(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022011483
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】ラミネート型蓄電デバイスの短絡検査方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20220107BHJP
H01M 50/10 20210101ALI20220107BHJP
H01M 50/172 20210101ALI20220107BHJP
H01G 13/00 20130101ALI20220107BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M2/02 K
H01M2/06 K
H01G13/00 361Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020112650
(22)【出願日】2020-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】395017380
【氏名又は名称】株式会社サンケイエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(72)【発明者】
【氏名】川岡 広和
(72)【発明者】
【氏名】加藤 真史
(72)【発明者】
【氏名】笠原 久芳
【テーマコード(参考)】
5E082
5H011
5H028
【Fターム(参考)】
5E082BC36
5E082MM35
5H011AA09
5H011AA12
5H011CC02
5H011CC06
5H011CC10
5H011DD14
5H011EE04
5H028AA06
5H028BB12
5H028CC05
5H028CC07
5H028CC08
5H028EE01
5H028EE06
(57)【要約】
【課題】ラミネート型蓄電デバイスの短絡検査の容易化
【解決手段】
検査工程は、第1ラミネートフィルム41と電極体20との短絡の有無を検査する第1工程と、第2ラミネートフィルム42と電極体20との短絡の有無を検査する第2工程とを含んでいる。第1工程では、合わせ面40cにおいて、第1ラミネートフィルム41の絶縁樹脂層52を貫通して第1ラミネートフィルム41の金属シート51に第1プローブが当てられる。第2工程では、第1ラミネートフィルム41を貫通して第2ラミネートフィルム42の金属シート51に、第1プローブ71または第2プローブ72が当てられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラミネート型蓄電デバイスを準備する工程と、
検査工程と、
を含み、
前記ラミネート型蓄電デバイスを準備する工程で準備される前記ラミネート型蓄電デバイスは、
電極体と、
第1ラミネートフィルムと、
第2ラミネートフィルムと
を備え、
前記電極体は、電極積層部と、前記電極積層部から延びた第1集電タブと、前記電極積層部から延びた第2集電タブとを有し、
前記第1ラミネートフィルムと前記第2ラミネートフィルムは、金属シートと、前記金属シートの外側面を覆う絶縁樹脂層と、前記金属シートの内側面を覆う熱可塑性樹脂層とをそれぞれ有し、
前記第1ラミネートフィルムは、前記電極積層部の積層方向の片側に重ねられ、前記第2ラミネートフィルムは、前記電極積層部の反対側に重ねられ、かつ、前記電極積層部の周囲において前記第1ラミネートフィルムと重ね合わせられており、
前記第1ラミネートフィルムと前記第2ラミネートフィルムとが重ね合わせられた合わせ面は、前記熱可塑性樹脂で接着されており、
前記第1集電タブと、前記第2集電タブは、前記合わせ面から前記第1ラミネートフィルムと前記第2ラミネートフィルムの外にはみ出ており、
前記検査工程は、前記第1ラミネートフィルムと前記電極体との短絡の有無を検査する第1工程と、前記第2ラミネートフィルムと前記電極体との短絡の有無を検査する第2工程とを含み、
前記第1工程は、
前記合わせ面において、前記第1ラミネートフィルムの絶縁樹脂層を貫通して前記第1ラミネートフィルムの金属シートに第1プローブを当てることと、
前記第1プローブと前記第1集電タブとの間の抵抗を測定することと、
前記第1プローブと前記第2集電タブとの間の抵抗を測定することと
を含み、
前記第2工程は、
前記第1工程で、前記第1ラミネートフィルムと前記電極体との短絡が無かった後で行なわれ、
前記第1ラミネートフィルムを貫通して前記第2ラミネートフィルムの金属シートに前記第1プローブを当てること、または、前記合わせ面において、前記第1ラミネートフィルムを貫通して前記第2ラミネートフィルムの金属シートに第2プローブを当てることと、
前記第1プローブと前記第2プローブとのうち前記第2ラミネートフィルムの金属シートに当てられたプローブと、前記第1集電タブとの間の抵抗を測定することと、
前記第1プローブと前記第2プローブとのうち前記第2ラミネートフィルムの金属シートに当てられたプローブと、前記第2集電タブとの間の抵抗を測定することと
を含む、ラミネート型電池の短絡検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラミネート型蓄電デバイスの短絡検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2016-31829号公報には、ラミネート外装材の外面の一部に耐熱性樹脂層が除去された通電用端子部を有する電気化学デバイスが開示されている。同公報では、かかる電気化学デバイスは、ラミネート外装材から引き出されたタブリードとの間で電気抵抗値を測定し、測定された電気抵抗値に基づいて外装体とデバイス本体との絶縁性が検査される、とされている。
