(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114931
(43)【公開日】2022-08-08
(54)【発明の名称】トノカバー装置
(51)【国際特許分類】
B60R 5/04 20060101AFI20220801BHJP
【FI】
B60R5/04 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021011422
(22)【出願日】2021-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(71)【出願人】
【識別番号】000117135
【氏名又は名称】芦森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147913
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 義敬
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 雅久
(74)【代理人】
【識別番号】100091605
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100197284
【弁理士】
【氏名又は名称】下茂 力
(72)【発明者】
【氏名】梶田 義人
(72)【発明者】
【氏名】阿部 具樹
【テーマコード(参考)】
3D022
【Fターム(参考)】
3D022BA02
3D022BB03
3D022BB04
3D022BC15
(57)【要約】
【課題】従来のトノカバー装置では、カバー体を巻き取り収納する機構やケースを有することで、全体の質量が重くなり、その脱着作業が重労働となる課題があった。
【解決手段】
本発明のトノカバー装置10は、主に、カバー体11と、カバー体11の後方側に配設されるボード部12と、カバー体11の前方側を車幅方向に渡り支持する第1の支持部13と、ボード部12の前端側に配設され、カバー体11を車幅方向に渡り支持する第2の支持部14と、ボード部12の後端部近傍に着脱自在に接続するワイヤ巻き取り機構15と、を備える。この構造により、カバー体を巻き取り収納する機構やケースを省略し、軽量化を実現すると共に、カバー体を張設することで、使用時におけるトノカバー装置10の美観を保つことができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の荷室に着脱自在に配設され、前記荷室を上方側から覆うカバー体を有するトノカバー装置であって、
前記カバー体の前方側を支持すると共に、前記車両に設けられた取付部に対して着脱自在に配設される第1の支持部と、
前記カバー体の後方側を支持すると共に、前記車両に設けられた載置部に対して載置される第2の支持部と、
前記カバー体の後端部近傍を支持するワイヤ巻き取り機構と、を備え、
前記ワイヤ巻き取り機構は、前記カバー体と着脱自在に連結するワイヤと、前記ワイヤを巻き取りあるいは送り出す本体部と、を有し、
前記本体部は、前記載置部よりも前記車両の車高方向の下方の前記車両のバックドアに対して配設されることを特徴とするトノカバー装置。
【請求項2】
前記第2の支持部は、少なくとも前記カバー体の裏面側であり、前記車両の車幅方向に渡り配設される駒部を有し、
前記バックドアの全閉状態時に、前記カバー体が前記ワイヤにて前記車両の後方側へと引っ張られることで、
前記駒部は、前記載置部の上面にて前記車両の後方側へと回動し、前記カバー体を張設することを特徴とする請求項1に記載のトノカバー装置。
【請求項3】
前記駒部は、前記バックドアの全閉状態時に、前記載置部と当接する当接面を有し、
前記当接面は、前記駒部の後端部に向けて斜め上方へと傾斜した傾斜面または曲面であることを特徴とする請求項2に記載のトノカバー装置。
【請求項4】
前記本体部は、前記バックドア内に配設されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のトノカバー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の荷室を覆うトノカバー装置に関し、特に、そのカバー体の巻き取り機構を廃止し軽量化を実現すると共に、使用時のカバー体の弛みを防止しその美観を保つトノカバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のトノカバー装置100として、
