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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114857
(43)【公開日】2022-08-08
(54)【発明の名称】ファーサイドエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/2338 20110101AFI20220801BHJP
   B60R 21/207 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
B60R21/2338
B60R21/207
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021011315
(22)【出願日】2021-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】中村 敦
(72)【発明者】
【氏名】山田 真史
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA02
3D054AA03
3D054AA07
3D054AA23
3D054CC11
3D054CC25
3D054CC30
3D054CC34
3D054FF13
3D054FF17
(57)【要約】
【課題】大型化を抑制しつつ、乗員の頭部を効果的に拘束して保護することができるファーサイドエアバッグ装置を提供する。
【解決手段】ファーサイドエアバッグ装置15は、車両10に対して側方から衝撃が加わったとき、エアバッグ19を複数のシート14間で展開及び膨張させることにより、シート14に着座している乗員P2を保護する。エアバッグ19は、膨張時に乗員P2側に位置する第1基布26と乗員P2側とは反対側に位置する第2基布27との周縁部同士を接合することによって袋状に形成される。膨張時のエアバッグ19における鉛直方向の中央部よりも下側の一部には、第1基布26と第2基布27とを接合してなる非膨張部28が形成される。膨張時のエアバッグ19における非膨張部28よりも上側の上側膨張部29では、第1基布26の外面における後端から前端までの長さが、第2基布27の外面における後端から前端までの長さよりも長い。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り畳まれた状態で乗物に固定されるエアバッグを備えており、前記乗物の側壁部に対し側方から衝撃が加わったとき、膨張用ガスの供給を通じて前記エアバッグを前記乗物の幅方向に並ぶ複数のシート間で後方から前方に向けて展開及び膨張させることにより、衝撃が加わった前記側壁部から遠い側のシートに着座している乗員の胸部から頭部にかけての部位を拘束して保護するファーサイドエアバッグ装置であって、
前記エアバッグは、展開及び膨張時に前記乗員側に位置する第1基布と、展開及び膨張時に前記乗員側とは反対側である反乗員側に位置する第2基布との周縁部同士を接合することによって袋状に形成され、
展開及び膨張時の前記エアバッグにおける鉛直方向の中央部よりも下側の一部には、前記第1基布と前記第2基布とを接合してなる膨張しない非膨張部が形成され、
展開及び膨張時の前記エアバッグにおける前記非膨張部よりも上側の上側膨張部では、前記第1基布の外面における後端から前端までの長さが、前記第2基布の外面における後端から前端までの長さよりも長くなっていることを特徴とするファーサイドエアバッグ装置。
【請求項2】
前記エアバッグは、前記第2基布の一部を折り重ねた状態で縫製することにより、展開及び膨張時における前記上側膨張部において、前記第1基布の外面における後端から前端までの長さが、前記第2基布の外面における後端から前端までの長さよりも長くなるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のファーサイドエアバッグ装置。
【請求項3】
前記エアバッグにおける前記上側膨張部内には、当該上側膨張部における前記乗物の前後方向の両端部を連結する内部テザーが設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のファーサイドエアバッグ装置。
【請求項4】
前記シートのシートバックのフレームと前記エアバッグの前記第1基布における前記非膨張部とを連結する乗員側テザーを備えることを特徴とする請求項1~請求項3のうちいずれか一項に記載のファーサイドエアバッグ装置。
【請求項5】
