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特開2022-114903疾患判定装置、及び、疾患判定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114903
(43)【公開日】2022-08-08
(54)【発明の名称】疾患判定装置、及び、疾患判定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20220801BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20220801BHJP
   A61B 6/00 20060101ALI20220801BHJP
   A61B 6/14 20060101ALN20220801BHJP
【FI】
G06T7/00 300D
G06T1/00 290A
A61B6/00 350Z
A61B6/14 313
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021011378
(22)【出願日】2021-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】508325773
【氏名又は名称】對木 悟
(71)【出願人】
【識別番号】521040905
【氏名又は名称】遠野 宏季
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】對木 悟
(72)【発明者】
【氏名】遠野 宏季
【テーマコード(参考)】
4C093
5B057
5L096
【Fターム(参考)】
4C093AA07
4C093CA18
4C093FF16
4C093FF50
5B057AA08
5B057BA03
5B057CA08
5B057CA12
5B057CA16
5B057CB08
5B057CB12
5B057CB16
5B057CE09
5B057DA01
5B057DB02
5B057DB09
5L096AA06
5L096BA06
5L096BA13
5L096EA35
5L096JA09
5L096JA11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】正確にかつ容易に疾患判定を実行可能な疾患判定技術を提供する。
【解決手段】閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)判定装置と、X線診断システム3とが、通信ネットワークを介して通信可能なOSA判定システム100において、OSA判定装置1は、頭部を含む第1画像を取得する画像取得部13と、取得した第1画像から、当該第1画像における特徴点に基づいて頭部の特定部を含む第2画像を切り出す画像切出部15と、切り出された第2画像に基づいて頭部の疾患を判定する判定部17と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部を含む第1画像を取得する画像取得部と、
取得した前記第1画像から、当該第1画像における特徴点に基づいて前記頭部の特定部を含む第2画像を切り出す画像切出部と、
切り出された前記第2画像に基づいて前記頭部の疾患を判定する判定部と、
を備える疾患判定装置。
【請求項2】
前記画像切出部は、前記第1画像におけるテンプレート画像に対応する所定領域の有無に基づいて前記特徴点を設定する、
請求項1に記載の疾患判定装置。
【請求項3】
前記画像切出部は、前記テンプレート画像と前記第1画像とのマッチング結果に基づいて前記所定領域の有無を判定する、
請求項2に記載の疾患判定装置。
【請求項4】
前記特定部は、口腔咽頭部を含む、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の疾患判定装置。
【請求項5】
前記テンプレート画像は、前記頭部を固定するための固定部材を含む、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の疾患判定装置。
【請求項6】
前記第1画像と、当該第1画像から切り出された前記第2画像に基づく前記疾患の判定の結果とを関連づけて記録する記録部をさらに備える、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の疾患判定装置。
【請求項7】
疾患判定装置を、
頭部を含む第1画像を取得する画像取得部、
取得した前記第1画像から、当該第1画像における特徴点に基づいて前記頭部の特定部を含む第2画像を切り出す画像切出部、及び、
