(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114970
(43)【公開日】2022-08-08
(54)【発明の名称】玩具部品、及び人形玩具
(51)【国際特許分類】
A63H 3/36 20060101AFI20220801BHJP
A63H 3/04 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
A63H3/36 D
A63H3/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021011485
(22)【出願日】2021-01-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000135748
【氏名又は名称】株式会社バンダイ
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】諸岡 由輔
(72)【発明者】
【氏名】大塚 稜介
(72)【発明者】
【氏名】中元 悠太
【テーマコード(参考)】
2C150
【Fターム(参考)】
2C150CA01
2C150DC03
2C150EH08
(57)【要約】
【課題】他の模型部品の回動の邪魔にならないように変形が可能な模型部品を提供する。
【解決手段】玩具部品であって、第1の部材と、前記第1の部材を回動可能に支持する第2の部材と、前記第1の部材及び前記第2の部材と係合する第3の部材とを含み、前記第1の部材は、該第1の部材の第1の姿勢と比較して、前記回動により、前記第3の部材と係合する側の前記第1の部材の部分が下側に位置する第2の姿勢と、前記部分が上側に位置する第3の姿勢と、を取り得るように構成され、前記第3の部材は、前記第1の部材が前記第2の姿勢を取っている場合において、前記第1の部材が前記第1の姿勢を取っている場合の前記第3の部材よりも、前記第3の部材の上部側が前方に突出するように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
玩具部品であって、
第1の部材と、
前記第1の部材を回動可能に支持する第2の部材と、
前記第1の部材及び前記第2の部材と係合する第3の部材と
を含み、
前記第1の部材は、該第1の部材の第1の姿勢と比較して、前記回動により、前記第3の部材と係合する側の前記第1の部材の部分が下側に位置する第2の姿勢と、前記部分が上側に位置する第3の姿勢と、を取り得るように構成され、
前記第3の部材は、
前記第1の部材が前記第2の姿勢を取っている場合において、前記第1の部材が前記第1の姿勢を取っている場合の前記第3の部材よりも、前記第3の部材の上部側が前方に突出し、
前記第1の部材が前記第3の姿勢を取っている場合において、前記第1の部材が前記第1の姿勢を取っている場合の前記第3の部材よりも上側に位置する
ように構成されている、玩具部品。
【請求項2】
前記第3の部材は、前記第1の部材の係合部材と係合する切り欠き部と、前記第2の部材の溝部と係合する突起とを有し、
前記第1の部材が前記第2の姿勢を取っている場合において、前記係合部材は前記切り欠き部の下端側に位置すると共に、前記突起は前記溝部の下端側に位置し、
前記第1の部材が前記第3の姿勢を取っている場合において、前記係合部材は前記切り欠き部の上端側に位置すると共に、前記突起は前記溝部の上端側に位置する、請求項1に記載の玩具部品。
【請求項3】
前記第1の部材が前記第1の姿勢から前記第2の姿勢に変化する場合に、前記第3の部材が前記突起を中心として回動することにより、前記第3の部材の上部側が前方に突出する、請求項2に記載の玩具部品。
【請求項4】
前記第1の部材が前記第1の姿勢から前記第3の姿勢に変化する場合に、前記第3の部材は前記係合部材により上側に引き上げられると共に、前記突起が前記溝部に沿って移動することにより、前記第1の部材が前記第1の姿勢を取っている場合の前記第3の部材の位置よりも上側に移動する、請求項2又は3に記載の玩具部品。
【請求項5】
前記第1の部材が前記第3の姿勢を取っている場合に、前記第1の部材と前記第2の部材との間に生ずる隙間は玩具部品の外側から視認されないように前記第3の部材により遮蔽される、請求項1から4のいずれか1項に記載の玩具部品。
【請求項6】
前記第1の部材は、他の玩具部品を回動可能に接続するための開口を有し、