前記シートのシートバックのフレームと前記エアバッグの前記上側膨張部とを連結する外部テザーを備えることを特徴とする請求項1~請求項4のうちいずれか一項に記載のファーサイドエアバッグ装置。
【請求項6】
一端部が前記シートのシートバックのフレームに連結されるとともに他端部が前記シートのシートクッションのフレームに連結され且つ前記一端部と前記他端部との間の一部が前記エアバッグの前記第2基布に連結されたベルトを備えることを特徴とする請求項1~請求項5のうちいずれか一項に記載のファーサイドエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等の乗物の側壁部に対し側方から衝撃が加わった場合に、隣り合う乗物用シート間でエアバッグを展開及び膨張させることで、側壁部から遠い側の乗物用シートに着座している乗員を保護するファーサイドエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のファーサイドエアバッグ装置として、例えば特許文献1に示すものが知られている。こうしたファーサイドエアバッグ装置は、車両のシートに取り付けられ、エアバッグを備えている。エアバッグは、シートに着座した乗員の胸部を拘束する胸部クッション部と、シートに着座した乗員の頭部を拘束する頭部クッション部とを備えている。頭部クッション部と胸部クッション部とは、別個に形成され、結合部において結合することによってエアバッグが形成される。
【0003】
そして、上述のようなファーサイドエアバッグ装置では、エアバッグを展開させる際に、胸部クッション部における結合部から頭部クッション部をシートに着座した乗員側に展開させることで、乗員の頭部を拘束するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2019/110705号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のようなファーサイドエアバッグ装置では、エアバッグを展開させる際に、乗員の胸部だけでなく頭部も拘束するために、胸部クッション部に頭部クッション部を設けた構成になっている。このため、エアバッグの展開により、乗員の胸部だけでなく頭部も拘束できるが、エアバッグを形成するために必要な基布の量が増加するので、装置が大型化するという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決するファーサイドエアバッグ装置は、折り畳まれた状態で乗物に固定されるエアバッグを備えており、前記乗物の側壁部に対し側方から衝撃が加わったとき、膨張用ガスの供給を通じて前記エアバッグを前記乗物の幅方向に並ぶ複数のシート間で後方から前方に向けて展開及び膨張させることにより、衝撃が加わった前記側壁部から遠い側のシートに着座している乗員の胸部から頭部にかけての部位を拘束して保護するファーサイドエアバッグ装置であって、前記エアバッグは、展開及び膨張時に前記乗員側に位置する第1基布と、展開及び膨張時に前記乗員側とは反対側である反乗員側に位置する第2基布との周縁部同士を接合することによって袋状に形成され、展開及び膨張時の前記エアバッグにおける鉛直方向の中央部よりも下側の一部には、前記第1基布と前記第2基布とを接合してなる膨張しない非膨張部が形成され、展開及び膨張時の前記エアバッグにおける前記非膨張部よりも上側の上側膨張部では、前記第1基布の外面における後端から前端までの長さが、前記第2基布の外面における後端から前端までの長さよりも長くなっていることを要旨とする。
【0007】
この構成によれば、エアバッグは、展開及び膨張時に、非膨張部よりも上側の上側膨張部が反乗員側よりも乗員側へ大きく張り出すため、非膨張部を起点として上側膨張部が乗員側に傾く。このため、エアバッグにおける上側膨張部によって乗員の頭部を効果的に拘束して保護することができる。加えて、エアバッグにおける第1基布の膨張量を増やした分だけ第2基布の膨張量を減らすことができるので、エアバッグの大型化を抑制でき、ひいては装置の大型化を抑制できる。したがって、装置の大型化を抑制しつつ、乗員の頭部を効果的に拘束して保護することができる。
【0008】
上記ファーサイドエアバッグ装置において、前記エアバッグは、前記第2基布の一部を折り重ねた状態で縫製することにより、展開及び膨張時における前記上側膨張部において、前記第1基布の外面における後端から前端までの長さが、前記第2基布の外面における後端から前端までの長さよりも長くなるように構成されていることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、第2基布の一部を折り重ねた状態で縫製するだけで、部品点数を増やすことなく、エアバッグの展開及び膨張時における上側膨張部において、第1基布の外面における後端から前端までの長さを、第2基布の外面における後端から前端までの長さよりも長くすることができる。
