(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114967
(43)【公開日】2022-08-08
(54)【発明の名称】ラベルカッターユニット、刃体、刃体の製造方法、刃体の製造装置
(51)【国際特許分類】
B26D 1/08 20060101AFI20220801BHJP
B26D 1/00 20060101ALI20220801BHJP
B21D 53/60 20060101ALI20220801BHJP
B21D 22/02 20060101ALI20220801BHJP
B21D 19/00 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
B26D1/08
B26D1/00
B21D53/60
B21D22/02 A
B21D19/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021011480
(22)【出願日】2021-01-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-10-13
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
(71)【出願人】
【識別番号】510042301
【氏名又は名称】株式会社田中製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100167645
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 一弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 道男
(72)【発明者】
【氏名】林 良平
(72)【発明者】
【氏名】牛尾 渓太
【テーマコード(参考)】
3C027
4E137
【Fターム(参考)】
3C027AA05
3C027AA09
3C027AA10
3C027AA17
3C027AA18
3C027JJ01
4E137AA17
4E137BA02
4E137BB01
4E137CA02
4E137EA01
4E137GA20
4E137GB08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】非粘着性に優れるラベルカッターユニット及びそれに用いる刃体を簡易かつ低コストで提供する。
【解決手段】相対する側面が摺接する可動刃3と固定刃2からなる刃体を備え、可動刃及び固定刃は、いずれもその摺接刃面において、刃先部に隣接する領域に不定形の凹部がランダムに形成された粗面(22、32)を備え、粘着層42を有するラベルシート材4を切断するラベルカッターユニットである。粗面の表面粗さは、JIS B0601(2001)で定義される高低差(Rz)は、35~200μmであり、放電加工により押圧面に不定形の凸面をランダムに形成したパンチをプレスすることで不定形の凹部がランダムに形成された粗面(22、32)を成形する。帯状刃物用ステンレス鋼板を順次送りながらプレス加工することにより、刃体に剪断加工による刃端面、不定形の凹部がランダムに形成された粗面を一貫して製造できる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対する側面が摺接する可動刃と固定刃を備え、可動刃及び固定刃の剪断作用により粘着層を有するラベルシート材を切断するラベルカッターユニットであって、前記可動刃及び固定刃は、いずれもその摺接する刃面において、刃先部に隣接する領域に不定形の凹部がランダムに形成された粗面を備えることを特徴とするラベルカッターユニット。
【請求項2】
前記刃先部に隣接する領域に不定形の凹部がランダムに形成された粗面は、その表面粗さがJIS B0601(2001)で定義される高低差(Rz)は、35~200μmであることを特徴とする請求項1に記載するラベルカッターユニット。
【請求項3】
刃体の摺接刃面の刃先部に隣接する領域に不定形の凹部がランダムに形成された粗面を備えるラベルカッターユニットに用いる刃体。
【請求項4】
前記刃先部に隣接する領域に不定形の凹部がランダムに形成された粗面は、その表面粗さがJIS B0601(2001)で定義される高低差(Rz)は、35~200μmであることを特徴とする請求項3に記載するラベルカッターユニットに用いる刃体。
【請求項5】
搬送機構で送り出された帯状刃物用ステンレス鋼板を、金型内の複数の加工ステージに順次送りながらプレス加工するプレス機構を備えるラベルカッターユニットに用いる刃体の製造方法であって、
前記プレス機構は、前記帯状刃物用ステンレス鋼板に刃型を成形する刃型打ち抜き工程と、
前記刃型打ち抜き工程で形成された刃型に、放電加工により押圧面に不定形の凸面をランダムに形成したパンチをプレスすることで不定形の凹部がランダムに形成された粗面を成形する粗面加工工程と、
前記粗面加工工程で不定形の凹部がランダムに形成された粗面を成形した刃型に、所定の角度で刃面を成形する刃付け加工工程と、
を含むラベルカッターユニットに用いる刃体の製造方法。
【請求項6】
搬送機構で送り出された帯状刃物用ステンレス鋼板を、金型内の複数の加工ステージに順次送りながらプレス加工するプレス機構を備えるラベルカッターユニットに用いる刃体の製造方法であって、
前記プレス機構は、前記帯状刃物用ステンレス鋼板に刃型を成形する刃型打ち抜き工程と、
前記刃型打ち抜き工程で形成された刃型に、放電加工により押圧面に不定形の凸面をランダムに形成したパンチをプレスすることで不定形の凹部がランダムに形成された粗面を成形する粗面加工工程と、
前記粗面加工工程で不定形の凹部がランダムに形成された粗面を成形した刃型に、所定の角度で刃面を成形する刃付け加工工程と、
