(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114757
(43)【公開日】2022-08-08
(54)【発明の名称】改質架橋高分子および架橋高分子の改質方法
(51)【国際特許分類】
C08F 8/00 20060101AFI20220801BHJP
C08F 20/00 20060101ALI20220801BHJP
C08G 59/42 20060101ALI20220801BHJP
C08G 18/67 20060101ALI20220801BHJP
C08L 33/14 20060101ALI20220801BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20220801BHJP
C08K 5/29 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
C08F8/00
C08F20/00
C08G59/42
C08G18/67 010
C08L33/14
C08L63/00 A
C08K5/29
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021011180
(22)【出願日】2021-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】相川 徹
【テーマコード(参考)】
4J002
4J034
4J036
4J100
【Fターム(参考)】
4J002BG071
4J002CD022
4J002ER006
4J002FD142
4J002FD146
4J002FD150
4J002GG00
4J002GJ01
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4J100AB02R
4J100AJ02Q
4J100AL03P
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4J100BA03H
4J100BA38H
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4J100CA05
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4J100HC39
4J100HC51
4J100HE14
4J100JA03
4J100JA58
(57)【要約】
【課題】三次元架橋させることが可能な架橋剤によって架橋された架橋高分子中に含まれる残存している反応性の官能基を改質した架橋高分子を提供すること。
【解決手段】三次元架橋させることが可能な多官能エポキシ化合物や多官能イソシアネート化合物等の架橋剤によって架橋された架橋高分子の物性を改質する際に、亜臨界アルコール等によりアルコリシスして、架橋高分子中の残存する反応性基を除くことによって、改質された架橋高分子を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元架橋させることが可能な架橋剤によって架橋された架橋高分子であって、架橋高分子を亜臨界アルコールでアルコリシスして改質することを特徴とする改質架橋高分子。
【請求項2】
前記改質された架橋高分子が、カルボキシル基含有化合物を含むラジカル重合性アクリル系高分子を、多官能エポキシ化合物で架橋したアクリル系高分子であることを特徴とする請求項1に記載の改質架橋高分子。
【請求項3】
前記改質された架橋高分子が、水酸基含有化合物を含むラジカル重合性アクリル系高分子を、多官能イソシアネート化合物で架橋したアクリル系高分子であることを特徴とする請求項1に記載の改質架橋高分子。
【請求項4】
前記改質された架橋高分子が、水酸基含有化合物を含むエポキシ系高分子を、多官能イソシアネート化合物で架橋したエポキシ系高分子であることを特徴とする請求項1に記載の改質架橋高分子。
【請求項5】
前記亜臨界アルコールが、亜臨界メタノールであることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の架橋高分子の改質方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋高分子の物性安定化のために、三次元架橋させることが可能な架橋剤によって架橋された、架橋高分子の反応性の架橋残渣を処理した、改質架橋高分子および架橋高分子の改質方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子化合物の物性改善のための改質手法としては、ラジカル性アクリル重合物の主鎖中に四級アンモニウム塩を有するアクリルモノマーを混在させることにより高分子化合物を改質する手法が特許文献1に、熱可塑性樹脂中にポリアルキレングリコールエステルを混合して高分子化合物の耐衝撃性を改善する手法が特許文献2に、ホットメルト樹脂にポリ乳酸系樹脂を混合して接着性を改善する手法が特許文献3に記載されている。したがって、高分子化合物だけでは満足できない要求仕様を満足させるために、高分子化合物の改質を行いたいという要求がある。