図11に示す構造が知られている。
図11は、従来のトノカバー装置100を説明する断面図である。
【0003】
図11に示す如く、トノカバー装置100は、主に、第1のトノカバー101と、第1のトノカバー101を巻き取る第1の巻き取り装置102と、第1のトノカバー101の先端に連結するエンドプレート103と、第2のトノカバー104と、第2のトノカバー104を巻き取る第2の巻き取り装置105と、を備える。
【0004】
第1の巻き取り装置102は、筒状のケース102A内に巻き取り機構(図示せず)を有し、この巻き取り機構により、第1のトノカバー101をケース102Aの内部へと巻き取り、収納することが出来る。一方、使用者は、ケース102Aの外側に位置するエンドプレート103を引っ張ることで、第1のトノカバー101をケース102Aから引き出すことが出来る。
【0005】
第1の巻き取り装置102は、車体側の取付部(図示せず)に対してケース102A両端部の係合部(図示せず)を係合させることで、車体に着脱自在に取り付けることができる。図示したように、第2の巻き取り装置105は、第1の巻き取り装置102の裏面側に設けられ、第1の巻き取り装置102と一体に取り扱われる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、従来のトノカバー装置100では、第1のトノカバー101が収納された第1の巻き取り装置102のケース102Aを車体側の取付部に対して着脱させる構造である。また、第1の巻き取り装置102には、第2の巻き取り装置105も一体に配設される。
【0008】
使用者は、荷室に多くの荷物を積み込む際等、トノカバー装置100を使用しない場合には、車体から第1の巻き取り装置102を取り外し、トノカバー装置100を車体から離脱させることが出来る。その後、トノカバー装置100を使用する際には、再び、第1の巻き取り装置102を車体の取付部に装着することで、トノカバー装置100を車体に装着することができる。
【0009】
しかしながら、トノカバー装置100は、上記第1の巻き取り装置102等から構成され、その質量も重く、トノカバー装置100の車体への着脱作業が重労働となる課題がある。また、車体から取り外したトノカバー装置100を収納するスペースの確保も課題となる。
【0010】
また、第1のトノカバー101をケース102Aから引き出した状態を維持した場合には、第1のトノカバー101の自重が作用するため第1のトノカバー101を伸長した状態に支持することが出来ず、第1のトノカバー101が弛み、また、第1のトノカバー101が荷物等の上面に重なることで、その表面が捻じれた状態等となり、美観を損ねるという課題がある。
【0011】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、そのカバー体の巻き取り機構を廃止し軽量化を実現すると共に、使用時のカバー体の弛みを防止しその美観を保つトノカバー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1に記載のトノカバー装置では、車両の荷室に着脱自在に配設され、前記荷室を上方側から覆うカバー体を有するトノカバー装置であって、前記カバー体の前方側を支持すると共に、前記車両に設けられた取付部に対して着脱自在に配設される第1の支持部と、前記カバー体の後方側を支持すると共に、前記車両に設けられた載置部に対して載置される第2の支持部と、前記カバー体の後端部近傍を支持するワイヤ巻き取り機構と、を備え、前記ワイヤ巻き取り機構は、前記カバー体と着脱自在に連結するワイヤと、前記ワイヤを巻き取りあるいは送り出す本体部と、を有し、前記本体部は、前記載置部よりも前記車両の車高方向の下方の前記車両のバックドアに対して配設されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項2に記載のトノカバー装置では、前記第2の支持部は、少なくとも前記カバー体の裏面側であり、前記車両の車幅方向に渡り配設される駒部を有し、前記バックドアの全閉状態時に、前記カバー体が前記ワイヤにて前記車両の後方側へと引っ張られることで、前記駒部は、前記載置部の上