(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114746
(43)【公開日】2022-08-08
(54)【発明の名称】空気調和装置
(51)【国際特許分類】
F24F 13/20 20060101AFI20220801BHJP
F24F 1/0076 20190101ALI20220801BHJP
F24F 13/06 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
F24F1/0007 401C
F24F1/0076
F24F13/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021011165
(22)【出願日】2021-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河村 佳憲
【テーマコード(参考)】
3L051
3L080
【Fターム(参考)】
3L051BC02
3L051BD01
3L051BD04
3L080BA04
(57)【要約】
【課題】室内におけるウイルス等の拡散を抑制しつつ、殺菌作用のある物質を用いて効率的に除菌を実現することのできる空気調和装置を提供する。
【解決手段】空気調和装置は、筐体と、熱交換器と、ファンと、通風部材と、発生ユニットと、給水部と、制御部と、を備える。少なくとも一つの通風部材は、第1の開き位置に位置する風向板によって開放された吹出し口の少なくとも一部を覆う第2の閉じ位置に配置可能であり、第2の閉じ位置において、ファンにより送られてくる風が通風口を通って外部に放出される第1の吹出流路と、通風口を通らずに第1の吹出流路に隣接して外部に放出される第2の吹出流路を形成できる。発生ユニットは、ファンと通風部材との間に設けられ、殺菌作用を有するイオンまたはイオンを含む微細水滴を発生させる。給水部は、発生ユニットに水分を供給する。制御部は、ファンと発生ユニットと風向板と通風部材との動作状態を制御する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部の通風路と、前記通風路を外部に連通させる吸込み口と、前記通風路を外部に連通させる吹出し口と、が設けられた筐体と、
前記通風路に設けられた熱交換器と、
前記通風路に設けられ、前記吸込み口から前記吹出し口へ風を送るファンと、
前記吹出し口の少なくとも一部を覆う第1の閉じ位置と、前記吹出し口の少なくとも一部を開放する第1の開き位置と、の間で移動可能な少なくとも一つの風向板と、
前記第1の開き位置に位置する前記風向板によって開放された前記吹出し口の少なくとも一部を覆う第2の閉じ位置に配置可能であり、前記第2の閉じ位置において前記通風路に向く内面と、前記第2の閉じ位置において外部に向く外面と、を有し、前記内面及び前記外面に開口する少なくとも一つの通風口が設けられ、前記第2の閉じ位置において、前記ファンにより送られてくる風が前記通風口を通って外部に放出される第1の吹出流路と、前記通風口を通らずに前記第1の吹出流路に隣接して外部に放出される第2の吹出流路を形成できる、少なくとも一つの通風部材と、
前記ファンと前記通風部材との間に設けられ、殺菌作用を有するイオンまたは前記イオンを含む微細水滴を発生させる発生ユニットと、
前記発生ユニットに水分を供給する給水部と、
前記ファンと前記発生ユニットと前記風向板と前記通風部材との動作状態を制御する制御部と、
を具備する空気調和装置。
【請求項2】
前記発生ユニットは、OHラジカルまたは過酸化水素を放出する、請求項1に記載の空気調和装置。
【請求項3】
前記給水部は、前記熱交換器から熱交換時に得られる凝縮水を貯留するドレンパンである、請求項1または請求項2に記載の空気調和装置。
【請求項4】
前記給水部は、前記筐体の外部から外部水を受け付ける給水タンクである、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の空気調和装置。
【請求項5】
前記筐体が設置される室内に存在する生物を検知する検知センサをさらに備え、
前記制御部は、前記検知センサの検知結果に基づき、前記ファンと前記発生ユニットと前記風向板と前記通風部材との動作状態を制御する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の空気調和装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記ファンにより送られてくる風が前記通風口を通る第1のモードと、前記通風口を通らない第2のモードとを切り替え可能である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人体に良好な影響を与え得るとされるマイナスイオンを送風に乗せて放出する空気調和装置が知られている。そして、左右方向に向きを変える左右方向ルーバを用いて吹出風の方向を変化させることで、マイナスイオンを室内の広範囲に放出し、マイナスイオンの分布の偏りを生じさせにくくする技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、昨今、ウイルス感染が大きな問題になっている中で、従来技術のように左右方向ルーパ等を用いて送風を行う場合、送風によってウイルスを室内に拡散させてしまう虞がある。また、殺菌作用が期待できる物質(イオン等を含む)を散布した場合、拡散してしまったウイルスに届かない場合が生じてしまうという問題が生じる。
【0005】
本発明が解決する課題の一例は、室内におけるウイルス等の拡散を抑制しつつ、殺菌作用のある物質を用いて効率的に除菌を実現することのできる空気調和装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの実施形態に係る空気調和装置は、筐体と、熱交換器と、ファンと、通風部材と、発生ユニットと、給水部と、制御部と、を具備する。筐体には、内部の通風路と、前記通風路を外部に連通させる吸込み口と、前記通風路を外部に連通させる吹出し口と、が設けられている。熱交換器は、前記通風路に設けられている。ファンは、前記通風路に設けられ、前記吸込み口から前記吹出し口へ風を送る。少なくとも一つの風向板は、前記吹出し口の少なくとも一部を覆う第1の閉じ位置と、前記吹出し口の少なくとも一部を開放する第1の開き位置と、の間で移動可能である。少なくとも一つの通風部材は、前記第1の開き位置に位置する前記風向板によって開放された前記吹出し口の少なくとも一部を覆う第2の閉じ位置に配置可能であり、前記第2の閉じ位置において前記通風路に向く内面と、前記第2の閉じ位置において外部に向く外面と、を有し、前記内面及び前記外面に開口する少なくとも一つの通風口が設けられ、前記第2の閉じ位置において、前記ファンにより送られてくる風が前記通風口を通って外部に放出される第1の吹出流路と、前記通風口を通らずに前記第1の吹出流路に隣接して外部に放出される第2の吹出流路を形成できる。発生ユニットは、前記ファンと前記通風部材との間に設けられ、殺菌作用を有するイオンまたは前記イオンを含む微細水滴を発生させる。給水部は、前記発生ユニットに水分を供給する。制御部は、前記ファンと前記発生ユニットと前記風向板と前記通風部材との動作状態を制御する。
【0007】
また、前記発生ユニットは、例えば、OHラジカルまたは過酸化水素を放出してもよい。
【0008】
また、前記給水部は、例えば、前記熱交換器から熱交換時に得られる凝縮水を貯留するドレンパンであってもよい。
【0009】
また、前記給水部は、例えば、前記筐体の外部から外部水を受け付ける給水タンクであってもよい。
【0010】
前記筐体が設置される室内に存在する生体を検知する検知センサをさらに備え、例えば、前記制御部は、前記検知センサの検知結果に基づき、前記ファンと前記発生ユニットと前記風向板と前記通風部材との動作状態を制御してもよい。
【0011】
また、前記制御部は、例えば、前記ファンにより送られてくる風が前記通風口を通る第1のモードと、前記通風口を通らない第2のモードとを切り替え可能であってもよい。
【0012】