刃面を成形した刃型にソリを付けるソリ付け加工工程と、
を含むラベルカッターユニットに用いる刃体の製造方法。
【請求項7】
帯状刃物用ステンレス鋼板を所定方向に送り出す搬送機構と、金型内の複数の加工ステージにより前記帯状刃物用ステンレス鋼板を順次送りながらプレス加工するプレス機構を備えるラベルカッターユニットに用いる刃体のプレス加工装置であって、
前記プレス機構は、前記帯状刃物用ステンレス鋼板に刃型を成形する刃型打ち抜き加工ステージと、
前記刃型打ち抜き加工ステージで形成された刃型に、放電加工により押圧面に不定形の凸面をランダムに形成したパンチをプレスすることで不定形の凹部がランダムに形成された粗面を成形する粗面加工ステージと、
前記粗面加工ステージで不定形の凹部がランダムに形成された粗面を成形した刃型に、所定の角度で刃面を成形する刃付け加工ステージと、
を含むラベルカッターユニットに用いる刃体のプレス加工装置。
【請求項8】
帯状刃物用ステンレス鋼板を所定方向に送り出す搬送機構と、金型内の複数の加工ステージにより前記帯状刃物用ステンレス鋼板を順次送りながらプレス加工するプレス機構を備えるラベルカッターユニットに用いる刃体のプレス加工装置であって、
前記プレス機構は、前記帯状刃物用ステンレス鋼板に刃型を成形する刃型打ち抜き加工ステージと、
前記刃型打ち抜き加工ステージで形成された刃型に、放電加工により押圧面に不定形の凸面をランダムに形成したパンチをプレスすることで不定形の凹部がランダムに形成された粗面を成形する粗面加工ステージと、
前記粗面加工ステージで不定形の凹部がランダムに形成された粗面を成形した刃型に、所定の角度で刃面を成形する刃付け加工ステージと、
刃面を成形した刃型にソリを付けるソリ付け加工ステージと、
を含むラベルカッターユニットに用いる刃体のプレス加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、OA機器、レジスター等に装備されたプリンタに装着される粘着層を有するラベル用紙を切断するラベルカッターユニット及びそれに用いる刃体並びに刃体の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
商品表示のため商品に貼付するラベルは、粘着層を有するラベル用紙を切断して作成される。近年、環境負荷を軽減する観点から資源ロスを低減するため、台紙がなく必要な長さでカットできるライナーレスラベルが普及している。また、バーコード、QRコードによる自動認識機器市場が拡大しており、バーコード、QRコードを記したラベルの需要も増大している。
しかしながら、粘着層を有するラベル用紙を切断する場合、カッター刃面に粘着剤が付着して蓄積するためカッター刃面に非粘着性を持たせて、適宜粘着剤をカッター刃面から除く必要がある。
【0003】
カッター刃面に非粘着性を持たせる手段としては、特許文献1には、可動刃及び固定刃の刃先に近い部位に、刃先と並行かつ幅一杯に糊(粘着剤)溜り用の溝を形成して、可動刃と固定刃が摺動しつつ重なり合って溝に粘着剤を落とし込む手段が開示されている。
特許文献2には、さらに溝に粘着阻害材(例、シリコンオイル、多孔質材料にシリコンオイルを含侵させたもの)を充填する手段が開示されている。
特許文献3には、カッター刃面の所定部分をブラスト加工した後、ブラスト加工面に熱硬化性ケイ素系ポリマーを塗布して非粘着性を付与する手段が開示されている。
特許文献4には、刃体の摺接面に刃先と略直交する方向に起毛した繊維部にオイルを塗布した保持体を設けることで、刃体にラベル用紙の粘着剤の付着を阻害する手段が開示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1~4に開示された手段では、刃体に溝を切削加工で形成したり、刃体をブラスト加工したり、刃体に起毛した繊維部にオイルを塗布した保持体を設ける等、刃体に非粘着性を持たせるために二次加工を要することから工程が煩雑でコストが高くなるという問題がある。また、粘着阻害剤を塗布して刃体に非粘着性を持たせる手段は、粘着阻害剤が高価であるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11 - 892号公報
【特許文献2】特開2014-108502号公報
【特許文献3】特開2000-190280号公報
【特許文献4】特開2019- 22937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明は、非粘着性に優れるラベルカッターユニットを簡易かつ低コストで提供することである。さらに、非粘着性に優れるラベルカッターユニット及びそれに用いる刃体を簡易かつ低コストで提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明の課題は、以下の態様により解決できる。具体的には、
【0008】
(態様1) 相対する側面が摺接する可動刃と固定刃を備え、可動刃及び固定刃の剪断作用により粘着層を有するラベルシート材を切断するラベルカッターユニットであって、前記可動刃及び固定刃は、いずれもその摺接する刃面において、刃先部に隣接する領域に不定形の凹部がランダムに形成された粗面を備えることを特徴とするラベルカッターユニットである。
可動刃及び固定刃(以下、それぞれを「刃体」という。)の摺接する刃面(以下、「摺接刃面」という。)において、刃先部に隣接する領域に不定形の凹部がランダムに形成された粗面が、粘着層を有するラベルシート材を切断した場合に、刃体の摺接刃面に付着する粘着剤を取り込む粘着剤溜りとして作用するためラベルカッターユニットの連続的可動を可能にするからである。また、刃体の摺接刃面とラベルシート材切断面との接触面積が減るため、刃体に付着する粘着剤の発生量を抑制できるからである。
【0009】