【0010】
上記ファーサイドエアバッグ装置において、前記エアバッグにおける前記上側膨張部内には、当該上側膨張部における前記乗物の前後方向の両端部を連結する内部テザーが設けられていることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、エアバッグの展開及び膨張時に、エアバッグにおける上側膨張部の乗物の前後方向の膨張が内部テザーによって制限されるので、当該上側膨張部における乗物の幅方向の膨張量を増加させることができる。
【0012】
上記ファーサイドエアバッグ装置は、前記シートのシートバックのフレームと前記エアバッグの前記第1基布における前記非膨張部とを連結する乗員側テザーを備えることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、エアバッグの展開及び膨張時にエアバッグの非膨張部が乗員側テザーによってシートバックのフレーム側に引っ張られるので、エアバッグの展開及び膨張時の初期位置を安定させることができる。
【0014】
上記ファーサイドエアバッグ装置は、前記シートのシートバックのフレームと前記エアバッグの前記上側膨張部とを連結する外部テザーを備えることが好ましい。
この構成によれば、エアバッグの展開及び膨張時にエアバッグの上側膨張部が外部テザーによってフレーム側に引っ張られるので、エアバッグの展開及び膨張時の初期位置を安定させることができる。
【0015】
上記ファーサイドエアバッグ装置は、一端部が前記シートのシートバックのフレームに連結されるとともに他端部が前記シートのシートクッションのフレームに連結され且つ前記一端部と前記他端部との間の一部が前記エアバッグの前記第2基布に連結されたベルトを備えることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、ベルトによって膨張時のエアバッグを介して乗員を支持することができるので、エアバッグによる乗員の拘束性を高めることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、装置の大型化を抑制しつつ、乗員の頭部を効果的に拘束して保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施形態のファーサイドエアバッグ装置が搭載される車両の平面図。
図2】同車両における側壁部及びシートを示す断面図。
図3】シートのシートバックのフレームに対するファーサイドエアバッグ装置の取り付け状態を示す要部拡大断面図。
図4】エアバッグの展開及び膨張時のシート及び乗員を側方から見た状態を示す模式図。
図5】膨張時のエアバッグの上側膨張部の平断面模式図。
図6】シートのフレームに対するエアバッグの取り付け態様を示す斜視図。
図7】車両における展開及び膨張時のエアバッグとシートに着座した乗員との位置関係を示す断面図。
図8】変更例のエアバッグの側面図。
図9】シートのフレームに対する図8のエアバッグの取り付け態様を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、ファーサイドエアバッグ装置の一実施形態を図面に従って説明する。
図1及び図2に示すように、乗物の一例としての車両10においては、その幅方向(図1及び図2では左右方向)の両側にドア及びピラー等からなる側壁部11,12が設けられている。側壁部11,12間には、車両10の幅方向に並ぶ複数(本例では2つ)のシート13,14が設けられている。シート13,14は、それぞれ、乗員P1,P2の下半身を載せることが可能なシートクッション16と、シートクッション16の後側(図2の紙面奥側)から起立して乗員P1,P2の上半身を支えるシートバック17とを備えている。
【0020】
こうした車両10の側壁部11または側壁部12に対して側方から衝撃が加わると、その衝撃が加わった側壁部11,12から遠い側のシート13,14に着座している乗員P1,P2が、衝撃が加わった方の側壁部11,12側に倒れ込もうとする。このため、車両10には、側壁部11,12に対して側方から衝撃が加わったときに、その衝撃が加わった方の側壁部11,12から遠い側のシート13,14に着座している乗員P1,P2を拘束して保護するファーサイドエアバッグ装置15が設けられている。
