(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114891
(43)【公開日】2022-08-08
(54)【発明の名称】搬送システム、搬送システムの制御方法及び搬送装置
(51)【国際特許分類】
B65G 1/00 20060101AFI20220801BHJP
【FI】
B65G1/00 501C
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021011359
(22)【出願日】2021-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】319007240
【氏名又は名称】株式会社日立インダストリアルプロダクツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】特許業務法人藤央特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 浩一
【テーマコード(参考)】
3F022
【Fターム(参考)】
3F022FF01
3F022JJ11
3F022LL07
3F022MM08
3F022QQ00
3F022QQ17
(57)【要約】
【課題】搬送装置に振動が発生した位置における床面の状態を判定する。
【解決手段】移動可能に設置された、物品を格納する移動棚と、床面を移動し、移動棚を持ち上げて搬送可能な搬送装置と、搬送装置の移動を制御する制御装置と、を備え、搬送装置は、移動中の搬送装置の振動を計測する第一の振動センサと、床面上に配置されたマーカに基づいて搬送装置の位置情報を推定する位置推定部と、第一の振動センサが計測した移動中の搬送装置の振動の情報及び位置情報を制御装置へ送信する通信部と、を有し、制御装置は、少なくとも第一の振動センサが計測した移動中の搬送装置の振動の情報と当該振動を計測したときの搬送装置の位置情報とを含む第一の振動データを搬送装置から取得して、第一の振動データに基づいて振動を計測した時の搬送装置の位置における前記床面の状態を判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能に設置された、物品を格納する移動棚と、
床面を移動し、前記移動棚を持ち上げて搬送可能な搬送装置と、
前記搬送装置の移動を制御する制御装置と、を備え、
前記搬送装置は、
移動中の前記搬送装置の振動を計測する第一の振動センサと、
前記床面上に配置されたマーカに基づいて前記搬送装置の位置情報を推定する位置推定部と、
前記第一の振動センサが計測した移動中の前記搬送装置の振動の情報及び前記位置情報を前記制御装置へ送信する通信部と、を有し、
前記制御装置は、
少なくとも前記第一の振動センサが計測した移動中の前記搬送装置の振動の情報と当該振動を計測したときの前記搬送装置の位置情報とを含む第一の振動データを前記搬送装置から取得して、前記第一の振動データに基づいて前記振動を計測した時の前記搬送装置の位置における前記床面の状態を判定することを特徴とする搬送システム。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送システムであって、
前記搬送装置は、
当該搬送装置を駆動する駆動輪と、
当該搬送装置を支持する補助輪と、を有し、
前記第一の振動センサは、前記補助輪の上部に配置されたことを特徴とする搬送システム。
【請求項3】
請求項1に記載の搬送システムであって、
前記搬送装置は、
当該搬送装置を駆動する駆動輪と、
当該搬送装置を支持する補助輪と、を有し、
前記第一の振動センサは、前記補助輪の取り付け部に配置されたことを特徴とする搬送システム。
【請求項4】
請求項1に記載の搬送システムであって、
前記移動棚は、搬送中の前記移動棚の振動を計測する第二の振動センサを備え、
前記制御装置は、
前記第二の振動センサが計測した振動の情報と前記第二の振動センサが振動を計測したときの前記移動棚を搬送する前記搬送装置の位置情報とを含む第二の振動データを取得し、前記第一の振動データ及び前記第二の振動データに基づいて前記振動を計測した時の前記搬送装置の位置における床面の状態を判定することを特徴とする搬送システム。
【請求項5】
請求項1に記載の搬送システムであって、
前記制御装置は、
前記振動を計測した時の前記搬送装置の位置における前記床面の状態を判定する際、
前記第一の振動データの値が所定の閾値を超えた場合に、前記振動を計測した時の前記搬送装置の位置における前記床面に損傷があると判定することを特徴とする搬送システム。
【請求項6】
請求項5に記載の搬送システムであって、
前記制御装置は、
前記搬送装置が前記移動棚を搬送中であるか否かを示す搬送情報を取得し、
前記振動を計測した時の前記搬送装置が前記移動棚を搬送中である場合と搬送中でない場合とで、異なる値の前記閾値が設けられることを特徴とする搬送システム。
【請求項7】
請求項6に記載の搬送システムであって、
前記制御装置は、
前記搬送装置が搬送する前記移動棚の重量を特定する重量情報を取得し、
前記振動を計測した時の前記搬送装置が前記移動棚を搬送中である場合、当該移動棚の重量に応じて前記閾値の値が設定されることを特徴とする搬送システム。
【請求項8】
請求項5に記載の搬送システムであって、
前記制御装置は、
前記振動を計測した時の前記搬送装置の走行速度の情報を取得し、
前記振動を計測した時の前記搬送装置の位置における前記搬送装置の前記走行速度に応じて前記閾値の値が設定されることを特徴とする搬送システム。
【請求項9】
請求項5に記載の搬送システムであって、
前記制御装置は、
前記振動を計測した時の前記搬送装置の位置における床面の状態を判定する際、
同一の位置情報における、所定の数以上の前記第一の振動データの値が前記閾値を超えた場合に、前記位置情報に対応する床面に損傷があると判定することを特徴とする搬送システム。
【請求項10】
請求項5に記載の搬送システムであって、
前記制御装置は、
前記振動を計測した時の前記搬送装置の位置における床面の状態を判定する際、
同一の位置情報における、所定の数以上の前記搬送装置から取得した前記第一の振動データの値それぞれが前記閾値を超えた場合に、前記位置情報に対応する床面に損傷があると判定することを特徴とする搬送システム。
【請求項11】
請求項5に記載の搬送システムであって、
前記床面は複数の区画に区分されて管理され、
前記制御装置は、
前記搬送装置から取得した前記第一の振動データの値の大きさに応じて、前記区画ごとに床面の状態を複数段階で判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の搬送システム。
【請求項12】
請求項11に記載の搬送システムであって、
前記床面の状態の判定結果を可視表示する出力装置を備えることを特徴とする搬送システム。
【請求項13】
請求項5に記載の搬送システムであって、
前記制御装置は、
判定した床面の損傷度合いが所定の基準を超える場合にアラートを通知することを特徴とする搬送システム。
【請求項14】
請求項1に記載の搬送システムであって、
前記制御装置は、
前記搬送装置の状態を示す情報を取得し、
前記振動を計測した時の前記搬送装置の位置における床面の状態を判定する際、
所定の条件を満たす状態の前記搬送装置から取得した前記第一の振動データに基づいて、前記振動を計測した時の前記搬送装置の位置における床面の状態を判定することを特徴とする搬送システム。
【請求項15】
請求項1に記載の搬送システムであって、
前記搬送装置は、
床面の画像を撮影する画像センサをさらに有し、
前記制御装置は、
前記振動を計測した時の前記搬送装置の位置における床面の状態を判定する際、
前記第一の振動データ及び前記振動を計測した時の前記搬送装置の位置における床面の画像の情報である画像データに基づいて、床面の状態を判定することを特徴とする搬送システム。
【請求項16】
搬送装置に設けられた第一の振動センサにより、床面を移動中の搬送装置の振動を計測するステップと、
前記第一の振動センサが計測した移動中の前記搬送装置の振動の情報と当該振動を計測したときの前記搬送装置の位置情報とを含む第一の振動データを取得するステップと、
前記第一の振動データに基づいて前記振動を計測した時の前記搬送装置の位置における床面の状態を判定するステップと、を備える搬送システムの制御方法。
