(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114889
(43)【公開日】2022-08-08
(54)【発明の名称】搬送装置、搬送システム及び搬送装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
B65G 1/00 20060101AFI20220801BHJP
【FI】
B65G1/00 501C
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021011356
(22)【出願日】2021-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】319007240
【氏名又は名称】株式会社日立インダストリアルプロダクツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】特許業務法人藤央特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 浩一
【テーマコード(参考)】
3F022
【Fターム(参考)】
3F022AA15
3F022FF01
3F022JJ11
3F022LL07
3F022MM04
3F022NN22
3F022NN25
3F022QQ00
3F022QQ17
(57)【要約】
【課題】搬送装置の移動モードが切り替わった後に、搬送装置を発進させる際の搬送装置や床面へかかる負荷を低減する。
【解決手段】物品を搬送する搬送装置であって、物品を積載して移動する駆動部と、駆動部を制御する制御部と、を有し、所定の方向へ直進して移動する移動モードと、異なる方向へ向くように回転移動する移動モードとを含み、制御部は、物品を積載した搬送装置が停止した状態から移動する場合の加速条件について、複数の移動モードのうち停止前の移動モードと同じ移動モードで移動する場合に、第1の加速度又は第1の目標速度を含む第1の加速条件で加速し、停止前の移動モードと異なる移動モードで移動する場合に、第1の加速度よりも小さい第2の加速度又は前記第1の目標速度よりも小さい第2の目標速度を含む第2の加速条件で加速する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を搬送する搬送装置であって、
前記物品を積載して移動する駆動部と、
前記駆動部を制御する制御部と、を有し、
前記搬送装置は、所定の方向へ直進して移動する移動モードと、前記搬送装置が異なる方向へ向くように回転移動する移動モードとを含む複数の移動モードで移動可能であり、
前記制御部は、
前記物品を積載した前記搬送装置が停止した状態から移動する場合の加速条件について、前記搬送装置が、前記複数の移動モードのうち停止前の移動モードと同じ移動モードで移動する場合に、第1の加速度又は第1の目標速度を含む第1の加速条件で加速するように前記駆動部を制御し、
前記複数の移動モードのうち停止前の移動モードと異なる移動モードで移動する場合に、前記第1の加速度よりも小さい第2の加速度又は前記第1の目標速度よりも小さい第2の目標速度を含む第2の加速条件で加速するように前記駆動部を制御することを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送装置であって、
前記駆動部は、
動力源に接続された駆動輪と、前記搬送装置を支持する補助輪と、を有することを特徴とする搬送装置。
【請求項3】
請求項1に記載の搬送装置であって、
前記駆動部は、
前記物品を格納する棚を積載可能であって、
前記制御部は、
前記物品を積載していない前記搬送装置が停止した状態から移動する場合の加速条件について、
停止前の移動モードによらず、前記第1の加速度よりも大きい第3の加速度又は前記第1の目標速度よりも大きい第3の目標速度を含む第3の加速条件で加速するように前記駆動部を制御することを特徴とする搬送装置。
【請求項4】
請求項1に記載の搬送装置であって、
前記制御部は、前記物品を積載していない前記搬送装置が停止した状態から移動する場合の加速条件について、
前記搬送装置が、前記複数の移動モードのうち停止前の移動モードと同じ移動モードで移動する場合に、前記第1の加速度よりも大きい第3の加速度又は前記第1の目標速度よりも大きい第3の目標速度を含む第3の加速条件で加速するように前記駆動部を制御し、
前記複数の移動モードのうち停止前の移動モードと異なる移動モードで移動する場合に、前記第3の加速度よりも小さい第4の加速度又は前記第3の目標速度よりも小さい第4の目標速度を含む第4の加速条件とを含む加速条件で加速するように前記駆動部を制御することを特徴とする搬送装置。
【請求項5】
請求項1に記載の搬送装置であって、
前記第1の加速条件には前記第1の目標速度が設定され、前記第2の加速条件には前記第2の目標速度が設定され、
前記制御部は、
前記加速条件に設定された加速度で目標速度となるように前記駆動部を制御することを特徴とする搬送装置。
【請求項6】
請求項1に記載の搬送装置であって、
前記第1の加速条件には前記第1の加速度が設定され、前記第2の加速条件には前記第2の加速度が設定され、
前記制御部は、所定の目標速度となるように前記駆動部を制御することを特徴とする搬送装置。
【請求項7】
請求項1に記載の搬送装置であって、
前記第1の加速条件は、前記第1の加速度で前記第1の目標速度となるように加速するものであり、
前記第2の加速条件は、前記第2の加速度で前記第2の目標速度となるように加速するものであることを特徴とする搬送装置。
【請求項8】
請求項1に記載の搬送装置であって、
前記制御部は、
前記第2の加速度で移動を開始してから所定時間後に前記第2の加速度よりも大きい所定の加速度に切り替えることを特徴とする搬送装置。
【請求項9】
請求項1に記載の搬送装置であって、
前記搬送装置が移動する床面の状態の情報を記憶する記憶部を、さらに有し、
前記制御部は、
前記床面の状態の情報に基づいて、前記搬送装置の加速条件を決定することを特徴とする搬送装置。
【請求項10】
請求項9に記載の搬送装置であって、
前記床面の状態の情報は、前記床面の損傷の有無の情報を含み、
前記制御部は、前記物品を積載した前記搬送装置が停止した状態から移動する場合の加速条件について、
前記複数の移動モードのうち停止前の移動モードと異なる移動モードで移動する場合に、
損傷の有る前記床面で加速する場合は、前記第2の加速条件で加速する代わりに、前記第2の加速度よりも小さい加速度又は前記第2の目標速度よりも小さい目標速度を含む加速条件で加速するように前記駆動部を制御することを特徴とする搬送装置。
【請求項11】
請求項9に記載の搬送装置であって、
前記床面の状態の情報は、前記床面上を前記搬送装置が走行した累積走行実績の情報を含み、
前記制御部は、前記物品を積載した前記搬送装置が停止した状態から移動する場合の加速条件について、
前記複数の移動モードのうち停止前の移動モードと異なる移動モードで移動する場合に、
前記累積走行実績が所定の基準を超える前記床面で加速する場合は、前記第2の加速条件で加速する代わりに、前記第2の加速度よりも小さい加速度又は前記第2の目標速度よりも小さい目標速度を含む加速条件で加速するように前記駆動部を制御することを特徴とする搬送装置。
【請求項12】
請求項9に記載の搬送装置であって、
前記床面の状態の情報は、前記床面上の凹凸の有無の情報を含み、
前記制御部は、前記物品を積載した前記搬送装置が停止した状態から移動する場合の加速条件について、
前記複数の移動モードのうち停止前の移動モードと異なる移動モードで移動する場合に、
