(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114811
(43)【公開日】2022-08-08
(54)【発明の名称】トイレットロール
(51)【国際特許分類】
A47K 10/16 20060101AFI20220801BHJP
【FI】
A47K10/16 A
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021011251
(22)【出願日】2021-01-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 真悟
(72)【発明者】
【氏名】伊神 雅
【テーマコード(参考)】
2D135
【Fターム(参考)】
2D135AA02
2D135AB02
2D135AB14
2D135DA06
2D135DA13
(57)【要約】 (修正有)
【課題】破れにくさと良好な肌触り感との両立が図られた、巻長の長い単プライのトイレットロールの提供。
【解決手段】単プライのトイレットペーパー113がロール状に巻き取られたトイレットロール110であって、トイレットロール110の巻長は125m以上240m以下であり、トイレットペーパー113の坪量は12.0g/m2以上17.0g/m2以下であり、トイレットペーパー113の長さ方向における乾燥引張破断伸びEmは15.0%より大きく30.0%以下であり、トイレットペーパー113の長さ方向における乾燥引張強度とトイレットペーパー113の幅方向における乾燥引張強度Tcとの幾何平均√(Tm×Tc)は1.05N/mm以上1.50N/mm以下であり、トイレットペーパー113は無エンボスであるトイレットロール110。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
【請求項2】
前記乾燥引張強度Tcと前記乾燥引張強度Tmとの比Tc/Tmは0.60以上0.90以下であることを特徴とする請求項1に記載のトイレットロール。
【請求項3】
前記乾燥引張破断伸びEmと前記トイレットペーパーの幅方向における乾燥引張破断伸びEcとの比Em/Ecは4.5以上7.0以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のトイレットロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1枚のシートで構成されるいわゆる単プライのトイレットペーパーがロール状に巻き取られたトイレットロールに関する。
【背景技術】
【0002】
トイレットペーパーがロール状に巻き取られたトイレットロールでは、1ロール当りの巻長を長くすることによる、トイレットロールの持ち運びや保管時の省スペース化が行われている(例えば、特許文献1)。また、トイレットペーパーの坪量を低減することで、トイレットロールの巻径を一般的なトイレットロールホルダーに収まる所定の寸法内に維持しつつ、巻長を長くすることが知られている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6712491号公報
【特許文献2】特開2006-87703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、単プライのトイレットペーパーにあっては、単にトイレットペーパーの坪量を低減すると、トイレットペーパーの強度が低下して、特にはトイレットロールからトイレットペーパーを巻き解く際に、意図しない破れが発生するという問題があった。
【0005】
トイレットペーパーの強度を向上させる手段としては、トイレットペーパーの製造において、原料パルプの叩解度を高める、針葉樹パルプの配合を多くする、紙力増強剤を添加または増添する等の手段が考えられる。しかしながら、これらの手段によると、製造されたトイレットペーパーの紙質が硬くなる傾向があるため、肌触り感の悪化に繋がる。
【0006】
そこで本発明は、トイレットロールからトイレットペーパーを巻き解く際の破れにくさとトイレットペーパーの良好な肌触り感との両立が図られた、単プライのトイレットペーパーがロール状に巻き取られた、巻長の長いトイレットロールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために鋭意検討を行い、本発明者らは、トイレットロールを構成する単プライのトイレットペーパーを、エンボスを付さない無エンボスとし、トイレットロールからトイレットペーパーを巻き解く際にトイレットペーパーを引っ張る方向であるトイレットペーパーの長さ方向(MD方向)におけるトイレットペーパーの伸び率を高めることで、トイレットペーパーを巻き解く際の破れにくさとトイレットペーパーの良好な肌触り感とを両立させ得ることに想到した。また、トイレットペーパーの乾燥時の長さ方向(MD方向)の引張強度と乾燥時の幅方向(CD方向)の引張強度との積の平方根として計算される「引張強度の幾何平均」を所定の値に調整することが、トイレットペーパーの破れにくさと肌触り感との両立に効果的であり得ることを見出した。
【0008】
【0009】
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、トイレットロールからトイレットペーパーを巻き解く際の破れにくさとトイレットペーパーの良好な肌触り感との両立が図られた、単プライのトイレットペーパーがロール状に巻き取られた、巻長の長いトイレットロールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係るトイレットロールの構成例を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態に係るトイレットロールを、図面を参照しながら説明する。以下の実施形態および図面は例示の目的で記載したものであり、本発明を限定するものではない。
【0013】
(第1の実施形態)