以上の空気調和装置によれば、例えば、ファンにより送られてくる風が通風口を通って外部に放出される第1の吹出流路と、通風口を通らずに第1の吹出流路に隣接して外部に放出される第2の吹出流路が形成さる。放出される風は全体として乱流となり、緩やかな風流(いわゆる無風感(登録商標)の風)となる。その結果、ウイルス等が放出された風流によって拡散されることが抑制しやすくなる。また、無風感の風によって殺菌作用を有するイオンまたはそのようなイオンを含む微細水滴をウイルスの発生源(例えば、ウイルス感染者等)の周辺に運びやすくなる。その結果、ウイルス等の除菌を効果的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る空気調和装置の室内機の構成を示す例示的かつ模式的な断面図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る空気調和装置の室内機に含まれる発生ユニット及び給水部の構成を示す例示的かつ模式的な断面図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態の運転中の室内機の構成を示す例示的かつ模式的な断面図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態の風向板と通風部材との一部を示す例示的かつ模式的な正面図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態の通風部材の構成を示す例示的かつ模式的な断面図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態の空気調和装置の室内機の構成を示す例示的かつ模式的なブロック図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態の空気調和装置の室内機において、通風部材を閉じ位置に動作させない場合に放出される風の状態とウイルスの拡散状態を示す例示的かつ模式的な図である。
【
図8】
図8は、第1の実施形態の空気調和装置の室内機において、通風部材を閉じ位置に動作させた場合に放出される風の状態とウイルスの拡散状態を示す例示的かつ模式的な図である。
【
図9】
図9は、第2の実施形態に係る空気調和装置の室内機の動作状態の構成を示す例示的かつ模式的な断面図である。
【
図10】
図10は、第2の実施形態の通風部材の構成を示す例示的かつ模式的な斜視図である。
【
図11】
図11は、第2の実施形態に係る空気調和装置の室内機の動作状態で放出される風の状態を示す例示的かつ模式的な部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
以下に、第1の実施形態について、
図1~8を参照して説明する。なお、本明細書においては基本的に、鉛直上方を上方向、鉛直下方を下方向と定義する。また、本明細書において、実施形態に係る構成要素及び当該要素の説明が、複数の表現で記載されることがある。構成要素及びその説明は、一例であり、本明細書の表現によって限定されない。構成要素は、本明細書におけるものとは異なる名称でも特定され得る。また、構成要素は、本明細書の表現とは異なる表現によっても説明され得る。
【0015】
図1は、第1の実施形態に係る空気調和装置10の室内機11を概略的に示す断面図である。
図1に示すように、空気調和装置10は、室内機11を有する。室内機11は、建造物の室内に配置されるとともに、冷媒配管及び電気配線を介して室外に配置された室外機に接続される。なお、空気調和装置10は、この例に限られない。
【0016】
室内機11は、筐体21と、熱交換器22と、ファン23と、フィルタ24と、二つの風向板25と、二つの通風部材26、および殺菌作用を有するイオンまたはそのイオンを含む微細水滴を発生させる発生ユニット100、給水部102等を有する。風向板25及び通風部材26は、ルーバとも称され得る。また、給水部102は、ドレンパンとも称され得る。
【0017】
各図面に示されるように、本明細書において、便宜上、X軸、Y軸及びZ軸が定義される。X軸とY軸とZ軸とは、互いに直交する。X軸は、室内機11の幅に沿って設けられる。Y軸は、室内機11の奥行に沿って設けられる。Z軸は、室内機11の高さに沿って設けられる。
【0018】
さらに、本明細書において、X方向、Y方向及びZ方向が定義される。X方向は、X軸に沿う方向であって、X軸の矢印が示す+X方向と、X軸の矢印の反対方向である-X方向とを含む。Y方向は、Y軸に沿う方向であって、Y軸の矢印が示す+Y方向と、Y軸の矢印の反対方向である-Y方向とを含む。Z方向は、Z軸に沿う方向であって、Z軸の矢印が示す+Z方向と、Z軸の矢印の反対方向である-Z方向とを含む。本実施形態において、+Z方向は上方向であり、-Z方向は下方向である。
【0019】
筐体21は、X方向に延びた略直方体状に形成される。なお、筐体21は、他の形状に形成されてもよい。筐体21は、例えば、建造物の壁等に架けられる。筐体21は、上面21aと、下面21bとを有する。上面21aは、筐体21の上方向の端部またはその近傍に設けられ、略上方向に向く。下面21bは、筐体21の下方向の端部またはその近傍に設けられ、略下方向に向く。
【0020】
筐体21に、通風路31、吸込み口32、及び吹出し口33が設けられる。通風路31は、筐体21の内部に設けられる。吸込み口32は、例えば、筐体21の上面21aに開口する。吹出し口33は、例えば、筐体21の下面21bに開口する。吸込み口32及び吹出し口33は、筐体21の他の部分に開口してもよい。
【0021】
室内機11は、通風路31に風を通すことができる。風は、空気のような気体の流れである。吸込み口32は、通風路31の一方の端に設けられ、通風路31を室内機11の外部に連通する。吹出し口33は、通風路31の他方の端に設けられ、通風路31を室内機11の外部に連通する。言い換えると、通風路31は、筐体21の内部において、吸込み口32と吹出し口33との間に設けられる。
【0022】
熱交換器22は、通風路31に設けられる。熱交換器22は、例えば冷媒配管と複数のフィンとを有する。熱交換器22は、通風路31において周囲の気体と熱交換を行う。これにより、熱交換器22は、冷房運転時に通風路31を流れる風を冷却し、暖房運転時に通風路31を流れる風を加熱する。
【0023】
ファン23は、通風路31に設けられる。ファン23は、X方向に延びる回転軸Axfまわりに回転することで、通風路31において吸込み口32から吹出し口33へ風を送る。これにより、室内機11は、吸込み口32から室内の空気を通風路31へ吸い込み、吹出し口33から通風路31の空気(風)を吹き出す。このため、本明細書では、通風路31において吸込み口32に近い側を上流、吹出し口33に近い側を下流と称する。
【0024】
ファン23は、熱交換器22の下流に位置する。このため、ファン23が風を生じさせると、吸込み口32から吸い込まれた空気が熱交換器22のフィンを通過する。これにより、通風路31を流れる空気が熱交換器22と熱交換を行う。なお、ファン23は、上述したように空気(風)を吸込み口32から吹出し口33に向けて流す「順方向運転」と空気(風)を吹出し口33から吸込み口32に向けて流す「逆方向運転」との切り替えが可能である。順方向運転は、室内機11が通常運転(除菌運転、非除菌運転を含む)。逆方向運転は、例えば、室内機11内部のクリーニングを行う際に実行される。逆方向運転及びクリーニングの詳細については後述する。
【0025】
フィルタ24は、吸込み口32、または通風路31における吸込み口32の近傍に設けられる。フィルタ24は、熱交換器22の上流に位置する。フィルタ24は、筐体21の内部から吸込み口32を覆う。フィルタ24は、例えば、吸込み口32から吸い込まれた空気を濾過し、当該空気中の塵埃を捕捉する。
【0026】
発生ユニット100は、ファン23と通風部材26との間に設けられる。発生ユニット100は、殺菌作用を有するイオンまたはこのイオンを含む微細水滴を発生させる周知のユニットである。本実施形態の空気調和装置10(室内機11)の場合、室内機11の内部で発生させたOHラジカル(過酸化水素)を吹出し口33からファン23による風に乗せて、室内に放出することにより、室内に存在する可能性のあるウイルス等の除菌処理を行う。
【0027】
発生ユニット100は、
図2に示されるように、例えば、一対の針状の電極100aを備え、この一対の電極100a間に高電圧を印加することによりコロナ放電が生じるように構成されている。一対の電極100aの間には、発生ユニット100の近傍(例えば下方)に配置された給水部102の水M(水分)を、例えば浸透圧で吸い上げる浸透管100bが配置されている。浸透管100bは、例えば、発生ユニット100を給水部102に支持させるブラケット100cによって保持されている。したがって、一対の電極100aの周囲の空気は、給水部102の水Mにより加湿状態となる。水Mにより加湿された空気中でコロナ放電を発生させることにより、殺菌効果の強いOHラジカル(ヒドロキシルラジカル)が生成される。また、電極100aの周囲には、水Mが十分に存在するため、OHラジカルが水に可溶し過酸化水素が生成される。OHラジカルは、一般に酸化されやすく短寿命であるが、過酸化水素とすることにより、酸化されにくくなり寿命を延ばすことができる。
【0028】
発生ユニット100で発生した過酸化水素は、ファン23により発生した風に乗り室内機11の外部(室内)に放出される。室内機11から放出された過酸化水素は、空気中に浮遊するウイルス等の表面でプラスイオン(H+)とマイナスイオン(O2