【請求項17】
床面を走行し、移動可能に設置された移動棚を搬送する搬送装置であって、
移動中の前記搬送装置の振動を計測する第一の振動センサと、
前記床面上に配置されたマーカに基づいて前記搬送装置の位置情報を推定する位置推定部と、
前記搬送装置の移動を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第一の振動センサが計測した移動中の前記搬送装置の振動の情報と当該振動を計測したときの前記搬送装置の前記位置情報とを含む第一の振動データを取得して、前記第一の振動データに基づいて前記振動を計測した時の前記搬送装置の位置における床面の状態を判定することを特徴とする搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送システム、搬送システムの制御方法及び搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物流倉庫では、納入された物品を保管し、注文を受け付けると該当する物品を取り出して、梱包した後に顧客あてに発送している。近年では無人搬送車によって物品を運搬する搬送システムが採用されることがある。
【0003】
本技術分野の背景技術として、路面画像から路面の特徴を抽出する技術がある。例えば、特開2016-166853に記載の技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
搬送システムにおいて、例えば搬送装置が、床面の状態が悪い場所や床面に凹凸がある場所を走行する場合、搬送装置には当該床面の状態に起因した衝撃や振動が発生し得る。搬送装置や床面が受ける衝撃や振動が大きい場合、搬送装置や搬送物、及び床面への負荷の増大へとつながり得る。搬送システムの信頼性向上のためには、例えば搬送装置が床面を走行したときに床面の状態に起因して大きな衝撃や振動が発生した場合、当該衝撃や振動が発生した位置における床面の状態を把握でき、床面の状態に応じたシステム運用及びメンテナンスが可能であることが望まれる。ひいては、搬送システムにおける予期せぬ移動効率の低下を防ぐことが望まれる。
【0006】
そこで、搬送装置が走行時に衝撃や振動が発生した位置における床面の状態を判定し、搬送システムの信頼性を向上可能な搬送システム、搬送システムの制御方法及び搬送装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様である搬送システムは、移動可能に設置された、物品を格納する移動棚と、床面を移動し、前記移動棚を持ち上げて搬送可能な搬送装置と、前記搬送装置の移動を制御する制御装置と、を備え、前記搬送装置は、移動中の前記搬送装置の振動を計測する第一の振動センサと、前記床面上に配置されたマーカに基づいて前記搬送装置の位置情報を推定する位置推定部と、前記第一の振動センサが計測した移動中の前記搬送装置の振動の情報及び前記位置情報を前記制御装置へ送信する通信部と、を有し、前記制御装置は、少なくとも前記第一の振動センサが計測した移動中の前記搬送装置の振動の情報と当該振動を計測したときの前記搬送装置の位置情報とを含む第一の振動データを前記搬送装置から取得して、前記第一の振動データに基づいて前記振動を計測した時の前記搬送装置の位置における前記床面の状態を判定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、搬送装置が走行時に衝撃や振動が発生した位置における床面の状態を判定し、搬送システムの信頼性を向上可能な搬送システム、搬送システムの制御方法及び搬送装置を実現できる。
【0009】
本明細書において開示される主題の、少なくとも一つの実施の詳細は、添付されている図面と以下の記述の中で述べられる。開示される主題のその他の特徴、態様、効果は、以下の開示、図面、請求項により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1における搬送システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】実施例1における、搬送装置と棚の一例を示す斜視図である。
【
図4】搬送装置のフレームの底面の輪郭と駆動輪及び補助輪の一例を示す斜視図である。
【
図10】倉庫制御装置で行われる処理の一例を示すフローチャートである。
【
図15】倉庫制御装置で行われる分析処理の一例を示すフローチャートである。
【
図16】倉庫制御装置で行われる分析処理のうち、振動データの集計処理の一例を示すフローチャートである。
【
図17】分析処理で使用する損傷度テーブルの一例を示す図である。
【
図18】分析処理で使用する閾値テーブルの一例を示す図である。
【
図19】床面状態の可視化画面の一例を示す図である。
【
図20】実施例2における、搬送装置と棚の一例を示す図である。
【
図21】床面状態の可視化に関するシステム構成の一例を示す図である。
【
図22】実施例3における搬送システムの構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【実施例0012】
図1は、実施例1における搬送システムの構成の一例を示すブロック図である。本実施例の搬送システムは、倉庫制御装置100と、ネットワーク90と、ネットワーク90を介して倉庫制御装置100と接続する複数の搬送装置1と、を備える。例えば、倉庫制御装置100が、搬送装置1に搬送させる棚7と、搬送先のピッキングステーションを指定した搬送指令を搬送装置1に送信して、搬送装置1に自動で搬送させる例を示す。
【0013】
倉庫制御装置100は、演算装置110と、メモリ120と、入力装置130と、出力装置140と、記憶装置150と、通信インタフェース170を含む計算機である。
【0014】
記憶装置150は、不揮発性の記憶媒体を有し、演算装置110が実行するプログラムと、プログラムが使用するデータを格納する。プログラムの一例として、経路作成プログラム161と、データ入出力プログラム162と、データ分析プログラム163と、搬送装置制御プログラム164が記憶装置150に格納され、演算装置110は必要なプログラムをメモリ120にロードして実行する。
【0015】
また、記憶装置150が格納するデータの一例としては、オーダー情報200と、在庫情報220と、棚情報230と、床情報240と、地図情報250と、装置情報260と、経路データ270と、計測データ280と、振動データ290と、閾値テーブル(閾値情報)310と、損傷度テーブル(損傷度情報)320が格納される。
【0016】
経路作成プログラム161は、搬送装置1が移動する経路を算出する。経路作成プログラム161は、例えば、ピッキング対象の物品(又は商品)の位置と、行き先のピッキングステーションの位置等から、搬送装置1が移動する経路を算出する。データ入出力プログラム162は、オーダー情報の受け付けや、搬送装置1からセンサデータの受け付け等を実施し、ピッキング対象の物品の情報の出力などを実施する。
【0017】
データ分析プログラム163は、センサデータが振動データの場合、搬送装置1が移動した経路の床面の状態を振動データから分析して、床情報240の更新などを実施する。あるいは、データ分析プログラム163は、センサデータが床面の画像や映像の場合、搬送装置1が移動した経路の床面の状態を画像から分析して、床情報240の更新などを実施する。
【0018】
搬送装置制御プログラム164は、経路作成プログラム161が算出した経路と、床情報240や搬送装置1の状態等に基づいて、利用可能な搬送装置1に対して搬送する棚7及び物品と、搬送先を指令する。
【0019】
オーダー情報200は、物品の出荷を要求するオーダーの情報で、ピッキング対象の物品の情報を格納する。在庫情報220は、物品の在庫に関し、物品が配置された棚の情報や、棚内の配置位置や、数量、重量等の情報を格納する。
【0020】
