(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114807
(43)【公開日】2022-08-08
(54)【発明の名称】生体情報検出装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/022 20060101AFI20220801BHJP
A61B 5/029 20060101ALI20220801BHJP
A61B 5/107 20060101ALI20220801BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
A61B5/022 400F
A61B5/029
A61B5/022 400M
A61B5/107 300
B60R11/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021011244
(22)【出願日】2021-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】上田 吾朗
【テーマコード(参考)】
3D020
4C017
4C038
【Fターム(参考)】
3D020BA13
3D020BB01
3D020BC01
3D020BE03
4C017AA03
4C017AA08
4C017AA09
4C017AB04
4C017AC40
4C017BC11
4C017BC20
4C017BD05
4C017EE01
4C017FF08
4C038VA04
(57)【要約】
【課題】対象者の行動の妨げとなることを抑制しつつ、対象者の血圧を検出可能な生体情報検出装置を提供する。
【解決手段】生体情報検出装置1は、送信アンテナ12から放射されて対象者である乗員Pを透過した電波を受信する受信アンテナ13と、情報制御部20とを備える。情報制御部20は、送信アンテナ12から電波が放射された際に、受信アンテナ13が受けた電波に応じた受信信号を取得する入力部21と、入力部21が取得した受信信号に基づいて、生体情報を算出する処理部24と、を有する。処理部24は、受信信号から対象者の心臓Hの動きに起因して生ずる信号成分を抽出し、当該信号成分に基づいて、対象者の血圧を生体情報として算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の生体情報を検出する生体情報検出装置であって、
送信アンテナ(12)から放射されて前記対象者を透過した電波を受信する受信アンテナ(13)と、
前記送信アンテナから電波が放射された際に、前記受信アンテナが受けた電波に応じた受信信号を取得する信号取得部(21)と、
前記信号取得部が取得した前記受信信号に基づいて、前記生体情報を算出する演算部(24)と、を備え、
前記演算部は、前記受信信号から前記対象者の心臓の動きに起因して生ずる信号成分を抽出し、当該信号成分に基づいて、前記対象者の血圧を前記生体情報として算出する、生体情報検出装置。
【請求項2】
前記演算部は、所定期間における前記受信信号の信号強度の変化のうち特徴的な変化量を前記心臓の心室の収縮に起因して生ずる成分として抽出し、当該成分に基づいて前記心臓から全身へ送り出される血液駆出量を算出する、請求項1に記載の生体情報検出装置。
【請求項3】
前記特徴的な変化量は、前記所定期間における前記受信信号の信号強度の最大変化量である、請求項2に記載の生体情報検出装置。
【請求項4】
前記演算部は、前記血液駆出量に基づいて前記血圧を算出する、請求項2または3に記載の生体情報検出装置。
【請求項5】
前記対象者は、車両のシート(S)に着座した乗員の一人であり、
前記演算部は、前記受信信号および前記シートの位置に基づいて、前記対象者の血圧を算出する、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の生体情報検出装置。
【請求項6】
前記演算部は、前記受信信号および前記対象者の姿勢に基づいて、前記対象者の血圧を算出する、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の生体情報検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、対象者の生体情報を検出する生体情報検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象者に装着した脈波センサからの出力に基づいて、対象者の血圧を測定する血圧測定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この血圧測定装置は、脈波センサで検出された脈波を2回微分して得られる加速度脈波から脈波伝播時間を算出し、当該脈波伝播時間に基づいて血圧値を算出する構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の装置は、脈波センサを対象者に装着する必要があり、対象者の血圧を検出する際に対象者の行動を妨げてしまう虞がある。