(態様2) 前記刃先部に隣接する領域に不定形の凹部がランダムに形成された粗面は、その表面粗さがJIS B0601(2001)で定義される高低差(Rz)は、35~200μmであることを特徴とする(態様1)に記載するラベルカッターユニットである。
不定形の連続した凹部からなる粗面の表面粗さが、JIS B0601(2001)で定義される高低差(Rz)は、35~200μmである場合に、粘着剤を取り込む粘着剤溜りとしての効果と粗面を形成するプレス金型の耐久性を両立させる観点から好適だからである。また、固定刃及び可動刃の接触面積が減ることで摺動性が向上する効果もあり、刃体の摺接刃面とラベルシート材切断面との接触面積が減るため、刃体に付着する粘着剤の発生量を抑制できるからである。
【0010】
(態様3) 刃体の摺接刃面の刃先部に隣接する領域に不定形の凹部がランダムに形成された粗面を備えるラベルカッターユニットに用いる刃体である。
刃体の摺接刃面の刃先部に隣接する領域に不定形の凹部がランダムに形成された粗面を備えることにより、粗面が摺接刃面に付着する粘着剤を取り込む粘着剤溜りとしての機能を有するため、ラベルカッターユニットに用いる可動刃または固定刃となり得るからである。
【0011】
(態様4) 前記刃先部に隣接する領域に不定形の凹部がランダムに形成された粗面は、その表面粗さがJIS B0601(2001)で定義される高低差(Rz)は、35~200μmであることを特徴とする(態様3)に記載するラベルカッターユニットに用いる刃体である。
不定形の凹部がランダムに形成された粗面の表面粗さが、JIS B0601(2001)で定義される高低差(Rz)は、35~200μmである場合に、粘着剤を取り込む粘着剤溜りとしての効果と粗面を形成するプレス金型の耐久性を両立させる観点から好適だからである。さらに、ラベルカッターユニットの固定刃及び可動刃として用いた場合に、固定刃及び可動刃の接触面積が減ることで摺動性が向上する効果もあるからである。
【0012】
(態様5) 搬送機構で送り出された帯状刃物用ステンレス鋼板を、金型内の複数の加工ステージに順次送りながらプレス加工するプレス機構を備えるラベルカッターユニットに用いる刃体の製造方法であって、前記プレス機構は、前記帯状刃物用ステンレス鋼板に刃型を成形する刃型打ち抜き工程と、前記刃型打ち抜き工程で形成された刃型に、放電加工により押圧面に不定形の凸面をランダムに形成したパンチをプレスすることで不定形の凹部がランダムに形成された粗面を成形する粗面加工工程と、前記粗面加工工程で不定形の凹部がランダムに形成された粗面を成形した刃型に、所定の角度で刃面を成形する刃付け加工工程と、を含むラベルカッターユニットに用いる刃体の製造方法である。
順送プレス加工による刃体の製造方法によって、刃体への粗面成形と、剪断プレスによる刃面成形を連続して行うことができ、一貫した刃体の製造が可能となり生産コストが低減できる。具体的には、ラベルカッターユニットに用いる刃体に粘着剤を取り込む粘着剤溜りとして作用する不定形の凹部がランダムに形成された粗面は、放電加工により不定形の凸面をランダムに形成したパンチをプレスすることで成形する。剪断プレスによる刃面は、曲げ加工により刃型を鋭角な端面角を成すように傾斜して成形する。また、剪断プレスにより成形された刃面は硬度が高くなる。
【0013】
(態様6) 搬送機構で送り出された帯状刃物用ステンレス鋼板を、金型内の複数の加工ステージに順次送りながらプレス加工するプレス機構を備えるラベルカッターユニットに用いる刃体の製造方法であって、前記プレス機構は、前記帯状刃物用ステンレス鋼板に刃型を成形する刃型打ち抜き工程と、前記刃型打ち抜き工程で形成された刃型に、放電加工により押圧面に不定形の凸面をランダムに形成したパンチをプレスすることで不定形の凹部がランダムに形成された粗面を成形する粗面加工工程と、前記粗面加工工程で不定形の凹部がランダムに形成された粗面を成形した刃型に、所定の角度で刃面を成形する刃付け加工工程と、刃面を成形した刃型にソリを付けるソリ付け加工工程と、を含むラベルカッターユニットに用いる刃体の製造方法である。
刃面を成形した刃型にソリを付けることによりラベルカッターユニットの刃体として用いる場合に、可動刃と固定刃の摺接性が向上して切れ味が増すからである。
【0014】
(態様7) 帯状刃物用ステンレス鋼板を所定方向に送り出す搬送機構と、金型内の複数の加工ステージにより前記帯状刃物用ステンレス鋼板を順次送りながらプレス加工するプレス機構を備えるラベルカッターユニットに用いる刃体のプレス加工装置であって、前記プレス機構は、前記帯状刃物用ステンレス鋼板に刃型を成形する刃型打ち抜き加工ステージと、前記刃型打ち抜き加工ステージで形成された刃型に、放電加工により押圧面に不定形の凸面をランダムに形成したパンチをプレスすることで不定形の凹部がランダムに形成された粗面を成形する粗面加工ステージと、前記粗面加工ステージで不定形の凹部がランダムに形成された粗面を成形した刃型に、所定の角度で刃面を成形する刃付け加工ステージと、を含むラベルカッターユニットに用いる刃体のプレス加工装置である。
各工程に合わせた複数の加工ステージにより、刃体への粗面成形と、剪断プレスによる刃面成形を連続して行うことができ、一貫した刃体の製造が可能となり生産コストが低減できるからである。
【0015】
(態様6) 帯状刃物用ステンレス鋼板を所定方向に送り出す搬送機構と、金型内の複数の加工ステージにより前記帯状刃物用ステンレス鋼板を順次送りながらプレス加工するプレス機構を備えるラベルカッターユニットに用いる刃体のプレス加工装置であって、前記プレス機構は、前記帯状刃物用ステンレス鋼板に刃型を成形する刃型打ち抜き加工ステージと、前記刃型打ち抜き加工ステージで形成された刃型に、放電加工により押圧面に不定形の凸面をランダムに形成したパンチをプレスすることで不定形の凹部がランダムに形成された粗面を成形する粗面加工ステージと、前記粗面加工ステージで不定形の凹部がランダムに形成された粗面を成形した刃型に、所定の角度で刃面を成形する刃付け加工ステージと、刃面を成形した刃型にソリを付けるソリ付け加工ステージと、を含むラベルカッターユニットに用いる刃体のプレス加工装置である。