棚情報230は、棚の位置や重さ等の情報を格納する。床情報240は、床のエリア毎に、床面の状態を示す情報を格納する。地図情報250は、倉庫内の地図情報を格納する。装置情報260は、搬送装置1其々についての識別情報(識別子)や位置や稼働状態などを格納する。経路データ270は、搬送装置1毎の経路の情報を格納する。計測データ280は、各搬送装置1から受信したセンサデータや位置情報や走行状態等を格納する。振動データ290は、搬送装置1に衝撃や振動が発生した位置と、衝撃や振動の大きさ及び走行状態を格納する。ここで、搬送装置が床面を走行したときに、搬送装置や床面が受ける衝撃や振動について、以降の説明において「振動」と説明することがある。
【0021】
入力装置130は、キーボードやマウスあるいはタッチパネル等で構成される。出力装置140は、ディスプレイ等で構成される。通信インタフェース170は、無線によるネットワーク90を介して搬送装置1や他の計算機と通信を行う。
【0022】
搬送装置1は、倉庫制御装置100からの指令に応じて物品を搭載した棚7を自動搬送することができる移動体である。搬送装置1は、制御装置(制御部)2と、記憶装置4と、駆動装置(駆動部)3と、センサ5と、通信インタフェース6を有する自動搬送装置である。センサ5は、例えば、振動センサ(加速度センサ)51と、イメージセンサ52を含む。
【0023】
制御装置2は、演算装置21と、メモリ22を含む。メモリ22には自己位置推定プログラム23と、走行制御プログラム24と、計測プログラム25と、通信プログラム26がロードされて演算装置21によって実行される。演算装置21は、マイクロコンピュータやプロセッサで構成される。
【0024】
自己位置推定プログラム23は、イメージセンサ52から取得したイメージデータ(画像又は動画データ)等に基づいて搬送装置1の位置を算出する。なお、本実施例では、床面に位置を示すマーカが予め表示されている例を示す。イメージセンサ52が読み取ったマーカから自己位置推定プログラム23が搬送装置1の位置を算出する。床面上に配置されたマーカは、搬送装置1のセンサ5により読み取り可能な情報であり、例えば、QRコード(登録商標)である。なお、搬送装置1の位置推定は、イメージセンサ52から取得したイメージデータ等を、倉庫制御装置100へ送信し、倉庫制御装置100が行うように構成されてもよい。マーカは、マークや基準マーカと呼ばれてもよい。
【0025】
例えば、倉庫の床は、複数の区画で管理され、複数の区画それぞれに、当該区画の位置に関するマーカが表記されている。搬送装置1は、床を走行し、各区画上を通るときに当該区画の床に表記されたマーカを読み取って当該区画の位置に関する情報を取得する。マーカは、その区画の位置を特定するための情報を含んでいればよく、例えばその区画の位置情報でもよいし、その区画の位置情報と対応づけられている情報(例えばその区画の識別情報など)であってもよい。
【0026】
走行制御プログラム24は、搬送装置1の現在位置と、倉庫制御装置100から受信した経路データ41に基づいて駆動装置3を制御する。なお、倉庫制御装置100は、経路作成プログラム161で生成された搬送装置1毎の経路データ270を、搬送装置1に送信する。
【0027】
計測プログラム25は、センサ5から取得したセンサデータと、走行制御プログラム24から取得した走行速度や加速度と、自己位置推定プログラム23が算出した搬送装置1の位置を取得して倉庫制御装置100へ送信する。センサデータとしては、振動センサ51からの振動データと、イメージセンサ52からの床面の画像データが含まれる。また、計測プログラム25が倉庫制御装置100へセンサデータを送信するタイミングは、所定のタイミングや所定の周期(例えば、24時間毎)等に実施すればよい。
【0028】
計測プログラム25は、センサ5や各プログラムから取得したデータを、一旦記憶装置4の計測データ43に蓄積してから倉庫制御装置100に送信してもよい。通信プログラム26は、ネットワーク90を介して倉庫制御装置100と通信を行う。
【0029】
記憶装置4は、不揮発性の記憶媒体で構成されて、各プログラムや各プログラムが使用するデータを格納する。データの一例としては、経路データ41と、地図情報42と、計測データ43と、装置情報44と、走行実績データ45と、床情報46が含まれる。
【0030】
経路データ41は、倉庫制御装置100から受信した経路データを格納する。地図情報42は、倉庫制御装置100から受信した地図情報250を格納する。計測データ43は、上述したセンサ5が取得したセンサデータや各プログラムが取得又は算出したデータを格納する。
【0031】
計測データ43に格納された後に倉庫制御装置100へ送信されるデータとしては、計測日時、装置ID、振動データ、画像データ、位置情報、走行モード、走行速度、走行加速度、棚の積載有無、搬送棚IDを1つのレコードに含む。
【0032】
装置情報44は、搬送装置1の識別子(装置ID)や装置の状態、棚の積載有無に関する情報、装置の位置、バッテリ残量、累積走行距離、累積加速回数等を格納する。例えば、装置情報44は、装置情報260(
図9)のうち、当該搬送装置1に関する情報と同等の情報であってもよい。
走行実績データ45は、搬送装置1が移動した経路や、各エリア毎の床面の状態(振動)や移動のモード等の履歴が格納される。なお、走行実績データ45は、計測データに含めるようにしてもよい。
【0033】
床情報46は、倉庫制御装置100から受信した床情報240を格納する。制御装置2は、床情報46を参照することで搬送装置1が移動する床面の情報に基づいて、搬送装置1の加速条件等を決定することができる。
【0034】
駆動装置3は、台車31と、駆動輪33と、テーブル32と、補助輪(キャスター)34と、駆動輪33やテーブル32を駆動する動力源としてのモータ38と、モータ38に電力を供給するバッテリ39を含む。駆動装置3の構成については後述する。なお、駆動輪33とテーブル32を駆動するモータ38は、それぞれ独立したモータで構成することができる。
【0035】
センサ5は、床面を撮影するイメージセンサ52(カメラ)や、振動を検出する振動センサ(加速度センサ)51等で構成される。床面にマークなどの位置情報や経路情報が付与されている場合、センサ5としてのイメージセンサ52で床面を撮影し、自己位置推定プログラム23でマークを識別することで現在位置を特定することができる。また、イメージセンサ52で撮影した床面の画像データを倉庫制御装置100に送信し、床面の状態を分析することができる。
【0036】
センサ5としての振動センサ51は、搬送装置1が床面上を移動することで、床面の状態に応じて搬送装置1に生じる、振動(加速度)を検出し、計測プログラム25は、床面の状態として振動の大きさと、振動が発生した床面の位置情報を倉庫制御装置100に通知することができる。なお、搬送装置1の移動(走行)については、少なくとも直進移動と、その場で車体の向きを回転させるように移動する旋回移動とが含まれる。
【0037】
演算装置21は、各機能部のプログラムに従って処理を実行することによって、所定の機能を提供する機能部として稼働する。例えば、演算装置21は、走行制御プログラム24に従って処理を実行することで走行制御部として機能する。他のプログラムについても同様である。さらに、演算装置21は、各プログラムが実行する複数の処理のそれぞれの機能を提供する機能部としても稼働する。
【0038】
図2は、搬送装置1と棚7の一例を示す斜視図である。搬送装置1は、直進及び旋回可能な直方体の台車31と、台車31の上面に配置されて昇降可能かつ旋回可能なテーブル32を含む自動走行装置である。搬送装置1は、例えば無人搬送車(AGV:Automated Guided Vehicle)であってもよいし、自律移動ロボット(AMR:Autonomous Mobile Robot)であってもよい。なお、台車31の前進方向の辺には、バンパ35が配置される。
【0039】
物品(又は商品)を格納する棚7は、側面に一対の開口部を有する直方体で構成され、床面から所定の高さで脚部71によって支持された底板72と、物品を載置する1以上の棚板73が配置される。
【0040】
搬送装置1は、テーブル32を下降した状態で棚7の底板72の下方に台車31を移動した後、テーブル32を上昇させて棚7を持ち上げる。搬送装置1は、テーブル32で棚7を持ち上げた状態で台車31を走行させることで、棚7の搬送を行う。
【0041】
テーブル32は、台車31に対して旋回可能であり、台車31が床面上で旋回する際には、テーブル32を台車31に対して相対的に回転させることで、棚7の向きを保持して台車31の進行方向を変更することができる。
