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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114992
(43)【公開日】2022-08-08
(54)【発明の名称】プレス成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 22/26 20060101AFI20220801BHJP
   B21D 24/00 20060101ALI20220801BHJP
   B21D 24/04 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
B21D22/26 C
B21D24/00 F
B21D24/00 H
B21D24/04 G
B21D22/26 D
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021011521
(22)【出願日】2021-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【弁理士】
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】松浦 侑也
(72)【発明者】
【氏名】中村 修司
【テーマコード(参考)】
4E137
【Fターム(参考)】
4E137AA08
4E137AA10
4E137AA18
4E137BA01
4E137BB01
4E137BC01
4E137CA09
4E137CA24
4E137DA14
4E137EA02
4E137GA01
4E137GB02
(57)【要約】
【課題】本発明は、歩留まりの向上やプレス成形品の品質改善を実現することができるプレス成形品の製造方法の提供を目的とした。
【解決手段】本発明のプレス成形品の製造方法は、略平坦な面を備え、当該面の縁となる部分にその面と交差する方向に対して負角となる窪み部Bが形成されたプレス成形品W2を製造するものであり、ブランクW1の一部を狭持する保持工程と、保持工程の後、ブランクW1の絞り加工を行う第一成形工程と、を含み、保持工程では、ブランクW1の一部が第一保持部材40及び第二保持部材50により狭持され、第一成形工程では、第一保持部材40及び第二保持部材50によりW1ブランクが狭持された状態で、ダイ20がパンチ30に対して相対的に移動してパンチ30とダイ20との間でブランクW1が押圧されて絞り加工が行われることを特徴とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス装置を用いてブランクを成形するプレス成形品の製造方法であって、
前記プレス成形品が、略平坦な面を備え、当該面の縁となる部分にその面と交差する方向に対して負角となる窪み部が形成されているものであり、
前記プレス装置は、
前記ブランクのプレス加工を行うダイ及びパンチと、
前記ブランクを下方から支持する第一保持部材と、
前記第一保持部材に対して前記ブランクを押しつけて保持する第二保持部材と、を有し、
前記ブランクの一部を狭持する保持工程と、
前記保持工程の後、前記ブランクの絞り加工を行う第一成形工程と、を含み、
前記保持工程では、前記ブランクの一部が前記第一保持部材及び前記第二保持部材により狭持され、
前記第一成形工程では、前記第一保持部材及び前記第二保持部材により前記ブランクが狭持された状態で、前記ダイが前記パンチに対して相対的に移動して前記パンチと前記ダイとの間で前記ブランクが押圧されて絞り加工が行われることを特徴とする、プレス成形品の製造方法。
【請求項2】
前記第二保持部材及び前記第一保持部材には、前記ブランクの端部近傍にステップ状のビードであるステップ状ビード部を形成するステップ成形部が設けられており、
前記保持工程において、前記ステップ状ビード部が形成されることを特徴とする、請求項1に記載のプレス成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス装置を用いたプレス成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブランク材に絞り加工を施すプレス装置として、ダイ、パンチ、及びブランクホルダを有するものが知られている。このようなプレス装置では、ダイとブランクホルダとでブランクを挟持した状態で、これらを一体に降下させ、ブランク材をパンチに押し付けることにより、所定形状の部品が成形される。
【0003】
ここで、プレス装置を用いて絞り加工を行う場合、ダイ及びブランクホルダでブランクが狭持される前にダイがブランクと接触すると(先当たりすると)、パネル変形などの不具合の要因となる。このような先当たりの問題に対して、例えば下記特許文献1には、上型に設けられた成形面(凹部)と狭持面との間に段差部を設けるとともに、狭持されたブランクが最初に接触する平坦部を設けたプレス成形用金型が開示されている。特許文献1のプレス成形用金型では、平坦部を設けることで接触箇所の圧力を分散して面圧を下げ、ドローマークなどの不具合の発生を抑制することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-42780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従来では、段差部を設けて先当たりに起因するパネル変形などの不具合を抑制する対策が講じられていた。すなわち、従来では、先当たりを回避するために、ダイの絞り成形面に対してブランクホルダの位置(ダイフェース)を下げ、絞り成形面の位置に対してブランクを狭持する狭持面の位置を下げる構成(段差部が設けられた構成)とされていた。
