IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

2022-114977配管接続具及びこれを用いた配管設備並びに溶解炉設備
<>
  • -配管接続具及びこれを用いた配管設備並びに溶解炉設備 図1
  • -配管接続具及びこれを用いた配管設備並びに溶解炉設備 図2
  • -配管接続具及びこれを用いた配管設備並びに溶解炉設備 図3
  • -配管接続具及びこれを用いた配管設備並びに溶解炉設備 図4
  • -配管接続具及びこれを用いた配管設備並びに溶解炉設備 図5
  • -配管接続具及びこれを用いた配管設備並びに溶解炉設備 図6
  • -配管接続具及びこれを用いた配管設備並びに溶解炉設備 図7
  • -配管接続具及びこれを用いた配管設備並びに溶解炉設備 図8
  • -配管接続具及びこれを用いた配管設備並びに溶解炉設備 図9
  • -配管接続具及びこれを用いた配管設備並びに溶解炉設備 図10
  • -配管接続具及びこれを用いた配管設備並びに溶解炉設備 図11
  • -配管接続具及びこれを用いた配管設備並びに溶解炉設備 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114977
(43)【公開日】2022-08-08
(54)【発明の名称】配管接続具及びこれを用いた配管設備並びに溶解炉設備
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/02 20060101AFI20220801BHJP
   F16L 21/00 20060101ALI20220801BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20220801BHJP
   F27D 17/00 20060101ALI20220801BHJP
   F27D 19/00 20060101ALI20220801BHJP
   F27B 14/08 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
F24F13/02 A
F16L21/00 C
F24F7/06 B
F27D17/00 105G
F27D19/00 Z
F27B14/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021011495
(22)【出願日】2021-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095223
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 章三
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(72)【発明者】
【氏名】杉本 真代
【テーマコード(参考)】
3L058
3L080
4K046
4K056
【Fターム(参考)】
3L058BE02
3L058BF09
3L058BG01
3L080AA03
3L080AB02
4K046AA01
4K046AA03
4K046BA00
4K046CD02
4K046CD04
4K046EA02
4K056AA05
4K056BA03
4K056BA06
4K056BA07
4K056BB07
4K056BB08
4K056CA01
4K056DB12
4K056DC05
4K056FA08
(57)【要約】
【課題】簡単な構成で、配管端部から導入される気流の風速を容易に調整可能とする。
【解決手段】配管設備10は、配管4と、配管4の端部に接続される配管接続具1と、配管接続具1の他端部に接続される被接続部品5と、を備え、配管接続具1は、円形断面の中心線方向両端が開口し、少なくとも一端が配管4の端部に接続されると共に他端が配管4以外の被接続部品5に接続される円筒状管材2と、円筒状管材2の周壁に中心線方向に沿って延びるように開口する一若しくは複数のスリット3と、を備え、円筒状管材2と配管4又は被接続部品5との間に、両者の接続部領域を調整可能とし、スリット3の開口面積を可変調整する調整手段6を設けるようにしたものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形断面の中心線方向両端が開口し、少なくとも一端が配管の端部に接続されると共に他端が前記配管以外の被接続部品に接続される円筒状管材と、
前記円筒状管材の周壁に中心線方向に沿って延びるように開口する一若しくは複数のスリットと、を備え、
前記円筒状管材と前記配管又は前記被接続部品との間の接続部領域を調整可能とし、前記スリットの開口面積を可変調整することを特徴とする配管接続具。
【請求項2】
配管と、前記配管の端部に接続される配管接続具と、
前記配管接続具の他端部に接続される被接続部品と、を備えた配管設備であって、
前記配管接続具は、円形断面の中心線方向両端が開口し、少なくとも一端が前記配管の端部に接続されると共に他端が前記被接続部品に接続される円筒状管材と、
前記円筒状管材の周壁に中心線方向に沿って延びるように開口する一若しくは複数のスリットと、を備え、
前記円筒状管材と前記配管又は前記被接続部品との間には、両者の接続部領域を調整可能とし、前記スリットの開口面積を可変調整する調整手段が設けられていることを特徴とする配管設備。
【請求項3】
請求項2に記載の配管設備において、
前記調整手段は、前記配管に対する前記円筒状管材の差込み量を連続的又は段階的に変化させるものであることを特徴とする配管設備。
【請求項4】
請求項3に記載の配管設備において、
前記配管は可撓性材料にて成形された可撓性配管からなり、
前記調整手段は、前記可撓性配管の端部に前記円筒状管材を差し込み、予め決められた差し込み位置で前記可撓性配管の外周をバンド締めすることを特徴とする配管設備。
【請求項5】
請求項2に記載の配管設備において、
前記円筒状管材と前記配管又は前記被接続部品との間には、前記円筒状管材を回り止めする回り止め手段を備えていることを特徴とする配管設備。
【請求項6】
請求項2に記載の配管設備において、
前記被接続部品は前記円筒状管材が差し込み可能な円筒状被接続部を有し、
前記調整手段は、前記円筒状被接続部に対する前記円筒状管材の差込み量を連続的又は段階的に変化させるものであることを特徴とする配管設備。
【請求項7】
請求項6に記載の配管設備において、
前記調整手段は、前記円筒状被接続部の予め決められた位置に設けられた位置決めピンと、前記位置決めピンに係止可能に設けられ、前記円筒状管材の中心線方向に対して延び且つ前記スリットの形成領域とは異なる領域に形成される長さの異なる複数の切欠溝と、を有することを特徴とする配管設備。
【請求項8】
請求項6に記載の配管設備において、
前記調整手段は、前記円筒状被接続部の予め決められた位置に開設された第1の位置決め孔と、前記円筒状管材のうち前記スリットの形成領域とは異なる領域に形成され且つ前記円筒状管材の中心線方向に対して異なる複数の位置に開設される第2の位置決め孔群と、前記第1の位置決め孔と前記第2の位置決め孔群のいずれかとを位置合せした状態で挿通させる固定ロッドとを有することを特徴とする配管設備。
【請求項9】
請求項6に記載の配管設備において、
前記調整手段は、前記円筒状管材の予め決められた位置に設けられる位置決めピンと、前記位置決めピンが係止可能に設けられ、前記円筒状被接続部の中心線方向に対して異なる複数の位置に設けられる複数の位置決め溝群とを有し、前記複数の位置決め溝群のいずれかに前記位置決めピンを係止させることを特徴とする配管設備。
【請求項10】
溶解室を開閉可能な炉蓋で塞ぐ溶解炉と、
前記溶解室で発生する排気を排出する請求項2乃至9のいずれかに記載の配管設備と、を備えたことを特徴とする溶解炉設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管に接続される配管接続具に係り、特に、配管端部から導入される気流を調整するために用いられる配管接続具及びこれを用いた配管設備並びに溶解炉設備に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、有価金属を含む金属屑、例えばニッケル、コバルト、鉄等の各種金属材料を含む金属屑はリサイクルされ、含有する有価金属の回収処理が実施されている。
この種の回収処理方法としては、大きく分けて乾式法と湿式法とがある。
乾式法は、破砕した有価金属を含む金属屑を溶融処理し、回収対象である有価金属と、付加価値の低いその他の金属等とを、それらの間の酸素親和力の差を利用して分離回収するものである。すなわち、鉄等の付加価値の低い元素を極力酸化してスラグとし、かつコバルト等の有価物は酸化を極力抑制して合金として回収するものである。
ここで、前記の溶融処理は、例えば、溶解室の一端(上部)が開放した溶解炉本体を有する傾動式溶解炉で行うことができるが、前記の溶融処理は有毒性のヒュームや煤塵の発生を伴うために、こうしたヒュームや煤塵を極力回収することが必要である。
【0003】
