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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114858
(43)【公開日】2022-08-08
(54)【発明の名称】車両用外装品
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/00 20060101AFI20220801BHJP
   H05B 3/20 20060101ALI20220801BHJP
   H01Q 1/42 20060101ALI20220801BHJP
   H01Q 1/32 20060101ALI20220801BHJP
   G01S 7/03 20060101ALN20220801BHJP
【FI】
B60R13/00
H05B3/20 347
H01Q1/42
H01Q1/32 Z
G01S7/03 246
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021011316
(22)【出願日】2021-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】廣谷 幸蔵
【テーマコード(参考)】
3D024
3K034
5J046
5J070
【Fターム(参考)】
3D024BA07
3K034AA02
3K034AA06
3K034HA09
5J046AA06
5J046MA02
5J046MA03
5J046MA13
5J046RA07
5J070AB24
5J070AC02
5J070AC06
5J070AF03
(57)【要約】
【課題】周囲の温度が繰り返し変化した場合にヒータ線が断線するのを抑制する。
【解決手段】車両用外装品としてのエンブレム15は、車両を装飾する装飾本体部21とヒータシート51とを備える。ヒータシート51は、通電により発熱するヒータ線56,57を樹脂製のシート基材55の裏面に配線することにより形成される。ヒータシート51は、装飾本体部21よりも表側に配置される発熱本体部52と、発熱本体部52の周縁部から延び、かつ装飾本体部21の外周部に沿って曲げられて同装飾本体部21の表面よりも裏側に配置される延出部53とを備える。延出部53のうち、上記外周部に沿って曲げられる曲げ部53bに配線されたヒータ線56,57の配線長さは、同ヒータ線56,57が、周囲の温度変化による曲げ部53bでのシート基材55の伸縮に追従して変形し得る長さに設定されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を装飾する装飾本体部と、通電により発熱するヒータ線が樹脂製のシート基材の裏面に配線されてなるヒータシートとを備え、
前記ヒータシートが、前記装飾本体部よりも表側に配置される発熱本体部と、前記発熱本体部の周縁部から延び、かつ前記装飾本体部の外周部に沿って曲げられて前記装飾本体部の表面よりも裏側に配置される延出部とを備える車両用外装品であって、
前記延出部のうち、前記外周部に沿って曲げられる曲げ部に配線された前記ヒータ線の配線長さは、同ヒータ線が、周囲の温度変化による前記曲げ部での前記シート基材の伸縮に追従して変形し得る長さに設定されている車両用外装品。
【請求項2】
前記延出部が前記発熱本体部から延びる方向を延出方向とし、周囲の温度の変化量を温度変化量ΔTとし、前記シート基材と前記ヒータ線との線膨張係数の差を線膨張係数差ΔAとし、前記曲げ部の前記延出方向における長さを延出長さLeとし、前記曲げ部に配線された前記ヒータ線の前記配線長さを配線長さLhとした場合、
前記配線長さLhは、以下の(式1)を満たしている
Lh≧Le+ΔT×ΔA×Le・・・(式1)
請求項1に記載の車両用外装品。
【請求項3】
車両を装飾する装飾本体部と、通電により発熱するヒータ線が樹脂製のシート基材の裏面に配線されてなるヒータシートとを備え、
前記ヒータシートが、前記装飾本体部よりも表側に配置される発熱本体部と、前記発熱本体部の周縁部から延び、かつ前記装飾本体部の外周部に沿って曲げられて前記装飾本体部の表面よりも裏側に配置される延出部とを備える車両用外装品であって、
前記延出部が前記発熱本体部から延びる方向を延出方向とし、周囲の温度の変化量を温度変化量ΔTとし、前記シート基材と前記ヒータ線との線膨張係数の差を線膨張係数差ΔAとし、前記延出部のうち、前記外周部に沿って曲げられる曲げ部の前記延出方向における長さを延出長さLeとし、前記曲げ部に配線された前記ヒータ線の配線長さを配線長さLhとした場合、
前記配線長さLhは、以下の(式1)を満たしている
Lh≧Le+ΔT×ΔA×Le・・・(式1)