-)が結合し、一部がOHラジカルに戻る。酸化力の強いOHラジカルは、ウイルスのたんぱく質の表面から、水素原子(H)を奪い、非活性化(除菌)する。なお、OHラジカルは奪い取った水素原子(H)と結合し、反応後は水(H2O)になり空気中に戻る。過酸化水素(OHラジカル)の室内への放出態様の詳細は後述する。
【0029】
なお、給水部102の水Mは、空気調和装置10(室内機11)が冷房モードで運転される際に、熱交換器22から熱交換時に得られる凝縮水とすることができる。この場合、給水部102は、ドレンパンである。冷房運転時には、凝縮水が得られるため外部からの給水を行うことなく、発生ユニット100においてOHラジカルの発生及び過酸化水素の発生を効率的に行うことができる。なお、熱交換器22を通過する空気は、フィルタ24によって濾過され塵埃等が除去されているため、浸透管100bで目詰まり等が発生することを回避することができる。また、発生ユニット100おいて、コロナ放電を発生させる場合、少量であるがオゾンが発生する。オゾンも、ファン23により発生した風に乗り室内機11の外部(室内)に放出され、除菌、消臭等に利用され得る。
【0030】
また、給水部102には、給水タンク102aが接続されている。上述したように、空気調和装置10(室内機11)が冷房モードで運転される場合には、凝縮水が安定的に得られるが、暖房モードや送風モードで運転されている場合には、凝縮水を得ることが困難になる。この場合、筐体21の外部から外部水Ma(例えば、純水等)を、給水タンク102aを介して受け付けることにより、暖房モードや送風モードで運転されている場合でも給水部102から水Mを発生ユニット100に供給できる。つまり、暖房モードや送風モードでも、発生ユニット100においてOHラジカルの生成及び過酸化水素の生成を効率的に行うことができる。なお、別の実施例において、室内機11は、空気中の水分を捕集する捕集装置を備え、捕集した水を給水部102に供給して、発生ユニット100で利用するようにしてもよい。
【0031】
図3は、第1の実施形態の運転中の室内機11の構成を示す例示的かつ模式的な断面図である。二つの風向板25は、吹出し口33、または吹出し口33の近傍に設けられる。風向板25は、ファン23の下流に位置する。二つの風向板25は、例えば、下面21bに沿う略Y方向に並んで配置される。
【0032】
二つの風向板25はそれぞれ、
図1に示す第1の閉じ位置Pc1と、
図3に示す第1の開き位置Po1との間で移動可能である。なお、二つの風向板25は個別に、第1の閉じ位置Pc1と第1の開き位置Po1との間で移動することができる。
【0033】
図1に示すように、第1の閉じ位置Pc1に位置する風向板25は、吹出し口33の一部を覆う。二つの風向板25がともに第1の閉じ位置Pc1に位置する場合、二つの風向板25は吹出し口33のほぼ全域を覆う。
【0034】
図3に示すように、第1の開き位置Po1に位置する風向板25は、吹出し口33の一部を開放する。二つの風向板25がともに第1の開き位置Po1に位置する場合、二つの風向板25は吹出し口33のほぼ全域を開放する。
【0035】
第1の開き位置Po1は、風向板25が吹出し口33の一部を開放する種々の位置を含む。例えば、第1の開き位置Po1は、
図3のように風向板25が略水平方向に向く位置と、風向板25が下方に向く位置と、これら二つの位置の間の複数の位置とを含む。すなわち、風向板25は、略水平方向に向く位置と、下方に向く位置との間で回動可能である。第1の開き位置Po1に位置する風向板25は、当該風向板25の向きにより、吹出し口33から放出された風の上下方向における向きを調整する。すなわち、
図3のように風向板25が略水平方向に向くことで、室内機11は略水平方向に風を放出する。一方、風向板25が下方に向くことで、室内機11は下方向に風を放出する。
【0036】
室内機11は、吹出し口33から放出された風の左右方向における向きを調整する左右風向板をさらに有してもよい。当該左右風向板は、例えば、通風路31に設けられる。室内機11は、左右風向板が向く方向へ風を放出することができる。
【0037】
風向板25は、例えば、合成樹脂により作られる。風向板25は、金属のような他の材料により作られてもよい。二つの風向板25はそれぞれ、軸部41と、板部42とを有する。
【0038】
軸部41は、X方向に延びる略円柱状に形成される。軸部41は、X方向に延びる回転軸Axlまわりに回転可能に筐体21に支持される。なお、複数の風向板25はそれぞれ、個別の回転軸Axlを有する。板部42は、軸部41から回転軸Axlと略直交する方向に突出する。板部42は、X方向に延びる略矩形の板状に形成される。軸部41が回転軸Axlまわりに回転することで、風向板25は第1の閉じ位置Pc1と第1の開き位置Po1との間で移動することができる。
【0039】
以下の記載において、二つの風向板25は、風向板25A,25Bと個別に称されることがある。言い換えると、二つの風向板25は、風向板25Aと風向板25Bとを含む。なお、風向板25A,25Bに共通する説明は、風向板25についての説明として記載される。
【0040】
風向板25Aは、Z方向において、吹出し口33の上方向の端部33aと、吹出し口33の下方向の端部33bとの間に位置する。風向板25Bは、吹出し口33の下方向の端部33bの近傍に位置する。風向板25Aは、風向板25Bよりも吹出し口33の上方向の端部33aに近い。風向板25Bは、風向板25Aよりも吹出し口33の下方向の端部33bに近い。
【0041】
第1の開き位置Po1に位置する風向板25A,25Bは、吹出し口33を二つの流路C1,C2に区画する。流路C1は、吹出し口33の一部であって、風向板25Aと吹出し口33の上方向の端部33aとの間に位置する。流路C2は、吹出し口33の一部であって、風向板25Aと吹出し口33の下方向の端部33bとの間に位置する。言い換えると、流路C2は、風向板25Aと風向板25Bとの間に位置する。
【0042】
風向板25Aは、第1の開き位置Po1において流路C1を開放し、第1の閉じ位置Pc1において流路C1を覆う。風向板25Bは、第1の開き位置Po1において流路C2を開放し、第1の閉じ位置Pc1において流路C2を覆う。
【0043】
二つの通風部材26は、吹出し口33、または吹出し口33の近傍に設けられる。通風部材26は、ファン23の下流に位置する。二つの通風部材26は、例えば、略Y方向に並んで配置される。
【0044】
二つの通風部材26はそれぞれ、
図3に実線で示す第2の閉じ位置Pc2と、
図3に二点鎖線で示す第2の開き位置Po2との間で移動可能である。言い換えると、通風部材26は第2の閉じ位置Pc2に配置可能である。なお、二つの通風部材26は個別に、第2の閉じ位置Pc2と第2の開き位置Po2との間で移動することができる。
【0045】
以下の記載において、二つの通風部材26は、通風部材26A,26Bと個別に称されることがある。言い換えると、二つの通風部材26は、通風部材26Aと通風部材26Bとを含む。なお、通風部材26A,26Bに共通する説明は、通風部材26についての説明として記載される。
【0046】
例えば、通風部材26Aは、吹出し口33の上方向の端部33aの近傍に位置する。通風部材26Bは、Z方向において、吹出し口33の上方向の端部33aと、吹出し口33の下方向の端部33bとの間に位置する。通風部材26Aは、通風部材26Bよりも吹出し口33の上方向の端部33aに近い。通風部材26Bは、通風部材26Aよりも吹出し口33の下方向の端部33bに近い。なお、通風部材26A,26Bの位置は、この例に限られない。
【0047】
第2の閉じ位置Pc2に位置する通風部材26は、第1の開き位置Po1に位置する風向板25によって開放された吹出し口33の一部を覆う。本実施形態では、第2の閉じ位置Pc2に位置する通風部材26Aは、第1の開き位置Po1に位置する風向板25Aによって開放された流路C1を覆う。さらに、第2の閉じ位置Pc2に位置する通風部材26Bは、第1の開き位置Po1に位置する風向板25Bによって開放された流路C2を覆う。
【0048】
二つの通風部材26がともに第2の閉じ位置Pc2に位置する場合、二つの通風部材26は全ての流路C1,C2を覆う。なお、第2の閉じ位置Pc2に位置する二つの通風部材26は、吹出し口33を完全に塞ぐ必要はない。例えば、吹出し口33は、X方向において通風部材26に覆われずに室内に連通していてもよいし、風が通風部材26と風向板25との間の隙間を通行可能であってもよい。本実施形態では、風の進行方向に見た場合に、流路C1,C2の大部分が通風部材26A,26Bに覆われていればよい。なお、通風部材26が吹出し口33を覆う態様は、この例に限られない。
【0049】
第2の開き位置Po2に位置する通風部材26は、第1の開き位置Po1に位置する風向板25によって開放された吹出し口33の一部を開放する。本実施形態では、第2の開き位置Po2に位置する通風部材26Aは、第1の開き位置Po1に位置する風向板25Aによって開放された流路C1を開放する。さらに、第2の開き位置Po2に位置する通風部材26Bは、第1の開き位置Po1に位置する風向板25Bによって開放された流路C2を開放する。