【0005】
本開示は、対象者の行動の妨げとなることを抑制しつつ、対象者の血圧を検出可能な生体情報検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、
対象者の生体情報を検出する生体情報検出装置であって、
送信アンテナ(12)から放射されて対象者を透過した電波を受信する受信アンテナ(13)と、
送信アンテナから電波が放射された際に、受信アンテナが受けた電波に応じた受信信号を取得する信号取得部(21)と、
信号取得部が取得した受信信号に基づいて、生体情報を算出する演算部(24)と、を備え、
演算部は、受信信号から対象者の心臓の動きに起因して生ずる信号成分を抽出し、当該信号成分に基づいて、対象者の血圧を生体情報として算出する。
【0007】
これによれば、対象者の身体を拘束しないので、対象者の行動の妨げとなることを抑制しつつ、対象者の血圧を測定することができる。
【0008】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る生体情報検出装置の概略構成図である。
【
図2】送信アンテナおよび受信アンテナの配置態様の一例を示す模式図である。
【
図3】心電図データを説明するための説明図である。
【
図4】受信信号の時間波形を説明するための説明図である。
【
図5】第1実施形態に係る生体情報検出装置の情報制御部が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】受信信号から抽出した成分の変動量と血圧との相関関係を説明するための説明図である。
【
図7】シート位置が変化した際の送信アンテナおよび受信アンテナとの位置関係の変化を示す模式図である。
【
図8】第2実施形態に係る生体情報検出装置の情報制御部が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】シート位置が変化した際の受信信号から抽出した成分の変動量と血圧との関係を説明するための説明図である。
【
図10】受信信号が受信する電波を説明するための説明図である。
【
図11】第3実施形態に係る生体情報検出装置の情報制御部が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態において、先行する実施形態で説明した事項と同一もしくは均等である部分には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、実施形態において、構成要素の一部だけを説明している場合、構成要素の他の部分に関しては、先行する実施形態において説明した構成要素を適用することができる。以下の実施形態は、特に組み合わせに支障が生じない範囲であれば、特に明示していない場合であっても、各実施形態同士を部分的に組み合わせることができる。
【0011】
(第1実施形態)
本実施形態について、
図1~
図6を参照して説明する。本実施形態では、本開示の生体情報検出装置1を用いて、車両VのシートSに着座した乗員Pの一人の生体情報を算出する例について説明する。
【0012】
近年、病気の症状が現れてからの治療ではなく、日々の健康管理等で未然に防ぐ予防医療が重視されつつある。日々の健康管理に用いる指標として血圧がある。血圧は心臓Hにどの程度負担がかかっているかを測る指標の1つであり、日本国では健康診断での必須の項目となっている。しかし、血圧は測る時間や測る前の食事や緊張等によってばらつくため、1年に1回の健康診断の場だけでなく、例えば1日1回同じ時間に測り推移を見ることが推奨されている。その環境に適していると考えられる1つが車両Vを用いた通勤時間である。但し、車両Vに乗車している際の条件として「運転の妨げにならない」があるため、装着式やカフ式を用いることは難しく、非拘束で血圧を検出することが求められている。
【0013】
これらを加味して、生体情報検出装置1は、乗員Pを透過した電波信号に基づいて、乗員Pの生体情報を検出する電波透過式の装置として構成されている。生体情報検出装置1は、車両VのシートSのうち、運転席DSに着座した乗員Pを対象者とし、当該対象者の血圧を生体情報として算出する。生体情報検出装置1は、発信機11、送信アンテナ12、受信アンテナ13、受信機14、情報制御部20を備えている。