【0003】
国際公開第2014/147808号では、発電要素の積層方向に沿って外装体を外側から加圧し、この加圧状態において、端子と金属層との間で絶縁不良検査を行う、フィルム外装電池の検査方法が開示されている。
【0004】
国際公開第2011/040446号では、金属端子と金属箔層との間の余白部分にインパルス電圧を印加し、金属端子と金属箔層間の静電容量に印加された電圧の波形を測定する工程が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-31829号公報
【特許文献2】国際公開第2014/147808号
【特許文献3】国際公開第2011/040446号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、本発明者は、特に、2枚のラミネートフィルムで挟むように電極体を覆い、その周囲にラミネートフィルムの合わせ面を有するラミネート型蓄電デバイスに対して、ラミネートフィルムからなる外装体と、ラミネートフィルムの合わせ面から出される集電タブとの間の短絡検査を実現できる適当な方法を提案したいと考えている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここで開示されるラミネート型蓄電デバイスの短絡検査方法は、ラミネート型蓄電デバイスを準備する工程と、検査工程とを含んでいる。
ラミネート型蓄電デバイスを準備する工程で準備される前記ラミネート型蓄電デバイスは、電極体と、第1ラミネートフィルムと、第2ラミネートフィルムとを備えている。電極体は、電極積層部と、電極積層部から延びた第1集電タブと、電極積層部から延びた第2集電タブとを有している。第1ラミネートフィルムと第2ラミネートフィルムは、金属シートと、金属シートの外側面を覆う絶縁樹脂層と、金属シートの内側面を覆う熱可塑性樹脂層とをそれぞれ有している。第1ラミネートフィルムは、電極積層部の積層方向の片側に重ねられ、第2ラミネートフィルムは、電極積層部の反対側に重ねられ、かつ、電極積層部の周囲において第1ラミネートフィルムと重ね合わせられている。第1ラミネートフィルムと第2ラミネートフィルムとが重ね合わせられた合わせ面は、熱可塑性樹脂で接着されている。第1集電タブと第2集電タブは、合わせ面から第1ラミネートフィルムと第2ラミネートフィルムの外にはみ出ている。検査工程は、第1ラミネートフィルムと電極体との短絡の有無を検査する第1工程と、第2ラミネートフィルムと電極体との短絡の有無を検査する第2工程とを含んでいる。
第1工程は、合わせ面において、第1ラミネートフィルムの絶縁樹脂層を貫通して第1ラミネートフィルムの金属シートに第1プローブを当てることと、第1プローブと第1集電タブとの間の抵抗を測定することと、第1プローブと第2集電タブとの間の抵抗を測定することとを含んでいる。第2工程は、第1工程で、第1ラミネートフィルムと電極体との短絡が無かった後で行なわれる。第1ラミネートフィルムを貫通して第2ラミネートフィルムの金属シートに第1プローブを当てること、または、合わせ面において、第1ラミネートフィルムを貫通して第2ラミネートフィルムの金属シートに第2プローブを当てることを含んでいる。第2工程は、さらに、第1プローブと第2プローブとのうち第2ラミネートフィルムの金属シートに当てられたプローブと、第1集電タブとの間の抵抗を測定することと、第1プローブと第2プローブとのうち第2ラミネートフィルムの金属シートに当てられたプローブと、第2集電タブとの間の抵抗を測定することとを含んでいる。
【0008】
かかる検査工程によって、ラミネート型蓄電デバイスの第1ラミネートフィルムおよび第2ラミネートフィルムと、2枚のラミネートフィルムの合わせ面から出される集電タブとが適切に絶縁されているか否かを適切に検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、ここで開示されるラミネート型蓄電デバイス10の一形態を示す模式的な平面図である。
【
図2】
図2は、ラミネート型蓄電デバイス10のII-II断面を模式的に示す模式図である。
【
図3】
図3は、第1プローブ71と第2プローブ72を示す側面図である。
【
図4】
図4は、短絡検査を行なう装置100の一実施形態を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、他の形態にかかるラミネート型蓄電デバイス10Aを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、ここで開示されるラミネート型蓄電デバイスの一実施形態を説明する。ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。本発明は、特に言及されない限りにおいて、ここで説明される実施形態に限定されない。
【0011】
図1は、ここで開示されるラミネート型蓄電デバイス10の一形態を示す模式的な平面図である。
図1では、第1ラミネートフィルム41が部分的に破断された状態で図示されている。また、
図1では、ラミネート型蓄電デバイス10は、載置台80の上に置かれている。
図2は、ラミネート型蓄電デバイス10のII-II断面を模式的に示す模式図である。
【0012】
