(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114910
(43)【公開日】2022-08-08
(54)【発明の名称】自動車ドア用シール材
(51)【国際特許分類】
B60J 10/25 20160101AFI20220801BHJP
B60J 10/86 20160101ALI20220801BHJP
【FI】
B60J10/25
B60J10/86
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021011387
(22)【出願日】2021-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島田 博
(72)【発明者】
【氏名】松浦 利文
(72)【発明者】
【氏名】飯田 祥光
(72)【発明者】
【氏名】橋口 総太郎
【テーマコード(参考)】
3D201
【Fターム(参考)】
3D201AA08
3D201AA09
3D201BA01
3D201CA23
3D201DA16
3D201DA18
3D201EA03A
3D201EA04A
3D201FA04
(57)【要約】
【課題】ドアの上端部と車体との間に浸入した水をドア開閉装置にかからないように排水可能にする。
【解決手段】上辺シール部3には、外側シールリップ11と内側シールリップ12との間に上辺側導水溝14が形成されている。縦辺シール部2には、縦辺取付部20と縦辺シールリップ22との間に、ドア開閉装置よりも下まで延びる縦辺側導水溝24が形成されている。上辺側導水溝14は、フレーム320のアウタパネルよりも車室内側に配置されている。縦辺側導水溝24の上端部24Ueは、アウタパネルよりも車室内側に配置されている。縦辺側導水溝24におけるドア開閉装置よりも上側部分は、上端部24Ueから下方へ延びるとともに、フレームのインナパネル325よりも車室外側まで延びている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車100の車体101の側部に形成されたドア開口部103を開閉する一方のドア300に取り付けられ、前記一方のドア開口部103と前記一方のドア300との間をシールする自動車ドア用シール材において、
前記一方のドア300のフレーム320の上辺部322に沿って車両前後方向に延びる部分には、前記上辺部322に取り付けられる上辺取付部30と、前記一方のドア300の閉時に前記車体101に弾接する上辺外側シールリップ31と、当該上辺外側シールリップ31から車室内側に離れて配置されて、前記一方のドア300の閉時に前記車体101に弾接する上辺内側シールリップ32とを有する上辺シール部3が設けられるとともに、
前記上辺外側シールリップ31と前記上辺内側シールリップ32との間には、前記上辺外側シールリップ31と前記車体101との間から浸入した水W1が車両前後方向に流通可能な上辺導水溝34が形成され、
前記一方のドア300のフレーム320の縦辺部321に沿って上下方向に延びる部分には、前記縦辺部321に取り付けられる縦辺上側取付部20と、当該縦辺上側取付部20から車室外側へ延びる支持壁部21と、当該支持壁部21から車両前後方向一方へ突出し、前記一方のドア300及び他方のドア200の閉時に前記他方のドア200に弾接する縦辺上側シールリップ22とを有する縦辺シール部2が設けられるとともに、前記縦辺上側取付部20と前記縦辺上側シールリップ22との間には、縦辺上側導水溝24が形成され、前記上辺シール部3の他方側の端部と前記縦辺シール部2の上端部とを接続する上側型部5が設けられ、
前記上辺導水溝34と縦辺上側導水溝24が上側型部5を介して接続されていることを特徴とする自動車ドア用シール材。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車ドア用シール材において、
前記上側型部5には、前記上辺導水溝34の他方側の端部34Feに接続される上側型部上辺側導水溝54が設けられるとともに、前記上側型部上辺側導水溝54の他方側の端部54Feに接続される上側型部縦辺側導水溝59が設けられ、
前記上側型部縦辺側導水溝59の下端部59Leは、前記縦辺上側導水溝24の上端部24Ueに接続され、
前記上辺導水溝34は、前記フレーム320の前記上辺部322の車室外側を構成するアウタパネル324のフランジ上辺部326aよりも車室内側に配置され、
前記上側型部縦辺側導水溝59の上端部59Ueは、前記フレーム320の縦辺部321の車室外側を構成するアウタパネル324のフランジ縦辺部326bよりも車室内側に配置され、
前記上側型部縦辺側導水溝59における下側部分59Lは、前記上端部59Ueから下方へ延びるとともに、前記フレーム320の縦辺部321の車室外側を構成するアウタパネル324のフランジ縦辺部326bよりも車室外側まで延びていることを特徴とする自動車ドア用シール材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の自動車ドア用シール材において、
前記縦辺シール部2の下端部に下側型部8が接続されるとともに、前記下側型部8の下端部に縦辺下側シール部6が接続され、
前記縦辺上側導水溝24の下端部24Leに下側型部導水溝84が接続されるとともに、前記下側型部導水溝84の下端部84Leに縦辺下側導水溝64が接続され、
前記縦辺下側導水溝64の下端部64Leは、前記一方のドア300及び他方のドア200を開閉するドア開閉装置213・311・315よりも下側の位置に配置されていることを特徴とする自動車ドア用シール材。
【請求項4】
請求項2に記載の自動車ドア用シール材において、
前記上側型部上辺側導水溝54の底部54bは、車両前後方向一方の端部54Feに近づくにつれて下に位置するように形成されていることを特徴とする自動車ドア用シール材。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の自動車ドア用シール材において、
