(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114959
(43)【公開日】2022-08-08
(54)【発明の名称】間仕切壁の遮音構造及び間仕切壁の施工方法
(51)【国際特許分類】
E04B 2/74 20060101AFI20220801BHJP
E04B 1/82 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
E04B2/74 551A
E04B1/82 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021011466
(22)【出願日】2021-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100187908
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 康平
(72)【発明者】
【氏名】奥村 美紀
(72)【発明者】
【氏名】永松 英夫
(72)【発明者】
【氏名】山田 のぞみ
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DF02
2E001FA07
2E001GA12
2E001GA42
2E001HA03
2E001HA33
(57)【要約】 (修正有)
【課題】遮音性能を維持しつつコスト削減を図ることが可能な間仕切壁の遮音構造及び間仕切壁の施工方法を提供する。
【解決手段】間仕切壁の遮音構造は、第1面材31と、第1面材との間に中空部S3を挟んで配置された第2面材32と、中空部において水平方向に並んで配置された複数の間柱34と、第1面材と異なるコインシデンス周波数を有し、第1面材よりも幅が小さく且つ間柱よりも幅が大きく、第1面材と間柱とにより挟まれた第1遮音面材42と、第2面材と異なるコインシデンス周波数を有し、第2面材よりも幅が小さく且つ間柱よりも幅が大きく、第2面材と間柱とにより挟まれた第2遮音面材43と、を備える。第1面材と共に第1遮音面材を挟む間柱は、第2面材との間に隙間を空けて配置されている。第2面材と共に第2遮音面材を挟む間柱は、第1面材との間に隙間G1を空けて配置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面材と、
前記第1面材との間に中空部を挟んで配置された第2面材と、
前記中空部において水平方向に並んで配置された複数の間柱と、
前記第1面材と異なるコインシデンス周波数を有し、前記第1面材よりも幅が小さく且つ前記間柱よりも幅が大きく、前記第1面材と前記間柱とにより挟まれた第1遮音面材と、
前記第2面材と異なるコインシデンス周波数を有し、前記第2面材よりも幅が小さく且つ前記間柱よりも幅が大きく、前記第2面材と前記間柱とにより挟まれた第2遮音面材と、を備え、
前記第1面材と共に前記第1遮音面材を挟む前記間柱は、前記第2面材との間に隙間を空けて配置されており、
前記第2面材と共に前記第2遮音面材を挟む前記間柱は、前記第1面材との間に隙間を空けて配置されている、間仕切壁の遮音構造。
【請求項2】
前記第1遮音面材の幅は、前記第1面材の幅の60%以上である、請求項1に記載の間仕切壁の遮音構造。
【請求項3】
前記第2遮音面材の幅は、前記第2面材の幅の60%以上である、請求項1又は2に記載の間仕切壁の遮音構造。
【請求項4】
床材と、
前記床材と鉛直方向に対向する天井材と、
前記床材のうち前記第1面材と前記第2面材との間の部位に貼り付けられると共に前記床材と異なるコインシデンス周波数を有する床側遮音面材、及び、前記天井材のうち前記第1面材と前記第2面材との間の部位に貼り付けられると共に前記天井材と異なるコインシデンス周波数を有する天井側遮音面材のうち少なくともいずれか一方の面材と、をさらに備えた、請求項1~3のいずれか1項に記載の間仕切壁の遮音構造。
【請求項5】
前記間柱を位置決めする位置決め部材をさらに備え、
前記第1面材及び前記第2面材は、上端面が前記天井材に当接すると共に下端面と前記床材との間に隙間が空くように配置されており、
前記床側遮音面材及び前記天井側遮音面材のうち少なくとも前記床側遮音面材を備え、
前記床側遮音面材は、前記隙間よりも厚く且つ前記中空部側から前記隙間を塞ぐように前記床材上に配置され、前記位置決め部材よりも面密度が大きい部分を含む、請求項4に記載の間仕切壁の遮音構造。
【請求項6】
前記間柱を位置決めする位置決め部材をさらに備え、
前記第1面材及び前記第2面材は、下端面が前記床材に当接すると共に上端面と前記天井材との間に隙間が空くように配置されており、
前記床側遮音面材及び前記天井側遮音面材のうち少なくとも前記天井側遮音面材を備え、
前記天井側遮音面材は、前記隙間よりも厚く且つ前記中空部側から前記隙間を塞ぐように前記天井材に配置され、前記位置決め部材よりも面密度が大きい部分を含む、請求項4に記載の間仕切壁の遮音構造。
【請求項7】
床材と、
前記床材と鉛直方向に対向する天井材と、をさらに備え、
前記第1面材及び前記第2面材は、建物内の空間を水平方向に隣接する第1空間と第2空間とに仕切る間仕切壁を構成しており、
前記第1面材は、前記第1空間側を向く第1外面を有しており、
前記第2面材は、前記第2空間側を向く第2外面を有しており、
前記天井材と異なるコインシデンス周波数を有すると共に、前記天井材のうち少なくとも前記第1外面に対応する位置と前記第1空間の前記水平方向の中心に対応する位置との間の部位に貼り付けられた第1天井側遮音面材、及び、前記天井材と異なるコインシデンス周波数を有すると共に、前記天井材のうち少なくとも前記第2外面に対応する位置と前記第2空間の前記水平方向の中心に対応する位置との間の部位に貼り付けられた第2天井側遮音面材のうち少なくともいずれか一方の面材と、をさらに備えた、請求項1~3のいずれか1項に記載の間仕切壁の遮音構造。
【請求項8】
床材と、
前記床材と鉛直方向に対向する天井材と、をさらに備え、
前記第1面材及び前記第2面材は、建物内の空間を水平方向に隣接する第1空間と第2空間とに仕切る間仕切壁を構成しており、
前記第1面材は、前記第1空間側を向く第1外面を有しており、
前記第2面材は、前記第2空間側を向く第2外面を有しており、
前記間仕切壁に交差する方向に延びる壁と、
前記壁と異なるコインシデンス周波数を有すると共に、前記壁のうち少なくとも前記第1外面に対応する位置と前記第1空間の前記水平方向の中心に対応する位置との間の部位に貼り付けられた第1壁遮音面材、及び、前記壁と異なるコインシデンス周波数を有すると共に、前記壁のうち少なくとも前記第2外面に対応する位置と前記第2空間の前記水平方向の中心に対応する位置との間の部位に貼り付けられた第2壁遮音面材のうち少なくともいずれか一方の面材と、をさらに備えた、請求項1~3のいずれか1項に記載の間仕切壁の遮音構造。