こうしたヒュームや煤塵を回収するための技術としては、例えば、特許文献1に記載のものが既に知られている。この特許文献1には、炉体の上面開口部を囲繞するようにリングフードを配設した電気炉において、炉蓋の外周及びその上面に連続して集塵路を形成した集塵フードを一体的に形成し、更に、集塵フードより耐熱自在管を介設した集塵ダクトを連設すると共に、これら一体化した炉蓋を上下に回動し且つ旋回自在とする炉蓋腕の先端に取着してなる集塵フード付電気炉蓋が開示されている。
電気炉内に溶解材料投入時には、集塵フードと一体化した炉蓋を、稍上方に回動せしめて旋回し、炉体の上面を開口してリングフードより吸引しつつ材料を投入した後、再度炉蓋を元の位置に復帰せしめて該炉体の上面開口部を被覆し、次いで、リングフードよりの吸引を停止し、集塵フードより吸引を開始すると同時に溶解を始めれば、溶解時に発生するガス、煤塵はこの集塵フードにより的確に吸引される。
【0004】
ところで、上記の集塵フード付電気炉蓋を用いた煤塵の吸引では、気流の風速調整は、例えば、集塵ダクトに連接されるブロワの駆動周波数を調整することによって行われている。上記の風速調整は、電気炉より発生する煤塵やヒュームの発生量が変化した場合など、操業状況の変化に応じて行う必要があるが、ブロワの駆動周波数を調整する操作盤が遠くにある場合も多く、多くの場合でこうした変化に対応することが困難であった。さらには、ブロワの駆動周波数を用いた風速調整では、風速の微調整を行うことが困難であった。このため、吸引過剰となって電気炉内の温度が低下してしまうことや、逆に吸引が足りずに煤塵が漏れ出てしまう懸念があった。また、集塵ダクトに連接されるブロワが駆動周波数を調整する機構を有していない場合には、気流の風速調整を行うこと自体が困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平1-153496号公報(実施例,第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする技術的課題は、簡単な構成で、配管端部から導入される気流の風速を容易に調整可能とする配管接続具及びこれを用いた配管設備並びに溶解炉設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の技術的特徴は、円形断面の中心線方向両端が開口し、少なくとも一端が配管の端部に接続されると共に他端が前記配管以外の被接続部品に接続される円筒状管材と、前記円筒状管材の周壁に中心線方向に沿って延びるように開口する一若しくは複数のスリットと、を備え、前記円筒状管材と前記配管又は前記被接続部品との間の接続部領域を調整可能とし、前記スリットの開口面積を可変調整することを特徴とする配管接続具である。
【0008】
本発明の第2の技術的特徴は、配管と、前記配管の端部に接続される配管接続具と、前記配管接続具の他端部に接続される被接続部品と、を備えた配管設備であって、前記配管接続具は、円形断面の中心線方向両端が開口し、少なくとも一端が前記配管の端部に接続されると共に他端が前記被接続部品に接続される円筒状管材と、前記円筒状管材の周壁に中心線方向に沿って延びるように開口する一若しくは複数のスリットと、を備え、前記円筒状管材と前記配管又は前記被接続部品との間には、両者の接続部領域を調整可能とし、前記スリットの開口面積を可変調整する調整手段が設けられていることを特徴とする配管設備である。
【0009】
本発明の第3の技術的特徴は、第2の技術的特徴を備えた配管設備において、前記調整手段は、前記配管に対する前記円筒状管材の差込み量を連続的又は段階的に変化させるものであることを特徴とする配管設備である。
本発明の第4の技術的特徴は、第3の技術的特徴を備えた配管設備において、前記配管は可撓性材料にて成形された可撓性配管からなり、前記調整手段は、前記可撓性配管の端部に前記円筒状管材を差し込み、予め決められた差し込み位置で前記可撓性配管の外周をバンド締めすることを特徴とする配管設備である。
本発明の第5の技術的特徴は、第2の技術的特徴を備えた配管設備において、前記円筒状管材と前記配管又は前記被接続部品との間には、前記円筒状管材を回り止めする回り止め手段を備えていることを特徴とする配管設備である。
本発明の第6の技術的特徴は、第2の技術的特徴を備えた配管設備において、前記被接続部品は前記円筒状管材が差し込み可能な円筒状被接続部を有し、前記調整手段は、前記円筒状被接続部に対する前記円筒状管材の差込み量を連続的又は段階的に変化させるものであることを特徴とする配管設備である。
本発明の第7の技術的特徴は、第6の技術的特徴を備えた配管設備において、前記調整手段は、前記円筒状被接続部の予め決められた位置に設けられた位置決めピンと、前記位置決めピンに係止可能に設けられ、前記円筒状管材の中心線方向に対して延び且つ前記スリットの形成領域とは異なる領域に形成される長さの異なる複数の切欠溝と、を有することを特徴とする配管設備である。
本発明の第8の技術的特徴は、第6の技術的特徴を備えた配管設備において、前記調整手段は、前記円筒状被接続部の予め決められた位置に開設された第1の位置決め孔と、前記円筒状管材のうち前記スリットの形成領域とは異なる領域に形成され且つ前記円筒状管材の中心線方向に対して異なる複数の位置に開設される第2の位置決め孔群と、前記第1の位置決め孔と前記第2の位置決め孔群のいずれかとを位置合せした状態で挿通させる固定ロッドとを有することを特徴とする配管設備である。
本発明の第9の技術的特徴は、第6の技術的特徴を備えた配管設備において、前記調整手段は、前記円筒状管材の予め決められた位置に設けられる位置決めピンと、前記位置決めピンが係止可能に設けられ、前記円筒状被接続部の中心線方向に対して異なる複数の位置に設けられる複数の位置決め溝群とを有し、前記複数の位置決め溝群のいずれかに前記位置決めピンを係止させることを特徴とする配管設備である。
【0010】
本発明の第10の技術的特徴は、溶解室を開閉可能な炉蓋で塞ぐ溶解炉と、前記溶解室で発生する排気を排出する第2乃至第9の技術的特徴のいずれかを備えた配管設備と、を備えたことを特徴とする溶解炉設備である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1の技術的特徴によれば、簡単な構成で、配管端部から導入される気流の風速を容易に調整することができる。
本発明の第2の技術的特徴によれば、簡単な構成で、配管端部から導入される気流の風速を容易に調整可能な配管設備を提供することができる。
本発明の第3の技術的特徴によれば、配管と円筒状管材との差込み量を調整することで、配管端部から導入される気流の風速を容易に調整可能な配管設備を提供することができる。
本発明の第4の技術的特徴によれば、可撓性配管の特性を利用することで、配管端部から導入される気流の風速を容易に調整可能な配管設備を提供することができる。
本発明の第5の技術的特徴によれば、回り止め手段を有しない場合に比べて、配管接続具のスリットの開口面積の調整作業を容易に実施することができる。
本発明の第6の技術的特徴によれば、被接続部品と円筒状管材との差込み量を調整することで、配管端部から導入される気流の風速を容易に調整可能な配管設備を提供することができる。
本発明の第7の技術的特徴によれば、位置決めピンと複数の切欠溝との組合せで、被接続部品と円筒状管材との差込み量を容易に調整することができる。
本発明の第8の技術的特徴によれば、第1の位置決め孔、第2の位置決め孔群及び固定ロッドの組合せで、被接続部品と円筒状管材との差込み量を容易に調整することができる。
本発明の第9の技術的特徴によれば、位置決めピンと複数の位置決め溝群との組合せで、被接続部品と円筒状管材との差込み量を容易に調整することができる。
本発明の第10の技術的特徴によれば、簡単な構成で、配管端部から導入される気流の風速を容易に調整可能な配管設備を含む溶解炉設備を構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明が適用された配管接続具を用いた配管設備を備えた溶解炉設備の実施の形態の概要を示す説明図である。
図2】実施の形態1に係る溶解炉設備のうち傾動作業台傾動時の全体構成を示す説明図である。
図3図2に示す溶解炉設備のうち傾動作業台非傾動時の平面説明図である。
図4図3中IV方向から見た矢視図である。
図5】(a)は図4に示す溶解炉設備で用いられる配管設備の要部を示す説明図、(b)は(a)中B方向から見た矢視図、(c)は配管設備の使用方法を示す説明図である。
図6】(a)は実施の形態1で用いられる配管接続具の基本構成を示す正面説明図、(b)は(a)中B方向から見た矢視図、(c)は(a)中C-C線断面説明図、(d)は(a)中D方向から見た矢視図、(e)は(a)中E方向から見た矢視図である。
図7】(a)~(c)は実施の形態1に係る配管設備の変形の形態1-1~1-3を示す説明図である。
図8】(a)は実施の形態2に係る溶解炉設備で用いられる配管設備の配管接続具接続前の状態を示す説明図、(b)は同配管設備の配管接続具接続時の状態を示す説明図である。
図9】(a)は図8で用いられる配管接続具の構成例を示す説明図、(b)は(a)中B方向から見た矢視図、(c)は(a)の各切欠溝の構成例を示す説明図である。
図10】(a)は実施の形態3に係る溶解炉設備で用いられる配管設備の配管接続具接続前の状態を示す説明図、(b)は同配管設備の配管接続具接続時の状態を示す説明図、(c)は(b)中C-C線断面説明図である。