(トイレットロール)
図1は、本発明の実施形態に係るトイレットロールを説明するための概略斜視図である。
【0014】
図1を参照して、本発明の実施形態に係るトイレットロール110は、1枚のシート111で構成されるいわゆる単プライのトイレットペーパー113が、円筒状の巻芯である紙管114に、所定長だけロール状に巻き回されたものである。
【0015】
(シート)
トイレットペーパー113の構成要素であるシート111は、繊維原料であるパルプ成分を含むスラリーを抄紙することによって得られる。
【0016】
(パルプ成分)
パルプ成分としては、木材パルプ、非木材パルプ、脱墨パルプを挙げることができる。木材パルプとしては例えば、広葉樹パルプ(広葉樹クラフトパルプ(LKP))、針葉樹パルプ(針葉樹クラフトパルプ(NKP))、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)、酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ等が挙げられる。また、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプが挙げられるが、特に限定されない。非木材パルプとしてはコットンリンターやコットンリント等の綿系パルプ、麻、麦わら、バガス等の非木材系パルプ、ホヤや海草等から単離されるセルロース、キチン、キトサン等が挙げられるが、特に限定されない。脱墨パルプとしては古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられるが、特に限定されない。パルプ成分は上記の1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。これらパルプ成分は、シート111の品質、ひいてはトイレットペーパー113の品質に大きく影響するので、要求品質に合わせて所定の種類および配合割合で適宜配合される。
【0017】
例えば、パルプ成分として、針葉樹パルプおよび広葉樹パルプから選択される少なくとも1種を好ましく用いることができる。針葉樹パルプは、繊維が長く強度があり、抄造されるシート111に強度を付与することができる。また、広葉樹パルプは、繊維が短く、しなやかであり、抄造されるシート111に均一性、地合いのよさ、柔らかさなどを提供することができる。本発明の実施形態において、針葉樹パルプと広葉樹パルプを併用することが好ましく、針葉樹クラフトパルプ(NKP)と広葉樹クラフトパルプ(LKP)を併用することがより好ましい。
【0018】
パルプ成分として針葉樹パルプと広葉樹パルプとを併用する場合、針葉樹パルプと広葉樹パルプとの配合割合(質量比)を示すL/N比は、例えば、10/90~90/10とすることが好ましく、20/80以上とすることがより好ましく、30/70以上とすることがさらに好ましく、また、80/20以下とすることがより好ましく、70/30以下とすることがさらに好ましい。
【0019】
また、針葉樹パルプと広葉樹パルプはドライパルプでもウェットパルプでも特に制限はないが、ドライパルプとウェットパルプを併用することがより好ましい。乾燥によりパルプ水分(日本工業規格JIS P8127に準ずる、以下同様)を3~10%に調整したパルプをドライパルプと称し、パルプ水分が40~60%のパルプをウェットパルプと称している。ドライパルプとウェットパルプを併用する場合は、ドライパルプとウェットパルプの配合割合(質量比)を示すD/W比は、例えば90/10~30/70とすることが好ましく、80/20~40/60とすることがより好ましく、70/30~50/50とすることがさらに好ましい。
【0020】
(任意成分)
シート111には、要求品質および操業の安定のために、任意成分として様々な薬品が添加されていてもよい。任意成分としては、例えば、乾燥紙力剤、湿潤紙力剤、柔軟剤、嵩高剤、染料、香料、分散剤、濾水向上剤、ピッチコントロール剤、歩留向上剤、サイズ剤等を挙げることができる。乾燥紙力剤としては、例えば、カチオン化澱粉、ポリアクリルアミド(PAM)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等を挙げることができる。湿潤紙力剤としては、ポリアミドエピクロロヒドリン、尿素、メラミン、熱架橋性ポリアクリルアミド等を挙げることができる。柔軟剤としては、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、および両性イオン界面活性剤等を挙げることができる。上記の任意成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
(トイレットペーパー)
本発明の実施形態において、トイレットペーパー113は、単プライのトイレットペーパーであり、1枚のシート111で構成される。
【0022】
本例では、トイレットペーパー113の一端(始端)は、ピックアップ糊(接着剤)によって紙管114の外周に対して接着固定されている(不図示)。始端部の接着によって、トイレットペーパー113が紙管114から剥がれて離脱することが防止されている。
【0023】
(紙管)
紙管114は、円筒形状を有しており、その周りにトイレットペーパー113が巻き回されてトイレットロール110となる。紙管114の外径であるコア径DCは、トイレットロール110を回転支持するためのトイレットロールホルダーの部材(コア芯やフック等)のサイズに応じて設定され、一般には、38mm~40mm程度である。
【0024】
(トイレットロールの巻径)
図1を参照して、トイレットロール110の巻径とは、トイレットロール110の形態にロール状に巻き取られたトイレットペーパー113のロール径(直径)DRをいう。本発明の実施形態において、トイレットロール110の巻径DRは、一般的なトイレットロールホルダー内に収まり、その中で回転自在に支持され得るサイズに設定される。トイレットロール110の巻径DRは、例えば、100mm~134mmであってもよく、110mm~120mmであってもよい。巻径DRは、例えば、ノギスなどを用いて測定することができる。