【0042】
図示の例では、棚7が2つの開口面を有しているので、テーブル32を180°旋回させることで、異なる開口部をピッキングステーションに提供することができる。なお、棚7の構成は、図示の例に限定されるものではなく、4面の開口部を設けたり、ハンガーを設置した箱ややパレット等で、テーブル32が持ち上げ可能な底板72を有するものであればよい。
【0043】
図3は、搬送装置1の一例を示す底面図である。台車31の底面はバンパ35側を前方とし、底面の前後方向の中間の左右には駆動輪33-L、33-Rが配置されて台車31を直進又は旋回させる。なお、以下の説明は、駆動輪の左右を特定しない場合には、「-」以降を省略した符号「33」を用いる。他の構成要素の符号についても同様である。
【0044】
駆動輪33-L、33-Rの前方と後方には、それぞれ補助輪34-FL、34-RL、34-FR、34-RRが配置されて台車31を支持する。各補助輪34は、ホルダ37を介して台車31の底面に設けた軸36回りで旋回可能に支持される。また、各補助輪34は、ホルダ37に支持された軸(図示省略)によって床面上を回転自在に支持される。
【0045】
図4は、搬送装置1のフレーム61の底面の輪郭の一部を簡略表示したものと駆動輪33及び補助輪34の一例を示す斜視図である。
図5は、振動センサを取り付け位置の概略図である。搬送装置1のフレーム61は、方形の枠状に構成されている。フレーム61の下部には、駆動輪33と補助輪34が取り付けられて床面上を走行する。
【0046】
枠状のフレーム61の四隅の下部には、補助輪34を取り付ける台座62が設けられる。台座62の下面には補助輪34を支持するための軸36が取り付けられ、軸36の軸回りで回転可能なホルダ37が取り付けられ、ホルダ37は補助輪34を回転自在に支持する。
【0047】
テーブル32に加わる荷重は、フレーム61を介して補助輪34と駆動輪33によって支持される。補助輪34に加わる荷重は、フレーム61から台座62、軸36及びホルダ37を介して伝達される。補助輪34を支持する台座の上面には振動センサ51が取り付けられる。
【0048】
なお、
図4の例では、フレーム61の左前方となる補助輪34-FLを支持する台座62の上面に振動センサ51を配置する例を示したが、これに限定されるものではなく、他の台座62に設けてもよい。また、フレーム61の前方となる補助輪34-FLと補助輪34-FRの間には、前方の床面を撮影するイメージセンサ52が取り付けられる。
【0049】
振動センサ51を、補助輪34の上部、より好適には補助輪34を支持する台座62に設けることで、駆動輪33を駆動するモータ38の振動や、フレーム61の振動の影響を抑制して、床面からの振動を正確に測定することが可能となる。
【0050】
図6は、オーダー情報200の一例を示す図である。オーダー情報200は、シリアル番号201と、伝票番号202と、販売店名203と、販売店コード204と、商品名205と、商品コード206と、個数207と、納期208と、オーダー受信日時209と、作業日時210を1つのレコードに含む。
【0051】
シリアル番号201は、倉庫制御装置100が付与したユニークな番号である。なお、他の情報のシリアル番号についても同様である。伝票番号202は、注文毎に倉庫制御装置100が付与した番号である。販売店名203は、物品の出荷先を示す。
【0052】
本実施例では、伝票番号202が同一でも、商品名205及び商品コード206が異なる場合は、異なるシリアル番号201を付与する例を示す。これは、商品名205及び商品コード206が異なる場合は、それぞれの商品が保管されている棚7が異なる可能性があるためである。
【0053】
個数207は、当該レコードの伝票番号202において、商品名205及び商品コード206で特定される商品が注文された数量を示す。作業日時210は、伝票番号202の商品名205に対して、ピッキング作業が行われる予定日時が格納される。作業日時210は、納期208に加えて、顧客の要望(納期より前に、早く出荷してほしい等の要望)や、倉庫の状況(当該商品を早く出荷したい事情がある場合など)に基づいて、決定される。
【0054】
作業日時210は、倉庫制御装置100と連携する他のソフトウェア(例えば倉庫管理システム(WMS:Warehouse Management System))などにより、決められてもよいし、ユーザにより設定されてもよい。
【0055】
図7は、在庫情報220の一例を示す図である。在庫情報220は、シリアル番号221と、商品名222と、商品コード223と、在庫数224と、棚ID225と、棚内の配置位置226を1つのレコードに含む。
【0056】
棚ID225は、当該商品が格納されている棚7の識別子が格納される。棚内の配置位置226は、例えばピッキングステーションSTで、人やロボットがピッキングする際に使用される情報を格納する。棚内の配置位置226は、例えば「U3R2」と記載しているレコードでは、棚7において、「上(U)から3番目の段で、右(R)から2番目の位置」に、対象の商品が配置されていることを示す。
【0057】
図8は、棚情報230の一例を示す図である。棚情報230は、シリアル番号231と、棚ID232と、保管位置233と、棚重量234と、商品重量235を1つのレコードに含む。
【0058】
棚ID232は、各棚7に付与されたユニークな識別子が格納される。棚ID232として、例えば倉庫制御装置100が付与した棚7の識別子を格納してもよい。保管位置233は棚7を保管する位置の情報が格納され、例えば地図情報250の座標が格納される。棚7が搬送されている場合には、保管位置233には「搬送中」が格納される。
【0059】
棚重量234には、棚7自体の重さが格納され、商品重量235には棚7が搭載する物品(商品や商品を保管する容器など)の重さが格納される。搬送装置1が搬送する搬送物(棚+商品)の重さは、少なくとも「棚重量」と「商品重量」の和となる。
【0060】
例えば、
図7の在庫情報220等において、各商品の重さと在庫数などを記録しておき、例えば、搬送物(棚+商品)の重さを計算により求めてもよい。なお、「重さ」を計算により求める場合、実際の搬送物の重さと計算値の誤差の許容範囲内に収まるのであれば、棚7及び棚7が搭載する商品のうち、一部の重量について、計算に含めないとすることも可能である。
【0061】
また、別の例として、例えば、搬送装置1が搬送する「搬送物(棚+商品)の重さ」を測定可能な重量センサを搭載しており、ピッキング完了後の棚7を保管位置に戻す際などに重量を計測してもよい。このとき、搬送装置1で計測した重量を、倉庫制御装置100が受信し、棚情報230における当該「搬送物(棚+商品)の重さ」として記録してもよい。
【0062】
倉庫制御装置100は、
図7の在庫情報220から取得した棚ID225の情報をキーとして、当該棚7の保管位置233を特定する。倉庫制御装置100は、例えば搬送装置1の中で「待機」状態にある装置の中で、棚7の保管位置に近い搬送装置1の位置と、棚7の保管位置233と、棚7の搬送先となるピッキングステーションSTの情報などから、当該搬送装置1の移動経路を算出する。
【0063】
なお、倉庫制御装置100は、棚情報230を搬送装置1が搬送する物品の重量を特定する重量情報として扱うことができる。
【0064】
図9は、装置情報260の一例を示す図である。装置情報260は、シリアル番号261と、装置ID262と、装置の状態263と、棚の積載有無264と、装置の位置265と、バッテリ残量266と、累積走行距離267と、累積加速回数268を1つのレコードに含む。
【0065】
装置ID262は、各搬送装置1に付与されたユニークな識別子を格納する。装置の状態263は、各搬送装置1の状態に関する情報を格納する。状態としては、例えば、「待機」や、「移動中」、「充電中」、「故障」等の搬送装置1の状態が入力される。
【0066】
なお、倉庫制御装置100が、例えば、ある搬送タスクを処理する(搬送指示する)搬送装置1を選択する際に、搬送効率などに基づいて選択することができる。例えば「移動中」の状態である搬送装置1であっても、早く現在のタスクが完了して、他と比べて早く、次の搬送タスク(上述の、ある搬送タスク)を処理できる場合には、選択される可能性がある。
【0067】