図11】(a)は実施の形態4に係る配管設備の要部を示す説明図、(b)は(a)中B方向から見た矢視図、(c)は(a)中C-C線断面説明図である。
図12】(a)は実施の形態5に係る配管設備の配管接続具接続前の状態を示す説明図、(b)は(a)中B-B線断面説明図、(c)は(a)中C方向から見た矢視図であって、被接続部品としての排出ブースの被接続部に形成された位置決め溝の構成例を示す説明図、(d)は配管接続具に形成された複数の位置決めピン群のいずれかの位置決めピンの位置決め溝に対する係止動作例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
◎実施の形態の概要
図1は本発明が適用された溶解炉設備の実施の形態の概要を示す。
同図において、溶解炉設備は、溶解室11bを開閉可能な炉蓋11cで塞ぐ溶解炉11と、溶解室11bで発生する排気を排出する配管設備10と、を備えている。
本例の溶解炉設備は、高周波電磁誘導方式を用いた態様や、アーク放電方式を用いた態様等を広く含む。
そして、本例の配管設備10は、配管4と、配管4の端部に接続される配管接続具1と、配管接続具1の他端部に接続される被接続部品5と、を備えている。
ここで、配管接続具1は、円形断面の中心線方向両端が開口し、少なくとも一端が配管4の端部に接続されると共に他端が配管4以外の被接続部品5に接続される円筒状管材2と、円筒状管材2の周壁に中心線方向に沿って延びるように開口する一若しくは複数のスリット3と、を備え、円筒状管材2と配管4又は被接続部品5との間の接続部領域を調整可能とし、スリット3の開口面積を可変調整するものである。
このような配管接続具1を具現化する手段としては、円筒状管材2と配管4又は被接続部品5との間に、両者の接続部領域を調整可能とし、スリット3の開口面積を可変調整する調整手段6を設けるようにすればよい。図1では、調整手段6は、円筒状管材2と配管4との接続部領域を調整可能とし、スリット3の開口面積を可変調整するものが例示されている。
また、被接続部品5としては、配管接続具1に接続される部品であれば他の配管を始め、接続用治具など広く含む。図1では、被接続部品5は溶解炉設備の炉蓋11c上面に装着された漏斗形状の接続用治具が用いられている。
【0014】
このような技術的手段において、円筒状管材2は金属、樹脂、セラミックス等の材料を用いて一体的に成形されたものが代表的であるが、複数のパーツを接合して一体化する等適宜選定して差し支えない。また、スリット3の数、形状(長さ寸法、幅寸法、終端形状等)も図示したものに限られるものではなく適宜選定して差し支えない。
更に、調整手段6については、配管接続具1と配管4又は被接続部品5との間の接続部領域を調整可能とする機能を備え、前述した接続部領域を適宜調整することで配管4又は被接続部品5によりスリット3を覆う領域を変化させ、スリット3の開口面積を可変に調整するものであればよい。
【0015】
次に、本実施の形態に係る配管接続具1の作用について説明する。
図1に示すように、配管接続具1は一端が配管4に接続され、他端が被接続部品5に接続されている。この状態において、例えばブロワ等を用いて配管4内に負圧を発生させると、配管接続具1の端部(被接続部品5に接続した側の端部)から煤塵やヒュームを含んだ気流が導入されると共に、スリット3の開口部からも気流が導入される。ここで、気流の導入風速は、スリット3を介して導入される気流の流量に応じて変動するため、気流の導入風速を調整するためには、スリット3を介して導入される気流の流量を調整すればよい。この気流の流量の調整は、スリット3の開口面積を調整すること、具体的には配管接続具1に対する配管4の端部周縁の横断位置を調整することにより行うことが可能である。
例えば、配管接続具1の端部からの気流の導入風速を弱めたい場合には、図1に一点鎖線で示すように、配管4の端部周縁の横断位置が炉蓋11cの上面から離間する方向、つまり、配管接続具1を配管4の端部に差し込んだときの差し込み深さが浅くなる方向に調整すればよい。これにより、スリット3の開口面積が増加して、スリット3を介して導入される気流の流量が増加するので、その分、配管接続具1の端部からの気流の導入風速は弱められる。反対に、配管接続具1の端部からの気流の導入風速を強めたい場合には、図1に二点鎖線で示すように、配管4の端部周縁の横断位置が炉蓋11cの上面に接近する方向、つまり、配管接続具1を配管4の端部に差し込んだときの差し込み深さが深くなる方向に調整すればよい。これにより、スリット3の開口面積が減少して、スリット3を介して導入される気流の流量が減少するので、その分、配管接続具1の端部からの気流の導入風速は強められる。
【0016】
次に、本実施の形態に係る配管設備の代表的態様又は好ましい態様について説明する。
先ず、調整手段6の代表的態様としては、配管4に対する円筒状管材2の差込み量を連続的又は段階的に変化させるものが挙げられる。
本態様の具体例としては、配管4は可撓性材料にて成形された可撓性配管からなり、調整手段6は、可撓性配管の端部に円筒状管材2を差し込み、予め決められた差し込み位置で可撓性配管の外周をバンド締めする態様がある。
本態様において、好ましい態様としては、図1に示すように、円筒状管材2と被接続部品5との間には、円筒状管材2を回り止めする回り止め手段7を備える態様が挙げられる。ここでいう回り止め手段7としては、例えば図1に示すように、円筒状管材2の一端部に回り止め用の切欠を設けると共に、被接続部品5の接続開口縁には回り止めピンを設け、回り止め用の切欠に回り止めピンを係止させる態様が挙げられる。
このような回り止め手段7を用いると、配管接続具1は被接続部品5に対して回り止めした状態で接続されるため、配管接続具1と配管4との接続作業を簡易に行うことができる。
【0017】
また、調整手段6の別の代表的態様としては、被接続部品5は円筒状管材2が差し込み可能な円筒状被接続部5aを有し、調整手段6は、円筒状被接続部5aに対する円筒状管材2の差込み量を連続的又は段階的に変化させる態様が挙げられる。
本態様の調整手段6の具体例としては、例えば以下の具体例1~3がある。
具体例1は、図8に示すように、円筒状被接続部67(図1の円筒状被接続部5aに相当)の予め決められた位置に設けられた位置決めピン91と、位置決めピン91が係止可能に設けられ、円筒状管材2の中心線方向に対して延び且つスリット3の形成領域とは異なる領域に形成される長さの異なる複数の切欠溝92と、を有する態様である。
具体例2は、図10に示すように、円筒状被接続部67の予め決められた位置に開設された第1の位置決め孔94と、円筒状管材2のうちスリット3の形成領域とは異なる領域に形成され且つ円筒状管材2の中心線方向に対して異なる複数の位置に開設される第2の位置決め孔95群と、第1の位置決め孔94と第2の位置決め孔95群のいずれかとを位置合せした状態で挿通させる固定ロッド96とを有する態様である。
具体例3は、図11に示すように、円筒状管材2の予め決められた位置に設けられる位置決めピン97と、位置決めピン97が係止可能に設けられ、円筒状被接続部67の中心線方向に対して異なる複数の位置に設けられる複数の位置決め溝98群とを有し、複数の位置決め溝98群のいずれかに位置決めピン97を係止させる態様である。
これらの態様においては、円筒状管材2と配管4との間に、円筒状管材2を回り止めする回り止め手段(図示せず)を備えるようにすることが好ましい。
【0018】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
◎実施の形態1
-溶解炉設備の全体構成-
図2乃至図4は実施の形態1に係る溶解炉設備の全体構成を示す。
同図において、溶解炉設備は、高周波電磁誘導方式を採用したものであって、一端が開口する溶解室11bに装入された被溶解物材料を溶解する溶解炉11と、溶解炉11と共に傾動可能に設置される傾動作業台12と、傾動作業台12の周辺に、非傾動時の傾動作業台12と連なるように設置される固定作業台13と、傾動作業台12の手前に設置され、溶解炉11の溶解室11bから排出された溶解物を収容する容器又は鋳型が設置される排出ブース14と、溶解炉11の溶解室11bへの被溶解物材料の装入処理、被溶解物材料の溶解処理、溶解物の排出処理に伴って発生するヒュームや煤塵等を排気する排気設備15と、を備えている。
尚、本例では、高周波電磁誘導方式を用いた溶解炉設備に適用した場合を例に挙げて説明しているが、これに限られるものではなく、例えばアーク放電方式を用いた溶解炉設備など高周波電磁誘導方式とは異なる他の電力を用いて加熱を行う溶解炉設備(電気炉)にも好適に適用することができる。更には、ガスや重油を用いて加熱を行う溶解炉設備にも適用することができる。
【0019】
<溶解炉>
本実施の形態において、溶解炉11は、図2乃至図4に示すように、一端が開口した溶解室11bを有するるつぼ状の溶解炉本体11aと、この溶解炉本体11aの開口を開閉する炉蓋11cと、溶解炉本体11aの開口縁の一部に設けられる排出用樋11dと、溶解炉本体11aの外周壁に設けられる図示外の加熱要素としての加熱コイル(例えば高周波電磁誘導方式を使用)と、溶解室11b内の溶解物の溶解状態を検出するために溶解炉本体11aに適宜設置される図示外の温度センサと、を備えている。
