(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114841
(43)【公開日】2022-08-08
(54)【発明の名称】治具ユニット搬送機能を有する作業装置
(51)【国際特許分類】
B29C 70/54 20060101AFI20220801BHJP
B25J 13/00 20060101ALI20220801BHJP
F17C 1/06 20060101ALI20220801BHJP
F16J 12/00 20060101ALI20220801BHJP
B29C 70/32 20060101ALI20220801BHJP
B29C 70/16 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
B29C70/54
B25J13/00 Z
F17C1/06
F16J12/00 A
B29C70/32
B29C70/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021011295
(22)【出願日】2021-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 展英
(72)【発明者】
【氏名】吉川 桂介
(72)【発明者】
【氏名】近藤 拓也
【テーマコード(参考)】
3C707
3E172
3J046
4F205
【Fターム(参考)】
3C707CT02
3C707DS01
3C707ES03
3C707JS02
3E172BA01
3E172BB03
3E172BB12
3E172BB17
3E172BC04
3E172CA22
3E172DA36
3J046AA14
3J046BA03
3J046EA10
4F205AD16
4F205AG07
4F205AH55
4F205HA02
4F205HA37
4F205HK23
4F205HL02
4F205HT22
(57)【要約】
【課題】対象物に対して所定作業が行われた状態とすることを容易に実現できる作業装置を提供する。
【解決手段】作業装置1は、対象物T,Eの所定位置60に形成された係止凹所62に対して係脱可能な解除ボタン付きボールロックピン30、及び、受動的に所定作業を行う作業要素40を有する治具ユニット20と、治具ユニット20の把持と解放を行う把持機構70、把持機構70を移動することにより治具ユニット20を対象物T,Eの所定位置60に搬送する搬送機構17a、及び、把持機構70に把持された治具ユニット20におけるボールロックピン30の解除ボタン35を押圧可能な押圧機構80を有する搬送ユニット17とを備える。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の所定位置に形成された係止凹所に対して係脱可能な解除ボタン付きボールロックピン、及び、受動的に所定作業を行う作業要素を有する治具ユニットと、
前記治具ユニットの把持と解放を行う把持機構、前記把持機構を移動することにより前記治具ユニットを前記対象物の前記所定位置に搬送する搬送機構、及び、前記把持機構に把持された前記治具ユニットにおける前記ボールロックピンの解除ボタンを押圧可能な押圧機構、を有する搬送ユニットと、
を備える、治具ユニット搬送機能を有する作業装置。
【請求項2】
前記作業装置は、さらに、
前記治具ユニットとは異なる位置に設けられ、前記作業要素に対して前記所定作業を行わせる作業機構を備える、請求項1に記載の治具ユニット搬送機能を有する作業装置。
【請求項3】
前記治具ユニットは、さらに、前記対象物の前記所定位置に形成された位置決め要素に対して位置決め可能な被位置決め要素を備え、
前記治具ユニットは、前記ボールロックピンが前記係止凹所に係止されると共に、前記被位置決め要素が前記位置決め要素に位置決めされることにより、前記対象物の前記所定位置に固定される、請求項1又は2に記載の治具ユニット搬送機能を有する作業装置。
【請求項4】
前記治具ユニットの前記被位置決め要素及び前記対象物の前記位置決め要素は、前記ボールロックピンが前記係止凹所に係止された状態において、前記治具ユニットが前記ボールロックピンの中心軸回りに回転することを規制する、請求項3に記載の治具ユニット搬送機能を有する作業装置。
【請求項5】
前記対象物の前記位置決め要素は、
前記ボールロックピンが前記係止凹所に係止された状態において前記ボールロックピンの中心軸に直交する座面と、
前記座面に連続して形成され前記座面に対して角度を有する肩面と、
を備え、
前記治具ユニットの前記被位置決め要素は、前記ボールロックピンが前記係止凹所に係止された状態において、前記対象物の前記座面に当接する第一当接面、及び、前記対象物の前記肩面に当接する第二当接面を有する、請求項4に記載の治具ユニット搬送機能を有する作業装置。
【請求項6】
前記作業装置は、前記対象物に繊維を巻き付けるフィラメントワインディング装置であり、
前記治具ユニットの前記作業要素は、前記所定作業として前記繊維の巻き始め端を把持し、
前記搬送ユニットの前記搬送機構は、前記治具ユニットの前記作業要素により予め前記繊維の巻き始め端が把持された状態で、前記治具ユニットを前記対象物の前記所定位置に搬送する、請求項1-5の何れか1項に記載の治具ユニット搬送機能を有する作業装置。
【請求項7】