前記縦辺上側取付部20は、前記縦辺部321が有する上下方向に延びるフランジ縦辺部326bの車室内側に配置される内側壁部20aと、前記フランジ縦辺部326bの車室外側に配置される外側壁部20bと、前記内側壁部20aから前記外側壁部20bまで延び、前記内側壁部20a及び前記外側壁部20bを連結する連結壁部20cとを有し、
前記支持壁部21は、前記外側壁部20bにおける車両前後方向他方の端部から車室外側へ突出するように形成され、
前記縦辺上側導水溝24は、前記縦辺上側シールリップ22と、前記外側壁部20bと、前記支持壁部21とによって形成されていることを特徴とする自動車ドア用シール材。
【請求項6】
請求項5に記載の自動車ドア用シール材において、
前記内側壁部20a、前記外側壁部20b及び前記連結壁部20cには、前記縦辺上側シールリップ22よりも硬質な材料からなる縦辺側芯材25が埋設されていることを特徴とする自動車ドア用シール材。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載の自動車ドア用シール材において、
前記縦辺上側シールリップ22は、車両前後方向一方の端部に近づくにつれて車室内側に位置するように湾曲ないし傾斜していることを特徴とする自動車ドア用シール材。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つに記載の自動車ドア用シール材において、
前記上辺外側シールリップ31は、上端部に近づくにつれて車室外側に位置するように湾曲ないし傾斜した状態で前記車体101に弾接することを特徴とする自動車ドア用シール材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に配設されるドアに取り付けられる自動車ドア用シール材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車のドアには、当該ドアと車体のドア開口部との間をシールするためのシール材が取り付けられている(例えば、特許文献1~3参照)。特許文献1のシール材はサッシュの上辺部に沿って車両前後方向に延びる中空シール部及びシールリップを有している。シール材の前端部には、袋状の水収容部が一体成形されており、シールリップの根元近傍を前方へ流れた雨水は、水収容部に一旦収容されるようになっている。この水収容部の開口部は車両前方向に指向しており、水収容部に収容された雨水は水収容部から前方向へ流出するようになっている。
【0003】
また、特許文献2のシール材もサッシュの上辺部に沿って車両前後方向に延びる中空シール部及びシールリップを有している。特許文献2の
図4には、中空シール部からシールリップまで車幅方向に延びる壁が記載されている。
【0004】
また、特許文献3のシール材は、サッシュの上辺部に沿って車両前後方向に延びる部分と、ドアの下部に沿って前後方向に延びる部分とを有する中空型ウエザーストリップである。この中空型ウエザーストリップの周壁部のうち、サッシュの上辺部に沿う部分では、雨水の流入を許容する上部スリットが断続的に形成され、またドアの下部に沿って延びる部分では、排水用スリットが断続的に形成されている。したがって、上部スリットから中空型ウエザーストリップの内部に流入した雨水は、当該中空型ウエザーストリップの内部を流通して排水用スリットから排水される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-051054号公報
【特許文献2】特開2006-069494号公報
【特許文献3】実開昭64-030716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1のシール材の場合、水収容部はサッシュの上部に配置されているので、水収容部から流出した水が下方へ流れてドア開閉装置にかかるおそれがある。水がドア開閉装置にかかると、寒冷地で凍結してドアの開閉に支障をきたす場合がある。
【0007】
また、特許文献2では、中空シール部からシールリップまで車幅方向に延びる壁を有しているが、中空シール部とシールリップとの間に流入した雨水が多い場合には、雨水が上記壁を越えて下方へ流れてドア開閉装置にかかるおそれがあり、その結果、寒冷地で凍結してドアの開閉に支障をきたす場合がある。
【0008】
また、特許文献3では、排水用スリットがドアの下部に位置しているので、排水用スリットから排水された水がドア開閉装置にかかるおそれはないが、サッシュの上縁に形成した上部スリットは断続的に形成されている為、雨樋機能がサッシュの上縁全長に渡って付与されてはいない。その結果として、雨水が中空型ウエザーストリップの部分を乗り越えると車室内に浸入するという不具合現象が発生する可能性は依然として残されている。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ドアの上端部と車体との間に浸入した水を車室内に侵入する事を防止するとともに、ドア開閉装置にかからないように排水可能にすることにある。
【0010】
ここで、本発明では、以下の様に用語の定義をする。「車室外」とは、特許文献3の第1図にて、ドアの上端部のフランジ部における、車室外側面よりも外側の部分である。また、「ドアの上端部と車体との間」とは、特許文献3の第1図にて、上部スリット設定部分における車外側リップ部と車内側リップ部と両リップ部の付根部とによって構成される、雨樋部分である。