【請求項9】
複数の間柱を水平方向に並べて配置する工程と、
前記間柱よりも幅が大きい第1遮音面材を、前記間柱の一方の外面に取り付ける工程と、
前記間柱よりも幅が大きい第2遮音面材を、前記間柱の他方の外面に取り付ける工程と、
前記第2遮音面材が取り付けられた前記間柱との間に隙間が空くように、第1面材を前記第1遮音面材の外側から固定する工程と、
前記第1遮音面材が取り付けられた前記間柱との間に隙間が空くように、第2面材を前記第2遮音面材の外側から固定する工程と、を含み、
前記第1遮音面材は、前記第1面材と異なるコインシデンス周波数を有し、前記第1面材よりも幅が小さい面材であり、
前記第2遮音面材は、前記第2面材と異なるコインシデンス周波数を有し、前記第2面材よりも幅が小さい面材である、間仕切壁の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間仕切壁の遮音構造及び間仕切壁の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているように、建物内において間仕切壁により互いに仕切られた2つの空間のうち、一方の空間から他方の空間への音漏れを防ぐ遮音対策について種々の検討がなされている。特許文献1には、中空間柱が壁の横断面において千鳥状に配置され、各中空間柱に異種の耐火ボードが重ねて取付けられた遮音間仕切壁が記載されている。この間仕切壁によれば、異種の耐火ボードを重ねて用いることにより、共鳴透過を抑止し、遮音値の低下を防ぐことができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、同じ幅を有する2枚の耐火ボードが重ね合わされるため、ボード材の使用量が多くなる。このため、遮音性能はある程度向上するものの、遮音性能とコスト削減を両立させることは困難である。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、遮音性能を維持しつつコスト削減を図ることが可能な間仕切壁の遮音構造及び間仕切壁の施工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面に係る間仕切壁の遮音構造は、第1面材と、前記第1面材との間に中空部を挟んで配置された第2面材と、前記中空部において水平方向に並んで配置された複数の間柱と、前記第1面材と異なるコインシデンス周波数を有し、前記第1面材よりも幅が小さく且つ前記間柱よりも幅が大きく、前記第1面材と前記間柱とにより挟まれた第1遮音面材と、前記第2面材と異なるコインシデンス周波数を有し、前記第2面材よりも幅が小さく且つ前記間柱よりも幅が大きく、前記第2面材と前記間柱とにより挟まれた第2遮音面材と、を備える。前記第1面材と共に前記第1遮音面材を挟む前記間柱は、前記第2面材との間に隙間を空けて配置されている。前記第2面材と共に前記第2遮音面材を挟む前記間柱は、前記第1面材との間に隙間を空けて配置されている。
【0007】
上記間仕切壁の遮音構造では、第1遮音面材の幅が第1面材の幅よりも小さく、且つ第2遮音面材の幅が第2面材の幅よりも小さい。このため、同じ幅の面材を重ね合わせる場合に比べて、面材の使用量を削減し、コスト削減を図ることができる。また上記間仕切壁の遮音構造では、第1遮音面材及び第2遮音面材の各幅が間柱の幅よりも大きいため、コスト削減のために面材の使用量を削減しても遮音性能を維持することができる。
【0008】
しかも、第1面材と共に第1遮音面材を挟む間柱が第2面材との間に隙間を空けており、且つ第2面材と共に第2遮音面材を挟む間柱が第1面材との間に隙間を空けている。このため、第1面材と第2面材との間を縁切りすることが可能になり、間柱を水平方向に並べて配置したとしても、特許文献1のように千鳥配置した場合と同様の遮音効果を得ることができる。
【0009】
上記間仕切壁の遮音構造において、前記第1遮音面材の幅は、前記第1面材の幅の60%以上であってもよい。前記第2遮音面材の幅は、前記第2面材の幅の60%以上であってもよい。
【0010】
本発明者等が鋭意検討を行った結果、第1及び第2遮音面材の幅が第1及び第2面材の幅の60%以上であることにより、遮音性能の低下を抑制可能であることが明らかとなった。このため、上記構成によれば、遮音性能の低下を抑制しつつ第1及び第2遮音面材の使用量を削減してコスト削減を図ることができる。
【0011】
上記間仕切壁の遮音構造は、床材と、前記床材と鉛直方向に対向する天井材と、前記床材のうち前記第1面材と前記第2面材との間の部位に貼り付けられると共に前記床材と異なるコインシデンス周波数を有する床側遮音面材、及び、前記天井材のうち前記第1面材と前記第2面材との間の部位に貼り付けられると共に前記天井材と異なるコインシデンス周波数を有する天井側遮音面材のうち少なくともいずれか一方の面材と、をさらに備えていてもよい。
【0012】
この構成によれば、床材と異なるコインシデンス周波数を有する床側遮音面材及び天井材と異なるコインシデンス周波数を有する天井側遮音面材のうち少なくともいずれか一方の面材が、床材や天井材のうち第1面材と第2面材との間の部位に貼り付けられている。このため、第1面材及び第2面材により仕切られた両空間のうち一方の空間で発生した音が、コインシデンス効果により床材や天井材を介して他方の空間へ伝搬しようとする場合に、床材や天井材のうち第1面材と第2面材との間の遮音面材によりコインシデンス効果を抑えることができる。これにより、床材や天井材を介した隣接空間への音漏れが抑制され、遮音性能を改善することが可能になる。
【0013】
上記間仕切壁の遮音構造は、前記間柱を位置決めする位置決め部材をさらに備えていてもよい。前記第1面材及び前記第2面材は、上端面が前記天井材に当接すると共に下端面と前記床材との間に隙間が空くように配置されていてもよい。上記間仕切壁の遮音構造は、前記床側遮音面材及び前記天井側遮音面材のうち少なくとも前記床側遮音面材を備えていてもよい。前記床側遮音面材は、前記隙間よりも厚く且つ前記中空部側から前記隙間を塞ぐように前記床材上に配置され、前記位置決め部材よりも面密度が大きい部分を含んでいてもよい。
【0014】
この構成によれば、第1面材及び第2面材と床材との間の隙間を床側遮音面材によって面材間の中空部側から塞ぐことにより、当該隙間を通じた隣室への音漏れを抑制することができる。しかも、床側遮音面材が位置決め部材よりも面密度が大きい部分を含むため、位置決め部材を床材上に直接配置して当該隙間を塞ぐ場合に比べて、遮音性能を一層改善することが可能になる。