車両用外装品。
【請求項4】
前記ヒータ線の前記配線長さLhは、前記延出長さLeの1.04倍以上の値に設定されている請求項2又は3に記載の車両用外装品。
【請求項5】
前記延出部の面に沿って前記延出方向に対し直交する方向を、前記延出部の幅方向とした場合、
前記曲げ部では、前記ヒータ線は、前記幅方向における両側へ振れながら前記延出方向へ進む波状の配線パターンで配線されている請求項2~4のいずれか1項に記載の車両用外装品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンブレム、オーナメント、マーク等、車両を装飾する車両用外装品に関する。
【背景技術】
【0002】
ミリ波レーダ装置が組込まれた車両では、同装置からミリ波が車外へ向けて送信される。先行車両、歩行者等を含む車外の物体に当たって反射されたミリ波は、上記ミリ波レーダ装置によって受信される。送信及び受信されたミリ波により、上記物体の認識や、車両と物体との距離、相対速度等の検出が行なわれる。
【0003】
上記車両では、ミリ波の送信方向におけるミリ波レーダ装置の前方に、エンブレム等の車両用外装品が配置される。車両用外装品は、ミリ波レーダ装置を隠し、かつミリ波の透過性を有する装飾本体部を備える。
【0004】
上記車両用外装品では、意匠面(表面)に氷雪が付着するとミリ波が減衰され、ミリ波レーダ装置の検出性能が低下する問題がある。そこで、車両用外装品に融雪機能を付加することが考えられている。例えば、装飾本体部の表側にヒータシートが積層されることにより、融雪機能が付加される。
【0005】
ヒータシートは、通電により発熱するヒータ線が、シート基材の裏面に配線されることにより形成される。ヒータシートは、装飾本体部よりも表側に配置される発熱本体部と、発熱本体部の周縁部から延び、かつ装飾本体部の外周部に沿って曲げられて装飾本体部の表面よりも裏側に配置される延出部とを備える。
【0006】
上記車両用外装品によると、ヒータ線が通電により発熱する。そのため、車両用外装品の意匠面(表面)に氷雪が付着しても、ヒータ線が発した熱によって氷雪を融解させ、氷雪の付着に起因するミリ波の減衰を抑制することができる。
【0007】
なお、装飾本体部の表側にヒータシートを積層する技術は、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2020-5057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記車両用外装品では、ヒータシートの延出部は、装飾本体部の外周部に沿って曲げられる際に引っ張られる。そのため、車両用外装品を車両に組付けた後に、周囲の温度変化が繰り返されると、次の問題が起こるおそれがある。すなわち、延出部のうち、曲げに伴い引っ張られた箇所が、温度変化に応じて伸縮すると、ヒータ線がシート基材の伸縮に追従できず、断線するおそれがある。
【0010】
こうした問題は、ミリ波レーダ装置に限らず、車外の物体を検出するための電磁波を送信及び受信する装置が搭載された車両に組込まれ、かつ装飾本体部の表側にヒータシートが配置された車両用外装品であれば、同様に起り得る。また、電磁波を送受信する装置が搭載されていない車両に組込まれ、かつ装飾本体部の表側にヒータシートが配置された車両用外装品でも、上記と同様の現象が起こり得る。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する車両用外装品は、車両を装飾する装飾本体部と、通電により発熱するヒータ線が樹脂製のシート基材の裏面に配線されてなるヒータシートとを備え、前記ヒータシートが、前記装飾本体部よりも表側に配置される発熱本体部と、前記発熱本体部の周縁部から延び、かつ前記装飾本体部の外周部に沿って曲げられて前記装飾本体部の表面よりも裏側に配置される延出部とを備える車両用外装品であって、前記延出部のうち、前記外周部に沿って曲げられる曲げ部に配線された前記ヒータ線の配線長さは、同ヒータ線が、周囲の温度変化による前記曲げ部での前記シート基材の伸縮に追従して変形し得る長さに設定されている。
【0012】
上記の構成によれば、ヒータシートの延出部における曲げ部は、装飾本体部の外周部に沿って曲げられる際に引っ張られる。そのため、車両用外装品を車両に組付けた後に、周囲の温度の変化が繰り返されると、延出部の曲げに伴い引っ張られた曲げ部が、温度変化に応じて伸縮する。
【0013】
この点、延出部の曲げ部では、ヒータ線が、周囲の温度変化による曲げ部でのシート基材の伸縮に追従して変形し得る長さを有している。そのため、曲げ部でのシート基材の伸縮に追従してヒータ線が変形することで、曲げ部ではヒータ線が実質的に伸縮したような状態になる。従って、周囲の温度が繰り返し変化してもヒータ線が伸びきった状態とならず、伸びきった状態で過度に引っ張られて断線されることが起こりにくい。
