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  • 特開-指掌紋撮影装置及び指掌紋撮影方法 図1
  • 特開-指掌紋撮影装置及び指掌紋撮影方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114960
(43)【公開日】2022-08-08
(54)【発明の名称】指掌紋撮影装置及び指掌紋撮影方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/33 20060101AFI20220801BHJP
【FI】
G01N21/33
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021011468
(22)【出願日】2021-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】591006298
【氏名又は名称】JFEテクノリサーチ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 良弥
(72)【発明者】
【氏名】川相 吉弘
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB12
2G059CC16
2G059EE01
2G059EE02
2G059FF01
2G059HH03
2G059JJ02
2G059KK04
(57)【要約】
【課題】紫外線を用いて指掌紋撮影を行う際に、検体表面に残留するDNAの減少量を低減する。
【解決手段】紫外線光源1と、紫外線の波長に感度を有する撮影機4と、紫外線光源1から発せられ検体で反射された紫外線の反射光を撮影機4に入射する光学系と、を備える。紫外線の波長は、タンパク質での光吸収が生じる波長であり、紫外線の反射率の違いを利用して検体上の指掌紋を撮影する。通常指掌紋はタンパク質を含む細胞質と共に検体表面2に存在し、DNAを含む細胞核は細胞質に包まれている。検体表面2に向けて照射された紫外線は、細胞質つまりタンパク質で吸収されるため、細胞核に含まれるDNAに到達する紫外線量が減少する。そのため、紫外線によって減少するDNAの量を低減することができ、DNAの減少量を低減しつつ紫外線による指掌紋撮影を行うことができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線を発する光源と、
前記紫外線の波長に感度を有する撮影機と、
前記光源から発せられ検体で反射された前記紫外線の反射光を前記撮影機に入射する光学系と、を備え、
前記紫外線の波長は、タンパク質での光吸収が生じる波長帯域内の波長であって、
前記紫外線の反射率の違いを利用して前記検体上の指掌紋を撮影することを特徴とする指掌紋撮影装置。
【請求項2】
前記撮影機は、前記検体における前記紫外線の拡散反射光を入射する位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の指掌紋撮影装置。
【請求項3】
前記撮影機は、前記検体における前記紫外線の鏡面反射光を入射する位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の指掌紋撮影装置。
【請求項4】
前記紫外線の波長は、200nm以上230nm以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の指掌紋撮影装置。
【請求項5】
前記光源はその出射側に、250nmよりも長い波長の紫外線の通過を阻止するフィルタを備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の指掌紋撮影装置。
【請求項6】
タンパク質での光吸収が生じる波長帯域内の波長を有する紫外線を、表面が鏡面からなる検体に照射し、当該検体で反射された前記紫外線の反射光を撮影機に入射し、前記紫外線の反射率の違いを利用して前記検体上の指掌紋を撮影することを特徴とする指掌紋撮影方法。
【請求項7】
前記撮影機を、前記検体における前記紫外線の拡散反射成分を入射可能な位置に配置することを特徴とする請求項6に記載の指掌紋撮影方法。
【請求項8】
前記撮影機を、前記検体における前記紫外線の鏡面反射成分を入射可能な位置に配置することを特徴とする請求項6に記載の指掌紋撮影方法。
【請求項9】
前記紫外線の波長は、200nm以上230nm以下であることを特徴とする請求項6から請求項8のいずれか一項に記載の指掌紋撮影方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指掌紋撮影装置及び指掌紋撮影方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、指紋検出技術として、アルミニウム等の微粉末を指紋成分に物理的に吸着させて、物体と粉末との色調差を利用して検出する個体法、また、指紋成分に含まれるアミノ酸、無機イオン等に化学薬品を反応させて呈色させて検出する気体法などがある。また、非破壊・非接触で潜在指紋等を検出する手法として、非特許文献1に示されるように、紫外線を照射し、検体表面での光の反射率の違いを利用して潜在指紋を撮影する指紋撮影法がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Lee,H.,C. and Gaensslen,R.,E.:Advances in fingerprint technology 2ndedition. CRC Press,Bocca Ranton,Florida(2001),pp.150-153.