【0015】
上記間仕切壁の遮音構造は、前記間柱を位置決めする位置決め部材をさらに備えていてもよい。前記第1面材及び前記第2面材は、下端面が前記床材に当接すると共に上端面と前記天井材との間に隙間が空くように配置されていてもよい。上記間仕切壁の遮音構造は、前記床側遮音面材及び前記天井側遮音面材のうち少なくとも前記天井側遮音面材を備えていてもよい。前記天井側遮音面材は、前記隙間よりも厚く且つ前記中空部側から前記隙間を塞ぐように前記天井材に配置され、前記位置決め部材よりも面密度が大きい部分を含んでいてもよい。
【0016】
この構成によれば、第1面材及び第2面材と天井材との間の隙間を天井側遮音面材によって面材の中空部側から塞ぐことにより、当該隙間を通じた隣室への音漏れを抑制することができる。しかも、天井側遮音面材が位置決め部材よりも面密度が大きい部分を含むため、位置決め部材を天井材に直接配置して当該隙間を塞ぐ場合に比べて、遮音性能を一層改善することが可能になる。
【0017】
上記間仕切壁の遮音構造は、床材と、前記床材と鉛直方向に対向する天井材と、をさらに備えていてもよい。前記第1面材及び前記第2面材は、建物内の空間を水平方向に隣接する第1空間と第2空間とに仕切る間仕切壁を構成していてもよい。前記第1面材は、前記第1空間側を向く第1外面を有していてもよい。前記第2面材は、前記第2空間側を向く第2外面を有していてもよい。上記間仕切壁の遮音構造は、前記天井材と異なるコインシデンス周波数を有すると共に、前記天井材のうち少なくとも前記第1外面に対応する位置と前記第1空間の前記水平方向の中心に対応する位置との間の部位に貼り付けられた第1天井側遮音面材、及び、前記天井材と異なるコインシデンス周波数を有すると共に、前記天井材のうち少なくとも前記第2外面に対応する位置と前記第2空間の前記水平方向の中心に対応する位置との間の部位に貼り付けられた第2天井側遮音面材のうち少なくともいずれか一方の面材と、をさらに備えていてもよい。
【0018】
この構成によれば、間仕切壁により仕切られた第1空間及び第2空間のうち一方の空間で発生した音が、コインシデンス効果により天井材を介して他方の空間へ伝搬しようとする場合に、天井材のコインシデンス効果を抑えることができる。したがって、天井材を介した隣接空間への音漏れが抑制され、遮音性能を改善することができる。
【0019】
上記間仕切壁の遮音構造は、床材と、前記床材と鉛直方向に対向する天井材と、をさらに備えていてもよい。前記第1面材及び前記第2面材は、建物内の空間を水平方向に隣接する第1空間と第2空間とに仕切る間仕切壁を構成していてもよい。前記第1面材は、前記第1空間側を向く第1外面を有していてもよい。前記第2面材は、前記第2空間側を向く第2外面を有していてもよい。上記間仕切壁の遮音構造は、前記間仕切壁に交差する方向に延びる壁と、前記壁と異なるコインシデンス周波数を有すると共に、前記壁のうち少なくとも前記第1外面に対応する位置と前記第1空間の前記水平方向の中心に対応する位置との間の部位に貼り付けられた第1壁遮音面材、及び、前記壁と異なるコインシデンス周波数を有すると共に、前記壁のうち少なくとも前記第2外面に対応する位置と前記第2空間の前記水平方向の中心に対応する位置との間の部位に貼り付けられた第2壁遮音面材のうち少なくともいずれか一方の面材と、をさらに備えていてもよい。
【0020】
この構成によれば、間仕切壁により仕切られた第1空間及び第2空間のうち一方の空間で発生した音が、コインシデンス効果により壁(間仕切壁に交差する壁)を介して他方の空間へ伝搬しようとする場合に、当該壁のコインシデンス効果を抑えることができる。したがって、当該壁を介した隣接空間への音漏れが抑制され、遮音性能を改善することができる。
【0021】
本発明の他の局面に係る間仕切壁の施工方法は、複数の間柱を水平方向に並べて配置する工程と、前記間柱よりも幅が大きい第1遮音面材を、前記間柱の一方の外面に取り付ける工程と、前記間柱よりも幅が大きい第2遮音面材を、前記間柱の他方の外面に取り付ける工程と、前記第2遮音面材が取り付けられた前記間柱との間に隙間が空くように、第1面材を前記第1遮音面材の外側から固定する工程と、前記第1遮音面材が取り付けられた前記間柱との間に隙間が空くように、第2面材を前記第2遮音面材の外側から固定する工程と、を含む。前記第1遮音面材は、前記第1面材と異なるコインシデンス周波数を有し、前記第1面材よりも幅が小さい面材である。前記第2遮音面材は、前記第2面材と異なるコインシデンス周波数を有し、前記第2面材よりも幅が小さい面材である。
【0022】
この施工方法によれば、間柱よりも幅が大きく且つ第1面材よりも幅が小さい第1遮音面材と間柱よりも幅が大きく且つ第2面材よりも幅が小さい第2遮音面材を用いることにより、コスト削減を図りつつ遮音性能が維持された間仕切壁を施工することができる。しかも、この方法では、間柱、第1及び第2遮音面材、第1及び第2面材の順に施工するため、第1及び第2面材の施工後に第1及び第2遮音面材を施工する方法とは異なり、間仕切壁の中空部に入って第1及び第2遮音面材を施工する必要がない。したがって、作業負荷が軽減され、安定した施工品質を実現することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、遮音性能を維持しつつコスト削減を図ることが可能な間仕切壁の遮音構造及び間仕切壁の施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態1に係る間仕切壁の遮音構造の構成を模式的に示す鉛直断面図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係る間仕切壁の遮音構造の構成を模式的に示す水平断面図である。
【
図3】本発明の実施形態2に係る間仕切壁の遮音構造の構成を模式的に示す鉛直断面図である。
【
図4】本発明の実施形態3に係る間仕切壁の遮音構造の構成を模式的に示す鉛直断面図である。
【
図5】本発明の実施形態3に係る間仕切壁の遮音構造の床側遮音面材の近傍における拡大図である。
【
図6】本発明の実施形態4に係る間仕切壁の遮音構造の構成を模式的に示す鉛直断面図である。
【
図7】本発明の実施形態5に係る間仕切壁の遮音構造の構成を模式的に示す鉛直断面図である。
【
図8】本発明の実施形態6に係る間仕切壁の遮音構造の構成を模式的に示す水平断面図である。
【
図9】本発明の実施形態6に係る間仕切壁の遮音構造の構成を模式的に示す鉛直断面図である。
【
