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  • 特開-視覚補助具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114758
(43)【公開日】2022-08-08
(54)【発明の名称】視覚補助具
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/42 20060101AFI20220801BHJP
   G01J 1/02 20060101ALI20220801BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
G01J1/42 C
G01J1/02 J
G02B5/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021011181
(22)【出願日】2021-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】祝 実穂
【テーマコード(参考)】
2G065
2H148
【Fターム(参考)】
2G065AA20
2G065AB04
2G065BA28
2G065BA29
2G065DA06
2H148AA07
2H148AA18
2H148AA25
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で安価な青白色の炎の火炎監視手段を提供する。
【解決手段】青白色の炎を視認し易くする視覚補助具であって、少なくとも、前記炎の観察者が観察対象の前記炎の光を観察し易くする光透過部を備えており、前記光透過部は、前記炎から発せられる青白色の励起光を吸収し、可視光領域の蛍光に変換する機能を備えていることを特徴とする視覚補助具であり、例えば、前記励起光の波長が390nm以上430nm以下であり、前記蛍光の波長が450nm以上700nm以下である視覚補助具。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
青白色の炎の視認を補助する視覚補助具であって、
前記炎から発する光を観察者が観察するための光透過部を備えており、
前記光透過部は、前記炎から発せられる青白色の励起光を吸収し、可視光領域の蛍光に変換する機能を備えていることを特徴とする視覚補助具。
【請求項2】
前記励起光の波長が390nm以上430nm以下であり、前記蛍光の波長が450nm以上700nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の視覚補助具。
【請求項3】
前記励起光の波長が470nm以上510nm以下であり、前記蛍光の波長が600nm以上700nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の視覚補助具。
【請求項4】
前記光透過部が、量子ドットを含む波長変換層を備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の視覚補助具。
【請求項5】
1320nm以上1464nm以下の近赤外線領域を検知する検知手段と、前記検知手段にて得た情報と予め設定した閾値を比較する比較手段と、前記情報が前記閾値を超えた場合に警報を発する警報発生手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の視覚補助具。
【請求項6】
前記警報発生手段が、音、振動、光の中から選択された1以上を発生させることを特徴とする請求項5に記載の視覚補助具。
【請求項7】
前記視覚補助具が保護メガネであることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の視覚補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視認し難い青白色光を視認し易くする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
水素ガスが空気中で燃焼する際に形成される炎の色は無色であるため、視認することはできない。メタノールやエタノールなどを使用したアルコールランプの炎の色は、青白い淡青色で、極めて視認し難い炎となる。また、都市ガスなどを使用したガスコンロの炎はアルコールランプより視認し易いがやはり青白い炎である。都市ガスの成分は約90%がメタンガスからなる炭化水素ガスである。
【0003】
ガスコンロの炎の色は、炭化水素ガスが燃焼する際に発生する種々のラジカルに由来する。炭化水素ガスの燃焼ではCHラジカルやC2ラジカルが発生する。CHラジカルは390nmおよび430nm付近、C2ラジカルは470nm、510nmおよび560nm付近に、それぞれ強いバンドスペクトルを持つ光を放つ。このため、炭化水素ガスを多く含むガスコンロの炎は青白く見える。
【0004】