【0014】
発信機11は、所定の周波数(例えば、900MHz帯の周波数)の送信信号を送信アンテナ12に出力する。送信アンテナ12は、車内のインストルメントパネルのうち、運転席DSに対して車両Vの進行方向の前方側に配置されている。送信アンテナ12は、発信機11からの送信信号に応じた電波信号を運転席DSに着座した乗員Pの上半身に向けて発信する。
【0015】
受信アンテナ13は、
図2に示すように、運転席DSに着座した乗員Pを挟んで送信アンテナ12と対向して配置されている。本実施形態の受信アンテナ13は、運転席DSのシートバックに取り付けられている。受信アンテナ13は、送信アンテナ12から送信された電波を受信可能に構成されている。受信アンテナ13は、送信アンテナ12から放射されて対象者である乗員Pを透過した電波を受信する。
【0016】
受信機14は、受信アンテナ13が受信した電波信号を増幅して出力する。具体的には、受信機14は、受信アンテナ13が受信した電波信号を増幅して生体信号P1として情報制御部20に出力する。
【0017】
情報制御部20は、受信機14から取得した生体信号P1に基づいて、乗員Pの血圧を算出する。情報制御部20は、入力部21、記憶部22、出力部23、処理部24を含んでいる。
【0018】
入力部21は、送信アンテナ12から電波が放射された際に受信アンテナ13が受けた電波に応じた受信信号を取得する信号取得部である。入力部21は、受信機14から入力されたアナログ信号である生体信号P1をデジタル信号として処理部24に出力する。
【0019】
記憶部22は、RAM、ROM、書き込み可能な不揮発性記憶媒体等を含む。記憶部22を構成するRAM、ROM、書き込み可能な不揮発性記憶媒体は、いずれも非遷移的実体的記憶媒体である。
【0020】
出力部23は、処理部24から入力された信号を情報制御部20の外部の装置に出力する。出力先の外部の装置は、例えば、経路案内等を行う車載ナビゲーション装置でもよいし、車両Vの外部と通信を行う車載データ通信モジュールでもよいし、乗員が携帯する携帯通信端末でもよい。
【0021】
処理部24は、記憶部22のROMまたは書き込み可能な不揮発性記憶媒体に記録されたプログラムに従った処理を実行する装置である。本実施形態の処理部24は、記憶部22のRAMを作業領域として使用する。処理部24は、入力部21が取得した受信信号に基づいて生体情報を算出する演算部として機能する。
【0022】
ここで、情報制御部20は、CAN通信を介して車載ネットワークに接続されている。CANは、Controller Area Networkの略称である。情報制御部20は、通信バスであるCANバス30に接続されている。このCANバス30には、シート制御装置40、車内検知機器50等の車載機器が接続されている。情報制御部20は、CANバス30を介して、シート制御装置40が記憶しているシート情報、車内検知機器50の検知結果等を取得可能になっている。
【0023】
シート制御装置40は、シートSを車両Vの前後に移動させることで、シートSの位置を調整する装置である。図示しないがシート制御装置40は、シートSを駆動させるアクチュエータ、アクチュエータを制御する制御部、記憶媒体を有する。記憶媒体は、シートSの前後位置等のシート情報を記憶するための不揮発性の記憶媒体である。記憶媒体は非遷移的実体的記憶媒体である。シート制御装置40は、CANバス30に接続されている。
【0024】
車内検知機器50は、車内における対象者の姿勢を検知可能な機器である。車内検知機器50は、例えば、車内監視用の撮像機器、車室内の温度変化を検出するIRセンサ等で構成される。車内検知機器50は、CANバス30に接続されている。
【0025】
次に、生体情報検出装置1の作動について説明する。発信機11は、所定の周波数の送信信号を送信アンテナ12に出力する。送信アンテナ12は、発信機11からの送信信号に応じた電波を運転席DSに乗車した乗員Pに向けて送信する。送信アンテナ12から送信された電波の一部は、運転席DSに乗車した乗員Pを透過して受信アンテナ13に受信される。
【0026】
電波に対して乗員Pの身体は誘電体として機能する。このため、乗員Pの身体を電波が通過する際に、電波の電界強度に誘電体損失が生じる。乗員Pの身体のうち、心臓Hは、拡張、収縮に伴ってその形状が変化する。このため、心臓Hを透過して受信アンテナ13に至る電波において、電界強度に生じる誘電体損失は、心臓Hの動きに応じて変化する。
