(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114795
(43)【公開日】2022-08-08
(54)【発明の名称】太陽電池モジュールのバックシート除去方法及びその装置
(51)【国際特許分類】
H01L 31/049 20140101AFI20220801BHJP
B09B 5/00 20060101ALI20220801BHJP
B02C 21/00 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
H01L31/04 562
B09B5/00 Z ZAB
B02C21/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021011228
(22)【出願日】2021-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】595013427
【氏名又は名称】株式会社エヌ・ピー・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100096921
【弁理士】
【氏名又は名称】吉元 弘
(72)【発明者】
【氏名】松本 健司
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 剛
(72)【発明者】
【氏名】矢内 利幸
【テーマコード(参考)】
4D004
4D067
5F151
【Fターム(参考)】
4D004AA23
4D004AC04
4D004BA05
4D004BA06
4D004CA04
4D004CA12
4D004CB13
4D067DD03
4D067DD13
4D067GA20
4D067GB03
5F151BA11
5F151JA05
(57)【要約】
【課題】使用済み太陽電池モジュールの再利用工程において、バックシートを確実かつ容易に破砕する装置を提供する。
【解決手段】太陽電池モジュールのバックシート除去装置は、押圧搬送機構10とバックシートを破砕する複数の回転刃11とを備え、回転刃11には昇降機構12が設けられ、昇降量が制御されることにより、バックシートBのみを確実かつ容易に破砕することが可能である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池モジュールのバックシート除去方法であって、
前記太陽電池モジュールを、前記太陽電池モジュールのガラス板面側へ押圧した状態で、前記太陽電池モジュールのバックシートを回転刃により破砕することを特徴とする太陽電池モジュールのバックシート除去方法。
【請求項2】
太陽電池モジュールのバックシート除去方法であって、
押圧ローラと滑走面板とを有する押圧搬送機構により、前記滑走面板上の前記太陽電池モジュールをガラス板面側へ前記押圧ローラにより押圧固定して保持し、バックシート面を下側とした状態で、前記太陽電池モジュールを下流側へ搬送し、
回転刃により、前記バックシートを破砕することを特徴とする太陽電池モジュールのバックシート除去方法。
【請求項3】
太陽電池モジュールのバックシート除去方法であって、
前記太陽電池モジュールを、ガラス板面側へ押圧治具により押圧した状態で、搬送機構によりバックシート面を下側とした状態で下流側へ搬送し、
回転刃により、前記バックシートを破砕することを特徴とする太陽電池モジュールのバックシート除去方法。
【請求項4】
太陽電池モジュールのバックシート除去装置であって、
押圧ローラと滑走面板とを有し、前記滑走面板上の前記太陽電池モジュールをガラス板面側から前記押圧ローラにより押圧固定して保持し、バックシート面側を下側とした状態で、前記太陽電池モジュールを下流側へ搬送する押圧搬送機構と、
前記バックシートを破砕する回転刃と、
前記回転刃を昇降させる機構と、
を備えることを特徴とする、太陽電池モジュールのバックシート除去装置。
【請求項5】
太陽電池モジュールのバックシート除去装置であって、
前記太陽電池モジュールのガラス板面側を押圧する押圧治具と、
前記押圧治具により押圧された前記太陽電池モジュールを、バックシート面側を下側とした状態で下流側へ搬送する搬送機構と、
前記バックシートを破砕する回転刃と、
前記回転刃を昇降させる機構と、
を備えることを特徴とする、太陽電池モジュールのバックシート除去装置。
【請求項6】
前記回転刃は、フライス形状を有することを特徴とする、請求項4又は5に記載の太陽電池モジュールのバックシート除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済みの太陽電池モジュールのバックシートを除去するバックシート除去方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題に対する関心の高まりから、CO2を排出しないクリーンエネルギの利用が促進され、その代表的な手段としてソーラーエネルギから電気を作り出す太陽電池モジュールが、企業、一般家庭を問わず急速に普及してきている。しかしながら、太陽電池モジュールを製造する過程においては、CO2の排出を余儀なくされる。環境保護のためのクリーンエネルギの利用という趣旨を全うするためには、このようなCO2排出も抑制する必要がある。そこで、廃棄される太陽電池モジュールからも可能な限りの資源の再利用を進め、CO2の排出抑制を果たすことが望まれる。使用済みの太陽電池モジュールの構成材料(ガラス板・セル・配線材など)を再利用するために、各材料を互いに分離する必要があるが、その中で、バックシートを除去して封止材・セル・配線材を露出状態にする工程が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示された、太陽電池モジュールを加熱し軟化させたバックシートをベンドローラで剥離させるリサイクル装置では、このリサイクル装置の構成を示した