このように、ガスコンロなどの炎の色は青白く、視認し難いが、高齢者においては益々視認し難くなる。それは、高齢者の眼球内の水晶体が加齢により徐々に黄変するためである。例えば、青白色のガスコンロの炎は高齢者にとつては見えづらい色なので、炎が実際より暗く見え、炎の大きさ自体が小さく見えてしまうとされている。
【0005】
しかし、このような色の見え方は長い年月をかけて徐々に変化するため、高齢者自身では変化に気づきにくい。このため、誤って必要以上に火力を強くしたり、手や物などを近づけたりしてしまうことがあり、結果的に火災や火傷などの事故を引き起こす恐れがある。
【0006】
このような炭化水素ガスの青白色の炎が視認し難いことによる事故を防止することに関する先行技術としては、特許文献1に、ガスが漏出する恐れのある防爆区域内において監視対象領域を監視できる火炎監視装置が設置されたガス取扱施設を提供することを課題とする技術が開示されている。具体的には、分子を構成する原子に水素原子を含むガスの火炎を検出する火炎監視方法であって、監視対象領域から発せられる4つの特定の波長領域の任意の1つの近赤外線の発光強度について測定し、得られた測定値を、横軸が波長で縦軸が発光強度のグラフにおける座標として表し、近似曲線を算出した時に、得られた近似直線が、予め設定した特定の近似直線のパターンに該当する場合に、火炎が存在すると判定して警報を発することを特徴とする火炎監視方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6782974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この火炎監視方法においては、4つの特定の波長領域の任意の1つの波長の近赤外線の発光強度を測定する測定装置と、それらの測定結果などを記憶する記憶装置と、演算処理を行うことによって、横軸が波長で縦軸が発光強度のグラフにおける座標として表し、近似直線を算出することによって、特定の近似直線のパターンが生ずるか否かを判定する演算装置と、特定の近似直線のパターンが生ずる場合には火炎が存在すると判定して警報を
発する警報装置と、を必要とする大掛かりなシステムとなり、高価なシステムであった。
【0009】
そのため、例えば家庭において、ガスコンロの青白色の炎が見え難い高齢者が使用することによって、コンロの炎が視認できないことによる火傷事故の防止や炎がついているにもかかわらず火が消えていると誤認することによる火災の防止に役立てることができるものとするには、より簡易で安価な構成とすることが必要となる。
【0010】
上記の事情に鑑み、本発明は、簡易な構成で安価な青白色の炎の火炎監視手段を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決する手段として、本発明の第1の態様は、青白色の炎の視認を補助する視覚補助具であって、
前記炎から発する光を観察者が観察するための光透過部を備えており、
前記光透過部は、前記炎から発せられる青白色の励起光を吸収し、可視光領域の蛍光に変換する機能を備えていることを特徴とする視覚補助具である。
【0012】
また、第2の態様は、前記励起光の波長が390nm以上430nm以下であり、前記蛍光の波長が450nm以上700nm以下であることを特徴とする第1の態様に記載の視覚補助具である。
【0013】
また、第3の態様は、前記励起光の波長が470nm以上510nm以下であり、前記蛍光の波長が600nm以上700nm以下であることを特徴とする第1の態様に記載の視覚補助具である。
【0014】
また、第4の態様は、前記光透過部が、量子ドットを含む波長変換層を備えていることを特徴とする第1から第3の態様のいずれか一項に記載の視覚補助具である。
【0015】
また、第5の態様は、1320nm以上1464nm以下の近赤外線領域を検知する検知手段と、前記検知手段にて得た情報と予め設定した閾値を比較する比較手段と、前記情報が前記閾値を超えた場合に警報を発する警報発生手段をさらに備えていることを特徴とする第1から第4の態様のいずれか一項に記載の視覚補助具である。
【0016】
また、第6の態様は、前記警報発生手段が、音、振動、光の中から選択された1以上を発生させることを特徴とする第5の態様に記載の視覚補助具である。
【0017】
また、第7の態様は、前記視覚補助具が保護メガネであることを特徴とする第1から第6の態様のいずれか一項に記載の視覚補助具である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の視覚補助具によれば、炎の観察者が観察対象の前記炎の光を観察し易くする光透過部を備えている。その光透過部は、炎から発せられる青白色の励起光を吸収し、可視光領域の蛍光に変換する機能を備えている。この光透過部は、例えば、メガネのレンズに波長変換機能を備えた層を備えた構成により実現することができ、簡易な構成で安価な青白色の火炎監視手段を作ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の視覚補助具の一実施形態としてのメガネを例示した説明図。