【0014】
上記車両用外装品において、前記延出部が前記発熱本体部から延びる方向を延出方向とし、周囲の温度の変化量を温度変化量ΔTとし、前記シート基材と前記ヒータ線との線膨張係数の差を線膨張係数差ΔAとし、前記曲げ部の前記延出方向における長さを延出長さLeとし、前記曲げ部に配線された前記ヒータ線の前記配線長さを配線長さLhとした場合、前記配線長さLhは、以下の(式1)を満たしていることが好ましい。
【0015】
Lh≧Le+ΔT×ΔA×Le・・・(式1)
ヒータ線の配線長さLhが、(式1)の右辺以上に設定されることにより、ヒータ線は、周囲の温度変化による曲げ部でのシート基材の伸縮に追従して変形することが可能である。
【0016】
上記課題を解決する車両用外装品は、車両を装飾する装飾本体部と、通電により発熱するヒータ線が樹脂製のシート基材の裏面に配線されてなるヒータシートとを備え、前記ヒータシートが、前記装飾本体部よりも表側に配置される発熱本体部と、前記発熱本体部の周縁部から延び、かつ前記装飾本体部の外周部に沿って曲げられて前記装飾本体部の表面よりも裏側に配置される延出部とを備える車両用外装品であって、前記延出部が前記発熱本体部から延びる方向を延出方向とし、周囲の温度の変化量を温度変化量ΔTとし、前記シート基材と前記ヒータ線との線膨張係数の差を線膨張係数差ΔAとし、前記延出部のうち、前記外周部に沿って曲げられる曲げ部の前記延出方向における長さを延出長さLeとし、前記曲げ部に配線された前記ヒータ線の配線長さを配線長さLhとした場合、前記配線長さLhは、以下の(式1)を満たしている。
【0017】
Lh≧Le+ΔT×ΔA×Le・・・(式1)
上記の構成によれば、ヒータシートの延出部における曲げ部は、装飾本体部の外周部に沿って曲げられる際に引っ張られる。そのため、車両用外装品を車両に組付けた後に、周囲の温度の変化が繰り返されると、延出部の曲げに伴い引っ張られた曲げ部が、温度変化に応じて伸縮する。
【0018】
一方、延出部の曲げ部では、ヒータ線の配線長さLhが、上記(式1)の右辺以上に設定されている。このため、周囲の温度変化による曲げ部でのシート基材の伸縮に追従してヒータ線が変形することで、曲げ部ではヒータ線が実質的に伸縮したような状態になる。従って、周囲の温度が繰り返し変化してもヒータ線が伸びきった状態とならず、伸びきった状態で過度に引っ張られて断線されることが起こりにくい。
【0019】
上記車両用外装品において、前記ヒータ線の前記配線長さLhは、前記延出長さLeの1.04倍以上の値に設定されていることが好ましい。
配線長さLhが、延出長さLeとの関係で上記の条件を満たす値に設定されることで、車両用外装品の形状、大きさ等のばらつきが、取り得る最大であっても、ヒータ線は、周囲の温度変化によるシート基材の曲げ部での伸縮に追従して変形することが可能である。
【0020】
上記車両用外装品において、前記延出部の面に沿って前記延出方向に対し直交する方向を、前記延出部の幅方向とした場合、前記曲げ部では、前記ヒータ線は、前記幅方向における両側へ振れながら前記延出方向へ進む波状の配線パターンで配線されていることが好ましい。
【0021】
ヒータ線が上記の条件を満たすように配線されることで、曲げ部におけるシート基材が、周囲の温度変化に応じて上記延出方向に伸縮した場合、その伸縮に追従してヒータ線が変形する。この変形により、曲げ部におけるヒータ線が実質的に伸縮したような状態になり、断線が抑制される。
【発明の効果】
【0022】
上記車両用外装品によれば、周囲の温度が繰り返し変化した場合にヒータ線が断線するのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】車両用外装品をエンブレムに具体化した一実施形態を示す図であり、同エンブレムの正面図。
図2】一実施形態におけるヒータシートの一部を示す部分背面図。
図3】一実施形態におけるエンブレムの下部構造を、フロントグリルの一部及びミリ波レーダ装置の一部とともに示す部分側断面図。
図4図3の4-4線に沿ったソケット部の断面図。
図5】一実施形態におけるヒータシートの延出部が展開された状態を示す部分展開図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、車両用外装品を、車両の前部に取付けられるエンブレムに具体化した一実施形態について、図面を参照して説明する。