また、「車室内」とは、特許文献3の第1図にて、上部スリット設定部分における車内側リップ部が車両のルーフ部に弾接している部分よりも内側の部分である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本開示の第1の側面では、自動車100の車体101の側部に形成されたドア開口部103を開閉する一方のドア300に取り付けられ、前記一方のドア開口部103と前記一方のドア300との間をシールする自動車ドア用シール材1において、前記一方のドア300のフレーム320の上辺部322に沿って車両前後方向に延びる部分には、前記上辺部322に取り付けられる上辺取付部30と、前記一方のドア300の閉時に前記車体101に弾接する上辺外側シールリップ31と、当該上辺外側シールリップ31から車室内側に離れて配置されて、前記一方のドア300の閉時に前記車体101に弾接する上辺内側シールリップ32とが設けられ、前記上辺外側シールリップ31と前記上辺内側シールリップ32との間には、前記上辺外側シールリップ31と前記車体101との間から浸入した水が車両前後方向に流通可能な上辺導水溝34が形成され、前記一方のドア300のフレーム320の縦辺部321に沿って上下方向に延びる部分には、前記縦辺部321に取り付けられる縦辺上側取付部20と、当該縦辺上側取付部20から車室外側へ延びる支持壁部21と、当該支持壁部21から車両前後方向一方へ突出し、前記一方のドア300及び他方のドア200の閉時に前記他方のドア200に弾接する縦辺上側シールリップ22とを有する縦辺シール部2が設けられるとともに、前記縦辺上側取付部20と前記縦辺上側シールリップ22との間には、縦辺上側導水溝24が形成され、前記上辺シール部3の他方側の端部と前記縦辺シール部2の上端部とを接続する上側型部5が設けられ、前記上辺導水溝34と前記縦辺上側導水溝24が上側型部5を介して接続しているものである。
【0012】
この構成によれば、ドア300を閉じると、ドア300のフレーム320の上辺部322に沿って延びている上辺外側シールリップ31と上辺内側シールリップ32とが車体101に弾接する。このとき、上辺外側シールリップ31と上辺内側シールリップ32とは車室内外方向に互いに間隔をあけて配置されていて撓み変形し易くなっているので、ドア300を閉じる瞬間に当該ドア300に作用する反力が小さくなる。よって、ドア300閉じ性が良好になる。
【0013】
また、ドア300を閉じると、上辺外側シールリップ31が車体に弾接しているが、ドア300の上端部と車体101の外側シール面101bとの間から水が浸入することがある。浸入した水は、上辺外側シールリップ31と上辺内側シールリップ32との間の上辺側導水溝34を車両前後方向に流れる。
【0014】
このとき、上辺側導水溝34と縦辺上側導水溝24は上側型部5を介して接続されているので、上辺側導水溝34を車両前後方向に流れた水は、上側型部5を経由して、縦辺上側導水溝24で車両上下方向に流れる。これにより、水がドア開閉装置213・311・315にかかりにくくなる。
【0015】
また、本開示の第2の側面では、前記上側型部5には、前記上辺導水溝34の他方側の端部34Feに接続される上側型部上辺側導水溝54が設けられるとともに、前記上側型部上辺側導水溝54の他方側の端部54Feに接続される上側型部縦辺側導水溝59が設けられ、前記上側型部縦辺側導水溝59の下端部59Leは、前記縦辺上側導水溝24の上端部24Ueに接続され、前記上辺導水溝34は、前記フレーム320の上辺部322の車室外側を構成するアウタパネル324のフランジ上辺部326aよりも車室内側に配置され、前記上側型部縦辺側導水溝59の上端部59Ueは、前記フレーム320の縦辺部321の車室外側を構成するアウタパネル324のフランジ縦辺部326bよりも車室内側に配置され、前記上側型部縦辺側導水溝59における下側部分59Lは、前記上端部59Ueから下方へ延びるとともに、前記フレーム320の縦辺部321の車室外側を構成するアウタパネル324のフランジ縦辺部326bよりも車室外側まで延びているものである。
【0016】
この構成によれば、浸入した水は、上辺外側シールリップ31と上辺内側シールリップ32との間の上辺側導水溝34を車両前後方向に流れる。上辺側導水溝34における車両前後方向一方の端部34Feを通過して上側型部上辺側導水溝54の一方の端部54Feへ流れた水は、上側型部縦辺側導水溝59を通過して縦辺側導水溝24の上端部24Ueから当該縦辺上側導水溝24に流入して下方へ流れていく。このとき、上側型部縦辺側導水溝59における上端部59Ueよりも下側部分59Lは下側に延びるとともに、フレーム320の縦辺部321のアウタパネル324のフランジ縦辺部326bよりも車室外側まで延びているので、上側型部縦辺側導水溝59内の水はアウタパネル324のフランジ縦辺部326bよりも車室外側に導水される。これにより、水がドア開閉装置213・311・315に、更にかかりにくくなる。
【0017】
本開示の第3の側面では、前記縦辺シール部2の下端部に下側型部8を接続するとともに、前記下側型部8の下端部に縦辺下側シール部6を接続し、前記縦辺上側導水溝24の下端部24Leに下側型部導水溝84を接続するとともに前記下側型部導水溝84の下端部84Leに縦辺下側導水溝64を接続し、前記縦辺下側導水溝64の下端部64Leは、前記一方のドア300及び他方のドア200を開閉するドア開閉装置213・311・315よりも下側の位置に配置されているものである。
【0018】
この構成によれば、上辺シール部3と上側型部5と縦辺シール部2と下側型部8と、縦辺下側シール部6とが一体成形されているので、導水溝を流れる水が途中で漏れることはほとんどなく、また、縦辺下側導水溝64の下端部64Leはドア開閉装置213・311・315よりも下側の位置に配置されているので、ドア開閉装置213・311・315よりも下側で排水される。このことによっても水がドア開閉装置213・311・315にかかるのをより抑制することができる。
【0019】
本開示の第4の側面では、前記上側型部上辺側導水溝54の底部54bは、車両前後方向一方の端部54Feに近づくにつれて下に位置するように形成されている。
【0020】
この構成によれば、上側型部上辺側導水溝54内の水が車両前後方向一方へ向けて流れて縦辺上側導水溝24に流入し易くなる。
【0021】
本開示の第5の側面では、前記縦辺上側取付部20は、前記縦辺部321が有する上下方向に延びるフランジ縦辺部326bの車室内側に配置される内側壁部20aと、前記フランジ縦辺部326bの車室外側に配置される外側壁部20bと、前記内側壁部20aから前記外側壁部20bまで延び、前記内側壁部20a及び前記外側壁部20bを連結する連結壁部20cとを有し、前記支持壁部21は、前記外側壁部20bにおける車両前後方向他方の端部から車室外側へ突出するように形成され、前記縦辺上側導水溝24は、前記縦辺上側シールリップ22と、前記外側壁部20bと、前記支持壁部21とによって形成されている。
【0022】