凹凸の有る前記床面で加速する場合は、前記第2の加速条件で加速する代わりに、前記第2の加速度よりも小さい加速度又は前記第2の目標速度よりも小さい目標速度を含む加速条件で加速するように前記駆動部を制御することを特徴とする搬送装置。
【請求項13】
請求項1に記載の搬送装置であって、
前記搬送装置が積載する物品の重量の情報を含む搬送物情報を記憶する記憶部をさらに有し、
前記第2の加速度及び前記第2の目標速度は、少なくとも前記搬送物情報に基づいて設定されることを特徴とする搬送装置。
【請求項14】
物品を搬送する搬送装置と、
前記搬送装置の走行を制御する制御装置と、を有する搬送システムであって、
前記搬送装置は、所定の方向へ直進して移動する移動モードと、前記搬送装置が異なる方向へ向くように回転移動する移動モードとを含む複数の移動モードで移動可能であり、
前記制御装置は、
前記物品を積載した前記搬送装置が停止した状態から移動する場合の加速条件について、前記搬送装置が、前記複数の移動モードのうち停止前の移動モードと同じ移動モードで移動する場合に、第1の加速度又は第1の目標速度を含む第1の加速条件で加速するように前記搬送装置を制御し、
前記複数の移動モードのうち停止前の移動モードと異なる移動モードで移動する場合に、前記第1の加速度よりも小さい第2の加速度又は前記第1の目標速度よりも小さい第2の目標速度を含む第2の加速条件で加速するように前記搬送装置を制御することを特徴とする搬送システム。
【請求項15】
搬送装置が停止した状態から移動する場合、所定の方向へ直進して移動する移動モードと前記搬送装置が異なる方向へ向くように回転移動する移動モードとを含む複数の移動モードのうち、停止前の移動モードと同じ移動モードで移動するか否かを判定するステップと、
前記搬送装置が前記複数の移動モードのうち停止前の移動モードと同じ移動モードで移動する場合に、第1の加速度又は第1の目標速度を含む第1の加速条件で加速するように前記搬送装置を制御し、前記搬送装置が前記複数の移動モードのうち停止前の移動モードと異なる移動モードで移動する場合に、前記第1の加速度よりも小さい第2の加速度又は前記第1の目標速度よりも小さい第2の目標速度を含む第2の加速条件で加速するように前記搬送装置を制御するステップと、を備えることを特徴とする搬送装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置、搬送システム及び搬送装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物流倉庫では、納入された物品を保管し、注文を受け付けると該当する物品を取り出して、梱包した後に顧客あてに発送している。物品の移動には多大な労力が必要とされるが、無人搬送車によって物品を運搬する搬送システムを採用することで省力化を図ることができる。
【0003】
搬送システムの一例として、駆動輪と補助輪を有する搬送装置が、指定された棚の位置へ自動走行で移動して、物品を格納した棚を搬送装置上のテーブルに搭載してから、指定されたピッキングステーションへ搬送するシステムがある。搬送システムに関する技術として、例えば、特許文献1に記載の技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
搬送装置は、例えば、バッテリからの電力で電動機に結合された駆動輪を駆動し、搬送装置自体を旋回させる旋回モードと、搬送装置を前進させる直進モードを組み合わせて、倉庫内の床面上を自動で移動する。
【0006】
ここで、搬送装置が旋回モードの直後に直進モードへ移行する際、補助輪の向きが移動方向とは異なる方向を向いている場合、床面と補助輪の摩擦が大きくなり、補助輪と床面に高い負荷が加わる。
【0007】
例えば、直進モードから停止した後に、再度直進モードで搬送装置を移動させる場合に比して、旋回モードの後に直進モードに切り替えて搬送装置を移動させる場合では、搬送装置を発進させる際に駆動輪に与える駆動力が増大し、搬送装置や床面へかかる負荷が増大するという課題を、本願の発明者は見出した。
【0008】
同様に、例えば、直進モードの後に旋回モードに切り替えて搬送装置を移動させる場合では、搬送装置を旋回させる際に駆動輪に与える駆動力が増大し、搬送装置や床面へかかる負荷が増大するという課題がある。
【0009】
そこで、搬送装置の移動モードが切り替わった後に、搬送装置を発進させる際の搬送装置や床面へかかる負荷を低減可能な搬送装置、搬送システム及び搬送装置の制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様である搬送装置は、物品を搬送する搬送装置であって、前記物品を積載して移動する駆動部と、前記駆動部を制御する制御部と、を有し、前記搬送装置は、所定の方向へ直進して移動する移動モードと、前記搬送装置が異なる方向へ向くように回転移動する移動モードとを含む複数の移動モードで移動可能であり、前記制御部は、前記物品を積載した前記搬送装置が停止した状態から移動する場合の加速条件について、前記搬送装置が、前記複数の移動モードのうち停止前の移動モードと同じ移動モードで移動する場合に、第1の加速度又は第1の目標速度を含む第1の加速条件で加速するように前記駆動部を制御し、前記複数の移動モードのうち停止前の移動モードと異なる移動モードで移動する場合に、前記第1の加速度よりも小さい第2の加速度又は前記第1の目標速度よりも小さい第2の目標速度を含む第2の加速条件で加速するように前記駆動部を制御する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、搬送装置の移動モードが切り替わった後に、搬送装置を発進させる際の搬送装置や床面へかかる負荷を低減することが可能となる。
【0012】
本明細書において開示される主題の、少なくとも一つの実施の詳細は、添付されている図面と以下の記述の中で述べられる。開示される主題のその他の特徴、態様、効果は、以下の開示、図面、請求項により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】搬送システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図11】倉庫制御装置で行われる処理の一例を示すフローチャートである。
【
図12】搬送装置で行われる処理の一例を示すフローチャートである。
【
図13】直進モードと旋回モードを組み合わせた搬送装置の移動パターンの一例を示す図である。
【
図14】直進モードと一時停止を組み合わせた搬送装置の移動パターンの一例を示す図である。
【
図15】直進モードから旋回モードで90°旋回した後に直進モードに切り替わる場合の補助輪の一例を示す上方からの透視図である。
【
図16】直進モードから旋回モードで90°旋回した後の補助輪の軌跡の一例を示す上方からの透視図である。
【
図17】旋回モードで90°旋回した後に直進モードで発進する際の補助輪の軌跡の一例を示す上方からの透視図である。
【
図18】実施例1における、加速度の切り替えパターンの一例を示すグラフである。
【
図19】実施例2における、加速度と目標速度の切り替えパターンの一例を示すグラフである。
【
図20】実施例3における、加速度の切り替えパターンの一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【実施例0015】
図1は、実施例1における搬送システムの構成の一例を示すブロック図である。本実施例の搬送システムは、倉庫制御装置100と、ネットワーク90と、ネットワーク90を介して倉庫制御装置100と接続する複数の搬送装置1と、を備える。例えば、倉庫制御装置100が、搬送装置1に搬送させる棚と、搬送先のピッキングステーションを指定した搬送指令を搬送装置1に送信して、搬送装置1に自動で搬送させる例を示す。