【0003】
一方、アクリル樹脂やエポキシ樹脂は、医薬・薬学から化学工業まで幅広い用途で使用され、粘着剤や接着剤が一液あるいは二液タイプとして市販されている。アクリル樹脂やエポキシ樹脂は、粘着性や耐熱性などの物性向上のため、三次元架橋することが少なくないが、三次元架橋は官能基同士の反応によるものであり、官能基が残存すると、経時変化により接着性の損失などの物性変化の原因や着色の原因となることがあった。一般に、経時変化を小さくするには、残存する反応基は少ない方が良いが、残存反応基を完全に除去することは高分子反応では不可能であった。
【0004】
アクリル樹脂やエポキシ樹脂の物性改善のための改質法としては、アクリルポリマーの耐熱性向上のためにカルボキシル基を有するアクリルモノマーとエポキシ基を有するエポキシモノマーを紫外線硬化によって、一度に重合及び架橋させる改質手法が特許文献4に、カルボキシル基含有アクリルポリマーをエポキシモノマーで熱架橋して改質する手法が特許文献5に記載されている。したがって、アクリル樹脂やエポキシ樹脂を三次元架橋して使用する場合において、アクリル樹脂やエポキシ樹脂の物性改善を効率よく行い、残存する反応基をできるだけ少なくし、経時変化の少ない樹脂を使用したいという要求がある。
【0005】
また、高分子中のエステル結合を分解する技術は、近年行われているペットボトルを化学的に分解し、原料やモノマーに戻して、再度ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂にするケミカルリサイクルだけでなく、高分子中の改質にも利用できる。
【0006】
回収・リサイクルの分野では、熱可塑性樹脂であるPET樹脂に関しては、高温高圧下での加水分解によりテレフタル酸とエチレングリコールとして回収する手法が特許文献6に記載されている。また、フェノール樹脂系化合物を臨界処理してリサイクルを容易にする手法が特許文献7に記載されている。また、スチレン-無水マレイン酸系樹脂の無水マレイン酸を分解改質してリサイクルを容易にする手法が特許文献8に記載されている。したがって、高分子化合物のエステル結合の分解処理を行って、改質しようという要求がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第1772328号公報
【特許文献2】特開平04-202429号公報
【特許文献3】特許第3330390号公報
【特許文献4】特許第2873482号公報
【特許文献5】特許第3807069号公報
【特許文献6】特許第3850149号公報
【特許文献7】特許第3888979号公報
【特許文献8】特許第5368510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の問題を鑑みて、架橋高分子中に含まれる残存している反応性の官能基を除去することが重要であると考え、本発明では、架橋高分子中に含まれる残存している反応性の官能基を化学的に処理し、架橋高分子を改質することを目的とする。
【0009】
さらに、アクリル樹脂やエポキシ樹脂を三次元架橋して使用する場合において、アクリル樹脂やエポキシ樹脂の物性改善を効率よく行い、残存する反応性の官能基をできるだけ少なくし、経時変化の少ない樹脂を得ること、高分子化合物のエステル結合の分解処理を行って改質することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、三次元架橋高分子を臨界条件で分解する際に、ある亜臨界状態では三次元架橋高分子の主鎖を分解できないこと、三次元架橋高分子の側鎖を分解できること、亜臨界アルコール中では重合反応が起こりにくいことなどを発見し、本発明に至った。すなわち、本発明は、三次元架橋させることが可能な架橋剤によって架橋された架橋高分子であって、架橋高分子を亜臨界アルコールでアルコリシスすることを特徴とする。
【0011】
また、三次元架橋させることが可能な架橋剤によって架橋された架橋高分子が、アクリル酸を含むラジカル重合性アクリル系高分子を、多官能エポキシ化合物で架橋したアクリル系高分子であることを特徴とする。