なお、以下の記載に関し、車両の前進方向を前方とし、後進方向を後方として説明する。また、上下方向は車両の上下方向を意味し、左右方向は車幅方向であって車両の前進時の左右方向と一致するものとする。また、各図では、エンブレムにおける各部を認識可能な大きさとするために、各部の縮尺を適宜変更して図示している。
【0025】
図3に示すように、車両10の前部の左右方向における中央部分であって、フロントグリル11の後方には、前方監視用のミリ波レーダ装置13が配置されている。ミリ波レーダ装置13は、電磁波におけるミリ波を車外のうち、前方へ向けて送信し、かつ、車外の物体に当たって反射されたミリ波を受信する機能を有する。ミリ波とは、波長が1mm~10mmであり、周波数が30GHz~300GHzである電波をいう。
【0026】
上記フロントグリル11の厚みは、一般的なフロントグルと同様、一定ではない。また、フロントグリル11では、樹脂製基材の表面に金属めっき層が形成されることがある。従って、フロントグリル11は、送信又は反射されたミリ波と干渉する。このため、フロントグリル11において、ミリ波の送信方向におけるミリ波レーダ装置13の前方には、窓部12が開口されている。図3では、窓部12の下部が図示されている。
【0027】
上記窓部12には、エンブレム15が配置されている。エンブレム15の車両前方側(図3の右側)の面は、意匠面15aを構成している。意匠面15aの外形形状は、横長の楕円形状をなしている(図1参照)。ここで、エンブレム15を説明するにあたり、意匠面15a側を表側といい、意匠面15aとは反対側(図3では左側)を裏側というものとする。
【0028】
エンブレム15は、起立した状態で配置される。この配置状態では、エンブレム15の表側が車両10の前側に対応し、エンブレム15の裏側が車両10の後側に対応する。
そのため、単体のエンブレム15の説明に際し、車両前後方向に対応する方向を特定する場合には、「表」及び「裏」の語を用いるものとする。車両10に取付けられた状態のエンブレム15を説明する場合についても同様である。
【0029】
エンブレム15は、装飾本体部21及びヒータシート51を備えている。次に、エンブレム15を構成する各部材について説明する。
<装飾本体部21>
図1及び図3に示すように、装飾本体部21は、車両10においてミリ波レーダ装置13からのミリ波の送信方向の前方に配置されて、同車両10を装飾する部分である。装飾本体部21の主要部分は、エンブレム15の意匠面15aに対応して横長の略楕円の板状をなしており、ミリ波透過性を有する。
【0030】
装飾本体部21は、基材22、透明樹脂層35及び加飾層41を備えている。基材22は、装飾本体部21の裏側部分を構成する部材である。基材22は、その骨格部分を構成する基材本体部23と、基材本体部23の外周部に設けられた枠部31とを備えている。
【0031】
基材本体部23は、AES(アクリロニトリル-エチレン-スチレン共重合)樹脂によって、有色に形成されている。基材本体部23における表側の部分には、表裏方向に対し直交に近い状態で交差する略平らな一般部24と、その一般部24よりも表側へ突出する凸部25とが形成されている。一般部24は、図1におけるエンブレム15の背景領域16に対応し、凸部25は、同エンブレム15の模様領域17に対応している。ここでは、模様領域17は、「A」という文字部分18と、その周りの環状部分19とにより構成されている。
【0032】
図3に示すように、基材本体部23における外周部には、表側の面において開放されて裏側へ凹む環状凹部26が形成されている。環状凹部26は、基材本体部23の周縁部に対応する形状である楕円の環状をなしている。
【0033】
基材22は、裏側へ突出するソケット部27を自身の下部に有している。ソケット部27は、電力供給のための機器Aのプラグ部Bが抜き差しされる箇所である。ソケット部27の表側の部分には、環状凹部26から裏方向に延びる凹部28が形成されている。さらに、ソケット部27には、その裏面において開放されて表側へ凹む凹部29が形成されている。
【0034】
なお、基材本体部23は、上記AES樹脂に代えて、ASA(アクリロニトリル-スチレン-アクリレート共重合)樹脂、PC(ポリカーボネート)樹脂、PC樹脂及びABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合)樹脂のポリマーアロイ等によって形成されてもよい。
【0035】
枠部31は、基材本体部23の外周部に沿って設けられることで楕円の環状をなしている(図1参照)。枠部31の多くの部分は、上記環状凹部26内に充填された状態で形成されている。また、枠部31の下部の一部は、ソケット部27における凹部28内に充填された状態で形成されている。枠部31は、例えば、PC樹脂とカーボンブラックとの混合材料によって形成されており、黒色をなしている。