刃面を成形した刃型にソリを付けることによりラベルカッターユニットの刃体として用いる場合に、可動刃と固定刃の摺接性が向上して切れ味が増すからである。
【発明の効果】
【0016】
本願発明は、ラベルカッターユニットに用いる刃体の刃先部に隣接する領域に不定形の凹部がランダムに形成された粗面を形成することで、非粘着性に優れるラベルカッターユニットを簡易かつ低コストで提供することである。また、その表面粗さがJIS B0601(2001)で定義される高低差(Rz)は、35~200μmとすることで、粘着剤を取り込む粘着剤溜りとしての効果と粗面を形成するプレス金型の耐久性を両立できる。また、固定刃及び可動刃の接触面積が減ることで摺動性が向上する効果もあり、刃体の摺接刃面とラベルシート材切断面との接触面積が減るため、刃体に付着する粘着剤の発生量を抑制できるからである。さらに、複数の金型からなる順送プレス加工によりにより、刃体への粗面成形と、剪断プレスによる刃面成形を連続して行うことができ、一貫した刃体の製造が可能となり生産コストが低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本願発明のラベルカッターユニットの実施態様の1つを示した斜視図である。
【
図2】本願発明のラベルカッターユニットの実施態様の1つを示した正面図及び断面図である。
【
図3】本願発明のラベルカッターユニットの刃体の摺接刃面に不定形の凹部がランダムに形成された粗面が粘着剤を取り込む効果を示した模式図である。
【
図4】摺接刃面に粗面を備えない刃体において、粘着剤が摺接刃面に滞留することを示す模式図である。
【
図5】本願発明のラベルカッターユニットに用いる刃体の1つの実施態様を示す写真及び縦断面図である。
【
図6】本願発明の刃体の摺接刃面に形成された粗面の平面写真及び3D画像である。
【
図7】本願発明のプレス加工金型のパンチの押圧面の平面写真及び3D画像である。
【
図8】本願発明の粗面の特性を説明する説明図である。
【
図9】本願発明の刃体の加工工程の1態様を示すフロー図である。
【
図10】本願発明の刃体の加工工程の他の態様を示すフロー図である。
【
図11】本願発明のプレス加工装置のプレス機構における金型の要部を示す縦断面図である。
【
図12】本願発明の刃型を打抜くイメージ図である。
【
図13】本願発明のラベルカッターユニットに用いる刃体を製造するため刃付け加工ステージの他の態様を示す縦断面図である。
【
図14】本願発明のラベルカッターユニットに用いる刃体を製造するためソリ付け加工ステージの1の態様を示す縦断面図である。
【
図15】本願発明の実施例における放電加工後のパンチの押圧面の形態を示す平面写真及び3D画像である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本願発明のラベルカッターユニット、ラベルカッターユニットに用いる刃体、刃体の製造方法、刃体の製造装置について、以下に図面を用いて説明する。
【0019】
(1)ラベルカッターユニット
本願発明のラベルカッターユニットは、相対する側面が摺接する可動刃と固定刃を備え、可動刃及び固定刃の剪断作用により粘着層を有するラベルシート材を切断するラベルカッターユニットである。可動刃及び固定刃は、いずれもその摺接刃面において、刃先部に隣接する領域に不定形の凹部がランダムに形成された粗面を備えることにより、粘着層を有するラベルシート材の切断時における可動刃及び固定刃の刃面に付着する粘着剤を粗面に取り込むことで切断不良を解消できることを特徴とするラベルカッターユニットである。
【0020】
図1は、本願発明のラベルカッターユニットの実施態様の1つを示した斜視図である。ラベルカッターユニット1は、いわゆるギロチン式で、直線状の刃先を有する固定刃2と、逆V字状の刃先を有し上下方向に可動する可動刃3で構成される。ギア・リンク等を介して、モータ等で可動刃3を駆動させて、可動刃3及び固定刃2の剪断作用により粘着層を有するラベルシート材4を切断する。
【0021】
図2は、本願発明のラベルカッターユニットの実施態様の1つを示した正面図及び断面図である。具体的には、(a)可動刃摺接面側から見た正面図、(b)固定刃摺接面側から見た正面図、(c)A-A´断面図である。固定刃2は、摺接刃面23において、刃先21に隣接する領域に不定形の凹部がランダムに形成された粗面22を備えている。同様に、可動刃3も、摺接刃面33において、刃先31に隣接する領域に不定形の凹部がランダムに形成された粗面32を備えている。可動刃3及び固定刃2の剪断作用により粘着層42を塗工した剥離フィルム41からなる粘着層を有するラベルシート材4を切断する。
【0022】
図3は、固定刃2及び可動刃3の摺接刃面に不定形の凹部がランダムに形成された粗面(22、32)が粘着剤43を粗面(22、32)内に取り込む効果について刃先部を拡大して示した模式図である。粘着剤43が粗面(22、23)の内部に取り込まれることで、固定刃2及び可動刃3の摺動性を阻害しない。
また、固定刃2及び可動刃3の摺接刃面に不定形の凹部がランダムに形成された粗面(22、32)が形成されることにより、固定刃2及び可動刃3の接触面積が減ることで摺動性が向上する。
一方、
図4は、摺接刃面に粗面を備えない固定刃2及び可動刃3において、粘着剤43が摺接刃面に滞留することを示す模式図である。粘着剤43が摺接刃面のストロークエンド部に滞留することで可動刃及び固定刃の摺動性を阻害する。
【0023】
(2)刃体
