(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114755
(43)【公開日】2022-08-08
(54)【発明の名称】初回生体情報登録手段を備えた生体認証機能付きICカード
(51)【国際特許分類】
G06Q 20/40 20120101AFI20220801BHJP
【FI】
G06Q20/40 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021011178
(22)【出願日】2021-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】浅野 之治
(72)【発明者】
【氏名】松村 秀一
【テーマコード(参考)】
5L055
【Fターム(参考)】
5L055AA73
(57)【要約】
【課題】窓口での本人確認の手続きやシステムの改修を必要とせずに、既存の商品購入取引や本人確認の手順をそのまま活用し、初回のICカード利用時に生体情報の初期登録を行うことができ、安全性を損なうこと無く利便性を向上させる手段を提供する。
【解決手段】生体認証機能付きICカードの初回利用における生体情報の登録手段を備えた生体認証機能付きICカードであって、本人確認のためのPIN照会コマンドに際して、該ICカード内に格納されている生体情報の登録状態を確認し、入力されたPINが正しくかつ前記登録状態が未登録であった場合には、該ICカードからICカード決済端末側にカード処理待ちを要求し、該ICカード上に具備された生体情報取得手段によって生体認証情報を取得して該ICカードに格納した後、既存のPIN照合手順に進むことを特徴とする生体情報の登録手段を備えた生体認証機能付きICカード。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体認証機能付きICカードの初回利用における生体情報の登録手段を備えた生体認証機能付きICカードであって、
前記ICカードがセットされたICカード決済端末からの本人確認のためのPIN照会コマンドに際して、
該ICカード内に格納されている生体情報の登録状態を確認し、
前記ICカード決済端末に入力されたPINが正しくかつ前記登録状態が未登録であった場合には、
該ICカードから該ICカード決済端末側にカード処理待ちを要求し、
該ICカード上に具備された生体情報取得手段によって生体認証情報を取得して該ICカードに格納した後、既存のPIN照合手順に戻り、
入力されたPINが正しくかつ前記登録状態が登録済であった場合には、
そのまま既存のPIN照合手順に進むことを特徴とする生体情報の登録手段を備えた生体認証機能付きICカード。
【請求項2】
前記PIN照会コマンドに際して、入力されたPINが誤っていた場合には既存のPIN照合手順に進むことを特徴とする請求項1に記載の生体情報の登録手段を備えた生体認証機能付きICカード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生体認証機能付きICカードの制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
キャッシュカード、デビットカード、クレジットカードなどのICカードの利用における本人確認は、主に4桁から6桁の数字からなる暗証番号(以下PIN:Personal Identification Number)によるものが主流であるため、番号を記憶することの煩雑さや番号を盗用される危険性に課題があった。
【0003】
それに対して利用者固有の生体情報、例えば指紋など、を取得する機能を有したICカードによって、カード利用時の本人確認についての利便性と安全性を高める技術が提案されている(下記特許文献1)。
【0004】
このような機能を有するICカードの発行についても、認証情報としては従来のPINだけが、ICカードに具備されたICチップのメモリー(記憶素子)に格納された状態のICカードが、従来のICカード発行手続きに準じて行われ、生体認証情報のICカードへの登録はICカード利用者が発行されたカードを入手後に別途行われている。
【0005】
しかし前記特許文献1の技術においては、ICカード利用者が生体情報認証が可能な機器を備えた店舗窓口等へ出向いて本人確認の手続きを経て、生体情報の提供と、該生体情報の該ICカードへの格納を行う手順が必要であることから、利便性を損なうものとなっている。この手続きの煩雑さから、生体情報認証による利用の普及が進まないという課題を有している。
【0006】
それに対して、窓口等での本人確認を不要とし、ICカード利用者自身が生体情報を登録できるシステムも提案されている(下記特許文献2)。
【0007】
しかし前記特許文献2の技術においては、ICカード利用者自身で生体情報の登録手続きができるものの、生体情報登録のために独自の手順を既存のシステムに組み込む必要があることから、認証や決済を含めた全体のシステムを改修しなければならず、手間とコストがかかる。この初期投資の障壁から、生体情報認証による利用の普及が進まないという課題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009-009271号公報
【特許文献2】特開2009-169809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、前記のような課題に対処するためになされたものであって、窓口での本人確認の手続きやシステムの改修を必要とせずに、既存の商品購入取引や本人確認の手順をそのまま活用し、初回のICカード利用時に生体情報の初期登録を行うことができ、安全性を損なうこと無く利便性を向上させる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、生体認証機能付
きICカードの初回利用における生体情報の登録手段を備えた生体認証機能付きICカードであって、
