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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114756
(43)【公開日】2022-08-08
(54)【発明の名称】チューブ容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 35/02 20060101AFI20220801BHJP
【FI】
B65D35/02 Z BRA
B65D35/02 BSE
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021011179
(22)【出願日】2021-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 剛史
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 実
(72)【発明者】
【氏名】浦川 直也
【テーマコード(参考)】
3E065
【Fターム(参考)】
3E065AA02
3E065BA02
3E065BA05
3E065BA18
3E065BA25
3E065BA34
3E065BB03
3E065DA04
3E065DB05
3E065DC02
3E065DD05
3E065EA01
3E065FA06
3E065GA02
3E065HA10
(57)【要約】
【課題】紙を含む積層シートでチューブ状胴部を構成したチューブ容器でありながら、しかも、内容物を注出したときにもこの胴部が不用意に腰折れすることのないチューブ容器を提供すること。
【解決手段】チューブ状の胴部110と、この胴部の一方の端部に固定された注出口部120とでチューブ容器100を構成し、その胴部の一方の端部を扁平に潰しシールして閉塞シール部110bとする。そして、前記胴部が紙110を含む積層シート110から成り、かつ、この胴部110に、らせん状の罫線110α~110αを複数型押しする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブ状の胴部と、この胴部の一方の端部に固定された注出口部とで構成され、前記胴部の一方の端部を扁平に潰してシールした閉塞シール部を有するチューブ容器において、
前記胴部が紙を含む積層シートから成り、
かつ、この胴部の中心線に垂直な面を横断面とするとき、この横断面に交差する罫線が型押しされていることを特徴とするチューブ容器。
【請求項2】
前記罫線を複数本有することを特徴とする請求項1に記載のチューブ容器。
【請求項3】
任意の高さにおいて前記横断面と前記罫線とが交差していることを特徴とする請求項1又は2に記載のチューブ容器。
【請求項4】
前記罫線が前記胴部にらせん状に設けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のチューブ容器。
【請求項5】
前記罫線の全てがチューブ容器の外側又は内側に向けて突出するように型押しされた罫線であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のチューブ容器。
【請求項6】
前記積層シートの領域のうち、閉塞シール部を基準として、その一方に位置する領域を表側の領域、反対側を裏側の領域とするとき、表側の領域では前記罫線がチューブ容器の外側に向けて突出するように型押しされた罫線であり、裏側の領域前記罫線がチューブ容器の内側に向けて突出するように型押しされた罫線であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のチューブ容器。
【請求項7】
前記胴部に、前記積層シートを合掌状に突き合わせてシールすることにより背貼りシール部が形成されており、
前記背貼りシール部が前記胴部の外面に沿うように折り曲げられて前記胴部にシールされていることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載のチューブ容器。
【請求項8】
前記注出口部が注出筒部と平板部とを有し、
前記注出筒部が筒形状を有し、かつ、軸方向における一方端にフランジを有しており、
前記平板部が、前記注出筒部の断面と略同形状の開口が設けられた環状の平板形状を有し、
平板部の前記開口を前記注出筒部が貫通した状態で、一方面が前記注出筒部の前記フランジにシールされて前記注出口部が構成されており、
この注出筒部が紙を主体とするシートにより構成されていることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載のチューブ容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューブ容器に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品や化粧品、食品等の包装材として、樹脂を主体とした材料からなるチューブ容器が広く用いられている。例えば、特許文献1には、内容物を抽出する注出ユニットと、注出ユニットに溶着され、内容物を収容する胴部とから構成されるチューブ容器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-199280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるようなチューブ容器は、プラスチックの射出成形やコンプレッション成形等により成型することが一般的であり、通常は、チューブ容器の材料のほぼ100%がプラスチックである。
【0005】
近年、プラスチックゴミによる海洋汚染や石油資源の枯渇可能性などが問題となっている。また、トウモロコシやサトウキビ等の生物資源(バイオマス)から作られるバイオプラスチックも実用化されているが、石油由来のプラスチックをバイオプラスチックに単に置き換えただけでは、バイオプラスチック用の原料生産が食料生産用の耕地を圧迫するという問題が生じる。したがって、環境負荷の軽減や資源保護の観点からプラティック使用量の削減が急務である。チューブ容器においても、樹脂使用量を低減するため、例えば、胴部に紙を用いることが考えられる。
【0006】
ところで、チューブ容器はこれにキャップを被せ、このキャップを下方に向けて倒立させることができるのが通常である。しかしながら、胴部に紙を用いた紙製チューブ容器は、その紙の割合を多くして樹脂量を少なくするほど、チューブ状胴部が腰折れして、倒立し難い傾向にある。内容物を注出して、チューブ容器内部に残った内容物の量が減るほどこの傾向が高まり、その使い勝手や意匠性を損なうばかりでなく、折れ曲がった部分が閉塞して、内容物の注出が困難となることもあった。
【0007】
そこで、本発明は、紙を含む積層シートでチューブ状胴部を構成したチューブ容器でありながら、しかも、内容物を注出したときにもこの胴部が不用意に腰折れすることのないチューブ容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、請求項1に記載の発明は、チューブ状の胴部と、この胴部の一方の端部に固定された注出口部とで構成され、前記胴部の一方の端部を扁平に潰してシールした閉塞シール部を有するチューブ容器において、
前記胴部が紙を含む積層シートから成り、
かつ、この胴部の中心線に垂直な面を横断面とするとき、この横断面に交差する罫線が型押しされていることを特徴とするチューブ容器である。
【0009】
次に、請求項2に記載の発明は、前記罫線を複数本有することを特徴とする請求項1に
記載のチューブ容器である。
【0010】
次に、請求項3に記載の発明は、任意の高さにおいて前記横断面と前記罫線とが交差していることを特徴とする請求項1又は2に記載のチューブ容器である。
【0011】
次に、請求項4に記載の発明は、前記罫線が前記胴部にらせん状に設けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のチューブ容器である。
【0012】
次に、請求項5に記載の発明は、前記罫線の全てがチューブ容器の外側又は内側に向けて突出するように型押しされた罫線であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のチューブ容器である。
【0013】
次に、請求項6に記載の発明は、前記積層シートの領域のうち、閉塞シール部を基準として、その一方に位置する領域を表側の領域、反対側を裏側の領域とするとき、表側の領域では前記罫線がチューブ容器の外側に向けて突出するように型押しされた罫線であり、裏側の領域前記罫線がチューブ容器の内側に向けて突出するように型押しされた罫線であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のチューブ容器である。
【0014】