この構成によれば、フレーム320の縦辺部321のフランジ縦辺部326bを縦辺上側取付部20の内側壁部20aと外側壁部20bとで挟持することにより、縦辺上側取付部20を縦辺部321のフランジ縦辺部326bに取り付けることができる。この場合に、縦辺上側シールリップ22、外側壁部20b及び支持壁部21を利用して縦辺上側導水溝24を形成できるので、導水溝24を形成するためだけの形状を設定しなくても済む。
【0023】
本開示の第6の側面では、前記内側壁部20a、前記外側壁部20b及び前記連結壁部20cには、前記縦辺上側シールリップ22よりも硬質な材料からなる縦辺側芯材25が埋設されている。
【0024】
この構成によれば、縦辺上側取付部20を縦辺部321のフランジ縦辺部326bにしっかりと取り付けることができるので、縦辺上側導水溝24の変形や変位を抑制して水を所望の箇所へ導くことができる。
【0025】
本開示の第7の側面では、前記縦辺上側シールリップ22は、車両前後方向一方の端部に近づくにつれて車室内側に位置するように湾曲ないし傾斜している。
【0026】
この構成によれば、縦辺上側導水溝24の開口幅を狭くすることができるので、縦辺上側導水溝24内の水が縦辺上側導水溝24の外に漏れ出しにくくなる。
【0027】
本開示の第8の側面では、前記上辺外側シールリップ31は、上端部に近づくにつれて車室外側に位置するように湾曲ないし傾斜した状態で前記車体101に弾接させることができる。
【0028】
この構成によれば、上辺外側シールリップ31が車体101と弾接しているシール部位のシール圧が高くなるため、浸入してくる水の水量を削減することができる。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように、本開示によれば、ドア閉力を低減したタイプのドア用シール材において、ドアの上端部と車体との間に浸入した水を車室内へ浸入しないようにするとともに、車両一方の端部に導水し、続いて車室外側へ導水してドア開閉装置よりも下方へ導くことができるので、水がドア開閉装置にかからないように排水することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施形態に係る自動車の車体の一部を示す右側面図である。
【
図3】
図1におけるIII-III線断面図である。
【
図4】自動車ドア用シール材が取り付けられた右リヤドアを車室内側から見た側面図である。
【
図6】自動車ドア用シール材が取り付けられたフレームを前側から見た図である。
【
図7】自動車ドア用シール材を車室内側から見た図である。
【
図9】
図7のA部内に位置する部分を斜め上から見た斜視図である。
【
図10】
図8におけるX-X線に相当する断面図である。
【
図11】
図8におけるXI-XI線に相当する断面図である。
【
図12】
図8におけるXII-XII線に相当する断面図である。
【
図13】
図8におけるXIII-XIII線に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0032】
図1は、本発明の実施形態に係る自動車100の車体101の一部を示す右側面図である。自動車100は乗用自動車であり、車室内には運転席、助手席及び後部座席を備えている。この実施形態の説明では、車両前側を単に前といい、車両後側を単に後というものとする。また、車幅方向は車体101の左右方向であり、車室内外方向にも対応している。
【0033】
(車体101の構成)
車体101の右側下部には、前後方向に延びる右サイドシル105が設けられている。車体101の右側部には、右フロントピラー110、右センターピラー111及び右リヤピラー112が右サイドシル105から上方へ延びるように設けられている。車体101の上部には、右フロントピラー110の上端部から右センターピラー111の上端部を経て、右リヤピラー112の上端部まで延びるルーフ部120が設けられている。これら構成により、車体101の右側部の前側には、右サイドシル105、右フロントピラー110、右センターピラー111及びルーフ部120によって区画されたフロントドア開口部102が形成されることになる。
【0034】
また、車体101の右側部の後側には、右サイドシル105、右センターピラー111、右リヤピラー112及びルーフ部120によって区画されたリヤドア開口部103が形成されることになる。
【0035】
フロントドア開口部102は、フロントドア200によって開閉され、また、リヤドア開口部103は、
図4に示すリヤドア300によって開閉される。
【0036】
図2に示すように、右センターピラー111の前側面111aには、上下方向中間部にストライカー111dが前方へ突出するように設けられている。ストライカー111dは、詳細は後述するが、フロントドア200を閉状態で保持しておくための部材である。
【0037】
尚、車体101の左側は右側と同様に構成されており、本発明は車体101の右側と左側のどちらにも適用することができる。以下、本発明を車体101の右側に適用した場合について説明する。また、本発明はフロントドア200にも適用することができる。
【0038】
(フロントドア200の構成)
図1に示すように、フロントドア200は、当該フロントドア200の略下半部を構成するドア本体部210と、当該フロントドア200の略上半部を構成するフレーム220と、フレーム220によって保持されるウインドガラス(図示せず)とを備えている。フロントドア本体部210の前端部には、2つのフロントドアヒンジ211が上下方向に互いに間隔をあけて取り付けられている。フロントドアヒンジ211は、フロントドア200を車体101の右フロントピラー110に対して上下方向に延びる回動軸まわりに回動可能に支持する部材である。
【0039】
また、フロントドア本体部210の前端部における前述した上下2つのフロントドアヒンジ211の間には、フロントドアチェッカー215が取付けられている。フロントドアチェッカー215は、フロントドア本体部210の回動量を規制する部材であり、フロントピラー110とフロントドア本体210との間に配置され、両者に回動可能に連結されている。また、フロントドアヒンジ211、及びフロントドアチェッカー215の構造は、従来から周知のものである。尚、