図10】本発明の実施形態6の変形例に係る間仕切壁の遮音構造の構成を模式的に示す水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき詳細に説明する。
【0026】
(実施形態1)
まず、本発明の実施形態1に係る間仕切壁の遮音構造1(以下、単に「遮音構造1」とも称する)の構成を、
図1及び
図2に基づいて説明する。
図1は、間仕切壁30の鉛直方向に沿った断面を模式的に示している。
図2は、間仕切壁30の水平方向に沿った断面を模式的に示している。なお、
図1は、
図2中の線分I-Iに沿った鉛直断面図である。
【0027】
遮音構造1は、例えば住宅等の建物内において、間仕切壁30により仕切られた2つの空間(第1空間S1及び第2空間S2)のうち、一方の空間から他方の空間への音漏れを抑制するためのものである。
図1及び
図2に示すように、遮音構造1は、床材10と、天井材20と、間仕切壁30と、天井側遮音面材40と、床側遮音面材41と、第1壁側遮音面材42(第1遮音面材)と、第2壁側遮音面材43(第2遮音面材)とを主に備えている。以下、これらの構成要素についてそれぞれ説明する。
【0028】
床材10は、建物内の空間S0(例えば、住宅内の居住空間)側を向く床面13を有している。
図1に示すように、床材10は、水平に敷設された合板12と、当該合板12上に敷設されたフローリング11とを有している。フローリング11の上面が床面13となっている。
【0029】
天井材20は、空間S0を挟んで床材10と鉛直方向に対向している。天井材20は、例えば石膏ボードであり、床面13に平行で且つ空間S0側を向く天井下面21を有している。
【0030】
間仕切壁30は、鉛直方向に延びており、空間S0を第1空間S1と第2空間S2とに仕切っている。
図1に示すように、本実施形態における床材10及び天井材20は、第1空間S1から間仕切壁30を挟んで第2空間S2に至るまでの間、途中で切れ込みや隙間等が形成されることなく連続した構造を有しているが、これに限定されない。
【0031】
間仕切壁30は、第1面材31と、第1面材31との間に中空部S3を挟んで配置された第2面材32と、中空部S3において水平方向(壁面方向)に並んで配置された複数の間柱34と、吸音材33とを主に有している。
【0032】
図1に示すように、第1面材31は、鉛直方向に延びている。第1面材31は、床材10及び天井材20に対して垂直に配置されており、第1空間S1側を向く第1外面31Aと、天井下面21側を向く第1上端面31Bと、床面13側を向く第1下端面31Cと、中空部S3側を向く第1内面31D(
図2)とを有している。第1面材31は、例えば石膏ボードであるが、これに限定されない。
【0033】
第2面材32は、第1面材31と同様に、鉛直方向に延びている。第2面材32は、第1面材31と平行であり、第2空間S2側を向く第2外面32Aと、天井下面21側を向く第2上端面32Bと、床面13側を向く第2下端面32Cと、中空部S3側を向くと共に中空部S3を挟んで第1内面31Dに対向する第2内面32D(
図2)とを有している。本実施形態における第1面材31及び第2面材32は、平面視矩形状を有しており、天井材20と同じ厚さで且つ同じコインシデンス周波数を有する石膏ボードであるが、これに限定されない。
【0034】
間柱34は、鉛直方向に延びており、中空部S3において水平方向(壁面方向)に等間隔を空けて複数配置されている(
図2)。本実施形態における間柱34は、C形鋼からなり、開口部を塞ぐように複数枚の補強プレート(図示しない)が取り付けられている。この補強プレートは、鉛直方向に互いに隙間を空けた状態でC形鋼に取り付けられている。なお、間柱は、C形鋼に限定されず、例えば中空鋼や木柱でもよい。
【0035】
吸音材33は、第1空間S1及び第2空間S2のうち一方の空間から間仕切壁30へ伝搬される音を吸収する部材であり、中空部S3に敷き詰められている。
図2に示すように、吸音材33は、中空部S3における壁厚方向の略中央を水平方向(壁面方向)に延びており、上記補強プレート同士の隙間に挿入されると共に間柱34のウェブにおいて分断されている。本実施形態における吸音材33は、グラスウールであるが、これに限定されない。
【0036】
天井側遮音面材40(
図1)は、天井材20と異なるコインシデンス周波数を有しており、天井材20のうち第1面材31と第2面材32との間の部位、すなわち間仕切壁30の厚さ範囲にある部位(天井下面21)に貼り付けられている(
図1)。具体的には、天井側遮音面材40は、ガラス繊維不織布を含む厚さが一定の石膏ボードであり、コインシデンス周波数が天井材20に対して1/12オクターブ異なっている。天井側遮音面材40は、例えば接着剤等により天井下面21に貼り付けられている。天井側遮音面材40は、接着剤が面全体に塗布された後に天井下面21に貼り付けられてもよいし、接着剤が面の一部に塗布された後に天井下面21に貼り付けられてもよい。なお、天井側遮音面材40は省略されてもよい。
【0037】
図1に示すように、本実施形態における天井側遮音面材40は、天井材20(天井下面21)のうち第1面材31から第2面材32まで至る範囲の全体に貼り付けられている。天井側遮音面材40における幅方向の一端部40Aは、天井下面21と第1上端面31Bとにより挟まれており、一方で天井側遮音面材40における幅方向の他端部40Bは、天井下面21と第2上端面32Bとにより挟まれている。また一端部40Aは第1外面31Aと略面一となっており、他端部40Bは第2外面32Aと略面一となっている。
【0038】
また本実施形態における天井側遮音面材40は、天井材20のうち間仕切壁30の厚さ範囲にあり且つ間仕切壁30の壁面方向に所定の長さを有する部位に貼り付けられている。具体的には、天井側遮音面材40は、間仕切壁30の壁面方向(
図1中の紙面奥行き方向)の全体に亘って天井下面21に貼り付けられている。すなわち、天井側遮音面材40は、間仕切壁30の厚さに相当する短辺と、間仕切壁30の幅に相当する長辺とを有するボード材である。
【0039】
床側遮音面材41は、床材10と異なるコインシデンス周波数を有しており、床材10のうち第1面材31と第2面材32との間の部位、すなわち間仕切壁30の厚さ範囲にある部位に貼り付けられている。床側遮音面材41は、天井側遮音面材40と同様にガラス繊維不織布を含む厚さが一定の石膏ボードであり、コインシデンス周波数が床材10に対して1/12オクターブ異なっている。なお、床側遮音面材41は、天井側遮音面材40と同様に、例えば接着剤等により床面13に貼り付けられている。なお、床側遮音面材41は省略されてもよい。
【0040】