本明細書において「ラミネート型蓄電デバイス」は、外装材にラミネートフィルムが用いられた蓄電デバイスをいう。「蓄電デバイス」とは、充電と放電を行なうことができるデバイスをいう。蓄電デバイスには、一般にリチウムイオン電池やリチウム二次電池などと称される電池の他、リチウムポリマー電池、リチウムイオンキャパシタなどが包含される。二次電池には、正負極間の電荷担体の移動に伴って繰り返しの充放電が可能な電池一般をいう。蓄電デバイスには、電解液が用いられていてもよいし、固体電解質が用いられていてもよい。例えば、二次電池は、いわゆる液系の電解液が用いられた二次電池でもよいし、固体電解質が用いられた、いわゆる全固体電池でもよい。
【0013】
ラミネート型蓄電デバイス10は、電極体20と、外装体40とを備えている。電極体20は、電極積層部21と、正極集電タブ22と、負極集電タブ23とを備えている。
【0014】
ここでは、電極積層部21は、ラミネート型蓄電デバイス10の発電要素となる構造である。電極積層部21は、例えば、正極シートと、負極シートとがセパレータを介して対向した状態で積層されている。正極シートは、正極集電体と、正極集電体に形成された正極活物質粒子を含む正極活物質層と備えている。負極シートは、負極集電体と、負極集電体に形成された負極活物質粒子を含む負極活物質層とを備えている。なお、電極積層部21の構造は、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー電池、リチウムイオンキャパシタなど蓄電デバイスの種類によって異なる。電極積層部21の構造は、特に限定されない限りにおいて適宜に変更されうる。ここでは、電極積層部21は、詳しい図示は省略する。
【0015】
正極集電タブ22は、電極積層部21の正極集電体と電気的に接続され、電極積層部21から延びている。負極集電タブ23は、電極積層部21の負極集電体と電気的に接続され、電極積層部21から延びている。この実施形態では、電極積層部21は略矩形であり、正極集電タブ22は、電極積層部21の一辺に設けられている。負極集電タブ23は、正極集電タブ22が設けられた一辺とは反対側の一辺に設けられている。これにより、正極集電タブ22と負極集電タブ23は、電極積層部21を挟んで互いに反対側に延びている。なお、正極集電タブ22と負極集電タブ23が、電極積層部21に設けられた位置や、電極積層部21から延びた方向なども、特に限定されない限りにおいて適宜に変更されうる。
【0016】
外装体40は、この実施形態では、2枚のラミネートフィルム41,42を備えている。第1ラミネートフィルム41および第2ラミネートフィルム42は、金属シート51と、金属シート51の外側面を覆う絶縁樹脂層52と、金属シート51の内側面を覆う熱可塑性樹脂層53とを有している。
【0017】
ここで、金属シート51は、ラミネートフィルム41,42において酸素や水分、電解液の侵入を阻止するガスバリア性を付与する役割を担っている。金属シート51は、アルミニウム箔、銅箔、ニッケル箔、ステンレス箔、あるいは、これらのクラッド箔、これらの焼鈍箔または未焼鈍箔等の金属の薄膜でありうる。また、金属シート51は、ニッケル、錫、銅、クロム等の導電性金属でめっきした金属箔であってもよい。また、金属シート51は、下地処理として化成皮膜が形成されていてもよい。化成皮膜は、金属シート51の表面に化成処理を施すことによって形成される皮膜である。化成処理には、例えば、クロメート処理、ジルコニウム化合物を用いたノンクロム型化成処理などが挙げられる。
【0018】
絶縁樹脂層52は、ラミネートフィルム41,42の外側の層である。絶縁樹脂層52は、絶縁性を有しており、かつ、熱可塑性樹脂層53を溶融させ、接着させる際に、溶融しない程度の融点を有している。絶縁樹脂層52に用いられる樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリエステル等、熱可塑性樹脂層53に用いられる樹脂よりも融点が十分に高い樹脂が挙げられる。絶縁樹脂層52には、これらの延伸フィルムが用いられうる。中でも、成形性および強度の観点で、二軸延伸ポリアミドフィルムまたは二軸延伸ポリエステルフィルム、あるいはこれらを含む複層フィルムが用いられうる。さらに二軸延伸ポリアミドフィルムと二軸延伸ポリエステルフィルムとが貼り合わされた複層フィルムが用いられてもよい。ポリアミドフィルムとしては、特に限定されるものではないが、例えば、6ナイロンフィルム、6,6ナイロンフィルム、MXDナイロンフィルム等が挙げられる。また、二軸延伸ポリエステルフィルムとしては、二軸延伸ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等が挙げられる。
【0019】
絶縁樹脂層52には、滑剤および/または固体微粒子が配合されていてもよい。滑剤および/または固体微粒子が配合されていることによって、絶縁樹脂層52の表面の滑り性が向上する。絶縁樹脂層52の厚さは、例えば、9μm~50μmでありうる。絶縁樹脂層52は、単層であってもよいし、強度等を上げるため多層に積層されていてもよい。
【0020】
熱可塑性樹脂層53は、金属シート51の内側に形成される層である。熱可塑性樹脂層53は、リチウムイオン二次電池等の蓄電デバイスで求められる腐食性に対しても優れた耐薬品性を具備しているとよい。また、熱可塑性樹脂層53は、ラミネートフィルム41,42の内側面が重ねられて接着される際に熱溶着されるものであり、ヒートシール性を備えている。
【0021】