切り出された前記第2画像に基づいて前記頭部の疾患を判定する判定部、
として機能させる疾患判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疾患判定装置、及び、疾患判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
閉塞性睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea;OSA)と診断される患者は、我が国では400万人いると推定される。OSAは、進行すると心脳血管障害を引き起こし、OSAに伴う日中の堪えがたい眠気は産業事故の危険性を増大させる。一方、医師などによる適切な診断と迅速な介入によりこれらのリスクは減少することから、OSAの早期発見は重要な社会医学的課題である。
【0003】
OSAの罹患有無を推測するための技術として、側面頭部X線規格写真(セファログラム)を用いたOSA判定手法が知られている。非特許文献1には、医師又はレントゲン技師(以下、「判定者」という。)が患者のセファログラムを参照しながら、当該患者がOSAか非OSAかを推測する技術が記載されている。判定者は、セファログラムに含まれる患者の頭蓋顎顔面部(特に口腔咽頭部)に、大きな舌、小上顎、小下顎、又は狭い歯列弓を示唆する不正咬合等が含まれる場合「口腔内が窮屈な状況」にあると判断して、患者がOSAであると推測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献1】對木悟,“睡眠医療”,株式会社ライフ・サイエンス,令和2年9月30日,第14巻,第3号,p.94-95
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1に記載されているようなセファログラムを用いたOSA判定における正確性は、従来、限定的とされ、これのみでOSAを診断することはできない。さらに、セファログラムを用いたOSA罹患有無の推測は、判定者の知識や経験に依存するため、OSAの罹患有無を推測できるのは、熟練した判定者に限られる。また、熟練した判定者であっても、人間が判定する以上、その判定には判定者の主観が入り込んでしまうため、画像を用いてOSA判定を正確に行うことは、容易ではない。
【0006】
そこで、本発明は、正確にかつ容易に疾患判定を実行可能な疾患判定技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る疾患判定装置は、頭部を含む第1画像を取得する画像取得部と、取得した第1画像から、当該第1画像における特徴点に基づいて頭部の特定部を含む第2画像を切り出す画像切出部と、切り出された第2画像に基づいて頭部の疾患を判定する判定部と、を備える。
【0008】
本発明の一態様に係る疾患判定プログラムは、疾患判定装置を、頭部を含む第1画像を取得する画像取得部、取得した第1画像から、当該第1画像における特徴点に基づいて頭部の特定部を含む第2画像を切り出す画像切出部、及び、切り出された第2画像に基づいて頭部の疾患を判定する判定部、として機能させる。
【0009】
なお、本発明において、「部」とは、単に物理的手段を意味するものではなく、その「部」が有する機能をソフトウェアによって実現する場合も含む。また、1つの「部」や装置が有する機能が2つ以上の物理的手段や装置により実現されても、2つ以上の「部」や装置の機能が1つの物理的手段や装置により実現されてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、正確にかつ容易に疾患判定を実行可能な疾患判定技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係るOSA(obstructive sleep apnea)判定システムのネットワーク構成の一例を示す図である。
図2】(A)本発明の実施形態に係るOSAを有しない患者の頭蓋顎顔面部のX線画像の一例を示す図である。(B)本発明の実施形態に係るOSAを有する患者の頭蓋顎顔面部のX線画像の一例を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係るOSA判定装置の機能ブロックの一例を示す図である。
図4】(A)本発明の実施形態に係るX線画像の切出領域判定処理の一例を示す図である。(B)本発明の実施形態に係るX線画像の切出領域判定処理の他の一例を示す図である。
図5図4A及び図4Bに示すX線画像の一部が切り出されたX線画像の一例を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係るOSA判定処理の一例を示すフローチャートである。