図2】波長変換シートを例示する断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の視覚補助具について説明する。
【0021】
本発明の視覚補助具は、青白色の炎を視認し易くする視覚補助具である。青白色の炎とは、例えばアルコールランプの炎やガスコンロの炎である。これらの炎は、ローソクや薪の炎の色であるオレンジ色や黄色と異なり、淡い青白色であるため、視認し難い炎である。炎が視認し難いと、例えば、火がついている場合であっても、火が消えていると誤認する恐れがある。また、大きな炎であるにもかかわらず、小さい炎であると誤認する恐れがある。そのような誤認による火災や火傷などの事故を防ぐ手段として、青白色の炎を視認し易くすることが挙げられる。本発明は、そのような青白色の炎を視認し易くする視覚補助具である。
【0022】
本発明の視覚補助具の構成は、少なくとも、前記炎の観察者が観察対象の炎の光を観察し易くする機能を備えた光透過部を備えている。光透過部とは、観察する対象である炎と、観察者の眼(目)の間にあって、炎から発せられる光を透過させた後に、観察者の眼に入射させる部材である。いわゆる、メガネのレンズやゴーグルの透明部材が該当する。また、該光透過部を備えた透明板であってもよい。
【0023】
上記の光透過部は、炎から発せられる青白色の励起光を吸収し、可視光領域の蛍光に変換する機能を備えていることが特徴である。この光透過部の光波長の変換機能によって、青白色の光が、人の目が視認し易い波長域の可視光に波長変換されることで、視認し易い光へと変化し、視認することが容易になる。
【0024】
光波長の変換機能、すなわち、青白色の励起光を吸収し、可視光領域の蛍光に変換する機能は、例えば、図2に例示した波長変換シート10によって実施することが可能である。
【0025】
波長変換シート10は、図2に例示したように、蛍光体層1を一対の蛍光体保護フィルム2によって挟持した積層体である。
【0026】
青白色の励起光を吸収し、可視光領域の蛍光に変換する機能は、蛍光体層1によって発現する機能である。蛍光体層1は、封止樹脂4の中に微粒子状の蛍光体3が分散された層である。
【0027】
蛍光体層1は一対の蛍光体保護フィルム2によって挟持された積層体としている理由は、蛍光体3が大気中の水蒸気などの水分および酸素などにより劣化するのを防ぐためである。そのため、蛍光体保護フィルム2は水分や気体の透過を抑制する機能を備えている。
【0028】
本発明の視覚補助具における波長変換機能としては、例えば、炎から発せられる光(励起光)の波長が390nm以上430nm以下であり、波長変換後の光である蛍光の波長が450nm以上700nm以下とすることができる。
380nm以上450nm以下が紫、450nm以上485nm以下が青、485nm以上500nm以下が水色、500nm以上565nm以下が緑、565nm以上590nm以下が黄色、590nm以上625nm以下が橙色、625nm以上780nm以下が赤、とされている。そのため、励起光が390nm以上430nm以下であるため、励起光の色は紫色であり、その励起光が450nm以上700nm以下の青色から赤色の蛍光に波長変換される。すなわち、低明度の色から中明度~高明度の色に変換される。明度が高いほど、観察者は炎を視認し易くなる。
【0029】
また、炎から発せられる光(励起光)の波長が470nm以上510nm以下であり、
波長変換後の光である蛍光の波長が600nm以上700nm以下としても良い。
この場合は、励起光は波長が470nm以上510nm以下であり、青色から緑色であり、その励起光が600nm以上700nm以下の橙色から赤色の蛍光に波長変換される。すなわち、低明度の色から中明度~高明度の色に変換される。そのため、視認し易くなる。
【0030】
上記の光透過部は、量子ドットを含む波長変換層を蛍光体層1とした構成であっても良い。波長変換層とは、樹脂層の中に微細な粒子からなる蛍光体を分散させた層である。励起光を波長変換層に照射すると、波長変換層の中の蛍光体が励起され、励起光より波長が長い蛍光を発する。これが波長変換機能である。量子ドットは、波長変換効率が高い蛍光体である。
【0031】
量子ドットは、発光性の半導体ナノ粒子で、直径の範囲は1nmから20nm程度である。量子ドットは幅広い励起スペクトルを示し量子効率が高く、さらに、ドットサイズや半導体材料の種類を変更するだけで、発光の波長を可視域全体にわたって完全に調整することができるという利点がある。
【0032】