【0036】
図3及び図4に示すように、ソケット部27には、互いに左右方向に離間した状態で、それぞれ表裏方向に延びる2つのコネクタピン32が配置されている。各コネクタピン32の表側の部分32aは平板状をなし、基材本体部23及び枠部31に埋設されている。また、コネクタピン32の裏側の部分32bは棒状をなしている。部分32bの一部は上記凹部29内に配置されている。
【0037】
基材22の外周部22aであって、ソケット部27の下部には、同ソケット部27の下面において開口する窓部30が形成されている。窓部30は、後述するヒータ線56,57をコネクタピン32に接合する作業を行なうために設けられている。
【0038】
基材22(基材本体部23)の裏面の周縁部における複数箇所には、エンブレム15をフロントグリル11又は車体に取付けるための取付部(図示略)が設けられている。取付部は、クリップ、ビス、係合爪等によって構成されている。
【0039】
図1及び図3に示すように、透明樹脂層35は、装飾本体部21の主要部分の表側部分を構成する部材である。透明樹脂層35は、PC樹脂によって透明に形成されている。ここでの透明には、無色透明のほか、着色透明(有色透明)も含まれる。この点は、後述するシート基材55についても同様である。透明樹脂層35における裏側部分は、上記基材本体部23における表側部分の形状に対応した形状に形成されている。すなわち、透明樹脂層35における裏側部分であって、基材本体部23の一般部24の表側となる箇所には、表裏方向に対し直交に近い状態で交差する略平らな一般部36が形成されている。透明樹脂層35における裏側部分であって、基材本体部23の凸部25の表側となる箇所には、一般部36よりも表側へ凹む凹部37が形成されている。透明樹脂層35の外周部は、上記枠部31の表側に位置している。なお、透明樹脂層35は、上記PC樹脂に代えてPMMA(ポリメタクリル酸メチル)樹脂等、透明な樹脂によって形成されてもよい。
【0040】
加飾層41は、基材本体部23と透明樹脂層35との間であって、枠部31によって囲まれた領域に形成されており、ミリ波透過性を有している。加飾層41は、例えば、黒色、青色等の濃色を有する有色加飾層と、インジウム(In)等の金属材料からなる光輝加飾層との組合わせによって構成されている。
【0041】
上記装飾本体部21において、枠部31は、基材本体部23及び透明樹脂層35に対し溶着されることで、それらの基材本体部23及び透明樹脂層35を連結している。
装飾本体部21において、ミリ波が透過される領域は、厚みが一定となるように形成されている。
【0042】
<ヒータシート51>
図2及び図3に示すように、ヒータシート51は、シート基材55及び2本のヒータ線56,57を備えている。シート基材55は、PC樹脂等の透明な樹脂材料によって形成されている。各ヒータ線56,57は、通電により発熱する金属材料によって形成されており、シート基材55の裏面に配線されている。
【0043】
ヒータシート51は、発熱本体部52と、その発熱本体部52の周縁部、本実施形態では下縁部から延びる延出部53とを備えている。延出部53が発熱本体部52から延びる方向を、延出部53の延出方向という。また、延出部53の面に沿って、上記延出方向に対し直交する方向を、延出部53の幅方向というものとする。発熱本体部52は、エンブレム15の意匠面15aに対応して横長の楕円形状に形成されている。発熱本体部52は、装飾本体部21における透明樹脂層35の表側に積層されている。発熱本体部52では、各ヒータ線56,57は、互いに異なる配線パターンで配線されている(図2参照)。
【0044】
図3に示すように、延出部53は、装飾本体部21における外周部の下端部を経由して、装飾本体部21の表面21aよりも裏側へ回り込むように、透明樹脂層35の下面、枠部31の下面等に沿って曲げられている。図5に示すように、延出部53の各部を区別するために、上記のように曲げられる箇所を曲げ部53bという。曲げ部53bは、上記延出方向であって、図5において破線が記された箇所と、後述する開口部54とによって挟まれた領域である。延出部53のうち、発熱本体部52と曲げ部53bとの間の部分を延出表部53aという。延出部53のうち、曲げ部53bを挟んで延出表部53aとは反対側の部分、表現を変えると、曲げ部53bよりも裏側部分を延出裏部53cというものとする。
【0045】
曲げ部53bであって、上記幅方向における中央部分には、上記延出方向に延びる長円状の挿通孔55aが形成されている。また、図示はしないが、装飾本体部21において、挿通孔55aに対応する箇所には、取付けボスが形成されている。そして、ヒータシート51を装飾本体部21に組付ける際に、取付けボスが挿通孔55aに挿通されることにより、同装飾本体部21に対する延出部53ひいてはヒータシート51の位置決めが行なわれる。