本例において、溶解室11bに装入される被溶解物材料としては、例えばニッケル、コバルト、鉄等の各種金属材料を含む金属屑が挙げられる。また、必要に応じて、雰囲気ガスやフラックス等の副資材が装入されることもある。
【0020】
<炉蓋>
本例において、炉蓋11cは、図2乃至図4、及び図5(a)に示すように、略円形状の炉蓋本体31を有し、開閉支持手段としての炉蓋開閉機構32によって、溶解炉11の開口を塞ぐ閉塞位置と溶解炉11の開口を開く開放位置との間で炉蓋本体31を略水平方向の姿勢で揺動可能に支持されている。
本例において、炉蓋開閉機構32は、傾動作業台12上に揺動支点33を中心に揺動可能な支持アーム34を有し、この支持アーム34の揺動自由端側を炉蓋本体31の上面部に連結固定するようにしたものである。尚、閉塞位置と開放位置との間で炉蓋本体31を揺動する際には、炉蓋本体31を閉塞位置から僅かに上方に持ち上げた位置で略水平方向に沿って揺動させるようになっている。
【0021】
<傾動作業台>
本実施の形態において、傾動作業台12は、図2乃至図4に示すように、基準面(地上設置面に相当)から所定の高さ寸法Hだけ上方に位置する略矩形状の作業ステージで略水平姿勢を保持するように設置されており、溶解炉11の設置スペースに対応した箇所に取付開口を有し、当該取付開口に溶解炉本体11aの開口周縁部を嵌め込んだ状態で保持し、作業ステージの下方に溶解炉本体11aが収容可能なピット空間部20を確保するようにしたものである。
そして、本例では、傾動作業台12は、図3及び図4に示すように、排出ブース14側の端部に図示外の支持部材によって支持される傾動支点SPを有しており、また、駆動アクチュエータ21による駆動力を受けて、傾動支点SPを中心に傾動可能になっている。
ここで、駆動アクチュエータ21は例えば油圧シリンダによってピストン21aを進退移動させるものが採用されており、傾動作業台12のうち傾動支点SPから離れた部位にピストン21aの先端部が回転可能に連結され、傾動作業台12を所定の位置に傾動させることによって溶解炉11を後述する保持位置と排出位置との間で傾動させるようになっている。
本例では、溶解炉11を略鉛直姿勢に保持する保持位置(図4中実線で示す)では、傾動作業台12は作業者Mの足場を構成し、保持位置に対して溶解炉11の姿勢を傾斜させることにより当該溶解炉11内の溶解物を排出可能とする排出位置(図4中仮想線で示す)では、溶解炉11の溶融物を排出ブース14内の容器(鋳型)に排出する処理が実施されるようになっている。このとき、傾動作業台12が傾動することに伴ってピット空間部20の上方開口が露呈し、傾動作業台12の作業ステージが開放された状態に至る。
尚、本例では、駆動アクチュエータ21は油圧シリンダが採用されているが、これに限られるものではなく、駆動モータと駆動伝達機構とを組み合わせたものを採用してもよい。
【0022】
<固定作業台>
本実施の形態において、固定作業台13は、基準面から所定の高さ寸法Hだけ上方に位置して略水平姿勢を保持するように設置されており、非傾動時の傾動作業台12を取り囲む矩形状の切欠開口13aを有し、非傾動時の傾動作業台12と連なるように略同一面を構成するようになっている。尚、固定作業台13には作業者Mは図示外の階段などで上り下りするようになっている。
更に、本実施の形態では、傾動作業台12及び固定作業台13に跨がって防護柵25が設置され、溶解炉11周辺の作業において作業者Mを防護するようになっている。本例では、防護柵25は、図2及び図3に示すように、傾動作業台12の周辺領域(固定作業台13の切欠開口13a周辺領域に相当)のうち傾動作業台12の傾動支点SPから離れた側の対向周辺領域及びこれに隣接する両側方周辺領域を取り囲むように設置されており、防護柵25の一部25aは、傾動作業台12非傾動時には傾動作業台12の作業ステージ内に進出し、溶解炉11周辺での作業者Mの作業を防護し、傾動作業台12傾動時には、傾動作業台12の作業ステージから退避可能に構成されている。
【0023】
<排出ブース>
本実施の形態において、排出ブース14は、図3及び図4に示すように、溶解炉11が排出位置に傾斜したときに、溶解炉11の排出用樋11dがブース開口41内に入り込むようになっている。また、排出ブース14内には扉42を開放することで排出された溶解物を受け止める容器又は鋳型が設置されるようになっている。よって、溶解炉11による溶解物の排出処理前に排出ブース14内に容器等を設置するようにすれば、溶解炉11の溶解室11b内の溶解物はブース開口41を通じて排出ブース14内の容器等に排出される。
【0024】
<排気設備>
本実施の形態において、排気設備15は、溶解炉11内からの排気を担う第1の排気系15aと、排出ブース14からの排気を担う第2の排気系15bと、を含む。
本例において、第1の排気系15aは、図4及び図5(a)に示すように、炉蓋本体31の略中央に開設された排気口35と、この排気口35からの排気を担う第1の排気ダクト51とを含んで構成されており、また、第2の排気系15bは、排出ブース14の上壁に開設された図示外の排気口と、当該排気口からの排気を担う第2の排気ダクト52とを含んで構成されており、第1及び第2の排気ダクト51、52を、ジョイント53を介して合流排気ダクト54に接続し、合流排気ダクト54には吸引手段としての吸引ブロワ(図示せず)が組み込まれた集塵機を接続することで排気動作を実施するようにしたものである。
ここで、第1の排気ダクト51、第2の排気ダクト52及び合流排気ダクト54は予め決められた形状に成形したものでも差し支えないが、本例では、第1の排気ダクト51はフレキシブルダクトで構成されている。
【0025】
-配管設備-
本実施の形態において、第1の排気系15aは、図4及び図5(a)に示すように、炉蓋本体31の排気口35に被接続部品として排気用治具であるシュート60を装着し、第1の排気ダクト51とシュート60との間に配管接続具1が介在された配管設備10を採用したものである。
<シュート>
本例において、シュート60は、円筒状のシュート本体61の下部に漏斗状に絞り込まれた連結部62を有し、炉蓋本体31の排気口35に連結部62を、例えば着脱可能に嵌め込み連結したものである。ここでの連結手法としては、これに限定されるものではなく、雄ねじ部、雌ねじ部によるねじ込みにより着脱可能に連結するようにしたものであっても差し支えない。
また、シュート本体61の周壁部の上部開口寄りには配管接続具1の接続時に配管接続具1の端部を受け止める鍔状のサポートフランジ65が設けられている。
尚、本例では、シュート60は、炉蓋本体31の排気口35に対して着脱可能であり、必要に応じて、炉蓋11cから取り外して清掃などするようにしてもよい。
【0026】
<配管接続具>
本例において、配管接続具1は、図6(a)~(e)に示すように、上下両端が開口した円筒状管材2を有し、この円筒状管材2の周側壁に上下方向(中心軸方向に相当)に延びるスリット3を周方向に所定間隔を置いて多数開口したものである。
ここで、円筒状管材2の内径寸法は、シュート本体61の外径寸法に略合致するように選定されており、円筒状管材2の端部がシュート本体61の端部を覆うように嵌合し、シュート本体61のサポートフランジ65に突き当たるようになっている。
また、スリット3の数、形状(長さ寸法、幅寸法、終端形状等)は適宜選定して差し支えないが、本例では、スリット3は、等角度間隔α(本例ではα=22.5°)で16本設けられ、円筒状管材2の長さ寸法の1/2から3/4程度の長さ寸法を有すると共に、スリット3間の非開口部の幅寸法と同等若しくは若干幅狭の幅寸法を有しており、上下の終端形状が半円状に形成されている。
【0027】
本例において、円筒状管材2は金属、樹脂、セラミック等の材料を用いて一体的に成形されており、図5(a)(b)に示すように、円筒状管材2とシュート60との間には回り止め手段としての回り止め機構70が設けられている。本例の回り止め機構70は、円筒状管材2の一端部の相対向する部位に回り止め用の逆U字状の切欠71を形成し、シュート本体61の接続開口縁のサポートフランジ65寄りには一対の回り止めピン72を外方に向けて突出するように形成し、円筒状管材2の切欠71にシュート本体61の回り止めピン72を係合させることで、配管接続具1がシュート60に回り止めされた状態で接続されるようになっている。
尚、配管接続具1がシュート60に接続された状態では、円筒状管材2のスリット3はシュート本体61によって遮られることなく、全てが露呈した状態に保たれるようになっている。
【0028】
<調整器具>
更に、円筒状管材2と第1の排気ダクト51との間には両者間の接続部領域を調整可能とする調整手段としての調整器具80が設けられている。
本例において、調整器具80は、第1の排気ダクト51に対する円筒状管材2の差込み量を連続的に変化させるものであり、図5(c)に示すように、フレキシブルダクトである第1の排気ダクト51の端部に円筒状管材2を差し込み、予め決められた差し込み位置で第1の排気ダクト51の外周を可撓性があるバンド部材81にて締め付けて保持するようにすればよい。
【0029】
-排気処理における気流の風速調整-
本例において、第1の排気系15aで用いられる配管接続具1は、円筒状管材2の一端部が第1の排気ダクト51の端部に接続され、また、円筒状管材2の他端部がシュート60のシュート本体61に回り止め機構70を介して接続されている。