本実施形態における床側遮音面材41は、床材10(床面13)のうち第1面材31から第2面材32まで至る範囲の全体に貼り付けられている。
図1に示すように、床側遮音面材41における幅方向の一端部41Aは、第1下端面31Cと床面13とにより挟まれており、一方で床側遮音面材41における他端部41Bは、第2下端面32Cと床面13とにより挟まれている。また一端部41Aは第1外面31Aと略面一になっており、他端部41Bは第2外面32Aと略面一になっている。
【0041】
本実施形態における床側遮音面材41は、床材10のうち間仕切壁30の厚さ範囲にあり且つ間仕切壁30の壁面方向に所定の長さを有する部位に貼り付けられている。具体的には、床側遮音面材41は、間仕切壁30の壁面方向の全体に亘って床面13に貼り付けられている。すなわち、床側遮音面材41は、間仕切壁30の厚さに相当する短辺と、間仕切壁30の幅に相当する長辺とを有しており、天井側遮音面材40と略同じ大きさ及び形状のボード材である。
【0042】
第1壁側遮音面材42(
図2)は、第1面材31と異なるコインシデンス周波数を有すると共に第1面材31よりも薄い面材であり、第1面材31と間柱34とにより挟まれている。具体的には、本実施形態における第1壁側遮音面材42は、第1面材31に対してコインシデンス周波数が1/12オクターブ異なる繊維混入石膏ボードである。
【0043】
図2に示すように、本実施形態における第1壁側遮音面材42は、幅方向の中心が間柱34と略一致しており、水平方向に並ぶ複数の間柱34に対して1つおきに固定されている。第1壁側遮音面材42は、間柱34の一方の外面(第1空間S1側の面)にビス固定されると共に、第1内面31Dに対して接着剤により点付けで貼り付けられている。具体的には、第1壁側遮音面材42の外面(第1空間S1側の面)の両端に接着剤が点付けで塗布され、これに第1面材31が貼り合わされている。
【0044】
第1壁側遮音面材42は、第1面材31よりも壁面方向の幅が小さく、且つ間柱34よりも壁面方向の幅が大きくなっている。より具体的には、第1壁側遮音面材42の壁面方向の幅は、第1面材31の幅の60%以上となっており、第1面材31側に取り付けられた隣接する間柱34の間の距離の60%以上となっている。
図2に示すように、第1壁側遮音面材42の幅方向の両端部は、隣接する間柱34の手前まで延びている。
【0045】
図2に示すように、第1面材31と共に第1壁側遮音面材42を挟む間柱34は、第2面材32(第2内面32D)との間に隙間G1を空けて配置されている。本実施形態では、この隙間G1が第2壁側遮音面材43の厚さと同じであるが、これに限定されない。
【0046】
第2壁側遮音面材43は、第2面材32と異なるコインシデンス周波数を有すると共に第2面材32よりも薄い面材であり、第2面材32と間柱34とにより挟まれている。具体的に、本実施形態における第2壁側遮音面材43は、第2面材32に対してコインシデンス周波数が1/12オクターブ異なる繊維混入石膏ボードである。本実施形態では、第2壁側遮音面材43は、第1壁側遮音面材42と同じ厚さを有している。
【0047】
本実施形態における第2壁側遮音面材43は、幅方向の中心が間柱34と略一致しており、水平方向に並ぶ複数の間柱34に対して1つおきに固定されているが、第1壁側遮音面材42が固定された間柱34には固定されていない。このため、
図2に示すように、第1壁側遮音面材42と第2壁側遮音面材43は、壁面方向において千鳥状に配置されている。第2壁側遮音面材43は、間柱34の他方の外面(第2空間S2側の面)にビス固定されると共に、第2内面32Dに対して接着剤により点付けで貼り付けられている。
【0048】
第2壁側遮音面材43は、第2面材32よりも壁面方向の幅が小さく、且つ間柱34よりも壁面方向の幅が大きくなっている。より具体的には、第2壁側遮音面材43の壁面方向の幅は、第2面材32の当該幅の60%以上となっており、第2面材32側に取り付けられた隣接する間柱34の間の距離の60%以上となっている。
図2に示すように、第2壁側遮音面材43の幅方向の両端部は、隣接する間柱34の手前まで延びている。
【0049】
第2面材32と共に第2壁側遮音面材43を挟む間柱34は、第1面材31(第1内面31D)との間に隙間G2を空けて配置されている。本実施形態では、この隙間G2が第1壁側遮音面材42の厚さと同じであるが、これに限定されない。
【0050】
次に、本実施形態に係る間仕切壁の施工方法について説明する。
【0051】
まず、複数の間柱34を水平方向に並べて配置する。具体的には、まず、床面13(
図1)のうち間仕切壁30の施工エリアに床側遮音面材41を配置し、その上にコの字形状のランナー60を上向きに配置して固定する。そして、間柱34の下端部をランナー内に挿入し、間柱34をランナーに対して固定する。
図2に示すように、複数本の間柱34を水平方向に等間隔を空けて立てる。その後、吸音材33を敷き詰める。
【0052】
次に、第1壁側遮音面材42を間柱34の一方の外面(第1空間S1側の面)に取り付ける。このとき、
図2に示すように、水平方向に並ぶ間柱34に対して1つおきに第1壁側遮音面材42をビスで固定する。
【0053】
次に、第2壁側遮音面材43を間柱34の他方の外面(第2空間S2側の面)に取り付ける。このとき、
図2に示すように、第1壁側遮音面材42が取り付けられていない間柱34に対して第2壁側遮音面材43をビスで固定する。
【0054】
次に、第1面材31を第1壁側遮音面材42の外側から固定する。具体的には、第1面材31の第1内面31D又は第1壁側遮音面材42の外面に接着剤を点付けし、第1内面31Dと第1壁側遮音面材42の外面とを互いに貼り合わせる。その後、第1面材31を間柱34に対してビスで固定する。このとき、
図2に示すように、第2壁側遮音面材43が取り付けられた間柱34と第1面材31(第1内面31D)との間には隙間G2が空く。
【0055】
次に、第2面材32を第2壁側遮音面材43の外側から固定する。まず、第2面材32の第2内面32D又は第2壁側遮音面材43の外面に接着剤を点付けし、第2内面32Dと第2壁側遮音面材43の外面とを互いに貼り合わせる。その後、第2面材32を間柱34に対してビスで固定する。このとき、第1壁側遮音面材42が取り付けられた間柱34と第2面材32(第2内面32D)との間には隙間G1が空く。以上の手順で間仕切壁30が施工される。
【0056】
以上の通り、本実施形態に係る間仕切壁の遮音構造1では、第1壁側遮音面材42の幅が第1面材31の幅よりも小さく、且つ第2壁側遮音面材43の幅が第2面材32の幅よりも小さい。このため、同じ幅の面材を重ね合わせる場合に比べて、面材の使用量を削減し、コスト削減を図ることができる。しかも、この遮音構造1では、第1壁側遮音面材42及び第2壁側遮音面材43の各幅が間柱34の幅よりも大きいため、コスト削減のために面材の使用量を削減しても遮音性能を維持することができる。