前記第1の部材が前記第2の姿勢を取っている場合に、前記第3の部材の上部側は、前記開口を介して前記第1の部材に接続された前記他の玩具部品の回動を妨げない位置まで前方に突出している、請求項1から5のいずれか1項に記載の玩具部品。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の玩具部品を有する人形玩具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、玩具部品、及び人形玩具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、人形玩具の胴体部、腕部、脚部等の各部位に関節構造を設けることが記載されている。ユーザは、このような人形玩具を所望の姿勢にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
人形玩具においてある模型部品と他の模型部品とが回動可能に接続されていた場合に、他の模型部品を回動させようとするとある模型部品が邪魔になることがある。
【0005】
本発明は、他の模型部品の回動の邪魔にならないように変形が可能な模型部品、及び、当該模型部品を用いた人形玩具を提供することを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、玩具部品であって、
第1の部材と、
前記第1の部材を回動可能に支持する第2の部材と、
前記第1の部材及び前記第2の部材と係合する第3の部材と
を含み、
前記第1の部材は、該第1の部材の第1の姿勢と比較して、前記回動により、前記第3の部材と係合する側の前記第1の部材の部分が下側に位置する第2の姿勢と、前記部分が上側に位置する第3の姿勢と、を取り得るように構成され、
前記第3の部材は、
前記第1の部材が前記第2の姿勢を取っている場合において、前記第1の部材が前記第1の姿勢を取っている場合の前記第3の部材よりも、前記第3の部材の上部側が前方に突出し、
前記第1の部材が前記第3の姿勢を取っている場合において、前記第1の部材が前記第1の姿勢を取っている場合の前記第3の部材よりも上側に位置するように構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、他の模型部品の回動の邪魔にならないように変形が可能な模型部品、及び、当該模型部品を用いた人形玩具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に対応する人形玩具の一例を示す図。
【
図2】実施形態に対応する人形玩具の腰部の外観を示す図。
【
図3】実施形態に対応する人形玩具の腰部のパーツの外観を示す図。
【
図4】実施形態に対応する人形玩具の腰部の他のパーツの外観を示す図。
【
図5】実施形態に対応する人形玩具の腰部の部分的な断面構造を示す図。
【
図6】実施形態に対応する人形玩具の腰部の構造により得られる効果を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。また、各図において、紙面に対する上下左右表裏方向を、本実施形態における部品(またはパーツ)の上下左右表裏方向として、本文中の説明の際に用いることとする。
【0010】
まず、本実施形態に対応する人形玩具の外観の一例を
図1に示す。
図1は、実施形態に係る人形玩具100の外観を簡略化して示す模式図である。人形玩具100は、頭部110、胴体部111、腕部112、腰部113、及び、脚部114の各模型部品を有し、これらが結合されて構成されている。個々の部位110~114の少なくとも一部は、隣接する部位に対して回動(或いは揺動)可能に支持される。例えば、頭部110は胴体部111に対して回動可能に支持され、腕部112は胴体部111に対して回動、前傾、後傾が可能に支持される。また、胴体部111は、腰部113に対して回動可能に支持される。このようにして人形玩具100の各部位には関節構造が設けられており、ユーザ(例えば、人形玩具1の所有者)は、このような人形玩具100を所望の姿勢にすることができる。
図1では、省略しているが、人形玩具100には1つ以上の装飾部品を取り付けることができる。装飾部品も本実施形態で説明する人形玩具の模型部品と同様に構成することができる。装飾部品には、例えば、剣や銃のような武器や、盾のような防具等がある。
【0011】
尚、本明細書においては、各部位の位置関係を説明するのに際して、前(前方)、後(後方)、左(左側方)、右(右側方)、上(上方)、下(下方)等と記載する場合があるが、これらの表現は人形玩具1を基準とした相対的なものである。例えば、前は人形玩具100正面側に対応し、後は人形玩具100背面側に対応する。
【0012】
