IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 凸版印刷株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-熱転写受像シート 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114728
(43)【公開日】2022-08-08
(54)【発明の名称】熱転写受像シート
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/52 20060101AFI20220801BHJP
   B41M 5/50 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
B41M5/52 400
B41M5/50 410
B41M5/50 420
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021011140
(22)【出願日】2021-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】本橋 晃
【テーマコード(参考)】
2H111
【Fターム(参考)】
2H111AA00
2H111AA27
2H111CA03
2H111CA04
2H111CA05
2H111CA23
2H111CA30
2H111CA31
2H111CA33
2H111CA41
(57)【要約】      (修正有)
【課題】印画後の赤味を抑制し、異常転写を抑制することができる熱転写受像シートを提供する。
【解決手段】受像層60、下地層50、断熱層40、接着剤層30、基材10、ポリオレフィン樹脂層20からなる熱転写受像シート1において、受像層60は、シリコーン成分と塩ビ成分とを含み、受像層60の表面をX線電子分光法により測定して得られる測定値の強度比率を、表面Si強度(表面ケイ素量/(表面ケイ素量、表面炭素量、表面酸素量、表面塩素量の総和))として算出し、表面Si強度が1.0atomic%~8.5atomic%の範囲に設定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受像層、下地層、断熱層、接着剤層、紙、ポリオレフィン樹脂層からなる熱転写受像シートにおいて、
前記受像層は、
シリコーン成分と塩ビ成分とを含み、前記受像層の表面をX線電子分光法により測定して得られる測定値の強度比率を、表面Si強度(表面ケイ素量/(表面ケイ素量、表面炭素量、表面酸素量、表面塩素量の総和))として算出し、前記表面Si強度が1.0atomic%~8.5atomic%の範囲に設定された、熱転写受像シート。
【請求項2】
前記断熱層は、ポリプロピレンからなる、請求項1に記載の熱転写受像シート。
【請求項3】
前記断熱層は、二軸延伸フィルムからなる、請求項1又は2に記載の熱転写受像シート。
【請求項4】
前記受像層の塩ビ成分は、塩化ビニル、塩化ビニル-アクリル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の熱転写受像シート。
【請求項5】
前記受像層は、ポリエステルを含有する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の熱転写受像シート。
【請求項6】
前記受像層の厚みは、1μm~5μmである、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の熱転写受像シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写方式のプリンタに使用される熱転写受像シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、文字又は画像等を被転写体に形成する印刷方式として、昇華型熱転写方式、溶融型熱転写方式等が採用されている。昇華型熱転写方式は、熱転写リボンにおける染料層と、熱転写受像シートにおける受像層とを互いに重ね合わせ、次いで、電気信号により発熱が制御されるサーマルヘッドによって熱転写リボンを加熱することで、染料層中の染料を昇華させて受像層へ移行させ、受像層上に所望の文字、画像等を形成させる方式である。
【0003】
昇華型熱転写方式は、昇華型の染料を用いて濃度階調を自由に調節できることから、自然画を比較的忠実に再現することができる。このため、昇華型熱転写用の熱転写受像シートも、一般プリンタ用、アミューズメント用、証明写真の自動販売機用などの様々な用途で写真印画用紙として使用されている。熱転写受像シートは、多くの場合、使用単位に切り出された枚葉タイプで流通している。
【0004】
熱転写受像シートには、さまざまな要求特性がある。重要な特性として、発色特性と、異常転写がある。発色特性はより自然な画質を実現するためにあらゆる諧調においてシアン、マゼンダ、イエローの印画濃度がバランスよく発色していることが望まれる。
プリンタ側のiccプロファイルを用いてこれらの印画濃度は調整をすることが可能である。ところが、諧調が上がるごとによって印画濃度が線形に上がっていく場合には、比較的iccプロファイルの調整は、簡易的に調整することによって自然がを忠実に再現できるが、特定的に低諧調部分のマゼンダの濃度が上がることにより、写真を印画した際に、赤味を呈する画質となってしまい、自然画を忠実に再現させるには調整が難しくなる。そのため、iccプロファイルの調整なしで自然に印画濃度がバランスよく発色することが求められる。