次に、請求項7に記載の発明は、前記胴部に、前記積層シートを合掌状に突き合わせてシールすることにより背貼りシール部が形成されており、
前記背貼りシール部が前記胴部の外面に沿うように折り曲げられて前記胴部にシールされていることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載のチューブ容器である。
【0015】
次に、請求項8に記載の発明は、前記注出口部が注出筒部と平板部とを有し、
前記注出筒部が筒形状を有し、かつ、軸方向における一方端にフランジを有しており、
前記平板部が、前記注出筒部の断面と略同形状の開口が設けられた環状の平板形状を有し、
平板部の前記開口を前記注出筒部が貫通した状態で、一方面が前記注出筒部の前記フランジにシールされて前記注出口部が構成されており、
この注出筒部が紙を主体とするシートにより構成されていることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載のチューブ容器である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、胴部の横断面に交差する罫線が型押しされているから、この型押し罫線によって胴部が補強され、胴部が不用意に腰折れすることがない。内容物の一部又は全部を注出した後にも胴部が不用意に腰折れすることがないのである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は本発明の第1の実施形態に係り、キャップ付きチューブ容器の説明用分解斜視図である。
図2図2は本発明の第1の実施形態に係り、図1の1x-1xラインに沿う説明用断面図である。
図3図3は本発明の第1の実施形態に係り、図1の1y-1yラインに沿う説明用断面図である。
図4図4は本発明の第1の実施形態に係り、図1の1z-1zラインに沿う説明用断面図である。
図5図5は本発明の第1の実施形態に係り、胴部を構成する積層シートの説明用断面図である。
図6図6は本発明の第1の実施形態に係り、胴部を構成する積層シートの説明用平面図である。
図7図7は本発明の第1の実施形態に係り、図7(a)~(d)は胴部を製造する工程を説明するための説明用断面図である。
図8図8は本発明の第1の実施形態に係り、図9(a)~(c)は胴部と注出口部との溶着方法を説明するための説明用断面図である。
図9図9は本発明の第2の実施形態に係り、キャップ付きチューブ容器の説明用分解斜視図である。
図10図10は本発明の第2の実施形態に係り、図9の2x-2xラインに沿う説明用拡大断面図である。
図11図11は本発明の第2の実施形態に係り、注出口部の注出筒部を構成する積層シートの説明用断面図である。
図12図12は本発明の第2の実施形態に係り、チューブ容器の製造工程を説明するための説明用断面図である。
図13図13は本発明の第2の実施形態に係り、チューブ容器の製造工程を説明するための説明用断面図である。
図14図14は本発明の第2の実施形態に係り、チューブ容器の製造工程を説明するための説明用断面図である。
図15図15は本発明の第2の実施形態に係り、チューブ容器の製造工程を説明するための説明用断面図である。
図16図16は本発明の第2の実施形態に係り、チューブ容器の製造工程を説明するための説明用断面図である。
図17図17は本発明の第2の実施形態に係り、チューブ容器の製造工程を説明するための説明用断面図である。
図18図18は本発明の第2の実施形態に係り、チューブ容器の製造工程を説明するための説明用断面図である。
図19図19は本発明の第2の実施形態に係り、チューブ容器の製造工程を説明するための説明用断面図である。
図20図20は本発明の第2の実施形態に係り、チューブ容器の製造工程を説明するための説明用断面図である。
図21図21は本発明の第2の実施形態に係り、チューブ容器の製造工程を説明するための説明用断面図である。
図22図22は本発明の第2の実施形態に係り、チューブ容器の製造工程を説明するための説明用断面図である。
図23図23は本発明の第2の実施形態に係り、キャップの製造工程を説明するための説明用断面図である。
図24図24は本発明の第2の実施形態に係り、キャップの製造工程を説明するための説明用断面図である。
図25図25は本発明の第2の実施形態に係り、キャップの製造工程を説明するための説明用断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、2つの実施形態を例として本発明を説明する。2つの実施形態のうち、第1の実施形態は、一体成型した樹脂製注出口部120を使用したチューブ容器100の例であり、第2の実施形態は、注出口部220が注出筒部221と平板部222との2つの部品で構成され、これら注出筒部221と平板部222のいずれもが紙を含む積層シートで構成されたチューブ容器200の例である。
【0019】
[第1の実施形態]
図1図8を参照して第1の実施形態を説明する。
【0020】
図1は、キャップ付きチューブ容器の説明用分解斜視図である。また、図2図1の1
x-1xラインに沿う説明用断面図、図3図1の1y-1yラインに沿う説明用断面図、図4図1の1z-1zラインに沿う説明用断面図である。
【0021】
チューブ容器100は、チューブ状の胴部110と、胴部110に取り付けられた注出口部120とを備える。
【0022】
胴部110は、内容物を収容するための部材であり、紙110及びシーラント層110を含む積層シート110により形成されている。そして、略平行な一対の端縁を有するこの積層シート110を丸め、積層シート110の一対の端縁のそれぞれを含む帯状の部分の内面同士を合掌状に突き合わせて溶着してこの部分に背貼りシール部110a形成することにより、チューブ状の胴部110が形成されている。そして、図4に示すように、前記背貼りシール部110aは、胴部110の外面に沿うように折り曲げられて胴部110にシールされている。背貼りシール部110aの外面と胴部110の外面とは、熱溶着性を有する材料を用いてシールされている。胴部110は、製袋機やピロー・スティック包装機等を用いて作製することができる。
【0023】
図1~2に示すように、胴部110の一方の端部は扁平に潰されてシールされており、このシールにより閉塞シール部110bが形成されている。
【0024】
一方、胴部110の他方の端部には注出口部120が固定されている。
【0025】
注出口部120は、胴部110に収容された内容物を外部に抽出するためのスパウトであり、熱可塑性樹脂を含む材料により成型される。注出口部120は、注出筒部121と平板部122とを備える。平板部122は、注出筒部121の一方の端部に接続され、注出筒部121の外方に延伸する平板状の部分である。本実施形態では、平板部122は、注出筒部121の軸方向と直交する方向(図1~2における左右方向)に延伸するように形成されている。本実施形態では、平板部122は、円環状に形成されているが、胴部110を接合することができる限り、平板部122の外形は限定されず、楕円形、長円形、トラック形、多角形等であっても良い。
【0026】
一方、胴部110の他方の端部には注出口部120が固定されている。
【0027】
注出口部120は、胴部110に収容された内容物を外部に抽出するためのスパウトであり、熱可塑性樹脂を含む材料により成型される。注出口部120は、注出筒部121と平板部122とを備える。平板部122は、注出筒部121の一方の端部に接続され、注出筒部121の外方に延伸する平板状の部分である。本実施形態では、平板部122は、注出筒部121の軸方向と直交する方向(図1~2における左右方向)に延伸するように形成されている。本実施形態では、平板部122は、円環状に形成されているが、胴部110を接合することができる限り、平板部122の外形は限定されず、楕円形、長円形、トラック形、多角形等であっても良い。
【0028】
この注出口部120の材料となる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンやエチレン-ビニルアルコール共重合体等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂及びシクロポリオレフィン系樹脂等のいずれか1種、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。注出口部120は、熱可塑性樹脂と樹脂以外のフィラーを含む材料により成型しても良い、フィラーとしては、タルク、カオリン、紙粉及びセルロース繊維のいずれか1種、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。注出口部120の材料として、熱可塑性樹脂と、樹脂以外のフィラーの混合物を用いることにより、成型性や胴部110の積層シート110との熱溶着性を維持しつつ、樹脂の使用量を低減することが可能となる。注出口部120の成型方法は特に