【非特許文献2】藤井宏治、他6名、「指紋検出等に用いるSTR型検査に及ぼす影響」、日本法科学技術学会誌、日本法科学技術学会、2008年、13巻、2号、p.143-148
【非特許文献3】Manuel Buonanno他、207-nm UV Light - A Promising Tool for Safe Low-Cost Reduction of Surgical Site Infections. I: In Vitro Studies、PLOS ONE、2013年10月、8巻、10号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、紫外線を利用した指紋撮影法は、指紋撮影を可能とする一方、検体表面に残留するDNAを分解してしまい、指紋撮影後に行うSTR(STR=Short Tandem Repeat)型検査に悪影響を及ぼすことが知られている(例えば、非特許文献2参照。)。
本発明は係る事情に鑑みてなされたものであり、検体表面に残留するDNAの減少量を低減することの可能な指掌紋撮影装置及び指掌紋撮影方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態に係る指掌紋撮影装置によれば、紫外線を発する光源と、紫外線の波長に感度を有する撮影機と、光源から発せられ検体で反射された紫外線の反射光を撮影機に入射する光学系と、を備え、紫外線の波長は、タンパク質での光吸収が生じる波長帯域内の波長であって、紫外線の反射率の違いを利用して検体上の指掌紋を撮影する指掌紋撮影装置が提供される。
また、本発明の他の実施形態に係る指掌紋撮影方法によれば、タンパク質での光吸収が生じる波長帯域内の波長を有する紫外線を、表面が鏡面からなる検体に照射し、検体で反射された紫外線の反射光を撮影機に入射し、紫外線の反射率の違いを利用して検体上の指掌紋を撮影する指掌紋撮影方法が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、紫外線を用いて指掌紋を撮影する際に、検体表面に残留するDNAが分解されることを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係る指掌紋撮影装置の一例を示す概略構成図である。
図2】指紋画像の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0009】
なお、以下の詳細な説明では、本発明の実施形態の完全な理解を提供するように多くの特定の具体的な構成について記載されている。しかしながら、このような特定の具体的な構成に限定されることなく他の実施態様が実施できることは明らかである。また、以下の実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0010】
本発明の一実施形態に係る指掌紋撮影装置は、紫外線を発する光源と、紫外線の波長に感度を有する撮影機と、光源から発せられ検体で反射された紫外線の反射光を撮影機に入射する光学系と、を備え、紫外線の波長は、タンパク質での光吸収が生じる波長帯域内の波長であって、紫外線の反射率の違いを利用して検体上の指掌紋を撮影するものである。
【0011】
つまり、検体表面に付着したDNAは通常、DNA単体で付着していることは無く、多くは人体由来のタンパク質や脂質と共に付着していると考えられる。具体的には、検体表面に存在する指掌紋は人体由来の細胞を含み、この細胞は、細胞核が細胞質で包まれ、細胞核の中にDNAが含まれている。つまり、タンパク質を含む細胞質で細胞核中のDNAが包まれており、この状態で、DNAが検体表面に付着していると考えられる。
【0012】
本発明の一実施形態に係る指掌紋撮影装置は、タンパク質が紫外線を光吸収する特性を有することに着目し、照射する紫外線の波長を、タンパク質での光吸収が起こる波長とすることにより紫外線をタンパク質に吸収させ、これにより、紫外線によるDNAの分解を抑制しつつ、指掌紋を撮影するようにしたものである。
【0013】