【0005】
また、一方で、異常転写は、印画時のリボンと、受像層との離形性能が寄与し、この本来、写真には染料のみが昇華転写されねばならないところ、リボンのカラー層を保持する樹脂自体が転写されてしまい印画画質を著しく低下させる現象である。
【0006】
例えば特許文献1には、バインダー樹脂とケイ素含有材料を含有させ、かつ受容層表面における炭素原子数、酸素原子数、塩素原子数及びケイ素原子数の総和に対するケイ素原子数の割合を特定の数値範囲内とすることにより、受容層の離型性を顕著に改善し異常転写を抑制でき、かつ高級感のある画質が得られるものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-111680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の熱転写受像シートでは、表面ケイ素量が増加すると、マゼンダ染料と、受像層層との染料と樹脂との吸着が増大し、低諧調部での赤味を呈し印画画質に大きく影響するおそれがあることから、その点で改善の余地があった。
【0009】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、印画後の赤味を抑制し、異常転写を抑制する熱転写受像シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第一の態様は、受像層、下地層、断熱層、接着剤層、紙、ポリオレフィン樹脂層からなる熱転写受像シートにおいて、前記受像層は、シリコーン成分と塩ビ成分とを含み、前記受像層の表面をX線電子分光法により測定して得られる測定値の強度比率を、表面Si強度(表面ケイ素量/(表面ケイ素量、表面炭素量、表面酸素量、表面塩素量の総和))として算出し、前記表面Si強度が1.0atomic%~8.5atomic%の範囲に設定された。
【発明の効果】
【0011】
本発明の熱転写受像シートによれば、印画後の赤味を抑制し、異常転写を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態による熱転写受像シートを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態による熱転写受像シート1は、受像層60と、下地層50と、断熱層40と、接着剤層30と、基材10(紙)と、ポリオレフィン樹脂層20と、がこの順に積層された支持体で構成されている。
【0014】
基材10は、シート状で紙を含有するものであり、各種の紙を使用できる。基材10としては、公知のものを使用することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレ-ト(PEN)等のポリエステル、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリアミド等の合成樹脂のフィルムや、上質紙、中質紙、コート紙、アート紙、樹脂ラミネート紙等の紙類等が挙げられる。樹脂フィルムおよび紙類は、単独で用いられてもよいし、両者が組み合わされた複合体が基材10とされてもよい。
【0015】
基材10の厚さについては、印画物としてのコシ(剛性)、強度や耐熱性等を考慮すると、25マイクロメートル(μm)以上250μm以下の範囲のものが使用可能である。より好ましくは、50μm以上200μm以下程度の厚さが好ましい。
【0016】
ポリオレフィン樹脂層20は、基材10の第1表面10aに設けられている。ポリオレフィン樹脂層20の材料となる樹脂は、成形性の観点から低密度ポリエチレン(LDPE)を主成分として含むことが好ましい。
【0017】
接着剤層30は、基材10の第1表面10aと反対側の第2表面10bに設けられている。接着剤層30は、基材10と断熱層40とをドライラミネーションにより接合するための層である。接着剤層30としては、ドライラミネーション可能なものであればよく、溶剤系で樹脂を溶解させた接着剤が好適である。例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル-アクリル共重合体樹脂、酢酸ビニル-塩化ビニル共重合体樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリエステル樹脂等を成分とするものが挙げられる。また水性形接着剤、ホットメルト形接着剤、フィルム系接着剤、反応形接着剤などの無溶剤系接着剤も用いることができる。
【0018】
断熱層40は、接着剤層30上に設けられた多孔質層である。断熱層40は、多数の微細な空隙を有しており、サーマルヘッドからの熱印加時の断熱性、およびクッション性等を熱転写受像シート1に付与する。断熱層40を形成する樹脂としては、特に限定されるものではなく、公知の樹脂材料を適宜選択することができる。断熱性とクッション性の観点からは、発泡ポリプロピレン樹脂が好ましい。
断熱層40と基材10との接合方法に特に制限はないが、接着剤層30を用いたドライラミネーションが好適である。この場合は、断熱層40と基材10との間に接着剤層30が存在する。
【0019】
下地層50は、断熱層40上に設けられている。下地層50は、断熱層40と受像層60との密着性向上や、印画後の熱転写受像シート1の保存性向上等を目的とする層である。