棚の積載有無264は、搬送装置1の搬送情報に含まれて、棚7の有無を格納する。棚の積載有無264は、当該搬送装置1における棚7の積載有無に関する情報である。棚の積載有無264は、当該搬送装置1のテーブル32に棚7を積載しているか否かを示す情報である。
【0068】
位置265は、各搬送装置1の位置に関する情報を格納する。例えば、搬送装置1は、イメージセンサ52で、各エリアの床面の所定の位置に付与されている情報(例:マーク)を読み取る。搬送装置1が読み取った情報には、当該エリアの位置に関する情報が含まれており、自己位置を特定可能である。なお、自己位置の特定方法は、他の手法によるものであってもよい。各搬送装置1は、特定した位置と日時を倉庫制御装置100へ送信し、倉庫制御装置100のデータ入出力プログラム162が装置情報260へ格納することができる。
【0069】
バッテリ残量266は、各搬送装置1のバッテリ39の残量に関する情報である。搬送装置1はバッテリ残量266が所定のバッテリ残量以下となったときに、充電ステーションへ充電しに行ってもよい。
【0070】
ただし、充電ステーションの空き状況(予約状況)や、搬送スケジュール、各搬送装置1のバッテリ残量などに応じて、充電に関するスケジュールが決められてもよい。例えば、多数の搬送装置1が、同じタイミングで充電すると、充電ステーションが混雑して、充電待ちが発生する可能性があるため、搬送効率を考慮したスケジュールが望ましい。
【0071】
累積走行距離267は、搬送装置1がこれまでに走行した距離を格納する。累積加速回数268は、搬送装置1がこれまでに加速(又は減速)した回数を格納する。なお、上記装置ID262~累積走行距離267までの値は搬送装置1が検出又は算出した値を倉庫制御装置100のデータ入出力プログラム162が受信して、装置情報260に格納すればよい。
【0072】
装置情報260は、バッテリ残量266や、累積走行距離267や、累積加速回数268などの経年劣化の度合いや、使用頻度などを示す搬送装置1の状態情報として扱うことができる。
【0073】
図11は、地図情報の一例を示す図である。地図情報250は、行番号251と、列番号252で指定される「エリア」の位置を示す情報である。各エリアは矩形領域で、上述した床情報240のエリア設定244に応じて、「通路エリア」、「棚保管エリア」、「走行禁止エリア」のいずれかに設定される。
【0074】
エリア設定244は、後述する床情報240に基づいて、エリア242毎に設定されたものである。なお、エリア設定244の値は、倉庫制御装置100の管理者が床情報240から決定してもよいし、データ分析プログラム163で決定してもよい。
【0075】
図14は、床情報240の一例を示す図である。床情報240は、振動データ290の計測振動データ294と、振動データ閾値295からデータ分析プログラム163が算出した床の状態と位置を特定する。
【0076】
床情報240は、シリアル番号241と、エリア242と、床の状態243と、エリア設定244と、累積負荷245を1つのレコードに含む。
【0077】
エリア242は、倉庫の床の状態をエリア(区画)単位で管理しており、その各エリアを識別する情報が格納される。例えば、シリアル番号241=1の(a,A)は、
図11の地図情報250において、左上の番地(a,A)を示す。
【0078】
床の状態243は、床の状態、特に損傷レベルを示す情報が格納される。例えば「正常状態」、「損傷程度 小」、「損傷程度 中」、「損傷程度 大」のようにレベル分けしてもよい。また、床の状態243は、例えば「正常状態」、「損傷程度 小」、「損傷程度 中」は走行可、「損傷程度 大」は走行不可(走行禁止)としてもよい。
【0079】
エリア設定244が「通路エリア」の場合、搬送装置1が走行可能な領域であり、棚7を搬送することも可能であることを示す。エリア設定244が「棚保管エリア」の場合、搬送装置1が搬送する棚7が置かれている領域、又は棚7の置き場所として確保されている領域を示す。
【0080】
棚7を搬送していない状態の搬送装置1は、棚7の下を通り抜けられるので走行可能だが、棚7を搬送している状態の搬送装置1は、他の棚7があるエリアは、棚7の衝突を避けるため走行しない。
【0081】
エリア設定244が「走行禁止エリア」の場合は、搬送装置1の走行が制限されるエリアである。例えば「損傷程度 大」のエリアは、「走行禁止エリア」としてもよい。また、他にも、走行の障害となる障害物が検出された領域や、人や他の機器が作業するエリアなどが、この「走行禁止エリア」に設定されてもよい。所定の条件を満たすものを自動的に「走行禁止エリア」としてもよいし、ユーザが「走行禁止エリア」を設定してもよい。
【0082】
累積負荷245は、搬送装置1から当該エリアの床が受けた負荷を累積した値である。負荷としては、搬送装置1が通過したときの負荷(通過回数や通過時の重量など)、搬送装置1が旋回したときの負荷(回転回数や回転時の重量)や、搬送装置1が加速又は減速したときの負荷(加速回数や加速したときの重量、減速回数や減速したときの重量など)などがある。
【0083】
累積負荷245は、これらの負荷の一部又は全部の情報を基に算出された値であってもよい。例えば、通過時の重量を累積した合計重量値であってもよい。
【0084】
図10は、倉庫制御装置100で行われる処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、所定の周期やオーダーを受け付けたタイミングなど、所定のタイミングで実行される。
【0085】
倉庫制御装置100では経路作成プログラム161が、オーダー情報200を作業日時210の昇順でソートして、先頭のレコードから順に以下の処理を実施する(S1)。経路作成プログラム161は、オーダー情報200を選択して、商品コード206から在庫情報220を検索して在庫数224の有無を判定する。在庫がある場合には経路作成プログラム161が棚ID225と棚内の配置位置226を取得して、棚情報230を検索して保管位置233を特定する(S2)。
【0086】
経路作成プログラム161は、地図情報250と、床情報240のエリア設定244と、装置情報260を参照して、上述のように、棚7の保管位置233からピッキングステーションSTまでの搬送効率が最大となる搬送装置1を装置情報260から選択する。なお、搬送先のピッキングステーションSTは、発送先(販売店名203)に応じて予め設定されてもよいし、ピッキング作業を行う商品や商品の種類に応じて予め設定されてもよい。
【0087】
そして、経路作成プログラム161は、地図情報250と、床情報240のエリア設定244と、保管位置233とピッキングステーションSTの情報から搬送装置1の搬送経路を経路情報として算出する(S3)。なお、経路情報の算出については周知又は公知の手法を採用することができる。
【0088】
次に、搬送装置制御プログラム164は、上記決定された搬送装置1に対して、決定された棚7を、上記算出された経路情報で搬送する指令を送信する(S4)。倉庫制御装置100から搬送の指令を受信した搬送装置1は、受け付けた経路を走行して、指定された棚7をテーブル32に搭載して所定のピッキングステーションSTへ搬送する。
【0089】
ピッキング作業が完了した後は、搬送装置1が棚7を搭載して保管場所まで搬送し、棚7を床80に降ろす。その後、搬送装置1は、所定の待機場所へ移動して搬送のタスクを終了する。
【0090】
なお、搬送装置1が棚7を戻す位置は、元の保管場所に戻してもよいし、棚7の使用頻度などに基づいて、異なる位置に保管してもよい。例えば、使用頻度が高い棚7であれば、搬送装置1がピッキングステーションSTの近傍に棚7を置くようにしてもよい。
【0091】
図12は、振動データ290の一例を示す図である。振動データ290は、搬送装置1から受信した振動データを格納し、さらに、後述するデータ分析プログラム163が算出した振動データ閾値を格納する。なお、移動中の搬送装置1に発生した振動についての振動データ290には、床面の状態と相関関係がある。そのような相関関係の一例として、ある床面状態(例えば損傷度合いが大きい床面等)の床で搬送装置1が走行(旋回を含む)する場合において、移動中の搬送装置1に係る振動が異なる床面状態(例えば正常な床面、損傷度合が小さい床面等)と比較して有意に大きくなる場合があることが分かった。なお、振動データ290と床面の状態の具体的な相関関係は、例えば、搬送装置1の具体的な設計や床面の材質、通信環境等の種々の環境要因によって変化し得る。