【0021】
図2及び図3に示すように、ファーサイドエアバッグ装置15は、車両10におけるシート13,14のシートバック17内のフレーム18における幅方向(左右方向)の内側にそれぞれ固定されている。シート13のシートバック17内のフレーム18に固定されたファーサイドエアバッグ装置15は、シート14に最も近い部分に位置している。シート14のシートバック17内のフレーム18に固定されたファーサイドエアバッグ装置15は、シート13に最も近い部分に位置している。
【0022】
ファーサイドエアバッグ装置15は、折り畳まれた状態で車両10におけるシート13,14のシートバック17内のフレーム18に固定されたエアバッグ19及びインフレータ22を備えている。インフレータ22は、エアバッグ19に対して膨張用ガスを供給する装置である。インフレータ22は、リテーナ23によって覆われた状態で支持されている。リテーナ23は、インフレータ22を支持した状態でフレーム18に対してエアバッグ19と一緒にボルト20及びナット21によって固定されている。
【0023】
なお、シート13とシート14とにおけるファーサイドエアバッグ装置15周りの構造は、車両10の幅方向について対称(左右対称)であること以外は同一の構造となっている。このため、以下ではシート14におけるファーサイドエアバッグ装置15周りの構造についてのみ詳しく説明する。
【0024】
図4に示すように、ファーサイドエアバッグ装置15は、インフレータ22によるエアバッグ19への膨張用ガスの供給を制御する制御装置24を備えている。制御装置24には、側壁部11,12(図1及び図2参照)等に設けられた加速度センサ等からなる衝撃センサ25が電気的に接続されている。衝撃センサ25は、車両10(図1及び図2参照)の側方から側壁部11,12に対して加えられた衝撃を検出する。制御装置24は、衝撃センサ25からの検出信号に基づきインフレータ22を作動させてエアバッグ19に対して膨張用ガスを供給する。
【0025】
図3及び図4に示すように、エアバッグ19に対してインフレータ22から膨張用ガスが供給されると、エアバッグ19が展開及び膨張してインフレータ22付近の部分をシートバック17内に残しつつシートバック17から前方に飛び出す。シートバック17から飛び出したエアバッグ19は、シート13とシート14(図1及び図2参照)との間で後方から前方に向けて展開及び膨張する。
【0026】
側壁部11,12に対して側方から衝撃が加えられたとき、その衝撃が加わった側壁部11,12から遠い側のシート13,14に着座している乗員P1,P2が、衝撃が加わった方の側壁部11,12側に倒れ込もうとすることは、上述したとおりである。しかし、そのときの乗員P1,P2の胸部から頭部にかけての部位は、シート13とシート14との間で後方から前方に展開及び膨張するエアバッグ19によって拘束されて保護される。
【0027】
すなわち、衝撃が加わった方の側壁部11,12から遠い側のシート13,14に着座している乗員P1,P2は、エアバッグ19により、衝撃が加わった方の側壁部11,12に近い側のシート13,14に着座している他の乗員P1,P2や車両10の内装品などと干渉しないようにされる。
【0028】
図4に示すように、エアバッグ19は、一枚の基布を二つ折りにして厚さ方向に重ね、その重ねられた部分の周縁部同士を縫製することによって袋状に形成されている。すなわち、エアバッグ19を構成する基布は、エアバッグ19の展開及び膨張時に乗員P2側に位置する第1基布26と、エアバッグ19の展開及び膨張時に乗員P2側とは反対側である反乗員側に位置する第2基布27とを備えており、第1基布26と第2基布27との周縁部同士を接合することによって袋状に形成されている。
【0029】
展開及び膨張時の前記エアバッグにおける鉛直方向(上下方向)の中央部よりも下側の一部には、第1基布26と第2基布27とを縫い合わせて接合してなる膨張しない非膨張部28が2つ形成されている。2つの非膨張部28は円形状をなしており、前後方向に並んで配置されている。展開及び膨張時のエアバッグ19における2つの非膨張部28よりも上側の領域は、上側膨張部29とされている。
【0030】
図4及び図5に示すように、展開及び膨張時のエアバッグ19における上側膨張部29では、第1基布26の外面における後端から前端までの長さAが、第2基布27の外面における後端から前端までの長さBよりも長くなっている。すなわち、展開及び膨張時のエアバッグ19における上側膨張部29では、平面視で第1基布26側の半周の長さAが第2基布27側の半周の長さBよりも長くなっている。