【0057】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2に係る間仕切壁の遮音構造1Aの構成を、
図3に基づいて説明する。
図3は、遮音構造1Aの鉛直断面図であり、実施形態1の
図1に対応するものである。
【0058】
図3に示すように、本実施形態における天井側遮音面材40は、間仕切壁30の中空部内に収まる幅を有している。すなわち、天井側遮音面材40の一端部40Aは天井下面21と第1上端面31Bとにより挟まれておらず、他端部40Bは天井下面21と第2上端面32Bとにより挟まれていない。
【0059】
同様に、床側遮音面材41も、間仕切壁30の中空部内に収まる幅を有している。すなわち、床側遮音面材41の一端部41Aは床面13と第1下端面31Cとにより挟まれておらず、他端部41Bは床面13と第2下端面32Cとにより挟まれていない。
【0060】
(実施形態3)
次に、本発明の実施形態3に係る間仕切壁の遮音構造2(以下、単に「遮音構造2」とも称する)を、
図4及び
図5に基づいて説明する。実施形態3に係る遮音構造2は、基本的に上記実施形態1に係る遮音構造1と同様の構成を備え且つ同様の効果を奏するものであるが、床側遮音面材41がより厚く形成されている点で上記実施形態1と異なっている。以下、上記実施形態1と異なる点についてのみ説明する。
【0061】
第1面材31の高さ寸法(第1上端面31Bと第1下端面31Cとの間の距離)は、床面13と天井下面21との間の距離よりも小さくなっている。
図4に示すように、第1面材31は、第1上端面31Bが天井下面21に当接すると共に第1下端面31Cと床面13との間に鉛直方向の隙間(第1下側隙間G3)が空くように配置されている。
【0062】
第1面材31と同様に、第2面材32の高さ寸法(第2上端面32Bと第2下端面32Cとの間の距離)は、床面13と天井下面21との間の距離よりも小さくなっている。第2面材32は、第2上端面32Bが天井下面21に当接すると共に第2下端面32Cと床面13との間に隙間(第2下側隙間G4)が空くように配置されている。
【0063】
遮音構造2は、間柱34を水平方向(間仕切壁30の壁厚方向)に位置決めする位置決め部材60(ランナー)を備えている。
図4に示すように、位置決め部材60は、床側遮音面材41上に載置されており、ビス等の固定具により床面13に固定されている。
【0064】
図5は、床側遮音面材41の近傍の拡大図である。床側遮音面材41は、第1下側隙間G3及び第2下側隙間G4よりも厚く且つ中空部S3側から第1下側隙間G3及び第2下側隙間G4を塞ぐように床面13上に配置され、且つ位置決め部材60よりも面密度(kg/m
2)が大きい部分を含む部材である。具体的には、床側遮音面材41は、第1下側隙間G3及び第2下側隙間G4と同じ厚さを有する第1面材部分47と、水平方向(間仕切壁30の壁厚方向)において第1面材31及び第2面材32の下部と重なる第2面材部分46とを含む。第2面材部分46は、床側遮音面材41のうち第1下端面31C及び第2下端面32Cよりも上側の部分であり、第1面材部分47の幅方向の両側面が第1下側隙間G3及び第2下側隙間G4を中空部S3側から塞いでいる。
【0065】
第2面材部分46の面密度は、位置決め部材60の面密度よりも大きくなっている。第2面材部分46の面密度は、第1面材31の面密度及び第2面材32の面密度以上であることが好ましく、さらに床材10の面密度以上であることが好ましい。一方、第1面材部分47の面密度は特に限定されず、第2面材部分46の面密度よりも小さくてもよいし、第2面材部分46の面密度と同じであってもよい。
【0066】
本実施形態における床側遮音面材41は、例えば、鉄粉をアスファルトにより固めたものを不織布により挟んだもの(アスファルト系制振材)であるが、これに限定されない。また本実施形態における床側遮音面材41は、上記実施形態1と同様に、床材10と異なるコインシデンス周波数を有するものであり、床材10と床側遮音面材41のコインシデンス周波数が1/12オクターブ異なることが好ましい。
【0067】
図5に示すように、位置決め部材60は、床側遮音面材41(第2面材部分46)上に載置された平板状の基部61と、基部61から垂直に立ち上がった第1端側立設部63及び第2端側立設部64とを含む。第1端側立設部63及び第2端側立設部64は、基部61の幅方向両端部の各々から基部61に対して垂直に立設されている。間柱34(
図4)の下端部が第1端側立設部63と第2端側立設部64の間の溝内に差し込まれており、第1壁側遮音面材42の下端部が第1端側立設部63と第1面材31との間に位置しており、第2壁側遮音面材43(
図2)の下端部が第2端側立設部64と第2面材32との間に位置している。また
図4に示すように、天井下面21にも位置決め部材60が固定されており、当該位置決め部材60の溝内に間柱34の上端部が差し込まれる。
【0068】
実施形態3に係る遮音構造2によれば、第1面材31及び第2面材32と床面13との間の隙間を床側遮音面材41の両側面によって塞ぐことにより、当該隙間を通じた隣室への音漏れを抑制することができる。しかも、床側遮音面材41(第2面材部分46)の面密度が位置決め部材60の面密度よりも大きいため、位置決め部材60を床面13上に直接載置して当該隙間を塞ぐ場合に比べて、遮音性能を一層改善することができる。なお、床側遮音面材41は、アスファルト系制振材からなるものに限定されず、位置決め部材60よりも面密度が高い石膏ボードからなるものでもよい。
【0069】
(実施形態4)
次に、本発明の実施形態4に係る間仕切壁の遮音構造3(以下、単に「遮音構造3」とも称する)を、
図6に基づいて説明する。実施形態4に係る遮音構造3は、基本的に上記実施形態3に係る遮音構造2と同様の構成を備え且つ同様の効果を奏するものであるが、間仕切壁30の上端面と天井下面21との間に隙間が空いており、当該隙間が天井側遮音面材40により塞がれている点で異なっている。以下、上記実施形態3と異なる点についてのみ説明する。
【0070】
図6に示すように、第1面材31は、第1下端面31Cが床面13に当接すると共に第1上端面31Bと天井下面21との間に隙間(第1上側隙間G31)が空くように配置されている。同様に、第2面材32は、第2下端面32Cが床面13に当接すると共に第2上端面32Bと天井下面21との間に隙間(第2上側隙間G41)が空くように配置されている。