このとき、配管接続具1は、図5(c)に示すように、第1の排気ダクト51の端部周縁が円筒状管材2のスリット3を横断しない位置から横断する位置へと変化可能に第1の排気ダクト51に差し込まれるため、第1の排気ダクト51の端部周縁がスリット3を横断する位置(以下、「端部周縁の横断位置」という。)を調整することによって、スリット3の開口面積を調整することが可能である。
次に、配管接続具1による気流の風速調整について説明する。
今、集塵機のブロワを作動させて第1の排気ダクト51内に所定の負圧を発生させると、配管接続具1の端部(シュート60に接続した側の端部)から煤塵やヒュームを含んだ気流が導入されると共に、配管接続具1のスリット3の開口部からも気流が導入される。配管接続具1の端部を介して導入される気流の風速、つまり、気流の導入風速は、スリット3を介して導入される気流の流量に応じて変動するため、気流の導入風速を調整するためには、スリット3を介して導入される気流の流量を調整すればよい。この気流の流量の調整は、スリット3の開口面積を調整すること、つまり、第1の排気ダクト51と配管接続具1との接続部領域で、第1の排気ダクト51によるスリット3の横断位置を調整することにより行われる。
【0030】
例えば、配管接続具1の端部からの気流の導入風速を弱めたい場合には、図5(a)に一点鎖線で示すように、第1の排気ダクト51の端部周縁の横断位置が炉蓋11cの上面から離間する方向、つまり、配管接続具1を第1の排気ダクト51内に差し込んだときの差し込み深さが浅くなる方向に調整すればよい。これにより、スリット3の開口面積が増加して、スリット3を介して導入される気流の流量が増加するので、その分、配管接続具1の端部からの気流の導入風速を弱めることができる。
反対に、配管接続具1の端部からの気流の導入風速を強めたい場合には、図5(c)に二点鎖線で示すように、第1の排気ダクト51の端部周縁の横断位置が炉蓋11cの上面に接近する方向、つまり、配管接続具1を第1の排気ダクト51内に差し込んだときの差し込み深さが深くなる方向に調整すればよい。これにより、スリット3の開口面積が減少して、スリット3を介して導入される気流の流量が減少するので、その分、配管接続具1の端部からの気流の導入風速を強めることができる。
【0031】
-溶解炉設備の作業手順-
次に、本実施の形態に係る溶解炉設備の作業手順の一例について説明する。
先ず、溶解炉11内に材料を装入する作業について説明する。
1) 溶解炉11の炉蓋11cを開放位置まで水平方向に回転移動させ、溶解室11b内に原材料(有価金属を含む金属屑、フラックス等)を予め決められた量(例えば90kg)だけ装入する。
2) 溶解室11bに対して材料の装入が完了したら、溶解炉11の炉蓋11cを閉塞位置まで水平方向に回転移動させて溶解室11bを塞ぎ、炉蓋11cのシュート60に対して第1の排気ダクト51に連接する配管接続具1を接続し、集塵機のブロワをONにする。
尚、原材料の一部については、溶解炉11の炉蓋11cを閉塞位置に保持したまま、排気口35からシュート60を介して溶解室11b内に装入するようにしてもよい。この場合、作業者Mは、例えば図示外の材料装入装置から原材料をシュート60を介して溶解炉11の溶解室11b内に落とし込むようにしてもよいし、あるいは、シュート60をそのまま用いるのではなく、当該シュート60を、原材料の落とし込みに適した形状を有する図示外のシュートに取り換えて、原材料の落とし込みを行うようにしてもよい。
【0032】
この後、溶解炉11の加熱処理作業に移行する。
3) 図示しない操作盤の加熱スイッチを操作して溶解炉11に通電し、装入された原材料を溶解する。この溶解では、溶解室11bから発生する煤塵やヒュームは第1の排気系15aを構成するシュート60、配管接続具1及び第1の排気ダクト51を通じて排気される。このとき、溶解室11bから発生する煤塵やヒュームの発生量は時間の経過とともに変化するため、溶解室11bから配管接続具1に導入される気流の風速を、煤塵やヒュームを漏らさず回収し、溶解された原材料(溶解物)の温度が抑制される風速に調整する。具体的には、配管接続具1のスリット3の開口面積、つまり、第1の排気ダクト51に対する円筒状管材2の差し込み深さを調整して、配管接続具1の端部に導入される気流の風速調整を行う。ここで、配管接続具1による気流の風速調整については後に詳述する。尚、溶解炉11への通電を行いつつ、必要に応じてシュート60から原材料の追装入を行うようにしてもよい。
4) 溶解された原材料(溶解物)の状況(例えば、溶解物の温度、溶解物の上面に形成されるスラグの状態等)を確認しつつ、反応を保持する。この場合も、煤塵やヒュームの発生量は時間の経過とともに変化するため、3)と同様にして配管接続具1の端部から導入される気流の風速調整を行う。
5) 溶解物を静置して、スラグとメタルとに分離する。この場合も、煤塵やヒュームの発生量は時間の経過とともに変化するため、3)と同様にして配管接続具1の端部に導入される気流の風速調整を行う。
6) 第1の排気ダクト51に連接する配管接続具1を、炉蓋11cのシュート60から取り外し、シュート60を介して柄杓を溶解室11b内へ装入してサンプリングを行い、反応終了を判定する。尚、本例では、シュート60をサンプリング用の作業窓として兼用するようにしているが、これに限られるものではなく、炉蓋11cにサンプリング専用の開閉可能な作業窓を設けるようにしてもよい。
【0033】
この後、溶解炉11による溶解物の排出処理を実施する。
7) 排出ブース14内にスラグ用の容器(鋳型)を設置し、溶解炉11を傾動させて、溶解物の上面に形成されたスラグのみ容器(鋳型)へ排出する。この間、排出ブース14内で発生した煤塵やヒュームは第2の排気系15bを構成する第2の排気ダクト52を介して排気される。
8) しかる後、溶解炉11の傾動姿勢を略鉛直な姿勢に戻し、溶解炉11への通電を行いつつ、必要に応じて原材料の追装入を行い、3)~6)の作業操作を繰り返し、溶解物の上面に形成されたスラグのみ容器(鋳型)へ排出する。
9) シュート60に対して第1の排気ダクト51に連接する配管接続具1を取り付け、スラグと分離され、溶解室11bに残存したメタルを保持する。この場合も、煤塵やヒュームの発生量は時間の経過とともに変化するため、3)と同様にして配管接続具1の端部に導入される気流の風速調整を行う。
10) 第1の排気ダクト51に連接する配管接続具1を、炉蓋11cのシュート60から取り外し、溶解炉11の溶解室11bへの空気吹込み用のランスパイプ(図示せず)を、炉蓋11cのシュート60を介して装入し、空気を吹き込む。
11) メタルの酸化反応を保持する。
12) 排出ブース14内にメタル用の容器(鋳型)を設置し、溶解炉11を傾動させて、メタルを容器(鋳型)へ排出する。この間、排出ブース14内で発生した煤塵やヒュームは第2の排気系15bを構成する第2の排気ダクト52を介して排気される。メタルの排出動作が終了すると、溶解炉11の傾動姿勢を略鉛直な姿勢に戻す。
【0034】
本例においては、溶解炉11の溶解室11bに原材料を装入する際には排気処理を実施していないが、原材料を装入する際に発生する煤塵を排気する必要がある場合には、例えば配管接続具1が取り外されたシュート60に対して図示外の原材料の装入口を具備した材料装入治具を接続すると共に、この材料装入治具の頂部に第1の排気ダクト51の端部を接続し、この後、集塵機のブロワをONにし、材料装入治具の装入口に図示外の材料装入装置の材料排出口を接続し、材料装入装置から原材料を材料装入治具内に予め決められた量だけ装入すればよい。このとき、原材料装入の際に発生する煤塵等は、材料装入治具に接続された第1の排気ダクト51を介して排気される。
【0035】
◎変形の形態1-1
本例では、配管接続具1は、図5及び図6に図示したものを基本形態とするが、シュート60との間の回り止め構造や第1の排気ダクト51との間の差し込み構造については適宜変更して使用可能である。
例えば配管接続具1は、円筒状管材2の一端部側に二つ回り止め用の逆U字状の切欠71を有しているが、これに限られるものではなく、切欠71の形状や数については適宜選定して差し支えない。また、例えばシュート60側に回り止め用の切欠(図示せず)を形成する場合にあっては、円筒状管材2側にシュート60側の切欠に係合する回り止めピン(図示せず)を形成するようにしてもよい。
【0036】
◎変形の形態1-2
配管接続具1の使用例としては、溶解炉設備の炉蓋11cに装着された排気用治具であるシュート60と第1の排気ダクト51との間に接続されるものが示されているが、これに限られるものではなく、図7(a)示すように、例えばシュート60ではなく、炉蓋11cの排気口35周縁に立上げ形成された円筒状被接続部37に配管接続具1を直接接続するものであってもよい。
◎変形の形態1-3
配管接続具1の使用例として、配管同士を接続することも可能である。
例えば図7(b)(c)に示すように、第1の排気ダクト51を複数のダクトパーツ51a、51bに分離し、両方のダクトパーツ51a、51b同士を配管接続具1で接続して第1の排気ダクト51の途中で気流調整するようにしてもよい。
このとき、図7(b)に示すように、一方のダクトパーツ51aの端部に配管接続具1の端部を差し込んで調整器具80としてのバンド部材81でダクトパーツ51aを締め付け、他方のダクトパーツ51bと配管接続具1とは、例えば、夫々の端部に形成された接合フランジ85、86を付き合わせて止め具87で連結固定するようにしてもよい。