前記対象物は、燃料電池用の燃料タンクライナ又は前記燃料タンクライナに接続されたエクステンション部材である、請求項6に記載の治具ユニット搬送機能を有する作業装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治具ユニット搬送機能を有する作業装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池用の燃料タンクライナに繊維を巻き付けるフィラメントワインディングに関する技術が、特許文献1,2に記載されている。特許文献1には、繊維の巻き始め端を燃料タンクライナの口金に固定し、その後にライナの外周面に繊維を巻き付けることが記載されている。例えば、ピンと口金の穴との間に繊維の巻き始め端を位置決めして、ピンを口金の穴に差し込むことによって繊維の巻き始め端が口金に固定される。さらに、特許文献1には、ロボットマニピュレータにより自動で行うことができると記載されている。
【0003】
特許文献2には、燃料タンクライナを転がすことにより、口金に繊維の巻き始め端を巻き付けることについて記載されている。また、特許文献3,4には、ロボットマニピュレータのエンドエフェクタが交換可能であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-174554号公報
【特許文献2】特開2017-87663号公報
【特許文献3】特開昭61-265290号公報
【特許文献4】特開2004-106104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
繊維の巻き始め端を燃料タンクライナの口金に固定するために、特許文献1に記載の技術では、繊維の巻き始め端を口金付近に位置決めすると共に、ピンを口金に差し込むことが必要となる。このような動作をロボットマニピュレータ等により自動で行うためには、口金付近にて、ロボットマニピュレータのエンドエフェクタによって繊維の位置決め作業とピンの差し込み作業とを行うことになる。
【0006】
そのため、エンドエフェクタの構造が複雑となると共に、口金付近にエンドエフェクタによる作業スペースを確保する必要がある。口金付近に、ロボットマニピュレータのエンドエフェクタの作業スペースを十分に確保することは、容易ではない。従って、口金付近における作業は、簡易な作業とすることが求められる。
【0007】
特許文献2に記載の技術においては、燃料タンクライナを転がすことを可能とする構造が必要となり、フィラメントワインディング装置の設計変更が必要となり、容易に採用することができない。
【0008】
また、繊維の巻き始め端を口金付近に固定された状態にするという目的の他にも、所定の対象物に対して所定作業が行われた状態とすることについて、種々のニーズが存在する。
【0009】
本発明は、対象物に対して所定作業が行われた状態とすることを容易に実現できる作業装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
作業装置は、治具ユニット搬送機能を有する。作業装置は、治具ユニットと、搬送ユニットとを備える。治具ユニットは、対象物の所定位置に形成された係止凹所に対して係脱可能な解除ボタン付きボールロックピンと、受動的に所定作業を行う作業要素とを有する。搬送ユニットは、前記治具ユニットの把持と解放を行う把持機構と、前記把持機構を移動することにより前記治具ユニットを前記対象物の前記所定位置に搬送する搬送機構と、前記把持機構に把持された前記治具ユニットにおける前記ボールロックピンの解除ボタンを押圧可能な押圧機構とを有する。
【0011】
当該作業装置によれば、対象物に対して所定作業が行われた状態にするために、治具ユニットを利用している。当該作業装置によれば、搬送ユニットによって、治具ユニットを対象物の所定位置に搬送することができると共に、治具ユニットを対象物の所定位置に係脱可能とすることができる。治具ユニットは、解除ボタン付きボールロックピンを有しており、当該ボールロックピンによって対象物に対する係脱が容易となる。さらに、治具ユニットは、作業要素を有しており、当該作業要素は、受動的に所定作業を行う。従って、治具ユニットの作業要素は、能動的アクチュエータを有しておらず、治具ユニットは、小型な構成とすることが可能となる。
【0012】
そして、対象物に対して所定作業が行われた状態とするために、上記作業装置によれば、治具ユニットの作業要素に予め所定作業を行わせていれば、搬送ユニットにより治具ユニットを対象物に搬送することのみで足りる。対象物の所定位置付近において、治具ユニットに対する所定作業を行う必要がなく、対象物から離れた位置において、治具ユニットに対する所定作業を行うことが可能となる。対象物の所定位置付近において、所定作業を行う必要がないため、対象物付近にスペースを大きく確保する必要がない。つまり、作業装置の小型化が可能となる。また、ボールロックピンを採用することにより、治具ユニットを対象物に固定するために要する時間も短くなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】作業装置の例としてのフィラメントワインディング装置の平面図である。
【
図2】作業装置を構成する治具ユニットを示す斜視図である。
【
図3】
図2の治具ユニットをIII方向から見た図である。
【
図4】解除ボタンを押圧した状態の治具ユニットを示す図(
図2の前側から見た図)である。
【
図5】揺動レバーの後端を押圧した状態の治具ユニットを示す図(
図2の前側から見た図)である。
【
図7】対象物の例としての燃料タンクライナおよびエクステンション部材を示す部分斜視図である。
【
図8】対象物の所定位置(取付部)に、治具ユニットを取り付けた状態を示す部分断面図である。
【
図9】搬送ユニットの先端部分を示し、搬送機構、治具用ツール及びカッタツールを示す部分斜視図である。