【0031】
この場合、エアバッグ19は、第2基布27の一部を内側に折り重ねた状態で縫製して折り重ね部30を形成することにより、展開及び膨張時における上側膨張部29において、第1基布26の外面における後端から前端までの長さAが、第2基布27の外面における後端から前端までの長さBよりも長くなるように構成されている。この場合、第2基布27における折り重ね部30の折り重ね長さは、第2基布27の前後方向の長さの30%~40%の範囲であることが好ましい。このようにすれば、上側膨張部29の膨張時の乗員P2に対する拘束性を確保しつつ、エアバッグ19の展開膨張時の挙動を安定させることができる。
【0032】
因みに、折り重ね部30の折り重ね長さが第2基布27の前後方向の長さの30%よりも短い場合には、上側膨張部29の膨張時の乗員P2側への突出量が少なくなって上側膨張部29の乗員P2に対する拘束性が低下するおそれがある。一方、折り重ね部30の折り重ね長さが第2基布27の前後方向の長さの40%よりも長い場合には、上側膨張部29の膨張時の形状が歪になってエアバッグ19の展開膨張時の挙動が安定し難くなるおそれがある。
【0033】
したがって、展開及び膨張時のエアバッグ19における上側膨張部29では、幅方向における乗員P2側への膨張量が、幅方向における乗員P2側とは反対側の反乗員側への膨張量よりも多くなる。エアバッグ19における上側膨張部29内には、上側膨張部29における車両10の前後方向の両端部を連結する略直線状に延びる内部テザー31が設けられている。内部テザー31は、折り重ね部30と幅方向で重なる位置に配置されている。
【0034】
図4及び図6に示すように、ファーサイドエアバッグ装置15は、乗員側テザー32を備えている。乗員側テザー32は、エアバッグ19よりも乗員P2側に位置し、シート14のシートバック17のフレーム18とエアバッグ19の第1基布26における前側の非膨張部28とを連結している。すなわち、乗員側テザー32は、一端部が第1基布26における前側の非膨張部28に縫い付けられ、他端部がリテーナ23と一緒にシートバック17のフレーム18に固定されている。
【0035】
ファーサイドエアバッグ装置15は、外部テザー33を備えている。外部テザー33は、シート14のシートバック17のフレーム18とエアバッグ19の上側膨張部29とを連結している。すなわち、外部テザー33は、一端部が上側膨張部29における鉛直方向のほぼ中央部における後端部に縫い付けられ、他端部がシートバック17のフレーム18の上端部に固定されている。この場合、シートバック17のフレーム18における外部テザー33の固定位置は、シートバック17のフレーム18におけるリテーナ23の固定位置よりも高い位置にある。
【0036】
ファーサイドエアバッグ装置15は、ベルト34を備えている。ベルト34は、一端部がシート14のシートバック17のフレーム18に連結されるとともに他端部がシート14のシートクッション16のフレーム35に連結され且つ一端部と他端部との間の一部がエアバッグ19の第2基布27に連結されている。この場合、ベルト34は、シートバック17のフレーム18の上端部と、シートクッション16のフレーム35の前端部と、エアバッグ19の第2基布27とを連結している。
【0037】
シートバック17のフレーム18におけるベルト34の連結位置は、シートバック17のフレーム18における外部テザー33の固定位置と同じになっている。ベルト34は、エアバッグ19の第2基布27に対して一箇所で縫い付けられることによって連結されている。
【0038】
次に、ファーサイドエアバッグ装置15の作用について説明する。
図2図4及び図7に示すように、車両10の側壁部11,12のうち、例えば側壁部11に対して側方から衝撃が加わると、側壁部11から遠い側のシート14に着座している乗員P2が、側壁部11側に倒れ込もうとする。このとき、シート14におけるシートバック17の内部で折り畳まれているエアバッグ19がインフレータ22からの膨張用ガスの供給を通じて車両10の幅方向に並ぶ2つのシート13,14間で後方から前方に向けて展開及び膨張する。
【0039】
さらにこのとき、エアバッグ19は、乗員側テザー32及び外部テザー33によってシート14のシートバック17のフレーム18側に引っ張られるため、展開及び膨張するときの初期位置が安定する。そして、このエアバッグ19は、上側膨張部29において、幅方向における乗員P2側への膨張量が、幅方向における乗員P2側とは反対側の反乗員側への膨張量よりも多くなっている。このため、エアバッグ19は、非膨張部28を起点として折れ曲がって乗員P2側に傾く。