【0071】
天井側遮音面材40は、第1上側隙間G31及び第2上側隙間G41よりも厚く且つ中空部S3側から第1上側隙間G31及び第2上側隙間G41を塞ぐように天井下面21に配置されており、且つ位置決め部材60よりも面密度が大きい部分を含む。具体的には、天井側遮音面材40は、第1上側隙間G31及び第2上側隙間G41と同じ厚さを有する第1面材部分48と、水平方向(間仕切壁30の壁厚方向)において第1面材31及び第2面材32の上部と重なる第2面材部分49とを含む。第2面材部分49は、天井側遮音面材40のうち第1上端面31B及び第2上端面32Bよりも下側の部分であり、第1面材部分48の幅方向の両側面が第1上側隙間G31及び第2上側隙間G41を中空部S3側から塞いでいる。
【0072】
第2面材部分49の面密度は、位置決め部材60の面密度よりも大きくなっている。第2面材部分49の面密度は、第1面材31の面密度及び第2面材32の面密度以上であることが好ましく、さらに天井材20の面密度以上であることが好ましい。一方、第1面材部分48の面密度は特に限定されず、第2面材部分49の面密度よりも小さくてもよいし、第2面材部分49の面密度と同じであってもよい。
【0073】
本実施形態における天井側遮音面材40は、例えば、鉄粉をアスファルトにより固めたものを不織布により挟んだもの(アスファルト系制振材)であるが、これに限定されない。また本実施形態における天井側遮音面材40は、上記実施形態1と同様に、天井材20と異なるコインシデンス周波数を有するものであり、天井材20と天井側遮音面材40のコインシデンス周波数が1/12オクターブ異なることが好ましい。
【0074】
図6に示すように、位置決め部材60は、天井側遮音面材40の下側において下向きに配置されており、ビス等の固定具により天井側遮音面材40と共に天井下面21に固定されている。間柱34の上端部が位置決め部材60の溝内に差し込まれる。また床面13には、位置決め部材60がビス等の固定具により直接固定されている。
【0075】
実施形態4に係る遮音構造3によれば、第1面材31及び第2面材32と天井下面21との間の隙間を天井側遮音面材40の両側面によって塞ぐことにより、当該隙間を通じた隣室への音漏れを抑制することができる。しかも、天井側遮音面材40が位置決め部材60よりも面密度が大きい第2面材部分49を含むため、位置決め部材60を天井下面21に直接固定して当該隙間を塞ぐ場合に比べて、遮音性能を一層改善することができる。
【0076】
なお、天井側遮音面材40は、アスファルト系制振材からなるものに限定されず、位置決め部材60よりも面密度が高い石膏ボードからなるものでもよい。また実施形態4における天井側遮音面材40が、上記実施形態3における床側遮音面材41と組み合わせて用いられてもよい。
【0077】
(実施形態5)
次に、本発明の実施形態5に係る間仕切壁の遮音構造4(以下、単に「遮音構造4」とも称する)を、
図7に基づいて説明する。実施形態5に係る遮音構造4は、上記実施形態1の構成に加えて、第1天井側遮音面材45と、第2天井側遮音面材44とをさらに備えている。以下、上記実施形態1と異なる点について説明する。
【0078】
図7に示すように、天井材20は、天井下面21と反対側(天井裏の空間側)を向く天井上面22を有しており、当該天井上面22には、複数の野縁50が配置されている。本実施形態では、各野縁50は、長さ方向が間仕切壁30の壁面方向(
図7中の紙面奥行き方向)を向くように配置されている。
【0079】
複数の野縁50は、天井上面22において水平方向(野縁50の長さ方向に直交する方向)に等間隔を空けて配置されている。
図7に示すように、天井上面22のうち第1面材31及び第2面材32の上側に位置する部位には、野縁50が配置されている。換言すると、野縁50は、天井上面22のうち第1面材31及び第2面材32に対して鉛直方向に重なる位置に配置されている。
【0080】
第1天井側遮音面材45は、天井材20のうち少なくとも第1外面31Aに対応する位置22Aと第1空間S1の水平方向(壁厚方向)の中心に対応する位置22Bとの間の部位に貼り付けられている。より具体的には、
図7に示すように、第1天井側遮音面材45は、第1面材31と鉛直方向に重なる一の野縁50と当該一の野縁50に対して第1空間S1側に隣接する他の野縁50との間のスペースにおいて、天井上面22に貼り付けられている。「第1外面31Aに対応する位置」は、天井材20のうち第1外面31Aと鉛直方向に重なる位置を意味する。
【0081】
図7に示すように、本実施形態における第1天井側遮音面材45は、上記一の野縁50と上記他の野縁50との間のスペースの一部において天井上面22に貼り付けられている。換言すれば、第1天井側遮音面材45の幅W1は、上記一の野縁50と上記他の野縁50との間の距離よりも小さくなっている。
【0082】
また第1天井側遮音面材45は、間仕切壁30側の端部が上記一の野縁50の側面(上記他の野縁50に対向する側面)に接触している。つまり、第1天井側遮音面材45の幅方向の中心は、上記一の野縁50と上記他の野縁50との間の中心よりも間仕切壁30(第1外面31A)側に位置している。
【0083】
第1天井側遮音面材45は、天井材20と異なるコインシデンス周波数を有している。具体的には、第1天井側遮音面材45は、上記実施形態1において説明した第1壁側遮音面材42及び第2壁側遮音面材43と同じガラス繊維不織布を含む石膏ボードからなり、コインシデンス周波数が天井材20に対して1/12オクターブ異なっている。
【0084】
第2天井側遮音面材44は、天井材20のうち少なくとも第2外面32Aに対応する位置22Cと第2空間S2の水平方向(壁厚方向)の中心に対応する位置22Dとの間の部位に貼り付けられている。具体的には、
図7に示すように、第2天井側遮音面材44は、第2面材32と鉛直方向に重なる一の野縁50と当該一の野縁50に対して第2空間S2側に隣接する他の野縁50との間のスペースにおいて、天井上面22に貼り付けられている。「第2外面32Aに対応する位置」は、天井材20のうち第2外面32Aと鉛直方向に重なる位置を意味する。
【0085】
第2天井側遮音面材44は、上記一の野縁50と上記他の野縁50との間のスペースの一部において天井上面22に貼り付けられている。すなわち、第2天井側遮音面材44の幅W2は、野縁間の距離よりも小さくなっている。また第2天井側遮音面材44は、間仕切壁30側の端部が上記一の野縁50の側面(上記他の野縁50に対向する側面)に接触している。すなわち、第2天井側遮音面材44の幅方向の中心は、上記一の野縁50と上記他の野縁50との間の中心よりも間仕切壁30(第2外面32A)側に位置している。