本実施形態に係る指掌紋撮影装置10は、図1に示すように、紫外線光源1と、撮影機4と、画像メモリ装置5と、出力装置6と、表示装置7と、を備え、表面が鏡面である検体の表面(以下、検体表面という。)に存在する潜在指紋3を撮影する。画像メモリ装置5と、出力装置6と、表示装置7とは、例えば記憶装置、表示装置、及び出力装置を備えた1台のパーソナルコンピュータで構成されても良い。
なお、ここでは、潜在指紋3を撮影する場合について説明するが、潜在掌紋や、顕在指掌紋を撮影する場合も同様の効果を得ることができる。
【0014】
紫外線光源1は、タンパク質での光吸収が起こる波長の紫外線を主たる光として発し、タンパク質での光吸収が生じない波長の紫外線を主たる光として発しない光源であれば、紫外線の発生方式にはよらない。紫外線光源1としては、例えば、光源の出射側にバンドパスフィルタやショートパスフィルタ等を設け、タンパク質での光吸収が起こる波長の紫外線を主たる光としてフィルタ等から出射する光源を用いてもよく、また、フィルタ等を設けずに、主たる光として発する紫外線そのものの波長が、タンパク質での光吸収が起こる波長である光源を用いてもよく、いずれの場合も、タンパク質での光吸収が起こらない波長を主たる光として発しない光源であればよい。タンパク質での光吸収が起こる波長の紫外線とは、200nm以上230nm以下の波長である。光源の出射側に設けるフィルタとしては、250nmよりも長い波長の紫外線の通過を阻止するフィルタを備えることが好ましい。
【0015】
また、紫外線光源1は、検体表面2上の潜在指紋3を撮影することが可能な強度の紫外線を発することができればよい。また検体表面2上の潜在指紋3の撮影に要する所要時間相当だけ紫外線を照射することができればよい。
ここで、非特許文献3に示されるように、人体由来のタンパク質において、200nm以上230nm以下の波長範囲では顕著な光吸収がみられるのに対し、250nm以上300nm以下の波長範囲では光吸収が小さいことが知られている。
【0016】
このことから、人体由来のタンパク質や脂質を含む潜在指紋に、一般的なUV-C領域(200nm以上300nm以下)を発する光源である低圧水銀光源や、主たる出力波長が250nm以上300nm以下の領域に存在する高圧水銀光源等の光源が発する紫外線を照射した際には、紫外線に対するタンパク質での光吸収が発生せずにタンパク質を透過することがある。つまり、紫外線に対する、タンパク質等を含む細胞質での光吸収が発生せずに、細胞質で包まれた細胞核に紫外線が達し、細胞核中のDNAに当該波長の紫外線が到達し、DNA鎖が切断されてしまう。一方で、主たる光出力が200nm以上230nm以下の領域に存在する光源が発する紫外線を潜在指紋に照射した際には、タンパク質がこの波長帯域の光を吸収するため、200nm以上230nm以下の範囲内の波長の光が、タンパク質に包まれたDNAに到達する量が減少する。その結果、DNA鎖の切断量も低減され、正常なDNAの減少量を低減することが可能になる。
【0017】
撮影機4は、紫外線光源1が発する紫外線の波長に感度を有する撮影機であればよく、好ましくは、紫外線光源1が発する紫外線に、この波長を除く他の波長帯域よりも高い感度を有する撮影機である。例えば撮影機4としてCMOSセンサなどを適用することができる。撮影機4として、イメージインテンシファイアを用いて紫外光を可視光に変換した後にCCDカメラ等を用いて撮影するようにした撮影機であっても同様の効果が得られる。撮影機4は、検体表面2に照射された紫外線と同一波長の紫外線を入射する。そのため、例えば、撮影機4の入射側に、検体表面2に照射された紫外線と同一波長の紫外線のみを通過させるためのフィルタを備えるか、または、このフィルタと同等の機能を発するフィルタ処理部を撮影機4内に備えている。
【0018】
撮影機4で撮影された指紋画像は画像メモリ装置5に保存され、表示装置7でモニタ上に表示される。また、出力装置6を用いることでSDカードやコンパクトディスク、プリンタ等を介して電子データや印刷物として指紋画像が出力される。
そして、紫外線光源1と撮影機4とは、検体表面2で反射された、紫外線光源1から出射した紫外線の反射光のうち、拡散反射成分(拡散反射光)が撮影機4に入射され、鏡面反射成分(鏡面反射光)は撮影機4に入射されにくい位置に配置される。なお、図示しないが、撮影機4に含まれるレンズ等が光学系に対応している。