【0012】
また、三次元架橋させることが可能な架橋剤によって架橋された架橋高分子が、水酸基含有化合物を含むラジカル重合性アクリル系高分子であり、多官能イソシアネート化合物で架橋したアクリル系高分子であることを特徴とする。
【0013】
また、三次元架橋させることが可能な架橋剤によって架橋された架橋高分子が、水酸基含有化合物を含むエポキシ系高分子であり、多官能イソシアネート化合物で架橋したエポキシ系高分子であることを特徴とする。
【0014】
また、三次元架橋させることが可能な架橋剤によって架橋された架橋高分子をアルコリシスする亜臨界アルコールが、亜臨界メタノールであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、架橋高分子中に含まれる残存している反応性の官能基を化学的に処理することにより、改質された架橋高分子を提供でき、さらに、経時変化の少ない樹脂、物性変化が少ない樹脂、寿命の長い樹脂を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に使用されるカルボキシル基含有化合物を含むラジカル重合性アクリル系高分子は、特に制限はないが、アクリル酸エステルを主成分とし、不飽和結合含有成分を含んでもよく、さらには非重合性の樹脂あるいは添加剤、無機化合物を含んでもよい。アクリル酸エステルとしては、特に限定するものではないが、アクリル酸メチル、アクリル酸エチ
ル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸n-デシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニルなどが主に使用され、アクリル酸あるいはメタクリル酸等のカルボキシル基を含む化合物を必須成分として含む。また、不飽和結合含有化合物としては、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸4-ヒドロキシブチル、アクリル酸6-ドロキシヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、スチレン、酢酸ビニルなどの単官能化合物だけでなく、多官能化合物も使用できる。これらのアクリル酸エステル及びビニル化合物は、既存の方法でラジカル重合され、含まれるアクリル酸あるいはメタクリル酸の量は、反応基換算で、0.01mol%で以上混合することが望ましい。アクリル酸あるいはメタクリル酸の反応基換算比が0.01mol%以下では、架橋の効果が薄い。
【0017】
本発明に使用される多官能エポキシ化合物としては、特に制限はないが、液状のものが使いやすい。エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、アルキレングリコール型、シクロオレフィン型などのモノマーあるいはオリゴマーを主成分とし、ポリオール成分で変性されていてもよく、さらには非重合性の樹脂あるいは添加剤、無機化合物を含んでもよい。多官能エポキシ化合物の量は、アクリル酸を含むラジカル重合性アクリル系高分子にあるカルボキシル基を含む化合物の反応させたい量に比べて、エポキシ基の量が十分多いことが望ましく、反応基換算で、100mol%以上混合することが望ましい。エポキシ基の量が100mol%以下では、十分に架橋できない。
【0018】
本発明に使用される水酸基を含むラジカル重合性アクリル系高分子は、特に制限はないが、アクリル酸エステルを主成分とし、不飽和結合含有成分を含んでもよく、さらには非重合性の樹脂あるいは添加剤、無機化合物を含んでもよい。アクリル酸エステルとしては、特に限定するものではないが、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸、アクリル酸n-デシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニルなどが主に使用され、アクリル酸ヒドロキシアルキルあるいはメタクリル酸ヒドロキシアルキルを必須成分として含む。なお、アクリル酸ヒドロキシアルキルあるいはメタクリル酸ヒドロキシアルキルとしては、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸4-ヒドロキシブチル、アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸4-ヒドロキシブチル、メタクリル酸6-ヒドロキシヘキシルなどが望ましい。これらのラジカル重合性アクリル高分子は、既存の方法でラジカル重合され、含まれるアクリル酸ヒドロキシアルキルあるいはメタクリル酸ヒドロキシアルキルの量は、反応基換算で、0.01mol%で以上混合することが望ましい。アクリル酸あるいはメタクリル酸の反応基換算比が0.01mol%以下では、架橋の効果が薄い。