【0086】
第2天井側遮音面材44は、天井材20と異なるコインシデンス周波数を有している。具体的に、第2天井側遮音面材44は、上記実施形態1において説明した第1壁側遮音面材42及び第2壁側遮音面材43と同じガラス繊維不織布を含む石膏ボードからなり、コインシデンス周波数が天井材20に対して1/12オクターブ異なっている。したがって、第1壁側遮音面材42、第2壁側遮音面材43、第1天井側遮音面材45及び第2天井側遮音面材44の間で、部材を共用化することができる。本実施形態では、第2天井側遮音面材44、第1天井側遮音面材45は、野縁50と他の野縁50との間の中心よりも間仕切壁30側に位置しているが、野縁50と他の野縁50との間に位置していればよく、間仕切壁30側の位置に限定されない。
【0087】
以上の通り、実施形態5に係る遮音構造4では、天井材20と異なるコインシデンス周波数を有する面材が、天井材20のうち間仕切壁30の外面に対応する位置と空間の水平方向の中心に対応する位置との間の部位に貼り付けられている。このため、間仕切壁30により仕切られた第1空間S1及び第2空間S2のうち一方の空間で発生した音が、コインシデンス効果により天井材20を介して他方の空間へ伝搬しようとする場合に、天井材20のコインシデンス効果を抑えることができる。したがって、天井材20を介した音漏れが抑制され、遮音性能を改善することができる。
【0088】
(実施形態6)
次に、本発明の実施形態6に係る間仕切壁の遮音構造5(以下、単に「遮音構造5」とも称する)について、
図8~
図10に基づいて説明する。実施形態6に係る遮音構造5は、基本的に上記実施形態5に係る遮音構造4と同様の構成を備えるものであるが、第1天井側遮音面材45及び第2天井側遮音面材44に代えて、第1外壁側遮音面材73(第1壁遮音面材)及び第2外壁側遮音面材74(第2壁遮音面材)を備える点で異なっている。以下、上記実施形態5と異なる点についてのみ説明する。
【0089】
図8は、間仕切壁30と外壁70との突当部(接合部)における水平断面図である。遮音構造5は、間仕切壁30に交差(直交)する方向に延びる外壁70を備えている。
図8に示すように、間仕切壁30における壁面方向の一端部が、外壁70の内面に突き当たっている。
【0090】
外壁70は、外壁パネル71と、外壁パネル71との間に中空部を介して配置された外壁面材72と、当該中空部において鉛直方向に延びる縦桟75とを含む。外壁面材72は、例えば石膏ボード等であり、建物内の空間S0側を向く内面72Aと、内面72Aと反対側(中空部側)を向く裏面72Bとを含む。遮音構造5は、外壁面材72の裏面72Bに貼り付けられた第1外壁側遮音面材73及び第2外壁側遮音面材74を含む。
【0091】
第1外壁側遮音面材73は、外壁面材72の裏面72Bのうち少なくとも第1外面31Aに対応する位置72Cと第1空間S1の水平方向の中心に対応する位置72Eとの間の部位に貼り付けられている。ここで、「第1外面31Aに対応する位置」は、外壁面材72の裏面72Bのうち第1外面31Aの延長線が通過する位置を意味する。第1外壁側遮音面材73は、外壁面材72と異なるコインシデンス周波数を有する石膏ボードからなり、具体的には、コインシデンス周波数が外壁面材72に対して1/12オクターブ異なっている。
【0092】
第2外壁側遮音面材74は、外壁面材72の裏面72Bのうち少なくとも第2外面32Aに対応する位置72Dと第2空間S2の水平方向の中心に対応する位置72Fとの間の部位に貼り付けられている。ここで、「第2外面32Aに対応する位置」は、外壁面材72の裏面72Bのうち第2外面32Aの延長線が通過する位置を意味する。第2外壁側遮音面材74は、外壁面材72と異なるコインシデンス周波数を有しており、具体的には、コインシデンス周波数が外壁面材72に対して1/12オクターブ異なっている。
【0093】
図9は、外壁面材72の内面72Aを正面視したときの遮音構造5の一部断面図である。
図9に示すように、第1外壁側遮音面材73は、鉛直方向に長い矩形状を有しており、水平方向(間仕切壁30の壁厚方向)に間隔を空けて複数配置されている。同様に、第2外壁側遮音面材74も、鉛直方向に長い矩形状を有しており、水平方向に間隔を空けて配置されている。
【0094】
実施形態5に係る遮音構造5では、外壁面材72と異なるコインシデンス周波数を有する追加面材が、外壁面材72のうち間仕切壁30の外面に対応する位置と空間S0の水平方向の中心に対応する位置との間の部位に貼り付けられている。このため、第1空間S1及び第2空間S2のうち一方の空間で発生した音が、コインシデンス効果により外壁70を介して他方の空間へ伝搬しようとする場合に、外壁面材72のコインシデンス効果を抑えることができる。したがって、外壁70を介した隣接空間への音漏れが抑制され、遮音性能を改善することができる。
【0095】
なお、第1外壁側遮音面材73及び第2外壁側遮音面材74の間仕切壁30側の端部は、壁面方向において間仕切壁30と重なる位置までさらに延びていてもよい。また
図10に示すように、第1外壁側遮音面材73及び第2外壁側遮音面材74は、水平方向(間仕切壁30の壁厚方向)に長い矩形状を有すると共に、鉛直方向に間隔を空けて複数配置されていてもよい。また実施形態6における第1外壁側遮音面材73及び第2外壁側遮音面材74が、上記実施形態5における第1天井側遮音面材45及び第2天井側遮音面材44と組み合わせて用いられてもよい。
【0096】
(その他実施形態)
ここで、本発明のその他実施形態を説明する。
【0097】
第1壁側遮音面材42と第2壁側遮音面材43が千鳥配置される場合に限定されず、隣接する2本の間柱の各々に第1壁側遮音面材42が連続して固定されてもよいし、第2壁側遮音面材43が連続して固定されてもよい。
【0098】
隙間G1が第2壁側遮音面材43の厚さと異なっていてもよいし、隙間G2が第1壁側遮音面材42の厚さと異なっていてもよい。
【0099】
第1面材31と第2面材32の厚さが互いに異なっていてもよく、第1壁側遮音面材42と第2壁側遮音面材43の厚さが互いに異なっていてもよい。
【0100】
図8において間仕切壁30に交差する壁は、外壁70に限定されず、例えば他の間仕切壁であってもよい。
【0101】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0102】
1,1A,2,3,4,5 間仕切壁の遮音構造
31 第1面材
32 第2面材
34 間柱
42 第1壁側遮音面材(第1遮音面材)
43 第2壁側遮音面材(第2遮音面材)
G1,G2 隙間
S3 中空部