このような構成を有する指掌紋撮影装置10において、潜在指紋3を撮影する場合には、紫外線光源1により紫外線を検体表面2に照射し、撮影機4で、検体表面2で反射された反射光を入射する。
【0019】
検体表面2は鏡面であるため、検体表面2に潜在指紋3等の付着物がない場合には、紫外線光源1から出射された紫外線は検体表面2で鏡面反射する。そのため、反射光のうち、拡散反射成分は少なく鏡面反射成分が多くなり、撮影機4に入射される拡散反射成分が少ないため、得られた画像は全体がほぼ暗い画像となる。
【0020】
一方、検体表面2に潜在指紋3が存在する場合には、紫外線光源1から出射された紫外線が潜在指紋3に照射されることにより拡散反射が生じるため、潜在指紋3における反射光のうち鏡面反射成分は少なく拡散反射成分は多い。また、付着物が存在せず検体表面2そのものに照射された紫外線の反射光は、検体表面2が鏡面であることから鏡面反射成分が多く、拡散反射成分が少ない。そのため、得られた画像は、図2に示すように、潜在指紋3の画像は、隆線部分は比較的明るい画像、それ以外の部分は比較的暗い画像として撮影され、潜在指紋3が存在しない部分は暗い画像として撮影されることになり、検体表面2に付着した潜在指紋3を撮影することができる。つまり、検体表面2の鏡面部分と、潜在指紋3が存在する場所とでは、紫外線の反射率が異なるため、潜在指紋3を撮影することができる。なお、図2は、紫外線光源1として、波長が222nmの紫外線を主たる光出力とする光源を用いた場合の指紋画像の一例である。
【0021】
このとき、検体表面2に向けて紫外線を照射することによって、潜在指紋3に紫外線が照射される。検体表面2に向けて照射される紫外線の波長は222nmであって、主にタンパク質での光吸収が起こる200nm以上230nm以下の領域内の波長である。そのため、潜在指紋3に紫外線照射を行ったとしても、通常潜在指紋3と共に存在するタンパク質等からなる細胞質が紫外線を吸収するため、細胞質(タンパク質)に包まれた細胞核に含まれるDNAに、紫外線光源1から照射された紫外線が到達する量が低減される。そのため、潜在指紋3を撮影するために紫外線光源1から照射された紫外線によって、潜在指紋3中のDNAにDNA鎖の切断等が生じ、正常なDNAが減少することを抑制することができる。
【0022】
このように、紫外線照射によるDNA減少量を低減することができるため、DNA減少量を低減させることなく潜在指紋3を撮影することができる。そのため、従来の紫外線による指紋撮影方法では、指紋画像撮影後の検体において、検体表面2に残留するDNAの減少量が大きく、STR型検査が困難であったが、タンパク質の光吸収が起こる波長を主たる光出力とする紫外線光源1を用いることで、DNAの分解を低減し、指紋撮影とSTR型検査とを両立させることができる。同様に、潜在掌紋や顕在指掌紋を撮影する場合であっても、潜在指紋3と同様に掌紋や顕在指掌紋の撮影とSTR型検査とを両立させることができる。
【0023】
なお、上記実施形態では、図1に示すように、検体表面2からの反射光のうち拡散反射成分を撮影機4で撮影する場合について説明したが、これに限るものではない。図1中に破線で示すように、紫外線光源1が発した紫外線の検体表面2での反射光のうち鏡面反射成分が撮影機4に入射され、拡散反射成分は撮影機4に入射されにくくなるように撮影機4を配置し、撮影機4において検体表面2の反射光のうちの鏡面反射成分を撮影するようにしてもよい。この場合には、検体表面2は比較的明るい画像、潜在指紋3のうち隆線部分は比較的暗い画像、隆線部分を除く部分は比較的明るい画像として撮影されることになり、図2とは明暗が逆となった画像として潜在指紋3を撮影することができる。
【0024】
また、上記実施形態では、検体表面2での反射光を直接撮影機4に入射する場合について説明したが、これに限るものではなく、例えば、レンズと反射鏡とを組み合わせて、検体表面2での反射光を撮影機4に入射する光学系を設けてもよい。
なお、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画され得る。
【符号の説明】
【0025】
1 紫外線光源
2 検体表面
3 潜在指紋
4 撮影機
5 画像メモリ装置
6 出力装置
7 表示装置
10 指掌紋撮影装置
図1
図2