【0019】
本発明に使用される水酸基を含むエポキシ系高分子は、特に制限はないが、エポキシ化合物を主成分とし、ポリオール成分を必須成分として含み、非重合性の樹脂あるいは添加剤、無機化合物を含んでもよい。エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、アルキレングリコール型、シクロオレフィン型などのモノマーあるいはオリゴマーを主成分とし、ポリオール成分で変性されていてもよい。使用できるポリオール成分にも制限はないが、1,2-エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリンなどをカプロラクトン変性あるいはポリオール変性した低分子ポリオールが使用しやすい。これらのエポキシポリマーは既存の方法で、熱重合あるいはカチオン重合され、ポリマー中に含まれる水酸基の量は、反応基換算で、0.01mol%で以上混合することが望ましい。水酸基の反応基換算比が0.01mol%以下では、架橋の効果が薄い。
【0020】
本発明に使用される多官能イソシアネート化合物としては、特に制限はないが、液状のものが使いやすい。イソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、水添ナフタレンジイソシアネート、などの単量体やそのイソシアネート保護タイプ、ビウレットタイプ、イソシアヌレートタイプ、アルファネートタイプだけでなく、これらを含むイソシアネート末端のポリマーなども使用できる。多官能イソシネート化合物の量は、アクリル酸を含むラジカル重合性アクリル系高分子にある水酸基の反応させたい量に比べて、イソシアネート基の量が十分多いことが望ましく、反応基換算で、100mol%以上混合することが望ましい。イソシアネート基の量が100mol%以下では、十分に架橋できない。
【0021】
また、性能を損ねない限り、用途によって、アクリル樹脂、顔料、染料、界面活性剤、分散剤、光安定剤など添加物やケイ酸塩などの無機化合物も用いることができる。
【0022】
本発明における亜臨界アルコールは、容器中で、加熱・加圧により亜臨界状態に達するものならは特に制限はないが、メタノール、エタノール、2-プロパノール、2―メチル―2-プロパノールが望ましい。なお、亜臨界状態とは、超臨界状態ではないその手前の状態を意味し、使用する装置・器具によって実現可能な状態ならば制限はない。物質の超臨界状態を実現するには、加熱・加圧が必須であり、水の場合は、臨界温度373.9℃、臨界圧力22.06MPa、メタノールの場合は、239.6℃、臨界圧力8.09MPaである。
【0023】
本発明の使用される耐圧容器は、簡便に開け閉め出来て、40MPa程度の耐圧性があることが望ましい。耐圧容器中で亜臨界状態に達し分解・改質された三次元架橋させることが可能な架橋剤によって架橋された架橋高分子は、使用流体中に安定に存在するため、使用流体ごと容易に回収できる。
【0024】
本発明の使用される三次元架橋させることが可能な架橋剤によって架橋された架橋高分子は、アルコールとともに耐圧容器に入れて密封し、電気炉を使用し、容器の加熱温度を臨界温度以下にすることによって容易にアルコリシス可能である。ここで、アルコリシスとは、大量のアルコール中でエステル基の交換を行うことであり、溶媒がメタノールの場合、メタノリシスが行われ、メチルエステルへと変換される。
【実施例0025】
以下、本発明を実施例及び比較例をあげて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0026】
[実施例1]
トルエン1000質量部の入ったフラスコを100℃に加熱し、アクリル酸n-ブチル650質量部、スチレン100質量部、アクリル酸150質量部およびtert-ブチル(2-エチルヘキサノイル)ペルオキシドの60質量部の混合物を徐々に滴下し、90℃で5時間反応させながら放置し、固形分約50%で数平均分子量約15000のカルボン酸基含有アクリル樹脂溶液を調製した。得られたカルボン酸基含有アクリル樹脂溶液1000質量部、3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボン酸3,4-エポキシシクロヘキシルメチル300質量部、ジブチル錫ジラウレート0.1質量部、およびトルエン300質量部を混合し、70℃で5時間反応させながら放置し、固形分約50%のアクリル樹脂溶液Aを得た。得られたアクリル樹脂Aは数平均分子量約20000で、残存エポキシ基を一分子当り平均約1.5個有していた。