【0050】
通風部材26は、例えば、合成樹脂により作られる。通風部材26は、金属のような他の材料により作られてもよい。二つの通風部材26はそれぞれ、軸部51と、板部52とを有する。
【0051】
軸部51は、X方向に延びる略円柱状に形成される。軸部51は、X方向に延びる回転軸Axcまわりに回転可能に筐体21に支持される。なお、複数の通風部材26はそれぞれ、個別の回転軸Axcを有する。板部52は、軸部51から回転軸Axcと略直交する方向に突出する。板部52は、X方向に延びる略矩形の板状に形成される。軸部51が回転軸Axcまわりに回転することで、通風部材26は第2の閉じ位置Pc2と第2の開き位置Po2との間で移動することができる。
【0052】
通風部材26の軸部51は、第1の開き位置Po1に位置する風向板25の板部42から上方向に離間している。第2の閉じ位置Pc2に位置する通風部材26の板部52は、軸部51から、風向板25の板部42に向かって延びている。
【0053】
第2の閉じ位置Pc2に位置する通風部材26の板部52の先端52aは、風向板25の板部42に当接し、または板部42の近傍に配置される。これにより、第2の閉じ位置Pc2に位置する通風部材26は、第1の開き位置Po1に位置する風向板25によって開放された吹出し口33の一部を覆う。先端52aは、軸部51の反対側に位置する板部52の端部である。
【0054】
X方向における板部52の長さは、X方向における吹出し口33の長さに略等しい。これにより、第2の閉じ位置Pc2に位置する通風部材26A,26Bは、流路C1,C2の大部分を覆うことができる。
【0055】
板部52が軸部51から突出する方向における板部52の長さは、Z方向における流路C1,C2のそれぞれの最大の長さよりも短い。これにより、通風部材26が、第2の閉じ位置Pc2と第2の開き位置Po2との間で移動するときに、風向板25に干渉することを抑制される。
【0056】
板部52は、内面52bと、外面52cとを有する。内面52bは、第2の閉じ位置Pc2において通風路31に向く。外面52cは、内面52bの反対側に位置する。外面52cは、第2の閉じ位置Pc2において室内機11の外部に向く。
【0057】
二つの通風部材26がともに第2の開き位置Po2に位置する場合、二つの通風部材26は、第1の開き位置Po1に位置する風向板25によって開放された吹出し口33のほぼ全域を開放する。なお、二つの通風部材26が第2の開き位置Po2に位置していても、風向板25が第1の閉じ位置Pc1に位置する場合、流路C1,C2は対応する風向板25に覆われる。
【0058】
図1に示すように、第2の開き位置Po2に位置する通風部材26Aは、吹出し口33の近傍に設けられた筐体21の窪み21cに収容される。窪み21cは、通風路31の一部を形成する筐体21の内面21dから窪んでいる。第2の開き位置Po2に位置する通風部材26Aは、窪み21cに収容されることで、通風路31を流れる風を妨げることを抑制される。
【0059】
通風部材26Bは、吹出し口33の近傍で、通風路31に設けられる。第2の開き位置Po2に位置する通風部材26Bの板部52は、通風路31における風の流れに沿う方向に延びている。これにより、第2の開き位置Po2に位置する通風部材26Bは、通風路31を流れる風を妨げることを抑制される。なお、第2の開き位置Po2に位置する通風部材26A,26Bの配置は、以上の例に限られない。
【0060】
図4は、第1の実施形態の風向板25と通風部材26との一部の構成を例示的かつ模式的に示す正面図である。
図5は、第1の実施形態の通風部材26の構成を示す例示的かつ模式的な断面図である。
図4に示すように、通風部材26のそれぞれに、複数の第1の通風口55と複数の第2の通風口56とが設けられる。なお、通風部材26のそれぞれに、一つの第1の通風口55と一つの第2の通風口56とが設けられてもよい。
【0061】
図5に示すように、複数の第1の通風口55及び複数の第2の通風口56はそれぞれ、板部52を貫通する貫通孔である。このため、複数の第1の通風口55及び複数の第2の通風口56はそれぞれ、板部52の内面52b及び外面52cに開口する。
【0062】
複数の第1の通風口55と複数の第2の通風口56とは、配置方向Dpに交互に配置される。このため、第1の通風口55と第2の通風口56とは、配置方向Dpに並んで設けられる。配置方向Dpは、第1の方向の一例であり、板部52の外面52cに沿う方向である。
【0063】
本実施形態では、配置方向Dpは、板部52が軸部51から延びる方向に略等しい。また、通風部材26が第2の閉じ位置Pc2に位置する場合、配置方向DpはZ方向に略等しい。なお、配置方向Dpはこの例に限られず、X方向のような他の方向であってもよい。
【0064】
図4に示すように、第1の通風口55は、X方向に延びる例えば略矩形のスリットである。X方向は、第2の方向の一例であり、板部52の外面52cに沿うとともに配置方向Dpと交差する方向である。なお、第1の通風口55は、円形、四角形、三角形、または他の形状の断面を有する孔であってもよい。複数の第1の通風口55は、配置方向Dpに並べられる。
【0065】
第2の通風口56は、円形の断面を有する孔である。なお、第2の通風口56は、四角形、三角形、または他の形状の断面を有する孔であってもよい。本実施形態において、第1の通風口55及び第2の通風口56の断面は、第1の通風口55及び第2の通風口56が板部52を貫通する方向と直交する断面である。
【0066】
複数の第2の通風口56は、X方向に並べられる。言い換えると、複数の第2の通風口56は、X方向に互いに間隔を介して配置される。このため、複数の第2の通風口56は、X方向に並ぶ複数の第2の通風口56の列58を形成する。板部52において、複数の列58が配置方向Dpに並べられる。複数の第2の通風口56は、格子状に配置されてもよいし、千鳥状に配置されてもよい。
【0067】
本実施形態において、スリット状の複数の第1の通風口55と、第2の通風口56の列58とが、配置方向Dpに交互に配置される。このため、複数の第1の通風口55と複数の第2の通風口56は、配置方向Dpに並ぶ第1の通風口55と第2の通風口56との列59を形成する。
【0068】
配置方向Dpに並ぶ第1の通風口55と第2の通風口56との列59における両端に、第1の通風口55が配置される。このため、配置方向Dpにおいて、複数の第2の通風口56は、複数の第1の通風口55のうち二つの間に位置する。なお、第1の実施形態の第1の変形例の通風部材26においては、配置方向Dpに並ぶ第1の通風口55と第2の通風口56との列59における端に、第2の通風口56が配置されてもよい。この場合、配置方向Dpにおいて、複数の第1の通風口55は、複数の第2の通風口56のうち二つの間に位置する。
【0069】
図4に示すように、第2の通風口56のそれぞれの断面は、第1の通風口55のそれぞれの断面よりも小さい。また、複数の列58のそれぞれに含まれる複数の第2の通風口56の断面の合計は、複数の第1の通風口55のうち一つの断面よりも小さい。
【0070】
図5に示すように、複数の第1の通風口55はそれぞれ、拡大部61と、直部62とを有する。拡大部61及び直部62はそれぞれ、第1の通風口55の一部である。拡大部61と直部62とは、板部52の内面52bから外面52cへ向かう厚さ方向に連続する。
【0071】
拡大部61は、板部52の外面52cに開口するとともに、外面52cに近づくにしたがって断面が拡大する部分である。言い換えると、拡大部61は、外面52cから内面52bに向かうにしたがって断面が縮小する部分である。また、拡大部61は、外面52cに近づくに従って隣接する第2の通風口56に近づく。
【0072】
直部62は、内面52bに開口するとともに、拡大部61に接続される。直部62は、内面52bと拡大部61との間で断面の大きさが一定の部分である。直部62の断面の大きさは、拡大部61の最小の部分における断面の大きさに略等しい。
【0073】
拡大部61の最大の部分における直径は、例えば、3~5mmに設定される。さらに、拡大部61の最小の部分及び直部62の直径は、例えば、拡大部61の最大の部分における直径の50~90%に設定される。なお、第1の通風口55の大きさは、この例に限られない。
【0074】
複数の第2の通風口56もそれぞれ、拡大部65と、直部66とを有する。拡大部65及び直部66はそれぞれ、第2の通風口56の一部である。拡大部65と直部66とは、板部52の内面52bから外面52cへ向かう厚さ方向に連続する。
【0075】
拡大部65は、板部52の外面52cに開口するとともに、外面52cに近づくにしたがって断面が拡大する部分である。言い換えると、拡大部65は、外面52cから内面52bに向かうにしたがって断面が縮小する部分である。また、拡大部65は、外面52cに近づくに従って隣接する第1の通風口55に近づく。