本実施形態において、人形玩具100を構成する各模型部品は、ABS等の熱可塑性樹脂により構成することができる。また、ABS以外の他の材質(ポリエチレン、ポリスチレン、熱硬化性樹脂等)を用いてもよい。更には、各模型部品をABS等で構成した内部パーツと、当該内部パーツの外側を覆う金属材料で構成された外部パーツとで構成してもよい。外部パーツ同士は基本的には直接結合されず、内部パーツに対して外部パーツを結合することにより、同一の内部パーツを介して複数の外部パーツの相対的位置が決定される。外部パーツ同士を結合する場合には、焼結処理により予め結合されていてもよい。外部パーツは、例えば、チタニウム、アルミニウム、希土類イットリアを混合した合金で構成することができる。但し、これに限られるものではなく、組み合わせの少なくとも一部が異なる、或いは、全てが異なる他の種類の合金であってもよいし、或いは、アルミニウムのような単一金属であってもよい。
【0013】
次に
図2を参照して、腰部113の模型部品の具体的な構成例を説明する。
図2(A)は、腰部113の斜視図を示す。腰部113は複数の部材から構成されており、以下では本実施形態の構成に関わる部材について説明する。まず、部材200は、フロントスカートと呼ばれ、人形玩具100の腰部の正面に位置する。部材201はフロントスカート200を構成する部材であって、部材210と連結し、部材210の回動に応じてフロントスカート200の位置や姿勢を制御する。
【0014】
部材210は、腰部113と胴体部111とを連結する部材であって、開口211は、胴体部111の下端に設けられた突起と嵌合して胴体部111を腰部113に対して回動可能に保持することができる。また、部材210は後述する機構により、胴体部111を前傾或いは後傾させるように回動する。部材210の回動により胴体部111が前傾する場合、フロントスカート200は、前傾の妨げとならないよう上部側が斜め下に突き出すような姿勢となる。また、部材210の回動により胴体部111が後傾する場合、フロントスカート200は後傾により腰部113と胴体部111との間に生ずる隙間を隠すように上側に引き上げられる。
【0015】
図2(B)は、腰部113を上側から見た平面図であり、
図2(C)は腰部113を下側から見た底面図である。
図2(C)には、
図2(A)では不図示の部材220が含まれている。部材220はフロントスカート200の部材202と係合する突起部221を有する。フロントスカート200の移動は、突起部221に形成されたガイド溝により規制される。
【0016】
次に
図3を参照して、フロントスカート200の構造について説明する。
図3(A)はフロントスカート200の正面側の斜視図である。
図3(B)はフロントスカート200の背面側の斜視図である。
図3(C)は、
図3(A)のB-B'平面の断面図である。
【0017】
図3(A)から
図3(C)に示すように、フロントスカート200の部材201はフロントスカート200の表面から内側に貫通しており、フロントスカート200の移動を規制するための切り欠き部204が形成されている。切り欠き部204は部材210の先端の突起部と係合し、部材210の傾きに応じて切り欠き部204における突起部の位置が変更する。これにより、フロントスカート200は、
図2(A)に示すような正面の位置から部材210の姿勢に応じた位置に移動される。
【0018】
フロントスカート200の背面側には部材220の突起部221と係合するための部材202が形成されている。部材202は、突起部221を両側から挟み込むように形成されており、突起部221との接触面には突起(凸部)203が形成されている。突起203は突起部221に形成された後述のガイド溝に嵌るように配置されており、これによりフロントスカート200の移動方向が規制される。また、部材210の姿勢の変化に応じてフロントスカート200の位置が変更されるが、その際に突起203を回動軸としてフロントスカート200を回動させることができる。
【0019】
次に
図4を参照して部材210及び部材220の構成について説明する。
図4(A)は部材210を上側から見た平面図である。部材210には、胴体部111の突起部と嵌合する開口211、フロントスカート200の部材201の切り欠き部204と係合する係合部材212が形成されている。また、軸213、214を介して左右の部材215、216が結合されて一体として形成されている。軸213、214は、部材210を回動可能に支持するように部材220と結合するために用いられる。部材216、217は、腰部113の他のスカート部材を結合するための複数の結合部を備えている。
【0020】