【0027】
このように、受信アンテナ13が受信する受信信号の強度は、心臓Hの動きに応じて周期的に変化する成分を含む。したがって、送信アンテナ12からの電波を受信アンテナ13が受信した際に受信アンテナ13から受信機14に出力される電気信号のレベルは、心臓Hの動きに応じて変動する成分が含まれる。
【0028】
ここで、
図3は、心電図データであり、横軸が時間を示し、縦軸が心電図の波形の振幅を示している。心電図データは、心臓Hが収縮する際の生ずる電気エネルギを記録したものである。心電図データには、心臓Hの動きが反映される。すなわち、心電図データには、心臓Hの動きに応じて変動する成分が含まれる。具体的には、
図3に示すように、心臓Hの心房の収縮は、心電図のP波に対応している。心臓Hの心室の収縮は、P波に続くQRS波に対応している。QRS波の電圧は、P波の電圧よりも大きい。
【0029】
心臓Hは、心房の収縮と心室の収縮とが繰り返されることで、心房から入った血液が心室に押し出され、心室から心臓Hの外部へ送り出される。具体的には、血液は、右心室から肺へ、左心室から全身へ血液を送り出される。このため、左心室の収縮量が、心臓Hから全身に送り出される血液の駆出量に比例する。血圧は、心臓Hから全身へ送り出される血液の駆出量および血管抵抗に応じて変化する。このため、血圧と心臓Hの動きには一定の相関性がある。
【0030】
生体情報検出装置1の受信アンテナ13が受信する受信信号の強度は、心電図データと同様に、心臓Hの動きに応じて変化する。心臓Hの動きは、心房と心室の2段階の動きがある。これに対応して、受信信号の時間波形は、
図4に示すように、信号強度が2段階で変動する。本発明者らの調査検討によれば、心室が収縮する際に受信信号の信号強度の変化が大きくなることが判っている。具体的には、心臓Hの心室の収縮量は、受信信号の信号強度の最大変化量ΔAと強い相関性がある。
【0031】
これらを加味して、本実施形態の生体情報検出装置1では、所定期間における受信信号の信号強度の変化のうち特徴的な変化量を心臓Hの心室の収縮に起因して生ずる成分として抽出し、当該成分に基づいて対象者の血圧を算出する。
【0032】
以下、情報制御部20の処理部24が実行する処理の流れについて
図5を参照しつつ説明する。
図5に示す処理は、車両Vの運転席DSに乗員が着座した状態において、情報制御部20によって定期的または不定期に実行される。
【0033】
図5に示すように、処理部24は、ステップS100にて、送信アンテナ12から電波が送信された際に受信アンテナ13で受信される受信信号の時間波形を、受信機14を介して取得する。受信信号の時間波形は、受信信号の信号強度の時間変化である。時間波形は、例えば、
図4に示すような波形となる。この時間波形には、心臓の心室の動きに相関性を有する成分が含まれる。
【0034】
続いて、処理部24は、ステップS110にて、受信信号から心室の収縮に起因する信号成分を抽出する。前述の如く、心臓Hの心室の収縮量は、受信信号の信号強度の最大変化量ΔAと強い相関性がある。このため、処理部24は、所定期間における受信信号の信号強度の変化のうち最大変化量ΔAを特徴的な変化量として抽出する。
【0035】
続いて、処理部24は、ステップS120にて、最大変化量ΔAを用いて血液駆出量を算出する。具体的には、処理部24は、最大変化量ΔAと血液駆出量との関係を規定した制御マップまたは関係式を参照して、ステップS120で抽出した最大変化量ΔAを用いて血液駆出量を算出する。最大変化量ΔAと血液駆出量との関係を規定した制御マップまたは関係式は、例えば、血液駆出量に比例する心室の収縮量が把握可能なエコー画像と受信アンテナ13の受信信号とを同期して取得することで作成可能である。
【0036】
続いて、処理部24は、ステップS130にて、血液駆出量から対象者の血圧を算出する。具体的には、処理部24は、血液駆出量と血圧との関係を規定した制御マップまたは関係式を参照して、ステップS120で算出した血液駆出量を用いて対象者の血圧を算出する。血液駆出量と血圧との関係を規定した制御マップまたは関係式は、例えば、健康診断時の測定結果をもとに作成可能である。
【0037】
続いて、処理部24は、ステップS140にて、ステップS130で算出した血圧を出力部23から生体情報検出装置1の外部の装置に出力する。処理部24は、例えば、乗員Pの覚醒度等を検出するドライバステータスモニタDSMに対して血圧を出力するようになっていてもよい。
【0038】