【0092】
振動データ290は、シリアル番号291と、振動データ計測日時292と、装置ID293と、計測振動データ294と、振動データ閾値295と、装置の位置296と、棚の積載有無297と、搬送棚ID298と、棚・商品重量299と、バッテリ残量300と、モード301と、走行速度302と、走行加速度303と、累積走行距離304と、累積加速回数305を1つのレコードに含む。
【0093】
振動データ計測日時292は、搬送装置1の振動センサ51で振動データを測定した日時を格納する。装置ID293は、搬送装置1に予め設定された識別子を格納する。計測振動データ294は、振動センサ51が測定した振動の大きさを加速度(m/s^2)として格納する。なお、計測振動データ294の形式については上記した例に限られず、他の振動の大きさを表す指標で代替可能である。
【0094】
振動データ閾値295には、後述するように、搬送装置1の走行状態や搬送状態等に基づいて倉庫制御装置100のデータ分析プログラム163が算出した閾値が格納される。データ分析プログラム163は、計測振動データ294を取得したときの搬送装置1の走行状態に応じて適用する加速度の閾値を変更する。
【0095】
装置の位置296は、搬送装置1の自己位置推定プログラム23が算出した地図情報250上のエリアの座標(位置情報)を格納する。棚の積載有無297は、振動データ計測日時292において搬送装置1が棚7を搬送していたか否かを示す値を格納する。棚の積載有無297の値は、搬送装置1で検出された値又は装置情報260の値を用いることができる。
【0096】
搬送棚ID298は、経路データ270で指定された棚7の識別子を格納する。搬送棚ID298は、振動データ計測日時292において搬送装置1が搬送していた棚7の識別子である。棚・商品重量299は、搬送棚ID298に対応する棚情報230の棚重量234と商品重量235の総和を格納する。
【0097】
バッテリ残量300は、搬送装置1の計測プログラム25が測定したバッテリ39の残量を格納する。モード301は、振動データ計測日時292における搬送装置1の走行モードを格納する。走行モードは、搬送装置1の走行制御プログラム24が決定した値を計測プログラム25が取得して、振動データに含めて倉庫制御装置100へ送信することができる。
【0098】
走行速度302は、搬送装置1が検出した走行速度を格納する。走行加速度303は、搬送装置1が検出した加速度を格納する。累積走行距離304は、搬送装置1が検出した累積走行距離を格納する。累積加速回数305は、搬送装置1が検出した加速(又は減速)の累積回数である。
【0099】
累積走行距離304と累積加速回数305は、搬送装置1の走行実績を表すデータであり、搬送装置1に蓄積された負荷の指標となる。累積走行距離304又は累積加速回数305が一定の基準値を上回る搬送装置1は、負荷による劣化が予測されるため、床面の損傷度の判定から除外してもよい。
【0100】
振動データ290は、倉庫制御装置100のデータ入出力プログラム162が搬送装置1から受け付けたデータを格納したものであり、格納された時点では振動データ閾値295以外のデータが設定される。振動データ閾値295は、後述する処理によって設定される。なお、棚・商品重量299は、搬送棚ID298に基づいてデータ入出力プログラム162が棚情報230から取得して設定してもよい。また、累積走行距離304と、累積加速回数305は、装置ID291に基づいてデータ入出力プログラム162が装置情報260から取得してもよい。
【0101】
搬送装置1は、所定のサンプリング周期で振動センサ51が測定した振動データに走行状態や搬送状態を付加して倉庫制御装置100へ送信する例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、振動センサ51が測定した所定の期間の振動データの統計値(平均値、最大値等)をエリア毎に算出して倉庫制御装置100へ送信してもよい。
【0102】
なお、倉庫制御装置100のデータ分析プログラム163は、計測振動データ294のみでも各エリアの損傷程度を算出することができるが、振動データ290に含まれる棚の積載有無297、搬送棚ID298、棚・商品重量299からなる搬送状態と、モード301、バッテリ残量300、走行速度302、走行加速度3030、累積走行距離304、累積加速回数305の情報も併せて分析することで、床面の損傷度の判定精度を向上できる。
【0103】
棚の積載有無297は、搬送装置1が棚7を搬送中の場合は、搬送中でない場合に比べて、搬送装置1が検出する振動の指標は大きくなる。従って、床面の状態を判定する場合に、棚7の有無に応じて異なる閾値を設定すると、より床面の損傷程度の判定精度が向上する。また、棚・商品重量299を加味することで、床面の損傷度の判定精度をさらに向上させる。
【0104】
例えば、もしバッテリ残量300の低下が、装置由来の振動と関連する場合、そのような状態の搬送装置1の振動データは、床面の損傷度の判定対象から除外することも可能である。
【0105】
モード301は、本実施例の搬送装置1の場合、「旋回」、「加速」、「減速」、「直進」のいずれかが設定される。搬送装置1は、旋回中の場合よりも直進中の方が、減速中の場合よりも加速中の方が振動が大きくなる。速度、加速度についても、振動の大きさと関係がある。搬送装置1が振動を検出した場合のモード301と走行速度302と、走行加速度303に応じて異なる閾値を設定すると、より床面判定の精度が向上する。
【0106】
また、上記では、計測振動データ294が振動データ閾値295を超えていないレコードを保持する例を示したが、計測振動データ294が振動データ閾値295を超えていなければ床情報240の更新を行わないので、データ分析プログラム163は、計測振動データ294が振動データ閾値295を超えていないレコードを削除することができる。例えば、
図12で取り消し線を付加したシリアル番号291=3のレコードは、計測振動データ294が振動データ閾値295を超えていないので削除してもよい。
【0107】
図13は、振動センサ51が検出した振動データの一例を示すグラフである。
図13は、縦軸が加速度(振動の大きさ)で横軸が時刻を示す。
【0108】
振動データは、床面の損傷度に応じて加速度(振動の大きさ)が増減する。また、データ分析プログラム163が算出する振動データ閾値295は、図中の閾値Thaや閾値Thbのように、走行速度や加速度あるいは走行モードや棚7の積載状態に応じて変化する。
【0109】
図15は、倉庫制御装置100で行われる分析処理の一例を示すフローチャートである。倉庫制御装置100のデータ分析プログラム163は、所定の周期(例えば、24時間毎)や管理者の指示などの所定のタイミングで振動データ290の分析処理を実行し、床面の損傷度を搬送装置1が通過したエリア毎に判定する。
【0110】
データ分析プログラム163は、振動データ290から分析対象のデータを取得する(S11)。分析対象のデータは、例えば、24時間毎に処理を実行する場合、データ分析プログラム163は振動データ計測日時292が24時間以内のデータを抽出する。
【0111】
データ分析プログラム163は、振動データ290のそれぞれについて、走行状態や棚7の搬送状態に応じた振動データ閾値295を後述するように算出して振動データ290に格納する。そして、データ分析プログラム163は、装置の位置296で振動データ290をソートしておく(S12)。
【0112】
ステップS13~S18では、データ分析プログラム163が、上記ソートされたエリア毎に床面の損傷度を判定し、全てのデータについて繰り返して処理を行う。
【0113】
まず、ステップS14では、データ分析プログラム163が計測振動データ294と振動データ閾値295を比較して、計測振動データ294が振動データ閾値295を超えているかを判定する。データ分析プログラム163は、計測振動データ294が振動データ閾値295を超えていればステップS15に進み、超えていない場合にはステップS17に進む。
【0114】