【
図10】フィラメントワインディング装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(1.作業装置の概要)
作業装置は、治具ユニットを備えており、当該治具ユニットを搬送する機能を有する。治具ユニットは、受動的に所定作業を行う作業要素を有する。所定作業は、例えば、部材を把持する作業等を含む。具体例として、所定作業は、繊維を把持する作業、金属や樹脂等の部材を把持する作業等である。
【0015】
治具ユニットの作業要素は、受動的に所定作業を行うため、能動的アクチュエータを備えない。つまり、治具ユニットの作業要素は、他の装置から操作をされなければ、所定作業の動作を行うことができず、所定作業を行っていない状態と所定作業を行った状態との何れか一方を維持するだけである。作業要素は、例えば、バネやゴム等の弾性体のように、能動的なアクチュエータによらずにそれ自身の弾性力によって復元力を有する材料を利用することができる。
【0016】
例えば、作業要素が部材を把持する作業を行う場合には、作業要素は、他の装置の操作によって部材を把持する動作を行い、その後は、他の装置によって操作されなければ部材を把持した状態を維持し続ける。そして、作業装置は、治具ユニットを搬送する機能を有することから、治具ユニットの作業要素が部材を把持した状態で、治具ユニットを搬送することができる。
【0017】
作業装置は、搬送ユニットを備えており、当該搬送ユニットが、治具ユニットを把持すると共に治具ユニットを搬送する機能を有する。上述したように、治具ユニットの作業要素は、受動的に所定作業を行うため、他の装置の操作によってしか所定作業の動作を行うことができない。そこで、搬送ユニットが、当該他の装置として機能し、治具ユニットの作業要素に対する作業を行う。
【0018】
また、作業装置や搬送ユニット等の装置や機構には、制御部が設けられている。制御部は、CNC(Computerized Numerical Control)やPLC(Programmable Logic Controller)等を適用することができ、CPU等の演算処理装置、メモリ等の記憶装置、外部機器と通信するインターフェース等を備えている。
【0019】
(2.フィラメントワインディング装置1の全体構成)
作業装置の例として、フィラメントワインディング装置1(以下、「FW装置」と称する)について、
図1を参照して説明する。特に、FW装置1は、燃料電池用の燃料タンクライナTに、繊維Fを巻き付ける装置を例にあげる。なお、作業装置は、FW装置1の他の装置にも適用可能であることは、上述したとおりである。ここで、FW装置1は、上述した作業装置として、繊維Fを把持する治具ユニット20を、対象物である燃料タンクライナT又はエクステンション部材Eの所定位置に搬送する機能を有する場合の例である。
【0020】
燃料タンクライナTは、タンク本体T1と、タンク本体T1の両端に口金T2,T3とを備える。また、燃料タンクライナTに繊維Fを巻き付けやすくするために、エクステンション部材Eが口金T2と一体回転可能に口金T2に接続されている。エクステンション部材Eは、軸状に形成されており、口金T2の延長線上に位置する。主として、繊維Fは、タンク本体T1の外周面に巻き付けられる。
【0021】
FW装置1は、ベース11上に、燃料タンクライナT及びエクステンション部材Eを回転可能に支持すると共に回転駆動する回転装置12,13を備える。回転装置12,13は、例えば、燃料タンクライナTの一方の口金T3及びエクステンション部材Eを支持する。そして、回転装置12,13は、燃料タンクライナTの中心軸回りに回転駆動する。
【0022】
また、FW装置1は、ベース11上に燃料タンクライナTの中心軸方向に平行に延びるレール14を備え、レール14に沿ってスライド可能なスライダ15を備える。スライダ15は、繊維Fを保持する。つまり、燃料タンクライナTが回転し、且つ、スライダ15がスライドすることにより、燃料タンクライナTの繊維Fを巻き付けることができる。
【0023】
FW装置1は、待機台16を備える。待機台16は、後述する治具ユニット20を対象物(T,E)に取り付けていないときに、置いておく場所である。待機台16は、治具ユニット20の作業要素(後述する)を操作するための作業機構16aを備える。ここで、治具ユニット20の作業要素は、能動的アクチュエータを備えておらず、受動的に所定作業を行うことができる要素である。つまり、作業機構16aは、治具ユニット20とは異なる位置に設けられており、待機台16に置かれた状態の治具ユニット20の作業要素に対して、作業要素に所定作業を行わせるための駆動装置である。作業機構16aは、能動的アクチュエータであって、例えば、シリンダ装置等である。
【0024】
FW装置1は、搬送ユニット17を備える。搬送ユニット17は、後述する治具ユニット20を把持すると共に、把持した状態の治具ユニット20を搬送する機能を有する。さらに、本例では、搬送ユニット17は、繊維Fを切断する機能を有する。搬送ユニット17は、搬送機構17a、治具用ツール17b、及び、カッタツール17cを備える。
【0025】
搬送機構17aは、例えば、ロボットマニピュレータにより構成される。
図1には、搬送機構17aは、複数の関節を有するシリアル型のロボットマニピュレータを図示する。なお、搬送機構17aは、パラレル型のロボットマニピュレータを適用しても良い。搬送機構17aは、先端のエンドエフェクタを任意の位置に移動することができる。
【0026】