熱可塑性樹脂層53には、耐薬品性およびヒートシール性の点で、ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン系共重合体、これらの酸変性物およびアイオノマーで構成されるのが好ましい。また、オレフィン系共重合体として、EVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体)、EAA(エチレン・アクリル酸共重合体)、EMAA(エチレン・メタアクリル酸共重合体)を例示できる。また、ポリアミドフィルム(例えば12ナイロン)やポリイミドフィルムも使用できる。熱可塑性樹脂層53は、例えば、熱可塑性樹脂未延伸フィルムでもよい。熱可塑性樹脂未延伸フィルムは、特に限定されるものではないが、耐薬品性およびヒートシール性の点で、ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン系共重合体、これらの酸変性物およびアイオノマーで構成されるのが好ましい。また、オレフィン系共重合体として、EVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体)、EAA(エチレン・アクリル酸共重合体)、EMAA(エチレン・メタアクリル酸共重合体)を例示できる。また、ポリアミドフィルム(例えば12ナイロン)やポリイミドフィルムも使用できる。熱可塑性樹脂層53は、表面の滑り性を高めるために滑剤および/または固体微粒子が配合されていてもよい。
【0022】
熱可塑性樹脂層53の厚さは、ピンホールの発生を十分に防止できる程度に設定されているとよい。かかる観点で、熱可塑性樹脂層53の厚さは、20μm以上であるとよい。また、樹脂使用量が低く抑えられるとよく、かかる観点で、熱可塑性樹脂層53の厚さは、100μm以下、例えば、80μm以下、好ましくは50μm以下であるとよい。熱可塑性樹脂層53は、単層であってもよいし、複層であってもよい。複層フィルムとして、ブロックポリプロピレンフィルムの両面にランダムポリプロピレンフィルムを積層した三層フィルムが例示されうる。
【0023】
第1ラミネートフィルム41と第2ラミネートフィルム42は、熱可塑性樹脂層53を対向させ、電極体20の電極積層部21を挟んでいる。電極積層部21の周囲には、第1ラミネートフィルム41の熱可塑性樹脂層53と第2ラミネートフィルム42の熱可塑性樹脂層53とが重ね合わされて接着された合わせ面40cを有している。合わせ面40cでは、2枚のラミネートフィルム41,42の熱可塑性樹脂層53が溶着している。
【0024】
この実施形態では、ラミネートフィルム41,42の金属シート51には、具体的な一例として、A8079,A8021(JIS H4160(1994))のような軟質アルミニウム箔が用いられている。ラミネートフィルム41,42の絶縁樹脂層52は、二軸延伸ナイロン(6ナイロン)の層からなる耐熱性を有する樹脂層とした。金属シート51と絶縁樹脂層52との接着には、ポリエチレンテレフタレートを用いた。絶縁樹脂層52が形成される側では、金属シート51は消し面とした。金属シート51と熱可塑性樹脂層53との接着には接着剤として変性ポリプロピレンが用いられた。熱可塑性樹脂層53が形成される側では、金属シート51はつや面とした。合わせ面40cでは、2枚のラミネートフィルム41,42の熱可塑性樹脂層53が重ねられて溶融されている。2枚のラミネートフィルム41,42の熱可塑性樹脂層53は、プレスされつつ、溶着される。このため、合わせ面40cの溶融後の熱可塑性樹脂層53は、2枚のラミネートフィルム41,42の熱可塑性樹脂層53を重ねた厚さよりも薄くなる。
【0025】
図1に示された形態では、2枚のラミネートフィルム41,42が用いられている。2枚のラミネートフィルム41,42の内側面は互いに対向している。2枚のラミネートフィルム41,42の内側面には、熱可塑性樹脂層53が形成されている。電極体20の電極積層部21は、2枚のラミネートフィルム41,42の間に挟まれ、2枚のラミネートフィルム41,42によって包まれている。正極集電タブ22と負極集電タブ23は、2枚のラミネートフィルム41,42の間からラミネートフィルム41の外にはみ出ている。なお、
図1に示された形態では、電極積層部21は、略矩形である。ラミネートフィルム41は、電極積層部21よりも一回り大きい矩形のシートである。正極集電タブ22と負極集電タブ23は、電極積層部21の対向する短辺から延びており、ラミネートフィルム41から外にはみ出ている。
【0026】
2枚のラミネートフィルム41,42の熱可塑性樹脂層53は、電極積層部21の周囲において合わせられ、熱融着されている。2枚のラミネートフィルム41,42の熱可塑性樹脂層53を合わせて熱溶着させた面は、合わせ面40cと称される。正極集電タブ22と負極集電タブ23は、合わせ面40cからラミネートフィルムの外にはみ出ている。
【0027】
正極集電タブ22と負極集電タブ23が2枚のラミネートフィルム41,42の合わせ面40cから外に出ている部位A,Bでは、正極集電タブ22と負極集電タブ23は、それぞれ2枚のラミネートフィルム41,42に挟まれている。当該部位A,Bでは、2枚のラミネートフィルム41が正極集電タブ22と負極集電タブ23に熱融着している。正極集電タブ22と負極集電タブ23が2枚のラミネートフィルム41から外に出ている部位A,Bでは、2枚のラミネートフィルム41,42の熱可塑性樹脂層53が正極集電タブ22と負極集電タブ23とに重ねられて熱溶着していることによって、ラミネート型蓄電デバイス10の気密性が確保されている。
【0028】