【0016】
倉庫制御装置100は、演算装置110と、メモリ120と、入力装置130と、出力装置140と、記憶装置150と、通信インタフェース170を含む計算機である。
【0017】
記憶装置150は、不揮発性の記憶媒体を有し、演算装置110が実行するプログラムと、プログラムが使用するデータを格納する。プログラムの一例として、経路作成プログラム161と、データ入出力プログラム162と、データ分析プログラム163と、搬送装置制御プログラム164が記憶装置150に格納され、演算装置110は必要なプログラムをメモリ120にロードして実行する。
【0018】
また、記憶装置150が格納するデータの一例としては、オーダー情報200と、在庫情報220と、棚情報230と、床情報240と、地図情報250と、装置情報260と、経路データ270と、計測データ280が格納される。
【0019】
経路作成プログラム161は、搬送装置1が移動する経路を算出する。経路作成プログラム161は、例えば、ピッキング対象の物品(又は商品)の位置と、行き先のピッキングステーションの位置等から、搬送装置1が移動する経路を算出する。データ入出力プログラム162は、オーダー情報の受け付けや、搬送装置1からセンサデータの受け付け等を実施し、ピッキング対象の物品の情報の出力などを実施する。
【0020】
データ分析プログラム163は、センサデータが床の画像や映像の場合、搬送装置1が移動した経路の床の状態を分析して、床情報240の更新などを実施する。搬送装置制御プログラム164は、経路作成プログラム161が算出した経路と、床情報240や搬送装置1の状態等に基づいて、利用可能な搬送装置1に搬送する棚及び物品と、搬送先を指令する。
【0021】
オーダー情報200は、物品の出荷を要求するオーダーの情報で、ピッキング対象の物品の情報を格納する。在庫情報220は、物品の在庫に関し、物品が配置された棚の情報や、棚内の配置位置や、数量、重量等の情報を格納する。
【0022】
棚情報230は、棚の位置や重さ等の情報を格納する。床情報240は、床のエリア毎に、床の状態を示す情報を格納する。地図情報250は、倉庫内の地図情報を格納する。装置情報260は、搬送装置1其々についての識別情報(識別子)や位置や稼働状態などを格納する。経路データ270は、搬送装置1毎の経路の情報を格納する。計測データ280は、各搬送装置1から受信したセンサデータや位置情報等を格納する。
【0023】
入力装置130は、キーボードやマウスあるいはタッチパネル等で構成される。出力装置140は、ディスプレイ等で構成される。通信インタフェース170は、ネットワーク90を介して搬送装置1や他の計算機と通信を行う。
【0024】
搬送装置1は、倉庫制御装置100からの指令に応じて物品を搭載した棚を自動搬送する。搬送装置1は、制御装置(制御部)2と、記憶装置4と、駆動装置(駆動部)3と、センサ5と、通信インタフェース6を有する自動搬送装置である。
【0025】
制御装置2は、演算装置21と、メモリ22を含む。メモリ22には自己位置推定プログラム23と、走行制御プログラム24と、計測プログラム25と、通信プログラム26がロードされて演算装置21によって実行される。演算装置21は、マイクロコンピュータやプロセッサで構成される。
【0026】
自己位置推定プログラム23は、センサ5から取得したセンサデータ(例えば、画像データ)等に基づいて搬送装置1の位置を算出する。走行制御プログラム24は、搬送装置1の現在位置と、倉庫制御装置100から受信した経路データに基づいて駆動装置3を制御する。
【0027】
計測プログラム25は、センサ5からセンサデータを取得して倉庫制御装置100へ出力する。通信プログラム26は、ネットワーク90を介して倉庫制御装置100と通信を行う。
【0028】
記憶装置4は、不揮発性の記憶媒体で構成されて、各プログラムや各プログラムが使用するデータを格納する。データの一例としては、経路データ41と、地図情報42と、計測データ43と、装置情報44と、走行実績データ45と、床情報46が含まれる。
【0029】
経路データ41は、倉庫制御装置100から受信した経路データを格納する。地図情報42は、倉庫制御装置100から受信した地図情報250を格納する。計測データ43は、センサ5が取得したセンサデータを格納する。
【0030】
装置情報44は、搬送装置1の識別子(装置ID)や装置の状態、棚の積載有無に関する情報、装置の位置、バッテリ残量等を格納する。例えば、装置情報44は、装置情報260(
図10)のうち、当該搬送装置1に関する情報と同等の情報であってもよい。走行実績データ45は、搬送装置1が移動した経路や、各エリア毎の床面の状態(振動)や移動のモード等の履歴が格納される。
【0031】
床情報46は、倉庫制御装置100から受信した床情報240を格納する。制御装置2は、搬送装置1が移動する床面の状態についての情報に基づいて、搬送装置1の加速条件を決定することができる。
【0032】
駆動装置3は、台車31と、駆動輪33と、テーブル32と、補助輪(キャスター)34と、駆動輪33やテーブル32を駆動する動力源としてのモータ38と、モータ38に電力を供給するバッテリ39を含む。駆動装置3の構成については後述する。なお、駆動輪33とテーブル32を駆動するモータ38は、独立したモータで構成することができる。
【0033】
センサ5は、床を撮影するカメラや、振動を検出する加速度センサ等で構成される。床面にマークなどの位置情報や経路情報が付与されている場合、センサ5としてのカメラで床面を撮影し、自己位置推定プログラム23でマークを識別することで現在位置を特定することができる。センサ5としての加速度センサは、搬送装置1の振動(加速度)を検出し、計測プログラム25は、床面の状態として振動の大きさ等を倉庫制御装置100に通知することができる。
【0034】
演算装置21は、各機能部のプログラムに従って処理を実行することによって、所定の機能を提供する機能部として稼働する。例えば、演算装置21は、走行制御プログラム24に従って処理を実行することで走行制御部として機能する。他のプログラムについても同様である。さらに、演算装置21は、各プログラムが実行する複数の処理のそれぞれの機能を提供する機能部としても稼働する。
【0035】
図2は、搬送装置1と棚7の一例を示す斜視図である。搬送装置1は、直進及び旋回可能な直方体の台車31と、台車31の上面に配置されて昇降可能かつ旋回可能なテーブル32を含む自動走行装置である。搬送装置1は、例えば無人搬送車(AGV:Automated Guided Vehicle)であってもよいし、自律移動ロボット(AMR:Autonomous Mobile Robot)であってもよい。なお、台車31の前進方向の辺には、バンパ35が配置される。
【0036】
物品(又は商品)を格納する棚7は、側面に一対の開口部を有する直方体で構成され、床面から所定の高さで脚部71によって支持された底板72と、物品を載置する1以上の棚板73が配置される。
【0037】
搬送装置1は、テーブル32を下降した状態で棚7の底板72の下方に台車31を移動した後、テーブル32を上昇させて棚7を持ち上げる。搬送装置1は、テーブル32で棚7を持ち上げた状態で台車31を走行させることで、棚7の搬送を行う。
【0038】
テーブル32は、台車31に対して旋回可能であり、台車31が床面上で旋回する際には、テーブル32を台車31に対して相対的に回転させることで、棚7の向きを保持して台車31の進行方向を変更することができる。
【0039】