治具用ツール17bは、搬送機構17aの先端のエンドエフェクタの一部を構成する。治具用ツール17bは、治具ユニット20の把持と解放を行う。つまり、治具用ツール17bが治具ユニット20を把持した状態で、搬送機構17aが治具用ツール17bを移動することにより、搬送機構17aは、治具ユニット20を対象物(T,E)の所定位置と待機台16との間で搬送することができる。
【0027】
カッタツール17cは、搬送機構17aの先端のエンドエフェクタの一部を構成する。カッタツール17cは、繊維Fの切断を行うと共に、切断された繊維Fの端部を保持する。カッタツール17cは、燃料タンクライナTに巻き付けた繊維Fの後端を切断する。カッタツール17cが繊維Fの先端(巻き始め端)を保持した状態で、搬送機構17aがカッタツール17cを移動することにより、搬送機構17aは、繊維Fの先端を待機台16に保持されている治具ユニット20の位置に搬送することができる。
【0028】
さらに、FW装置1は、治具ユニット20を備える。治具ユニット20は、能動的アクチュエータを備えず、受動的な所定作業を行うことができる。本例では、治具ユニット20は、受動的に行う所定作業として、繊維Fの先端を把持する作業を行う。治具ユニット20は、治具用ツール17bにより把持される。
【0029】
治具ユニット20は、解除ボタン付きボールロックピン(後述する)を備える。ボールロックピンは、解除ボタンが押圧されると係止用の突起が内部に収容される状態となり、相手部材との係止を解除する。解除ボタンが押圧されていない状態においては、係止用の突起が外部に突出した状態となり、相手部材に係止可能となる。解除ボタンが押圧されていない状態が、通常状態となる。
【0030】
治具ユニット20は、待機台16に設置されており、待機台16の作業機構16aの駆動により、繊維Fの先端の把持することができる。また、治具ユニット20は、待機台16の作業機構16aの駆動により、把持している繊維Fを解放することができる。さらに、治具ユニット20は、対象物としての燃料タンクライナT又はエクステンション部材Eの所定位置に着脱可能な構造を有している。そして、治具ユニット20は、搬送機構17aの駆動により、待機台16と対象物(T,E)の所定位置との間で搬送される。
【0031】
なお、図示しないが、FW装置1は、回転装置12,13、スライダ15、搬送ユニット17等を制御するための制御部(図示せず)を備える。制御部は、CNCやPLC等を適用できる。
【0032】
(3.治具ユニット20の構成)
治具ユニット20の構成について、
図2及び
図3を参照して説明する。
図2に示すように、治具ユニット20は、解除ボタン付きボールロックピン30と、作業要素40と、把持部50とを備える。
【0033】
ボールロックピン30は、係止凹所に対して係脱可能である。係止凹所は、後述するが、対象物(T,E)の所定位置に形成されている。また、係止凹所は、図示しないが、待機台16にも形成されている。
【0034】
ボールロックピン30は、公知の構造を有する。ボールロックピン30は、支持部31、筒状本体32、ナット33、突起34、解除ボタン35を備える。支持部31は、例えば、板状部材により形成される。本例では、支持部31は、L字状板である。ただし、支持部31は、板状部材以外としても良い。また、本例では、支持部31には、円形の貫通孔(図示せず)が形成されている。
【0035】
筒状本体32は、外形の大部分を構成し、支持部31の貫通孔に挿通される。筒状本体32は、先端側に、円筒外周面を有する挿入軸部32aを有する。筒状本体32の挿入軸部32aは、対象物(T,E)の所定位置に形成された係止凹所に挿入可能である。また、筒状本体32の挿入軸部32aは、待機台16に形成された係止凹所に挿入可能である。
【0036】
ナット33が筒状本体32に螺合されることにより、筒状本体32及びナット33が、支持部31に固定される。突起34は、筒状本体32の挿入軸部32aに、挿入軸部32aの外周面から径方向外方に突出した状態と、挿入軸部32aの内部に収容された状態とで、動作可能に設けられている。突起34は、例えば、バネ等の弾性力により、突出した状態を基準状態とされている。
【0037】
解除ボタン35は、筒状本体32の基端、即ち、挿入軸部32aとは反対側の端に設けられている。解除ボタン35が押圧されていない状態では、突起34は、挿入軸部32aの外周面から径方向外方に突出した状態となる。解除ボタン35が押圧されると、突起34の全部又は大部分が、挿入軸部32aの内部に収容された状態となる。
【0038】
作業要素40は、ボールロックピン30の支持部31に固定されている。作業要素40は、本例では、繊維Fを把持する作業を受動的に行う。
図2においては、作業要素40は、支持座41、第一把持爪42、第二把持爪43、揺動支軸44、揺動レバー45、付勢部材46を備える。ただし、作業要素40は、
図2に示す構成以外にも採用することができる。
【0039】
支持座41は、対象物(T,E)の所定位置に形成された位置決め要素(後述する)に対して位置決め可能な被位置決め要素として機能する。支持座41は、ボールロックピン30の支持部31に固定されている。支持座41は、直方体状の部分を有しており、ボールロックピン30の筒状本体32の挿入軸部32aの中心軸に直交する平面状の取付座面41a(
図2の下面、第一当接面)、当該取付座面41aに直交する一対の側面41b,41c(
図2の左右面、第二当接面)を備える。一対の側面41b,41cは、相互に背向する面であって、平行な面である。一方の側面41bが、ボールロックピン30側に位置し、他方の側面41cが、ボールロックピン30とは反対側に位置する。
【0040】