前記ICカードがセットされたICカード決済端末からの本人確認のためのPIN照会コマンドに際して、
該ICカード内に格納されている生体情報の登録状態を確認し、
前記ICカード決済端末に入力されたPINが正しくかつ前記登録状態が未登録であった場合には、
該ICカードから該ICカード決済端末側にカード処理待ちを要求し、
該ICカード上に具備された生体情報取得手段によって生体認証情報を取得して該ICカードに格納した後、既存のPIN照合手順に戻り、
入力されたPINが正しくかつ前記登録状態が登録済であった場合には、
そのまま既存のPIN照合手順に進むことを特徴とする生体情報の登録手段を備えた生体認証機能付きICカードである。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、前記PIN照会コマンドに際して、入力されたPINが誤っていた場合には既存のPIN照合手順に進むことを特徴とする請求項1に記載の生体情報の登録手段を備えた生体認証機能付きICカードである。
【発明の効果】
【0012】
生体情報の登録は、現金引き出しや商品購入などの初回ICカード利用時にICカード自体に具備された生体情報取得手段を用いて行うため、登録のための専用端末を設ける必要がない。
【0013】
また前記登録の際の本人確認はPIN照合によって行われるため、身分証提示などの確認が不要となり、煩雑さが解消されて利便性が向上する。
【0014】
また従来のPIN照合の手順の中で生体情報登録が行われることから、決済端末や決済システム側は何ら変更を加えることなく登録と認証の手順を進めることができ、初期導入コストを抑えることが可能となる。
【0015】
以上の特徴から、生体情報登録の利便性が向上し、生体情報認証によるICカードの利用普及の向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態における生体情報登録シーンのイメージ図。
【
図2】本実施形態における生体情報登録手順のフロー図。
【
図3】本実施形態で用いるICカードの構成概略図。
【
図4】本実施形態におけるICカードのICカード決済端末への接続イメージ図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の一実施形態を示す。
【0018】
本発明に供されるICカード100は、例えば
図3に示すように、認証に必要な情報を記憶する記憶部110と、生体情報を取得する取得部120と、認証プロセスやデータの処理を行う処理部130と、決済端末などの上位ホストとのデータ通信を行う通信部140からなる。
【0019】
前記処理部130は中央演算処理装置(CPU)であって、ICチップのハードウエア層上にOSを備え、記憶部110に記憶された各種アプレットを、記憶部110、通信部140、取得部120を統合制御して実行する機能を有する。
【0020】
前記記憶部110は各種アプレットのコードや演算処理に必要となるデータまたは結果を記憶する機能を有し、主として高速かつ頻繁な書き換えに対応するRandom Access Memory(RAM)、未給電の状態でもデータを保持し、書き換えの可能なフラッシュメモリなどのElectrically Erasable Programmable Read-Only Memory(EEPROM)、また恒久的に書き換える必要の無いデータを保持するRead Only Memory(ROM)などの記憶デバイスからなる。
【0021】
前記取得部120は、生体情報、例えば指紋センサデバイスであって、利用者の指を一次元センサの場合は接触走査、二次元センサの場合は接触保持することによって、その指紋のパターン特徴を抽出する機能を有するものである。また生体情報はこれに限らず、静脈パターン、虹彩パターンなど、利用者固有のもので、カードに具備されたセンサで取得可能なものであればいずれでも構わない。
【0022】
また図示していないが、ICカードまたは認証プロセスの状態を示す表示部を備えても良い。前記表示部は、単色または複数色の発光デバイス、例えばLEDによって、利用者に視覚情報を与えるものである。表示色、表示時間、表示の変動、その他の視覚的に識別できる情報の組み合わせの遷移によって、利用者にICカードの状態とその変化を知らせる機能を有する。
【0023】
ICカード発行者は利用者300に固有のPINを予め記憶部110に記憶させたICカード100を利用者300に渡す。
【0024】
この渡されたICカード100に利用者300の生体情報を登録するには、利用者300が最初に該ICカード100を用いて決済する手順の中で行う。
【0025】
図1に本発明における生体情報登録シーンのイメージを示す。ICカード利用者300は該カード100を最初に利用する決済において、ICカード100をICカード決済端末200にセットする(S1001)。次にICカード決済端末200からの要求に応じて利用者300に固有のPINをICカード決済端末200に入力する(S1004)。次にICカード100に具備された生体情報取得機能に対して、利用者300に固有の生体情報を提供する(S3004)。以上が大きな流れとなる。
【0026】
以下に前記生体情報登録シーンにおける手順についてステップS1001からS1010およびステップS2001からS3009にかけて、
図2をもとに詳しく説明する。
【0027】
ステップS1001:カード100を受け取った利用者300は、該カード100を用いて最初に決済を行う際に窓口または店舗のICカード決済端末200に該ICカード100をセットする。
【0028】
図4は、該ICカード100を前記ICカード決済端末200にセットした状況の一例を示すもので、指紋センサによる取得部120を備えた接触型のICカード100をICカード決済端末200のカードスロットに矢印の向きに挿入して決済処理を進めるシーンを表している。該ICカード決済端末200はPINなど必要な情報の入力を受け付けるキーボード201を備えている。ICカード100は必ずしもこの図に示したように接触型である必要はなく、非接触型のICカードとICカード決済端末であっても構わない。