【0040】
さらに、エアバッグ19における上側膨張部29は、内部テザー31によって前後方向の膨張が制限されるので、幅方向の膨張量が増加する。このため、エアバッグ19は、乗員P2を側壁部12側へ押し戻そうとしつつ乗員P2の特に頭部を拘束して保護する。このとき、エアバッグ19は、ベルト34により乗員P2側とは反対側の反乗員側から支持される。すなわち、ベルト34は、エアバッグ19を介して乗員P2を支持する。このため、ベルト34及びエアバッグ19により、乗員P2の側壁部11側への倒れ込みが効果的に抑制される。
【0041】
なお、車両10の側壁部12に対して側方から衝撃が加わったときには、上述と同様に、側壁部11から遠い側のシート13に着座している乗員P1が側壁部12側に倒れ込もうとするが、その倒れ込みはシート13のシートバック17から展開及び膨張するエアバッグ19によって効果的に拘束されて保護される。
【0042】
以上詳述した実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
(1)ファーサイドエアバッグ装置15は、折り畳まれた状態で車両10に固定されるエアバッグ19を備えており、車両10の側壁部11,12に対し側方から衝撃が加わったとき、膨張用ガスの供給を通じてエアバッグ19を車両10の幅方向に並ぶ2つのシート13,14間で後方から前方に向けて展開及び膨張させることにより、衝撃が加わった側壁部11,12から遠い側のシート13,14に着座している乗員P1,P2の胸部から頭部にかけての部位を拘束して保護する。エアバッグ19は、展開及び膨張時に乗員P1,P2側に位置する第1基布26と、展開及び膨張時に乗員P1,P2側とは反対側である反乗員側に位置する第2基布27との周縁部同士を接合することによって袋状に形成される。展開及び膨張時のエアバッグ19における鉛直方向の中央部よりも下側の一部には、第1基布26と第2基布27とを接合してなる膨張しない非膨張部28が形成されている。展開及び膨張時のエアバッグ19における非膨張部28よりも上側の上側膨張部29では、第1基布26の外面における後端から前端までの長さが、第2基布27の外面における後端から前端までの長さよりも長くなっている。
【0043】
この構成によれば、エアバッグ19は、展開及び膨張時に、非膨張部28よりも上側の上側膨張部29が反乗員側よりも乗員P1,P2側へ大きく張り出すため、非膨張部28を起点として折れ曲がって上側膨張部29が乗員P1,P2側に傾く。このため、エアバッグ19における上側膨張部29によって乗員P1,P2の頭部を効果的に拘束して保護することができる。加えて、エアバッグ19における第1基布26の膨張量を増やした分だけ第2基布27の膨張量を減らすことができるので、エアバッグ19の大型化を抑制でき、ひいてはファーサイドエアバッグ装置15の大型化を抑制できる。したがって、ファーサイドエアバッグ装置15の大型化を抑制しつつ、乗員P1,P2の特に頭部を効果的に拘束して保護することができる。
【0044】
(2)ファーサイドエアバッグ装置15において、エアバッグ19は、第2基布27の一部を折り重ねた状態で縫製することにより、展開及び膨張時における上側膨張部29において、第1基布26の外面における後端から前端までの長さが、第2基布27の外面における後端から前端までの長さよりも長くなるように構成されている。
【0045】
この構成によれば、第2基布27の一部を折り重ねた状態で縫製するだけで、部品点数を増やすことなく、エアバッグ19の展開及び膨張時における上側膨張部29において、第1基布26の外面における後端から前端までの長さを、第2基布27の外面における後端から前端までの長さよりも長くすることができる。
【0046】
(3)ファーサイドエアバッグ装置15において、エアバッグ19における上側膨張部29内には、上側膨張部29における車両10の前後方向の両端部を連結する内部テザー31が設けられている。
【0047】
この構成によれば、エアバッグ19の展開及び膨張時に、エアバッグ19における上側膨張部29の車両10の前後方向の膨張が内部テザー31によって制限されるので、上側膨張部29における車両10の幅方向の膨張量を増加させることができる。
【0048】
(4)ファーサイドエアバッグ装置15は、シート13,14のシートバック17のフレーム18とエアバッグ19の第1基布26における非膨張部28とを連結する乗員側テザー32を備えている。
【0049】