第一把持爪42は、支持座41の取付座面41aと背向する面(
図2の上面)に固定されている。第一把持爪42は、例えば、直方体状に形成されているが、任意の形状とすることができる。第二把持爪43は、第一把持爪42において支持座41とは反対側の面(
図2の上面)に接触可能に配置されている。第二把持爪43は、第一把持爪42と近似する直方体状の部分と、揺動支持部分とを備える。第二把持爪43の直方体状の部分は、第一把持爪42と面接触することが可能となる。さらに、第二把持爪43は、第一把持爪42に対して、離れる方向(
図2の上方向)に移動可能である。つまり、
図2において、繊維Fは、第一把持爪42の上面と第二把持爪43の下面との間に把持される。
【0041】
揺動支軸44は、支持座41及び第一把持爪42に固定されている。揺動レバー45は、揺動支軸44に揺動可能に支持されている。揺動レバー45は、
図2の左右方向軸回りに揺動可能である。さらに、揺動レバー45の一端(
図2の前端)には、第二把持爪43を揺動可能に支持する。従って、揺動レバー45が揺動支軸44回りに揺動することにより、第二把持爪43が、第一把持爪42に接近したり、離間したりする。
【0042】
付勢部材46は、支持座41に支持されており、
図2の上下方向に中心軸を有する軸状に形成されており、
図2の上方向に付勢力を発揮する。付勢部材46の
図2の上端は、揺動レバー45の後端に接触している。
【0043】
把持部50は、ボールロックピン30の支持部31と同様に、L字状板である。ただし、把持部50は、板状部材以外としても良い。把持部50は、支持座41のうち、ボールロックピン30の支持部31とは反対側の面41cに固定されている。把持部50は、搬送ユニット17の治具用ツール17bに把持される。
【0044】
(4.治具ユニット20の動作)
治具ユニット20の動作について、
図2-
図6を参照して説明する。治具ユニット20に外力が作用していない場合には、治具ユニット20は、
図2及び
図3に示す状態となる。つまり、ボールロックピン30において、突起34が、筒状本体32の挿入軸部32aの外周面から径方向外方に突出した状態である。
【0045】
さらに、
図2及び
図3に示すように、付勢部材46が揺動レバー45の後端を上方向に付勢することによって、揺動レバー45の前端が下方向に移動しようとし、第二把持爪43が第一把持爪42を押圧する状態となる。仮に、第一把持爪42と第二把持爪43とにより繊維Fが介在している場合には、第一把持爪42と第二把持爪43とによって、繊維Fが把持される状態となる。
【0046】
図4に示すように、治具ユニット20以外の部材からの外力によってボールロックピン30の解除ボタン35が押圧されると、突起34の全部又は大部分が、筒状本体32の挿入軸部32aの内部に収容される。つまり、突起34が、筒状本体32の挿入軸部32aの外周面から径方向外方に突出していない状態、又は、突出量が非常に僅かな状態となる。
【0047】
図5及び
図6に示すように、治具ユニット20以外の部材からの外力によって揺動レバー45の後端が下方向に押圧されると、揺動レバー45は、揺動支軸44回りに揺動しながら付勢部材46を押圧する。つまり、揺動レバー45は、後端が下方向に移動し、前端が上方向に移動する。揺動レバー45の前端には、第二把持爪43が支持されているため、第二把持爪43が、第一把持爪42から離間する。従って、繊維Fが、第一把持爪42と第二把持爪43とから離れた状態になる。
【0048】
(5.対象物T,Eの所定位置の構成)
治具ユニット20を取り付け可能な対象物の所定位置について、
図7及び
図8を参照して説明する。上述したように、燃料タンクライナTの口金T2には、軸状のエクステンション部材Eが一体的に接続されている。本例では、治具ユニット20を取り付けることができる対象物として、燃料タンクライナTの口金T2又はエクステンション部材Eとし、当該対象物における所定位置として、エクステンション部材Eに形成された取付部60を例にあげる。ただし、対象物の取付部60を、口金T2に設けても良い。
【0049】
図7及び
図8に示すように、取付部60は、平面状の第一座面61を有する。第一座面61は、治具ユニット20のボールロックピン30の支持部31及びナット33に対向する面である。第一座面61には、第一座面61に直交する方向に延びる係止凹所62が形成されている。係止凹所62は、
図8に示すように、開口径が底径よりも小さい。係止凹所62は、1つの部材を加工することにより形成しても良いし、複数の部材を組み付けることにより形成しても良い。
【0050】
係止凹所62には、
図8に示すように、治具ユニット20のボールロックピン30の挿入軸部32aが挿入される。ただし、ボールロックピン30の突起34の全部又は大部分が挿入軸部32aに収容されている状態でなければ、挿入軸部32aを係止凹所62に挿入することはできない。係止凹所62にボールロックピン30の挿入軸部32aが挿入された状態において、突起34が係止凹所62に係止することにより、ボールロックピン30が係止凹所62に固定される。つまり、ボールロックピン30が、係止凹所62から抜けない状態となる。このように、ボールロックピン30が、係止凹所62に対して係脱可能となる。
【0051】
所定位置としての取付部60は、治具ユニット20を位置決めするための位置決め要素63を備える。具体的には、取付部60の位置決め要素63は、治具ユニット20の被位置決め要素としての支持座41に係合することにより、治具ユニット20を取付部60に位置決めすることができる。特に、取付部60の位置決め要素63、及び、治具ユニット20の被位置決め要素としての支持座41は、治具ユニット20のボールロックピン30が係止凹所62に係止された状態において、治具ユニット20がボールロックピン30の中心軸回りに回転することを規制する。