【0027】
アクリル樹脂溶液Aの500mgと4.5mlのメタノールを、密閉型超臨界反応容器TSC-0011Type(耐圧硝子工業製)に入れ、密閉した。容器を、電気炉VTDS-2R(いすゞ製作所製)内に静置し、280℃で4時間超臨界処理を行い、アクリル樹脂溶液Bを得た。得られたアクリル樹脂Bは数平均分子量約15000で、残存エポキシ基は一分子当り平均約0個だった。
【0028】
アクリル樹脂溶液Aの500mgと4.5mlのメタノールを、密閉型超臨界反応容器に入れ、密閉した。容器を、電気炉に静置し、180℃で4時間亜臨界処理を行い、アクリル樹脂溶液Cを得た。得られたアクリル樹脂Cは数平均分子量約20000で、残存エポキシ基は一分子当り平均約0個だった。
【0029】
作製した各樹脂に対して、粘着性の経時変化を、保持力として評価した。即ち、アクリル樹脂溶液C溶液を50μm厚のPETフィルム上にバーコーター塗工後厚み30μmで塗工し、100℃乾燥炉中で3分間乾燥し、試験片とした。試験片の初期状態及び加速試験(60℃、90%RH、30日保存)後の状態に関して、保持力の評価を行った。評価は、試験片の塗工面にステンレス板を貼り付け、長さ方向に1kgの荷重をかけ、24時間以内にステンレス板から落下したものを×、ステンレス板にとどまっていたものを〇とした。結果を表1に示す。
【0030】
[比較例1]
アクリル樹脂溶液A溶液を実施例1と同様に操作して保持力の評価を行った。結果を表1に示す。
【0031】
[比較例2]
アクリル樹脂溶液B溶液を実施例1と同様に操作して保持力の評価を行った。結果を表1に示す。
【0032】
【0033】
[実施例2]
トルエン1000質量部の入ったフラスコを100℃に加熱し、アクリル酸n-ブチル650質量部、スチレン100質量部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル250質量部およびtert-ブチル(2-エチルヘキサノイル)ペルオキシドの60質量部の混合物を徐々に滴下し、90℃で5時間反応させながら放置し、固形分約50%で数平均分子量約15000の水酸基含有アクリル樹脂溶液を調製した。得られた水酸基含有アクリル樹脂溶液1000質量部、イソホロンジイソシアネート450質量部、ジブチル錫ジラウレート0.1質量部およびトルエン300質量部を混合し、70℃で5時間反応させながら放置し、固形分約50%のアクリル樹脂溶液Dを得た。得られたアクリル樹脂Dは数平均分子量約21000で、残存イソシアネート基を一分子当り平均約1.0個有していた。
【0034】
アクリル樹脂溶液D500mgと4.5mlのメタノールを密閉型超臨界反応容器に入れ、密閉した。容器を電気炉内に静置し、280℃で4時間超臨界処理を行い、アクリル樹脂溶液Eを得た。得られたアクリル樹脂Eは数平均分子量約15000で、残存イソシアネート基は一分子当り平均約0個だった。
【0035】
アクリル樹脂溶液D500mgと4.5mlのメタノールを、密閉型超臨界反応容器に入れ、密閉した。容器を電気炉内に静置し、180℃で4時間亜臨界処理を行い、アクリル樹脂溶液Fを得た。得られたアクリル樹脂Fは数平均分子量約19000、残存イソシアネート基は一分子当り平均約0個だった。
【0036】
アクリル樹脂溶液F溶液を実施例1と同様に試験片を作製し、保持力の評価を行った。結果を表2に示す。
【0037】
[比較例3]
アクリル樹脂溶液D溶液を実施例1と同様に試験片を作製し、保持力の評価を行った。結果を表2に示す。
【0038】
[比較例4]
アクリル樹脂溶液E溶液を実施例1と同様に試験片を作製し、保持力の評価を行った。結果を表2に示す。
【0039】
【0040】
比較例1、3では、未反応の架橋剤の官能基が影響し、加速試験後の保持力に劣化が見られた。比較例2、4では、超臨界処理により架橋がすべてなくなったため、初期から保持力が得られなかった。しかしながら、実施例1、2では、初期保持力が得られ、加速試験後保持力にも劣化が見られなかった。
【0041】
表1、2から明らかなように、本発明は、三次元架橋させることが可能な架橋剤によって架橋された架橋高分子の物性を改質する際に、架橋高分子を亜臨界アルコールでアルコリシスすることで残存する反応性基が除かれたことによって、改質された架橋高分子を提供できることが明らかになった。一方、臨界アルコールでのアルコリシスでは、架橋高分子の主鎖の一部も切断されてしまい十分な改質効果が見られなかった。