【0046】
上記幅方向における延出裏部53cの両側部には、開口部54がそれぞれ形成されている。両開口部54は、上記幅方向に互いに離間している。本実施形態では、各開口部54が矩形状に形成されているが、他の形状に形成されてもよい。
【0047】
図2図4及び図5に示すように、2本のヒータ線56,57は、上記発熱本体部52だけでなく延出部53にも配線されている。すなわち、ヒータ線56は、両端部に端末部56a,56bを有している。ヒータ線57は、両端部に端末部57a,57bを有している。端末部56a,57aは、延出部53の裏面であって、上記幅方向における一方の側部にまとめられて配線されている。これらの端末部56a,57aは、互いに同一の極性を有している。端末部56b,57bは、延出部53の裏面であって、上記幅方向における他方の側部にまとめられて配線されている。これらの端末部56b,57bは、互いに同一の極性であって、上記端末部56a,57aとは異なる極性を有している。
【0048】
図5に示すように、端末部56a,57aと、端末部56b,57bとは、互いに同様の態様(線対称の関係となる態様)で配線されている。そのため、以降は、端末部56a,57aについてのみ説明し、端末部56b,57bについては説明を省略する。
【0049】
端末部56a,57aは、延出表部53a及び曲げ部53bと、延出裏部53cとで互いに異なる配線パターンで配線されている。端末部56a,57aは、延出裏部53cでは、それぞれ上記延出方向に直線状に延びるように配線されている。端末部56a,57aのそれぞれの一部は、開口部54に対し上記延出方向に交差している。
【0050】
曲げ部53bに配線された端末部56a,57aの配線長さは、同端末部56a,57aが、周囲の温度変化による同曲げ部53bでのシート基材55の伸縮に追従して変形し得る長さに設定されている。
【0051】
ここで、周囲の温度の変化量を温度変化量ΔTとする。シート基材55の線膨張係数とヒータ線56,57の線膨張係数との差を線膨張係数差ΔAとする。上記延出方向における曲げ部53bの長さを延出長さLeとする。曲げ部53bに配線された端末部56a,57aの配線長さを配線長さLhとする。
【0052】
配線長さLhは、以下の(式1)を満たすように設定されている。
Lh≧Le+ΔT×ΔA×Le・・・(式1)
具体的には、端末部56a,57aは、曲げ部53bと、延出表部53aとでは、それぞれ上記幅方向における両側に振れながら、上記延出方向へ進む波のような配線パターンで配線されている。曲げ部53bには、既述したように挿通孔55aが形成されている。上記延出方向における曲げ部53bの一部では、挿通孔55aの分、上記幅方向における実質的な寸法が、延出表部53aの寸法よりも小さくなっている。このことから、端末部56a,57aは、曲げ部53bでは、延出表部53aにおけるよりも小さな振幅で、上記幅方向へ振れている。
【0053】
本実施形態では、配線長さLhは、延出長さLeの1.04倍以上の値に設定されている。これは、エンブレム15の形状、大きさ等のばらつきが、取り得る最大であっても、端末部56a,57aを、周囲の温度変化による曲げ部53bでのシート基材55の伸縮に追従して変形させるためである。
【0054】
さらに、端末部56a,57aのうち、延出部53(延出表部53a)の発熱本体部52との境界部分に位置する部分は、枠部31の表側に位置している。
図3及び図4に示すように、装飾本体部21における外周部の下端部を経由して裏側へ回り込んだ延出部53の一部は、枠部31と、凹部28の内壁面との間に配置されている。
【0055】
各コネクタピン32の表側の部分32aの一部に対し、延出部53の一部であって、上記開口部54の周辺部分が表側(外周側)から重ねられている。端末部56a,57aは、一方の開口部54内ではんだ付けが行なわれることにより、一方の部分32aに対し接合されている。同様に、端末部56b,57bは、他方の開口部54内ではんだ付けが行なわれることにより、他方の部分32aに対し接合されている。図3及び図4中、符号58は、はんだ合金からなり、かつはんだ付けにより形成された接合部を示している。これらの接合部58により、端末部56a,56b及び端末部57a,57bが、基材22の外周部22aの内部で、コネクタピン32の上記部分32aに対し電気的に接続されている。
【0056】
なお、上記接合は、上記はんだ付け以外にも、導電性接着剤を用いた接着、溶接、カシメ等の圧接により行なわれてもよい。