本願発明のラベルカッターユニットに用いる刃体は、刃物用ステンレス鋼を加工して成形され、摺接刃面において、刃先部に隣接する領域に不定形の凹部がランダムに形成された粗面を備える。
図5は、本願発明のラベルカッターユニットに用いる刃体2の1つの実施態様を示す写真及び縦断面図である。それぞれ、(a)全体の平面形態を示す写真、(b)刃先と刃先に隣接する領域に形成した不定形の凹部がランダムに形成された粗面の拡大写真、(c)刃先部の縦断面図である。
【0024】
刃体2に形成する粗面22は、刃先21に隣接する領域に摺接刃面23の幅方向全幅に渡って形成される。粗面22を摺接刃面23の幅方向全幅に渡って形成するのは、本願発明のラベルカッターユニットに用いる刃体2は、プレス加工により粗面22を成形するためプレスによる摺接刃面22の伸びを両端で開放できるからである。なお、プレス加工により生じた伸び分については、トリミング処理を行って端部を整えることができる。また、刃体2に形成する粗面22の範囲は、刃体2の大きさ及びプレス加工による転写率を考慮して適切に定めることが好ましい。刃体2の摺接刃面23に形成する粗面22の範囲が広いプレス圧が不均一となり粗面22を構成する不定形の連続した凹部の深さ、幅にバラつきが生じるからである。
【0025】
本願発明のラベルカッターユニットに用いる刃体2の刃先21は、後述する刃付け工程により、いわゆる剪断プレス加工により形成される。
図5(c)に示すように、刃先21には摺接刃面23側にエッジ部24が形成され、プレス加工によって切断された端面26は鋭角な端面角25を備える。端面角25は、切断精度及び加工精度を両立する観点から、60度以上80度未満が好ましい。
剪断プレス加工により得た破断面を刃先として利用したカッター刃は、人為的な切削研磨加工により得られるカッター刃に比べて強度が高い。これは、被加工材がダイとパンチによる剪断時の摺動による高圧な力により引き千切られ、破断面には材料内での塑性変形が生じて破断面の硬度が被加工材の硬度よりも高硬度となるからである。
また、カッター刃に必要な硬度を付与するために表面硬化処理を行うことができる。表面硬化処理としては、処理製品である鋼材の変態温度よりも低い500~610℃程度の低温で熱処理し、その鋼材中にN、C、O元素を浸透させて処理製品の表面を窒化鉄層(化合物層)として耐磨耗性等を向上させる軟窒化処理を好適に用いることができる。軟窒化処理としては、イソナイト処理(登録商標)のような塩浴軟窒化法が挙げられる。
【0026】
(3)粗面
本願発明の刃体(2、3)の刃先(21、31)隣接する領域に摺接刃面(23、33)の幅方向全幅に渡って形成された粗面(22、32)は、不定形の凹部がランダムに形成されたものである。
図6は、本願発明の刃体2の刃先21隣接する領域に摺接刃面23の幅方向全幅に渡って形成された粗面22を非接触3次元形状測定機(キーエンス製 VR3200)で計測したデータであり、それぞれ(a)平面写真(40倍)、(b)3D画像である。粗面22は不定形の凹部がランダムに形成されたものである。不定形の凹部がランダムに形成された粗面の表面粗さは、JIS B0601(2001)で定義される高低差(Rz)は、35~200μmである。
本願発明の粗面22は、プレス加工により金型のパンチの押圧面を転写して成形される。
【0027】
図7は、プレス加工金型のパンチの押圧面を非接触3次元形状測定機(キーエンス製 VR3200)で計測したデータであり、それぞれ(a)平面写真(40倍)、(b)3D画像である。不定形の凹部51及び凸部52がランダムに形成されている。パンチ押圧面の表面粗さは、JIS B0601(2001)で定義される高低差(Rz)は、35~200μmである。パンチの押圧面の不定形の凸部がランダムに形成されたパンチの押圧面は、放電加工により成形される。放電加工は、加工液中においてアーク放電を発生させ、電極形状に合わせてワーク表面の一部を溶融し、加工液の気化に伴う圧力によって溶融部分を除去することにより加工する方法である。
【0028】
本願発明において、粗面22をプレス加工により金型のパンチの押圧面を転写して成形したのは、部品交換時期や部品破損時に金型を即座に製作でき、また安価に製作できるからである。粗面22を不定形の凹部がランダムに形成された形態としたのは、転写加工時にパンチの押圧面と被成形材料との接触面積が小さく、被成形材料に引っ付きにくく、かつ剥がれやすいからである。
また、
図8に示すように、不定形とすることで、特定の形状の凹部(ディンプル)とした場合に比べて、製品を製作する過程としての加工面と、非粘着機能を果たすカッター刃としての機能面とのバランスを適切に保持することができるからである。また、放電加工により表面を荒らすことで、粘着防止剤のコーティング密着性が上がるからである。
【0029】
不定形の凹部がランダムに形成された粗面及び不定形の凸部がランダムに形成されたパンチの押圧面の表面粗さ(JIS B0601(2001)で定義される高低差(Rz))は、非接触3次元形状測定機(キーエンス製 VR3200)を用いて、以下の条件で測定した。
<測定条件>
傾き補正 なし
計測種別 粗さ
カットオフ λs 25μm,λc 8μm
終端効果の補正 有効
ダブルガウシアン OFF
基準長数 1
【0030】
(4)刃体の製造方法
本願発明のラベルカッターユニットに用いる刃体は、
図9に示すように、搬送機構で送り出された帯状刃物用ステンレス鋼板7から刃型63等を打ち抜く刃型打ち抜き加工(S101)工程、刃型63に粗面65を成形する粗面成形加工(S102)工程、ストッパ66でダイ62に保持された刃型63の先端をパンチ61で剪断して刃端面67を形成する刃付け加工(S103)工程である。また、
図10に示すように、刃型63にラベルカッターユニットに用いる刃体として適切な接圧をつけるために刃型63にソリを付けるソリ付け加工(S104)工程を付加することもできる。さらに、加工済みの刃体にラベルカッターユニットに用いる刃体に必要な硬度を付与するために表面硬化処理を行うことができる。