正極集電タブ22と負極集電タブ23がラミネートフィルム41から外に出ている部位A,Bでは、ラミネートフィルム41が正極集電タブ22または負極集電タブ23に十分に熱融着されている必要がある。これにより、当該部位A,Bにおいて、ラミネート型蓄電デバイス10の気密性が確保される。他方で、当該部位A,Bで、熱可塑性樹脂層53が溶けすぎると、2枚のラミネートフィルム41,42の金属シート51と正極集電タブ22または負極集電タブ23とが接触し、その結果、導通してしまう。ラミネート型蓄電デバイス10では、ラミネートフィルム41,42は、電極体20と絶縁されている必要がある。このため、ラミネートフィルム41,42が何れか一方でも、正極集電タブ22または負極集電タブ23と導通しているものは不良品とされる。
【0029】
本発明者は、かかるラミネート型蓄電デバイス10において、2枚のラミネートフィルム41,42と正極集電タブ22との間、および、2枚のラミネートフィルム41,42と負極集電タブ23との間で、それぞれ短絡の有無を確認することを考えている。この場合、短絡検査では、2枚のラミネートフィルム41,42の金属シート51に、それぞれプローブが当てられる必要がある。
【0030】
ラミネート型蓄電デバイスの短絡検査方法は、ラミネート型蓄電デバイスを準備する工程と、検査工程とを含んでいる。
【0031】
ラミネート型蓄電デバイスを準備する工程で準備されるラミネート型蓄電デバイス10は、
図1に示されているように、電極体20と、第1ラミネートフィルム41と、第2ラミネートフィルム42とを備えている。電極体20は、電極積層部21と、電極積層部21から延びた第1集電タブ(この実施形態では、正極集電タブ22)と、電極積層部から延びた第2集電タブ(この実施形態では、負極集電タブ23)とを有している。
【0032】
第1ラミネートフィルム41と第2ラミネートフィルム42は、金属シート51と、金属シート51の外側面を覆う絶縁樹脂層52と、金属シート51の内側面を覆う熱可塑性樹脂層53とをそれぞれ有している。
【0033】
第1ラミネートフィルム41は、電極積層部21の積層方向の片側に重ねられている。第2ラミネートフィルム42は、電極積層部21の反対側に重ねられている。第2ラミネートフィルム42は、さらに、電極積層部21の周囲において第1ラミネートフィルム41と重ね合わせられている。第1ラミネートフィルム41と第2ラミネートフィルム42とが重ね合わせられた合わせ面40cは、熱可塑性樹脂層53の熱可塑性樹脂で接着されている。第1集電タブ22と、第2集電タブ23は、合わせ面40cから第1ラミネートフィルム41と第2ラミネートフィルム42の外にはみ出ている。
【0034】
ここで、ラミネート型蓄電デバイス10は、外装材が、ラミネートフィルムである。このため、検査工程において、ラミネート型蓄電デバイス10を自立させて立てておくことは難しい。このため、ラミネート型蓄電デバイス10は、
図1に示されているように、載置台80に置かれた状態で短絡の有無が検査されることが想定される。
図1では、ラミネート型蓄電デバイス10は、第2ラミネートフィルム42を載置台80に向けて載置台80の上に置かれている。載置台80は、ラミネート型蓄電デバイス10を冷却する冷却機能を備えていてもよい。この場合、載置台80に向けられた第2ラミネートフィルム42側から、第2ラミネートフィルム42の金属シート51に到達するようにプローブを当てることが難しい。
【0035】
ここで開示される検査方法では、検査工程は、第1工程と、第2工程とを含んでいる。第1工程は、第1ラミネートフィルム41と電極体20との短絡の有無を検査する工程である。第2工程は、第2ラミネートフィルム42と電極体20との短絡の有無を検査する工程である。
【0036】
ここで、第1工程は、以下の1a~1cの工程を含んでいる。
1a)第1ラミネートフィルム41と第2ラミネートフィルム42の合わせ面40cにおいて、第1ラミネートフィルム41の絶縁樹脂層52を貫通して第1ラミネートフィルム41の金属シート51に第1プローブ71を当てる
1b)第1プローブ71と正極集電タブ22(第1集電タブ)との間の抵抗を測定する
1c)第1プローブ71と負極集電タブ23(第2集電タブ)との間の抵抗を測定する
【0037】
第2工程は、第1工程で、第1ラミネートフィルム41と電極体20との短絡が無かった後で行なわれる。第2工程は、以下の2a~2cの工程を含んでいる。
2a)第1ラミネートフィルム41を貫通して第2ラミネートフィルム42の金属シート51に第1プローブ71を当てること、または、合わせ面40cにおいて、第1ラミネートフィルム41を貫通して第2ラミネートフィルム42の金属シート51に第2プローブ72を当てる
2b)第1プローブ71と第2プローブ72とのうち第2ラミネートフィルム42の金属シート51に当てられたプローブと、正極集電タブ22(第1集電タブ)との間の抵抗を測定する
2c)第1プローブ71と第2プローブ72とのうち第2ラミネートフィルム42の金属シート51に当てられたプローブと、負極集電タブ23(第2集電タブ)との間の抵抗を測定する
【0038】
図1では、第1プローブ71,第2プローブ72,第3プローブ73および第4プローブ74が、ラミネート型蓄電デバイス10に当てられるまたは取付けられる位置が模式的に示されている。
【0039】
〈第3プローブ73,第4プローブ74〉
第3プローブ73は正極集電タブ22に取付けられる。第4プローブ74は、負極集電タブ23に取付けられる。第3プローブ73と第4プローブ74とは、それぞれ正極集電タブ22や負極集電タブ23を挟むクリップで構成されていてもよい。
【0040】
〈第1プローブ71,第2プローブ72〉
図3は、第1プローブ71と第2プローブ72が図示された側面図である。第1プローブ71は、
図3に示されているように、合わせ面40cにおいて、第1ラミネートフィルム41の絶縁樹脂層52を貫通して第1ラミネートフィルム41の金属シート51に当てられるプローブである。第1プローブ71は、合わせ面40cにおいて、第1ラミネートフィルム41を貫通し、第2ラミネートフィルム42の金属シート51に到達するように構成されていてもよい。