【0025】
(トイレットロールの巻長)
トイレットロール110の巻長とは、紙管114に巻き回されたトイレットペーパー113の長さをいう。本発明の実施形態において、トイレットロール110の巻長は、125m以上240m以下であり、好ましくは、125m以上200m以下であり、さらに好ましくは125m以上160m以下である。
【0026】
トイレットロール110の巻長が125m以上であると、1ロール当りのトイレットペーパー113の長さが長く、トイレットロール110の持ち運びや保管時の省スペース化を効果的に図ることができる。トイレットロール110の巻長が長くなると、概して、トイレットロール110の巻径は大きくなり、240mを超えると、トイレットロール110は、一般的なトイレットロールホルダーに収まり難くなる。また、トイレットロール110の巻長が125mm未満であると、1ロール当りの巻長が短く、トイレットロール110の巻径を所定の大きさとした場合に、トイレットロール110の持ち運びや保管時の省スペース化の効果が小さい。
【0027】
トイレットロールの巻長は、例えば、トイレットロール110からトイレットペーパー113を巻き解きながらその長さを実測することによって求めることができる。
【0028】
(トイレットペーパーの坪量)
トイレットペーパー113の坪量は、すなわち当該単プライのトイレットペーパー113を構成する1枚のシート111の坪量である。本明細書中でトイレットペーパー113の坪量は、シート111の坪量と同義に解釈され得る。トイレットペーパー113の坪量は、日本工業規格JIS P8124の規定に従ってシート111の坪量を測定することにより得ることができる。
【0029】
本発明の実施形態おいて、トイレットペーパー113の坪量は、12.0g/m2以上17.0g/m2以下であり、好ましくは13.0g/m2以上16.5g/m2以下であり、より好ましくは14.0g/m2以上16.0g/m2以下である。
【0030】
坪量が低いと、概して、トイレットペーパー113の強度が低くなり、トイレットロールからトイレットペーパー113を巻き解く際の意図しない破れが発生しやすくなる。また、吸水量の低下等により使用感が悪くなり得る。
【0031】
坪量が高いと、概して、紙厚が厚くなり、トイレットロール110の巻径が大きくなって、トイレットロール110の持ち運びや保管時の省スペース化が図れなくなる。これに対してトイレットロール110の巻径の寸法を所定の範囲に収めようとすると、トイレットロール110の所望の長い巻長を確保することが困難となる。
【0032】
トイレットペーパー113の坪量が上述の本発明の実施形態に係る坪量の範囲であると、トイレットロール110において、所定の巻径で所望の長い巻長を確保することができ、また、トイレットペーパー113の強度が確保され、トイレットペーパー113を巻き解く際の意図しない破れの発生の防止に繋がる。
【0033】
(無エンボス)
図1を参照して、本発明の実施形態において、トイレットペーパー113は、エンボス加工が施されていない無エンボスのトイレットペーパーである。
【0034】
エンボス加工とは、エンボス加工の対象となるシートの両面のうちの一方の表面にエンボス凸部を、他方の表面にエンボス凸部の裏側で構成されるエンボス凹部を形成する加工をいう。エンボス加工には、非限定的な例として、ほぼ相補的な形状の雄(凸)エンボスロールと雌(凹)エンボスロールとが噛み合う「マッチした」エンボスロールとの間にシートを通す方法、雄(凸)エンボスロールと雌(凹)エンボスロールの形状が同一でなく、両者が噛み合った際にシートにせん断力を与える、いわゆる「マッチしていない」エンボスロール間にシートを通す方法、雄(凸)エンボススチールロールとプレーンラバーロールとの間にシートを通す方法等の様々な方法があることが知られている。
【0035】
本発明の実施形態において、トイレットペーパー113は、無エンボスであって何らエンボス加工が施されていないため、トイレットペーパー113は、表面にエンボス凹凸を有さない。本発明の実施形態において、トイレットペーパー113を無エンボスとするのは、次の理由によるものである。
【0036】
<理由1>
エンボス加工は、一般に、シートの柔らかさを向上させるために有効な手段である。しかしながら、エンボス加工によって、シートを構成するパルプの繊維間結合が緩んだり切れたりする傾向がある。シートは、概して、最も弱い部分を起点に破断する。そのため、トイレットペーパー113にエンボス加工を施すと、トイレットペーパー113は、引っ張られた際に、より弱い引張力で、エンボス加工により弱くなった部分から破断しやすくなる。したがって、本発明の実施形態では、トイレットロール110からトイレットペーパー113を巻き解く際の意図しない破れの発生を抑制するために、トイレットペーパー113にエンボスを付与しないものとする。
【0037】
<理由2>
エンボス加工によってシートにエンボス凹凸が形成されるので、エンボス加工は、シートを嵩高にしたり(エンボス凸部の存在により見かけ上の紙厚を増大させたり)、シートの表面の手触り感(肌触り感)を改質したりするのに有効である。しかしながら、トイレットペーパー113が嵩高になると、トイレットロール110の所望の長い巻長を所定の巻径に収めることが困難となる。したがって、本発明の実施形態では、所望の長い巻長を所定の巻径に収めるために、トイレットペーパー113にエンボスを付与しないものとする。
【0038】
このように、本発明の実施形態において、トイレットペーパー113は無エンボスであるため、エンボスありの場合と比較して、トイレットペーパー113の強度が向上するという効果と、トイレットロール110の所望の長い巻長を確保しつつ所定の巻径に収めることが容易になるという効果と、を奏し得る。
【0039】
(トイレットペーパーの肌触り感と強度と伸び率との関係)