限定されないが、射出成形、真空成形・熱板圧空成型等のサーモフォーミング、コンプレッション成型等の既存の成型方法を利用可能である。
【0029】
そして、胴部110の端部のうち前記閉塞シール部110bが形成された端部の反対側の端部から所定範囲の部分は、折り畳まれて注出口部120の平板部122の外面にシールされている。平板部122上には、図1及び図4に示すように、胴部110を構成する積層シート110が折り畳まれて重なり部110cが形成され、この重なり部110cによってプリーツ110cが複数形成される。重なり部110cにおいては、重なり合った積層シート110の外面同士が接しており、互いに接する積層シート110の外面同士が熱溶着性を有する材料を用いてシールされている。
【0030】
次に、図5は、チューブ容器100の胴部110を構成する積層シート110の層構成の一例を示す説明用断面図である。
【0031】
チューブ容器100の胴部110は、紙を主体とする積層シート110により構成される。積層シート110は、紙110の一方の面に、基材フィルム層110、バリア層110及びシーラント層110をこの順に積層し、紙110の他方の面に、紙保護層110を積層し、紙保護層110上にインキ層110及びオーバーコートニス層110を積層し、熱溶着性コート層110をパターンコートした多層シートである。以下、各層の詳細を説明する。
【0032】
紙110は、チューブ容器100に強度及びコシを付与する構造層である。紙110を構成する用紙の種類は特に限定されないが、強度、屈曲耐性、印刷適性を備える点で、片艶クラフト紙または両艶クラフト紙を用いることが好ましい。また、紙110を構成する用紙として、必要に応じて、耐水紙または耐油紙を使用しても良い。また、紙110はパルプ繊維を50%以上含む紙であれば良く、パルプ繊維の他に樹脂繊維を含む混抄紙であっても良い。
【0033】
紙110に用いる用紙の坪量は、30~300g/mであることが好ましい。紙110に用いる用紙の坪量が30g/m未満である場合、胴部110のコシが不足する。コシを補うためには、例えば、紙110より内側に設ける樹脂フィルムを厚くする必要があるが、樹脂比率の上昇に繋がり、環境負荷低減の面で望ましくない。また、紙110に用いる紙の坪量が300g/mを超える場合、紙のコシや断熱性により、製筒性(製袋性)、成型性及び溶着性が悪化する上、製造コストも増加するため好ましくない。また、後述する型押し罫線110α,110αの形成が容易であることから、さらに好ましくは50~150g/mである。
【0034】
基材フィルム層110は、積層シート110に耐熱性と物理的強度とを付与する層である。基材フィルム層110は、バリア層110の基材となる層でもある。基材フィルム層110を構成するフィルムの材質は特に限定されないが、耐熱性及び物理的強度の観点から、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド等の延伸フィルムを用いることが好ましい。ただし、基材フィルム層110を紙により構成しても良い。
【0035】
バリア層110は、酸素や水蒸気等を遮断して、内容物の保存性を向上させる機能層である。バリア層110は、例えば、シリカやアルミナ等の無機化合物の蒸着膜、アルミニウム等の金属蒸着膜、アルミニウム等の金属箔、板状鉱物及び/またはバリア性樹脂を含むバリアコート剤の塗膜の1種以上により構成することができる。バリアコート剤に用いるバリア性樹脂としては、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)やポリ塩化ビニリデン(PVDC)等を使用することができ、バリアコート剤にはバリア性樹脂以外のバインダー樹脂が適宜配合される。バリア層110は、予め基材フィルム層11
上に積層されてバリアフィルムを構成していても良いし、単層膜として設けられても良い。
【0036】
シーラント層110の材質は特に限定されないが、ポリプロピレン、ポリエチレン、環状ポリオレフィン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂であることが好ましい。シーラント層110には、軟化温度が基材フィルム層110の軟化温度より20℃以上低い樹脂を用いる。シーラント層110の軟化温度が、基材フィルム層110の軟化温度より20℃以上低くない場合、シール時に基材フィルム層110が軟化してピンホールが発生する可能性が高くなるため好ましくない。シーラント層110の軟化温度は、基材フィルム層110の軟化温度より40℃以上低いことが好ましい。
【0037】
シーラント層110に用いる熱可塑性樹脂は、注出口部120の材料を構成する熱可塑性樹脂に対して接着性を有するものであれば良いが、注出口部120に用いる熱可塑性樹脂と同じ材質であることが好ましい。シーラント層110に用いる熱可塑性樹脂と注出口部120に用いる熱可塑性樹脂層とを同じにすることにより、胴部110と注出口部120とのシール強度を向上させることができる。
【0038】
紙保護層110は、積層シート110を構成する紙110への内容物や汚れの付着から保護するための層である。紙保護層110の材料や形成方法は特に限定されないが、熱可塑性樹脂の押出コートや、耐水剤あるいは耐油剤等のコート剤のコートにより紙保護層110を積層することができる。紙保護層110の厚みは、0.2~50μmであることが好ましく、1~20μmであることがより好ましい。紙保護層110の厚みが0.2μm未満である場合、紙保護層110にピンホールが発生する可能性があり、紙110の保護が不十分となる場合がある。また、紙保護層110の厚みが50μmを超える場合、樹脂使用量や製造コストの面で好ましくない。
【0039】
インキ層110は、各種表示を行うために印刷により施される層であり、オーバーコートニス層110は、耐摩性等を付与するための層である。インキ層110とオーバーコートニス層110の積層順序は図6と逆であっても良い。また、オーバーコートニス層110が紙保護層110を兼ねていても良い。
【0040】
熱溶着性コート層110は、積層シート110の外面に熱溶着性を付与するための層である。本実施形態では、後述するように、積層シート110の外面にパターンコートした熱溶着性コート層110により、背貼りシール部110aの外面を胴部110の外面にシールしている(図3参照)と共に、注出口部120の平板部122上に形成される重なり部110cで互に重なる積層シート110の外面同士をシールしている(図4参照)。
【0041】
熱溶着性コート層110は、アクリルポリマー、ポリオレフィン、ポリビニルアセテート、ポリエステル等の融点が200℃以下の熱可塑性樹脂を含むコート剤を塗布し、乾燥させることにより形成することができる。コート剤には、熱可塑性樹脂の他に、ブロッキング防止のための無機物等を配合しても良い。
【0042】
熱溶着性コート層110を形成するためのコート剤の塗布量は、0.2~40g/mであり、3.0~30g/mであることが好ましい。コート剤の塗布量が0.2g/m未満の場合、積層シート110の外面同士の接着強度が不足し、背貼りシール部110aや重なり部110cにおいて積層シート110が跳ね上がる現象(以下、「紙ハネ」という)が発生する。一方、コート剤の塗布量が40g/mを超える場合、摩擦係数が大きくなり、製袋機等の加工装置に対する機械適性が低下したり、積層シート110同士のブロッキングが発生しやすくなったりする。
【0043】
熱溶着性コート層110は、積層シート110の全面に設けても構わないが、積層シート110の表面の摩擦係数が大きくなるため、胴部110を加工する工程及びその後の工程での機械適性が低下する場合がある。したがって、熱溶着性コート層110は、コート剤をパターンコート(部分コート)することにより、積層シート110の表面の一部に設けることが、機械適性の面でより好ましい。
【0044】
熱溶着性コート層110を積層シート110の表面の一部に設ける場合、シール対象箇所、すなわち、背貼りシール部110aの外面と胴部110の外面とが接触する部分と、重なり部110cにおいて互に重ねられる積層シート110の外面同士が接触する部分とに熱溶着性コート層110が設けられていれば良い。ただし、シール対象箇所において接触する面の一方にのみ熱溶着性コート層110を設けても良い。
【0045】
胴部110を構成する積層シート110の厚み(総厚)は、特に限定されないが、30~300μmであることが好ましい。積層シート110の厚みが、この範囲であれば、製袋機やピロー・スティック包装機等を用いて胴部110を容易に筒状に加工することができる。また、紙110によって強度とコシが付与されるため、一般的なラミネートチューブ(厚み300~500μm)と比べて、薄くすることができ、樹脂使用量も低減できる。
【0046】
胴部110を構成する積層シート110の樹脂比率を低減するため、積層シート110の質量のうち、紙110の占める割合が50%以上であることが好ましい。樹脂の使用量を低減する観点では紙110の割合は高いほど好ましい。