【0076】
直部66は、内面52bに開口するとともに、拡大部65に接続される。直部66は、内面52bと拡大部65との間で断面の大きさが一定の部分である。直部66の断面の大きさは、拡大部65の最小の部分における断面の大きさに略等しい。
【0077】
なお、第1の実施形態の別の変形例では、第1の通風口55は、直部62の代わりに縮小部を有してもよい。縮小部は、板部52の内面52bに開口するとともに、拡大部61に接続される。縮小部は、拡大部61に近づくにしたがって断面が縮小する部分である。また、第2の通風口56は、直部62の代わりに縮小部を有してもよい。縮小部は、板部52の内面52bに開口するとともに、拡大部65に接続される。縮小部は、拡大部65に近づくにしたがって断面が縮小する部分である。
【0078】
第1の通風口55及び第2の通風口56は、これらの例に限られない。例えば、第1の通風口55は、拡大部61、直部62、及び縮小部のうち一つを有してもよい。同様に、第2の通風口56は、拡大部65、直部66、及び縮小部のうち一つを有してもよい。
【0079】
図6は、第1の実施形態の室内機11の構成示す例示的かつ模式的なブロック図である。
図6に示すように、室内機11は、制御装置80(制御部)と、第1の駆動回路81と、第2の駆動回路82と、第3の駆動回路83と、ファンモータ84と、二つの風向板モータ85,86と、二つの切替モータ87,88等を有する。室内機11は、さらに、OHラジカル発生制御回路89、発生ユニット100、報知部90、人感センサ91、水位センサ92、酸素濃度センサ93、および受信装置94と、を有する。
【0080】
制御装置80、第1の駆動回路81、第2の駆動回路82、第3の駆動回路83、ファンモータ84、風向板モータ85,86、切替モータ87,88、OHラジカル発生制御回路89、報知部90、発生ユニット100、人感センサ91、水位センサ92、酸素濃度センサ93及び受信装置94は、筐体21に収容される。
【0081】
制御装置80は、例えば、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサと、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及びフラッシュメモリのような記憶装置とを備える。なお、制御装置80はこの例に限られない。
【0082】
プロセッサが記憶装置からプログラムを読み出して実行することにより、制御装置80は、空気調和装置10の動作を制御する。制御装置80は、例えば、第1の駆動回路81、第2の駆動回路82、第3の駆動回路83、OHラジカル発生制御回路89、報知部90及び受信装置94に接続される。また、制御装置80は、人感センサ91、水位センサ92、酸素濃度センサ93等の各種センサからの検出結果を受け付ける。
【0083】
第1の駆動回路81は、ファンモータ84の駆動回路である。ファンモータ84は、ファン23を回転軸Axfまわりに回転駆動させる。制御装置80は、第1の駆動回路81を制御することで、ファンモータ84及びファン23を順方向回転制御(吹出し口33から風を放出する制御)または逆方向制御(室内機11内部に発生ユニット100で発生させた過酸化水素(OHラジカル)を供給する制御)を実行する。
【0084】
第2の駆動回路82は、二つの風向板モータ85,86の駆動回路である。風向板モータ85,86はそれぞれ、対応する風向板25を回転軸Axlまわりに回転駆動させる。本実施形態では、風向板モータ85は、風向板25Aを当該風向板25Aの回転軸Axlまわりに回転駆動させる。風向板モータ86は、風向板25Bを当該風向板25Bの回転軸Axlまわりに回転駆動させる。制御装置80は、第2の駆動回路82を制御することで、風向板モータ85,86及び風向板25A,25Bを制御する。
【0085】
第3の駆動回路83は、二つの切替モータ87,88の駆動回路である。切替モータ87,88はそれぞれ、対応する通風部材26を回転軸Axcまわりに回転駆動させる。本実施形態では、切替モータ87は、通風部材26Aを当該通風部材26Aの回転軸Axcまわりに回転駆動させる。切替モータ88は、通風部材26Bを当該通風部材26Bの回転軸Axcまわりに回転駆動させる。制御装置80は、第3の駆動回路83を制御することで、切替モータ87,88及び通風部材26A,26Bを制御する。
【0086】
OHラジカル発生制御回路89は、例えば、制御装置80において除菌モードを選択する操作信号が受信された場合、または予め設定された除菌タイミングになった場合等、除菌を実行する場合に、発生ユニット100を駆動する。すなわち、発生ユニット100の一対の電極100a間に高電圧を印加し、コロナ放電によりOHラジカルを発生させる。なお、前述したように、発生したOHラジカルは、浸透管100bを介して供給されている水に可溶し過酸化水素となる。
【0087】
また、制御装置80には、各種センサからの検出結果が逐次入力され、制御装置80は、入力された検出結果を各制御に反映させる。
【0088】
人感センサ91は、室内機11の筐体21の表面で室内を臨む位置に設けられ、室内機11が設置されている室内における、例えば人間の有無や人間の状態等の検出を行う。人感センサ91は、例えば、赤外線等のカメラ、マイク、温度センサ等を含む。制御装置80は、例えば、カメラにより撮像した画像を用いて室内における人間の有無を周知の画像解析処理により検出する。また、制御装置80は、マイクにより集音した室内の音に基づき、室内の人間が例えば、くしゃみや咳をしているか否かを検出する。この場合、カメラが取得した画像を用いた解析結果と併せることにより、くしゃみや咳等をしている人間の特定を行うことができる。また、制御装置80は、温度センサの検出結果に基づき、検出した人間の体温測定を行ってもよい。人感センサ91によって、人間の有無、くしゃみや咳等の有無、発熱の有無等を検出することにより、室内にOHラジカルを用いて除菌すべきウイルス、およびウイルスの発生源(感染者)が存在するか否かを精度よく検出することができる。
【0089】
なお、人感センサ91は、人間以外の生物、例えば、ペット等の検出も可能である。この場合、例えば、OHラジカルを用いた消臭を行うことが可能である。人間やペット等生物に対する除菌(または消臭)処理の詳細は後述する。
【0090】
また、制御装置80は、水位センサ92が検出した給水部102における水位の検出結果を取得する。前述したように、発生ユニット100でOHラジカル(過酸化水素)を発生させるためには、安定的に水Mを供給する必要がある。水位センサ92は、給水部102の槽内(例えば、浸透管100bの近傍)に配置さて給水部102に貯留される水M(熱交換器22で発生した凝縮水または給水タンク102aから供給され、発生ユニット100に供給される外部水Ma)の水位(水Mの有無)を検知する。制御装置80は、給水部102に存在する水Mの量に基づいて、室内機11の運転制御や報知部90を介して水Mの不足や給水タンク102aへの給水の要求等を行うことができる。なお、水位センサ92は、発生ユニット100に加え、給水タンク102aに配置してもよい。給水タンク102aに水位センサ92を設けることにより、発生ユニット100で水Mが枯渇する前に、給水タンク102aへの給水を促し発生ユニット100へ水Mを給水できないという不具合を回避することができる。
【0091】
また、酸素濃度センサ93は、室内機11の筐体21の表面で室内を臨む位置に設けられる。制御装置80は、酸素濃度センサ93が検出した室内機11が設置された室内の酸素濃度の検出結果を取得する。ウイルス感染リスクを低減させる一つの手段として、人間が密集した状態、いわゆる「密」を避けること、「換気」を頻繁に行うこと等がある。制御装置80は、酸素濃度センサ93により室内の酸素濃度を検出することにより、室内が「密」状態か否か、つまり、室内に多くに人間が存在し、酸素を消費しているか否かを検出する。部屋の酸素濃度が、予め設定した酸素濃度の下限値以下になった場合、制御装置80は、部屋が「密」の状態であると見なし、報知部90に含まれるスピーカから音声による警告(報知)を実行する。また、制御装置80は、室内機11の筐体21の表面に設けられた表示装置を用いて、警告灯の点灯や警告メッセージの表示を行ってもよい。警告内容は、「密」になっていることを示すメッセージや換気を促すメッセージ等である。このように、制御装置80が報知(警告)制御を行うことで、発生ユニット100で発生させた過酸化水素(OHラジカル))による除菌に加え、ウイルス感染のリスクを軽減することに寄与することができる。なお、酸素濃度が既定値以上に復帰した場合には、報知(警報)を解除する。この場合、室内機11の運転は、通常運転(非除菌運転)に戻してもよいし、除菌運転を継続して行ってもよい。
【0092】