図7】本発明の実施形態に係るコンピュータのハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施の形態のみに限定する趣旨ではない。また、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な変形が可能である。さらに、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係るOSA判定システム100のネットワーク構成を示す図である。OSA判定システム100は、例示的に、OSA判定装置1及びX線撮像システム3を備え、OSA判定装置1及びX線撮像システム3は、インターネット等の通信ネットワークNを介して通信可能に構成される。通信ネットワークNは、有線又は無線の通信ネットワークである。
【0014】
X線撮像システム3は、例えば、患者の側面頭部X線規格写真(セファログラム)(以下「X線画像」という。)を生成するためのX線撮像装置を備える。X線撮像システム3は、撮影されたX線画像(第1画像)は、通信ネットワークNを介してOSA判定装置1に送信する。「第1画像」は、セファログラムに限らず、例えば、パノラマX線写真を含んでもよい。
【0015】
OSA判定装置1は、X線撮像システム3からX線画像を取得し、X線画像に対応づけられた患者がOSA疾患を有するか否かを判定(OSA判定)する。OSA判定装置1は、汎用のコンピュータで構成されてよく、例えばデスクトップコンピュータやラップトップコンピュータで構成されてよい。
【0016】
なお、図1の例では、OSA判定装置1及びX線撮像システム3は別体の構成として説明したが、両者は一体として構成されてもよい。
【0017】
ここで、本発明の実施形態に係るOSA判定システム100の概要を説明する。まず、図2(A)及び(B)を参照して、非特許文献1に記載されているような従来の、X線を用いたOSA判定手法について説明する。上記したとおり、従来、医師又はレントゲン技師(以下、「判定者」という。)が患者のX線画像を参照しながら、当該患者がOSAか非OSAかを推測する。判定者が、患者がOSAか非OSAかを推測するための特徴点は複数存在する。例えば、判定者は、患者の舌骨の尾側変位(すなわち、舌骨低位)をX線画像から確認すると、当該患者がOSAを有すると推測する。しかし、この方法によるOSAの罹患有無の推測には限界があるため、OSA診断の補助に用いられるにすぎなかった。
【0018】
図2(A)は、本発明の実施形態に係るOSAを有しない患者の頭蓋顎顔面部(頭部)のX線画像の一例を示す図である。図2(B)は、本発明の実施形態に係るOSAを有する患者の頭蓋顎顔面部のX線画像の一例を示す図である。図2(B)に示すX線画像の患者Bの舌骨HB2の高さ(H2)は、図2(A)に示すOSAを有しないX線画像の患者Aの舌骨HB1の高さ(H1)よりも相対的にかなり低い位置にある。例えば、OSAを有しないX線画像の患者Aでは舌骨と下顎下縁平面までの距離が平均17.6mm、OSAを有するX線画像の患者Bでは舌骨と下顎下縁平面までの距離が平均21.4mmである。
【0019】
判定者は、図2(B)に示すX線画像を見る場合、自らの判定経験などを踏まえて、患者Bの舌骨が相対的に低い位置にあるため、OSAを有する患者であると推測する。判定者は、舌骨低位の他、例えば、上顎及び下顎の大きさに比べて相対的に大きな舌を有すること(すなわち、口腔咽頭部の密集度が高いこと)など、頭蓋顎顔面部の他の特徴点を総合的に参酌することによって、OSA判定を行う。
【0020】
しかしながら、上記したとおり、X線画像を用いたOSA疾患判定における正確性は、判定者の知識や経験に依存するため、OSAの罹患有無を推測できるのは、熟練した判定者に限られる。さらにその精度は高いとはいえないため、X線画像単独でのOSA判定は困難である。また、熟練した判定者であっても、人間が判定する以上、その判定には判定者の主観が入り込んでしまうため、OSA疾患判定を正確に行うことは、容易ではない。
【0021】
そこで、本発明の実施形態に係るOSA判定装置1は、X線撮像システム3から取得したX線画像から、当該X線画像における特徴点に基づいて患者の頭蓋顎顔面部の特定部を含むX線画像(第2画像)を切り出し、切り出したX線画像に基づいてOSA判定(頭部の疾患を判定)する。後述するとおり、OSA判定装置1は、例えば、学習済みのニューラルネットワークを用いてOSA判定を実行してもよい。よって、OSA判定装置では、OSA判定を、判定者の知識や経験に依存することなく実行することができ、また、判定者の主観が入り込んでしまうことを防止することができる。したがって、正確にかつ容易に疾患判定を実行可能である。