面にて前記車両の後方側へと回動し、前記カバー体を張設することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項3に記載のトノカバー装置では、前記駒部は、前記バックドアの全閉状態時に、前記載置部と当接する当接面を有し、前記当接面は、前記駒部の後端部に向けて斜め上方へと傾斜した傾斜面または曲面であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項4に記載のトノカバー装置では、前記本体部は、前記バックドア内に配設されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1に記載のトノカバー装置では、荷室内に展開したカバー体は、載置部上に載置された第2の支持部により車両の車幅方向に渡り支持される。そして、カバー体の後端側が、ワイヤ巻き取り機構により載置部よりも下方側へと引っ張られることで、カバー体が第2の支持部を支点として張設されることで、使用時における美観を保つことができる。
【0017】
また、本発明の請求項2に記載のトノカバー装置では、カバー体の後端側が、ワイヤ巻き取り機構により載置部よりも下方側へと引っ張られることで、駒部が車両の後方側へと回動し、駒部より前方のカバー体を車両の後方側へと引っ張ることで、カバー体を張設することができる。
【0018】
また、本発明の請求項3に記載のトノカバー装置では、駒部の当接面が傾斜面または曲面となることで、車両の後方側へと回動し易く、また、安定した状態にて載置部上面に載置される。
【0019】
また、本発明の請求項4に記載のトノカバー装置では、ワイヤ巻き取り機構の本体部が、バックドアの内部に収納されることで、デザイン性が向上されると共に、荷室の収納スペースを有効活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態であるトノカバー装置を説明する斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態であるトノカバー装置を説明する断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態であるトノカバー装置が配設される車両を説明する斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態であるトノカバー装置が配設される車両を説明する斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態であるトノカバー装置を説明する上面図である。
【
図6】本発明の一実施形態であるトノカバー装置を説明する斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態であるトノカバー装置の使用状態を説明する断面図である。
【
図8】本発明の一実施形態であるトノカバー装置の使用状態を説明する断面図である。
【
図9】本発明の一実施形態であるトノカバー装置の使用状態を説明する断面図である。
【
図10】本発明の一実施形態であるトノカバー装置の使用状態を説明する断面図である。
【
図11】従来のトノカバー装置を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
最初に、本発明の一実施形態に係るトノカバー装置10について図面に基づき詳細に説明する。尚、本実施形態の説明の際には、同一の部材には原則として同一の符番を用い、繰り返しの説明は省略する。また、以下の説明では、上下方向は車両21の高さ方向を示し、左右方向は車両21の車幅方向を示し、前後方向は車両21の全長方向を示す。
【0022】
図1は、本実施形態のトノカバー装置10を説明する斜視図である。
図2は、本実施形態のトノカバー装置10の第2の支持部14を説明する断面図である。
図3は、本実施形態のトノカバー装置10が配設される車両21の荷室23を説明する斜視図である。
図4は、本実施形態のトノカバー装置10が車両21に配設された状態を説明する斜視図である。
図5は、本実施形態のトノカバー装置10が車両21に配設された状態を説明する上面図である。
図6は、本実施形態のトノカバー装置10のワイヤ巻き取り機構15を説明する斜視図である。
【0023】
図1に示す如く、トノカバー装置10は、主に、荷室23(