なお、別の実施形態では、酸素濃度センサ93に代えて、二酸化炭素濃度を検出するセンサを設けてもよく、同様に「密」の警告や「換気」の推奨を行うことが可能で、同様の効果を得ることができる。なお、酸素濃度センサ93や二酸化炭素濃度センサは、換気センサと称する場合もある。
【0093】
報知部90は、上述したように、「密」や「換気」に関するメッセージの他、水位センサ92の検出結果に基づく、「給水」喚起のメッセージ等を出力してもよい。
【0094】
受信装置94は、例えば、リモートコントローラ94aから電磁波または赤外線のような無線信号を受信する。制御装置80は、受信装置94から、リモートコントローラ94aからの指示信号を取得する。なお、制御装置80は、報知部90に出力する報知(警告)内容と同じ内容のメッセージをリモートコントローラ94aや空気調和装置10(室内機11)の利用者が携帯する端末(例えば、スマートフォン等)に送信して利用者に通知(警告)してもよい。
【0095】
以下、室内機11の送風動作の一例について説明する。なお、室内機11の動作は、以下の例に限られない。本実施形態の室内機11は、第1のモードと、第2のモードとで運転可能である。第1のモードでは、室内機11は、より自然の風に近い風を室内に供給する。第2のモードでは、室内機11は、利用者に冷たさまたは暖かさを感じさせやすい風を室内に供給する。なお、室内機11は、冷房運転時及び暖房運転時のいずれでも、第1のモードと、第2のモードとで運転可能である。
【0096】
第1のモードにおいて、制御装置80は、第2の駆動回路82を制御することで、風向板25A,25Bを第1の開き位置Po1に配置する。さらに、制御装置80は、第3の駆動回路83を制御することで、通風部材26A,26Bを第2の閉じ位置Pc2に配置する。
【0097】
例えば、制御装置80は、第2の駆動回路82を制御し、風向板25A,25Bを回転軸Axlまわりに回転させる。これにより、風向板25A,25Bは、第1の開き位置Po1に移動し、吹出し口33を開放する。
【0098】
制御装置80は、Z方向における流路C1,C2の大きさが、配置方向Dpにおける通風部材26の板部52の長さよりも長くなるように、風向板25A,25Bを配置する。例えば、制御装置80は、風向板25A,25Bが略下方向に向かって延びるように、風向板25A,25Bを配置する。この状態で、制御装置80は、第3の駆動回路83を駆動し、通風部材26A,26Bを回転軸Axcまわりに回転させる。これにより、通風部材26A,26Bは、第2の閉じ位置Pc2に移動する。Z方向における流路C1,C2の大きさが配置方向Dpにおける板部52の長さよりも長いため、通風部材26が風向板25に干渉することが抑制される。
【0099】
制御装置80はさらに、第2の駆動回路82を制御し、風向板25A,25Bを通風部材26A,26Bの板部52の先端52aに近づける。これにより、通風部材26A,26Bと風向板25A,25Bとの間の隙間が狭まり、通風部材26A,26Bが流路C1,C2の大部分を覆う。
【0100】
さらに、制御装置80は、第1の駆動回路81を制御し、ファン23に吸込み口32から吹出し口33へ風を送らせる。なお、通風部材26が第2の閉じ位置Pc2に移動した後にファン23が送風を開始してもよいし、ファン23が風を送っている間に通風部材26が第2の閉じ位置Pc2へ移動してもよい。
【0101】
ファン23により送られた風は、通風路31を通り、吹出し口33に到達する。吹出し口33は、第2の閉じ位置Pc2に位置する通風部材26に覆われている。このため、ファン23により送られた風は、通風部材26の第1の通風口55及び第2の通風口56を通って、室内機11の外部に放出される。
【0102】
図5に示すように、ファン23により送られた風の一部は、第1の通風口55から第1の風W1として室内機11の外部へ放出される。第1の通風口55の断面は、第2の通風口56の断面よりも大きく設定される。このため、第1の風W1の流速は、比較的遅くなる。本実施形態において、第1の風W1は、層流として室内機11の外部へ放出される。
【0103】
一方、ファン23により送られた風の他の一部は、第2の通風口56から第2の風W2として室内機11の外部へ放出される。第2の通風口56の断面は、第1の通風口55の断面よりも小さく設定される。このため、第2の風W2の流速は、比較的早くなる。本実施形態において、第2の風W2は、層流として室内機11の外部へ放出された後、乱流に遷移する。第2の風W2は、第1の風W1よりも乱流に遷移しやすい。なお、第2の風W2は、乱流として室内機11の外部へ放出されてもよい。
【0104】
例えば、第2の風W2は、第2の通風口56から噴き出すジェット気流である。ジェット気流は、流速が早く、周囲の空気を巻き込んで当該ジェット気流の内部の空気を掻き混ぜる。また、ジェット気流は、乱流となって渦を発生させやすい。
【0105】
第1の通風口55と第2の通風口56とは、交互に並び、互いに隣接する。このため、第1の通風口55から放出された第1の風W1と、第2の通風口56から放出された第2の風W2とは、隣り合って流れる。
【0106】
第2の風W2は、流速が早いため、第1の風W1を引き込む。これにより、第1の風W1が第2の風W2に当たる。また、乱流に遷移した第2の風W2は拡散することで、当該第2の風W2に隣接して流れる第1の風W1に当たる。このように、流速や状態(層流または乱流)が異なる第1の風W1及び第2の風W2は、隣り合って流れることで、互いに当たる。すなわち、第1の通風口55を通過した第1の風W1と、第2の通風口56を通過した第2の風W2とが互いに干渉する。
【0107】
さらに、第1の通風口55は、拡大部61を有する。このため、第1の通風口55から放出された第1の風W1の一部は、当該第1の通風口55に隣接する第2の通風口56から放出された第2の風W2に向かって流れる。これにより、第1の風W1が第2の風W2により当たりやすくなる。
【0108】
同様に、第2の通風口56は、拡大部65を有する。このため、第2の通風口56から放出された第2の風W2の一部は、当該第2の通風口56に隣接する第1の通風口55から放出された第1の風W1に向かって流れる。これにより、第2の風W2が第1の風W1により当たりやすくなる。
【0109】
第1の風W1と第2の風W2とが互いに当たることで、例えば、第1の風W1及び第2の風W2の塊が砕かれ、乱流である第2の風W2が第1の風W1に運ばれる。第1の風W1及び第2の風W2は、このような種々の相互作用を生じて、広範囲に拡散する乱流Wsを発生させる。乱流Wsは、吹出し口33から放出された直後の風よりも自然の風(いわゆる、無風感の風)に近い。
【0110】
一般的に、乱流は、巨視的には一方向に進むが、微視的には当該乱流における流体の微粒子の運動方向が無秩序となるため、層流に比べてエネルギーの損失が大きい。このため、乱流である風は、減衰しやすく、層流である風よりも短い距離で雰囲気に同化し消失する。しかし、第1のモードで発生する乱流Wsは、例えば、層流である第1の風W1により乱流である第2の風W2が推進されるため、単なる乱流よりも減衰しにくい。このため、乱流Wsは、例えば乱流に遷移した第2の風W2単体よりも、室内機11から遠い距離まで届きやすい。
【0111】
一方、第2のモードにおいて、制御装置80は、第2の駆動回路82を制御することで、風向板25A,25Bを第1の開き位置Po1に配置する。さらに、制御装置80は、第3の駆動回路83を制御することで、通風部材26A,26Bを第2の開き位置Po2に配置する。
【0112】
図1に示すように、例えば空気調和装置10が運転していない初期状態において、通風部材26は、第2の開き位置Po2に配置される。このため、空気調和装置10が初期状態から第2のモードで運転を開始した場合、制御装置80は、通風部材26を第2の開き位置Po2に保つ。
【0113】
さらに、制御装置80は、第1の駆動回路81を制御し、ファン23に吸込み口32から吹出し口33へ風を送らせる。ファン23により送られた風は、通風路31を通り、吹出し口33から室内機11の外部に放出される。通風部材26が第2の開き位置Po2に位置するため、ファン23により送られた風は、第1の通風口55及び第2の通風口56を通ることなく、吹出し口33から室内機11の外部に直接放出される。なお、ファン23により送られた風の一部が第1の通風口55または第2の通風口56を通ってもよい。
【0114】
第2のモードにおいて吹出し口33から放出された風は、第1のモードにおいて発生する乱流Wsよりも流れる範囲が狭く流速が早い。当該風が利用者に当たると、利用者は冷たさまたは暖かさをより強く感じやすい。例えば、当該風は、流速が早く、利用者に局所的に当たるため、利用者に冷たさまたは暖かさをより強く感じさせる。一方、当該風が利用者に当たると、利用者が不快感を得る虞もある。
【0115】