【0022】
図3は、本実施形態に係るOSA判定装置1の機能ブロックを示す図である。OSA判定装置1は、例示的に、OSA判定のための情報処理を実行する情報処理部11と、当該情報処理を実行するための情報又は当該情報処理の実行結果を記録する記録部19と、を備える。
【0023】
情報処理部11は、機能的に、画像取得部13と、画像切出部15と、OSA判定部17(判定部)と、を備える。なお、情報処理部11の上記各部は、例えば、メモリやハードディスク等の記憶領域を用いたり、記憶領域に格納されているプログラムをプロセッサが実行したりすることにより実現することができる。
【0024】
画像取得部13は、患者の頭蓋顎顔面部を含むX線原画像を取得する。画像取得部13は、患者の頭蓋顎顔面部を含むX線原画像を、図1に示すX線撮像システム3から取得してよいが、他のコンピュータやX線画像データベース等からX線原画像を取得してもよい。
【0025】
画像切出部15は、画像取得部13が取得した、患者の頭蓋顎顔面部を含むX線原画像(第1画像)から、例えば当該頭蓋顎顔面部における口腔咽頭部(特定部)を含むX線画像(第2画像)を切り出す。画像切出部15は、患者の頭蓋顎顔面部を含むX線原画像における特定座標(特徴点)に基づいてX線画像を切り出す。画像切出部15は、特定座標を、患者の頭蓋顎顔面部を含むX線原画像におけるテンプレート画像に対応する所定領域の有無に基づいて設定してもよい。
【0026】
図4及び図5を参照しながら、本実施形態におけるX線画像切出処理を説明する。図4(A)は、本発明の実施形態に係るX線画像において、テンプレート画像に対応する、矩形のテンプレート領域TA(所定領域)が存在する場合の切出領域判定処理の一例を示す図である。図4(B)は、本発明の実施形態に係るX線画像において、テンプレート画像に対応するテンプレート領域TAが存在しない場合の切出領域判定処理の他の一例を示す図である。図5は、図4A及び図4Bに示すX線画像の一部が切り出されたX線画像の一例を示す図である。
【0027】
図4(A)に示すX線画像G1は、患者の側面頭部を撮像することによって取得された画像である。また、X線画像G1は、患者の前額部を、ヘッドクランプHC(固定部材)で、患者の眼耳平面(フランクフルト平面)と床面とが平行になるような頭位に固定した上で撮像されたものである。さらに、この状態で、図1に示すX線撮像システム3において、X線管球から顔面正中矢状面までの距離は例えば150cm、正中矢状面からフィルム面までの距離は例えば15cmとして撮像されるため、どの患者の顔面も倍率1.1倍となる。よって、患者間の硬組織(例えば、上顎骨、下顎骨、頚椎、舌骨、及び歯)や軟組織(例えば、舌、及び、軟口蓋)の絶対的大きさと相対的位置関係を比較するうえで好適である。上記のようにX線画像の撮像手法は、厳密に規格化されている。
【0028】
画像切出部15は、図4(A)及び(B)に示すように、OSAに関連性が高い特定部、例えば、上下顎骨、上下の歯、舌骨、頚椎、舌、軟口蓋、上気道、並びに、軟組織側貌(例えば、額、鼻、口唇、顎、及び、顎下部を含む一連のライン)を含むような領域(切り出し領域CA)を設定する。図5に示すように、画像切出部15は、図4に示す切り出し領域CAに対応するX線画像G3を切り出す。よって、このような前処理(画像切り出し処理)を行った上でOSA判定処理を行うと、当該前処理を行わない場合よりも、高精度のOSA判定が可能となる。
【0029】
画像切出部15は、切り出し領域CAを、テンプレートマッチング手法を用いることによって実行可能である。図4(A)及び(B)に示すX線画像G1及びG2は、例えばアスペクト比(X座標×Y座標)が(2010×1670)ピクセルのX線原画像である。例えば、図4(A)に示すように、患者の頭部を固定するためのヘッドクランプHC等を含むテンプレート領域TAに対応する画像をテンプレート画像とする。なお、図4の例では、固定部材の例としてヘッドクランプHCを挙げたがこれに限られず、他の部材を採用してもよい。
【0030】
画像切出部15は、ヘッドクランプHC等を含む領域に対応するテンプレート画像と、図1に示すX線撮像システム3から取得したX線原画像のテンプレート領域TAとのテンプレートマッチングを実行する。
【0031】