量子ドットとしては、例えば、発光部としてのコアが保護膜としてのシェルにより被膜されたものが挙げられる。上記コアとしては、例えば、セレン化カドミウム(CdSe)等が挙げられ、上記シェルとしては、例えば、硫化亜鉛(ZnS)等が挙げられる。CdSeの粒子の表面欠陥がバンドギャップの大きいZnSにより被覆されることで量子効率が向上する。また、蛍光体は、コアが第1シェル及び第2シェルにより二重に被覆されたものであってもよい。この場合、コアにはCsSe、第1シェルにはセレン化亜鉛(ZnSe)、第2シェルにはZnSが使用できる。また、量子ドット以外の蛍光体として、YAG:Ce等を用いることもできる。
【0033】
上記蛍光体3の平均粒子径は、好ましくは1nm以上20nm以下である。また、蛍光体層1の厚さは、好ましくは1μm以上500μm以下である。
【0034】
蛍光体層1における蛍光体3の含有量は、蛍光体層1全量を基準として、1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、3質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
【0035】
また、視覚補助具の構成として、光透過部の他に、例えば、1320nm以上1464nm以下の近赤外線領域を検知する検知手段と、検知手段にて得た情報と予め設定した閾値を比較する比較手段と、情報が前記閾値を超えた場合に警報を発する警報発生手段を備えていても良い。すなわち、事前に設定した強度以上の近赤外線が検知された場合に、観察者に注意を促す機構を備えていてもよい。
【0036】
このように、炎から発せられる赤外線を直接的に検知して警報を発する構成にすることで、より多角的に異常に大きい炎を検知することができるようになるため、火災や火傷などの事故を確実に回避することができるようになる。
【0037】
上記の警報発生手段は、少なくとも、音、振動、光、サーモグラフィ画像の中から選択された1以上からなるものとすることができる。それ以外の警報発生手段が選択肢の中に含まれていても良い。より多くの警報発生手段の中から警報発生手段を選択できるようにしておくことで、より広い、様々な場面への適切な注意喚起を提供することが可能となる。また、比較手段は比較回路など公知の比較手段を適用できる。
【0038】
なお、1320nm以上1464nm以下の近赤外線領域を検知する理由は、該当波長
領域内での発光強度の変化から、火炎の存在を判定するためである。
【0039】
検知手段としては例えば赤外線センサがあげられる。赤外線センサとしては、高感度であるが冷却が必要な量子型赤外線センサと、感度は低いが冷却が不要な熱型赤外線センサが知られている。
量子型赤外線センサには、外部光電効果を使用して赤外線を検出するタイプと、内部光電効果を使用して赤外線を検出するタイプがある。前者は光電管を使用した赤外線センサである。後者は半導体素子を使用した赤外線センサであり、光伝導型と光起電力型が知られている。
【0040】
熱型赤外線センサには、焦電効果を利用したもの(焦電素子型)、熱電効果を利用したもの(熱電対型)、および温度変化に伴う電気抵抗の変化を利用したもの(ボロメータ型)、が知られている。焦電素子型に使用される材料としては、硫化鉛(PbS)が使用され、赤外線の検知波長は1~3μmである。熱電対型に使用される材料としては、チタン酸バリウムストロンチウムやチタン酸ジルコン酸鉛が使用され、検知波長は8~12μmである。熱電対型に使用される材料としては、多結晶シリコンが使用され、検知波長は8~12μmである。ボロメータ型に使用される材料としては、酸化バナジウム、巨大磁気抵抗効果材料、イットリウム系超伝導体、アモルファスシリコンなどが使用され、検知波長は8~12μmである。以上から、1320nm以上1464nm以下の近赤外線領域を検知する赤外線センサとしては、硫化鉛を使用した焦電素子型の熱型赤外線センサを使用することができる。
【0041】
以上、本発明の視覚補助具について説明したが、本発明の視覚補助具の具体的な形態としては、メガネやゴーグルであることが好ましい。メガネやゴーグル型とすることで炎の視覚化だけでなく、料理時の油跳ねなどから目を保護する効果も持たせることができるため好ましい
【0042】
図1は、本発明の視覚補助具の1つの形態であるメガネを例示した説明図である。図1(a)は、本発明のメガネ7の俯瞰図であり、フレーム6にレンズ5が備えられた一般的な構成となっている。図1(b)はレンズ5の断面を例示した説明図であり、レンズ5に波長変換シート10が接着された構成を例示した説明図である。このように、レンズ5に波長変換シート10が接着された構成だけでなく、例えば、レンズ5に蛍光体層1を形成し、その蛍光体層1の上に蛍光体保護フィルム2を積層するか、蛍光体保護フィルム2と同等以上の水分や酸素のバリア性を備えた層を形成した構成としても良い。
【0043】
(蛍光体層)
蛍光体層1は、封止樹脂4および蛍光体3を含む数十~数百μmの厚みの薄膜である。封止樹脂4としては、例えば、感光性樹脂又は熱硬化性樹脂を使用することができる。封止樹脂4の内部には、蛍光体3が1種以上混合された状態で封止されている。封止樹脂4は、蛍光体層1と一対の蛍光体保護フィルム2,2とを積層する際に、これらを接合するとともに、これらの空隙を埋める役割を果たす。また、蛍光体層1は、1種類の蛍光体3のみが封止された蛍光体層が2層以上積層されたものであってもよい。