また、図7(c)に示すように、一方のダクトパーツ51aの端部に配管接続具1の端部を差し込んで調整器具80としてのバンド部材81でダクトパーツ51aを締め付け、他方のダクトパーツ51bの端部に配管接続具1の端部を差し込んで調整器具80としてのバンド部材81と同様なバンド部材82で締め付け保持するようにしてもよい。
【0037】
◎実施の形態2
図8(a)(b)は実施の形態2に係る配管設備の要部を示し、(a)はシュートに対し配管接続具を接続する前の状態を、(b)はシュートに対し配管接続具を装着した状態を夫々示す。
-配管設備の構成例-
同図において、配管設備10は、実施の形態1と同様に、溶解炉設備の第1の排気系15aに用いられるものであって、第1の排気ダクト51と、炉蓋11cに着脱可能に装着された排気用治具であるシュート60と、第1の排気ダクト51とシュート60との間を接続する配管接続具1と、を備えている。
本例において、配管接続具1は、実施の形態1と略同様に、上下両端が開口した円筒状管材2の外周壁に上下方向(中心軸方向に相当)に延びるスリット3を周方向に所定間隔を置いて多数開口したものである。
ここで、本例において、配管接続具1は、実施の形態1と異なり、円筒状管材2の一端部が第1の排気ダクト51の端部に周知の固定手段にて接続され、また、円筒状管材2の外周壁のうち第1の排気ダクト51寄りの領域に複数(本例では10個)のスリット3を等角度間隔α(本例ではα=36°)で形成し、更に、円筒状管材2とシュート60との間には、両者間の接続部領域を調整可能とする調整手段としての調整機構90が設けられている。
【0038】
本例において、シュート60は、実施の形態1と略同様に、円筒状のシュート本体61の下部に漏斗状に絞り込まれた連結部62を有しているが、実施の形態1と異なり、シュート本体61の外周壁の途中には鍔状のフランジ66を形成すると共に、シュート本体61のうちフランジ66よりも配管接続具1側には、配管接続具1の円筒状管材2の略全体が差し込み可能な長さの円筒状被接続部67を備えた態様になっている。
そして、本例において、調整機構90は、円筒状被接続部67の予め決められた位置に設けられた位置決めピン91と、位置決めピン91に係止可能に設けられ、円筒状管材2の中心線方向に対して延び且つスリット3の形成領域とは異なる領域に形成される長さの異なる複数の切欠溝92群と、を有している。
ここで、位置決めピン91は、例えば円筒状被接続部67の外周壁のうち上下方向(中心軸方向に相当)に沿う寸法の略中央付近の相対向する部位に一対設けられ、本例では、円柱状形状をもって径方向外方に突出して形成されている。
一方、切欠溝92群は、図9(a)~(c)に示すように、円筒状管材2の外周壁のうちスリット3の形成領域とは異なる領域において、スリット3の角度間隔と略同じ角度間隔β(本例ではβ=36°)で且つ上下方向の長さ寸法が段階的に変化するように形成されている。本例では、切欠溝92群はいずれも位置決めピン91が係合可能な幅寸法を有し、隣接する5つの切欠溝92(具体的には92a~92e)が段階的に変化する切欠深さをもって形成され、相対向する部位にある5つの切欠溝92(具体的には92a~92e)が同じ切欠深さをもって形成されている。
【0039】
本例においては、図9(c)に示すように、切欠溝92aが最大切欠深さhmaxを有し、切欠溝92eが最小切欠深さhminを有しており、位置決めピン91が切欠溝92(92a~92e)のいずれに係合するかによって円筒状被接続部67に対して配管接続具1の円筒状管材2の差し込み量が段階的に変化するようになっている。
別の見方をすれば、各切欠溝92(92a~92e)は、円筒状被接続部67のうち配管接続具1に接続する側の開口縁(以下、接続開口縁ともいう)68がスリット3を横断しない位置から横断する位置へと変化可能に配管接続具1を差し込むことができるように、その深さが段階的に深くなるように形成されている。
ここで、例えば図8(b)に示すように、円筒状被接続部67に配管接続具1を差し込むと、配管接続具1のスリット3は、円筒状被接続部67の接続開口縁68がスリット3を横断する位置を境に、円筒状被接続部67の外周壁に覆われる側が塞がれる。このため、本実施の形態の配管接続具1は、切欠溝92のいずれか(例えば切欠溝92c)に位置決めピン91を係合すると、選択した切欠溝92cの深さに応じて、配管接続具1の差し込み量、言い換えれば、スリット3の開口面積を変えることができるようになっている。
本例では、切欠溝92a~92eの深さはスリット3の開口面積がL~Lのレベル(例えばL=0%、L=25%、L=50%、L=75%、L=100%)に変化するように選定されている。
尚、本例の調整機構90は、シュート60に対して配管接続具1を回り止めする回り止め機構をも兼用した態様になっている。以下の実施の形態3~5の調整機構90についても同様である。
【0040】
-排気処理における気流の風速調整-
本例においても、配管接続具1の端部からの気流の風速調整は、円筒状管材2のスリット3の開口面積を調整すること、つまり、シュート60の円筒状被接続部67の接続開口縁68がスリット3に対して横断する位置を調整することにより行われる。
例えば気流の導入風速を弱めたい場合には、円筒状管材2のスリット3の上端部が炉蓋11cの上面から離間する方向、つまり、配管接続具1を円筒状被接続部67に差し込んだときの差し込み量が浅くなる方向に調整すればよい。そのためには、今、シュート60と配管接続具1との接続に際し、図8(b)に示すように、調整機構90の切欠溝92群から切欠溝92cが選択されているとすると、配管接続具1の差し込み量を浅くすることが可能な切欠溝92d又は92eを選択し、円筒状被接続部67の位置決めピン91と係合させるようにすればよい。これにより、スリット3の開口面積がレベルL(50%)であったものを、レベルL(75%)又はL(100%)に増加させ、スリット3を介して導入される気流の流量を増加させ、これに伴って、配管接続具1の端部からの気流の導入風速を弱めることが可能になる。
反対に、気流の導入風速を強めたい場合には、円筒状管材2のスリット3の上端部が炉蓋11cの上面に接近する方向、つまり、配管接続具1を円筒状被接続部67に差し込んだときの差し込み量が深くなる方向に調整すればよい。そのためには、今、シュート60と配管接続具1との接続に際し、図8(b)に示すように、調整機構90の切欠溝92群から切欠溝92cが選択されているとすると、配管接続具1の差し込み量を深くすることが可能な切欠溝92a又は92bを選択し、円筒状被接続部67の位置決めピン91と係合させるようにすればよい。これにより、スリット3の開口面積がレベルL(50%)であったものを、レベルL(0%)又はL(25%)に減少させ、スリット3を介して導入される気流の流量を減少させ、これに伴って、配管接続具1の端部からの気流の導入風速を強めることが可能になる。
尚、本実施の形態で用いられる調整機構90は、上述した態様に限られず、例えば切欠溝92群を配管接続具1側に形成するのではなく、シュート60側に形成し、一方、位置決めピン91をシュート60側に設けるのではなく、配管接続具1側に形成し、これらを係合させることによってスリット3の開口面積を調整するようにすることも可能である。
【0041】
◎実施の形態3
図10(a)~(c)は実施の形態3に係る配管設備の要部を示し、(a)はシュートに対し配管接続具を接続する前の状態を、(b)はシュートに対し配管接続具を装着した状態を、(c)は(b)中C-C線断面を夫々示す。
-配管設備の構成例-
同図において、配管設備10は、実施の形態2と略同様に、溶解炉設備の第1の排気系15aに用いられるものであって、第1の排気ダクト51と、炉蓋11cに着脱可能に装着された排気用治具であるシュート60と、第1の排気ダクト51とシュート60との間を接続する配管接続具1と、を備え、配管接続具1は、円筒状管材2の一端部が第1の排気ダクト51の端部に周知の固定手段にて接続され、また、円筒状管材2の外周壁のうち第1の排気ダクト51寄りの領域に複数(本例では10個)のスリット3を等角度間隔α(本例ではα=36°)で形成した態様であるが、円筒状管材2とシュート60との間には、両者間の接続部領域を調整可能とする調整手段としての調整機構90が実施の形態2と異なる態様に構成されている。
具体的に説明すると、本例において、調整機構90は、円筒状被接続部67の予め決められた位置に開設された第1の位置決め孔94と、円筒状管材2のうちスリット3の形成領域とは異なる領域に形成され且つ円筒状管材2の中心線方向に対して異なる複数の位置に並んで開設される第2の位置決め孔95群と、第1の位置決め孔94と第2の位置決め孔95群のいずれかとを位置合せした状態で挿通させる固定ロッド96と、を有している。これは、第2の位置決め孔95群のいずれかに、第1の位置決め孔94を位置合せした状態で固定ロッド96を挿通させる態様である。
【0042】
ここで、第1の位置決め孔94は、例えば円筒状被接続部67の外周壁のうち上下方向(中心軸方向に相当)に沿う寸法の略中央付近の相対向する部位に一対設けられ、本例では、断面矩形状の開口として形成されている。