ところで、トイレットペーパー113を無エンボスとする場合、エンボス凹凸が無いため、エンボス凹凸がある場合と比べて、トイレットペーパー113に触ったときに柔らかさや滑らかさが感じられないなど、肌触り感が劣ることが考えられる。
【0040】
トイレットペーパー113の肌触り感は、一般に、トイレットペーパー113の強度と二律背反の関係にあると考えられている。
【0041】
そのため、本発明者らは、エンボス加工を施さずにトイレットペーパー113の肌触り感を向上させるためには、その強度をエンボス加工以外の何らかの方法で低下させることが有効であり得ると考えた。しかしながら、トイレットペーパー113の強度を単に低下させて、トイレットロール110からトイレットペーパー113を巻き解く際にトイレットペーパーを引っ張る方向であるトイレットペーパー113の長さ方向におけるトイレットペーパー113の引張強度が低下すると、トイレットロール110からトイレットペーパー113を巻き解く際のトイレットペーパー113の意図しない破れに繋がってしまう。
【0042】
また、本発明者らは、トイレットロール110からトイレットペーパー113を巻き解く際のトイレットペーパー113の意図しない破れを防止するためには、トイレットペーパー113の長さ方向における引張破断伸び(伸び率)を向上させてトイレットペーパー113を伸びやすくすることが有効であり得ると考えた。しかしながら、トイレットペーパー113の引張破断伸びを向上させ過ぎると、トイレットペーパー113は伸びることによって破れにくいものの、伸びを許容する構造に由来する皺や凹凸などによって、肌触り感が悪化するという知見を得た。
【0043】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、トイレットペーパー113の巻き解きの際の破れにくさと良好な肌触り感との両立を可能とする物性の関係を見出した。その物性とは、トイレットペーパーの引張強度の幾何平均と、トイレットペーパーの引張破断伸びと、の2つである。この2つの物性について、以下に詳述する。
【0044】
【0045】
トイレットペーパー113の長さ方向とは、トイレットペーパー113を構成するシート111の抄造時の抄紙方向(MD)であり、また、トイレットロール110からトイレットペーパー113を巻き解く際にトイレットペーパー113を引っ張る方向である。トイレットペーパー113の幅方向とは、シート111の抄造時の幅方向(CD)であり、トイレットペーパー113の長さ方向に直交する方向である。
【0046】
(引張強度)
本明細書において、乾燥引張強度とは、日本工業規格JIS P8113に準じて測定された、日本工業規格JIS P 8111に規定する方法によって調湿された乾燥状態のトイレットペーパー113の、引張強さである。乾燥引張強度は、具体的には、測定方向と直交する方向の長さを15mmとした短冊状の試験片をトイレットペーパー113から切り出し、引張試験機「テンシロン万能材料試験機RTC1250」にて、スパン長を100mmとして、引張試験を行うことで得ることができる。乾燥引張強度は、幅15mm当たりの、破断するまでの最大引張荷重(N)として表される(単位:N/15mm)。
【0047】
【0048】
(引張破断伸び)
本明細書において、トイレットペーパーの引張破断伸びとは、トイレットペーパー113の乾燥引張破断伸びをいう。乾燥引張破断伸びは、上述した引張試験において試験片を引っ張って破断するまでの伸び率であり、初期試験長さ(初期スパン長)に対する百分率で表示される(単位:%)。
【0049】
本発明の実施形態において、トイレットペーパー113の長さ方向における引張破断伸びEmは15.0%より大きく30.0%以下であり、好ましくは、17.0%より大きく27.0%以下であり、より好ましくは、19.0%より大きく24.0%以下である。
【0050】
【0051】
トイレットペーパー113の長さ方向におけるトイレットペーパー113の引張破断伸びEmが小さいと、意図しない破れが生じやすいが、引張破断伸びEmが15.0%より大きいと、トイレットロール110からトイレットペーパー113を巻き解く際に、トイレットペーパー113は、その長さ方向への引張に対して大きく伸びて、破れにくい。また、トイレットペーパー113の長さ方向におけるトイレットペーパー113の引張破断伸びEmが大き過ぎると、トイレットペーパー113の伸びを許容する構造に由来する皺や凹凸が顕著となり肌触りが悪くなるが、引張破断伸びEmが30.0%以下であると、トイレットペーパー113の良好な肌触り感が維持され得る。
【0052】
(製造方法)
本発明の実施形態に係るトイレットロール110は、例えば、非限定的に、
・ トイレットロール110を構成するトイレットペーパー113となるシート111を抄造しつつ、抄造されたシート111を巻き取って原反ロールを製造する、原反ロール製造工程、
・ シート111が巻き取られた原反ロールからシート111を繰り出し、所定の長さだけ紙管114に巻き取り、必要に応じて所定の幅寸法に裁断する、トイレットロール製造工程、
といった工程を経て製造され得る。
【0053】
なお、原反ロールから繰り出したシート111を紙管114に巻き取る前に、必要に応じて、シート111にスリット加工、ミシン目加工等の加工を施してもよい。また、原反ロールから繰り出したシート111にスリット加工、ミシン目加工等の必要に応じた加工を施してから巻き取って2次原反ロールを製造し、次いで、2次原反ロールから繰り出したシート111を所定長だけ紙管114に巻き取ってトイレットロールを製造してもよい。
【0054】
(原反ロール製造工程)
図2を参照して、シート111を抄造しつつ、抄造されたシート111を巻き取って原反ロールを製造する、原反ロール製造工程について説明する。
【0055】
[抄紙機]
図2は、シート111を抄造しつつシート111が巻き取られた原反ロールを製造するために適用可能な抄紙機の例を模式的に示す。
【0056】