【0047】
尚、図6に示した積層シート110の層構成において、基材フィルム層110、バリア層110、紙保護層110、インキ層110及びオーバーコートニス層110の1層以上を省略しても良い。
【0048】
これらの層のうち、1層あるいはそれ以上を省略した積層シート110の具体例を挙げると、例えば、次の各層をこの順に積層したものが例示できる。
・紙(坪量70g/m)/無機蒸着膜を設けたポリエステルフィルム(厚さ12μm)/ポリアミドフィルム(厚さ13μm)/ポリエチレン層(厚さ50μm)。
・紙(坪量120g/m)/無機蒸着膜を設けたポリエステルフィルム(厚さ12μm)/ポリアミドフィルム(厚さ13μm)/ポリエチレン層(厚さ50μm)。
・紙(坪量150g/m)/ポリエチレン層(厚さ50μm)/エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム(厚さ30μm)/ポリエチレン層(厚さ50μm)。
・ポリエチレン層(厚さ30μm)/紙(坪量150g/m)/ポリエチレン層(厚さ50μm)/エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム(厚さ30μm)/ポリエチレン層(厚さ50μm)。
・ポリエチレン層(厚さ30μm)/紙(坪量200g/m)/ポリエチレン層(厚さ50μm)。
【0049】
ところで、図1に示すように、この胴部110には、らせん状に延びる2本の罫線110α~110αが型押しされている。これら2本の型押し罫線110α~110αのうち、型押し罫線110αは、注出口部120から閉塞シール部110bに至るまで延びている。このため、胴部110の中心線に垂直な面を横断面とするとき、任意の高さにおいて横断面と型押し罫線110αとが交差しており、胴部110を補強して、この胴部110が不用意に腰折れすることを防止している。
【0050】
また、このようにらせん状に型押し罫線110αが設けられていると、胴部110を
圧迫して内容物の一部を注出した後、胴部110は元の円筒状に戻り易くなり、このため、注出口部120から空気が流入し易くなる。そして、このチューブ容器100を倒立させて保存すると、内部に残った内容物がその自重によって注出口部120近傍に集まるから、次回の注出が容易となり、最終的に内部に残る残量を現象させることができる。
【0051】
もう一方の型押し罫線110αは、胴部110の一部に設けられている。この型押し罫線110αも胴部110を補強して、その腰折れを防止するものである。
【0052】
このように、胴部110に設ける型押し罫線は一本でも良いし、複数本でも良いが、注出口部120から閉塞シール部110bに至るまで延びて、任意の高さの横断面と交差していることが望ましい。一本の型押し罫線が注出口部120から閉塞シール部110bに至るまで延びていてもよいし、横断面の高さに応じて異なる型押し罫線が交差していてもよい。
【0053】
これら2本の型押し罫線110α~110αは、チューブ容器100の外側から内側に向けて突出するように型押しされた罫線であっても良いし、逆に内側から外側に向けて突出するように型押しされた罫線であっても良い。また、その一部が外側から内側に向けて突出し、その他の部分が内側から外側に向けて突出するように型押しされたものであってもよい。例えば、積層シート110の領域のうち、閉塞シール部110bを基準として、その一方に位置する領域を表側の領域、反対側を裏側の領域とするとき、表側の領域では前記型押し罫線110α~110αがチューブ容器100の外側に向けて突出するように型押しされた山折り罫線であり、裏側の領域前記罫線がチューブ容器100の内側に向けて突出するように型押しされた谷折り罫線とすることもできる。
【0054】
次に、チューブ容器100は、図1に示すように、注出口部120の注出筒部121に螺合により着脱可能なスクリューキャップ130を更に備えていることが望ましい。
【0055】
また、チューブ容器100は、スクリューキャップ130に代えて、ヒンジキャップを備えていても良い。ヒンジキャップを設ける場合、螺合により注出口部121に取り付けても良い。あるいは、注出筒部121の外面にネジ山の代わりにリブを設け、リブを介した嵌合によりヒンジキャップを注出口部121に取り付けても良い。
【0056】
チューブ容器100がスクリューキャップやヒンジキャップ等のキャップを備えている場合、チューブ容器100の開封後に再封することが容易となる。また、このスクリューキャップ130を下方に向けて倒立させて保存することができる。このように倒立させたときにも、チューブ容器100が腰折れすることがない。内容物の一部を注出した後に倒立させた場合でも、不用意に腰折れすることはない。
【0057】
更に、注出筒部121の内部は、チューブ容器100の未開封状態において容器内部を密閉状態に保つために、隔壁により閉鎖されていても良い。隔壁を設ける場合、注出筒部121の内周に沿って円形状のハーフカットを設けると共に、ハーフカットによって囲まれた部分に接続されるプルリングを設けることが好ましい。このように構成すれば、チューブ容器100の開封時には、使用者がプルリングを引っ張って隔壁のハーフカットの部分を破断させることにより、ハーフカットで囲まれた隔壁の一部を除去して、胴部110から注出筒部121へと内容物を注出するための開口部を形成することができる。
【0058】
以下、本実施形態に係るチューブ容器100の製造方法を説明する。
【0059】
図6は胴部110を構成する積層シート110の説明用平面図であり、この図における上側の端縁の近傍の帯状の領域110cが注出口部120に溶着される部分に相当し
図6における下側の端縁近傍が閉塞シール部110bとなる部分に相当する。また、2本の二点鎖線110xで挟まれた中央の領域110Aは、チューブ容器100の表側の領域となる部分であり、領域110Aの両側に隣接する領域110Bは、チューブ容器100の裏側の領域となる部分である。なお、図6の紙面の手前側が胴部110の外面となる面である。
【0060】
積層シート110の左側端縁110aに沿った帯状の領域110aと、上側端縁に隣接する帯状の領域110cとに、熱溶着性のコート剤をパターンコートすることにより、上述した熱溶着性コート層が形成されている。帯状の領域110aは、積層シート110を丸めて筒状にし、対向する平行な左側端縁110a及び右側端縁110aに沿う帯状領域の内面同士を合掌状に突き合わせて背貼りシール部110aを形成し、背貼りシール部110aを胴部110に沿うように折り曲げた際に、背貼りシール部110aの外面と胴部110の外面とが接する部分に相当する。また、帯状の領域110cは、筒状にした積層シート110を注出口部120の平板部122に接合する際に、平板部122に溶着される部分であって、折り畳まれてプリーツ110cが形成される部分に相当する。
【0061】
そして、この積層シート110には型押し罫線110α~110αが設けられている。これら型押し罫線110α~110αのうち型押し罫線110αは注出口部120から閉塞シール部110bに至るまで連続的に設けられており、しかも、中央の領域110Aとこれに隣接する領域110Bに跨って設けられている。一方、型押し罫線110αは注出口部120から開始しているものの閉塞シール部110bには到達しておらず、しかも、中央の領域110Aのみに配置されている。
【0062】
これら型押し罫線110α~110αは外側から内側に向けて突出するように型押しされたものであっても良いし、逆に内側から外側に向けて突出するように型押しされたものであっても良い。また、型押し罫線110αを外側から内側に向けて突出するように型押しされたものとし、型押し罫線110αを内側から外側向けて突出するように型押しされたものとすることも可能である。これら型押し罫線110α~110αは周知のエンボス加工によって形成することができる。
【0063】
なお、後述するように、型押し罫線は、積層シート110を円筒状に加工した後に形成することもできるし、この円筒状積層シート110に注出口部120を取り付けた後に形成することも可能である。もっとも、このように積層シート110を円筒状に加工した後に型押し罫線を形成した場合には、表側領域110Aと裏側領域110Bの両方に、互に対応した型押し罫線が形成される。例えば、表側領域110Aに外側から内側に向けて突出する型押し罫線が形成され、これに対応する位置であって、裏側領域110Bに内側から外側に向けて突出する型押し罫線が形成される。
【0064】
次に、図7は、胴部を製造する工程を説明するための説明用断面図である。図7において、積層シート110は図示しない搬送装置によって搬送されながら順次加工される。
【0065】
まず、図7(a)に示すように、板状の治具141に積層シート110を巻き付け、積層シートの左側端縁110a及び帯状領域110aを含む所定範囲と、右側端縁110aを含む所定範囲とを重ね合わせる。図7を参照して説明したように、左側端縁110aに沿う帯状領域110aには、熱溶着性コート層が設けられている。