ステップS15では、データ分析プログラム163が、計測振動データ294を振動データ閾値295で除した値の百分率を閾値超過率Exとして算出する。次に、データ分析プログラム163は、閾値超過率Exで損傷度テーブル320(後述)を検索して損傷度322を取得し、当該エリアの床面の損傷度とする(S16)。
【0115】
なお、本実施例では、計測振動データ294が振動データ閾値295を超過した比率で損傷度を算出する例を示すが、これに限定されるものではない。例えば、データ分析プログラム163が予め設定した関数やテーブルなどを用いて損傷度を算出すればよい。
【0116】
図17は、損傷度テーブル320の一例を示す図である。損傷度テーブル320は、予め設定されたテーブルである。
【0117】
損傷度テーブル320は、閾値超過率Exの範囲を設定した閾値超過率321と、閾値超過率の範囲に応じた床面の損傷度を設定した損傷度322を1つのレコードに含む。本実施例では、床面の損傷度を4段階で判定する例を示したが、これに限定されるものではない。床面の損傷度が大きいほど、搬送装置1が当該床面を走行したときに大きな振動または衝撃が発生して閾値超過率が高くなる可能性が高い。そのため、損傷度テーブル320においても、閾値超過率が高いほど、損傷度が大きくなるように設定されている。例えば、「損傷程度 小」より「損傷程度 中」の損傷度のほうが閾値超過率が高く、「損傷程度 中」より「損傷程度 大」の損傷度のほうが閾値超過率が高く、「損傷程度 大」より「修復必要」の損傷度のほうが閾値超過率が高くなるように設定されている。
【0118】
一方、
図15のステップS17では、計測振動データ294は閾値以下であるので、データ分析プログラム163は当該エリアの床面の損傷度を正常とする。
【0119】
ステップS18では、データ分析プログラム163が上記ステップS16又はS17で算出した損傷度を、現在処理しているエリアの床の状態243に書き込んで、床情報240を更新する。
【0120】
ステップS19では、全ての処理対象のエリアについて上記処理を繰り返してからステップS20へ進む。
【0121】
ステップS20では、データ分析プログラム163が後述する
図19の床面の損傷状況可視化マップ330を生成する。そして、ステップS21で、データ分析プログラム163は上記ステップS19で生成した損傷状況可視化マップ330と振動データ290から
図19に示す可視化画面141を生成し、出力装置140に出力する。一例として、前記複数の区画に区分されて管理される床面において、当該区画ごとに床面の状態を、「正常状態」、「損傷程度 小」、「損傷程度 中」、「損傷程度 大」、「修復必要」といった複数段階で判定し、その結果を出力装置140に出力する。
【0122】
上記処理によって、倉庫制御装置100は複数の搬送装置1から収集した振動データ290について、振動センサ51が振動データを測定した時点の走行状態と搬送状態に基づいて振動データ閾値295を決定する。
【0123】
そして、データ分析プログラム163は、計測振動データ294が振動データ閾値295を超えるエリアについて損傷度を算出して床の状態243に書き込んで床情報240を更新する。
【0124】
更新された床情報240に基づいて、倉庫制御装置100の管理者等が床情報240のエリア設定244を走行禁止エリア等に変更したり、修復作業を行うことで、搬送装置1や床面にかかる負荷を低減することが可能となる。
【0125】
また、データ分析プログラム163は、床情報240を更新した後に、可視化画面141を生成して出力装置140に表示することで、補修が必要なエリアを明示することができる。また、可視化画面141では、損傷度の大きさをエリア毎に表示することで、床面の補修計画などを立案することが可能となる。
【0126】
また、データ分析プログラム163は、1つのエリアについて複数の振動データが存在する場合、複数の計測振動データ294が振動データ閾値295を超える場合に、当該エリアの床面の状態に損傷があると判定してもよい。複数の振動データで判定を行うことで、損傷度の精度を向上させることができる。
【0127】
また、データ分析プログラム163は、1つのエリアについて複数の搬送装置1の計測振動データ294が振動データ閾値295を超える場合に、当該エリアの床面の状態に損傷があると判定してもよい。複数の搬送装置1が計測した振動データで判定を行うことで、損傷度の精度を向上させることができる。
【0128】
また、データ分析プログラム163は、算出した損傷度が所定の基準を超えた場合にアラートを通知するようにしてもよい。例えば、損傷度が「修復必要」の場合、データ分析プログラム163は出力装置140へエリアの位置と修復のアラートを表示することができる。また、当該アラートは外部メンテナンスのために外部の関係者へ通知するようにしてもよい。これにより、床面の損傷を管理者等がいち早く認識することができる。ひいては床面損傷度合いに応じた運用の変更を適宜行うことができる。
【0129】
なお、1つのエリア(又は地点)について複数の振動データが存在する場合、データ分析プログラム163は、当該エリアの代表値を算出し、この代表値で床面の損傷度を判定してもよい。なお、代表値としては、平均値や中央値、あるいは最大値や最小値などを適宜選択してもよい。
【0130】
次に、上記ステップS12で行われる振動データの集計処理について以下に説明する。まず、
図18は、閾値テーブル310の一例を示す図である。閾値テーブル310は、予め設定されたテーブルである。閾値テーブル310は、走行速度311と、加速度312と、モード313と、棚の重量314と、閾値315を1つのレコードに含む。
【0131】
走行速度311は、搬送装置1の走行速度の範囲が設定され、振動データ290の走行速度302の値に応じた閾値315を設定する。例えば、搬送装置1が同じ床面を走行したときであっても、走行速度が大きいほど、床面に起因する振動または衝撃が大きくなり得る。そのため、閾値テーブル310においても、走行速度が大きいほど、閾値が大きくなるように設定してもよい。
【0132】
加速度312は、搬送装置1の加速度の範囲が設定され、振動データ290の走行加速度303の値に応じた閾値315を設定する。例えば、搬送装置1が同じ床面を走行したときであっても、加速度が大きいほど、床面に起因する振動または衝撃が大きくなり得る。そのため、閾値テーブル310においても、加速度が大きいほど、閾値が大きくなるように設定してもよい。
【0133】
モード313は、搬送装置1の走行モードに対応する閾値315を設定する。本実施例では、走行モードが旋回の場合には、閾値315=10m/s^2を設定する。棚の重量314は、搬送装置1が搬送する棚と商品の重量の合計値に対応する閾値315を設定する。例えば、搬送装置1が同じ床面を走行したときであっても、搬送物の重さ(棚及び商品の重量の合計値)が重いほど、床面に起因する振動または衝撃が大きくなり得る。そのため、閾値テーブル310においても、搬送物の重さが重いほど、閾値が大きくなるように設定してもよい。同様に、例えば搬送装置1が同じ床面を走行したときであっても、搬送物を搬送している場合のほうが、搬送物を搬送していない場合より、床面に起因する振動または衝撃が大きくなり得る。そのため、閾値テーブル310においても、搬送物を搬送している場合には、搬送物を搬送していない場合より、閾値が大きくなるように設定してもよい。
【0134】
本実施例では、走行速度311や加速度312や棚の重量314を3段階で分類する例を示したが、これに限定されるものではない。
【0135】
また、モード313の欄が空欄のレコードは、全てのモードに対応することを示す。したがって、棚の重量314は搬送装置1の走行モードにかかわらず閾値315を設定する。また、モード313=「加速」又は「減速」の場合は、走行速度311に応じた閾値315と、加速度312に応じた閾値315を加算することを意味する。
【0136】
図16は、倉庫制御装置100で行われる分析処理のうち、上記ステップS12で行われる振動データの集計処理の一例を示すフローチャートである。
【0137】
データ分析プログラム163は、分析対象のデータについてステップS31~S37の処理を振動データ290のレコード毎に繰り返す(S31)。データ分析プログラム163は、振動データ290のモード301を取得して、モード301の値で閾値テーブル310のモード313を検索して該当する閾値315を取得し、変数としての閾値Th1に設定する(S32)。