図4(A)に示すように、テンプレートマッチングのマッチングスコアが所定スコア(例えば0.8)以上のスコアである場合、画像切出部15は、X線原画像G1において矩形のテンプレート領域TAが存在すると判断する。この場合、画像切出部15は、テンプレート領域TAの特定座標FP(特徴点)を(X,Y)として、例えば、P1(X-1250,Y)、P2(X+30,Y)、P3(X-1250,Y+1350)、及び、P4(X+30,Y+1350)で形成される切り出し領域CAを設定する。
【0032】
他方で、図4(B)に示すように、テンプレートマッチングのマッチングスコアが所定スコア(例えば0.8)を下回るスコアである場合、画像切出部15は、X線原画像G2においては矩形のテンプレート領域TAが存在しないと判断する。この場合、画像切出部15は、X線原画像G2の原点O(0,0)とするときの基準点(1600,500)を特定座標FPとして、例えば、テンプレート領域TAの特定座標FP(特徴点)を(X,Y)として、図4(A)と同様に、例えば、P1(X-1250,Y)、P2(X+30,Y)、P3(X-1250,Y+1350)、及び、P4(X+30,Y+1350)で形成される切り出し領域CAを設定する。
【0033】
このように、画像切出部15は、テンプレート画像とX線原画像とのマッチング結果に基づいてテンプレート領域TAの有無を判定する。この構成によれば、画像切出部15は、テンプレート領域TAの有無をテンプレート画像とX線原画像とのマッチング処理のみで判定可能であるため、容易にテンプレート領域TAの有無を判定可能である。
【0034】
また、画像切出部15は、X線原画像におけるテンプレート画像に対応するテンプレート領域TAの有無に基づいて特定座標FPを設定する。この構成によれば、画像切出部15は、テンプレート領域TAがある場合は、テンプレート領域TAの特定座標を基準として切り出し領域CAを設定できる。他方で、画像切出部15は、テンプレート領域TAがない場合は、原点Oに基づく特定座標、例えば(X,Y)=(1600,500)を基準として切り出し領域CAを設定できる。
【0035】
なお、切り出し領域TAは、OSAに関連性が高い頭部の特定部を含むように設定できればよく、P1(X-1250,Y)、P2(X+30,Y)、P3(X-1250,Y+1350)、及び、P4(X+30,Y+1350)における各パラメータは、適宜変更可能である。
【0036】
OSA判定部17は、画像切出部15によって切り出された図5に示すX線画像G2に基づいてOSA判定を行う。OSA判定部17は、例えば、学習済みのニューラルネットワークを用いて、X線画像G2に含まれる患者の頭部がOSAを有するか否か判定する。
【0037】
その場合、数千枚又は数万枚の学習用X線画像であって、OSA判定済でありOSA又は非OSAのラベル付けがされた学習用X線画像を用いて、ニューラルネットワークの教師あり学習を行って、学習済みのニューラルネットワークを生成してよい。なお、学習済みのニューラルネットワークは、例えば、DCNN(Deep Convolutional Neural Network)、つまり、深層畳み込みニューラルネットワークが採用されてもよい。OSA判定部17は、前処理されたX線画像を学習済みのニューラルネットワークに入力することによって、出力としてOSA判定結果を出力する。この構成によれば、OSA判定部17は、学習済みのニューラルネットワークを用いてOSA判定を実行するため、OSA判定の精度が向上する。
【0038】
図3に戻り記録部19は、例示的に、画像取得部13が取得したX線原画像に対応する取得画像情報AIと、画像切出部15が切り出したX線画像に対応する切出画像情報CIと、OSA判定部17の判定結果に対応する判定情報DIと、を記録する。記録部19は、例えば、患者ごとに、取得画像情報AI、切出画像情報CI、及び判定情報DIを関連づけて記録してもよい。
【0039】
<OSA判定処理>
図6は、本実施形態に係るOSA判定処理の一例を示すフローチャートである。はじめに、OSA判定装置1は、患者の頭蓋顎顔面部(頭部)を含むX線画像を、例えば図1に示すX線撮像システム3から取得する(S1)。
【0040】
その後、OSA判定装置1は、テンプレート画像と、取得したX線原画像の矩形領域であるテンプレート領域TAとのテンプレートマッチングを実行する。OSA判定装置1は、所定スコア(例えば0.8)以上の矩形領域が存在するか否か判定する(S3)。
【0041】
所定スコア以上の矩形領域が存在する場合、図4(A)に示すように、OSA判定装置1は、テンプレート領域TAの特定座標FP(特徴点)を(X,Y)に基づいて切り出し領域CAを設定し、切り出し領域CAに対応するX線画像を切り出す(S5)。。
【0042】
所定スコア以上の矩形領域が存在しない場合、図4(B)に示すように、OSA判定装置1は、X線原画像G2の原点O(0,0)とするときの基準点(1600,500)(特徴点)に基づいて切り出し領域CAを設定し、切り出し領域CAに対応するX線画像を切り出す(S7)