【0044】
(蛍光体)
蛍光体3は、上記で説明した量子ドットを好適に使用可能であるが、390nm以上430nm以下の波長域で励起され450nm以上700nm以下の蛍光を発する蛍光体および470nm以上510nm以下の波長域で励起され450nm以上700nm以下の蛍光を発する蛍光体であれば特に限定する必要はない。
【0045】
(封止樹脂)
封止樹脂4としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、及び紫外線硬化型樹脂等を使用することができる。これらの樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、アセチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース及びメチルセルロース等のセルロース誘導体;酢酸ビニルとその共重合体、塩化ビニルとその共重合体、及び塩化ビニリデンとその共重合体等のビニル系樹脂;ポリビニルホルマール及びポリビニルブチラール等のアセタール樹脂;アクリル樹脂とその共重合体、メタアクリル樹脂とその共重合体等のアクリル系樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリアミド樹脂;線状ポリエステル樹脂;フッ素樹脂;並びに、ポリカーボネート樹脂等を用いることができる。
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、及びシリコン樹脂等が挙げられる。
紫外線硬化型樹脂としては、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、及びポリエステルアクリレート等の光重合性プレポリマーが挙げられる。また、これら光重合性プレポリマーを主成分とし、希釈剤として単官能や多官能のモノマーを使用することもできる。
【0046】
(蛍光体保護フィルム)
蛍光体保護フィルム2としては、透明樹脂フィルム上に、少なくとも、酸化珪素薄膜や酸化アルミニウム薄膜を形成したガスバリア性フィルムを好適に使用することができる。酸化珪素薄膜、酸化アルミニウム薄膜、酸化マグネシウム薄膜、またはそれらの混合物または化合物からなる無機薄膜層の上にコーティング層(ガスバリア性被覆層)を設けたガスバリア性フィルムとしても良い。
【0047】
無機薄膜層の厚さは5nm以上100nm以下の範囲内とすることが好ましく、10nm以上40nmの範囲内とすることがより好ましい。ここで、膜厚が5nm以上であると、均一な膜を形成しやすく、ガスバリア材としての機能をより十分に果たすことができる傾向がある。一方、膜厚が100nm以下であると、薄膜により十分なフレキシビリティを保持させることができ、成膜後に折り曲げ、引っ張りなどの外的要因により、薄膜に亀裂を生じることをより確実に防ぐことができる傾向がある。また、酸素欠損のある無機酸化物は光学吸収を持つため、透明性の点ではバリア性を備える範囲で薄いことが好ましいことから、40nm以下であることがより好ましい。
【0048】
透明樹脂フィルムとしては、全光線透過率が85%以上の基材が望ましい。例えば透明性が高く、耐熱性に優れた基材として、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムなどを用いることができる。
【0049】
透明樹脂フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、波長変換シート10の総厚を薄くするために、50μm以下とすることが望ましい。また、透明樹脂フィルムの厚さは、優れたガスバリア性を得るために、12μm以上とすることが望ましい。
【0050】
以上、本発明の視覚補助具について説明した。本発明の視覚補助具は、明度が低く、視認し難い青白色の炎を、蛍光体を使用した光の波長変換技術を利用して、明度が高く、視認し易い波長の光に変換する技術である。そのため、この技術はガスコンロの炎を見えやすくする視覚補助具に限定されない。
【0051】
(レンズ)
レンズ5の材料は、通常のメガネレンズ用のガラスやプラスチック素材をはじめ、透明なガラス板やプラスチックシートなどを使用することができる。レンズ5の形態も特に限定する必要は無い。メガネやゴーグルの形態に合わせた形態であればよい。
【0052】
(フレーム)
フレーム6の材料や形態については特に限定する必要は無い。例えば、通常のメガネで使用されているメガネフレームを好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1・・・蛍光体層
2・・・蛍光体保護層
3・・・蛍光体
4・・・封止樹脂
5・・・レンズ
6・・・フレーム
7・・・メガネ
10・・・波長変換シート
図1
図2