図1(a)、並びにそのリサイクル手順を示した
図1(b)に示されたように、剥離させる前段にバックシートを加熱する工程が必要である。しかしながら、バックシートを確実に封止材・セル・配線材と分離させることは容易ではなく、また構造上ガラス板面にも曲げ応力を生じさせ、破損させる可能性がある。さらに、前記ガラス板面にあらかじめ破損があった場合には、バックシートの剥離が困難となる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑み、太陽電池モジュールのガラス板面に曲げ応力を与えず、ガラス板が破損していた場合であってもバックシートを確実かつ容易に除去することが可能な太陽電池モジュールのバックシート除去方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の太陽電池モジュールのバックシート除去方法は、前記太陽電池モジュールを、前記太陽電池モジュールのガラス板面側から押圧した状態で、前記太陽電池モジュールのバックシートを回転刃により破砕することを特徴とする。
【0007】
本発明の太陽電池モジュールのバックシート除去方法は、押圧ローラと滑走面板とを有する押圧搬送機構により、前記滑走面板上の前記太陽電池モジュールをガラス板面側から前記押圧ローラにより押圧固定して保持し、バックシート面を下側とした状態で、前記太陽電池モジュールを下流側へ搬送し、回転刃により、前記バックシートを破砕することを特徴とする。
【0008】
本発明の太陽電池モジュールのバックシート除去方法は、前記太陽電池モジュールを、ガラス板面側へ押圧治具により押圧した状態で、搬送機構によりバックシート面を下側とした状態で下流側へ搬送し、回転刃により、前記バックシートを破砕することを特徴とする。
【0009】
本発明の太陽電池モジュールのバックシート除去装置は、押圧ローラと滑走面板とを有し、前記滑走面板上の前記太陽電池モジュールをガラス板面側へ前記押圧ローラにより押圧固定して保持し、バックシート面側を下側とした状態で、前記太陽電池モジュールを下流側へ搬送する押圧搬送機構と、前記バックシートを破砕する回転刃と、前記回転刃を昇降させる機構と、を備えることを特徴とする。
【0010】
太陽電池モジュールのバックシート除去装置は、前記太陽電池モジュールのガラス板面側を押圧する押圧治具と、前記押圧治具により押圧された前記太陽電池モジュールを、バックシート面側を下側とした状態で下流側へ搬送する搬送機構と、前記バックシートを破砕する回転刃と、前記回転刃を昇降させる機構と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の太陽電池モジュールのバックシート除去方法及びその装置によれば、太陽電池モジュールのガラス板面に曲げ応力を与えることなくガラス板が破損していた場合であっても、回転刃によりバックシートを確実かつ容易に破砕し除去することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】特許文献1に記載されたリサイクル装置の概略構成を示した縦断面図及びそのリサイクル手順を示したフロー図。
【
図2】本発明の実施の形態(1)による太陽電池モジュールのバックシート除去装置の構成を示した平面図。
【
図3】同実施の形態(1)による太陽電池モジュールのバックシート除去装置の断面構成を示した縦断面図。
【
図4】本発明の実施の形態(1)及び(2)による太陽電池モジュールのバックシート除去装置において、回転刃と押圧ローラを含む部分を俯瞰方向から拡大して示した部分拡大図。
【
図5】同実施の形態(1)及び(2)による太陽電池モジュールのバックシート除去装置において、回転刃がバックシートを破砕する機構を回転刃側から拡大して示した縦断面図。
【
図6】同実施の形態(1)及び(2)による太陽電池モジュールのバックシート除去装置において、太陽電池モジュールを支持・押圧する機構を示した押圧ローラ側から見た縦断面図。
【
図7】同実施の形態(2)による太陽電池モジュールのバックシート除去装置の断面構成を示した縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態による太陽電池モジュールのバックシート除去方法及びその装置について、図面を参照して説明する。
【0014】
(1)実施の形態(1)について
本発明の実施の形態(1)による太陽電池モジュールのバックシート除去装置について、全体の概略構成を示した
図2、及び断面構成を示した
図3を参照して説明する。本実施の形態(1)による太陽電池モジュールのバックシート除去装置1は、太陽電池モジュールMをバックシートBと反対側のガラス板面側から押圧した状態で滑走面板17上を搬送する押圧搬送機構10と、太陽電池モジュールMのバックシートB側に設けられた、バックシート除去用の回転刃11と、モータ13の回転により回転刃11を昇降させる昇降機構12とを備えている。