図示の例では、棚7が2つの開口面を有しているので、テーブル32を180°旋回させることで、異なる開口部をピッキングステーションに提供することができる。なお、棚7の構成は、図示の例に限定されるものではなく、4面の開口部を設けたり、ハンガーを設置した箱ややパレット等で、テーブル32が持ち上げ可能な底板72を有するものであればよい。
【0040】
図3は、搬送装置1の一例を示す底面図である。台車31の底面はバンパ35側を前方とし、底面の前後方向の中間の左右には駆動輪33-L、33-Rが配置されて台車31を直進又は旋回させる。なお、以下の説明は、駆動輪の左右を特定しない場合には、「-」以降を省略した符号「33」を用いる。他の構成要素の符号についても同様である。
【0041】
駆動輪33-L、33-Rの前方と後方には、それぞれ補助輪34-FL、34-RL、34-FR、34-RRが配置されて台車31を支持する。各補助輪34は、ホルダ37を介して台車31の底面に設けた軸36回りで旋回可能に支持される。また、各補助輪34は、ホルダ37に支持された軸(図示省略)によって床面上を回転自在に支持される。
【0042】
図4は、搬送装置1が棚7を搬送する説明図である。搬送装置1は、テーブル32を下降した状態で、棚7の底板72の下方かつ脚部71、71の間に台車31を移動させる(A)。次に、搬送装置1は、底板72にテーブル32を対向させた状態で台車31を停止させてから、テーブル32を上昇させて底板72を所定の高さまで持ち上げる(B)。なお、棚7を持ち上げる高さは、棚7の脚部71が床80に接触せずに、台車31が走行可能であればよい。
【0043】
搬送装置1は、棚7をテーブル32持ち上げた状態で、台車31の旋回と、直進を組み合わせて搬送先のピッキングステーションSTまで移動し、棚7の開口部がピッキングゲート8と対向するようにテーブル32又は台車31を旋回させる。そして、搬送装置1は、停止した状態で作業者にピッキング作業を行わせる(C)。
【0044】
ピッキングゲート8では、作業者が棚7から発送する物品を取り出して、仕分棚に振り分けるピッキング作業を行う。ピッキング作業が完了すると、搬送装置1は、棚7を保管する所定の保管場所へ移動し、保管場所で棚7を降ろす。棚7を降ろした後には、台車31を所定の待機位置へ移動して次回の搬送作業を待つ。
【0045】
図5は、オーダー情報200の一例を示す図である。オーダー情報200は、シリアル番号201と、伝票番号202と、販売店名203と、販売店コード204と、商品名205と、商品コード206と、個数207と、納期208と、オーダー受信日時209と、作業日時210を1つのレコードに含む。
【0046】
シリアル番号201は、倉庫制御装置100が付与したユニークな番号である。伝票番号202は、注文毎に倉庫制御装置100が付与した番号である。販売店名203は、物品の出荷先を示す。
【0047】
本実施例では、伝票番号202が同一でも、商品名205及び商品コード206が異なる場合は、異なるシリアル番号201を付与する例を示す。これは、商品名205及び商品コード206が異なる場合は、それぞれの商品が保管されている棚7が異なる可能性があるためである。
【0048】
個数207は、当該レコードの伝票番号202において、商品名205及び商品コード206で特定される商品が注文された数量を示す。作業日時210は、伝票番号202の商品名205に対して、ピッキング作業が行われる予定日時が格納される。作業日時210は、納期208に加えて、顧客の要望(納期より前に、早く出荷してほしい要望など)や、倉庫の状況(当該商品を早く出荷したい事情がある場合など)に基づいて、決定される。作業日時210は、倉庫制御装置100と連携する他のソフトウェア(例えば倉庫管理システム(WMS:Warehouse Management System))などにより、決められてもよいし、ユーザにより設定されてもよい。
【0049】
図6は、在庫情報220の一例を示す図である。在庫情報220は、シリアル番号221と、商品名222と、商品コード223と、在庫数224と、棚ID225と、棚内の配置位置226を1つのレコードに含む。
【0050】
棚ID225は、当該商品が格納されている棚7の識別子が格納される。棚内の配置位置226は、例えばピッキングステーションSTで、人やロボットがピッキングする際に使用される情報を格納する。棚内の配置位置226は、例えば「U3R2」と記載しているレコードでは、棚7において、「上(U)から3番目の段で、右(R)から2番目の位置」に、対象の商品が配置されていることを示す。
【0051】
図7は、棚情報230の一例を示す図である。棚情報230は、シリアル番号231と、棚ID232と、保管位置233と、棚重量234と、商品重量235を1つのレコードに含む。
【0052】
棚ID232は、各棚7に付与されたユニークな識別子が格納される。棚ID232として、例えば倉庫制御装置100が付与した識別子を格納してもよい。保管位置233は棚7を保管する位置の情報が格納され、例えば地図情報250の座標が格納される。棚7が搬送されている場合には、保管位置233には「搬送中」が格納される。
【0053】
棚重量234には、棚7自体の重さが格納され、商品重量235には棚7が搭載する物品(商品や商品を保管する容器など)の重さが格納される。搬送装置1が搬送する搬送物(棚+商品)の重さは、少なくとも「棚重量」と「商品重量」の和となる。
【0054】
例えば、
図6の在庫情報220等において、各商品の重さと在庫数などを記録しておき、例えば、搬送物(棚+商品)の重さを計算により求めてもよい。なお、「重さ」を計算により求める場合、実際の搬送物の重さと計算値の誤差の許容範囲内に収まるのであれば、棚7及び棚7が搭載する商品のうち、一部の重量について、計算に含めないとすることも可能である。
【0055】
また、別の例として、例えば、搬送装置1が搬送する「搬送物(棚+商品)の重さ」を測定可能な重量センサを搭載しており、ピッキング完了後の棚7を保管位置に戻す際などに重量を計測してもよい。このとき、搬送装置1で計測した重量を、倉庫制御装置100が受信し、棚情報230における当該「搬送物(棚+商品)の重さ」として記録してもよい。
【0056】
倉庫制御装置100は、
図6の在庫情報220から取得した棚ID225の情報をキーとして、当該棚7の保管位置233を特定する。倉庫制御装置100は、例えば搬送装置1の中で「待機」状態にある装置の中で、棚7の保管位置に近い搬送装置1の位置と、棚7の保管位置233と、棚7の搬送先となるピッキングステーションSTの情報などから、当該搬送装置1の移動経路を算出する。
【0057】
図8は、床情報240の一例を示す図である。床情報240は、シリアル番号241と、エリア242と、床の状態243と、エリア設定244と、累積負荷245を1つのレコードに含む。
【0058】
エリア242は、倉庫の床の状態をエリア(区画)単位で管理しており、その各エリアを識別する情報が格納される。例えば、シリアル番号241=1の(a,A)は、
図9の地図情報250において、左上の番地(a,A)を示す。
【0059】
床の状態243は、床の状態、特に損傷レベルを示す情報が格納される。例えば「正常状態」、「損傷程度 小」、「損傷程度 中」、「損傷程度 大」のようにレベル分けしてもよい。また、床の状態243は、例えば「正常状態」、「損傷程度 小」、「損傷程度 中」は走行可、「損傷程度 大」は走行不可(走行禁止)としてもよい。
【0060】
エリア設定244が「通路エリア」の場合、搬送装置1が走行可能な領域であり、棚7を搬送することも可能であることを示す。エリア設定244が「棚保管エリア」の場合、搬送装置1が搬送する棚7が置かれている領域、又は棚7の置き場所として確保されている領域を示す。
【0061】