【0052】
つまり、ボールロックピン30が取付部60の係止凹所62に係止されると共に、被位置決め要素としての支持座41が取付部60の位置決め要素63に位置決めされることにより、治具ユニット20が、取付部60に固定される。
【0053】
本例では、取付部60の位置決め要素63は、第二座面63a、2つの肩面63b,63cを備える。第二座面63aは、第一座面61に平行な面であり、係止凹所62の軸方向に直交する面である。第二座面63aは、第一座面61に隣接して形成されている。2つの肩面63b,63cは、第二座面63aを挟むように、第二座面63aに連続して形成され第二座面63aに対して角度を有する面を有する。
【0054】
治具ユニット20の作業要素40の支持座41の取付座面41aが、対象物(T,E)における取付部60の第二座面63aに当接する。支持座41の一方の側面41bが、取付部60の一方の肩面63bに当接し、支持座41の他方の側面41cが、他方の肩面63cに当接する。このようにして、作業要素40の支持座41と取付部60の位置決め要素63とによって、治具ユニット20の回転規制がされる。
【0055】
なお、作業要素40と取付部60との位置決め構成については、上述した、支持座41と位置決め要素63との構成以外に限られるものではない。例えば、作業要素40が、第二座面63a及び肩面63b,63cに相当する面を有するようにし、取付部60が、支持座41に相当する部材を有するようにしても良い。
【0056】
また、回転規制の構成であれば、以下のような構成を採用することもできる。例えば、ボールロックピン30と係止凹所62との係止とは別の位置に、ピンと凹所との係止を可能な構成としても良い。すなわち、ボールロックピン30が係止凹所62に係止された状態において、治具ユニット20の被位置決め要素(41)が、ボールロックピン30の中心軸に平行な中心軸を有する第二ピン(図示せず)とし、対象物(T,E)の取付部60の位置決め要素63が、第二ピンに挿入される第二凹所とする。又は、治具ユニット20の被位置決め要素(41)が、第二凹所とし、対象物(T,E)の取付部60の位置決め要素63が、第二ピンとしても良い。
【0057】
(6.搬送ユニット17の構成)
搬送ユニット17について
図9を参照して説明する。
図9には、搬送ユニット17のエンドエフェクタの部分を示すと共に、把持された状態の治具ユニット20を示す。従って、
図9に示される搬送ユニット17は、搬送機構17aの先端部分、治具用ツール17b、及び、カッタツール17cである。
【0058】
搬送機構17aの先端部分は、略二等辺三角形を呈しており、二等辺三角形の底辺が、搬送機構17aの基端側に位置する。搬送機構17aの先端部分における二等辺三角形の他の二辺の一方(
図9の右側部分)に、治具用ツール17bが固定され、他の二辺の他方(
図9の左側部分)に、カッタツール17cが固定される。
【0059】
治具用ツール17bは、把持機構70及び押圧機構80を備える。把持機構70は、治具ユニット20の把持と解放とを行う。詳細には、把持機構70は、能動的アクチュエータとしての駆動装置71と、一対の把持爪72,73とを備える。駆動装置71は、例えば、シリンダ装置等である。一対の把持爪72,73は、治具ユニット20の把持部50を把持可能である。一対の把持爪72,73は、駆動装置71の駆動によって、相互に接近と離間との動作を行う。つまり、駆動装置71の駆動によって、一対の把持爪72,73は、治具ユニット20を把持する状態と、解放した状態とで切り替えられる。
【0060】
押圧機構80は、把持機構70に把持された治具ユニット20におけるボールロックピン30の解除ボタン35を押圧可能である。押圧機構80は、能動的アクチュエータとしての駆動装置81と、押圧部材82とを備える。駆動装置81は、例えば、シリンダ装置等である。
【0061】
押圧部材82は、駆動装置81の駆動によって、突出量を大きくする方向へ移動し、また、突出量を小さくする方向へ移動する。ここで、治具ユニット20の把持部50が把持機構70の一対の把持爪72,73により把持された状態において、押圧部材82は、治具ユニット20のボールロックピン30の解除ボタン35に対向する位置に位置する。
【0062】
従って、押圧部材82は、駆動装置81の駆動によって、突出量を大きくする方向へ移動することにより、解除ボタン35を押圧することができる。また、押圧部材82は、駆動装置81の駆動によって、突出量を小さくする方向へ移動することにより、解除ボタン35から離間することができる。つまり、押圧部材82が解除ボタン35を押圧することにより、ボールロックピン30の突起34を筒状本体32に収容した状態にできる。一方、押圧部材82が解除ボタン35から離間することにより、ボールロックピン30の突起34を筒状本体32の径方向外方に突出した状態にできる。
【0063】
カッタツール17cは、繊維Fを把持した状態で、切断することができる。カッタツール17cは、能動的アクチュエータとしての切断駆動装置91、カッタ92、能動的アクチュエータとしての把持駆動装置93、一対の把持爪94,95を備える。切断駆動装置91は、例えば、シリンダ装置等である。カッタ92は、切断駆動装置91によって移動可能であって、繊維Fを切断する。
【0064】