図3参照)の上方側に配設されるカバー体11と、カバー体11の一部を構成し、カバー体11の後方側に配設されるボード部12と、カバー体11の前方側を車幅方向(紙面左右方向)に渡り支持する第1の支持部13と、ボード部12の前端側に配設され、カバー体11及びボード部12を車幅方向に渡り支持する第2の支持部14と、ボード部12の後端部近傍に着脱自在に接続するワイヤ巻き取り機構15と、を備える。
【0024】
カバー体11は、例えば、布材や合成樹脂材をシート状に加工した柔軟な部材であり、荷室23の略全面を覆う大きさを有する。カバー体11の前端は、第3の支持部16に対して固定されると共に、カバー体11の後方側は、袋部11A(
図2参照)として形成され、その袋部11A内にはボード部12の芯材12A(
図2参照)が収納される。
【0025】
尚、第3の支持部16は、例えば、アルミニウム材から成る棒部材であり、第3の支持部16の両端部が、荷室23のトリム29(
図3参照)に設けられた取付部30(
図3参照)に着脱自在に係合される。そして、第3の支持部16は、荷室23のトリム29間を車幅方向に架橋して配設される。
【0026】
ボード部12は、発泡性樹脂材やボール紙材等から形成される芯材12A(
図2参照)を有し、上述したように、芯材12Aがカバー体11の袋部11A内に収納されることで、カバー体11の一部として形成される。そして、ボード部12は、ワイヤ巻き取り機構15により車両21の後方側へと繰り返し引っ張られるが、その内部に芯材12Aを有することで、所望の耐久性を有する。
【0027】
第1の支持部13は、例えば、アルミニウム材から成る一対の棒部材13Aと、その両端部を固定する樹脂製の受け部13Bと、を有し、棒部材13Aは、車高方向(紙面上下方向)に重ねて配設される。そして、棒部材13Aは、車両21の車幅方向に延在し、カバー体11が一対の棒部材13A間に挿入されることで、カバー体11を車幅方向に渡り支持する。尚、第1の支持部13の受け部13Bが、荷室23のトリム29に設けられた取付部31に着脱自在に係合される。
【0028】
第2の支持部14は、
図2に示す如く、芯材12Aの前端部に取り付けられる板金14Aと、板金14Aを車高方向から挟持する樹脂製の駒部14Bと、を有する。板金14Aは、その断面視が略六角形状であり、車幅方向に延在した部材であり、芯材12Aの前端側から挿入して取り付けられ、芯材12A及び第2の支持部14の剛性を高める。駒部14Bは、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性樹脂を射出成形して形成され、上下一対の部材からなり、車幅方向に延在した部材となる。そして、板金14A及び駒部14Bは、荷室23のトリム29間を車幅方向に架橋して配設される。
【0029】
上述したように、カバー体11の後方側には袋部11Aが形成され、芯材12A及び板金14Aが、袋部11A内に収納される。駒部14Bは、板金14Aと重畳するように、袋部11Aの表裏面側にそれぞれ固定される。図示したように、駒部14Bの前端側では、その先端部が開口し、カバー体11及びその縫合部11Bが、駒部14Bに対して自由に移動可能な状態となる。そして、駒部14Bの平坦面14Cは、それぞれ板金14Aの平坦面14Dとの間に袋部11Aを挟持するように、袋部11Aに対して固定される。一方、駒部14Bの後端側は、芯材12A及び袋部11Aを挟持するように、袋部11Aに対して固定される。
【0030】
詳細は後述するが、ボード部12の裏面側(車高方向の下側)の駒部14Bには、平坦面14Cの後方側に当接面14Eが形成される。平坦面14Cは、主に、ボード部12がワイヤ15Bに引っ張られない状態時に、駒部14Bが載置部32上に立設するための面であり、当接面14Eは、主に、ボード部12がワイヤ15Bに後方側の斜め下方へと引っ張られた状態時に、駒部14Bが載置部32上に立設するための面である。そのため、当接面14Eは、平坦面14Cに対して車両21の全長方向(紙面前後方向)の後方側へと向けて斜め上方へと傾斜した面となる。
【0031】
尚、駒部14Bとしては、必ずしも上下一対の部材から構成される場合に限定するものではなく、少なくともボード部12の裏面側(車高方向の下側)に、当接面14Eを有する部材が配設される場合でも良い。
【0032】