棚7を搬送していない状態の搬送装置1は、棚7の下を通り抜けられるので走行可能だが、棚7を搬送している状態の搬送装置1は、他の棚7があるエリアは、棚7の衝突を避けるため走行しない。
【0062】
エリア設定244が「走行禁止エリア」の場合は、搬送装置1の走行が制限されるエリアである。例えば「損傷程度 大」のエリアは、「走行禁止エリア」としてもよい。また、他にも、走行の障害となる障害物が検出された領域や、人や他の機器が作業するエリアなどが、この「走行禁止エリア」に設定されてもよい。所定の条件を満たすものを自動的に「走行禁止エリア」としてもよいし、ユーザが「走行禁止エリア」を設定してもよい。累積負荷245は、搬送装置1から当該エリアの床が受けた負荷を累積した値である。負荷としては、搬送装置1が通過したときの負荷(通過回数や通過時の重量など)、搬送装置が旋回したときの負荷(回転回数や回転時の重量)や、搬送装置1が加速又は減速したときの負荷(加速回数や加速したときの重量、減速回数や減速したときの重量など)などがある。
【0063】
累積負荷245は、これらの負荷の一部又は全部の情報を基に算出された値であってもよい。例えば、通過時の重量を累積した合計重量値であってもよい。
【0064】
図9は、地図情報250の一例を示す図である。地図情報250は、行番号251と、列番号252で指定される「エリア」の位置を示す情報である。各エリアは矩形領域で、上述した床情報240のエリア設定244に応じて、「通路エリア」、「棚保管エリア」、「走行禁止エリア」のいずれかに設定される。
【0065】
図10は、装置情報260の一例を示す図である。装置情報260は、シリアル番号261と、装置ID262と、装置の状態263と、棚の積載有無264と、装置の位置265と、バッテリ残量266を1つのレコードに含む。
【0066】
装置ID262は、各搬送装置1に付与されたユニークな識別子を格納する。装置の状態263は、各搬送装置1の状態に関する情報を格納する。状態としては、例えば、「待機」や、「移動中」、「充電中」、「故障」等の状態が入力される。棚の積載有無264は、当該搬送装置1における棚7の積載有無に関する情報である。棚の積載有無264は、当該搬送装置1のテーブル32に棚7を積載しているか否かを示す情報である。
【0067】
なお、倉庫制御装置100が、例えば、ある搬送タスクを処理する(搬送指示する)搬送装置1を選択する際に、搬送効率などに基づいて選択することができる。例えば「移動中」の状態である搬送装置1であっても、早く現在のタスクが完了して、他と比べて早く、次の搬送タスク(上述の、ある搬送タスク)を処理できる場合には、選択される可能性がある。
【0068】
装置の位置265は、各搬送装置1の位置に関する情報を格納する。例えば、搬送装置1は、センサ(カメラ)で、各エリアの床面の所定の位置に付与されている情報(例:マーク)を読み取る。搬送装置1が読み取った情報には、当該エリアの位置に関する情報が含まれており、自己位置を特定可能である。なお、自己位置の特定方法は、他の手法によるものであってもよい。
【0069】
バッテリ残量266は、各搬送装置1のバッテリ39の残量に関する情報である。搬送装置1はバッテリ残量266が所定のバッテリ残量以下となったときに、充電ステーションへ充電しに行ってもよい。
【0070】
ただし、充電ステーションの空き状況(予約状況)や、搬送スケジュール、各搬送装置1のバッテリ残量などに応じて、充電に関するスケジュールが決められてもよい。例えば、多数の搬送装置1が、同じタイミングで充電すると、充電ステーションが混雑して、充電待ちが発生する可能性があるため、搬送効率を考慮したスケジュールが望ましい。
【0071】
図11は、倉庫制御装置100で行われる処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、所定の周期やオーダーを受け付けたタイミングなど、所定のタイミングで実行される。
【0072】
倉庫制御装置100では経路作成プログラム161が、オーダー情報200を作業日時210の昇順でソートして、先頭のレコードから順に以下の処理を実施する(S1)。経路作成プログラム161は、オーダー情報200を選択して、商品コード206から在庫情報220を検索して在庫数224の有無を判定する。在庫がある場合には経路作成プログラム161が棚ID225と棚内の配置位置226を取得して、棚情報230を検索して保管位置233を特定する(S2)。
【0073】
経路作成プログラム161は、地図情報250と、床情報240のエリア設定244と、装置情報260を参照して、上述のように、保管位置233からピッキングステーションSTまでの搬送効率が最大となる搬送装置1を装置情報260から選択する。なお、搬送先のピッキングステーションSTは、発送先(販売店名203)に応じて予め設定されてもよいし、ピッキング作業を行う商品や商品の種類に応じて予め設定されてもよい。
【0074】
そして、経路作成プログラム161は、地図情報250と、床情報240のエリア設定244と、保管位置233とピッキングステーションSTの情報から搬送装置1の搬送経路を算出する(S3)。なお、搬送経路の算出については周知又は公知の手法を採用することができる。
【0075】
次に、搬送装置制御プログラム164は、上記決定された搬送装置1に対して、決定された棚7を、上記算出された経路情報で搬送する指令を送信する(S4)。倉庫制御装置100から搬送の指令を受信した搬送装置1は、受け付けた経路を走行して、指定された棚7を搭載して所定のピッキングステーションSTへ搬送する。
【0076】
ピッキング作業が完了した後は、搬送装置1が棚7を搭載して保管場所まで搬送し、棚7を床80に降ろす。その後、搬送装置1は、所定の待機場所へ移動して搬送のタスクを終了する。
【0077】
なお、搬送装置1が棚7を戻す位置は、元の保管場所に戻してもよいし、棚7の使用頻度などに基づいて、異なる位置に保管してもよい。例えば、使用頻度が高い棚7であれば、搬送装置1がピッキングステーションSTの近傍に棚7を置くようにしてもよい。
【0078】
図12は、搬送装置1で行われる処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、制御装置2が走行制御プログラム24を実行して加速制御を実施する例を示し、搬送装置1が停止してから発進する際に実行される。
【0079】
搬送装置1の制御装置2は、駆動輪33-L、33-Rを等速で駆動する直進モードと、駆動輪33-L、33-Rを逆方向に回転する旋回モードの2つの移動モード(又は搬送モード)を切り替えて台車31を移動させる。なお、旋回モードでは、台車31の旋回とは逆方向にテーブル32を旋回させることで、棚7の向きを保持することができる。なお、駆動輪33-L、33-Rを同一の回転方向の異なる速度で駆動した場合は、走行しながら台車31を旋回させることができる。
【0080】
駆動輪33-L、33-Rを逆方向に駆動する旋回モードは、信地旋回(Spin Turn)であり、例えば、台車31の底面の中心を軸として旋回する。以下では、信地旋回を単に旋回という。
【0081】
制御装置2は、倉庫制御装置100から受信した経路データ41と、自己位置推定プログラム23が検出した台車31の現在位置に基づいて、上記移動モードを決定して駆動輪33を制御する。
【0082】
制御装置2は、テーブル32に棚7を積載しているか否かを判定する(S11)。棚7の有無については、例えば、テーブル32の上に棚7等の物品を検出するセンサを設けて、センサの出力が所定の条件を満たしていれば制御装置2はテーブル32に棚7を積載していると判定してステップS12へ進む。一方、所定の条件を満たしていなければ、制御装置2はテーブル32が棚7を積載していないと判定してステップS15へ進む