【0066】
次に、図7(b)に示すように、断面が逆T字形のガイド142を用いて、帯状領域110aと右側端縁110aに沿う帯状の部分とを立ち上げ、ガイド142を挟んでそれぞれの内面同士を合掌状に対向させる。
【0067】
次に、図7(c)に示すように、平板状のガイド143を用いて、積層シート110の内面同士を合掌状に突き合わせた部分を約90度折り曲げて、3枚の積層シート110を重ね合わせた状態とする。
【0068】
この状態で、図7(d)に示すように、シールバー144を用いてシールすることにより、積層シート110の内面同士を溶着させて背貼りシール部110aを形成すると同時に、帯状領域110aに設けられた熱溶着性コート層により背貼りシール部110aを胴部110の外面に溶着させることができる。
【0069】
前述したように、このように円筒状とした積層シート110に型押し罫線を形成することも可能である。この場合には、まず、扁平に潰す。このとき、この押し潰しによって形成される折り曲げ線は、閉塞シール部を形成するために扁平に潰して形成された折り曲げ線の延長線と同じ線である。このように筒状積層シート110を扁平に潰した状態でエンボス加工を施すことにより、型押し罫線を形成することができる。このように扁平に潰した筒状積層シート110にエンボス加工を施して形成した型押し罫線は、例えば、表側の領域110Aでは筒状積層シート110の内側から外側に向かって突出する線であり、裏側の領域110Bでは、その反対に、筒状積層シート110の外側から内側に向かって突出する線である。そして、最後に扁平に潰された筒状積層シート110を円筒状に戻すことにより、チューブ状の胴部110を製造することができる。
【0070】
次に、図8(a)~(c)は胴部110と注出口部120との溶着方法を説明するための説明用断面図である。
【0071】
まず、図8(a)に示すように、チューブ状の胴部1と、別途成型した注出口部120とを用意し、胴部110の端部から、注出口部120の平板部122を挿入する。注出口部120には、別途成型したスクリューキャップ130を螺合させて一体化しておくことが好ましい。図6を参照して説明したように、上側の端縁の近傍の帯状領域110cには、熱溶着性コート層が設けられている。
【0072】
次に、図8(b)に示すように、胴部110の他方の端部から挿入した治具145を用いて平板部122の内面を支持し、図示しない爪を用いて、胴部110の上側端縁から所定範囲の部分を図8(b)に示す白抜き矢印方向に折り返して押さえる。胴部110を折り返すための爪は、注出口部120の周方向に所定間隔毎に複数設けられている。
【0073】
次に、図8(c)に示すように、超音波ホーン等の溶着装置146と治具145とで胴部110の端縁24から所定範囲の部分を挟み込む。間欠的に配置した複数の爪で胴部1の上側端縁から所定範囲の部分を押さえて溶着装置146でプレスすることにより、胴部110の上側端縁から所定範囲の部分(熱溶着性コート層が設けられた帯状領域110cを含む部分)を折り畳んでプリーツ110cを形成しながら、平板部122に溶着することができる。これにより、胴部110と注出口部120とを接合することができる。
【0074】
前述したように、胴部110と注出口部120とを接合した後その胴部110に型押し罫線を形成することも可能である。その形成方法は、円筒状の積層シート110に型押し罫線を形成する方法と同様である。
【0075】
そして、このように注出口部120を取り付けた胴部110の内部に内容物を充填し、胴部110の端部を扁平に潰してシールした閉塞シール部110bを設け、この閉塞シール部110bで閉塞することにより、チューブ容器100を用いた包装体を得ることができる。
【0076】
なお、チューブ容器100の製造時に胴部110と注出口部120を溶着する方法としては、超音波溶着、高周波溶着、ヒートシール溶着、ホットエア溶着、胴部インサートのコンプレッション成型等を利用することができるが、紙の断熱性に左右されにくい点で超音波溶着を採用することが好ましい。
【0077】
以上説明したように、本実施形態に係るチューブ容器100は、胴部110を紙110とシーラント110とを有する積層シート110で構成しているため、樹脂の使用量を低減することができる。
【0078】
また、胴部110に型押し罫線110α~110αによって補強されているから、容器100の自立性やハンドリング性に優れ、腰折れすることがない。
【0079】
また、これに加えて、胴部110に形成される背貼りシール部110aが胴部110の外面に溶着されると共に、平板部122上に形成される積層シート110の重なり部13が相互に溶着されているため、背貼りシール部110a及び重なり部110cに紙ハネがなく、美粧性に優れたチューブ容器100を提供できる。
【0080】
[第2の実施形態]
図9図25を参照して第2の実施形態を説明する。第2の実施形態は、注出口部220が注出筒部221と平板部222との2つの部品で構成され、これら注出筒部221と平板部222のいずれもが紙を含む積層シートで構成されたチューブ容器200の例である。
【0081】
図9は本発明の第2の実施形態に係り、閉塞シール部の略正面方向から見たキャップ付きチューブ容器の説明用分解斜視図であり、図10図9の2x-2xラインに沿う説明用拡大断面図である。
【0082】
前述のとおり、紙製チューブ容器200はチューブ状の胴部210と注出口部220とで構成されており、この注出口部220は注出筒部221と平板部222との2つの部品で構成されている。そして、これら注出筒部221と平板部222はいずれも紙を主体とした積層シートにより形成される。
【0083】
注出筒部221は、胴部210に収容された内容物を外部に注出するためのもので、筒形状を有している。図10に示すように、注出筒部221の軸方向(図10における上下方向)における一方の端部にはフランジ221cが設けられ、他方の端部には外周部221bが設けられている。詳細は後述するが、フランジ221cは、注出筒部221形成用のブランクシート221を筒状に丸め、一方の開口端(端縁)から所定範囲を外側にカールさせた後、形成されたカール部を上下方向に押し潰すことにより形成される。注出筒部221は、平板部222にシールするための部分である。また、外周部221bは、筒状に丸めた注出筒部221形成用のブランクシート221における他方の開口端(端縁)から所定範囲を外側にカールさせた後、形成されたカール部を注出筒部221の外周面に沿って押し潰すことにより形成される。外周部221bは、注出筒部221を形成するブランクシート221の端面を保護し、注出筒部221の上端に強度を付与するための部分である。また、図11に示すように、注出筒部221には、注出筒部221を形成する際に丸めたブランクシート221の一対の端縁近傍が重ねられてシールされた背張りシール部221aが形成されている。注出筒部221の形状は、特に限定されず、円形、楕円形、長円形、トラック形、多角形等であっても良い。
【0084】
紙製チューブ容器200の内容物が紙に浸透しにくいものである場合は、注出筒部22
1の端部に外周部221bを設けなくても良い。あるいは、内容物の種類や形態によっては、注出筒部221の端部に外周部221bを設ける代わりに、筒状に丸めた注出筒部221形成用のブランクシート221における端縁から所定範囲を内側にカールさせた後、形成されたカール部を注出筒部221の内周面に沿って押し潰しても良い。
【0085】
平板部222は、注出筒部221と胴部210とを接続するための平板形状の部材である。平板部222には、注出筒部221の断面と略同形状の開口222aが設けられており、平板部222は全体として環形状を有する。平板部222に設けられた開口222aには、注出筒部221が貫通するように嵌め込まれ、221cに面した平板部222の一方の面が注出筒部221のフランジ221cにシールされて、注出筒部221と平板部222とが互に固定一体化されている。
【0086】
また、平板部222の外周には、平板部222形成用のブランクシートの外周縁の全周を含む環状部分を上面側に折り返すことによって、折り返し部222bが形成されている。平板部222の形状は、胴部210をシールすることができる限り特に限定されず、円形、楕円形、長円形、トラック形、多角形等であっても良い。
【0087】
注出筒部221と平板部222とは、フランジ221cを介して互に固定一体化されることにより注出口部220を構成する。紙を主体とするシートにより注出筒部221及び平板部222の両方を形成することにより、第1の実施形態における樹脂性注出口部120と比べて樹脂使用量を低減することができる。
【0088】