下地層50の材料としては、目的を考慮しつつ、公知の各種材料から選択して用いることができる。例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、およびこれら樹脂の共重合体等を挙げることができる。上述した材料は、単独で用いられてもよいし、2種以上を混合して用いられてもよい。
下地層50の厚さは、0.1μm以上3μm以下であればよく、0.2μm以上1.0μm以下程度が好ましい。
【0020】
受像層60は、下地層50上に設けられている。受像層60としては、シリコーン成分と、塩ビ成分を含む受像層からなり、表面のX線電子分光法により得られる測定値の強度比率として、表面Si強度(表面ケイ素量/(表面ケイ素量、表面炭素量、表面酸素量、表面塩素量の総和))として定義される強度が1.0atomic%~8.5atomic%の範囲に収まることが求められる。
【0021】
塩ビ成分が含まれるバインダー樹脂の一例として、塩化ビニル-アクリル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル-アクリル共重合体、スチレン-アクリル共重合体、塩化ビニル-アクリル-エチレン共重合体、塩化ビニル-アクリル-スチレン共重合体等を挙げることができる。これらは単独で使用されてもよいし、2種以上が混合されて使用されてもよい。
【0022】
シリコーン成分としては、エポキシ・アラルキル変性シリコーンオイル、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシンシシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、メカプト変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイルなどの反応性を有する変性シリコーンや、ポリエーテル変性シリコーンオイル、メチルスチル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、高級エステル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸含有シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルなどの非反応性シリコーンオイルなどがあげられるこれらは単独で使用されてもよいし、2種類以上、混合されて使用されてもよい。
【0023】
受像層60の厚さは、0.1μm以上10μm以下であればよいが、1μm以上5μm以下程度がより好ましい。受像層60の膜厚が薄い場合には、十分な印画濃度が得られ難い。また、受像層60の膜厚が厚い場合には、コストが増大するうえ、膜のクラックなどが生じ易くなり、印画画質に影響を与えるという不具合が生じる。
また、受像層60は、必要に応じて造膜助剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、架橋剤、蛍光染料、等の公知の各種添加剤を含有してもよい。
【0024】
図1に示すように、上述した熱転写受像シート1では、シリコーン成分と塩ビ成分とを含み、受像層60の表面をX線電子分光法により測定して得られる測定値の強度比率を、表面Si強度(表面ケイ素量/(表面ケイ素量、表面炭素量、表面酸素量、表面塩素量の総和))として算出し、表面Si強度を1.0atomic%~8.5atomic%の範囲に設定することにより、印画後の赤味を抑制し、異常転写を抑制することができる。
【0025】
次に、本発明の熱転写受像シートについて、実施例を用いてさらに説明する。本発明は実施例の説明により何ら限定されるものではない。
【0026】
(実施例1)
断熱層40として、二軸延伸によって成形され、厚み30μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いた。断熱層40の一方の面に、ウレタン系塗料(第一工業製薬社製 スーパーフレックス120)を乾燥後膜厚が1μmとなるように塗工し、下地層50を形成した。さらに、下地層50上に、塩化ビニル-酢酸ビニル系樹脂を主としたインキ1を乾燥後膜厚が3μmとなるようにグラビア印刷にて塗工し、受像層60を形成した。
【0027】
基材10として、紙(坪量150g/m)を準備した。基材10の一方の第1表面10aに、LDPEを厚さ20μmで積層して第1ポリオレフィン樹脂層を形成した。基材10のもう一方の第2表面10bに、LDPEとHDPEとを2:8で配合した樹脂を押出し、厚さ20μmの第2ポリオレフィン樹脂層を形成した。接着剤(タケネートA525/A56)を使用して断熱層40と第1ポリオレフィン樹脂層とをドライラミネートにより接合し、実施例1の熱転写受像シートを得た。
【0028】
インキ1
塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂(日信化学工業社製 ソルバインC) 15部
シリコーン変性オイル(信越化学工業製 KF-1005) 0.75部
メチルエチルケトン(MEK) 42部
トルエン 40部
【0029】
(実施例2)
塩化ビニル-酢酸ビニル系樹脂を主としたインキ2を用いて塗工し、それ以外は実施例1に記載の方法と同様の方法にて実施例2の熱転写受像シートを得た。
【0030】
インキ2
塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂(日信化学工業社製 ソルバインC) 15部
シリコーン変性オイル(信越化学工業製 KF-1005) 0.3部
メチルエチルケトン(MEK) 44.3部
トルエン 40.4部