この抄紙機1は、ワイヤーパート40、プレスパート42、ドライパート44、カレンダーパート45、およびリールパート46を備えている。
【0057】
ワイヤーパート40は、抄き網を無端ベルトに構成したワイヤー2,3と、パルプスラリーを吹き付けるヘッドボックス8と、を備える。本実施形態ではツインワイヤフォーマ方式の抄紙機が用いられているが、円網フォーマ方式、サクションプレストフォーマ方式、クレセントフォーマ方式等の知られている抄紙機が用いられてもよい。
【0058】
抄紙機に供給されるパルプスラリーは、パルプ成分に、水、および必要に応じて紙力剤などの任意成分を添加し、叩解処理をしてスラリー状としたものである。
【0059】
ワイヤーパート40において、ヘッドボックス8からワイヤー2,3のニップ部に向かってパルプスラリー9が薄く噴き付けられる。
【0060】
次に、フォーミングロール12によってワイヤー2とワイヤー3が圧着されることで、噴き付けられたパイプスラリーは、ワイヤー2,3の網目から水分が搾り取られて、湿紙10となる。このワイヤーパート40での工程は、総称して「湿紙製造工程」とも呼ばれる。
【0061】
次にワイヤー3の回動によって、ワイヤー3上の湿紙10はプレスパート42に送られる。プレスパート42は、フェルトを無端ベルトに構成したドライヤーフェルト22と、ドライヤーフェルト22に当接するように配置され、ドライヤーフェルト22の走行とともに回転する、複数のフェルトロールと、を備える。
【0062】
ワイヤーパート40から送られてきた湿紙10は、ドライヤーフェルト22の表面に載置され、ドライヤーフェルト22の繊維に湿紙10の水分が吸収されることにより、湿紙10は脱水される。このプレスパート42での工程は、総称して「脱水工程」とも呼ばれる。
【0063】
次に、プレスパート42によって脱水された湿紙10は、ドライパート44に送られる。ドライパート44では、加熱可能な円柱状のヤンキードライヤー26を備え、湿紙10を乾燥させて水分を除去する。すなわち、内部に蒸気を吹き込み加熱状態としたヤンキードライヤー26の外周面に、湿紙10を圧着させて乾燥させ、湿紙であったシートを乾燥状態のシートとする。ヤンキードライヤー26の外周面に対向して熱風の噴射口を有するフード28をさらに設け、フード28からの熱風も合わせて湿紙10に加えて乾燥させるようにしてもよい。ヤンキードライヤー26の外周面で乾燥したシートは、クレーピングドクター29によってクレープと呼ばれる非常に細かい波状の皺がつけられながら、ヤンキードライヤー26の表面から引き剥がされる。このドライパート44での工程は、総称して「乾燥工程」とも呼ばれる。特に、シートへのクレープ付与に関連する一連の工程は、「クレーピング」とも呼ばれる。クレーピングは、シートに柔らかさ、嵩高さ(バルク感)、吸収性、美観(クレープの形状)、手触り感などを付与するために行われる。
【0064】
引き剥がされたシート31は、カレンダーパート45に送られる。カレンダーパートは、1対のカレンダーロール53、54を備え、このカレンダーロール対により上下からシート31を挟み込み、押圧する。これによって、シート31が圧縮され、紙厚の調整および均一化、ならびに表面の平滑化などがなされる。この工程は、総称して「カレンダー加工」とも呼ばれる。
【0065】
カレンダーパート45から送られたシート31は、次いで、リールパート46へ送られる。リールパート46では、シート31をリール34の巻芯38に固定し、リール34を回転させて、シート31を巻き取っていく。これにより、シート31がロール状に巻き取られた紙ロール36が得られる。このリールパート46での工程は、総称して「巻取工程」とも呼ばれる。このように巻き取られたシート31が、本発明の実施形態に適用可能なシート111となる。
【0066】
シート111(シート31)を巻き取った形態の紙ロール36は、本発明の実施形態に係るトイレットロール110を製造するための原反ロールとして用いることができる。
【0067】
(発明の達成手段)
ここで、本発明の実施形態に係るトイレットロール110の達成手段について説明する。
【0068】
(坪量の調整)
図2を参照して、トイレットペーパー113の坪量、すなわちシート111となるシート31の坪量は、ワイヤーパート40において、ヘッドボックス8から噴き付けるパルプスラリー9の量を変更することによって調整することができる。他の条件が同一の場合、噴き付けるパルプスラリー9の量が多いほど、坪量は大きくなる。
【0069】
(引張破断伸びの調整)
上述のトイレットペーパー113の乾燥引張破断伸びの値を達成する方法として、例えば、非限定的に、原反ロール製造工程においてシート111を抄造する際の、ジェットワイヤー比(J/W比)の調整、クレープ率の調整、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0070】
(J/W比の調整)
図2を参照して、ジェットワイヤー比(J/W比)の調整について説明する。
【0071】
(J/W比)
ジェットワイヤー比(J/W比)とは、ワイヤーパート40において、ヘッドボックス8からパルプスラリー9を噴き付ける際の噴出速度(抄き出し水流速度、スラリー供給速度ともいう)をジェット速度(J)とし、ワイヤーの走行速度をワイヤー速度(W)とした場合の、両者の速度比をいう。
【0072】
J/W比は、シート111(シート31)における繊維配向を管理する指標となる。ジェット速度(J)が遅くてワイヤー速度(W)が速ければ、J/W比は1未満となる。その反対に、ジェット速度(J)が速くてワイヤー速度(W)が遅ければ、J/W比は1より大きくなる。このいずれにおいても、形成されたシート111においてMD方向に繊維配向が生じやすい。これに対して、J/W比が1付近では、シート111における繊維配向は、比較的等方性を示す。
【0073】