【0031】
(5)刃体のプレス加工装置
本願発明のラベルカッターユニットに用いる刃体を製造するためのプレス加工装置について説明する。
本願発明のプレス加工装置は、帯状刃物用ステンレス鋼板を所定方向に送り出す搬送機構と、金型内の複数の加工ステージにより前記帯状刃物用ステンレス鋼板を順次送りながらプレス加工するプレス機構を備えるラベルカッターユニットに用いる刃体のプレス加工装置である。プレス機構は、帯状刃物用ステンレス鋼板に刃型を成形する刃型打ち抜き加工ステージと、刃型打ち抜き加工ステージで形成された刃型に、放電加工により押圧面に不定形の凸面をランダムに形成したパンチをプレスすることで不定形の凹部がランダムに形成された粗面を成形する粗面加工ステージと、粗面加工ステージで不定形の凹部がランダムに形成された粗面を成形した刃型に、所定の角度で刃面を成形する刃付け加工ステージと、を含むラベルカッターユニットに用いる刃体のプレス加工装置である。
【0032】
図11は、本願発明のラベルカッターユニットに用いる刃体を製造するためのプレス加工装置6のプレス機構における金型内の複数の加工ステージの要部(パンチ61、ダイス62、ストッパ66)及び被加工材(帯状刃物用ステンレス鋼板7及び刃型63)を示す縦断面図である。以下に各加工ステージの役割について説明する。
【0033】
(5-1)刃型打抜き加工ステージ
刃型打抜き加工ステージは、搬送機構(図示せず)で送り出された帯状刃物用ステンレス鋼板7から刃型63等を打ち抜く役割を担う。下金型のダイ62に支持された帯状刃物用ステンレス鋼板7は、上金型のパンチ61により刃型63を打ち抜かれる。
図12は、帯状刃物用ステンレス鋼板7からパイロット71、ブリッジ72、刃型73、キャリア74を打ち抜くイメージ図である。ここで、パイロット71とは、フレームの位置決め用ガイド孔であり、ブリッジ72は、刃型73とキャリア74を繋ぎ、刃型73を保持する役割を担う。
【0034】
(5-2)粗面成形加工金型
粗面加工ステージは、刃型63に粗面65を形成する役割を担う。上金型のパンチ61には、その押圧面に放電加工により形成した不定形のランダムな凸部64を有し、押圧転写によって刃型63に粗面65を形成する。放電加工により形成された不定形のランダムな凸部64は、粗面65に形成される凹部と同程度以上の表面粗さである。
【0035】
(5-3)刃付け加工ステージ
刃付け加工ステージは、上金型にストッパ66とパンチ61を備え、パンチ61は傾斜角を付けて配置されている。傾斜角は、刃型63の刃先に付ける刃面角度と一致するように設定され、刃物性能及び加工精度を両立する観点から、好ましくは60度以上80度未満に設定されている。上金型のストッパ66は、下金型のダイ62の上方に対向して配置され、パンチ61の加工時(剪断加工時)に刃型63をダイ62に押さえつけて固定する役割を担う。パンチ61は、ストッパ66とは独立して昇降し、ダイ62とストッパ66で固定された刃型63に向けて下降し、刃型63に刃端面67を形成する役割を担う。
【0036】
図13は、本願発明のラベルカッターユニットに用いる刃体を製造するためのプレス加工装置で採用する刃付け加工ステージの他の態様を示す縦断面図である。上金型にストッパ66とパンチ61を備え、下金型はダイ62を備える。上金型のストッパ67及び下金型のダイ62は、いずれも傾斜角がある。傾斜角は、刃型63の刃先に付ける刃面角度と一致するように設定され、刃物性能及び加工精度を両立する観点から、好ましくは60度以上80度未満に設定されている。上金型のストッパ66は、下金型のダイ62の上方に対向して配置され、パンチ61の加工時(剪断加工時)に刃型63をダイ62に押さえつけて固定する役割を担う。パンチ61は、ストッパ66とは独立して昇降し、ダイ62とストッパ66で固定された刃型63に向けて下降し、刃型63に刃端面67を形成する役割を担う。
なお、本態様の刃付け加工ステージでは、前段階として、刃型63に傾斜をつける役割を担う曲げ加工ステージ、刃型63を水平に戻す役割を担う曲げ戻しステージを配置する。
【0037】
(5-4)ソリ付け加工ステージ
本願発明のプレス加工装置は、帯状刃物用ステンレス鋼板を所定方向に送り出す搬送機構と、金型内の複数の加工ステージにより前記帯状刃物用ステンレス鋼板を順次送りながらプレス加工するプレス機構を備えるラベルカッターユニットに用いる刃体のプレス加工装置である。プレス機構は、帯状刃物用ステンレス鋼板に刃型を成形する刃型打ち抜き加工ステージと、刃型打ち抜き加工ステージで形成された刃型に、放電加工により押圧面に不定形の凸面をランダムに形成したパンチをプレスすることで不定形の凹部がランダムに形成された粗面を成形する粗面加工ステージと、粗面加工ステージで不定形の凹部がランダムに形成された粗面を成形した刃型に、所定の角度で刃面を成形する刃付け加工ステージと、刃面を成形した刃型にソリを付けるソリ付け加工ステージと、を含むラベルカッターユニットに用いる刃体のプレス加工装置である。
図14は、ソリ付け加工ステージを示す縦断面図である。剪断加工により刃端面67を形成した刃型63に所定のソリを付けて、ラベルカッターユニットに用いる刃体(固定刃及び可動刃)として摺接して切断する機能を付与する役割を担う。上金型の押し付け治具69及び下金型の支持治具68で構成される。下金型の支持治具68は、刃型63の両端を支持する。
【実施例0038】
次に本願発明の効果を奏する実施態様を実施例として示す。また、その試験結果を表1に示す。
【0039】
【0040】
<実施例1>
(1)粗面成形金型パンチの製作
粗面成形金型パンチの押圧面に以下の条件で、放電加工により不定形の凹凸面を作製した。