【0015】
上流位置20から下流位置30へ太陽電池モジュールMを矢印で示された図中右方向(下流側)に搬送する間に、回転刃11が回転しつつ、太陽電池モジュールMに干渉しない待機高さ40から、昇降機構12により、回転刃の刃先が太陽電池モジュールMのバックシートBを破砕できる作動高さ50へ上昇する。
【0016】
ここで
図4に、回転刃11と、押圧搬送機構10が有する押圧ローラ16とを俯瞰方向から拡大して示す。押圧ローラ16は、バックシートBの面側から太陽電池モジュールMを押圧し支持する。回転刃11はフライス形状を有するが、その形状には限定されない。
【0017】
押圧ローラ16が
図4における紙面に垂直な方向に太陽電池モジュールMを押圧した状態で、回転刃11が太陽電池モジュールMのバックシートBを破砕する。ここでは、回転刃11と押圧ローラ16とが2個ずつ配置されているが、それぞれの数は制限されない。
【0018】
図5に、回転刃11が太陽電池モジュールMのバックシートBを破砕する機構を、回転刃11側から見た縦断面構成として示し、
図6に、太陽電池モジュールMを支持・押圧する機構を押圧ローラ16側から見た縦断面構成として示す。
【0019】
太陽電池モジュールMが、矢印で示されたように図中右方向(下流側)に向かって搬送され、太陽電池モジュールMのバックシートBが押圧ローラ16によって押圧された状態で、回転刃11によって破砕される。
【0020】
また、本実施の形態(1)による太陽電池モジュールのバックシート除去方法は、太陽電池モジュールMをガラス板面側から押圧固定して保持した状態で下流側へ搬送し、太陽電池モジュールMのバックシートB面側からバックシートBを回転刃によって破砕し除去する。
【0021】
このように、本実施の形態(1)による太陽電池モジュールのバックシート除去装置及びバックシート除去方法によれば、太陽電池モジュールMが押圧搬送機構10により、ガラス板面側から上下方向に押圧されることにより、ガラス板面にひび割れ等の破損部分があっても、確実かつ容易にバックシート除去を行うことができる。また、回転刃11の上下方向の昇降量を昇降機構12により制御することにより、バックシートBのみを確実に破砕することができる。バックシートBを除去された太陽電池モジュールMは、下流位置30にて回収される。
【0022】
(2)実施の形態(2)について
本発明の実施の形態(2)による太陽電池モジュールのバックシート除去装置について、断面構成を示した
図7を参照して説明する。本実施の形態(2)による太陽電池モジュールのバックシート除去装置1は、上記実施の形態(1)が備える押圧搬送機構10の替わりに、上下に配置されたローラにより太陽電池モジュールMを挟持して搬送する搬送機構14と、太陽電池モジュールMのガラス板面に平行な押圧面を有する押圧治具15とを独立して設けた点で、上記実施の形態(1)と相違する。
【0023】
搬送機構14により、太陽電池モジュールMを上流位置20から下流位置30へ搬送しつつ、押圧治具15によって回転刃11と上下に相対する位置において太陽電池モジュールMのガラス板面側から押圧する。
【0024】
回転刃11と、押圧治具15が有する押圧ローラとの配置は、上記実施の形態(1)において
図4を用いて説明したものと同様としてもよい。上記実施の形態(1)と同様に、回転刃11と押圧ローラの数は制限されない。
【0025】
回転刃11が太陽電池モジュールMのバックシートを破砕する機構、並びに太陽電池モジュールMを支持・押圧する機構は、上記実施の形態(1)において
図5、
図6を用いて説明したものと同様としてもよい。
【0026】
また、本実施の形態(2)による太陽電池モジュールのバックシート除去方法は、太陽電池モジュールMを面方向に沿って搬送し、太陽電池モジュールMのガラス板面側から押圧し、太陽電池モジュールMのバックシートB面側からバックシートBを回転刃によって破砕し除去する。
【0027】
本実施の形態(2)による太陽電池モジュールのバックシート除去装置及びバックシート除去方法によれば、太陽電池モジュールMが搬送機構14により搬送され、押圧治具15によりガラス板面側から上下方向に押圧されることにより、ガラス板面にひび割れ等の破損部分があっても、確実かつ容易にバックシート除去を行うことができる。また、回転刃11の上下方向の昇降量を昇降機構12により制御することにより、バックシートBのみを確実に破砕することができる。バックシートBを除去された太陽電池モジュールMは、下流位置30にて回収される。
【0028】
上述した新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施の形態やその変形は、発明の技術的範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0029】
1 太陽電池モジュールのバックシート除去装置
10 押圧搬送機構
11 回転刃
12 昇降機構
13 モータ
14 搬送機構
15 押圧治具
16 押圧ローラ
17 滑走面板
20 上流位置
30 下流位置
40 待機高さ
50 作動高さ
M 太陽電池モジュール
B バックシート