本発明の実施形態では、ジェット速度およびワイヤー速度の一方または両方を調整することにより、J/W比を制御する。シート111のMD方向に繊維配向が生じないように、すなわちシート111における繊維配向が比較的等方性を示すように、J/W比が1に近づくようにJ/W比を制御する。J/W比が1に近いほど、トイレットペーパー113の長さ方向における引張破断伸びEmが大きくなる傾向にある。
【0074】
(クレープ率の調整)
図2を参照して、トイレットペーパー113のクレープ率、すなわちシート111(シート31)のクレープ率の調整にについて説明する。
【0075】
(クレープ率)
本実施形態におけるシート111(シート31)のクレープ率とは、抄紙機におけるヤンキードライヤー26と巻取リール34の周速差(巻取リール34の周速≦ヤンキードライヤー26の周速)に基づいて定義されるものであり、次式(I)によって算出される。
クレープ率(%)=100×(ヤンキードライヤーの周速(m/分)-巻取リールの周速(m/分))÷巻取リールの周速(m/分) ・・・(I)
【0076】
図2を参照して、具体的には、抄紙機1において、ヤンキードライヤー26の周速および巻取リール34の周速のうちのいずれか一方または両方を変動させることによって、得られるシート111(シート31)のクレープ率を調整することができる。
【0077】
シート111(シート31)のクレープ率が大きいほど、トイレットペーパー113の長さ方向における引張破断伸びEmが大きくなる傾向にある。上述のように、本発明の実施形態において、トイレットペーパー113の長さ方向における引張破断伸びEmは、15.0%より大きく30.0%以下であり、好ましくは、17.0%より大きく27.0%以下であり、より好ましくは、19.0%より大きく24.0%以下である。
【0078】
シート111のクレープ率を調整することで、かかる引張破断伸びEmを達成することができる。そのためのシート111のクレープ率は、例えば、15~30%とすることができる。例えば、シート111のクレープ率は、好ましくは28%以下であり、より好ましくは26%以下である。また、例えば、シート111シートのクレープ率は、好ましくは17%以上であり、より好ましくは20%以上である。
【0079】
以上のように、例えば、シート111を抄造する際のジェットワイヤー比(J/W比)の調整、クレープ率の調整、またはそれらの組み合わせ等の手段によって、本発明の実施形態に係るトイレットペーパー113の長さ方向の乾燥引張破断伸びを達成することができる。
【0080】
(引張強度の幾何平均の調整)
上述のトイレットペーパー113の乾燥引張強度の幾何平均の値を達成する方法として、例えば、繊維原料であるパルプ成分の配合割合の調整、原料パルプの叩解度の調整、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0081】
【0082】
【0083】
(作用効果)
本実施形態において、トイレットペーパー113の坪量は、12.0g/m2以上17.0g/m2以下であり、従来品と比べ、単プライのトイレットペーパーとしては比較的低めに設定されている。また、トイレットペーパー113は無エンボスであり、エンボスありの場合において見られ得る、嵩高化(エンボス凸部の存在による見かけ上の紙厚の増大)やトイレットペーパー113がロール状に巻き回されることによって生じるエンボス部の重なりによるトイレットロール110の巻径の増大が、見られない。そのため、本実施形態によれば、トイレットロール110の巻長を125m以上240m以下と長くしても、トイレットロール110の巻径DRを、一般的なホルダーに回転支持され得るような所定の範囲内に収めることができる。
【0084】
また、トイレットペーパー113は、上述のように、無エンボスであってエンボス加工は施されていない。そのため、エンボスありの場合と比べて、シートを構成するパルプの繊維間結合が緩んだり切れたりするような機械的ダメージを受ける機会が少なく、トイレットペーパー113の強度が向上する。
【0085】
【0086】
【0087】
したがって、本実施形態によれば、トイレットロールからトイレットペーパーを巻き解く際の破れにくさとトイレットペーパーの良好な肌触り感との両立が図られた、単プライのトイレットペーパーがロール状に巻き取られた、巻長の長いトイレットロールを提供することができる。
【0088】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。特段の記載のない限り、第1の実施形態に適用可能な構成、および作用効果の説明は、本実施形態に適用可能である。
【0089】
本発明の第2の実施形態に係るトイレットロール110は、トイレットペーパー113の幅方向における乾燥引張強度Tcと長さ方向における乾燥引張強度Tmとの比である引張強度の比Tc/Tmが、0.60以上0.90以下であることを特徴とする。引張強度の比Tc/Tmは、好ましくは、0.62以上0.88以下であり、より好ましくは、0.65以上0.85以下である。
【0090】
【0091】
そして、第2の実施形態においては、トイレットペーパー113の引張強度の比Tc/Tmは、0.60以上0.90以下である。すなわち、シート111(シート31)の抄紙方向(MD)と直交する方向(CD)に相当するトイレットペーパー113の幅方向における引張強度Tcは、概して、シート111(シート31)の抄紙方向(MD)に相当するトイレットペーパー113の長さ方向における引張強度Tmよりも小さいところ、トイレットペーパー113の幅方向における引張強度Tcの、長さ方向における引張強度Tmに対する比Tc/Tmが、従来品と比べて比較的高めに、1.0に近づくように設定されている。つまり、第2の実施形態の構成によれば、トイレットペーパー113の引張強度の等方性が向上する。
【0092】
したがって、第2の実施形態に係る構成によれば、トイレットロール110からトイレットペーパー113を巻き解く方向である長さ方向のみならず、それと交差する方向に加えられる力対しても、トイレットペーパー113は強度を示し、破れにくくなるという効果を奏し得る。これによれば、トイレットロール110からトイレットペーパー113を巻き解くときだけではなく、トイレットペーパー113で拭き取りを行うときにも、トイレットペーパー113は破れにくくなる。