把持駆動装置93は、例えば、シリンダ装置等である。一対の把持爪94,95は、カッタ92の近傍に位置し、把持駆動装置93の駆動によって、相互に接近と離間の動作を行う。つまり、把持駆動装置93の駆動によって、一対の把持爪94,95は、繊維Fを把持する状態と、解放した状態とで切り替えられる。
【0065】
従って、搬送ユニット17は、搬送機構17aが動作することにより、把持機構70に把持された治具ユニット20を、待機台16と対象物(T,E)の取付部60との間で搬送することができる。さらに、搬送ユニット17は、搬送機構17aを動作することにより、カッタツール17cを、任意の位置に移動することができる。
【0066】
(7.フィラメントワインディング装置1の動作)
上述したFW装置1の動作(フィラメントワインディング方法)について、
図10を参照し、適宜、
図1-
図9を参照して説明する。FW装置1の初期状態として、回転装置12,13が、燃料タンクライナTの口金T3及びエクステンション部材Eを支持している。さらに、治具ユニット20は、待機台16に位置している。また、繊維Fの先端が、搬送ユニット17のカッタツール17cの一対の把持爪94,95に把持されている。
【0067】
FW装置1は、以下の事前作業工程(S1)を行う。まず、待機台16において、待機台16の作業機構16aを駆動することによって、治具ユニット20の作業要素40の第一把持爪42と第二把持爪43とを離間した状態とする。具体的には、
図5及び
図6に示すように、作業機構16aが、治具ユニット20の揺動レバー45の後端を下方向に押圧した状態とする。
【0068】
さらに、搬送ユニット17の搬送機構17aを駆動することにより、カッタツール17cを、待機台16に搬送する。ここで、カッタツール17cは、繊維Fの先端を把持している。そして、待機台16に位置する治具ユニット20の第一把持爪42と第二把持爪43との間に、カッタツール17cが把持している繊維Fを位置させる。続いて、待機台16の作業機構16aを駆動することによって、第一把持爪42と第二把持爪43とを接近させ、第一把持爪42と第二把持爪43によって繊維Fを把持させる。続いて、カッタツール17cは、繊維Fの把持を解放する。
【0069】
続いて、FW装置1は、以下の治具ユニット取付工程(S2)を行う。搬送ユニット17の把持機構70の駆動装置71を駆動することにより、一対の把持爪72,73を離間させる方向に移動させる。搬送機構17aを駆動することにより、把持機構70の一対の把持爪72,73を、待機台16に位置する治具ユニット20の把持部50に近づける。そして、把持機構70の駆動装置71を駆動することにより、一対の把持爪72,73を接近させる方向に移動させて、一対の把持爪72,73に治具ユニット20の把持部50を把持させる。
【0070】
搬送機構17aを駆動することにより、治具ユニット20を、待機台16からエクステンション部材Eの取付部60に搬送する。このとき、ボールロックピン30が、係止凹所62の開口に対向すると共に、作業要素40の支持座41の取付座面41aが、取付部60の第二座面63aに対向する。
【0071】
ここで、
図4に示すように、押圧機構80の駆動装置81を駆動することにより、押圧部材82の突出量を大きくする方向へ移動して、ボールロックピン30の解除ボタン35を押圧する。つまり、ボールロックピン30の突起34が、筒状本体32の挿入軸部32aに収容された状態となる。なお、押圧機構80の動作は、治具ユニット20が待機台16に位置するとき、又は、搬送途中に行うようにしても良い。
【0072】
さらに、
図8に示すように、搬送機構17aを駆動することにより、ボールロックピン30の挿入軸部32aを係止凹所62に挿入する。支持座41の取付座面41aを、取付部60の第二座面63aに当接させる。このとき、支持座41の側面41b,41cは、肩面63b,63cに当接する。従って、治具ユニット20は、取付部60に対して、ボールロックピン30の中心軸回りに回転規制がされる。
【0073】
さらに、押圧機構80の駆動装置81を駆動することにより、押圧部材82の突出量を小さくする方向へ移動して、ボールロックピン30の解除ボタン35から押圧部材82を離間させる。そうすると、
図5に示すように、突起34が係止凹所62に係止する。従って、治具ユニット20は、エクステンション部材Eの取付部60から抜けることが規制される。
【0074】
そして、把持機構70の駆動装置71を駆動することにより、一対の把持爪72,73を離間させる方向に移動させて、一対の把持爪72,73に、治具ユニット20の把持を解放させる。つまり、治具ユニット取付工程(S2)の終了状態では、繊維Fの先端を治具ユニット20の作業要素40が把持しており、且つ、治具ユニット20がエクステンション部材Eの取付部60に取り付けられている。
【0075】
続いて、FW装置1は、以下の初期巻き付け工程(S3)を行う。回転装置12,13を駆動すると共に、スライダ15を駆動することにより、燃料タンクライナT及びエクステンション部材Eを回転させながら、繊維Fを燃料タンクライナTの外周に巻き付ける。ここで、初期巻き付け工程(S3)では、治具ユニット20の作業要素40が把持している繊維Fの巻き始め端側を切断したとしても、燃料タンクライナTに巻き付けた繊維Fが解けない状態とする工程である。
【0076】
続いて、FW装置1は、以下の治具ユニット取外し工程(S4)を行う。搬送機構17aを駆動することにより、カッタツール17cを、取付部60に取り付けられている治具ユニット20と燃料タンクライナTとの間に移動させる。カッタツール17cの切断駆動装置91を駆動することにより、カッタ92により繊維Fを切断する。繊維Fを切断したとしても、初期巻き付け工程(S3)にて、繊維Fが解けない状態となっているため、燃料タンクライナTには繊維Fが巻き付けられた状態を維持する。