以上説明した生体情報検出装置1の処理部24は、対象者の身体を透過した電波に応じた受信信号から対象者の心臓Hの動きに起因して生ずる信号成分を抽出し、当該信号成分に基づいて、対象者の血圧を生体情報として算出する。これによれば、対象者の身体を拘束していないので、対象者の行動の妨げとなることを抑制しつつ、対象者の血圧を測定することができる。
【0039】
(1)本実施形態の処理部24は、所定期間における受信信号の信号強度の変化のうち特徴的な変化量を心臓Hの心室の収縮に起因して生ずる信号成分として抽出し、当該信号成分に基づいて心臓Hから全身へ送り出される血液駆出量を算出する。これによると、血圧に強い相関性を有する血液駆出量を算出することができる。
【0040】
ここで、血液駆出量は、血圧とともに心臓Hの機能評価の指標の一つであり、通常は、脈拍センサではなく、超音波センサを用いて測定される。本実施形態の生体情報検出装置1では、単一の装置によって、血圧および血圧駆出量それぞれを算出できるといった利点がある。
【0041】
(2)具体的には、処理部24は、所定期間における受信信号の信号強度の最大変化量ΔAを特徴的な変化量として算出する。このように、所定期間における受信信号の信号強度の変化のうち最大変化量に基づいて血液駆出量を算出する構成とすれば、血液駆出量に強い相関性を有する心室の収縮に起因して生ずる信号成分に基づいて、血液駆出量を精度よく算出することができる。
【0042】
(第1実施形態の変形例)
第1実施形態の生体情報検出装置1は、受信信号の信号強度の特徴的な変化量に基づいて血液駆出量を算出するようなっているが、これに限定されない。
図6に示すように、受信信号の信号強度の特徴的な変化量は、血圧に強い相関性がある。具体的には、所定期間における受信信号の信号強度の最大変化量ΔAは、血圧に略比例する。このため、生体情報検出装置1は、受信信号における特徴的な変化量に基づいて血圧を算出するようになっていてもよい。このことは、以降の実施形態においても同様である。
【0043】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、
図7~
図9を参照して説明する。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0044】
生体情報検出装置1は、送信アンテナ12から受信アンテナ13までの距離が近くなるほど、受信アンテナ13で受信する信号強度が大きくなる。このため、対象者である乗員が着座するシートSの位置が前後に変化すると、対象者、受信アンテナ13、送信アンテナ12の位置関係が変化し、受信アンテナ13で受信する電波が変化する。例えば、
図7に示すように、シートSが状態Aから状態Bに変化すると、送信アンテナ12から受信アンテナ13までの距離が近くなることで、受信アンテナ13で受信する信号強度が大きくなる。
これらを加味して、本実施形態の処理部24は、受信信号およびシートSの位置に基づいて、対象者の血圧を算出する。
【0045】
以下、生体情報検出装置1の情報制御部20が実行する処理の流れについて
図8を参照しつつ説明する。
図8に示す処理は、第1実施形態で説明した
図5に示す処理に対応している。
【0046】
図8に示すように、処理部24は、ステップS200にて、シートSの位置を含むシート情報を取得する。具体的には、処理部24は、CANバス30を介してシート制御装置40からシート情報を取得する。
【0047】
処理部24は、ステップS210にて、送信アンテナ12から電波が送信された際に受信アンテナ13で受信される受信信号の時間波形を、受信機14を介して取得する。そして、処理部24は、ステップS220にて、受信信号から心室の収縮に起因する信号成分を抽出する。具体的には、処理部24は、所定期間における受信信号の信号強度の変化のうち最大変化量ΔAを特徴的な変化量として抽出する。
【0048】
続いて、処理部24は、ステップS230にて、最大変化量ΔAおよびシート情報を用いて血液駆出量を算出する。本実施形態の処理部24は、最大変化量ΔAと血液駆出量との関係をシートSの位置毎に規定した制御マップまたは関係式を参照して、ステップS120で抽出した最大変化量ΔAを用いて血液駆出量を算出する。具体的には、シートSの位置に対応する制御マップまたは関係式を特定し、特定した制御マップまたは関係式を参照して、最大変化量ΔAを用いて血液駆出量を算出する。なお、最大変化量ΔAと血液駆出量との関係を規定した制御マップまたは関係式は、例えば、