【0093】
なお、本実施形態に係るトイレットペーパー113の引張強度の比Tc/Tmを達成するための手段としては、第1の実施形態と同様に、シート111を抄造する際の、J/W比の調整が挙げられる。具体的には、引張強度の等方性の向上を実現させるために、シート111における繊維配向の等方性を向上させるべく、J/W比が1付近となるように調整を行うことができる。
【0094】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。特段の記載のない限り、上述の実施形態に適用可能な構成、および作用効果の説明は、本実施形態に適用可能である。
【0095】
本発明の第3の実施形態に係るトイレットロール110において、トイレットペーパー113は、トイレットペーパー113の長さ方向における乾燥引張破断伸びEmとトイレットペーパー113の幅方向における乾燥引張破断伸びEcとの比である引張破断伸びの比Em/Ecが、4.5以上7.0以下であることを特徴とする。引張破断伸びの比Em/Ecは、好ましくは、5.0以上であり、より好ましくは、5.5以上である。
【0096】
トイレットペーパー113の幅方向における引張破断伸びEcは、第1の実施形態で説明したトイレットペーパー113の長さ方向における引張破断伸びEmと同様に、上述の引張破断伸びの測定方法に従って測定することができる。
【0097】
(作用効果)
第3の実施形態においては、トイレットペーパー113の引張破断伸びの比Em/Ecは、4.5以上7.0以下である。すなわち、シート111(シート31)の抄紙方向(MD)に相当するトイレットペーパー113の長さ方向における引張破断伸びEmの、シート111(シート31)の抄紙方向(MD)と直交する方向(CD)に相当するトイレットペーパー113の幅方向における引張破断伸びEcに対する比である引張破断伸びの比Em/Ecは、従来品と比べて、比較的大きくなっている。換言すれば、第3の実施形態の構成によれば、トイレットペーパー113は、長さ方向における伸び率が幅方向における伸び率に対して顕著に高くなっている
【0098】
かかる構成は、例えば、シート111(シート31)を抄造する際の、クレープ率の調整によって達成することができる。クレープ率は、第1の実施形態で説明したように、抄紙機1において、ヤンキードライヤー26の周速および巻取リール34の周速のうちのいずれか一方または両方を変動させることによって、調整することができる。
【0099】
シート111(シート31)のクレープ率が大きいほど、シート表面には、シート111の伸びを許容する構造となる皺や凹凸など(クレープ構造)が、数多くまたは深く形成され得る。概して、形成されたクレープ構造の数が多く、深さが深いほど、トイレットペーパー113の長さ方向における引張破断伸びEmは大きくなる傾向にある。一方、形成されたクレープ構造の数および深さが過度に増すと、トイレットペーパー113の肌触り感は悪化する傾向にある。
【0100】
トイレットペーパー113の引張破断伸びの比Em/Ecが4.5より小さいと、トイレットロール110からトイレットペーパー113を巻き解く際のトイレットペーパー113の意図しない破れが生じやすい。また、トイレットペーパー113の引張破断伸びの比Em/Ecが7.0より大きい場合は、トイレットペーパーの皺や凹凸が大きいことを示唆しており、肌触り感が劣ることとなる。
【0101】
トイレットペーパー113の引張破断伸びの比Em/Ecが4.5以上7.0以下であると、トイレットロール110からトイレットペーパー113を巻き解く際のトイレットペーパー113の意図しない破れの発生が防止されるとともに、トイレとペーパー113の良好な肌触り感を得ることができる。
【0102】
かかるトイレットペーパー113の引張破断伸びの比Em/Ecを達成するためのシート111のクレープ率は、例えば、15~30%とすることができる。例えば、シート111のクレープ率は、好ましくは28%以下であり、より好ましくは26%以下である。また、例えば、シート111シートのクレープ率は、好ましくは17%以上であり、より好ましくは20%以上である。
【実施例0103】
(実施例1~7)
以下の製造工程を経て、トイレットロールを製造した。
(a)
図2に示す抄紙機により、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP):広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)が30質量%:70質量%のパルプ組成を有する抄紙用スラリー(紙料)を用いてシート111を抄造して、原反ロール36を得た。
(b)原反ロール36を不図示の巻き取り機の巻き出し部に搭載し、原反ロール36から引き出したシート111の始端部を、ピックアップ糊を塗布した幅広の紙管114に押し当てて接着固定し、紙管114の周りにロール状に巻き取った。
(c)巻取長さが所定長に達した段階で、シート111の巻き取り終端を切断するとともに、シートの終端部をテールシール糊によりロール外周に接着固定して、幅広のトイレットロールを得た。
(d)幅広のトイレットロールを所定の幅寸法(114mm)に裁断して、単プライのトイレットペーパー113がロール状に巻き取られたトイレットロール110を製造した。
【0104】
(比較例1~6)
上述の実施例に対し、それぞれ以下の条件を異ならせて、比較例1~6のトイレットロールを製造した。
(比較例1)実施例1に対し、坪量を一定としたまま、シートにエンボスを付与した。
(比較例2)実施例1に対し、シートにエンボスを付与し、巻径を同一とするために坪量を下げた。
(比較例3)実施例1に対し、抄紙機におけるJ/W比による繊維配向の調整およびクレープ率の調整により、トイレットペーパーの長さ方向の引張破断伸びを低減させた。