【0083】
ステップS12では、制御装置2が、直前の移動モードと次の移動モードが同一であるか否かを判定する。この判定は、制御装置2が走行実績データ45を参照して直前の移動モードを取得し、経路データ41に基づいて決定した次の移動モードを比較することで行われる。直前の移動モードと次の移動モードが同一である場合にはステップS13へ進み、直前の移動モードと次の移動モードが異なる場合にはステップS14へ進む。
【0084】
ステップS15の棚7を積載していない場合、制御装置2は、最大の加速度Aを選択して駆動輪33又はテーブル32を駆動する。棚7を積載し、かつ移動モードが直前と同一の場合には、ステップS13で制御装置2は加速度Aよりも小さい加速度Bを選択して駆動輪33又はテーブル32を駆動する。棚7を積載し、かつ移動モードが直前と異なる場合には、ステップS14で制御装置2は加速度Bよりも小さい最小の加速度Cを選択して駆動輪33又はテーブル32を駆動する。
【0085】
ここで、「最大の加速度A」とは、加速度A、加速度B、加速度Cの中で、加速度Aが最大の加速度であることを示すものである。同様に、「最小の加速度C」とは、加速度A、加速度B、加速度Cの中で、加速度Cが最小の加速度であることを示すものである。
【0086】
なお、加速度A~Cには、直進時の加速度と、旋回時の角加速度が予め設定される。例えば、直進時の加速度A、加速度B、加速度Cとして、所定の加速度A1、所定の加速度B1、所定の加速度C1が予め設定されてもよい。また、旋回時の加速度A、加速度B、加速度Cとして、所定の角加速度A2、所定の角加速度B2、所定の角加速度C2が予め設定されてもよい。直進時の加速度(加速度A1、B1、C1)と旋回時の加速度(角加速度A2、B2、C2)は異なっていてもよい。
【0087】
以上の処理では、搬送装置1が主体となって加速度を制御する場合を示し、倉庫制御装置100から受信した経路データを基に移動モードに応じて加速度を決定する。なお、直前の移動モードは、制御装置2が経路データ41から特定してもよいし、走行実績データ45から特定してもよい。また、制御装置2が倉庫制御装置100から受信した経路データ、又は搬送装置1が有する装置情報44から、棚7の積載の有無を判定して加速度を決定してもよい。
【0088】
上記では、搬送装置1が加速度を制御する例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、倉庫制御装置100が、経路データ又は装置情報260から搬送装置1における棚7の積載の有無を判定し加速度を決定して、搬送装置1へ指令することができる。
【0089】
倉庫制御装置100が加速度制御の主体となる場合には、
図11のステップS4で、例えば、各エリア間の移動における加速度の情報を経路データに含めて搬送装置1に送信することができる。
【0090】
加速度の情報は、加速度そのものに限定されるものではなく、加速度を特定可能な情報(例:加速モードA、加速モードB、加速モードC)や、加速度に関わる情報(例:駆動装置のモータ38のトルクや回転数、ある時間における速度、あるエリア通過時の速度)であってもよい。
【0091】
また、上記では、搬送装置1で加速度を制御する例を示したが、これに限定されるものではなく、加速度と目標速度を加速条件として制御してもよい。例えば、搬送装置1は、第1の加速条件(第1の加速度と第1の目標速度)で加速し、停止前とは異なる移動モードで移動する。その後、搬送装置1は、第1の加速条件よりも小さい第2の加速条件(第2の加速度と第2の目標速度)で加速してもよい。
【0092】
上記加速条件についても、必ずしも加速度を変化させる必要はなく、例えば、速度の閾値を小さく設定することで、左右の車輪の速度のずれが開くことを予防できるため、無理に加速しようとして駆動部や床面へ負荷をかけることを防止できる。
【0093】
また、搬送装置1が棚7を積載していない場合のステップS15では、最大の加速度Aで台車31を加速するが、これは、棚7を積載していない場合は、床面に加わる台車31の負荷が小さいために、ゆっくりと加速する必要がないためである。
【0094】
しかしながら、別の一例として、棚7を積載していなくても搬送装置1や床面への負荷が高い場合(例えば、床面が傷つきやすい材質の場合など)は、「次の移動モードは、直前の移動モードと同じモードか?」の判定を行うステップを加えて、この判定が「No」の場合(異なるモードの場合)は、「加速度Aよりも小さい加速度で加速」するように制御してもよい。
【0095】
上記の他、
図8に示した床情報240における床の状態243の損傷程度や、累積負荷245や、床面の凹凸(床面の仕様として元から設けられている継ぎ目や段差など)に応じて、加速度を制御してもよい。具体的には、床面の損傷程度が大きい場合、あるいは累積負荷が高い場合、又は床面に凹凸(継ぎ目や段差)がある場合には、損傷がない場合に比して、ゆっくり加速するように加速度を低減させてもよい。
【0096】
また、床面及び搬送装置1に係る負荷が特に大きい場合、例えば、棚7を積載する搬送装置1が直前の移動モードと異なる移動モードで移動する場合に、床面の状態に応じてゆっくり加速するように加速度を低減させることで、床面及び搬送装置1に係る負荷と共に搬送効率も考慮した効率的な搬送システムの運用が期待される。
【0097】
あるいは、
図7の棚情報230における棚重量234や商品重量235の合計値など、重量に基づいて、加速度を決めてもよい。例えば、重量が重い場合には、軽い場合に比べて、ゆっくり加速するよう制御してもよい。
【0098】
また、棚7を積載していない搬送装置1が停止した状態から移動する場合の加速度について、制御装置2は、複数の移動モードのうち停止前の移動モードと同じ移動モードで移動する場合に、加速度A(第3の加速度又は第3の目標速度を含む第3の加速条件)で加速するように駆動装置3を制御し、複数の移動モードのうち停止前の移動モードと異なる移動モードで移動する場合に、加速度Aよりも小さい加速度D(
図19参照)又は第3の目標速度よりも小さい第4の目標速度を含む第4の加速条件で加速するように駆動装置3を制御してもよい。すなわち、棚7の積載に関わらず搬送装置1単体で移動する場合でも床面などの状況によっては、異なる移動モードで加速条件を切り替えることができきる。
【0099】
図13は、直進モードと旋回モードを組み合わせた搬送装置1の移動パターンの一例を示す平面図である。図示の例は、搬送装置1が直進した後に90°単位で旋回し、その後、直進する。
【0100】
搬送装置1は、
図9に示した行番号251=「C」、列番号252=「e」のエリア(以下、C,eとする)から、位置エリア(A,e)まで直進し、直進モードから旋回モードに切り替えて、エリア(A,e)で反時計回りに90°旋回する。
【0101】
テーブル32に棚7を積載していない場合、搬送装置1は直前の移動モードに関わらず、加速度A(角加速度A)で旋回して台車31を図中左方向に旋回させる。一方、テーブル32に棚7を積載している場合、搬送装置1は直前の移動モードが直進モードで、次回の移動モードが旋回モードに切り替わるため、最小の加速度C(角加速度C)で旋回して台車31を図中左方向に旋回させる。
【0102】
次に、搬送装置1は、エリア(A,e)からエリア(A,c)に直進移動する。この場合、テーブル32に棚7を積載していない場合、搬送装置1は最大の加速度Aで直進して台車31を図中左方向に移動する。
【0103】
一方、テーブル32に棚7を積載している場合、搬送装置1は直前の移動モードが旋回モードで、次回の移動モードが直進モードに切り替わるため、最小の加速度Cで加速して台車31を図中左方向に移動させる。