放電加工は、放電加工機(ソディック製 FS-A50)を用い、放電加工条件(C290)で行った。また、処理後のパンチの押圧面の表面粗さ(JIS B0601(2001)で定義される高低差(Rz))を非接触3次元形状測定機(キーエンス製 VR3200)で計測した。表面粗さ(Rz)は、260μmであった。
図15(a)は、放電加工後の押圧面の写真であり、
図15(b)は、3D画像である。
【0041】
(2)刃体の製作
刃物用ステンレス鋼板を搬送機構により、金型内に刃型加工ステージ、粗面成形加工ステージ、刃面付け加工ステージを含むプレス機構に送り出し、以下のプレス加工条件で刃体(固定刃及び可動刃)を製作した。
<プレス加工条件>
被成形素材 刃物用ステンレス鋼
パンチ、ダイス材質 SKD11
回転数 45spm
潤滑剤 なし
温度 常温
加工加重 850kN
【0042】
(3)刃体の粗面評価
刃体の粗面の表面粗さ(JIS B0601(2001)で定義される高低差(Rz))を非接触3次元形状測定機(キーエンス製 VR3200)で計測した。表面粗さ(Rz)は、200μmであった。
【0043】
(4)刃体の非粘着性評価
製作した粗面を有する刃体を固定刃及び可動刃として組み込んだラベルカッターユニットを製作し、以下の条件で、刃体の非粘着性を評価した。粘着物による固定刃及び可動刃の摺動性に問題はなく、非粘着性評価は〇であった。
<評価条件>
ライナーレスラベル 用紙幅80mm,用紙厚み100μm,強粘着タイプ
ライナースラベルと刃体の配置 ラーナースラベル粘着面側に可動刃
ライナースラベル排出方向 水平方向
刃体駆動用モータ 電圧 24V,初期電流 1~1.2A
切断条件 間隔 1.5秒/cut,切断長 5mm(パーシャルカット)
切断回数 30万回
【0044】
<実施例2>
(1)粗面成形金型パンチの製作
粗面成形金型パンチの押圧面に以下の条件で、放電加工により不定形の凹凸面を作製した。
放電加工は、放電加工機(ソディック製 FS-A50)を用い、放電加工条件(C160)で行った。また、処理後のパンチの押圧面の表面粗さ(JIS B0601(2001)で定義される高低差(Rz))を非接触3次元形状測定機(キーエンス製 VR3200)で計測した。表面粗さ(Rz)は、156μmであった。
図15(c)は、放電加工後の押圧面の写真であり、
図15(d)は、3D画像である。
【0045】
(2)刃体の製作
実施例1と同様の条件で行った。
【0046】
(2)刃体の製作
実施例1と同様の条件で行った。
【0047】
(3)刃体の粗面評価
刃体の粗面の表面粗さ(JIS B0601(2001)で定義される高低差(Rz))を非接触3次元形状測定機(キーエンス製 VR3200)で計測した。表面粗さ(Rz)は、98μmであった。
【0048】
(4)刃体の非粘着性評価
製作した粗面を有する刃体を固定刃及び可動刃として組み込んだラベルカッターユニットを製作し、実施例1と同様の条件で、刃体の非粘着性を評価した。粘着物による固定刃及び可動刃の摺動性に問題はなく、非粘着性評価は〇であった。
【0049】
<実施例3>
(1)粗面成形金型パンチの製作
粗面成形金型パンチの押圧面に以下の条件で、放電加工により不定形の凹凸面を作製した。
放電加工は、放電加工機(ソディック製 FS-A50)を用い、放電加工条件(C120)で行った。また、処理後のパンチの押圧面の表面粗さ(JIS B0601(2001)で定義される高低差(Rz))を非接触3次元形状測定機(キーエンス製 VR3200)で計測した。表面粗さ(Rz)は、35μmであった。
図15(e)は、放電加工後の押圧面の写真であり、
図15(f)は、3D画像である。
【0050】
(2)刃体の製作
実施例1と同様の条件で行った。
【0051】
(2)刃体の製作
実施例1と同様の条件で行った。
【0052】
(3)刃体の粗面評価
刃体の粗面の表面粗さ(JIS B0601(2001)で定義される高低差(Rz))を非接触3次元形状測定機(キーエンス製 VR3200)で計測した。表面粗さ(Rz)は、35μmであった。
【0053】
(4)刃体の非粘着性評価
製作した粗面を有する刃体を固定刃及び可動刃として組み込んだラベルカッターユニットを製作し、実施例1と同様の条件で、刃体の非粘着性を評価した。粘着物による固定刃及び可動刃の摺動性に問題はなく、非粘着性評価は〇であった。
【0054】
<比較例1>
粗面加工ステージとして、押圧面を放電加工処理をしないパンチを用いたことを除き、実施例1と同等の条件で刃体を製作し、実施例1と同様の評価を行った。
刃体の粗面の表面粗さ(JIS B0601(2001)で定義される高低差(Rz))で計測した表面粗さ(Rz)は、8μmであった。また、粘着物により固定刃及び可動刃の摺動性に問題があり、非粘着性評価は×であった。
相対する側面が摺接する可動刃と固定刃を備え、可動刃及び固定刃の剪断作用により粘着層を有するラベルシート材を切断するラベルカッターユニットであって、前記可動刃及び固定刃は、いずれもその摺接する刃面において、刃先部に隣接する領域に表面粗さがJIS B0601(2001)で定義される高低差(Rz)が35~200μmである歪曲した不定形の連続した凹部がランダムに形成された粗面を備えることを特徴とするラベルカッターユニット。
搬送機構で送り出された帯状刃物用ステンレス鋼板を、金型内の複数の加工ステージに順次送りながらプレス加工するプレス機構を備えるラベルカッターユニットに用いる刃体の製造方法であって、
前記プレス機構は、前記帯状刃物用ステンレス鋼板に刃型を成形する刃型打ち抜き工程と、
前記刃型打ち抜き工程で形成された刃型に、表面粗さがJIS B0601(2001)で定義される高低差(Rz)が67~260μmである歪曲した不定形の連続した凸面を放電加工により押圧面にランダムに形成したパンチをプレスすることで、表面粗さがJIS B0601(2001)で定義される高低差(Rz)が35~200μmである歪曲した不定形の連続した凹部がランダムに形成された粗面を成形する粗面加工工程と、