第1のモードにおいて発生する乱流Wsは、第2のモードにおいて吹出し口33から放出される風よりも、自然の風に近い。一般的に、利用者は、自然の風に近い風からは不快感を得にくい。従って、空気調和装置10は、第1のモードにおいて利用者が不快感を得にくい乱流Wsを発生させ、第2のモードにおいて利用者が冷たさまたは暖かさを感じやすい風を吹き出す。
【0116】
制御装置80は、第1のモードと第2のモードとの間で運転を切替可能である。例えば、制御装置80は、リモートコントローラ89aからの指示信号に基づき、第1のモードと第2のモードとを切り替える。制御装置80は、この例に限られず、室内における利用者の人数、位置、または特性と、室内の温度と、時刻とのような、種々の条件に基づき第1のモードと第2のモードとを自動的に切り替えてもよい。
【0117】
図7は、上述した第2のモードで室内機11を駆動させた場合の風W(層流)の流れ及び室内機11から所定の距離、例えば、2mの位置で椅子Cに着座した人間Hが、咳をした場合の飛沫の飛翔状態の一例を示す模式図である。一方、
図8は、上述した第1のモードで室内機11を駆動させた場合の風(乱流Ws)の流れ及び室内機11から所定の距離、例えば、2mの位置で椅子Cに着座した人間Hが、咳をした場合の飛沫の飛翔状態の一例を示す模式図である。
【0118】
図7に示すように、第2のモードで層流の風(流れる範囲が狭く流速が早い風)が人間Hに当たった場合、人間Hから排出された飛沫Sは、層流の風Wにより、人間Hの後方へと拡散される可能性が高くなる。このような場合、発生ユニット100で発生させた過酸化水素(OHラジカル)を層流に乗せて室内に放出しても、拡散してしまったウイルスの除菌を十分にできない場合がある。また、流速の早い層流の風で過酸化水素を飛翔させた場合、過酸化水素は、飛翔途中で乾燥し易い。つまり、OHラジカルに戻りやすく、ウイルスの除菌を行う前に消滅し易い、とう不都合が生じやすい。
【0119】
一方、
図8に示すように、第1のモードで乱流Ws(減衰しやすく、層流である風よりも短い距離で雰囲気に同化し消失し易い風)が人間Hに当たった場合、乱流Wsは、層流の風のように人間Hから排出された飛沫Sを拡散したり後方に移動させたりしにくい。このような場合、発生ユニット100で発生させた過酸化水素(OHラジカル)を、例えば、人間Hの周囲に降り注ぐように運ぶことが可能となる。つまり、ウイルスの除菌を効果的に行うことができる。また、流速が減衰しやすいので過酸化水素が飛翔中に乾燥しにくくなり、過酸化水素としての寿命を長くすることが可能となり、OHラジカルを用いたウイルスの除菌を層流で運んだ場合に比べて長時間行うことができる。
【0120】
このように、本実施形態の空気調和装置10(室内機11)は、除菌運転を行う場合、基本的には、通風部材26を閉じ位置Pc2に位置させて、ファン23で発生した風を乱流Wsとして送り出して、発生ユニット100で発生させた過酸化水素(OHラジカル)を運ぶ運転を行うことで、OHラジカルの延命を行うとともに、効果的な除菌処理を実行することができる。
【0121】
例えば、制御装置80において、人感センサ91を介して取得した検出結果に基づき、くしゃみや咳をしている人間Hの検出や位置の検出を行う。制御装置80は、第3の駆動回路83を介して通風部材26A,26Bを閉じ位置Pc2に位置させるとともに、第2の駆動回路82を介して、風向板25A,25Bの制御を行い、発生ユニット100が発生した過酸化水素(OHラジカル)を、検出した人間Hにファン23で発生した風が乱流Wsに乗せて届くようにする。また、このときに、左右風向板を併せて制御することにより、より正確に乱流Wsを除菌対象となるウイルスが多く存在し得る位置に届けることが可能になる。このような乱流Ws(無風感の風)を用いて、
図8に示すように、過酸化水素(OHラジカル)の放出を行うことにより、効果的な除菌処理を行うことができる。なお、この除菌処理は、制御装置80に含まれる内部タイマ等を用いて一定時間実行されるようにすることが望ましい。また、除菌処理は、リモートコントローラ94aを用いて、利用者等が要求する時間継続して実行するようにしてもよい。
【0122】
なお、人感センサ91で室内の人間Hの位置を検出した場合、ファン23の強度や風向板25の開き位置の角度を調整して、発生ユニット100が発生した過酸化水素(OHラジカル)を乗せた乱流Wsが到達する位置を調整してもよい。また、検出した人間Hが室内機11から所定距離以上遠い場合、すなわち、乱流Wsの到達範囲外に存在する場合、第2のモード(通常送風モード)で、過酸化水素(OHラジカル)を到達させるようにしてもよい。つまり、除菌対象の位置に応じて、ファン23により送られてくる風が通風部材26を通る第1のモードと、通風部材26を通らない第2のモードとを切り替えてもよい。なお,この場合、過酸化水素(OHラジカル)の寿命が短くなる虞があるため、発生ユニット100における過酸化水素(OHラジカル)の発生効率を高め、より多くの過酸化水素(OHラジカル)が放出されるようにしてもよい。
【0123】
また、周知のようにOHラジカルは、様々な臭いに対して消臭効果を発揮する。そこで、例えば、室内設置されたペット用トイレの位置やペットがよくいる位置をリモートコントローラ94aに記憶させておき、風向板25や左右風向板を動かして、発生ユニット100が発生した過酸化水素(OHラジカル)を、ファン23で発生した風が乱流Wsに乗せて届くようにして、例えば定期的に消臭処理を行うことができる。また、ペットの位置を、人感センサ91を用いて検知するようにしてもよい。また、ペットの位置を検知しない場合やできない場合においては、風向板25や左右風向板を連続的に駆動し、乱流Wsにより部屋全体(広範囲)に過酸化水素(OHラジカル)を運び、消臭処理を実行するようにしてもよい。
【0124】
また、制御装置80は、人感センサ91の検出結果に基づき、部屋に存在する人間Hの体温が例えば、37.5℃以上である場合、対象となる人間Hに乱流Wsを届かせて、過酸化水素(OHラジカル)による除菌処理を一定時間行うようにしてもよい。また、このとき、制御装置80は、報知部90を介して、体温が平均的な温度より高く、注意が必要であることを示すメッセージ等を提供してもよい。また、併せて、換気等を行うことを促してもよい。その結果、除菌に加え、ウイルス感染が疑われる人間に対する注意喚起、同じ部屋にいる他の人間への感染リスクの軽減等に寄与することができる。
【0125】
また、制御装置80は、定期的に除菌運転を行うようにスケジュール制御を行ってもよい。例えば、1時間ごとに、発生ユニット100及び風向板25や左右風向板を動かして、ファン23で発生した風が乱流Wsとして届くようにして、部屋全体の除菌処理を行うようにしてもよい。
【0126】
なお、部屋全体の除菌処理を実施する場合、制御装置80は、例えば、人感センサ91の検出結果に基づき、部屋に人間Hが存在しないことが確認できた場合(例えば、1時間以上不在の場合)に自動的に実施するようにしてもよい。
【0127】
また、制御装置80は、例えば、水位センサ92の検出結果に基づき、給水部102(給水タンク102a)に水M(外部水Ma)が不足していること(所定の下限値以下になったこと)が検出できた場合、部屋が無人の場合、冬季等でも冷房運転を一時的に実行し、凝縮水を発生させて、過酸化水素(OHラジカル)を安定的に発生できるようにしてもよい。なお、室内が乾燥していて、冷房運転を行っても凝縮水が発生しないできる場合には、除菌運転を停止するとともに、報知部90を介して給水を促す報知を行う。また、冬季等に冷房運転を行う場合、室内に人間H等が確認できる場合でも、予め除菌処理のために冷房運転を一時的に実施する旨を報知すれば、実行してもよい。
【0128】
ところで、OHラジカルは、静電気を抑制する効果や髪のぱさつき抑制、キューティクルの引き締め効果等がある。つまり、過酸化水素(OHラジカル)を含む風を髪に当てることにより、室内機11を「ヘアケアモード」で利用可能である。この場合、まとまり易い髪に仕上がり、スタイリングし易くすることができる。また、ヘアケアモードの際に、乱流Ws(無風感の風)を用いることで、利用者の頭部の広範囲に過酸化水素(OHラジカル)を当てることが可能であるとともに、目の乾きや強い風が当たる等の違和感を与えることが軽減され、良好なヘアケアを実施することができる。
【0129】
このように、本実施形態の空気調和装置10(室内機11)は、ファン23により送られてくる風が通風部材26を通る第1のモードの乱流Ws(いわゆる、無風感の風)に乗せて発生ユニット100で発生させた過酸化水素(OHラジカル)を室内に放出する。その結果、室内におけるウイルス等の拡散を抑制しつつ、殺菌作用が期待できる物質(例えば、過酸化水素(OHラジカル)等)を用いて効率的な除菌を実現することができる。
【0130】