図9に示すように、送信アンテナ12から受信アンテナ13までの距離が近いほど、最大変化量ΔAに対応する血液駆出量が小さくなるように設定されている。また、制御マップ等は、送信アンテナ12から受信アンテナ13までの距離が近いほど、最大変化量ΔAの増減に対する血液駆出量の変化量が小さくなるように設定されている。
【0049】
続いて、処理部24は、ステップS240にて、血液駆出量から対象者の血圧を算出する。そして、処理部24は、ステップS250にて、ステップS240で算出した血圧を出力部23から生体情報検出装置1の外部の装置に出力する。
【0050】
その他については、第1実施形態と同様である。本実施形態の生体情報検出装置1は、第1実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0051】
(1)対象者が着座するシートSの位置が変化すると、対象者、受信アンテナ13、送信アンテナ12の位置関係が変化し、受信アンテナ13で受信する電波が変化してしまう虞がある。このため、上述の如く、処理部24は、受信信号およびシートSの位置に基づいて、対象者の血圧を算出する構成になっていることが好ましい。
【0052】
(第2実施形態の変形例)
第2実施形態の処理部24は、シートSの位置を含むシート情報をシート制御装置40から所得しているが、これに限らず、例えば、車内検知機器50等からシートSの位置に関する情報を取得するようになっていてもよい。
【0053】
第2実施形態の処理部24は、最大変化量ΔAと血液駆出量との関係をシートSの位置毎に規定した制御マップまたは関係式を参照して、最大変化量ΔAを用いて血液駆出量を算出するものを例示したが、これに限定されない。処理部24は、例えば、シートSの位置に応じて最大変化量ΔAを補正するようになってもよい。具体的には、処理部24は、シートSの位置が前方に位置するほど、最大変化量ΔAが小さくする補正を行うようになっていてもよい。
【0054】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について、
図10および
図11を参照して説明する。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0055】
図10に示すように、受信アンテナ13は、送信アンテナ12から放射されて乗員Pを透過した電波(すなわち、透過波)だけではなく、乗員Pの周囲を回折によって伝播する電波(すなわち、回折波)を受信する。対象者である乗員Pの姿勢が変化すると、透過波と回折波とが変化することで、受信アンテナ13で受信する電波が変化してしまう。これらを加味して、本実施形態の処理部24は、受信信号および対象者の姿勢に基づいて、対象者の血圧を算出する。
【0056】
以下、生体情報検出装置1の情報制御部20が実行する処理の流れについて
図11を参照しつつ説明する。
図11に示す処理は、第1実施形態で説明した
図5に示す処理に対応している。
【0057】
図11に示すように、処理部24は、ステップS300にて、対象者となる乗員Pの姿勢に関する情報(すなわち、姿勢情報)を取得する。具体的には、処理部24は、CANバス30を介して車内検知機器50で検知される姿勢情報を取得する。
【0058】
処理部24は、ステップS310にて、送信アンテナ12から電波が送信された際に受信アンテナ13で受信される受信信号の時間波形を、受信機14を介して取得する。そして、処理部24は、ステップS320にて、受信信号から心室の収縮に起因する信号成分を抽出する。具体的には、処理部24は、所定期間における受信信号の信号強度の変化のうち最大変化量ΔAを特徴的な変化量として抽出する。
【0059】
続いて、処理部24は、ステップS330にて、最大変化量ΔAおよび姿勢情報を用いて血液駆出量を算出する。本実施形態の処理部24は、最大変化量ΔAと血液駆出量との関係を対象者の姿勢毎に規定した制御マップまたは関係式を参照して、ステップS320で抽出した最大変化量ΔAを用いて血液駆出量を算出する。具体的には、対象者の姿勢に対応する制御マップまたは関係式を特定し、特定した制御マップまたは関係式を参照して、最大変化量ΔAを用いて血液駆出量を算出する。
【0060】
続いて、処理部24は、ステップS340にて、血液駆出量から対象者の血圧を算出する。そして、処理部24は、ステップS350にて、ステップS340で算出した血圧を出力部23から生体情報検出装置1の外部の装置に出力する。
【0061】
その他については、第1実施形態と同様である。本実施形態の生体情報検出装置1は、第1実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0062】