図4では、ドアトリム等の記載を省略している。
【0040】
一方、ドア本体部210の後端部には、フロントドア200が閉状態になったときに車体101のストライカー111dが入るストライカー穴212が形成されている。ドア本体部210の内部には、ドアラッチ装置213が設けられている。ドアラッチ装置213は、フロントドア200が閉状態になったときにストライカー穴212に入ったストライカー111dに係合してフロントドア200を閉状態で保持する装置であり、このドアラッチ装置213の構造は従来から周知のものである。尚、ドアハンドル(図示せず)を操作することで、ドアラッチ装置213の係合状態を解除してフロントドア200を開くことができる。
【0041】
(リヤドア300の構成)
図1に示すように、リヤドア300は、当該リヤドア300の略下半部を構成するドア本体部310と、当該リヤドア300の略上半部を構成するフレーム320と、フレーム320によって保持されるウインドガラス(図示せず)とを備えている。
【0042】
図4に示すように、フレーム320は、前側縦辺部321と、上辺部322と、後側縦辺部323とを有している。前側縦辺部321は、ドア本体部310の前部から上方へ延びている。上辺部322は前後方向に延びており、上辺部322の前端部が前側縦辺部321の上端部と連続している。
【0043】
また、後側縦辺部323は、ドア本体部310の後部から上方へ延びており、この後側縦辺部323の上端部が上辺部322の後端部と連続している。
図13(
図8のXIII-XIII線断面)に示すように、フレーム320は、車室外側を構成するアウタパネル324と、車室内側を構成するインナパネル325とで構成されている。
【0044】
インナパネル325の上部には、アウタパネル324側へ延びる上辺シール材取付板部325aが設けられ、さらに、アウタパネル324側に近接する部位から上方に屈曲するインナパネル上板部325bが設けられ、インナパネル上板部325bがアウタパネル324の車室内側面に重ね合わせている。
【0045】
また、アウタパネル324の上縁部には、車室内側へ向けて屈曲した屈曲部324aが設けられ、インナパネル上板部325bの車室内側面に重ね合わされている。上辺シール材取付板部325aは、車室外側へ行くほど上に位置するように傾斜している。
【0046】
フレーム320の上辺部322を構成しているアウタパネル324及びインナパネル325により、フランジ上辺部326aが形成されている。上辺部322のフランジ上辺部326aは、上辺部322の上端部から車内側へ突出し、車両前後方向に延びている。また、
図12に示すように、フレーム320の前側縦辺部321も上辺部322と同様な構造になっている。
【0047】
フレーム320の前側縦辺部321を構成しているアウタパネル324及びインナパネル325により、フランジ前側縦辺部326bが形成されている。前側縦辺部321のフランジ前側縦辺部326bは、前側縦辺部321の前端部から前方へ突出し、上下方向に延びており、下側はドア本体部310に達している。さらに、前側縦辺部321を構成しているアウタパネル324の車室外側には、上下方向に延びるガーニッシュ327(
図10~
図12に示す)が取り付けられている。
【0048】
また、
図4に示すように、リヤドア本体部310の前端部には、2つのリヤドアヒンジ311が互いに上下方向に間隔をあけて取り付けられている。リヤドアヒンジ311は、リヤドア300を車体101のセンターピラー111に対して上下方向に延びる回動軸まわりに回動可能に支持する部材である。 また、
図2(
図1におけるII-II線断面図)に示すように、より具体的には、リヤドアヒンジ311の本体形状は略L字形状で、L字形状の前側の辺をセンターピラー車外側面111bにボルトV等で固定し、L字形状の後側の辺をリヤドア本体310の前端部車外側面310aにボルトV等で固定し、L字形状の後側の辺に設けた回動部311aで回動可能となっている。
【0049】
また、
図1に示すように、リヤドア本体部310の前端部の前述した上下2つのリヤドアヒンジ311の間には、リヤドアチェッカー315が取付けられている。より具体的には、
図3(
図1におけるIII-III線断面図)に示すように、リヤドアチェッカー315は、リヤドア本体部310の回動量を規制する部材で、センターピラー110とリヤドア本体310との間に配置されセンターピラー110に連結されている。
【0050】
また、リヤドアチェッカー315の本体315aの形状は略平板形状とされている。センターピラー111の後側面111cにはリヤドアチェッカー固定具315bが取付けられ、リヤドアチェッカー固定具315bには、リヤドアチェッカー315の本体315aの前側部分が回動可能に取付けられている。また、リヤドア本体310の前端部車内側面310bには、穴316があけられている。
【0051】
さらに、リヤドアチェッカー315の後方に形成された掛止部315cは、穴316より幅広に形成されており、リヤドアヒンジ311によりリヤドア本体310が開いていくと、穴316の周縁部に掛止部315cが当接し、リヤドア本体部310の回動が規制されるような構造になっている。また、リヤドアヒンジ311、及びリヤドアチェッカー315の構造は、従来から周知のものである。
【0052】
尚、本発明におけるドア開閉装置には、ドアラッチ装置213、ドアヒンジ311、ドアチェッカー315等が含まれる。
【0053】
(自動車ドア用シール材1の構成)
リヤドア300には、当該リヤドア300とリヤドア開口部103との間をシールする自動車ドア用シール材1(
図7に示す)が取り付けられている。自動車ドア用シール材1は、フレーム320の前側縦辺部321に沿って上下方向に延びる前側縦辺シール部2と、フレーム320の上辺部322に沿って前後方向に延びる上辺シール部3と、フレーム320の後側縦辺部323に沿って下方へ延びる後側縦辺シール部4と、上側型部5と、前側縦辺下側シール部6と、後側型部7と、下側型部8とを備えている。
【0054】