【0077】
続いて、搬送機構17aを駆動することにより、治具用ツール17bを、取付部60に取り付けられている治具ユニット20の近傍に移動させる。そして、把持機構70の駆動装置71を駆動することにより、把持機構70の一対の把持爪72,73に、治具ユニット20の把持部50を把持させる。
【0078】
さらに、押圧機構80の駆動装置81を駆動することにより、押圧部材82によりボールロックピン30の解除ボタン35を押圧する。つまり、ボールロックピン30の突起34による係止凹所62に対する係止が、解除される。そして、搬送機構17aを駆動することにより、治具ユニット20をエクステンション部材Eの取付部60から取り外す。
【0079】
そして、搬送機構17aを駆動することにより、治具ユニット20を待機台16に戻す。待機台16において、作業機構16aを駆動することによって、第一把持爪42と第二把持爪43とを離間させ、繊維Fの切れ端を第一把持爪42及び第二把持爪43から離脱させた後に廃棄する。
【0080】
続いて、FW装置1は、以下の本巻き工程(S5)を行う。回転装置12,13を駆動すると共に、スライダ15を駆動することにより、燃料タンクライナT及びエクステンション部材Eを回転させながら、繊維Fを燃料タンクライナTの外周に巻き付ける。巻き付けの最後には、繊維Fが解けない状態とする。
【0081】
続いて、FW装置1は、以下の繊維切断工程(S6)を行う。搬送機構17aを駆動することにより、カッタツール17cを、燃料タンクライナTとスライダ15との間に移動させる。カッタツール17cの把持駆動装置93を駆動することにより、カッタツール17cの一対の把持爪94,95により繊維Fを把持させる。このとき、繊維Fは、カッタツール17cのカッタ92に挟まれた位置に位置する。そこで、カッタツール17cの切断駆動装置91を駆動することにより、カッタ92により繊維Fを切断する。このとき、カッタツール17cの一対の把持爪94,95は、切断された繊維Fの先端を把持した状態となる。また、繊維Fを切断したとしても、本巻き工程(S5)にて、繊維Fは燃料タンクライナTから解けない状態となっているため、燃料タンクライナTには繊維Fが巻き付けられた状態を維持する。
【0082】
このようにして、一連の工程は終了し、再び、事前作業工程(S1)から繰り返す。つまり、搬送機構17aを駆動することにより、カッタツール17cにより繊維Fの先端を把持した状態で、カッタツール17cを待機台16に位置する治具ユニット20の近傍に移動する。そして、治具ユニット20の第一把持爪42と第二把持爪43とにより、繊維Fの先端を把持させる。
【0083】
(8.効果)
FW装置1によれば、エクステンション部材Eに対して繊維Fの巻き始め端を固定した状態にするために、治具ユニット20を利用している。FW装置1によれば、搬送ユニット17によって、治具ユニット20をエクステンション部材Eの取付部60に搬送することができると共に、治具ユニット20を取付部60に係脱可能とすることができる。また、治具ユニット20は、解除ボタン付きボールロックピン30を有しており、ボールロックピン30によってエクステンション部材Eに対する係脱が容易となる。さらに、治具ユニット20は、作業要素40を有しており、作業要素40は、受動的に繊維Fの把持を行う。従って、治具ユニット20の作業要素40は、能動的アクチュエータを有しておらず、治具ユニット20は、小型な構成することが可能となる。
【0084】
そして、対象物としてのエクステンション部材Eにおいて、繊維Fを把持した状態とするために、上記のFW装置1によれば、治具ユニット20の作業要素40に待機台16において予め繊維Fを把持させていれば、搬送ユニット17により治具ユニット20をエクステンション部材Eの取付部60に搬送することのみで足りる。
【0085】
つまり、エクステンション部材Eの取付部60付近において、治具ユニット20が繊維Fの把持の動作を行う必要がなく、エクステンション部材Eから離れた待機台16において、治具ユニット20が繊維Fの把持の動作を行うことが可能となる。従って、エクステンション部材Eの取付部60付近において、繊維Fの把持の動作を行う必要がないため、エクステンション部材Eの取付部60付近にスペースを大きく確保する必要がない。つまり、FW装置1の小型化が可能となる。また、ボールロックピン30を採用することにより、治具ユニット20をエクステンション部材Eの取付部60に固定するために要する時間も短くなる。
【符号の説明】
【0086】
1:フィラメントワインディング装置(作業装置)、 16:待機台、 16a:作業機構、 17:搬送ユニット、 17a:搬送機構、 17b:治具用ツール、 17c:カッタツール、 20:治具ユニット、 30:ボールロックピン、 32a:挿入軸部、 34:突起、 35:解除ボタン、 40:作業要素、 41:支持座(被位置決め要素)、 41a:取付座面(第一当接面)、 41b,41c:側面(第二当接面)、 42:第一把持爪、 43:第二把持爪、 44:揺動支軸、 45:揺動レバー、 46:付勢部材、 50:把持部、 60:取付部(所定位置)、 61:第一座面、 62:係止凹所、 63:位置決め要素、 63a:第二座面、 63b,63c:肩面、 70:把持機構、 71:駆動装置、 72,73:把持爪、 80:押圧機構、 81:駆動装置、 82:押圧部材、 92:カッタ、 94,95:把持爪、 E:エクステンション部材(対象物)、 F:繊維、 T:燃料タンクライナ(対象物)