【0041】
第2プローブ72は、
図3に示されているように、第1ラミネートフィルム41を貫通し、第2ラミネートフィルム42の金属シート51に当てられるプローブである。第1プローブ71と第2プローブ72は、それぞれ針状の部材であるとよい。第1プローブ71が第1ラミネートフィルム41の金属シート51に当てられる位置は、
図1に示されているように、第1ラミネートフィルム41と第2ラミネートフィルム42の合わせ面40cから正極集電タブ22がはみ出た辺の片側に設けられている。第2プローブ72は、第1プローブ71とは別の位置において第1ラミネートフィルム41側から合わせ面40cに突き当てられる。
【0042】
図3に示された形態では、第1プローブ71と第2プローブ72とが用意されている。第1プローブ71は、第1ラミネートフィルム41の絶縁樹脂層52を貫通して金属シート51に突き当てられる。第2プローブ72は、第1ラミネートフィルム41を貫通して第2ラミネートフィルム42の金属シート51に突き当てられている。
【0043】
第1プローブ71と第2プローブ72は、軸部71a,72aと、軸部71a,72aの先端に設けられた尖った針部71b,72bをそれぞれ有している。
【0044】
第1プローブ71の針部71bは、例えば、円錐状であるとよい。第1プローブ71の針部71bは、予め定められた圧力で、第1ラミネートフィルム41の絶縁樹脂層52に押し当てられた際に、絶縁樹脂層52には突き刺さり、金属シート51に到達するが、金属シート51を突き破らない程度に先端の、いわゆるテーパ角度が設定されているとよい。かかる観点で、例えば、第1プローブ71の針部71bは、テーパ角度が90度程度の円錐形状であってもよい。この場合、第1プローブ71の先端のテーパ角度が、尖りすぎていないので、第1プローブ71を突き刺す際の圧力調整が容易である。かかる観点で、第1プローブ71の先端のテーパ角度は、80度~120度程度であってもよい。
【0045】
これに対して、第2プローブ72は、第1ラミネートフィルム41を貫通するため、第1プローブ71よりも鋭く尖った針部72bを備えていてもよい。かかる観点で、例えば、第1プローブ71の針部71bは、テーパ角度が30度程度の円錐形状であってもよい。かかる観点で、第2プローブ72の針部72bの先端のテーパ角度は、20度~60度程度であってもよい。
図3は、第1プローブ71と第2プローブ72を模式的に示しており、第1プローブ71と第2プローブ72の具体的な形状は、必ずしも
図3に示された形態に限定されない。
【0046】
第2プローブ72の針部72bは、
図3に示されているように、合わせ面40cにおいて、第1ラミネートフィルム41を貫通して第2ラミネートフィルム42の金属シート51に当てられる。第2プローブ72が合わせ面40cに押し付けられる際の力は、例えば、機械的あるいは電気的に制御されるとよい。これによって、第2プローブ72の針部72bが、合わせ面40cに予め定められた圧力で押し当てられる。その結果、針部72bは、第2ラミネートフィルム42の絶縁樹脂層52を貫通し、金属シート51に到達する。なお、第1プローブ71や第2プローブ72が押し当てられる位置では、合わせ面40cの背面(第2ラミネートフィルム42側の側面)に、合わせ面40cを支持する受け台81が設けられていてもよい。かかる受け台81が設けられていると、背面において合わせ面40cが安定して支持されるので、第1プローブ71や第2プローブ72を適切に金属シート51に到達させることができる。
【0047】
この検査方法によれば、短絡検査では、第2工程では、第2プローブ72が第1ラミネートフィルム41を貫通する。このとき、第2プローブ72は、第2ラミネートフィルム42の金属シート51だけでなく、第1ラミネートフィルム41の金属シート51に導通した状態となりうる。このため、第2工程は、第1工程で、第1ラミネートフィルム41と正極集電タブ22および負極集電タブ23との短絡が無かったと判定された後で行なわれるとよい。換言すると、第2ラミネートフィルム42の短絡を検査する第2工程は、第1ラミネートフィルム41と電極体20との短絡が無かったと判定された後で行なわれるとよい。ここで、短絡していないことは、適宜に絶縁されていることと言い換えられうる。第2工程は、第1工程で、第1ラミネートフィルム41と電極体20とが絶縁されていると判定された後で行なわれるとよい。
【0048】
図3に示されているように、第1工程では、第1ラミネートフィルム41の金属シート51に第1プローブ71が当てられる。そして、第1プローブ71と正極集電タブ22との間の抵抗が測定されることと、第1プローブ71と負極集電タブ23との間の抵抗が測定されることとによって、第1ラミネートフィルム41と電極体20との短絡の有無が判定される。第2工程では、合わせ面40cにおいて、第1ラミネートフィルム41を貫通して第2ラミネートフィルム42の金属シート51に第2プローブ72が当てられる。第2工程では、第2プローブ72と、正極集電タブ22との間の抵抗が測定されることと、第2プローブ72と、負極集電タブ23との間の抵抗が測定されることとによって、第2ラミネートフィルム42と電極体20との短絡の有無が判定される。
【0049】
〈短絡検査を行なう装置100〉
図4は、短絡検査を行なう装置100の一実施形態を示すブロック図である。短絡検査を行なう装置100は、接続される端子台101と、配線チェッカー102,103と、スイッチボックス104と、テスタ105とを備えている。