前側縦辺シール部2及び後側縦辺シール部4及び前側縦辺下側シール部6は、材料を口金(図示せず)から押し出すことによって一体成形された押出成形部であり、上端部から下端部まで同一断面を有している。また、上辺シール部3も、材料を口金(図示せず)から押し出すことによって一体成形された押出成形部であり、前端部から後端部まで同一断面を有している。
【0055】
前側縦辺下側シール部6は、前側縦辺シール部2の下端部に下側型部8を介して接続されており、その接続部分からドア本体部310の前端部に沿って当該ドア本体部310の下端部まで延びている。前側縦辺下側シール部6の下端部は開放されている。また、後側縦辺シール部4は、ドア本体部310の後端部に沿って当該ドア本体部310の下端部まで延びた後、当該ドア本体部310の下端部に沿って前側へ向けて延びている。後側縦辺シール部4の下端部は開放されている。前側縦辺下側シール部6の下端部と、後側縦辺シール部4の下端部とは前後方向に離れている。また、前側縦辺下側シール部6は、
図2及び
図3に示すように、フレーム320の前側縦辺部321のアウタパネル外面324bと、屈曲部324aとの間に設けられた前側縦辺下側シール部取付板部324cに取付けられる。
【0056】
より具体的には、前側縦辺下側シール部6の縦辺下側取付部60が前側縦辺下側シール部取付板部324cに対して、両面テープ又はクリップ等(図示省略)により取付けられる。前側縦辺下側シール部6には、縦辺下側取付部60の車外側端部から前側に延出し、フロントドア200及びリヤドア300閉時に、フロントドア200の後端部に弾接する縦辺下側外側シールリップ61と、縦辺下側取付部60の車内側端部から前側に延出し、アウタパネル324の屈曲部324aの車外側面に弾接する縦辺 下側 内側シールリップ62とが、設けられており、縦辺 下側 外側シールリップ61と縦辺下側取付部60と縦辺下側内側シールリップ62とで、縦辺下側導水溝64を構成している。
【0057】
上側型部5は、前側縦辺シール部2の上端部と上辺シール部3の前端部とを接続する部分であり、開閉動作する金型(図示せず)によって成形された部分である。下側型部8は、前側縦辺シール部2の下端部と前側縦辺下側シール部6の上端部とを接続する部分であり、開閉動作する金型(図示せず)によって成形された部分である。また、下側型部8の詳細形状図示は省略するが、前側縦辺シール部2の縦辺上側導水溝24と前側縦辺下側シール部6の縦辺下側導水溝64とが接続されるような形状になっている。
【0058】
後側型部7は、上辺シール部3の後端部と後側縦辺シール部4の上端部とを接続する部分であり、開閉動作する金型(図示せず)によって成形された部分である。上辺シール部3と上側型部5との境界線を符号L1で示し、前側縦辺シール部2と上側型部5との境界線を符号L2で示す。また、上辺シール部3と後側型部7との境界線を符号L3で示し、後側縦辺シール部4と後側型部7との境界線を符号L4で示す。また、前側縦辺シール部2と下側型部8との境界線を符号L5で示し、前側縦辺下側シール部6と下側型部8との境界線を符号L6で示す。
【0059】
自動車ドア用シール材1を構成する材料としては、ゴム様弾性体であれば特に限定されないが、ゴムの場合はEPDMスポンジゴムが、熱可塑性樹脂の場合は発泡TPOまたは軟質TPOが好ましい。
【0060】
また、
図13に示すように、自動車ドア用シール材1におけるフレーム320の上辺部322に沿って前後方向に延びる部分には、上辺部322に取り付けられる上辺取付部30と、リヤドア300の閉時にルーフ部(車体)120の外側シール面120bに弾接する上辺外側シールリップ31と、当該上辺外側シールリップ31から車室内側に離れて配置されて前後方向に延び、リヤドア300の閉時にルーフ部(車体)120の内側シール面120cに弾接する上辺内側シールリップ32とが設けられている。
【0061】
自動車ドア用シール材1における上辺部322に沿って前後方向に延びる部分は、上辺シール部3と、上側型部5の上辺側部分5aとを含んでいる。上辺取付部30は、上辺部322における上辺シール材取付板部325aに沿って延びるように形成されており、当該上辺シール材取付板部325aに取り付けられる部分である。例えば、上辺取付部30の下面を両面テープのような接着材(図示せず)によって上辺シール材取付板部325aに取り付けることができるが、これに限られるものではなく、例えばクリップ(図示せず)のような取付部材によって取り付けるようにしてもよい。
【0062】
また、
図10(
図8のX-X線断面)に示すように、上側型部上辺側取付部50及び上側型部上辺側外側シールリップ51の下側部分には、上側型部芯材55が埋設されている。上側型部芯材55は、上側型部上辺側外側シールリップ51の上側部分及び上側型部上辺側内側シールリップ52を構成するゴム様弾性体よりも硬質な材料からなる部材であり、上下方向に延びるとともに、前後方向にも連続して延びる板状をなしている。
【0063】
上側型部芯材55は、上側型部上辺側外側シールリップ51の下側部分に埋め込まれた部分が上側型部上辺側取付部50に埋め込まれた部分に比べて車室外側に位置するように上下方向中間部が屈曲した形状になっている。上側型部上辺側外側シールリップ51の下端部近傍には、車室外側へ突出して前後方向に延びる下側突出部53bが形成されている。下側突出部53bの先端部は、インナパネル上板部325bの下端部近傍に弾接している。上側型部上辺側外側シールリップ51の上端部近傍には、車室外側へ突出して前後方向に延びる上側型部上辺側背面リップ53aが形成されている。上側型部上辺側背面リップ53aの先端部は、屈曲部324aの車内側面に弾接している。
【0064】
また、
図13に示すように、上辺外側シールリップ31の下側部分は上下方向に延びる一方、上側部分はその上端部に近づくにつれて車室外側に位置するように傾斜ないし湾曲している。上辺外側シールリップ31がルーフ部120の車外側シール面120bに弾接することで、上辺外側シールリップ31の上側部分が上端部に近づくにつれて車室外側に位置するように湾曲ないし傾斜した状態でルーフ部120の車外側シール面120bに弾接する。
【0065】