図4(B)は、部材220の構成を示す斜視図である。部材220は、フロントスカート200の部材202と係合するための突起部221を有する。当該突起部221には部材202の突起203をガイドするためのガイド溝222が形成されている。また、部材210の軸213、214と接続して部材210を回動可能に支持するための軸受け部223、224が形成されている。また、部材210の前傾を妨げないようにするために傾斜部225が形成されている。
【0021】
次に
図5を参照して、部材200、210、220の動作を説明する。
図5は
図2(B)のA-A'平面の断面図である。
図5(A)は、部材210が前傾も後傾もしていない平常時の状態を示す。このときのフロントスカート200の位置を基準位置とする。また、部材210の姿勢を第1の姿勢という。
【0022】
図5(B)は、部材210が前傾した第2の姿勢における状態を示す図である。第2の姿勢においては第1の姿勢と比較して係合部材212が下側に位置することとなる。このとき、部材210は軸213、214を中心として前方部分が下がり、後方部分が上がるように回動する。回動は部材210の前側のいずれかの部分が部材220と接触する位置において停止される。これにより部材210の先端部が下がり、それに応じて係合部材212は切り欠き部204の下端位置にまで下がる。またこのとき、フロントスカート200の下側は部材202の突起203がガイド溝222の下端に達しているおり、これ以上下側には移動できず、突起203を中心として人形玩具100の正面側にフロントスカート200の上部側が突き出す(突出する)ように回動する。この動作により、人形玩具100の正面側に突き出したフロントスカート200の上部側は、人形玩具100の前傾姿勢において部材210と嵌合した胴体部111の回動を妨げないようにすることができる。
【0023】
次に、
図5(C)は、部材210が後傾した第3の姿勢における状態を示す図である。第3の姿勢においては第1の姿勢と比較して係合部材212が上側に位置することとなる。このとき、部材210は軸213、214を中心として前方部分が上がり、後方部分が下がるように回動する。回動は部材210の後ろ側の端部が部材220と接触する位置において停止される。これにより部材210の先端部が上がり、それに応じて係合部材212は切り欠き部204の上端まで到達する。これによりフロントスカート200は上側に引き上げられ、フロントスカート200の下側は突起203がガイド溝222に沿って上昇する。ガイド溝222は部材220に対して平行に溝が形成されているので、フロントスカート200は
図5(B)のように正面側に突き出すことなく、
図5(A)の基準位置から部材220と平行に上方向に移動する。この動作により、
図5(C)の点線で囲んだ領域501のような隙間を人形玩具100の正面の任意の視点位置から見えないように遮蔽することができる。
【0024】
図6は、フロントスカート200の回避動作の有無の胴体部111の回動に対する影響を説明するための図である。
図6(A)においては、本実施形態の構成とは異なり人形玩具100が前傾姿勢を取った場合であってもフロントスカート200の位置が変わらない場合を示している。この場合には腰部113の脇腹部分に相当する部材の突起がフロントスカート200に引っかかって回動が規制されてしまう。これに対し
図6(B)は、上述の本実施形態の構成を採用することによりフロントスカート200の上部側が人形玩具100の正面側に突き出すので、腰部113の脇腹部分に相当する部材の突起がフロントスカート200に引っかかって回動が規制されることがない。
【0025】
このように本実施形態に対応する構成においては人形玩具100の姿勢に応じて腰部の部材の位置・姿勢が変わるため、他の部材の回動を規制する虞を低減することができる。また、人形玩具100の姿勢の変化によって生じた隙間を覆うことができるので、不自然な隙間が視認されないようにすることができる。
【0026】
上記の実施形態においては、人形玩具100の正面側の部材(フロントスカート200)について、人形玩具100の姿勢に応じて配置を変える構成について説明したが、人形玩具の背面側にも同様の部材(リアスカート)を配置して部材210の傾きに応じてフロントスカート200と同様に動作させてもよい。例えば、部材210が前傾した場合には
図5(C)に示すフロントスカート200のように、リアスカートが上側に移動して、部材210と部材220との間の隙間を遮蔽するようにしてもよい。また、部材210が後傾した場合には
図5(B)に示すフロントスカート200のように、リアスカートの上部側が人形玩具100の背面側に突き出して、胴体部111の回動を妨げないようにしてもよい。
【0027】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。