一方、第2の位置決め孔95群は、円筒状管材2の外周壁のうちスリット3の形成領域とは異なる領域において、上下方向(中心軸方向に相当)の位置が段階的に変化する複数(本例では5個)の箇所の相対向する部位に一対ずつ形成されている。本例では、第2の位置決め孔95群はいずれも第1の位置決め孔94と略同等の断面矩形状の開口として形成され、一列に並んだ第2の位置決め孔95(具体的には95a~95e)はスリット3の下端部との間の距離が段階的に変化する位置に開設され、相対向する部位にある一列に並んだ第2の位置決め孔95(95a~95e)もスリット3の下端部との間の距離が同じ位置関係になるように形成されている。
更に、固定ロッド96は、例えば第1の位置決め孔94、第2の位置決め孔95群を貫通した状態で挿通可能な円柱状の棒材からなり、少なくとも円筒状管材2の外径寸法よりも長い長さ寸法を有している。
【0043】
-排気処理における気流の風速調整-
本例においても、配管接続具1の端部からの気流の風速調整は、円筒状管材2のスリット3の開口面積を調整すること、つまり、シュート60の円筒状被接続部67の接続開口縁68がスリット3に対して横断する位置を調整することにより行われる。具体的には、図10(b)(c)に示すように、シュート60の円筒状被接続部67に形成された第1の位置決め孔94と、配管接続具1の円筒状管材2に形成された第2の位置決め孔95群のいずれか(例えば第2の位置決め孔95c)とを一致するようにシュート60の円筒状被接続部67に配管接続具1を差し込んだ後、この一致させた第1の位置決め孔94及び第2の位置決め孔95c(95)に固定ロッド96を挿通して係合させることによって、シュート60の円筒状被接続部67に対する配管接続具1の差し込み量を調整し、もって、スリット3の開口面積を調整するようにすればよい。
本例では、第2の位置決め孔95a~95eの位置はスリット3の開口面積がL~Lのレベル(例えばL=0%、L=25%、L=50%、L=75%、L=100%)に変化するように選定されている。
【0044】
ここで、気流の導入風速を弱めたい場合には、仮に、シュート60と配管接続具1との接続に際し、図10(b)に示すように、調整機構90の第2の位置決め孔95群から第2の位置決め孔95cが選択されているとすると、配管接続具1の差し込み量を浅くすることが可能な第2の位置決め孔95d又は95eを選択し、円筒状被接続部67の第1の位置決め孔94と位置合せした後に第1、第2の位置決め孔94、95に固定ロッド96を挿通して係合させるようにすればよい。これにより、スリット3の開口面積がレベルL(50%)であったものを、レベルL(75%)又はL(100%)に増加させ、スリット3を介して導入される気流の流量を増加させ、これに伴って、配管接続具1の端部からの気流の導入風速を弱めることが可能になる。
反対に、気流の導入風速を強めたい場合には、仮に、シュート60と配管接続具1との接続に際し、図10(b)に示すように、調整機構90の第2の位置決め孔95群から第2の位置決め孔95cが選択されているとすると、配管接続具1の差し込み量を深くすることが可能な第2の位置決め孔95a又は95bを選択し、円筒状被接続部67の第1の位置決め孔94と位置合せした後に第1、第2の位置決め孔94、95に固定ロッド96を挿通して係合させるようにすればよい。これにより、スリット3の開口面積がレベルL(50%)であったものを、レベルL(0%)又はL(25%)に減少させ、スリット3を介して導入される気流の流量を減少させ、これに伴って、配管接続具1の端部からの気流の導入風速を強めることが可能になる。
尚、本実施の形態で用いられる調整機構90は、上述した態様に限られず、例えば第1の位置決め孔94、第2の位置決め孔95(本例では95a~95e)の形成箇所をシュート60側と配管接続具1側とで逆にするようにしてもよい。
【0045】
◎実施の形態4
図11(a)~(c)は実施の形態4に係る配管設備の要部を示し、(a)はシュートに対し配管接続具を接続する前の状態を示す説明図、(b)は(a)中B方向から見た矢視図、(c)は(a)中C-C線断面説明図である。
-配管設備の構成例-
同図において、配管設備10は、実施の形態2、3と略同様に、溶解炉設備の第1の排気系15aに用いられるものであって、第1の排気ダクト(図示せず)と、炉蓋(図示せず)に着脱可能に装着された排気用治具であるシュート60と、第1の排気ダクトとシュート60との間を接続する配管接続具1と、を備え、配管接続具1は、円筒状管材2の一端部が第1の排気ダクトの端部に周知の固定手段にて接続されているが、実施の形態2、3と異なり、円筒状管材2の外周壁には複数(本例では8個)のスリット3が等角度間隔α(本例ではα=45°)で形成されており、円筒状管材2とシュート60との間には、両者間の接続部領域を調整可能とする調整手段としての調整機構90が、実施の形態2、3と異なる態様に構成されている。
具体的に説明すると、本例において、調整機構90は、円筒状管材2の予め決められた位置に設けられる位置決めピン97と、位置決めピン97が係止可能に設けられ、シュート60の円筒状被接続部67の中心線方向に対して異なる複数の位置に設けられる複数の位置決め溝98群とを有している。これは、複数の位置決め溝98群のいずれかに、位置決めピン97を係止させる態様である。
【0046】
ここで、位置決めピン97は、円筒状管材2の外周壁のうちスリット3の形成領域とは異なるシュート60寄りの相対向する部位に一対設けられ、本例では、円柱状形状をもって径方向外方に突出して形成されている。
一方、図11(b)に示すように、円筒状被接続部67の外周壁の相対向する部位には、上下方向(中心軸方向に相当)に延び且つ上端部が開口する直線状の案内スリット99が一対形成されており、この案内スリット99の一側縁に面して上下方向の異なる位置に複数(本例では5個)の位置決め溝98(具体的には98a~98e)が並んで形成されている。本例において、位置決め溝98(98a~98e)は、いずれも円筒状被接続部67の周方向に沿って延びる周方向溝101と、周方向溝101の終端において下方側に屈曲した屈曲溝102とを備えている。
【0047】
-排気処理における気流の風速調整-
本例においても、配管接続具1の端部からの気流の風速調整は、円筒状管材2のスリット3の開口面積を調整すること、つまり、シュート60の円筒状被接続部67の接続開口縁68がスリット3に対して横断する位置を調整することにより行われる。具体的には、図11(b)に示すように、シュート60の円筒状被接続部67に形成された一対の案内スリット99に配管接続具1の位置決めピン97を挿入した後、円筒状被接続部67に形成された位置決め溝98群のいずれか(例えば位置決め溝98c)を選択し、選択した位置決め溝98cの周方向溝101に沿って位置決めピン97を摺動させ、位置決め溝98cの屈曲溝102に位置決めピン97を引っ掛け係止させることによって、シュート60の円筒状被接続部67に対する配管接続具1の差し込み量を調整し、もって、スリット3の開口面積を調整するようにすればよい。
本例では、位置決め溝98a~98eの位置はスリット3の開口面積がL~Lのレベル(例えばL=0%、L=25%、L=50%、L=75%、L=100%)に変化するように選定されている。
また、本例では、案内スリット99の位置決め溝98のない一側縁から周方向溝101の終端位置までの角度範囲は円筒状管材2のスリット3間の区画領域が占める角度範囲よりも小さくなるように選定されている。このため、調整機構90は、シュート60の円筒状被接続部67に対し配管接続具1を若干回転させて、選択されたいずれかの位置決め溝98に位置決めピン97を係合させるようにしているが、配管接続具1のスリット3が案内スリット99や位置決め溝98群の形成領域に露呈することはなく、スリット3の開口面積が案内スリット99等の存在によって損なわれることがないように配慮されている。
尚、本例では、配管接続具1はスリット3を等角度間隔で形成しているが、スリット3は、位置決め溝98に位置決めピン97を係合させたときに、スリット3が案内スリット99や位置決め溝98の形成領域に露呈しない限り、非等角度間隔であっても差し支えない。
【0048】
ここで、気流の導入風速を弱めたい場合には、仮に、シュート60と配管接続具1との接続に際し、図11(b)に示すように、調整機構90の位置決め溝98群から位置決め溝98cが選択されているとすると、配管接続具1の差し込み量を浅くすることが可能な位置決め溝98d又は98eを選択し、選択した位置決め溝98d又は98eに位置決めピン97を係合させるようにすればよい。これにより、スリット3の開口面積がレベルL(50%)であったものを、レベルL(75%)又はL(100%)に増加させ、スリット3を介して導入される気流の流量を増加させ、これに伴って、配管接続具1の端部からの気流の導入風速を弱めることが可能になる。
反対に、気流の導入風速を強めたい場合には、仮に、シュート60と配管接続具1との接続に際し、図11(b)に示すように、調整機構90の位置決め溝98群から位置決め溝98cが選択されているとすると、配管接続具1の差し込み量を深くすることが可能な位置決め溝98a又は98bを選択し、選択した位置決め溝98a又は98bに位置決めピン97を係合させるようにすればよい。これにより、スリット3の開口面積がレベルL(50%)であったものを、レベルL(0%)又はL(25%)に減少させ、スリット3を介して導入される気流の流量を減少させ、これに伴って、配管接続具1の端部からの気流の導入風速を強めることが可能になる。