胴部210は、第1の実施形態における胴部210と同様に、例えば、積層シート210の一対の端縁のそれぞれを含む帯状部分の内面同士を合掌状に突き合わせて溶着してこの部分に背貼りシール部210a形成することにより、チューブ状の胴部210が形成されている。胴部210の一方の端部(図9における下端)は扁平に潰されてシールされており、このシールにより閉塞シール部210bが形成されている。一方、胴部210の他方の端部(図9における上端)の近傍部分は、折り畳まれた状態で、平板部222の外面、すなわち、平板部222の両面のうち、注出筒部221の端部側の面にシールされている。このように平板部222の外面には、胴部210を構成する積層シート210が折り畳まれてシールされているため、ここにはこれら積層シート210が折り畳まれてなるプリーツ210cが複数形成される。また、胴部210には、筒状に加工する際にシートの端縁近傍部分が重ねられて貼り合わされた背張りシール部210aが形成される。第1の実施形態の背張りシール部110aと同様に、背張りシール部210aは、胴部210の外面に沿うように折り曲げられて胴部210に貼り合わされていても良いし、貼り合わされていなくても良い。背張りシール部210aの胴部210への貼合方法は特に限定されず、胴部210を構成する積層シート210の表面全体または部分的に設けられるヒートシール性の樹脂を介して両者を溶着しても良いし、ホットメルト等の接着剤を介して両者を接着しても良い。
【0089】
また、図9に示すように、第1の実施形態の胴部110と同様に、この胴部210には、らせん状に延びる2本の罫線210α~210αが型押しされており、この型押し罫線210α~210αによって積層シート210のコシを補強しているため、内容物の一部又は全部を注出した後において、チューブ容器200を倒立させた場合にも、不用意に腰折れすることがない。
【0090】
次に、この紙製チューブ容器200は、図9及び図10に示すように、注出筒部221に着脱可能なキャップ230を更に備えている。紙製チューブ容器200がキャップ230を備えているため、紙製チューブ容器200の開封後に再封することが可能であり、また、このキャップ230を下方として倒立することも可能である。
【0091】
本実施形態に係るキャップ230は、筒部232と蓋部231とを備える。筒部232及び蓋部231はいずれも紙を主体としたシートにより形成される。
【0092】
筒部232は、キャップ230の周壁を構成する部材であり、筒形状を有している。筒部232の軸方向(図9及び図10における上下方向)における一方の端部には接続部232bが設けられ、他方の端部には内周部232cが設けられている。詳細は後述するが、接続部232bは、筒部232形成用のブランクを筒状に丸め、一方の端縁から所定範囲を内側にカールさせた後、形成されたカール部を上下方向に押し潰すことにより形成される。接続部232bは、蓋部231をシールするための部分である。また、内周部232cは、筒部232形成用のブランクを筒状に丸め、他方の端縁から所定範囲を内側にカールさせた後、形成されたカール部232bを筒部232の内周面に沿って押し潰すことにより形成される。内周部232cは、筒部232を形成するブランクシートの端面を保護し、筒部232の端部に強度を付与するための部分である。本実施形態のように、筒部232の端部に接続部232bを形成する場合、内周部232cの内径を注出口部220の外周部221bの最外径よりも小さくすることにより、キャップ230の内周部232cと注出口部220の外周部221bとでキャップ230の脱落を防止するロック機構として機能させることができる。また、図9に示すように、筒部232には、筒部232を形成する際に丸めたブランクの一対の端縁近傍が重ねられてシールされた背張りシール部232aが形成されている。筒部232の形状は、特に限定されず、円形、楕円形、長円形、トラック形、多角形等であっても良いが、筒部232は注出筒部221に対応した形状に形成される。
【0093】
紙製チューブ容器200の内容物が紙に浸透しにくいものである場合は、キャップ230に内周部232cを設けなくても良い。あるいは、内容物の種類や形態によっては、キャップ230に内周部232cを設ける代わりに、筒状に丸めた筒部232形成用のブランクにおける端縁から所定範囲を外側にカールさせた後、形成されたカール部を筒部232の外周面に沿って押し潰しても良い。
【0094】
蓋部231は、筒部232の内部に嵌め込まれ、筒部232の端部を閉鎖する平板状の部材である。蓋部231は、筒部232の端部に設けられた接続部232bにシールされている。
【0095】
次に、図11は注出口部220の注出筒部221を形成するブランクシート221の説明用断面図である。
【0096】
ブランクシート221は、紙220の一方の面に、基材フィルム層220、バリア層220及びシーラント層220をこの順に積層し、紙220の他方の面に、熱可塑性樹脂層220を積層した多層シートである。
【0097】
紙220としては、片艶クラフト紙または両艶クラフト紙を用いることが好ましい。また、紙220を構成する用紙として、必要に応じて、耐水紙または耐油紙を使用しても良い。
【0098】
この紙220の坪量は、50~500g/mであり、100~300g/mであることが好ましい。紙220の坪量が50g/m未満である場合、後述するカール部の形成ができず、成型した注出筒部221の強度も十分でない。また、紙の坪量が500g/mを超える場合、後述するカール成形が難しくなり、省資源化や製造コストの面でも望ましくない。
【0099】
基材フィルム層220は、ブランクシート221に耐熱性と、加熱時の強靱性等の物理的強度とを付与する層である。基材フィルム層220は、バリア層220の基材となる層でもある。基材フィルム層220を構成するフィルムの材質は特に限定されないが、耐熱性及び物理的強度の観点から、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド等の延伸フィルムを用いることが好ましい。ただし、基材フィルム層220を紙により構成しても良い。
【0100】
バリア層220は、酸素や水蒸気等を遮断して、内容物の保存性を向上させる機能層である。バリア層220は、例えば、シリカやアルミナ等の無機化合物の蒸着膜、アルミニウム等の金属蒸着膜、アルミニウム等の金属箔、板状鉱物及び/またはバリア性樹脂を含むバリアコート剤の塗膜の1種以上により構成することができる。バリアコート剤に用いるバリア性樹脂としては、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)やポリ塩化ビニリデン(PVDC)等を使用することができ、バリアコート剤にはバリア性樹脂以外のバインダー樹脂が適宜配合される。バリア層220は、予め基材フィルム層220上に積層されてバリアフィルムを構成していても良いし、単層膜として設けられても良い。
【0101】
シーラント層220の材質は特に限定されないが、ポリプロピレン、ポリエチレン、環状ポリオレフィン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂であることが好ましい。シーラント層220は、軟化温度が基材フィルム層220の軟化温度より20℃以上高い樹脂を用いる。シーラント層220の軟化温度が、基材フィルム層220の軟化温度より20℃以上高くない場合、シール時に基材フィルム層220が軟化してピンホールが発生する可能性が高くなるため好ましくない。シーラント層220の軟化温度は、基材フィルム層220の軟化温度より40℃以上高いことが好ましい。
【0102】
熱可塑性樹脂層220は、シーラント層220を構成する樹脂と溶着可能な熱可塑性樹脂をラミネートまたはコートすることにより形成される層である。熱可塑性樹脂層220は、紙221の表面の全面に積層されても良いし、紙221の表面に部分的に積層されても良い。熱可塑性樹脂層220を積層することにより、後述するカール成形時にカール部の溶着を強固にすることが可能となる。
【0103】
なお、ブランクシート221は少なくとも紙221の一方面(紙製チューブ容器200の内側となる面)にシーラント層221が積層されたものであれば良く、上記の基材フィルム層221、バリア層221及び熱可塑性樹脂層221の1層以上を省略しても良い。また、耐水性または耐油性を付与するためのコーティングや、表示のための印刷、印刷保護のためのオーバーコートニスのコーティングを適宜施しても良い。
【0104】
次に、注出口部220の平板部222も、注出筒部221を形成するこのブランクシート221と同様の層構成を有するブランクシートで形成することができる。すなわち、平板部222形成用ブランクシートも、紙の一方の面に、基材フィルム層、バリア層及びシーラント層をこの順に積層し、紙の他方の面に、熱可塑性樹脂層を積層した多層シートであってよい。この基材フィルム層、バリア層、シーラント層及び熱可塑性樹脂層は、それぞれ、ブランクシート221の基材フィルム層220、バリア層220、シーラント層220及び熱可塑性樹脂層220と同一であってよい。もっとも、平板部222形成用ブランクシートにおける紙は、ブランクシート221と異なり、坪量50~1000g/mの紙を使用できる。紙の坪量が50g/m未満である場合、紙製チューブ容器100の強度が不充分となる。また、坪量が1000g/mを超える場合、超音波シール時の振動が紙に吸収されて溶着が上手くできず、省資源化や製造コストの面でも望ましくない。望ましくは、坪量100~300g/mである。