前記粗面加工工程で表面粗さがJIS B0601(2001)で定義される高低差(Rz)が35~200μmである歪曲した不定形の連続した凹部がランダムに形成された粗面を成形した刃型に、刃面に対してパンチを所定の傾斜角で配置して刃面先端に前記傾斜角と一致する刃面角度を成形する傾斜剪断加工法による刃付け加工工程と、
を含むラベルカッターユニットに用いる刃体の製造方法。
搬送機構で送り出された帯状刃物用ステンレス鋼板を、金型内の複数の加工ステージに順次送りながらプレス加工するプレス機構を備えるラベルカッターユニットに用いる刃体の製造方法であって、
前記プレス機構は、前記帯状刃物用ステンレス鋼板に刃型を成形する刃型打ち抜き工程と、
前記刃型打ち抜き工程で形成された刃型に、表面粗さがJIS B0601(2001)で定義される高低差(Rz)が67~260μmである歪曲した不定形の連続した凸面を放電加工により押圧面にランダムに形成したパンチをプレスすることで、表面粗さがJIS B0601(2001)で定義される高低差(Rz)が35~200μmである歪曲した不定形の連続した凹部がランダムに形成された粗面を成形する粗面加工工程と、
前記粗面加工工程で表面粗さがJIS B0601(2001)で定義される高低差(Rz)が35~200μmである歪曲した不定形の連続した凹部がランダムに形成された粗面を成形した刃型に、刃面に対してパンチを所定の傾斜角で配置して刃面先端に前記傾斜角と一致する刃面角度を成形する傾斜剪断加工法による刃付け加工工程と、
刃面を成形した刃型にソリを付けるソリ付け加工工程と、
を含むラベルカッターユニットに用いる刃体の製造方法。
帯状刃物用ステンレス鋼板を所定方向に送り出す搬送機構と、金型内の複数の加工ステージにより前記帯状刃物用ステンレス鋼板を順次送りながらプレス加工するプレス機構を備えるラベルカッターユニットに用いる刃体のプレス加工装置であって、
前記プレス機構は、前記帯状刃物用ステンレス鋼板に刃型を成形する刃型打ち抜き加工ステージと、
前記刃型打ち抜き加工ステージで形成された刃型に、表面粗さがJIS B0601(2001)で定義される高低差(Rz)が67~260μmである歪曲した不定形の連続した凸面を放電加工により押圧面にランダムに形成したパンチをプレスすることで、表面粗さがJIS B0601(2001)で定義される高低差(Rz)が35~200μmである歪曲した不定形の連続した凹部がランダムに形成された粗面を成形する粗面加工ステージと、
前記粗面加工工程で表面粗さがJIS B0601(2001)で定義される高低差(Rz)が35~200μmである歪曲した不定形の連続した凹部がランダムに形成された粗面を成形した刃型に、刃面に対してパンチを所定の傾斜角で配置して刃面先端に前記傾斜角と一致する刃面角度を成形する傾斜剪断加工法による刃付け加工ステージと、
を含むラベルカッターユニットに用いる刃体のプレス加工装置。
帯状刃物用ステンレス鋼板を所定方向に送り出す搬送機構と、金型内の複数の加工ステージにより前記帯状刃物用ステンレス鋼板を順次送りながらプレス加工するプレス機構を備えるラベルカッターユニットに用いる刃体のプレス加工装置であって、
前記プレス機構は、前記帯状刃物用ステンレス鋼板に刃型を成形する刃型打ち抜き加工ステージと、
前記刃型打ち抜き加工ステージで形成された刃型に、表面粗さがJIS B0601(2001)で定義される高低差(Rz)が67~260μmである歪曲した不定形の連続した凸面を放電加工により押圧面にランダムに形成したパンチをプレスすることで、表面粗さがJIS B0601(2001)で定義される高低差(Rz)が35~200μmである歪曲した不定形の連続した凹部がランダムに形成された粗面を成形する粗面加工ステージと、
前記粗面加工工程で表面粗さがJIS B0601(2001)で定義される高低差(Rz)が35~200μmである歪曲した不定形の連続した凹部がランダムに形成された粗面を成形した刃型に、刃面に対してパンチを所定の傾斜角で配置して刃面先端に前記傾斜角と一致する刃面角度を成形する傾斜剪断加工法による刃付け加工ステージと、
刃面を成形した刃型にソリを付けるソリ付け加工ステージと、
を含むラベルカッターユニットに用いる刃体のプレス加工装置。
(態様1) 相対する側面が摺接する可動刃と固定刃を備え、可動刃及び固定刃の剪断作用により粘着層を有するラベルシート材を切断するラベルカッターユニットであって、前記可動刃及び固定刃は、いずれもその摺接する刃面において、刃先部に隣接する領域に表面粗さがJIS B0601(2001)で定義される高低差(Rz)が35~200μmである歪曲した不定形の連続した凹部がランダムに形成された粗面を備えることを特徴とするラベルカッターユニットである。
可動刃及び固定刃(以下、それぞれを「刃体」という。)の摺接する刃面(以下、「摺接刃面」という。)において、刃先部に隣接する領域に不定形の凹部がランダムに形成された粗面が、粘着層を有するラベルシート材を切断した場合に、刃体の摺接刃面に付着する粘着剤を取り込む粘着剤溜りとして作用するためラベルカッターユニットの連続的可動を可能にするからである。また、刃体の摺接刃面とラベルシート材切断面との接触面積が減るため、刃体に付着する粘着剤の発生量を抑制できるからである。
歪曲した不定形の連続した凹部からなる粗面の表面粗さが、JIS B0601(2001)で定義される高低差(Rz)は、35~200μmである場合に、粘着剤を取り込む粘着剤溜りとしての効果と粗面を形成するプレス金型の耐久性を両立させる観点から好適だからである。また、固定刃及び可動刃の接触面積が減ることで摺動性が向上する効果もあり、刃体の摺接刃面とラベルシート材切断面との接触面積が減るため、刃体に付着する粘着剤の発生量を抑制できるからである。