尚、本実施の形態で用いられる調整機構90は、上述した態様に限られず、例えば位置決めピン97、位置決め溝98(本例では98a~98e)の形成箇所をシュート60側と配管接続具1側とで逆にするようにしてもよい。
【0049】
◎実施の形態5
図12(a)~(c)は実施の形態5に係る配管設備の要部を示し、(a)は排出ブースの被接続部に対し配管接続具を接続する前の状態を示す説明図、(b)は(a)中B-B線断面説明図、(c)は(a)中C方向から見た矢視図である。
-配管設備の構成例-
同図において、配管設備10は、実施の形態1乃至4とは異なり、溶解炉設備の第2の排気系15bに用いられるものであり、第2の排気ダクト(図示せず)と、排出ブース14の頂部14aに開設された排気口135周縁に立上げ形成された被接続部品としての円筒状被接続部137と、第2の排気ダクトと円筒状被接続部137との間を接続する配管接続具1と、を備えたものである。
そして、配管接続具1は、実施の形態4と略同様に、円筒状管材2の一端部が第2の排気ダクトの端部に周知の固定手段にて接続され、円筒状管材2の外周壁には複数(本例では8個)のスリット3を等角度間隔α(本例ではα=45°)で形成した態様であるが、円筒状管材2と円筒状被接続部137との間には、両者間の接続部領域を調整可能とする調整手段としての調整機構90が実施の形態4と異なる態様に構成されている。
具体的に説明すると、本例において、調整機構90は、円筒状被接続部137の予め決められた位置に設けられる位置決め溝110と、位置決め溝110に係止可能に設けられ、円筒状管材2のうちスリット3の形成領域とは異なる領域に形成され且つ円筒状管材2の中心線方向に対して異なる複数の位置に設けられる複数の位置決めピン120群と、を有している。これは、位置決め溝110に、複数の位置決めピン120群のいずれかを係止させる態様である。
【0050】
ここで、円筒状被接続部137の外周壁の相対向する部位には、上下方向(中心軸方向に相当)に延び且つ上端部が開口する直線状の案内スリット115が一対形成されており、この案内スリット115の一側縁に面して位置決め溝110が形成されている。本例において、位置決め溝110は、円筒状被接続部137の周方向に沿って延びる周方向溝111と、周方向溝111の終端において下方側に屈曲した屈曲溝112とを備えている。また、案内スリット115に面した排出ブース14の頂部14aの排気口135縁部には位置決めピン120群が通過可能な通過用切欠116が形成されている。尚、本例では、案内スリット115の位置決め溝110のない一側縁から周方向溝111の終端位置までの角度範囲は円筒状管材2のスリット3間の区画領域が占める角度範囲よりも小さくなるように選定されている。
また、位置決めピン120群は、円筒状管材2の外周壁のうちスリット3の形成領域とは異なるスリット3間の区画領域に形成され、上下方向(中心軸方向に相当)の異なる位置に複数(本例では5個)のピン要素121~125を含み、相対向する部位にも対応して複数(本例では5個)のピン要素121~125を含む。そして、本例の位置決めピン120(具体的にはピン要素121~125)は円柱状形状をもって径方向外方に突出して形成されている。
【0051】
-排気処理における気流の風速調整-
本例においても、配管接続具1の端部からの気流の風速調整は、円筒状管材2のスリット3の開口面積を調整すること、つまり、排出ブース14の円筒状被接続部137の接続開口縁138がスリット3に対して横断する位置を調整することにより行われる。具体的には、図12(a)(d)に示すように、配管接続具1の位置決めピン120群のいずれかのピン要素(例えばピン要素123)を選択し、円筒状被接続部137に形成された一対の案内スリット115に選択したピン要素123を挿入した後、位置決め溝110の周方向溝111に沿ってピン要素123を摺動させ、位置決め溝110の屈曲溝112にピン要素123を引っ掛け係止させることによって、円筒状被接続部137に対する配管接続具1の差し込み量を調整し、もって、スリット3の開口面積を調整するようにすればよい。
本例では、位置決めピン120(ピン要素121~125)の位置はスリット3の開口面積がL~Lのレベル(例えばL=0%、L=25%、L=50%、L=75%、L=100%)に変化するように選定されている。
【0052】
ここで、気流の導入風速を弱めたい場合には、仮に、排出ブース14の円筒状被接続部137と配管接続具1との接続に際し、図12(a)に示すように、調整機構90の位置決めピン120群からピン要素123が選択されているとすると、配管接続具1の差し込み量を浅くすることが可能なピン要素124又は125を選択し、図12(d)に示すように、案内スリット115を通じて位置決め溝110に選択したピン要素124又は125を係合させるようにすればよい。これにより、スリット3の開口面積がレベルL(50%)であったものを、レベルL(75%)又はL(100%)に増加させ、スリット3を介して導入される気流の流量を増加させ、これに伴って、配管接続具1の端部からの気流の導入風速を弱めることが可能になる。尚、位置決め溝110に係合したピン要素124(又は125)以外のピン要素は円筒状被接続部137の案内スリット115の開口領域から外れた位置に配置され、位置決め溝110へのピン要素124(又は125)の係合動作の邪魔にならないようになっている。
反対に、気流の導入風速を強めたい場合には、仮に、排出ブース14の円筒状被接続部137と配管接続具1との接続に際し、図12(a)に示すように、調整機構90の位置決めピン120群からピン要素123が選択されているとすると、配管接続具1の差し込み量を深くすることが可能なピン要素121又は122を選択し、図12(d)に示すように、案内スリット115を通じて位置決め溝110に選択したピン要素121又は122を係合させるようにすればよい。これにより、スリット3の開口面積がレベルL(50%)であったものを、レベルL(0%)又はL(25%)に減少させ、スリット3を介して導入される気流の流量を減少させ、これに伴って、配管接続具1の端部からの気流の導入風速を強めることが可能になる。尚、位置決め溝110に係合したピン要素121(又は122)以外のピン要素は円筒状被接続部137の案内スリット115の開口領域から外れた位置に配置されている。
尚、本実施の形態で用いられる調整機構90は、上述した態様に限られず、例えば位置決め溝110、位置決めピン120(ピン要素121~125)の形成箇所を円筒状被接続部137側と配管接続具1側とで逆にするようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上のように、本発明に係る配管接続具によれば、配管端部からの気流の風速を調整する上で、ブロワによる負圧状態を制御することなく、配管又は被接続部品に対する配管接続具の差し込み量を調整することで、配管接続具のスリットの開口面積を調整することが可能になり、これに伴って、配管端部に接続した配管接続具の端部からの気流の風速を容易に調整することができる。
このような配管接続具を含む配管設備や溶解炉設備を提供することにより、配管設備の排気性能や溶解炉設備の排気処理性能を簡単に調整することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 配管接続具
2 円筒状管材
3 スリット
4 配管
5 被接続部品
5a 円筒状被接続部
6 調整手段
7 回り止め手段
10 配管設備
11 溶解炉
11a 溶解炉本体
11b 溶解室
11c 炉蓋
11d 排出用樋
12 傾動作業台
13 固定作業台
13a 切欠開口
14 排出ブース
14a 頂部
15 排気設備
15a 第1の排気系
15b 第2の排気系
20 ピット空間部
21 駆動アクチュエータ
21a ピストン
25 防護柵
25a 防護柵の一部
M 作業者
SP 傾動支点
31 炉蓋本体
32 炉蓋開閉機構
33 揺動支点
34 支持アーム
35 排気口
37 円筒状被接続部
38 接続開口縁
41 ブース開口
42 扉
51 第1の排気ダクト
51a,51b ダクトパーツ
52 第2の排気ダクト
53 ジョイント
54 合流排気ダクト
60 シュート
61 シュート本体
62 連結部
65 サポートフランジ
66 フランジ
67 円筒状被接続部
68 接続開口縁
70 回り止め機構
71 切欠
72 回り止めピン
80 調整器具
81 バンド部材
82 バンド部材
85 接合フランジ
86 接合フランジ
87 止め具
90 調整機構
91 位置決めピン
92(92a~92e) 切欠溝
94 第1の位置決め孔
95(95a~95e) 第2の位置決め孔
96 固定ロッド
97 位置決めピン
98(98a~98e) 位置決め溝
99 案内スリット
101 周方向溝
102 屈曲溝
110 位置決め溝
111 周方向溝
112 屈曲溝
115 案内スリット
116 通過用切欠
120 位置決めピン
121~125 ピン要素
135 排気口
137 円筒状被接続部
138 接続開口縁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12