(1)対象者の姿勢が変化すると、対象者を透過する電波と対象者の周囲を回折によって伝播する回折波とが変化することで、受信アンテナ13で受信する電波が変化してしまう。このため、処理部24は、受信信号および対象者の姿勢に基づいて、対象者の血圧を算出する構成になっていることが好ましい。
【0063】
(第3実施形態の変形例)
第3実施形態の処理部24は、対象者の姿勢を含む姿勢情報を車内検知機器50から所得しているが、これに限らず、例えば、車内検知機器50以外のセンサ機器等から対象者の姿勢に関する情報を取得するようになっていてもよい。
【0064】
第2実施形態の処理部24は、最大変化量ΔAと血液駆出量との関係を対象者の姿勢毎に規定した制御マップまたは関係式を参照して、最大変化量ΔAを用いて血液駆出量を算出するものを例示したが、これに限定されない。処理部24は、例えば、対象者の姿勢に応じて最大変化量ΔAを補正するようになっていてもよい。
【0065】
(他の実施形態)
以上、本開示の代表的な実施形態について説明したが、本開示は、上述の実施形態に限定されることなく、例えば、以下のように種々変形可能である。
【0066】
上述の実施形態では、所定期間における受信信号の信号強度の変化のうち特徴的な変化量を心臓Hの心室の収縮に起因して生ずる成分として抽出し、当該成分に基づいて血液駆出量を算出するものを例示したが、生体情報検出装置1は、これに限定されない。生体情報検出装置1は、他の手法によって受信信号から血液駆出量または血圧を算出するようになっていてもよい。
【0067】
また、上述の実施形態では、所定期間における受信信号の信号強度の最大変化量ΔAに基づいて血液駆出量または血圧を算出するものを例示したが、生体情報検出装置1は、これに限定されない。生体情報検出装置1は、例えば、所定期間における受信信号の信号強度に含まれる複数の特徴点を抽出し、当該特徴点に基づいて、血液駆出量または血圧を算出するようになっていてもよい。
【0068】
上述の実施形態では、受信アンテナ13がシートSに取り付けられているものを例示したが、これに限らず、受信アンテナ13がシートS以外のものに取り付けられていてもよい。
【0069】
上述の実施形態では、送信アンテナ12および受信アンテナ13が乗員を挟んで車両Vの前後に並ぶように配置されているもの例示したが、生体情報検出装置1は、これに限定されない。生体情報検出装置1は、例えば、送信アンテナ12および受信アンテナ13が乗員を挟んで車両Vの左右に並ぶように配置されていてもよい。生体情報検出装置1は、運転手だけでなく、他の乗員Pの生体情報を算出するように構成されていてもよい。また、生体情報検出装置1は、車両Vの乗員の生体情報を算出する用途だけでなく、車両の外部(例えば、建造物の内部)にいる人の生体情報を算出する用途に用いられていてもよい。
【0070】
上述の実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0071】
上述の実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されない。
【0072】
上述の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されない。
【0073】
上述の実施形態において、センサから車両の外部環境情報を取得することが記載されている場合、そのセンサを廃し、車両の外部のサーバまたはクラウドからその外部環境情報を受信することも可能である。あるいは、そのセンサを廃し、車両の外部のサーバまたはクラウドからその外部環境情報に関連する関連情報を取得し、取得した関連情報からその外部環境情報を推定することも可能である。
【0074】
本開示の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーを構成することによって提供された専用コンピュータで、実現されてもよい。本開示の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータで、実現されてもよい。本開示の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせで構成された一つ以上の専用コンピュータで、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 生体情報検出装置
12 送信アンテナ
13 受信アンテナ
21 入力部(信号取得部)
24 処理部(演算部)