ワイヤ巻き取り機構15は、公知の巻き取り構造によりワイヤ15Bを送り出し、あるいは巻き取る本体部15Aと、その一端側が本体部15Aに固定されるワイヤ15Bと、ワイヤ15Bの他端側に固定されるフック部15Cと、を有する。
【0033】
本体部15Aは、バックドア26(
図3参照)の内部に配設され、ワイヤ15Bは、バックドア26に設けられた挿通孔(図示せず)を介して荷室23へと導出する。そして、ボード部12の後端部には、係止部42(
図5参照)が設けられ、フック部15Cは、その係止部42に対して着脱自在に係止される。尚、本体部15Aは、バックドア26内部に配設される場合に限定するものではなく、例えば、本体部15Aは、バックドア26のトリム26A(
図4参照)表面に配設される場合でも良い。
【0034】
図3に示す如く、車両21は、ステーションワゴン等のように、後部座席22の後方に荷室23を有し、車両21のリヤバンパ24の上方には、その開口部25を開閉自在に塞ぐバックドア26が配設される。バックドア26は、開口部25の上端側の両縁部にて車両ボディ27に対して一対のステー28を介して連結し、ステー28は、電動開閉制御装置(図示せず)を介してバックドア26を自動開閉させる。
【0035】
また、
図3は、開口部25に対してバックドア26が全開した状態を示し、車両21の荷室23が見えた状態である。荷室23の車幅方向の両側にはトリム29が組み付けられ、トリム29には、その前方側から、第3の支持部16と着脱自在に係合する取付部30、第1の支持部13と着脱自在に係合する取付部31及び第2の支持部14を載置する載置部32が形成される。そして、取付部30,31及び載置部32は、それぞれトリム29の略同じ位置に一対形成されることで、第1の支持部13、第2の支持部14及び第3の支持部16は、フロアマット33に対して略平行となるようにトリム29に支持される。
【0036】
具体的には、取付部30は、その上方及び荷室23側の側方が開口した凹部形状であり、トリム29の一部として形成され、第3の支持部16の両端部の樹脂製の受け部16A(
図4参照)が収納される。取付部30の底面には、受け部16Aに対して着脱自在に係合する公知の弾性係合機構(図示せず)を有する場合でも良い。同様に、取付部31は、その上方及び荷室23側の側方が開口した凹部形状であり、トリム29の一部として形成され、第1の支持部13の両端部の受け部13B(
図4参照)が収納される。取付部31の底面には、受け部13Bに対して着脱自在に係合する公知の弾性係合機構(図示せず)を有する場合でも良い。
【0037】
また、載置部32は、第2の支持部14が載置されるための台座であり、例えば、トリム29の一部が、荷室23側へと突出した板形状である。そして、載置部32の上面は、フロアマット33に対して略平行となる。詳細は後述するが、少なくともバックドア26が全閉した状態では、駒部14Bの当接面14Eが載置部32の上面と当接し、駒部14Bが後方側へと傾斜した状態にて載置部32上に載置されることで、第2の支持部14が、トリム29間を架橋すると共に、ボード部12を含むカバー体11を支持する。
【0038】
図4では、バックドア26の全閉状態時に、トノカバー装置10が、車両21の荷室23に配設された状態を示す。トノカバー装置10のボード部12を含むカバー体11は、例えば、後部座席22のバックシートの上端部と略同一の高さ位置に配設される。そして、トノカバー装置10は、カバー体11の巻き取り式収納ケースを有することなく、カバー体11は、常時、荷室23の上方側に展開した状態となる。尚、
図4では、バックドア26のトリム26Aを図示している。
【0039】
上述したように、カバー体11の前端は、第3の支持部16により車幅方向に渡り支持され、カバー体11の前方側は、第1の支持部13により車幅方向に渡り支持され、カバー体11の後方側は、第2の支持部14により車幅方向に渡り支持される。
【0040】
更には、
図5に示す如く、ボード部12の後端部には、2箇所の係止部42が形成され、係止部42は、一点鎖線41にて示す車幅方向の中心から略等距離の箇所に配設される。また、
図6に示す如く、係止部42は、ボード部12の芯材12Aに固定される枠体部42Aと、枠体部42A間を架橋する棒状部42Bと、を有する。そして、ワイヤ巻き取り機構15のフック部15Cが、棒状部42Bに引っ掛けられることで、ワイヤ15Bの他端側がボード部12へと着脱自在に固定される。尚、係止部42では、枠体部42Aが、芯材12Aに対して固定されることで、ワイヤ巻き取り機構15に繰り返し引っ張られる動作に対して、所望の耐久性を有する。