【0104】
後述するように、移動モードが切り替わると、補助輪34と床面の間の摩擦が増大し、移動開始時のモータ38の負荷が増大する。そこで、搬送装置1は、直前の移動モードと次回の移動モードが切り替わり、かつ、棚7を積載している場合には、最小の加速度Cで移動(又は旋回)を開始することで、駆動力を低減してバッテリ39の消費を抑制することができる。また、搬送装置1や床面へかかる負荷を低減することができる。なお、棚7を積載していない場合には、最大の加速度Aで移動(又は旋回)を開始することで、移動に要する時間を短縮して搬送処理の効率を向上させることができる。
【0105】
図14は、直進モードと一時停止を繰り返す搬送装置1の移動パターンの一例を示す平面図である。図示の例は、搬送装置1が直進した後に一旦停止し、その後、再度直進する。搬送装置1が直進移動後に、一旦停止し、直進移動する例としては、例えば、移動先のエリアに、他の搬送装置1が先に通過する場合で、他の搬送装置1が当該エリアを通過するのを待つために、一旦停止する。あるいは、ピッキングステーションSTで搬送装置1が順番待ちする場合などでも、一旦停止する。
【0106】
搬送装置1は、エリア(E,c)から、エリア(C,c)まで直進した後に一旦停止する。そして、エリア(C,c)からエリア(A,c)まで直進する。テーブル32に棚7を積載していない場合は、最大の加速度Aで加速してエリア間を移動する。テーブル32に棚7を積載している場合は、中間の加速度Bで加速してエリア間を移動する。
【0107】
棚7を積載していない場合には、最大の加速度Aで移動を開始することで、移動に要する時間を短縮して搬送処理の効率を向上させることができる。
【0108】
図15は、直進モードから旋回モードで反時計回りへ90°旋回した後に、直進モードに切り替わる場合の補助輪の一例を示す上方からの透視図である。
図15の(A)~(C)は、
図13に示した搬送装置1の移動パターンを補助輪34の動きの変化を示す。
【0109】
まず、
図15の(A)では台車31が図中左方から直進モードで右方向へ移動する。各補助輪34は、軸36に牽引されて駆動輪33と平行となって図中右方向へ回転していく。
【0110】
図15の(B)では台車31が一旦停止し、制御装置2は直進モードから旋回モードへ切り替えて、台車31を図中反時計回りに90°旋回させる。台車31の旋回開始時では、各補助輪34は(A)の位置から(B)の円C1へ向けて移動する。
【0111】
そして、旋回中では、軸36が台車31の旋回に伴ってホルダ37に支持された補助輪34を牽引し、補助輪34は円C1に沿って回転する。(B)は、台車31の旋回が完了した状態を示し、各補助輪34は、円C1に沿って停止する。
【0112】
図15の(C)では制御装置2は旋回モードから直進モードへ切り替えて、図中上方へ直進する。台車31の直進開始時では、各補助輪34は(C)の円C1上から駆動輪33と平行となる位置へ向けて移動する。
【0113】
上記直進モードから旋回モードへの移行開始の際と、旋回モードから直進モードへ移行する際に補助輪34と床面の摩擦が増大する。
【0114】
図16は、直進モードから旋回モードで反時計回りへ90°旋回する場合の補助輪の軌跡の一例を示す上方からの透視図である。図中(A)~(C)が、
図15の(A)から(B)に至るまでの補助輪34の軌跡の一部を示す。
【0115】
直進モードが完了した状態では、図中(A)のように、各補助輪34が軸36に伴って駆動輪33と平行な位置で停止する。台車31が反時計回りへ旋回を開始すると、図中(B)のように、各補助輪34は軸36の旋回に伴って円C1に向けて移動を開始する。なお、図中P0、P1、P2は軸36の位置を示す。
【0116】
旋回の開始時では、各補助輪34の動きは異なり、右側の補助輪34-FR、34-RRに比して、左側の補助輪34-FL、34-RLは床面との摩擦が大きくなる。
【0117】
まず、右前輪となる補助輪34-FRは、直進モードで停止した図中位置P0から円C1へ向けて軸36の反時計回りに若干旋回しながら床面上を回転して、円C1に沿った位置P2まで徐々に移動する。この場合、補助輪34-FRは回転しながら軸36の周りでわずかに旋回するだけであるので、床面との間の摩擦は少ない。
【0118】
右後輪となる補助輪34-RRは、直進モードで停止した位置P0から円C1へ向けて軸36の時計回りに若干旋回しながら床面上を回転して、円C1に沿った位置P2まで移動する。この場合、補助輪34-RRは回転しながら軸36の周りでわずかに旋回するだけであるので、床面との間の摩擦は少ない。
【0119】
一方、左前輪となる補助輪34-FLは、直進モードで停止した図中位置P0で軸36の円C1に沿った旋回に応じて、軸36に押されるように円C1の内側へ移動しながら、軸36を時計回りに旋回して、位置P1で円C1の半径方向に沿う。
【0120】
さらに補助輪34-FLは、円C1に沿った軸36の旋回に応じて、位置P1からは軸36に牽引されながら軸36の時計回りに旋回する。そして、軸36が位置P2まで円C1上を旋回すると、ようやく補助輪34-FLは円C1上に向けて回転していく。
【0121】
このように、補助輪34-FLは、位置P0から位置P1までは軸36に押されながら、軸36の時計回りに旋回して円C1の内側へ押され、位置P1から位置P2までは軸36に牽引されながら、軸36の時計回りに旋回する。このため、補助輪34-FLは殆ど回転せずに床面上で旋回することになり、床面との間の摩擦は大きなものとなる。
【0122】
左後輪となる補助輪34-RLは、直進モードで停止した図中位置P0から軸36の円C1に沿った旋回に応じて、軸36に押されるように円C1の外側へ移動しながら、軸36を時計回りに旋回する。そして、補助輪34-RLは円C1の半径方向に沿った後に位置P1では軸36に牽引されて円C1に向かいながら、軸36を時計回りに旋回する。
【0123】
さらに補助輪34-RLは、位置P1からは軸36に牽引されながら軸36の時計回りに旋回しながら回転する。そして、軸36が位置P2まで円C1上を旋回すると、補助輪34-RLは円C1上に沿うことになる。
【0124】
このように、補助輪34-RLは、位置P0から位置P1近傍までは軸36に押されて、軸36の時計回りに旋回しながら円C1の外側へ移動し、位置P1の近傍から位置P2までは軸36に牽引されて、軸36の時計回りに旋回しながら回転する。このため、補助輪34-RLは床面上で旋回してから回転することになり、床面との間の摩擦は大きなものとなる。
【0125】
以上のように、直進モードから旋回モードへ切り替えて、台車31の旋回を開始すると旋回方向の補助輪34-FL、34-RLの床面との摩擦が大きくなる。このため、台車31が棚7を積載している場合には、制御装置2が最小の加速度C(角加速度C)に切り替えることで、摩擦の増大に応じた駆動力の増大を抑制して、モータ38の負荷とバッテリ39の消費を抑制することができる。また、搬送装置1や床面へかかる負荷を低減することができる。
【0126】
図17は、旋回モードから直進モードで直進する場合の補助輪の軌跡の一例を示す上方からの透視図である。図中(A)~(C)が、
図15の(B)から(C)に至るまでの補助輪34の軌跡の一部を示す。
【0127】
旋回モードが完了した状態では、図中(A)のように各補助輪34は円C1に沿った位置で停止している。台車31が図中上方へ直進を開始すると、図中(B)のように、各補助輪34は軸36に牽引されて円C1から離れて移動を開始する。
【0128】
直進を開始すると、各補助輪34の動きは異なり、右側の補助輪34-FR、34-RRに比して、左側の補助輪34-FL、34-RLは床面との摩擦が大きくなる。