【0031】
(実施例3)
塩化ビニル-酢酸ビニル系樹脂を主としたインキ3を用いて塗工し、それ以外は実施例1に記載の方法と同様の方法にて実施例3の熱転写受像シートを得た。
【0032】
インキ3
塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂(日信化学工業社製 ソルバインC) 15部
シリコーン変性オイル(信越化学工業製 KF-1005) 2.25部
メチルエチルケトン(MEK) 44.3部
トルエン 38.4部
【0033】
(比較例1)
塩化ビニル-酢酸ビニル系樹脂を主としたインキ4を用いて塗工し、それ以外は実施例1に記載の方法と同様の方法にて比較例1の熱転写受像シートを得た。
【0034】
インキ4
塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂(日信化学工業社製 ソルバインC) 15部
シリコーン変性オイル(信越化学工業製 KF-1005) 3.0部
メチルエチルケトン(MEK) 44.3部
トルエン 37.7部
【0035】
(比較例2)
塩化ビニル-酢酸ビニル系樹脂を主としたインキ5を用いて塗工し、それ以外は実施例1に記載の方法と同様の方法にて比較例2の熱転写受像シートを得た。
【0036】
インキ5
塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂(日信化学工業社製 ソルバインC) 15部
メチルエチルケトン(MEK) 44部
トルエン 41部
【0037】
上述した実施例1~3、比較例1~4をまとめたものを表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
次に、各例(実施例1~3、比較例1、2)の熱転写受像シートについて、以下の3項目(表面X線電子分光法、印画時の赤味評価、印画後異常転写)を評価した。
得られた受像シートに対して印画評価を実施した結果を表2に示す。
【0040】
【表2】
【0041】
<表面X線電子分光法>
表面状態の情報に関しては、日本電子株式会社製のJPS-9030光電子分光法によって得た。表面ケイ素、表面炭素、表面酸素、表面塩素の情報から演算を行い、表面Si強度として算出した。
【0042】
<印画時の赤味評価>
各例の熱転写受像シートに対し、プリンタ(大日本印刷社製 DS40)で付属のリボンを使用して11ステップ画像を印画した。グレースケールの2諧調目の評価を行い、色差計で印画濃度に対し、マゼンダの印画濃度OD値がイエロー、シアンの印画濃度に対して0.03以上の乖離がある場合を赤味があると判定し「×」評価とし、乖離が0.03未満の場合には「〇」と評価した。
【0043】
<印画後異常転写>
各例の熱転写受像シートに対し、プリンタ(大日本印刷社製 DS40)で付属のリボンを使用して11ステップ画像を印画した。低諧調部にてリボンのカラー樹脂が印画物側に付着した場合を異常転写発生であると判定し「×」評価とし、印画物側に付着物がない場合には「〇」評価とした。
【0044】
<総合評価>
上記、印画時の赤味評価、印画後の異常転写がいずれも〇であった場合を「○」(良好)とし、それ以外は「×」(不良)とした。
【0045】
本実施例の結果、表2に示すように、実施例1~3は、上述した3点のすべての評価項目において「〇」となり、良好であった。比較例1、2では、評価項目の少なくとも一つの結果が「×」となり、不良な評価があった。
このような結果から、受像層において、シリコーン成分と塩ビ成分とを含み、受像層の表面をX線電子分光法により測定して得られる測定値の強度比率を、表面Si強度(表面ケイ素量/(表面ケイ素量、表面炭素量、表面酸素量、表面塩素量の総和))として算出し、表面Si強度を1.0atomic%~8.5atomic%の範囲に設定することにより、印画後の赤味を抑制し、異常転写を抑制する熱転写受像シート1の提供することができることが確認できた。
【0046】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせなども含まれる。
【0047】
例えば、本実施形態による熱転写受像シート1は、受像層60と、下地層50と、断熱層40と、接着剤層30と、基材10(紙)と、ポリオレフィン樹脂層20と、がこの順に積層され構成としているが、このような順の積層構造であることに限定されることはない。
例えば、受像層60と、下地層50と、断熱層40を上層の基本構造としたときに、下層の基材として以下のもの等を採用することができる。すなわち下層の基材の第1変形例として、上方から下方に向けた順で、第1ポリオレフィン層/紙基材(コート紙または非コート紙他)/第2ポリオレフィン層とした構成がある。あるいは、上記の第1変形例の上層と下層との間にドライラミネート(接着剤層30)を介した構成、すなわち、上層/接着剤層/下層とする第2変形例もある。さらに、第3変形例の上層より下の層構造として、接着層/紙基材(コート紙または非コート紙他)/ポリオレフィン層/背面層とするこよも可能である。なお、背面層は、プリンタの搬送(トラクタ)機構(ゴムやスパイクのようなグリップ構造)によって必要になるものである。プリンタの搬送条件によって、背面層を取り付けたり、その構成材料が変更、改良されたりする。
【符号の説明】
【0048】
1 熱転写受像シート
10 基材(紙)
10a 第1表面
10b 第2表面
20 ポリオレフィン樹脂層
30 接着剤層
40 断熱層
50 下地層
60 受像層
図1