【0041】
詳細は後述するが、バックドア26の全閉状態時に、カバー体11は、ワイヤ巻き取り機構15により車両21の後方側へと引っ張られ、駒部14Bが傾斜した状態となることで、駒部14B前方のカバー体11が張設される。そして、ワイヤ巻き取り機構15が、ボード部12を車幅方向において左右均等に後方へと引っ張ることで、カバー体11が、寄れたり、捻じれたりすることが防止される。尚、係止部42は、ボード部12を略均等に車両21の後方側へ引っ張る位置にあれば良く、ボード部12の中央(一点鎖線41の箇所)に1箇所配設される場合でも良く、あるいは、ボード部12の後端部に3箇所以上均等に配設される場合でも良い。
【0042】
この構造により、トノカバー装置10では、荷室23の略全面をボード部12を含むカバー体11により覆い隠すことで、荷室23内に積み込まれた荷物等が車外から認識され難くなる。更には、トノカバー装置10では、カバー体11を巻き取る巻き取り装置及び収納ケースを省略した構造となることで、トノカバー装置10の質量が軽くなり、車両21への脱着作業の負担が軽減される。
【0043】
次に、
図7及び
図8は、本実施形態のトノカバー装置10のバックドア26の全閉状態時における使用状況を説明する断面図である。
図9は、本実施形態のトノカバー装置10のバックドア26の全開状態時の使用状況を説明する断面図である。
図10は、本実施形態のトノカバー装置10のバックドア26の全閉状態時における荷室23に大きい荷物54を収納した状況を説明する断面図である。
【0044】
図7に示す如く、ワイヤ巻き取り機構15の本体部15Aは、車高方向において載置部32よりも下方側であり、バックドア26のトリム26Aの内部へと配設される。ワイヤ15Bは、トリム26Aに設けられた挿通孔(図示せず)を介して荷室23内へと導出する。そして、トノカバー装置10では、ボード部12が、ワイヤ15Bにより車両21の後方側へと引っ張られることで、特に、駒部14B前方のカバー体11を張設することができる。そのため、ワイヤ巻き取り機構15では、トリム26Aからのワイヤ15Bの導出量L1が、バックドア26の全閉状態時に最小の長さとなるように設定される。尚、ワイヤ15Bの導出量L1は、ボード部12の上記引っ張られた状態時に、駒部14Bが載置部32上面から転げ落ちない長さを有するように設定される。
【0045】
図8では、
図7の丸印51にて示す領域を拡大して示す。
図2を用いて上述したように、駒部14Bの当接面14Eは、平坦面14Cに対して車両21の後端部へと向けて斜め上方へと傾斜した傾斜面である。そして、バックドア26の全閉状態時には、ボード部12が、ワイヤ15Bにより車両21の後方側の斜め下方へと引っ張られることで、駒部14Bが、載置部32の上面にて後方側へと回動し、駒部14Bの当接面14Eの少なくとも一部が載置部32と当接し、平坦面14Cが載置部32から離間する。
【0046】
図示したように、駒部14Bは、丸印52にて示す角部にて載置部32の端部に引っ掛かり、当接面14Eにて立設することで、第2の支持部14は、カバー体11を車幅方向に渡り支持する。
【0047】
具体的には、ワイヤ巻き取り機構15では、バックドア26の開閉動作に連動してワイヤ15Bの導出量を変化させる。そして、バックドア26の全開状態から全閉状態へと移行する際に、先ず、駒部14Bは、
図9に示す載置部32から離間した状態から
図2に示す載置部32上面にその平坦面14Cにて立設した状態へと移行する。その後、ボード部12が斜め下方へと引っ張られることで、駒部14Bは、
図8に示すように、車両21の後方側へと回動し、当接面14Eにて立設した状態へと移行する。
【0048】
そして、駒部14Bが当接面14Eにて立設した状態では、駒部14Bの前方側が載置部32から上方側へと移動することで、特に、駒部14Bの前方側のカバー体11が、矢印53にて示すように、車両21の後方側へと引っ張られ、張設される。上述したように、駒部14Bはカバー体11の車幅方向に渡り配設されると共に、ワイヤ15Bにより略左右均一に引っ張られることで、カバー体11が、弛んだり、捻じれたり、あるいは寄れたりすることが防止される。その結果、少なくともバックドア26の全閉状態では、トノカバー装置10の使用時における美観を保つことができる。尚、カバー体11のボード部12では、その内部に芯材12Aを有することで、弛んだり、捻じれたり、あるいは寄れたりすることが防止される。