【0129】
まず、右前輪となる補助輪34-FRは、旋回モードで停止した図中位置P0から軸36に牽引されて、台車31の内側へ向けて軸36の時計回りに若干旋回しながら床面上を回転する。補助輪34-FRは軸36に牽引されて位置P1から位置P2まで移動しながら徐々に駆動輪33に平行となる。補助輪34-FRは回転しながら軸36の周りでわずかに旋回するだけであるので、床面との間の摩擦は少ない。
【0130】
右後輪となる補助輪34-RRは、直進モードで停止した位置P0から台車31の外側へ向けて軸36の反時計回りに若干旋回しながら床面上を回転して、軸36に牽引されて位置P1、P2へ移動する。この場合、補助輪34-RRは回転しながら軸36の周りでわずかに旋回するだけであるので、床面との間の摩擦は少ない。
【0131】
一方、左前輪となる補助輪34-FLは、直進モードで停止した図中位置P0で軸36の図中上方への直進に応じて、軸36に押されるように台車31の内側へ移動しながら、軸36を反時計回りに旋回して、位置P1で直進方向と直交する。
【0132】
さらに補助輪34-FLは、軸36の直進に応じて、位置P1からは軸36に牽引されながら軸36の反時計回りに旋回する。そして、軸36が位置P2の近傍まで直進すると、ようやく補助輪34-FLは図中上方に向けて回転していく。そして、位置P2では補助輪34-FLは駆動輪33と平行となって回転する。
【0133】
このように、補助輪34-FLは、位置P0から位置P1までは軸36に押されながら、軸36の反時計回りに旋回して台車31の内側へ押され、位置P1から位置P2までは軸36に牽引されながら、軸36の反時計回りに旋回する。このため、補助輪34-FLは殆ど回転せずに床面上で旋回することになり、床面との間の摩擦は大きなものとなる。
【0134】
左後輪となる補助輪34-RLは、旋回モードで停止した図中位置P0から軸36の図中上方への直進に応じて、軸36に押されるように台車31の外側へ移動しながら、軸36を反時計回りに旋回する。そして、補助輪34-RLは位置P1で直進方向とほぼ直交した後に、今度は軸36に牽引されて、軸36を反時計回りに旋回する。
【0135】
さらに補助輪34-RLは、位置P1からは軸36に牽引されながら軸36の反時計回りに旋回しながら回転して徐々に台車31の内側へ向かう。そして、軸36が位置P2まで直進すると、補助輪34-RLは駆動輪33と平行となって回転する。
【0136】
このように、補助輪34-RLは、位置P0から位置P1近傍までは軸36に押されて、軸36の反時計回りに旋回しながら台車31の外側へ移動し、位置P1の近傍から位置P2までは軸36に牽引されて、軸36の反時計回りに旋回しながら回転して台車31の内側へ向かう。このため、補助輪34-RLは床面上で旋回してから回転を始めることになり、床面との間の摩擦は大きなものとなる。
【0137】
以上のように、旋回モードから直進モードへ切り替えて、台車31の直進を開始すると旋回した側の補助輪34-FL、34-RLの床面との摩擦が大きくなる。このため、台車31が棚7を積載している場合には、制御装置2が最小の加速度Cに切り替えることで、摩擦の増大に応じた駆動力の増大を抑制して、モータ38の負荷とバッテリ39の消費を抑制し、搬送装置1や床面へかかる負荷を低減することができる。
【0138】
図18は、制御装置2が行う加速度の切り替えパターン(加速条件)の一例を示す速度と時間の関係を示すグラフである。制御装置2は、
図12で示したように、棚7を積載していない場合には、最大の加速度A(図中αA)で目標速度Vtまで台車31を加速する。
【0139】
制御装置2は、棚7を積載している場合で、直前の移動モードから変化がない場合には、中間の加速度B(図中αB)で目標速度Vtまで台車31を加速する。そして、制御装置2は、棚7を積載している場合で、かつ、直前の移動モードと次回の移動モードが異なる場合には、最小の加速度C(図中αC)で目標速度Vtまで台車31を加速する。なお、旋回モードの場合は、目標速度Vtは、目標角速度に置き換えるものとする。
【0140】
以上のように、本実施例の搬送装置1は、移動モードが切り替わった後に、搬送装置1を発進させる際の加速度を抑制することで、発進の際の駆動力を低減してモータ38の負荷とバッテリ39の消費を抑制することが可能となる。また、搬送装置1や床面へかかる負荷を低減することができる。
【0141】
また、搬送装置1の制御装置2は、走行実績データ45の振動(加速度)から床面の状態をエリア毎に推定しておき、振動の大きさが所定の閾値以上のエリアで発進又は旋回する場合には、移動モードの切り替えがない場合でも、最小の加速度Cに抑制することができる。
【0142】
また、搬送装置1の制御装置2は、倉庫制御装置100から床情報240を取得して、床の状態243が「損傷程度 小」や「損傷程度 中」等の所定の条件を満たすエリアで発進又は旋回する場合には、移動モードの切り替えがない場合でも、最小の加速度C(加速条件)に抑制することができる。
【0143】
また、倉庫制御装置100は、各搬送装置1の経路から床情報240の累積負荷245を更新し、累積負荷245の値が所定の閾値を超えるエリアで搬送装置1が発進又は旋回する場合には、加速度を加速度Cへ切り替えるように指令してもよい。加速度を切り替える指令は、経路データ270に付加することができる。
制御装置2は、棚7を積載している場合で、直前の移動モードから変化がない場合には、2番目の加速度B(図中αB)で、2番目の目標速度Vt2まで台車31を加速する。そして、制御装置2は、棚7を積載している場合で、かつ、直前の移動モードと次回の移動モードが異なる場合には、より小さい加速度C(図中αC)で、かつより低い目標速度Vt3まで台車31を加速する。
棚7を積載している場合の加速度Bと目標速度Vt2を第1の加速条件とし、直前の移動モードと次回の移動モードが異なる場合の加速度Cと目標速度Vt3を第2の加速条件とし、棚7を積載していない場合の加速度Aと目標速度Vt1を第3の加速条件とすることができる。
さらに、搬送装置1は、損傷の有る床面で加速する場合は、第2の加速条件(加速度B、目標速度Vt3)で加速する代わりに、加速度Cよりも小さい加速度又は目標速度Vt3よりも小さい目標速度を含む加速条件で加速するように駆動装置3を制御することができる。なお、旋回モードの場合は、目標速度は、目標角速度に置き換えるものとする。なお、加速度Cよりも小さい加速度は、例えば、図中αDの加速度Dとしてもよい。また、目標速度Vt3よりも小さい目標速度として、例えば、図中の目標速度Vt4としてもよい。この加速度Dは、加速度A、加速度B、加速度C、加速度Dの中で、最小の加速度であり、以降の説明において「最小の加速度D」と呼ぶことがある。
上記により、搬送装置1は、加速度が大きい場合には目標速度も高く設定して台車31の移動時間を短縮して搬送効率を向上させ、加速度が小さい場合には、目標速度を低く設定することで、補助輪34の摩擦による駆動力の増大や、床の状態が悪いエリアでの振動を抑制することが可能となる。また、搬送装置1や床面へかかる負荷を低減することができる。
なお、加速度及び目標速度を制御する主体は搬送装置1に限定されるものではなく、倉庫制御装置100が加速度と目標速度を決定して、経路データに付加して指令するようにしてもよい。
なお、搬送装置1は、床面の損傷状態を床情報46(又は床情報240)から取得してもよいが、累積走行実績(累積負荷245)が所定の基準を超える床面や、凹凸の有る床面で移動する場合にも損傷のある床面として、第2の加速条件で加速する代わりに、加速度Bよりも小さい加速度又は目標速度Vtよりも小さい目標速度を含む加速条件で制御してもよい。