【0050】
端子台101は、第1プローブ71~第6プローブ76が接続される所定の端子を備えている。ここで、第5プローブは、第1ラミネートフィルム41の金属シート51の電位を測るためのプローブであり、第1プローブ71とは別に設けられる。第6プローブは、第2ラミネートフィルム42の金属シート51の電位を測るためのプローブであり、第2プローブ72とは別に設けられる。
【0051】
第1プローブ71が第1ラミネートフィルム41の金属シート51に到達したこと、および、第2プローブ72が第2ラミネートフィルム42の金属シート51に到達したことは、それぞれ配線チェッカー102,103によって検知できる。配線チェッカー102,103は、例えば、第1プローブ71や第2プローブ72とは別の部位で、第1ラミネートフィルム41の金属シート51の電位を測る第5プローブ75を用意する。また、第1プローブ71や第2プローブ72とは別の部位で、第2ラミネートフィルム42の金属シート51の電位を測る第6プローブ76を用意する。
【0052】
〈配線チェッカー102,103〉
配線チェッカー102は、第1プローブ71と第5プローブ75との電位差を検査する。第1プローブ71と第5プローブ75との電位差が0になった時に、第1プローブ71が、第1ラミネートフィルム41の金属シート51に到達したことが判定される。配線チェッカー103は、第2プローブ72と第6プローブ76との電位差を検査する。第2プローブ72と第6プローブ76との電位差が0になった時に、第2プローブ72が、第1ラミネートフィルム41の金属シート51に到達したことが判定される。例えば、配線チェッカー102による判定によって、第1プローブ71が第1ラミネートフィルム41の金属シート51に電気的に接続されていることが把握されうる。第2プローブ72が第2ラミネートフィルム42の金属シート51に電気的に接続されていることが、把握されうる。
【0053】
〈スイッチボックス104〉
スイッチボックス104は、第1プローブ71~第4プローブ74と、テスタ105との接続を切り替える装置である。スイッチボックス104によって、第1プローブ71と第2プローブ72、第3プローブ73と第4プローブ74において、テスタ105に接続されるプローブが選択的に切り替えられる。この実施形態では、スイッチボックス104は、スイッチ104a,104bを備えている。スイッチ104aは、第1プローブ71と第2プローブ72の何れかがテスタ105の第1端子105aに接続されるように、テスタ105の第1端子105aに接続されるプローブを切り替える装置である。スイッチ104bは、第3プローブ73と第4プローブ74の何れかがテスタ105の第2端子105bに接続されるように、テスタ105の第2端子105bに接続されるプローブを切り替える装置である。
【0054】
テスタ105は、第1端子105aと第2端子105bとの間の抵抗を検出する装置である。例えば、第1プローブ71と第3プローブ73がテスタ105に接続されると、第1ラミネートフィルム41の金属シート51と正極集電タブ22との間の抵抗が検出される。所要の抵抗が確認されると、第1ラミネートフィルム41と正極集電タブ22とが絶縁されていると判定される。第1ラミネートフィルム41の金属シート51と正極集電タブ22との間に十分な抵抗が確認されないと、第1ラミネートフィルム41と正極集電タブ22との短絡が疑われる。
【0055】
スイッチ105bが切り替えられると、第1プローブ71と第4プローブ74がテスタ105に接続される。これにより、第1ラミネートフィルム41の金属シート51と負極集電タブ23との間の抵抗が検出される。所要の抵抗が確認されると、第1ラミネートフィルム41と負極集電タブ23とが絶縁されていると判定される。第1ラミネートフィルム41の金属シート51と負極集電タブ23との間に十分な抵抗が確認されないと、第1ラミネートフィルム41と負極集電タブ23との短絡が疑われる。
【0056】
スイッチ105aが切り替えられると、テスタ105の第1端子105aが第2プローブ72に接続される。これにより、さらにスイッチ105bが操作されることによって、第2ラミネートフィルム42の金属シート51と正極集電タブ22との抵抗、および、第2ラミネートフィルム42の金属シート51と負極集電タブ23との抵抗が順に検出される。このとき何れも所要の抵抗が確認されると、第2ラミネートフィルム42が、正極集電タブ22および負極集電タブ23とが絶縁されていると判定される。何れかにおいて十分な抵抗が確認されないと、正極集電タブ22と負極集電タブ23とのうち十分な抵抗が確認されなかった集電タブと、第2ラミネートフィルム42との短絡が疑われる。
【0057】
ここで開示される検査方法では、第1工程では、スイッチ105aは、テスタ105の第1端子105aに第1プローブ71を接続しているとよい。第2工程では、スイッチ105aは、テスタ105の第1端子105aに第2プローブ72を接続しているとよい。これにより、第1工程において、第1ラミネートフィルム41と電極体20とが絶縁されているか否かが検査でき、第2工程において、第2ラミネートフィルム42と電極体20とが絶縁されているか否かが検査できる。
【0058】
ここで、検査方法の変形例として、第2工程では、第1工程で用いられた第1プローブ71を、さらに第1ラミネートフィルム41を貫通させて、第2ラミネートフィルム42の金属シート51に当ててもよい。この場合、第1プローブ71は、
