインクを吐出させたときの検出用電極76の電位に応じて、判定回路78が異常ノズルであるか否かに応じた信号を出力したが、これには限られない。
【0092】
例えば、鉛直方向に延びた検出用電極を配置し、ノズル10から検出用電極と対向する領域を通過するようにインクを吐出させたときの検出用電極の電位に応じて、判定回路から、異常ノズルであるか否かに応じた信号を出力してもよい。あるいは、ノズル10から吐出されたインクを検出する光センサ(本発明の「信号出力部」)を設け、光センサから、異常ノズルであるか否かに応じた信号を出力してもよい。
【0093】
あるいは、例えば、特許第4929699号公報に記載されているのと同様に、インクジェットヘッドのノズルが形成されたプレートに、ノズルからインクが吐出されたときの電圧の変化を検出する電圧検出回路(本発明の「信号出力部」)を接続して、電圧検出回路から制御装置80に、異常ノズルであるか否かに応じた信号を出力するようにしてもよい。
【0094】
あるいは、例えば、特許第6231759号公報に記載されているのと同様に、インクジェットヘッドの基板を、温度検知素子(本発明の「信号出力部」)を備えたものとしてもよい。そして、インクの吐出のために第1印加電圧を印加してヒータを駆動した後に、インクが吐出されないように第2印加電圧を印加してヒータを駆動し、第2印加電圧を印加してから、その後、所定時間が経過するまでの間の、温度検知素子で検知された温度の変化に基づいて、ノズル10が異常ノズルであるか否かに応じた信号を出力するようにしてもよい。
【0095】
また、以上の例では、インクが吐出されないノズル10を異常ノズルと判定したが、これには限られない。例えば、ノズル10からのインクの吐出方向が正常であるか否かに応じた信号を出力する信号出力部を設け、この信号出力部からの信号に基づいて、吐出方向に異常のあるノズル10を異常ノズルと判定してもよい。
【0096】
また、上述の実施形態では、パージ処理において一律の吸引パージを行わせたが、これには限られない。例えば、メンテナンスユニット8において、インクの排出量の異なる複数種類の吸引パージのいずれかを選択的に行わせることができるようになっていてもよい。複数種類の吸引パージ間では、例えば、吸引ポンプ72の駆動時間及び吸引ポンプ72の回転速度の少なくとも一方が異なっていることにより、インクの排出量が異なっていてもよい。そして、パージ処理において、例えば、異常ノズルの数が多い場合ほど、インクの排出量の多い吸引パージを行わせてもよい。
【0097】
また、以上の例では、パージ処理において吸引パージを行わせたが、これには限られない。例えば、サブタンク3とインクカートリッジ14とを接続するチューブ15の途中部分に加圧ポンプが設けられていてもよい。あるいは、プリンタにインクカートリッジと接続された加圧ポンプが設けられていてもよい。そして、複数のノズル10がキャップ71で覆われた状態で、上記加圧ポンプを駆動させることで、インクジェットヘッド4内のインクを加圧してノズル10からインクジェットヘッド4内のインクを排出させる、いわゆる加圧パージを行ってもよい。
【0098】
さらには、パージ処理において、吸引ポンプ72による吸引と加圧ポンプによる加圧の両方を行わせてもよい。
【0099】
また、以上の例では、プリンタが、時計部に電力を供給するバッテリーを備え、コンセントからの電力供給が途絶え、且つ、バッテリー切れとなったときに時計部が時刻を見失うものであったが、これには限られない。例えば、プリンタは、時計部に電力を供給するバッテリーを備えておらず、コンセントからの電力供給が途絶えたときに時計部が時刻を見失うものであってもよい。
【0100】
また、以上では、キャリッジとともに走査方向に移動しつつ複数のノズルからインクを吐出する、いわゆるシリアルヘッドを備えたプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。例えば、走査方向に記録用紙Pの全長にわたって延びたいわゆるラインヘッドを備えたプリンタに本発明を適用することも可能である。
【0101】
また、以上では、ノズルからインクを吐出して記録用紙Pに記録を行うプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。Tシャツ、屋外広告用のシート、スマートフォン等の携帯端末のケース、段ボール、樹脂部材など、記録用紙以外の被記録媒体に画像を記録するプリンタにも適用され得る。また、インク以外の液体、例えば、液体状にした樹脂や金属を吐出する液体吐出装置にも適用され得る。
【符号の説明】
【0102】
1 プリンタ
4 インクジェットヘッド
8 メンテナンスユニット
10 ノズル
67 バッテリー
68 時計部
72 吸引ポンプ
76 検出用電極
77 高電圧電源回路
78 判定回路
79 抵抗
80 制御装置
84 フラッシュメモリ