端末部56a,56b及び端末部57a,57bが接合部58によってコネクタピン32に接合された部分を、接合箇所というものとする。窓部30には、上記接合箇所への水の浸入を規制する止水部71が設けられている。止水部71は、例えば、樹脂材料が窓部30に充填されることにより形成されている。
【0057】
そして、上記のように構成されたエンブレム15は、図3に示すように、起立させられた状態で窓部12の内部に配置され、取付部においてフロントグリル11又は車体に取付けられている。
【0058】
さらに、ソケット部27の凹部29に対し、機器Aのプラグ部Bが、エンブレム15の裏側から差し込まれることで、ヒータ線56,57が機器Aに対し電気的に接続されている。
【0059】
次に、上記のように構成された本実施形態の作用について説明する。また、作用に伴い生ずる効果についても併せて説明する。
本実施形態のエンブレム15の製造時には、図3及び図5に示すように、ヒータシート51の延出部53における曲げ部53bが装飾本体部21の外周部に沿って曲げられる。この際に、曲げ部53bが延出部53の延出方向に引っ張られる。
【0060】
そのため、上記のように曲げ部53bが引っ張られた状態で製造されたエンブレム15を車両10に組付けた後に、周囲の温度の変化が繰り返されると、延出部53のうち、曲げに伴い引っ張られた曲げ部53bが、温度変化に応じて伸縮する。
【0061】
曲げ部53bにおいて、ヒータ線56の端末部56a,56bと、ヒータ線57の端末部57a,57bとが、仮に上記延出方向に真っ直ぐ延びる態様で配線されていると、次の懸念がある。それは、曲げ部53bが温度変化に応じて伸縮した場合、端末部56a,56b及び端末部57a,57bが、シート基材55の収縮に追従できないおそれがあることである。この場合、伸びきった状態の端末部56a,56b及び端末部57a,57bが過度に引っ張られて断線する懸念がある。
【0062】
この点、本実施形態では、図5に示すように、延出部53の曲げ部53bでは、端末部56a,56b及び端末部57a,57bが、延出部53の幅方向に振れながら延出方向に進む波のような配線パターンで配線されている。この配線により、配線長さLhが、上記(式1)の関係を満たす値に設定されている。この設定により、曲げ部53bでは、端末部56a,56b及び端末部57a,57bが、周囲の温度変化による曲げ部53bでのシート基材55の伸縮に追従して変形し得る長さを有している。
【0063】
そのため、曲げ部53bでのシート基材55の伸縮に追従してヒータ線56,57が変形することで、端末部56a,56b及び端末部57a,57bが上記延出方向へ実質的に伸縮したような状態になる。従って、本実施形態によれば、周囲の温度が繰り返し変化しても、端末部56a,56b及び端末部57a,57bは、上記延出方向に伸びきった状態になることがない。また、直線状に伸びきった端末部56a,56b及び端末部57a,57bが上記延出方向に過度に引っ張られることもない。結果として、端末部56a,56b及び端末部57a,57bの曲げ部53bでの断線を抑制することができる。
【0064】
ところで、エンブレム15の意匠面15aに氷雪が付着した場合には、図2及び図3に示すように、電力が機器Aのプラグ部B及びコネクタピン32を介してヒータ線56,57に供給される。ヒータ線56,57が通電により発熱する。ヒータ線56,57が発した熱の一部は、エンブレム15の意匠面15aに伝達される。この熱により、上記意匠面15aに付着している氷雪が融解され、氷雪によるミリ波の減衰が抑制される。
【0065】
特に、本実施形態では、ヒータシート51がエンブレム15において最も表側の箇所に配置されている。そのため、ヒータ線56,57の発した熱がエンブレム15の意匠面15a(表面)に伝わりやすく、氷雪を効率よく融解させることができる。
【0066】
なお、ミリ波レーダ装置13からミリ波が送信されると、そのミリ波は、エンブレム15の装飾本体部21における基材本体部23、加飾層41及び透明樹脂層35と、ヒータシート51の発熱本体部52とを順に透過する。透過したミリ波は、先行車両、歩行者等を含む車両前方の物体に当たって反射された後、ヒータシート51の発熱本体部52と、装飾本体部21における透明樹脂層35、加飾層41及び基材本体部23とを順に透過する。装飾本体部21を透過したミリ波は、ミリ波レーダ装置13によって受信される。ミリ波レーダ装置13では、送信及び受信された上記ミリ波に基づき、物体の認識や、車両10と同物体との距離、相対速度等の検出が行われる。
【0067】