図3に示された第2プローブ72のように、第1ラミネートフィルム41を貫通して第2ラミネートフィルム42の金属シート51に到達している。この場合、第2工程では、第2ラミネートフィルム42に到達した第1プローブ71と、正極集電タブ22との間の抵抗を測定することと、当該第1プローブ71と、負極集電タブ23との間の抵抗を測定することとが行なわれるとよい。これにより、第2工程において、第2ラミネートフィルム42と電極体20とが絶縁されているか否かが検査できる。この場合、第1プローブ71は、第1ラミネートフィルム41を貫通しうるように、針部71bが尖っているとよい。
【0059】
この場合、第1工程と第2工程とで、第1プローブ71が、合わせ面40cに突き刺さる量が制御されるとよい。例えば、第1プローブ71を押し付ける圧力で、第1プローブ71距離が変更されてもよい。例えば、第1工程では、第1プローブ71が第1ラミネートフィルム41の絶縁樹脂層52を貫通し、第1ラミネートフィルム41の金属シート51に到達するが、当該金属シート51を貫通しない程度の圧力で合わせ面40cに押し付けられるとよい。また、第2工程では、第1ラミネートフィルム41を貫通し、さらに第2ラミネートフィルム42の金属シート51に到達しうる程度の圧力で、第1プローブ71が合わせ面40cに押し付けられる。このように、第1プローブ71は、合わせ面40cに押し付けられる圧力によって制御されてもよい。第1プローブ71は、合わせ面40cに押し付けられる圧力は、バネなどを適宜に介在させて機械的に制御されてもよい。
【0060】
また、第1プローブ71は、合わせ面40cに突き刺された距離で制御されてもよい。例えば、第1プローブ71の軸部71aに鍔を設けておき、針部71bが合わせ面40cに突き刺さる距離が設定されるように構成されてもよい。この場合、第1工程では、第1プローブ71の針部71bの先端が、第1ラミネートフィルム41の金属シート51には到達するが、第2ラミネートフィルム42の金属シート51には、届かないように第1プローブ71に鍔が設けられているとよい。そして、第2工程では、当該鍔が取り外されて、第1プローブ71の針部71bが第2ラミネートフィルム42の金属シート51に到達するように構成されていてもよい。
【0061】
図5は、他の形態にかかるラミネート型蓄電デバイス10Aを示す平面図である。
図5に示されたラミネート型蓄電デバイス10Aは、第1ラミネートフィルム41と第2ラミネートフィルム42の合わせ面40cが形成された辺のうち、同じ辺に正極集電タブ22と負極集電タブ23がはみ出ている。このように、ラミネート型蓄電デバイス10Aの構造は、
図1に開示された形態に限定されない。また、
図5に示されたラミネート型蓄電デバイス10Aでは、合わせ面40cは、電極体20を収容した周りにおいて外側に余分に延びた部位40c1,40c2を有している。この場合、第1ラミネートフィルム41に突き刺す第1プローブ71と、第2ラミネートフィルム42に突き刺す第2プローブ72が押し当てられる部位は、合わせ面40cの当該外側に余分に延びた部位40c1,40c2に設けられてもよい。当該外側に余分に延びた部位40c1,40c2に第1プローブ71と第2プローブ72が当てられることによって、第1ラミネートフィルム41と第2ラミネートフィルム42に傷が生じてもラミネート型蓄電デバイス10に問題が生じにくい。
【0062】
外側に余分に延びた部位40c1,40c2は、第1ラミネートフィルム41と、第2ラミネートフィルム42の短絡検査後に切断し、除去されてもよい。また、ラミネート型蓄電デバイス10は、複数のデバイス10が所定のケースに収納され、適宜に組み合わされることによって、1つの蓄電デバイスモジュールを構成することができる。この場合、モジュール毎に電圧と温度を関しするモニターユニットを実装したり、モジュール毎に充放電回路が搭載されていたりしてもよい。かかる蓄電デバイスモジュールは、モジュール毎に所定の電圧が出力されるように構成され、例えば、電動車両の車両駆動用電源として、車載されうる。この際、蓄電デバイスモジュールでは、ケースに収納されたラミネート型蓄電デバイス10は、上述したように合わせ面40cから外側に余分に延びた部位40c1,40c2を備えていてもよい。そして、蓄電デバイスモジュールにおいて、各ラミネート型蓄電デバイス10の外側に余分に延びた部位40c1,40c2に第1プローブ71と第2プローブ72が当てられてもよい。この場合、蓄電デバイスモジュールは、蓄電デバイスモジュールに組み込まれた状態で、各ラミネート型蓄電デバイス10のラミネートフィルム41の短絡不良が検出されるように構成されうる。
【0063】
なお、ラミネート型蓄電デバイス10の形状、正極集電タブ22や負極集電タブ23がラミネートフィルム41からはみ出た位置や、外側に余分に延びた部位40c1,40c2が設けられる位置などは、種々変更されうる。
【0064】
以上、ここで開示されるラミネート型蓄電デバイスの短絡検査方法について、種々説明した。特に言及されない限りにおいて、ここで挙げられたラミネート型蓄電デバイスの短絡検査方法の実施形態などは、本発明を限定しない。また、ここで提案されるラミネート型蓄電デバイスの短絡検査方法は、種々変更でき、特段の問題が生じない限りにおいて、各構成要素やここで言及された各処理は適宜に省略され、または、適宜に組み合わされうる。
【符号の説明】
【0065】
10,10A ラミネート型蓄電デバイス
20 電極体
21 電極積層部
22 第1集電タブ(正極集電タブ)
23 第2集電タブ(負極集電タブ)
40 外装体
40c 合わせ面
41 第1ラミネートフィルム
42 第2ラミネートフィルム
51 金属シート
52 絶縁樹脂層
53 熱可塑性樹脂層
71 第1プローブ
72 第2プローブ
73 第3プローブ
74 第4プローブ