【0049】
図9に示す如く、バックドア26の全開状態時に、ワイヤ15Bの導出量L2は最長の長さとなる。つまり、ワイヤ15Bは、バックドア26が全閉状態から全開状態へと向けて本体部15Aの巻き取り機構(図示せず)から送り出される。そして、ボード部12を含むカバー体11は、バックドア26の開く動作に連動してワイヤ15Bに引っ張られ荷室23の上方側へと移動する。尚、ワイヤ15Bの導出量L2は、上記全開状態時に、カバー体11のボード部12が開口部25(
図3参照)の車両ボディ27(
図3参照)に当たらない長さを有するように設定される。
【0050】
上述したように、トノカバー装置10を荷室23から取り外さない限りにおいては、カバー体11は、常時、荷室23内に展開された状態である。そして、カバー体11が常時展開された状況下において、バックドア26を全開状態とすると、特に、開口部25側のカバー体11のボード部12が、バックドア26の動作に連動して荷室23の上方側へと移動する。その結果、荷室23へと荷物を積み込み、あるいは、荷物を降ろす作業の際に、ボード部12を含むカバー体11が邪魔となることが防止される。
【0051】
図10に示す如く、バックドア26の全閉状態時に、荷室23に大きな荷物54を積み込んだ場合には、ワイヤ15Bの導出量L3は、
図7に示すワイヤ15Bの導出量L1よりも長くなる。上述したように、ワイヤ巻き取り機構15では、バックドア26の開閉状態に応じて、ワイヤ15Bを送り出し、あるいは、ワイヤ15Bを巻き取る構造であるが、逆に、ボード部12に引っ張られることでも、ワイヤ15Bを導出することができる。
【0052】
この構造により、荷室23への荷物の収納性を優先させる場合には、後部座席22のシートバックよりも背の高い荷物54を積み込むこともできる。この場合には、カバー体11の一部が、荷物54の形状に合わせて荷室23の上方へと移動することで、ワイヤ15Bがボード部12に引っ張られ、本体部15Aから引き出される。
【0053】
このとき、第2の支持部14の駒部14Bは載置部32上面から離間し、カバー体11を伸長させることが出来なくなり、カバー体11が、荷物54の形状に応じて捻じれたり、寄れたりし、トノカバー装置10の使用時における美観は損なわれるが、カバー体11の設置高さに限定されることなく、所望の荷物54を荷室23に積み込み、搬送することもできる。
【0054】
尚、本実施形態では、第2の支持部14の駒部14Bの当接面14Eが、平坦な傾斜面として形成される場合について説明したが、この場合に限定するものではない。例えば、駒部14Bの当接面14Eが、平坦面14Cに対して車両21の後端部へと向けて斜め上方へと傾斜した曲面として形成される場合でも良い。この場合でも、バックドア26の全閉状態時には、駒部14B後方側へと回動し、当接面14Eの一部が載置部32の上面と当接することで、駒部14Bの前方側が載置部32の上面から上方へと浮いた状態となり、駒部14Bの前方のカバー体11を伸長させ、トノカバー装置10の使用時の美観を保つことができる。
【0055】
また、ワイヤ巻き取り機構15のフック部15Cが、ボード部12後端部の係止部42に対して引っ掛けられる場合について説明したが、この場合に限定するものではない。例えば、車両21をキャンプ場に停車させ、バックドア26の全開状態時に、ワイヤ15Bを導出させ、設営したテントに対してフック部15Cを引っ掛け、ワイヤ15Bをタオル等の物掛けとして利用する場合でも良い。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲にて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0056】
10 トノカバー装置
11 カバー体
12 ボード部
12A 芯材
13 第1の支持部
14 第2の支持部
14B 駒部
14E 当接面
15 ワイヤ巻き取り機構
15B ワイヤ
16 第3の支持部
21 車両
23 荷室
26 バックドア
29 トリム
30,31 取付部
32 載置部
42 係止部