また、エンブレム15に対し車両10の前側から可視光が照射されると、その可視光は、ヒータシート51の発熱本体部52と、装飾本体部21の透明樹脂層35とを透過し、加飾層41で反射される。車両10の前方からエンブレム15を見ると、発熱本体部52及び透明樹脂層35を通して、それらの裏側(奥側)に加飾層41が位置するように見える。このように、加飾層41によってエンブレム15が装飾され、同エンブレム15及びその周辺部分の外観が向上する。
【0068】
なお、可視光の加飾層41での上記反射は、ミリ波レーダ装置13よりも前側で行われる。加飾層41は、ミリ波レーダ装置13を覆い隠す機能を発揮する。そのため、エンブレム15の前側からは、ミリ波レーダ装置13が見えにくい。従って、ミリ波レーダ装置13がエンブレム15を介して透けて見える場合に比べて外観が向上する。
【0069】
本実施形態によると、上記以外にも、次の効果が得られる。
・本実施形態では、図3及び図4に示すように、一方のコネクタピン32と端末部56a,57aとが、基材22の外周部22aの内部で接合されている。また、他方のコネクタピン32と端末部56b,57bとが、上記外周部22aの内部で接合されている。接合箇所が外周部22aによって覆われている。そのため、接合が透明樹脂層35の表側で行なわれる場合とは異なり、接合部分による見栄えの低下がない。
【0070】
・本実施形態では、図5に示すように、延出表部53aでも端末部56a,56b及び端末部57a,57bが、波状の配線パターンで配線されている。そのため、延出表部53aにおいても、曲げ部53bと同様に、シート基材55の伸縮に追従してヒータ線56,57が変形することで、端末部56a,56b及び端末部57a,57bが、上記延出方向へ実質的に伸縮したような状態になる。従って、周囲の温度が繰り返し変化しても端末部56a,56b及び端末部57a,57bの断線をより一層抑制することができる。
【0071】
・延出表部53aのうち発熱本体部52との境界部分でも端末部56a,56b及び端末部57a,57bが波状の配線パターンで配線されているが、この波状の部分は、黒色の枠部31の表側に位置する。そのため、車両10の外部からは、上記波状の部分が見えにくい。
【0072】
また、曲げ部53bは、図3に示すように透明樹脂層35よりも裏側に位置している。そのため、曲げ部53bでは、端末部56a,56b及び端末部57a,57bが波状の配線パターンで配線されているが、この部分もまた、車両10の外部から見えにくい。
【0073】
従って、ヒータ線56,57のうち、波状の配線パターンで配線された部分が、車両10の外部から見えることに起因する見栄えの低下が起こりにくい。
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。上記実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0074】
・ヒータシート51におけるヒータ線56,57の数が1又は3以上の複数に変更されてもよい。
・延出部53は、発熱本体部52の周縁部のうち、下縁部とは異なる箇所、例えば上縁部、側縁部等から延びていてもよい。
【0075】
・エンブレム15の意匠面15aの外形形状は、横長の楕円形状とは異なる形状に変更されてもよい。
・曲げ部53bにおける端末部56a,56b及び端末部57a,57bが、上記実施形態とは異なる配線パターン、例えば、ジグザグ状に折れ曲がる配線パターンで配線されてもよい。延出表部53aについて、同様の変更が行なわれてもよい。
【0076】
・延出表部53aにおける端末部56a,56b及び端末部57a,57bが、上記延出方向へ直線状に延びる配線パターンで配線されてもよい。
・上記車両用外装品は、車外の物体を検出するための電磁波を送信及び受信する装置が搭載された車両に組込まれ、かつ装飾本体部の表側にヒータシートが配置された車両用外装品であれば適用可能である。この場合、装置が送信及び受信する電磁波には、ミリ波、赤外線等が含まれる。
【0077】
・車外の物体を検出するための電磁波を送信及び受信する装置は、前方監視用以外にも、後方監視用、前側方監視用、又は後側方監視用の装置であってもよい。この場合、車両用外装品は、電磁波の送信方向における上記装置の前方に配置される。
【0078】
・上記車両用外装品は、車外の物体を検出するための電磁波を送信及び受信する装置が搭載されない車両に組込まれてもよい。
・上記車両用外装品は、エンブレムのほかに、オーナメント、マーク等、車両を装飾する機能を有する車両用外装品にも適用可能である。
【符号の説明】
【0079】
10…車両
15…エンブレム(車両用外装品)
21…装飾本体部
21a…表面
51…ヒータシート
52…発熱本体部
53…延出部
53b…曲げ部
55…シート基材
56,57…ヒータ線
Le…延出長さ
Lh…配線長さ
ΔA…線膨張係数差
ΔT…温度変化量
図1
図2
図3
図4
図5