上辺内側シールリップ32は、その上端部に近づくにつれて車室内側に位置するように傾斜ないし湾曲している。上辺内側シールリップ32がルーフ部120の車内側シール面120cに弾接することで、上辺内側シールリップ32が全体として車室外側方向に撓み変形した状態になる。リヤドア300の閉時には、上辺外側シールリップ31の上端部と上辺内側シールリップ32の上端部とは、共にルーフ部120に弾接しているが、両上端部が弾接する箇所は車室内外方向に離れている。
【0066】
また、リヤドア300の閉時には、上辺外側シールリップ31の車室内面と、上辺内側シールリップ32の車室外面と、ルーフ部120とによって閉空間が形成されているが、雨水や洗車時の水(以下、雨水等という)が上辺外側シールリップ31とルーフ部120の車外側シール面120bとの間から車室内側に浸入することが考えられる(
図13のW1)。尚、上辺外側シールリップ31とルーフ部120の車外側シール面120bとの間から車室内側に浸入した雨水等は、上辺内側シールリップ32によって車室内にまで浸入することが抑制される。
【0067】
上辺外側シールリップ31と上辺内側シールリップ32との間には、上辺外側シールリップ31とルーフ部120の車外側シール面120bとの間から浸入した雨水等が前後方向に流通可能な上辺導水溝34が形成されている。上辺導水溝34は、その前端部から後端部までの全体がフレーム320のフランジ上辺部326aのアウタパネル324よりも車室内側に配置されている。これにより、上辺導水溝34内の雨水等は、アウタパネル324よりも車室内側を流通することになる(
図13のW1)。
【0068】
また、
図8に破線で示すように、上側型部上辺側導水溝54の底部54bは、前端部54Feに近づくにつれて下に位置するように形成されている。これにより、上辺側導水溝54の底部54bの高さを部位に応じて変更して、上側型部上辺側導水溝54内の雨水等を前側へ向けて流通させることができる(
図8・
図10のW2)。
【0069】
また、
図12に示すように、自動車ドア用シール材1におけるリヤドア300のフレーム320の前側縦辺部321に沿って上下方向に延びる部分には、前側縦辺部321に取り付けられる縦辺上側取付部20と、当該縦辺上側取付部20から車室外側へ延びる支持壁部21と、当該支持壁部21から前方へ突出し、フロントドア200及びリヤドア300の閉時にフロントドア200に弾接する縦辺上側シールリップ22とが設けられている。
【0070】
また、
図8に示すように、自動車ドア用シール材1における前側縦辺部321に沿って上下方向に延びる部分は、前側縦辺シール部2と、上側型部5の縦辺側部分5bとを含んでいる。また、
図12に示すように、縦辺上側取付部20は、前側縦辺部321のフランジ前側縦辺部326bに取り付けられる部分であり、フランジ前側縦辺部326bに沿って上下方向に延びている。
【0071】
具体的には、縦辺上側取付部20は、フランジ前側縦辺部326bの車室内側に配置される内側壁部20aと、フランジ前側縦辺部326bの車室外側に配置される外側壁部20bと、内側壁部20aから外側壁部20bまで延びる連結壁部20cとを有している。連結壁部20cは、内側壁部20aの前端部と外側壁部20bの前端部とを連結する部分である。縦辺上側取付部20は、内側壁部20a、外側壁部20b及び連結壁部20cにより後方に開放した形状となり、フランジ前側縦辺部326bを内側壁部20aと外側壁部20bとの間に差し込むことが可能になる。
【0072】
内側壁部20aと外側壁部20bとの間に差し込まれたフランジ前側縦辺部326bは、内側壁部20aの車外側面に設けられた複数の保持リップ20a1と外側壁部20bの車内側面に設けられた複数の保持突起20b1とによって挟持される。内側壁部20a、外側壁部20b及び連結壁部20cには、縦辺上側シールリップ22よりも硬質な材料からなる縦辺側芯材25が埋設されている。
【0073】
縦辺側芯材25は、上側型部芯材55と同様に硬質な材料からなる部材である。縦辺側芯材25の断面形状は、縦辺上側取付部20の断面形状と同様に後方に開放した形状となっている。縦辺側芯材25を埋設していることで、縦辺上側取付部20によるフランジ前側縦辺部326bの挟持力を向上させることができ、縦辺上側取付部20をしっかりと取り付けることができる。
【0074】
支持壁部21は、外側壁部20bにおける後端部から車室外側へ突出して上下方向に延びるように形成されている。支持壁部21の後端部は、ガーニッシュ327の前端部に弾接するようになっている。縦辺上側シールリップ22は、支持壁部21の車室外側の端部から前方へ突出するとともに、上下方向に延びており、前端部に近づくにつれて車室内側に位置するように湾曲ないし傾斜している。図示しないが、フロントドア200が開いているときには、縦辺上側シールリップ22の前端部が、外側壁部20bの前端部または連結壁部20cの車室外側の端部から車室外側に離れており、縦辺上側シールリップ22と縦辺上側取付部20との間に隙間が形成される。
【0075】
一方、フロントドア200とリヤドア300とが共に閉じている状態では、縦辺上側シールリップ22の車室外面にフロントドア200の後端部が弾接し、縦辺上側シールリップ22が全体として車室内側へ撓むように弾性変形する。これにより、縦辺上側シールリップ22の前端部が、外側壁部20bの前端部または連結壁部20cの車室外側の端部に弾接するので、縦辺上側シールリップ22と縦辺上側取付部20との隙間が閉じられる。縦辺上側シールリップ22と、外側壁部20bと、支持壁部21とによって上下方向に延びる縦辺上側導水溝24が形成されている。
【0076】
また、
図8に示すように、縦辺上側導水溝24の上端部24Ueは、上側型部縦辺側導水溝59と、上側型部上辺側導水溝54を介して上辺導水溝34の前端部Feに接続されているため、スムーズに排水される(
図8のW2→W3→W4→W5)。前側縦辺下側シール部6は、
図2・
図3に示すように、前側縦辺シール部2と同様な断面形状の縦辺下側導水溝64を持っている。また、
図4に示すように、前側縦辺下側シール部6がドア本体部310の下端部まで延びているので、縦辺下側導水溝64の下端部64Leはドア本体部310の下端部に配置される。
【0077】
即ち、より具体的には、