この構成によれば、エアバッグ19の展開及び膨張時にエアバッグ19の非膨張部28が乗員側テザー32によってシートバック17のフレーム18側に引っ張られるので、エアバッグ19の展開及び膨張時の初期位置を安定させることができる。
【0050】
(5)ファーサイドエアバッグ装置15は、シート13,14のシートバック17のフレーム18とエアバッグ19の上側膨張部29とを連結する外部テザー33を備えている。
【0051】
この構成によれば、エアバッグ19の展開及び膨張時にエアバッグ19の上側膨張部29が外部テザー33によってシートバック17のフレーム18側に引っ張られるので、エアバッグ19の展開及び膨張時の初期位置を安定させることができる。
【0052】
(6)ファーサイドエアバッグ装置15は、一端部が前記シート13,14のシートバック17のフレーム18に連結されるとともに他端部がシート13,14のシートクッション16のフレーム35に連結され且つ一端部と他端部との間の一部がエアバッグ19の第2基布27に連結されたベルト34を備えている。
【0053】
この構成によれば、ベルト34によって膨張時のエアバッグ19を介して乗員P1,P2を支持することができるので、エアバッグ19による乗員P1,P2の拘束性を高めることができる。
【0054】
(7)内部テザー31は、折り重ね部30と幅方向で重なる位置に配置されている。
この構成によれば、上記(3)に記載した内部テザー31の効果を高めることができるので、上側膨張部29における車両10の幅方向の膨張量を効果的に増加させることができる。
【0055】
(変更例)
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。また、上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0056】
図8及び図9に示すように、ファーサイドエアバッグ装置15は、ベルト34の代わりに、前部テザー36を備えるようにしてもよい。前部テザー36は、シート14のシートバック17のフレーム18とエアバッグ19の上側膨張部29とを連結している。すなわち、前部テザー36は、一端部が上側膨張部29における鉛直方向のほぼ中央部における前端部に縫い付けられ、他端部がシートバック17のフレーム18の上端部に固定されている。この場合、シートバック17のフレーム18における前部テザー36の固定位置は、シートバック17のフレーム18における外部テザー33の固定位置と同じになっている。このようにすれば、エアバッグ19の膨張に伴う前部テザー36の張力により、エアバッグ19による乗員P1,P2の特に頭部に対する拘束力を高めることができる。すなわち、エアバッグ19の膨張時の前部テザー36の張力により乗員P1,P2の特に頭部の移動量を低減できる。
【0057】
・ベルト34は、省略してもよい。
・外部テザー33は、省略してもよい。
・乗員側テザー32は、省略してもよい。
【0058】
・内部テザー31は、省略してもよい。
・エアバッグ19は、第2基布27に貫通孔を形成して当該貫通孔の前側の周縁部と後側の周縁部とを縫い合わせることにより、展開及び膨張時における上側膨張部29において、第1基布26の外面における後端から前端までの長さが、第2基布27の外面における後端から前端までの長さよりも長くなるように構成してもよい。
【0059】
・エアバッグ19における折り重ね部30は、縫製部分を残して切除してもよい。
・エアバッグ19の第2基布27に対してベルト34を一箇所で縫い付けて連結する代わりに、エアバッグ19の第2基布27の外面にベルト34を通すためのベルトループ(ベルト通し)を設け、当該ベルトループにベルト34を通すようにして連結するようにしてもよい。
【0060】
・ファーサイドエアバッグ装置15を幅方向に3つ以上のシートが並ぶ車両に適用してもよい。
・ファーサイドエアバッグ装置15を車両以外の乗物、例えば航空機や船舶に適用してもよい。
【符号の説明】
【0061】
10…車両
11,12…側壁部
13,14…シート
15…ファーサイドエアバッグ装置
16…シートクッション
17…シートバック
18,35…フレーム
19…エアバッグ
20…ボルト
21…ナット
22…インフレータ
23…リテーナ
24…制御装置
25…衝撃センサ
26…第1基布
27…第2基布
28…非膨張部
29…上側膨張部
30…折り重ね部
31…内部テザー
32…乗員側テザー
33…外部テザー
34…ベルト
36…前部テザー
A,B…長さ
P1,P2…乗員
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9