【0138】
本実施例では、モード313の値のみで閾値315が決定されるのは搬送装置1の走行モードが「旋回」の場合だけである。その他のモード313では、加速度312又は走行速度311の値と棚の重量314の値を使用する。
【0139】
次に、データ分析プログラム163は、振動データ290の走行速度302を取得して、走行速度302の値で閾値テーブル310の走行速度311を検索して該当する閾値315を取得し、変数としての閾値Th2に設定する(S33)。
【0140】
次に、データ分析プログラム163は、振動データ290の走行加速度303を取得して、走行加速度303の値で閾値テーブル310の加速度312を検索して該当する閾値315を取得し、変数としての閾値Th3に設定する(S34)。
【0141】
次に、データ分析プログラム163は、振動データ290の棚・商品重量299を取得して、棚・商品重量299の値で閾値テーブル310の棚の重量314を検索して該当する閾値315を取得し、変数としての閾値Th4に設定する(S35)。
【0142】
次に、データ分析プログラム163は、上記ステップS32~S35で設定した閾値Th1~Th4の総和を算出して、当該レコードの振動データ290の振動データ閾値295に書き込む(S36)。
【0143】
ステップS37では、全ての振動データ290について上記処理を行った後、ステップS38へ進む。ステップS38では、データ分析プログラム163が振動データ290の装置の位置196の順序でソートを実施して、エリア順に並べ替えて
図15の処理に戻る。
【0144】
以上の処理によって、データ分析プログラム163は、搬送装置1の振動センサ51が振動データを測定して時点の走行状態と搬送状態に基づいて振動データ閾値295を決定することができる。
【0145】
図19は、床面の可視化画面141の一例を示す図である。可視化画面141は、床面の損傷度を可視化した損傷状況可視化マップ330と、床面の損傷度に関するデータを表示する床面状況340を含む。
【0146】
損傷状況可視化マップ330は、データ分析プログラム163によって更新された床情報240の床の状態243の値に応じたパターンを、地図情報250の各エリアに設定した図で、可視化画面141の上部に表示される。
【0147】
損傷状況可視化マップ330は、地図情報250の行331と列332で特定されるエリアに、床の状態243が悪化するほど濃いパターンが設定され、正常なエリアはパターンのない白色で表示される。
【0148】
倉庫制御装置100の管理者などは、出力装置140に表示された可視化画面141の損傷状況可視化マップ330を参照することで、修復が必要なエリアや走行禁止とすべきエリアなどを容易に把握することができる。
【0149】
床面状況340は、シリアル番号341と、損傷程度342と、番地343と、計測振動データ344と、振動データ閾値345と、床面情報更新日346を、1のレコードに含む表として可視化画面141の下部に表示される。
【0150】
損傷程度342と、番地343は、床情報240の床の状態243とエリア242の値が設定される。計測振動データ344と振動データ閾値345には、当該エリアの振動データ290の計測振動データ294と、振動データ閾値295が設定される。床面情報更新日346は、データ分析プログラム163が床情報240を更新した日時が設定される。
【0151】
倉庫制御装置100の管理者は、床面状況340を参照することで、損傷程度342を決定した計測振動データ344や振動データ閾値345を確認することができる。
【0152】
以上のように、本実施例の倉庫制御装置100は、搬送装置1から収集した振動データと走行状態及び搬送状態に応じて振動データ閾値295を決定して、計測振動データ294による床面の損傷度を算出する。倉庫制御装置100の管理者などは、振動の大きさが閾値を超えた床面の位置を搬送装置1に振動が発生する床面として特定し、当該位置における搬送装置1の走行を抑制又は禁止することで、搬送装置1や床面の負荷を抑制することが可能となる。
【0153】
なお、上記では、振動センサ51が測定した振動データに基づいて、床面の損傷度を算出する例を示したが、イメージセンサ52が取得した画像データの分析結果を加えて床面の損傷度を算出してもよい。これにより、振動データに加えて画像データから得られる床面形状などの情報を加味することで、床面の損傷の判定精度を向上させることができる。
【0154】
また、データ分析プログラム163は、累積走行距離304又は累積加速回数305が一定の基準値を上回る搬送装置1や、バッテリ残量300が所定値以下の場合など、搬送装置1の状態情報(装置情報260)が特定の条件を満たす場合、床面の損傷度の判定から除外するようにしてもよい。搬送装置1の状態情報によっては、計測する振動の大きさが異なることが考えられるため、特定の条件に該当する搬送装置1の振動データは、処理対象から除外することで、床面の損傷の判定精度を向上させることができる。
振動センサ51-1は無線通信部を有し、搬送装置1と通信を行う。搬送装置1の計測プログラム25は、振動センサ51-1から取得した振動の情報と、当該振動の情報を取得したときの位置を計測データ43に一旦蓄積してから倉庫制御装置100へ送信する。なお、振動センサ51-1とともに設けられた無線通信部が、計測した振動の情報及び当該振動の情報を計測したときの棚7を搬送する搬送装置1の位置の情報を、倉庫制御装置100へ直接送信するようにして、倉庫制御装置100上で統合して処理するように構成してもよい。
本実施例においては、例えば、実施例1における振動センサ51を振動センサ51-1と置き換え、実施例1における振動を計測したときの搬送装置1の位置等についての情報を、振動の情報を計測したときの棚7を搬送する搬送装置1の位置等についての情報と置き換えることで、実施例1の方法に倣って床面の状態を判定することができる。
実施例2における、床面の情報を判定する搬送システムの一例は、床面を走行し、搬送対象物を搬送する搬送装置と、前記搬送装置の移動を制御する制御装置と、前記搬送対象物に備えられた前記搬送対象物の振動を計測する第一の振動センサと、前記第一の振動センサが計測した移動中の前記搬送対象物の振動の情報を送信する通信装置と、を有し、前記制御装置は、前記第一の振動センサが計測した移動中の前記搬送対象物の振動の情報と当該振動を計測したときの前記搬送対象物を搬送する前記搬送装置の位置情報とを含む第一の振動データを取得して、前記第一の振動データに基づいて前記振動を計測したときの前記搬送対象物を搬送する前記搬送装置の位置における床面の状態を判定することを特徴とする搬送システム、である。
実施例2において、棚7に振動センサ51-1を設けることで、搬送する物品に発生する振動状態を考慮できる。また、搬送装置1側の部品点数を削減して、必要な場合のみ振動センサ51-1を有する棚7を搬送することができる。
また、実施例2では、前記実施例1において搬送装置1に設けられた振動センサ51の構成に加えて、棚7の底板72上にも振動センサ51-1を設置して、棚7を搬送する搬送装置1の計測プログラム25が振動の情報データを収集するようにしてもよい。例えば、搬送装置1の計測プログラム25は、振動センサ51から取得した振動データと、当該振動データを取得したときの位置に加えて、振動センサ51-1から取得した振動の情報と、当該振動の情報を取得したときの位置を計測データ43に一旦蓄積してから倉庫制御装置100へ送信する。制御装置2は、搬送装置1に設けられた振動センサ51と、棚7の底板72上に設けられた振動センサ51-1から取得した振動データを別々のテーブルに記憶してもよい。
実施例2において、搬送装置1と棚7の両方に振動センサが設けられた場合、搬送装置1に設けられた振動センサ51から取得した振動データと、棚7に設けられた振動センサ51-1から取得した振動データを区別することで、それぞれの振動センサについて異なる閾値を設けることができ、より正確な床面状態の判定が可能となる。また、搬送装置1は、台車31を構成するフレーム61の台座62に加わる振動と、棚7の振動を別々に検出することができ、搬送装置1及び棚7の物品に与える影響をそれぞれ比較して床面状況を精緻に判定することが可能となる。