【0029】
ステップS1002:ICカード決済端末200はICカード100がセットされたことを感知すると、該ICカード100に対して給電を開始し、リセットコマンドを通信部
140へ送信してICカード100を活性化させるとともに、通常のPIN認証手順に基づいた処理手順を開始する。
【0030】
ステップS1003:ICカード決済端末200は、利用者300にPINの入力を要求する。
ステップS1004:利用者300は前記要求に応えて、ICカード決済端末200に備えられたキーボード201に利用者300のPINを入力する。
【0031】
ステップS1005:PINの入力を受け付けたICカード決済端末200は、入力されたPINが利用者300のものであるかどうかを確認するため、ICカード100の通信部140に対してPINのVerifyコマンドを送信する。
【0032】
ステップS1006:通信部140を経てVerifyコマンドを受信した処理部130は記憶部110に対して記憶されているPINを要求する。
ステップS1007:記憶部110は記憶されているPINを処理部130へ回答する。
【0033】
ステップS1008:処理部130はVerifyコマンドでICカード決済端末200から受け取ったPINと、記憶部110から受け取ったPINを比較し、それらが互いに合致していた場合はステップ2001以降の生体情報登録確認手順に進む。PINが合致しなかった場合はICカード決済端末200に対して通信部140を介してPINの照合失敗を通知する(S1009)。
【0034】
以下ステップS2001からS2003が生体情報登録の要否を判断する手順となる。
【0035】
ステップS2001:処理部130は記憶部110に生体情報登録フラグの状態を問い合わせる。生体情報登録フラグとは、該ICカードに生体情報が登録されているか否かを示すフラグであり、記憶部110に保持されているものである。
ステップS2002:記憶部110は生体情報登録フラグを処理部130に回答する。
【0036】
ステップS2003:処理部130は生体情報登録フラグがセットされていた場合、すなわち生体情報が既に登録されていた場合には、生体情報の登録をする必要がないので、生体情報登録手順から抜けてICカード決済端末200に対して通信部140を介して既にS1008で照合の済んでいるPIN照合の正常終了を通知する(S1010)。生体情報登録フラグがセットされていなかった場合、すなわち生体情報が未だ登録されていない場合には、生体情報登録手順に進む(S3001)。
【0037】
以下ステップS3001以降が生体情報を登録させる手順となる。
【0038】
ステップS3001:処理部130は生体情報登録手順が完了するまで、ICカード決済端末200とICカード100の間のやり取りが時間切れで中断しないように、通信部140を介して決済端末200に対して処理延長要求を送信し続ける。
【0039】
ステップS3002:続いて処理部130は取得部120を生体情報読取り待機状態にする(S3003)。
【0040】
ステップS3004:利用者300はここで生体情報を登録する必要がある場合、ICカード100の取得部120に対して生体情報を提供する。例えば指紋二次元センサの場合、指を該センサに接触保持する。
【0041】
ステップS3005:利用者300は必ずしもこの場面で生体情報を登録するとは限ら
ず、PIN認証の決済だけを行う場合もあることから、取得部120は生体反応の有無、すなわち生体情報がセンサに提供されているか否かを判断し、生体反応が一定時間感知されない場合は生体情報登録手順から抜けてICカード決済端末200に対して通信部140を介して既にS1008で照合の済んでいるPIN照合の正常終了を通知する(S1010)。また生体反応が有る場合には生体情報の取得を行う(S3006)。
【0042】
ステップS3007:処理部130はステップS3006で生体情報が生体認証を行うために有効なものとして取得されたか否かを判断し、もし取得されていない場合には処理をステップS3001に戻し、それ以降の手順を繰り返す。生体情報の取得に成功した場合には、記憶部110に取得した生体情報を書き込み(S3008)、更に生体情報登録フラグをセットして(S3009)、生体情報登録の手順を完了させる。
【0043】
ステップS1010:こうして生体情報登録の手順が完了した後、生体情報登録手順から抜けて処理部130はICカード決済端末200に対して通信部140を介して既にS1008で照合の済んでいるPIN照合の正常終了を通知する(S1010)。
【0044】
以上のようにすることで、
図2の二重破線で囲った部分(S2001からS3009)の生体情報登録手順が進行しているにも関わらず、ICカード決済端末200からは、ステップS1005でPINのVerifyコマンドを送信した後にICカード100から返ってくるレスポンスは、処理待ちリクエスト(S3001)を除いては、PIN照合失敗(S1009)かPIN照合成功(S1010)のいずれかしか無いため、通常のPIN認証による本人確認処理を行っているように見えており、ICカード決済端末200側での処理手順の変更が必要ないものとなっている。
【0045】
なお、図示していないが、ICカードの状態表示部を有するICカードの場合には、前記ステップS3003の読み取り待機で該表示部を遷移させ、またステップS3008の生体情報書き込み直前でも遷移させるなどしで、利用者300に生体情報取得の状況を通知しても良い。例えば読取り待機時に消灯していた該表示部を点灯させ、読取り完了時には点灯していた該表示部を一定時間点滅させた後に消灯するなどの手順が適用できる。
【符号の説明】
【0046】
100 生体情報取得機能付きICカード
110 記憶部
120 取得部
130 処理部
140 通信部
200 ICカード決済端末
201 キーボード
300 利用者