【0043】
最後に、OSA判定装置1は、切り出されたX線画像に基づいてOSA判定を実行する(S9)。以上により、OSA判定処理が終了する。
【0044】
なお、OSA判定装置1は、OSA判定結果を、例えば図7に示す入出力インターフェイス44(例えばディスプレイ)から出力してもよい。OSA判定装置1は、OSA判定結果をX線撮像システム3に返送してもよい。
【0045】
以上、本実施形態によれば、OSA判定装置1は、X線撮像システム3から取得したX線画像から、当該X線画像における特徴点に基づいて患者の頭部の特定部を含むX線画像を切り出し、切り出したX線画像に基づいてOSA判定する。よって、OSA判定装置では、OSA判定を、判定者の知識や経験に依存することなく実行することができ、また、判定者の主観が入り込んでしまうことを防止することができる。したがって、正確にかつ容易に疾患判定を実行可能である。
【0046】
図7は、一実施形態に係るコンピュータのハードウェア構成の一例を示す図である。図7を参照して、図1に示すOSA判定システム100におけるOSA判定装置1を構成するのに用いることができるコンピュータのハードウェア構成の一例について説明する。
【0047】
図7に示すように、コンピュータ40は、ハードウェア資源として、主に、プロセッサ41と、主記録装置42と、補助記録装置43と、入出力インターフェイス44と、通信インターフェイス45とを備えており、これらはアドレスバス、データバス、コントロールバス等を含むバスライン46を介して相互に接続されている。なお、バスライン46と各ハードウェア資源との間には適宜インターフェイス回路(図示せず)が介在している場合もある。
【0048】
プロセッサ41は、コンピュータ全体の制御を行う。プロセッサ41は、例えば、図3に示すOSA判定装置1の情報処理部11に相当する。主記録装置42は、プロセッサ41に対して作業領域を提供し、SRAM(tatic andom ccess emory)やDRAM(ynamic andom ccess emory)等の揮発性メモリである。補助記録装置43は、ソフトウェアであるプログラム等やデータ等を格納する、HDDやSSD、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリである。当該プログラムやデータ等は、任意の時点で補助記録装置43からバスライン46を介して主記録装置42へとロードされる。補助記録装置43は、例えば図3に示すOSA判定装置1の記録部19に相当する。
【0049】
入出力インターフェイス44は、情報を提示すること及び情報の入力を受けることの一方又は双方を行うものであり、カメラ、キーボード、マウス、ディスプレイ、タッチパネル・ディスプレイ、マイク、スピーカ等である。通信インターフェイス45は、所定の通信ネットワークを介して、図1に示すOSA判定システム100におけるX線撮像システム3と各種データを送受信するためのものである。通信インターフェイス45と所定の通信ネットワークとは、有線又は無線で接続されうる。通信インターフェイス45は、ネットワークに係る情報、例えば、Wi-Fiのアクセスポイントに係る情報、通信キャリアの基地局に関する情報等も取得することがある。
【0050】
上に例示したハードウェア資源とソフトウェアとの協働により、コンピュータ40は、所望の手段として機能し、所望のステップを実行し、所望の機能を実現させることができることは、当業者には明らかである。
【0051】
なお、上記各実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。また、本発明は、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の開示を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素は削除してもよい。さらに、異なる実施形態に構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…OSA判定装置、3…X線撮像システム、11…情報処理部、13…画像取得部、15…画像切出部、17…OSA判定部、19…記録部、40…コンピュータ、41…プロセッサ、42…主記録装置、43…補助記録装置、44…入出力インターフェイス、45…通信インターフェイス、46…バスライン、100…OSA判定システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7