なお、制御装置80は、室内機11(空気調和装置10)の内部の除菌クリーニングを実行してもよい。前述したように、例えば、ファン23が順方向回転された場合、室内の空気が吸込み口32から筐体21の内部に入り込む。その結果、仮に吸込み口32の周辺にウイルスが存在していた場合、筐体21内部にウイルスが入り込んでしまう場合がある。また、筐体21には、給水部102等に貯留された水Mが存在するため、通風路31等にカビ等が発生する場合がある。このような場合、制御装置80は、ファン23を逆方向運転することで、吹出し口33側から空気を吸い込み、発生ユニット100で発生させた過酸化水素(OHラジカル)を吸込み口32側に運び、筐体21(通風路31)の内部を除菌クリーニングする。この除菌クリーニング処理は、定期的に自動で実施されるようにしてもよいし、利用者の要求にしたがい、適宜実施できるようにしてもよい。
【0131】
(第2の実施形態)
図9~
図11は、空気調和装置10(室内機11)の第2の実施形態の構造を示す例示的かつ模式的な図である。
【0132】
図9に示す空気調和装置10(室内機11)の構成は、基本的には、
図3に示す第1の実施形態の構成と同じであるが、通風部材26の形状及び通風部材26が2つある流路C1,C2のうち流路C1側のみに配置されている点が異なる。したがって、
図3の構成と
図9の構成で、実質的に同じ構成には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0133】
第2の実施形態における空気調和装置10(室内機11)の流路C1に配置される通風部材26は、
図10に示すように、複数の第2の通風口56のみが配列された部品である。第2の通風口56のみが配置された通風部材26を通風部材26Cと称する。つまり、通風部材26Cには、通風部材26Aや通風部材26Bに存在した第1の通風口55が存在しない。通風部材26Cは、通風部材26Aや通風部材26Bと同様に、軸部51によって支持され、第3の駆動回路83によって切替モータが制御され、第2の閉じ位置Pc2と第2の開き位置Po2との間で移動可能である。そして、第2の閉じ位置Pc2の位置に移動した場合に、
図11に示すように、ファン23によって通風路31内を移動する風は第2の通風口56を通り、第2の風W2aに変化する。したがって、通風部材26Cでは、第1の風W1(層流)は成されない。
【0134】
一方、流路C2を形成する吹出し口33には、通風部材26Cが設けられない。つまり、流路C2から放出される風は、通風部材26C(第2の通風口56)を通過しない第1の風W1a(層流)となる。その結果、流路C1に設けられた通風部材26C(第2の通風口56)を通過する風(第2の風W2a)と通風部材26C(第2の通風口56)が設けられない流路C2を通過した風(第1の風W1a)が隣接して形成さることになる。この場合、第1の実施形態で示した通風部材26A(通風部材26B)で説明したように、第2の風W2aは、流速が早いため、第1の風W1aを引き込む。これにより、第1の風W1aが第2の風W2aに当たる。また、乱流に遷移した第2の風W2aは拡散することで、当該第2の風W2aに隣接して流れる第1の風W1aに当たる。このように、流速や状態(層流または乱流)が異なる第1の風W1a及び第2の風W2aは、隣り合って流れることで、互いに当たる。すなわち、通風部材26C(第2の通風口56)を通過しない第1の風W1aと、通風部材26C(第2の通風口56)を通過した第2の風W2aとが互いに干渉する。
【0135】
第1の風W1aと第2の風W2aとが互いに当たることで、例えば、第1の風W1a及び第2の風W2aの塊が砕かれ、乱流である第2の風W2aが第1の風W1aに運ばれる。第1の風W1a及び第2の風W2aは、このような種々の相互作用を生じて、広範囲に拡散する乱流Wsを発生させる。その結果、第2の実施形態における空気調和装置10(室内機11)から放出される乱流Wsは、第1の実施形態の空気調和装置10(室内機11)と同様に、吹出し口33から放出された直後の風よりも自然の風(いわゆる、無風感の風)に近い状態になる。この場合、通風部材26Cは、二つの流路C1,C2のいずれか一方にのみ形成すればよいので、部品点数の削減、空気調和装置10(室内機11)の構成の簡略化、コスト軽減に寄与することができる。また、通風部材26Cは、第2の通風口56のみを備えるシンプルな構造になり、コストの軽減や通風部材26Cの強度向上等に寄与することができる。
【0136】
以上説明された第1の実施形態、第2の実施形態に係る空気調和装置10において、通風部材26は、第1の開き位置Po1に位置する風向板25によって開放された吹出し口33の少なくとも一部を覆う第2の閉じ位置Pc2に配置可能である。そして、第2の閉じ位置Pc2において、ファン23により送られてくる風が第2の通風口56を通って外部に放出される第1の吹出流路と、第2の通風口56を通らずに第1の吹出流路に隣接して外部に放出される第2の吹出流路を形成できる。上述したように、第2の通風口56を通過する風と第2の通風口56を通過しない風の流速が互いに異なる。流速の異なる風が並んでいるため、第1の風と第2の風とは、流速差及び乱流への遷移しやすさの差のような種々の要因により、空気調和装置10の外部で互いに当たり、広範囲に拡散する乱流Wsを発生させる。乱流Wsは、第2の通風口56を通過せずに吹出し口33から放出される風よりも自然の風(無風感の風)に近い。従って、本実施形態の空気調和装置10は、利用者に当たる風をより自然の風に近くし、利用者の不快感を低減することが可能となる。そして、放出する自然の風に近い風(無風感の風)により発生ユニット100で発生させた過酸化水素(OHラジカル)を運ぶ。その結果、室内におけるウイルス等の拡散を抑制しつつ、殺菌作用の期待過酸化水素、OHラジカルを用いて効率的に除菌を実現することができる。
【0137】
また、第1の実施形態、第2の実施形態において、給水部102は、熱交換器22から熱交換時に得られる凝縮水を貯留するドレンパンであってもよい。空気調和装置10(室内機11)が冷房運転される場合、熱交換によって発生した凝縮水を貯留し、発生ユニット100で過酸化水素(OHラジカル)を発生する際に利用する。その結果、外部からの給水を受けることなく、過酸化水素(OHラジカル)を安定的に発生させ、室内の除菌処理を効果的に行うことができる。
【0138】
また、第1の実施形態、第2の実施形態において、給水部102は、筐体21の外部から外部水を受け付ける給水タンク102aであってもよい。この場合、空気調和装置10(室内機11)が冷房運転以外で運転される場合、つまり、熱交換器22によって凝縮水が発生しない場合でも、給水部102に水Mを供給することができる。その結果、冷房運転以外の、暖房運転時や送風運転時等でも、発生ユニット100において、過酸化水素(OHラジカル)を安定的に発生させ、室内の除菌処理を効果的に行うことができる。
【0139】
また、第1の実施形態、第2の実施形態において、空気調和装置10(室内機11)は、筐体21が設置される室内に存在する生物(例えば人間H)を検知する検知センサ(人感センサ91)を備えてもよい。そして、制御装置80は、検知センサ(人感センサ91)の検知結果に基づき、ファン23と発生ユニット100と風向板25と通風部材26との動作状態を制御してもよい。つまり、検出した生物(例えば、人間H)に対して、無風感の風によって発生ユニット100で発生させた過酸化水素(OHラジカル)を運び、効果的に除菌処理を行うことができる。
【0140】
また、第1の実施形態、第2の実施形態において、空気調和装置10(室内機11)の制御装置80は、ファン23により送られてくる風が第2の通風口56を通る第1のモードと、第2の通風口56を通らない第2のモードとを切り替え可能であってもよい。第2の通風口56を通過する送風モードと第2の通風口56を通過しない送風モードの切り替えを可能にすることで、発生ユニット100で発生した過酸化水素(OHラジカル)の飛翔範囲の調整が容易になり、効率的、かつ効果的な除菌処理を行うことが可能になる。
【0141】
なお、上述した第1の実施形態、第2の実施形態では、例えば住宅用の空気調和装置10を想定して説明したが、各種空気調和装置10についても同様に本実施形態の構成が適用可能である。例えば、業務用の空気調和装置や車両や航空機、船舶等設けられる空気調和装置についても本実施形態の構成が適用可能であり、同様の効果を得ることができる。
【0142】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0143】
10…空気調和装置、11…室内機、21…筐体、22…熱交換器、23…ファン、25,25A,25B…風向板、26,26A,26B,26C…通風部材、31…通風路、32…吸込み口、33…吹出し口、55…第1の通風口、56…第2の通風口、80…制御装置、89…OHラジカル発生制御回路、90…報知部、91…人感センサ、92…水位センサ、93…酸素濃度センサ、100…発生ユニット、102…給水部、102a…給水タンク。