(比較例4)実施例1に対し、抄紙機におけるJ/W比による繊維配向の調整およびクレープ率の調整により、トイレットペーパーの長さ方向の引張破断伸びを増大させた。
(比較例5)実施例1に対し、パルプ組成中のNBKPを増配し、また、パルプ叩解度を高めることによって、引張強度を増大させた。
(比較例6)実施例1に対し、パルプ組成中のNBKPを減配し、また、パルプ叩解度を低めることによって、引張強度を低減させた。
【0105】
製造された実施例および比較例のトイレットロールについて、以下の測定および評価を行った。なお、測定は、日本工業規格JIS P8111に準じた環境下(温度23±1°、湿度50±2%RH)で試料を調湿して行った。
【0106】
<測定>
〔トイレットロールの巻長[m]〕
製造されたトイレットロールからトイレットペーパーを巻きほどきつつ、トイレットペーパーの終端部から始端部までの紙管への巻き回しの長さを測定した。測定は0.5m刻みで行い端数は切り捨てた。
【0107】
〔トイレットロールの巻径[mm]〕
製造されたトイレットロールのロール外径をノギスにより測定し、小数点以下を四捨五入した。
【0108】
〔紙管のコア径[mm]〕
製造されたトイレットロールの紙管の外径をノギスにより測定し、小数点以下を四捨五入した。
【0109】
〔坪量[g/m2]〕
トイレットロールからトイレットペーパーを引き出して、日本工業規格JIS P8124の規定に従って、トイレットペーパーの1枚当たりの坪量を測定した。
【0110】
〔紙厚[μm]〕
トイレットロールからトイレットペーパーを引き出して、日本工業規格JIS P8118に従って、トイレットペーパー1枚当たりの紙厚を測定した。
【0111】
〔引張強度[N/15mm]〕
日本工業規格JIS P8113に準じて、測定方向と直交する方向の長さを15mmとした短冊状の試験片を切り出し、引張試験機「テンシロン万能材料試験機RTC1250」にて、スパン長を100mmとして引張試験を行って、トイレットペーパーの長さ方向および幅方向の引張強度をそれぞれ求めた。また、トイレットペーパーの長さ方向の引張強度と幅方向の引張強度との積の平方根を幾何平均とした。
【0112】
〔引張破断伸び[%]〕
上記引張試験にて、引張破断伸び(%)を計測して、これを伸びとした。
【0113】
<評価>
以下の項目について官能評価を行い、結果を5段階の数値で示した。評価の数値が大きいほど優れていることを示す(5:優~1:劣)。
【0114】
〔トイレットペーパーの肌触り感〕
トイレットペーパーを30人に触ってもらい、肌触り感の優劣の評価を受けた。
【0115】
〔トイレットペーパーの破れにくさ〕
トイレットペーパーを30人に触ってもらい、トイレットロールからトイレットペーパーを巻き解く「引き出し時」、および、トイレットペーパーを用いた「拭き取り動作時」のそれぞれにおいて、トイレットペーパーの破れにくさについての評価を受けた。
【0116】
表1および表2に、試験結果を示した。
【0117】
【0118】
【0119】
表1および表2に示されるように、実施例1から比較例6(全試料)はいずれも、単プライのトイレットペーパーがロール状に巻き取られたトイレットロールであった。
【0120】
本発明の実施形態に係る実施例1から7は、いずれも、巻長150mまたは132m、180mの長い巻長で115~117mmの巻径が達成されており、トイレットロールからトイレットペーパーを巻き解く際の「引き出し時」の破れにくさと、トイレットペーパーの肌触り感と、が共に良好であり、さらに、「拭き取り動作時」の破れにくさも良好であった。
【0121】
一方、実施例1に対し坪量を一定としたままシートにエンボスを付与した(比較例1)は、エンボス付与の影響により、巻径が125mと増大し、また、引張強度の幾何平均および官能試験における破れにくさが低く、強度の低下が見られた。
【0122】
実施例1に対し、シートにエンボスを付与し、巻径を同一とするために坪量を下げた(比較例2)は、低坪量化とエンボス付与との両方の影響により、引張強度の幾何平均が低く、また、破れにくさが非常に劣っていた。また、トイレットペーパーの長さ方向における引張破断伸びも、劣っていた。
【0123】
実施例1に対し、抄紙機におけるJ/W比による繊維配向の調整およびクレープ率の調整により、トイレットペーパーの長さ方向の引張破断伸びを低減させた(比較例3)は、トイレットペーパーの長さ方向(MD)の引張破断伸びが低いため、トイレットロールからトイレットペーパーを巻き解く「引き出し時」に、トイレットペーパーが破れやすかった。また、トイレットペーパーの長さ方向(MD)への繊維配向強度が高いため、トイレットペーパーの幅方向(CD)における乾燥引張強度Tcが低かった。したがって、トイレットペーパーの幅方向における乾燥引張強度Tcと長さ方向における乾燥引張強度Tmとの比である引張強度の比Tc/Tmも低く、および官能試験における拭き取り動作時にトイレットペーパーは破れやすかった。
【0124】
実施例1に対し、抄紙機におけるJ/W比による繊維配向の調整およびクレープ率の調整により、トイレットペーパーの長さ方向の引張破断伸びを増大させた(比較例4)は、クレープ率を高くしすぎたため、肌触り感が劣っていた。
【0125】
実施例1に対し、パルプ組成中のNBKPを増配し、また、パルプ叩解度を高めることによって、引張強度を増大させた(比較例5)は、針葉樹パルプ(N材)の増配および高いパルプ叩解度の影響でシートが硬くなり、肌触り感が悪化した。
【0126】
実施例1に対し、パルプ組成中のNBKPを減配し、また、パルプ叩解度を低めることによって、引張強度を低減させた(比較例6)は、比較例5とは反対に、肌触り感は良化したものの、非常に破れやすかった。
【0127】
(発明の用途)
上述の実施形態においてトイレットロール110は紙管114を有するものとして、本発明を説明した。しかしながら、本発明は、それに限定されず、紙管114を有さない無芯トイレットロールにも適用可能である。