【0105】
なお、平板部222形成用ブランクシートにおいても、基材フィルム層、バリア層及び熱可塑性樹脂層の1層以上を省略できるのも、注出筒部221を形成するこのブランクシート221と同様である。また、耐水性または耐油性を付与するためのコーティングや、表示のための印刷、印刷保護のためのオーバーコートニスのコーティングを施すこともできる。
【0106】
次に、図12はチューブ容器200の胴部210を形成する積層シート210の説明用断面図である。この積層シート210は、紙210の一方面に、基材フィルム層210、バリア層210及びシーラント層210をこの順に積層し、紙210の他方面に、紙保護層210を積層し、更に紙保護層210上にインキ層210及びオーバーコートニス層210を積層した多層シートである。
【0107】
この胴部210形成用積層シート210の基材フィルム層210、バリア層210、及びシーラント層210は、それぞれ、ブランクシート221の基材フィルム層220、バリア層220及びシーラント層220と同一であってよい。ただし、この胴部210形成用積層シート210における紙210は、ブランクシート221と異なり、坪量30~300g/mの紙を使用することが望ましい。紙210の坪量が30g/m未満である場合、胴部210のコシが不足する。コシを補うためには、例えば、紙210より内側に設ける樹脂フィルムを厚くする必要があるが、樹脂比率の上昇に繋がり、環境負荷低減の面で望ましくない。また、胴部3形成用のシートに用いる紙210の坪量が300g/mを超える場合、紙のコシや断熱性により、製筒性、成型性及び溶着性が悪化するため好ましくない。さらに望ましくは、坪量50~150g/mである。
【0108】
次に、紙保護層210は、積層シート210を構成する紙210への内容物や汚れの付着から保護するための層である。紙保護層210の材料や形成方法は特に限定されないが、熱可塑性樹脂の押出コートや、耐水剤あるいは耐油剤等のコート剤のコートにより紙保護層210を積層することができる。紙保護層210の厚みは、0.2~50μmであることが好ましく、1~20μmであることがより好ましい。紙保護層210の厚みが0.2μm未満である場合、紙保護層210にピンホールが発生する可能性があり、十分な紙保護を得られない場合がある。また、紙保護層210の厚みが50μmを超える場合、樹脂使用量や製造コストの面で好ましくない。
【0109】
インキ層210は、各種表示を行うために印刷により施される層であり、オーバーコートニス層210は、耐摩性等を付与するための層である。インキ層210とオーバーコートニス層210の積層順序は図12と逆であっても良い。また、オーバーコートニス層210が紙保護層210を兼ねていても良い。
【0110】
なお、チューブ容器200の樹脂比率を低減するため、これを構成する前記注出筒部形成用ブランクシート221、平板部形成用ブランクシート及び胴部形成用積層シート210の合計量に占める紙割合が50%以上であることが好ましい。
【0111】
以下、本実施形態に係る紙製チューブ容器200の製造方法の一例を説明する。
【0112】
図13図21は、チューブ容器200の製造工程を説明するための説明用断面図である。このうち、図13図19は、注出筒部221及び平板部222から構成される注出口部220の製造工程を示している。
【0113】
図13に示すように、まず、注出筒部形成用ブランクシート221を用意する。図13において、ブランクシート221における一対の端縁から所定範囲の部分は、ブラン
クシート221を筒状に丸めた状態で重ね合わせて貼り合わされる部分に相当する。また、ブランクシート221の上端から所定範囲の部分221bは、外周部221bを形成するためにカール加工される部分に相当し、下端から所定範囲の部分221cは、フランジ221cを形成するためにカール加工される部分に相当する。
【0114】
次に、図14に示すように、ブランクシート221の端縁221aを含む帯状部分221aと、反対側端縁221aを含む帯状部分221aとを、互いに逆方向に折り返す(ヘミング加工)。
【0115】
次に、図15に示すように、ヘミング加工を施したブランクシート221を筒状に丸め、折り返した帯状部分221a及び221aを噛み合わせ、一対の端縁221a及び221aのそれぞれから所定範囲の部分、すなわち、帯状部分221a及び221aを重ね合わせてシールする。これにより、図16に示す筒状の中間体221xを形成する。中間体221xには、221a及び221aを重ねてシールした背張りシール部221aが形成される。この例では、背張りシール部221aにおいて、ブランクシート221が4層に積層されてシールされる。ただし、帯状部分221a及び221aを重ね合わせずに、つまり、ブランクシート221を丸めて、端縁221a及び221aを突き合わせた状態、あるいは、端縁221a及び221aを離間させた状態で重なった部分をシールして背張りシール部221aを形成しても良い。この場合、ブランクシート221は3層に積層される。いずれの背張りシール部221aの形成方法を採用した場合でも、ブランクシート221の端縁221a及び221aが背張りシール部221aの内部に折り込まれて封止されるため、端縁221a及び221aにおけるブランクシート221の端面が保護される。
【0116】
次に、中間体221xの上端から所定範囲の部分と、下端から所定範囲の部分とを、いずれも外側にカールさせることにより、図17に示すように、カール部221b及び221cを有する中間体221yを形成する。中間体221xの上下端は、この工程においてカール部221b及び221cの内部に巻き込まれた状態となる。尚、カール部221b及び221cは、金型を用いた周知の加工方法により形成することができる。
【0117】
次に、中間体221yのカール部221cを軸方向(図17における上下方向)に押し潰し、カール部221bを中間体221yの外周面に沿って押し潰すことにより、図18に示すように、フランジ221c及び外周部221bを有する注出筒部221を形成する。カール部221b及び221cの押し潰しは、例えば、超音波ホーンを用いて超音波照射を行いながら加圧することにより行うことができる。尚、後工程の加工性に影響しない場合は、カール部221b及び221cの一方または両方を押し潰す工程を省略しても良いし、後述する図19に示す平板部222に嵌め込んでシールする工程または更にその後の工程で、カール部221b及び221cの一方または両方を押し潰しても良い。
【0118】
一方、注出筒部221とは別に、図19に示す平板部222を作製する。平板部222は、これを形成するシートを所定形状にパンチングし、外周縁の全周を含む環状部分を上面側に折り返して折り返し部222bを設けることにより形成することができる。尚、パンチングしたシートには、パンチングと同時にあるいは別工程で、注出筒部221の断面形状と略同形状の開口222aを形成しておく。
【0119】
次に、注出筒部221を平板部222の開口222aに嵌め込み、図19に示すように、注出筒部221のフランジ221cを平板部222に接触させ、フランジ221cと平板部222とをシールする。この工程により、注出筒部221と平板部222とが一体化した注出口部220を得ることができる。
【0120】
注出筒部221及び平板部222はいずれも紙を主体とするシートの成形体であるので、図19に示す工程において、注出筒部221の端部近傍部分及び/または平板部222の開口222a近傍を変形させながら、平板部222の開口222aに注出筒部221を嵌め込むことが可能である。ただし、平板部222への注出筒部221の嵌め込みを容易とするために、図20に示すカール部221bの形成と、このカール部221bの押し潰しとを行わず、フランジ221cに平板部222をシールした後に、カール部221bの形成と押し潰しとを行っても良い。
【0121】
図20及び図21は、平板部222に胴部210がシールされた紙製チューブ容器200の製造工程を示している。
【0122】
胴部210は、第1の実施形態における胴部110と同様の方法によって形成される。すなわち、まず、型押し罫線210α~210αを型押しした胴部形成用積層シート210を準備する。そして、この胴部形成用積層シート210の一対の端縁のそれぞれを含む帯状の部分の内面同士を合掌状に突き合わせて溶着させることにより、筒状とする。なお、本実施形態では、胴部形成用積層シート210として、厚み(総厚)が30~300μmのシートを使用するため、製袋機やピロー・スティック包装機等を用いて筒状に加工することができる。