図8に示すように、上辺シール部3の他方側の端部と前側縦辺シール部2の上端部とを接続する上側型部5が設けられ、上側型部5には、上辺導水溝34の他方側の端部34Feに接続される上側型部上辺側導水溝54が設けられるとともに、上側型部上辺側導水溝54の他方側の端部54Feに接続される上側型部縦辺側導水溝59が設けられ、上側型部縦辺側導水溝59の下端部59Leは、縦辺上側導水溝24の上端部24Ueに接続されている。また、より具体的には、
図7に示すように、縦辺上側導水溝24の下端部24Leは下側型部導水溝84の上端部84Ueに接続され、下側型部導水溝84の下端部84Leは縦辺下側導水溝64の上端部64Ueに接続され、
図4に示すように、縦辺下側導水溝64の下端部64Leはドア本体部310の下端部に配置される。
【0078】
このことから、縦辺上側導水溝24内の水W5は、ドアラッチ装置213、ドアヒンジ311、ドアチェッカー315よりも下の位置で排水されることになる(
図7のW5→W6→W7)。
【0079】
また、
図5の仮想線及び
図8に示すように、上側型部縦辺側導水溝59の上端部59Ueは、上側型部上辺側導水溝54の前端部54Feに接続されているため、フレーム320の上辺部322のアウタパネル324のフランジ上辺部326aよりも車室内側に配置されている。また、上側型部縦辺側導水溝59における下側部分59Lは、上端部59Ueから下方へ延びるとともに、アウタパネル324のフランジ上辺部326aよりも車室外側まで延びている。
【0080】
すなわち、上側型部縦辺側導水溝59の上端部59Ueよりも下側の部分は、下側に延びるとともに、車室外側へ向けて屈曲した上側型部縦辺側導水溝下側部分59Lを有している。この上側型部縦辺側導水溝下側部分59Lの形成により、上端部59Ueをアウタパネル324のフランジ上辺部326aよりも車室内側に配置しながら、下側をアウタパネル324のフランジ上辺部326aよりも車室外側に配置することが可能になり、車室外側に導水することができる(
図5・
図6・
図8のW3→W4)。
【0081】
また、
図11(
図8におけるXI-XI線 断面図)に示すように、上側型部5の縦辺側部分5bでは、上側型部縦辺側 取付部56aの前側に上側型部縦辺側 先端取付部56bを設け、上側型部縦辺側 先端取付部56bの車外側面から車外側に延出する上側型部縦辺側 支持壁部57を設け、上側型部縦辺側 支持壁部57の車外側部から車内側に傾斜しながら延出する上側型部縦辺側 外側シールリップ58を設けている。
【0082】
ここで、上側型部5の縦辺側部分5bでは、フランジ前側縦辺部326bは、上側型部縦辺側支持壁部57よりも外側に位置している。また、
図12(
図8におけるXII-XII線断面図)に示すように、前側縦辺シール部2が取付けられる部位では、フランジ前側縦辺部326bは、外側壁部20bより内側に位置している。すなわち、
図5と
図11と
図12に示すように、フランジ前側縦辺部326bが外側かつ後側に位置している区間で自動車ドア用シール材1の導水溝を車内側から車外側に変位させ、その下の区間において、フランジ前側縦辺部326bを車外側から車内側に変位させる構造にする事で、フランジ前側縦辺部326bが導水溝の変位区間を横断・干渉しないようにして、導水がスムーズになるようにしている。
【0083】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態によれば、
図13に示すようにリヤドア300を閉じると、上辺シール部3の上辺外側シールリップ31及び上辺内側シールリップ32がルーフ部120に弾接する。また、
図12に示すように、フロントドア200も閉じると、縦辺上側シールリップ22がフロントドア200の後端部に弾接する。
【0084】
リヤドア300を閉じた状態で雨水等が上辺外側シールリップ31とルーフ部120の外側シール面120bとの間から車室内側に浸入した場合、その雨水等は上辺導水溝34内を前側へ流通することがある。上辺導水溝34内を前側へ流通した雨水等は、上辺導水溝34の前端部34Feから上側型部上辺側導水溝54と上側型部縦辺側導水溝59を通過して、縦辺上側導水溝24の上端部24Ueに流入し、縦辺上側導水溝24内を下方へ流通する。
【0085】
ここで、上側型部縦辺側導水溝59は車室外側へ屈曲した上側型部縦辺側導水溝下側部分59Lを有しているので、上側型部縦辺側導水溝59内の雨水等をアウタパネル324よりも車室外側に導くことができる。
【0086】
さらに、縦辺上側導水溝24は、下側型部導水溝(図示省略)を介して前側縦辺下側シール部6の縦辺下側導水溝64に接続されていることから、下側のリヤドアヒンジ311よりも下まで延びているので、雨水等を下側のリヤドアヒンジ311よりも下まで案内してドア本体部310の下端部近傍から排水することができる。これにより、リヤドア300の上端部とルーフ部120との間に浸入した雨水等がリヤドアラッチ装置213、リヤドアヒンジ311、リヤドアチェッカー315にほとんどかからないようにすることができる。
【0087】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0088】
上述の実施形態では、リヤドアに取り付けた自動車ドア用シール材のみを例示して説明したが、フロントドアにも適用が可能である。更に、自動車のバックドアの右ドアや左ドアにも適用が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0089】
以上説明したように、本発明に係る自動車ドア用シール材は、例えばリヤドアに用いることができる。
【符号の説明】
【0090】
1 自動車ドア用シール材
20 縦辺上側取付部
20a 内側壁部
20b 外側壁部
20c 連結壁部
21 支持壁部
22 縦辺シールリップ
24 縦辺上側導水溝
24Ue 縦辺上側導水溝の上端部
103 リヤドア開口部
120 ルーフ部(車体)
213 ドアラッチ装置(ドア開閉装置)
300 リヤドア
311 リヤドアヒンジ(ドア開閉装置)
315 リヤドアチェッカー(ドア開閉装置)
320 フレーム
321 前側縦辺部
322 上辺部