【0123】
そして、図20に示すように筒状の胴部210内に平板部222を挿入した後、図21に示すように胴部210の端部から所定範囲の部分を折り畳んで平板部222の上面にシールする。この際、胴部210の端部から所定範囲の部分が、折り返し部222bの全体と、平板部222の上面のうち、折り返し部222bの内周全体に沿う部分とにシールされる。これにより、平板部222を構成するシートの端縁部分の端面は、胴部210と平板部222との貼り合わせ部の内部に封止されて保護される。胴部210は、必ずしも平板部222における折り返し部222bの内周側部分にシールされている必要はなく、折り返し部222bのみシールされていても良いが、本実施形態のように、胴部210を折り返し部222bとその内周側部分とにわたってシールすることにより、胴部210と平板部222との溶着を強固にすることができる。
【0124】
以上の工程を経ることにより、紙製チューブ容器200を製造することができる。
【0125】
次に、図22図24は、キャップの製造工程を説明するための説明用断面図である。
【0126】
まず、紙を主体とするシートを矩形状に裁断し、筒部232を形成するためのブランクシート232を用意する。筒部232形成用のブランクシート232としては、例えば注出筒部形成用ブランクシート221と同じものを使用することができる。そして、このブランクシート232を用いて、注出筒部221を形成する際の工程(図13図15で説明した工程)と同様の工程を繰り返すことにより、図15に示したものと同様の筒状の中間体232xを形成する(図22参照)。中間体232xには、ブランクシート232の一対の端縁から所定範囲の部分を重ね合わせてシールすることにより形成された背張りシール部232aが形成される。
【0127】
次に、中間体232xの一方の上端から所定範囲の部分と、下端から所定範囲の部分とを、いずれも内側にカールさせることにより、図23に示すように、カール部232b及び232cを有する中間体232yを得る。カール部232b及び232cは、金型を用いた周知の加工方法により形成することができる。
【0128】
次に、図24に示すように、中間体232yの筒部に別途作製した蓋部231を嵌め込む。蓋部231は、例えば平板部形成用ブランクシートと同じものを使用して、これをキャップ230に応じた形状にパンチングすることに形成することができる。
【0129】
次に、上端側のカール部232bを軸方向に押し潰しながら蓋部231にシールし、下端側のカール部232cを中間体232yの内周面に沿って押し潰す。これにより、図24に示すように、カール部232bが押し潰された接続部232bを介して筒部232と蓋部231とが一体化され、内周部232cが形成されたキャップ230を得ることができる。カール部232b及び232cを押し潰すと、図22に示す中間体232xの上下端は、それぞれ接続部232b及び内周部232cの内部に巻き込まれて封止され、上下端の端面が保護される。尚、中間体232yに蓋部231をシールする前に、予めカール部232b及び232cを押し潰しておいても良い。
【0130】
なお、この例では、図22に示す中間体232xの下端を内側にカールさせてカール部232cを形成しているが、中間体232xの下端を外側にカールさせ、形成されたカール部を中間体232yの外周面に沿って押し潰しても良い。この場合、図22に示す中間体232xを作製する際のヘミング加工を、背張りシール部232aの内側となる端縁近傍にのみ行うことで、筒部20を形成するためのブランクシート232の端面を保護することができる。
【0131】
以上説明したように、本実施形態に係るチューブ容器200は、胴部210、注出口部220の注出筒部221及び平板部222のいずれもが紙を主体としたシートにより形成されるため、従来の樹脂製のチューブ容器と比べて樹脂の使用量を低減することができる。
【0132】
また、注出筒部221及び平板部222を構成するシートにバリア層を設けることによって、注出口部220にもバリア性を付与することが容易である。
【0133】
また、キャップ230を構成する筒部232も、注出筒部221と同様に、ヘミング加工及びカール加工を行うことにより、内側にシートの端面が露出しないように構成されている。したがって、キャップ230で紙製チューブ容器200を再封した際に、液体等の内容物がキャップ230の内面に付着しても、その筒部232を構成するシートの端面から紙層へと内容物が浸透することを阻止することができる。
【0134】
そして、本実施形態に係るチューブ容器200においても、第1の実施形態に係るチューブ容器100と同様に、らせん状の型押し罫線210α~210αが設けられているから、チューブ容器200を倒立して保存しても、不用意に腰折れすることがない。
【実施例0135】
(実施例1)
胴部形成用積層シート110として、紙(坪量70g/m)、ポリエステルフィルム(厚さ12μm)及び直鎖状低密度ポリエチレン層(厚さ50μm)をこの順に積層したシートを使用した。そして、この胴部形成用積層シート110を筒状とする前の展開状態で、多数本の型押し罫線を形成した。これら多数本の型押し罫線は、いずれも、チューブ容器100としたときにその胴部110の中心線と成る線に対し、30℃の角度で交差する直線である。また、これら多数本の型押し罫線は、いずれも、チューブ容器100の内側から外側に向かって突出するものである。そして、これら型押し罫線は、胴部形成用積層シート110の全面に、10mm間隔で形成した。
【0136】
次に、注出口部120としては一体成型した樹脂製の注出口部120を準備した。
【0137】
そして、この胴部形成用積層シート110を筒状とした後、図8を参照して説明したように、筒状の胴部形成用積層シート110の端部に注出口部120を溶着して固定した。
【0138】
次に、内容物として80mlのケチャップを使用し、開口した反対側端部からこの内容物を充填した後、この開口端部をシールし、閉塞シール部110bを形成して、内容物入りのチューブ容器を製造した。
【0139】
(実施例2)
内容物として80mlのマヨネーズを使用した他は、実施例1と同様に内容物入りのチューブ容器を製造した。
【0140】
(比較例1)
胴部形成用積層シート110に型押し罫線を形成しなかった他は、実施例1と同様に内容物入りのチューブ容器を製造した。
【0141】
(比較例2)
胴部形成用積層シート110に型押し罫線を形成しなかった他は、実施例1と同様に内容物入りのチューブ容器を製造した。
【0142】
(評価)
これら実施例1~2及び比較例1~2のチューブ容器について、腰折れの生じ易さ及び倒立させたときに内容物が注出口部に集まり易さの観点で評価した。
【0143】
まず、これらチューブ容器から一切内容物を注出せず、80mlの内容物を収容した状態では、これらチューブ容器を倒立させてもいずれのチューブ容器も腰折れすることはなかった。
【0144】
内容物を半分注出して、残量が80mlとすると、比較例1及び比較例2のチューブ容器ではチューブ容器内部に空気が入らず、胴部が扁平につぶれた状態となり、この結果、倒立させると腰折れが発生し始めた。内容物を使い切った状態で倒立させると、比較例1及び比較例2のチューブ容器では、ほぼすべてのチューブ容器が腰折れした。
【0145】
一方、実施例1及び2のチューブ容器では、内容物を注出すると、その分空気が入り、胴部が元の円筒状に戻った。このため、内容物を半分注出して、残量が80mlとしてチューブ容器を倒立させた場合はもちろん、内容物を使い切ってチューブ容器を倒立させた場合でも、まったく腰折れが起きなかった。
【0146】
次に、こうして内容物を使い切ってチューブ容器を倒立させた状態で放置したところ、実施例1では、チューブ容器内部に残った残留内容物(ケチャップ)が、その自重によって注出口部に集まり、さらにここから排出されて、前記残留内容物の略半分がチューブ容器の外部に流出した。
【0147】
また、実施例1では、残留内容物(マヨネーズ)の約1/3がチューブ容器の外部に流出した。
【0148】
一方、胴部が扁平につぶれた比較例1及び比較例2では、倒立させた状態で保持して維持した場合でも、残留内容物(ケチャップ,マヨネーズ)が注出口部に集まることはなかった。
【符号の説明】
【0149】
100:チューブ容器
110:胴部
110b:閉塞シール部
110:胴部形成用積層シート 110:紙
110α~110α:型押し罫線
120:注出口部
130:キャップ
200:チューブ容器
210:胴部
210b:閉塞シール部
210:胴部形成用積層シート 210:紙
210α~210α:型押し罫線
220:注出口部
221:注出口部の注出筒部
221:注出筒部形成用ブランクシート 221:紙
222:注出口部の平板部
230:キャップ
231:蓋部 232:筒部
図1
図2
図3
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