【0006】
しかしながら、段差部は、最終的な製品(部品)では除去される部分となる。そのため、段差部を成形するために材料(ブランク)を多く流入させる必要がある上、最終的に除去される部分(余肉となる部分)が多くなり、歩留まりを低下させる要因となっていた。そのため、歩留まりを向上させつつ、プレス成形品の品質を改善することができる技術の提供が求められていた。
【0007】
そこで本発明は、歩留まりの向上やプレス成形品の品質改善を実現することができるプレス成形品の製造方法の提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上述の課題を解決すべく提供される本発明のプレス成形品の製造方法は、プレス装置を用いてブランクを成形するプレス成形品の製造方法であって、前記プレス成形品が、略平坦な面を備え、当該面の縁となる部分にその面と交差する方向に対して負角となる窪み部が形成されているものであり、前記プレス装置は、前記ブランクのプレス加工を行うダイ及びパンチと、前記ブランクを下方から支持する第一保持部材と、前記第一保持部材に対して前記ブランクを押しつけて保持する第二保持部材と、を有し、前記ブランクの一部を狭持する保持工程と、前記保持工程の後、前記ブランクの絞り加工を行う第一成形工程と、を含み、前記保持工程では、前記ブランクの一部が前記第一保持部材及び前記第二保持部材により狭持され、前記第一成形工程では、前記第一保持部材及び前記第二保持部材により前記ブランクが狭持された状態で、前記ダイが前記パンチに対して相対的に移動して前記パンチと前記ダイとの間で前記ブランクが押圧されて絞り加工が行われることを特徴とする。
【0009】
本発明のプレス成形品の製造方法では、ダイがブランクと接触する前に(ダイヒット前に)、第一保持部材(ローワーブランクホルダ)と第二保持部材(アッパーブランクホルダ)とで材料を把持する。そのため、本発明のプレス成形品の製造方法では、ブランクを把持する前にダイがブランクに当たること(先当たり)を回避するとともに、ブランクホルダの位置(ダイフェース)を上げることができる。これにより、ダイの絞り成形面と狭持面との間の高低差(段差部)を設けることを要さず、ブランクにテンションがかかった状態でダイをヒットさせることができる。その結果、本発明のプレス成形品の製造方法は、バックリングや割れを抑制し、品質や成形性を改善することができる。
【0010】
また、本発明のプレス成形品の製造方法では、段差部を設ける必要がないため、絞り成形の深さ(絞り量)を小さくすることができる(浅絞りが可能となる)。すなわち、本発明のプレス成形品の製造方法では、従来設けられていた段差部を設けず浅絞りとすることができるため、材料の流入量を少なくすることができる(絞り加工に必要なブランクの実長を少なくすることができる)。これにより、本発明のプレス成形品の製造方法では、歩留まり向上を実現することができる。また、本発明のプレス成形品の製造方法では、浅絞りとすることができるため、材料の流入量を減少させつつ従来の技術よりも成形性を改善することができる。
【0011】
(2)本発明のプレス成形品の製造方法は、前記第二保持部材及び前記第一保持部材には、前記ブランクの端部近傍にステップ状のビードであるステップ状ビード部を形成するステップ成形部が設けられており、前記保持工程において、前記ステップ状ビード部が形成されるものであるとよい。
【0012】
上述の構成によれば、従来の円弧状あるいは台形状のビード(凹凸状のビード)と比較して、ビードを小さくすることができる。これにより、本発明のプレス成形品の製造方法では、ビードを成形するためのブランクの実長を小さくして、歩留まりを向上させることができる。
【0013】
より詳細に説明すると、従来の技術では、段差部及び凹凸状のビードを設け、段差部や凹凸状のビードを絞り成形過程におけるブランクの引っ掛けとしていた(図8(b)参照)。
【0014】
これに対して、本発明のプレス成形品の製造方法では段差部を設けることを要さず、かつ浅絞りとすることができる。また、ビードをステップ状のもの(ステップ状ビード部)とすることで、ビードを小さくしても、絞り加工の際にブランクを十分に引っ掛けて止めることができる(ブランクの位置ズレを抑制することができる)。これにより、本発明のプレス成形品の製造方法では、ビードを成形するため、あるいは段差部を成形するためのブランクの実長(例えば図5(b)中の部分Y1から部分Y2までのブランクW1の距離L1)を小さくすることが可能となり、歩留まりを向上させることができる。
【0015】
(3)本発明のプレス成形品の製造方法は、前記第二保持部材及び前記第一保持部材には、前記ブランクの端部近傍にステップ状のビードであるステップ状ビード部を形成するステップ成形部が設けられており、前記ブランクの曲げ加工を行う曲げ刃を備え、前記第一成形工程の後、前記曲げ刃により前記ブランクの曲げ加工を行う第二成形工程を含み、前記保持工程において、前記ステップ状ビード部が形成され、前記第二成形工程において、前記ステップ状ビード部が前記ブランクの位置決め部分として機能するものであるとよい。
【0016】
上述の構成によれば、ステップとされたビードの形状(ステップ状ビード部)を、曲げ加工(第二成形工程)の際にブランクの位置決め部分として利用することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、歩留まりの向上やプレス成形品の品質改善に貢献することができるプレス成形品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(a)は本発明のプレス成形品の製造方法により製造された部品の一例、(b)は図1(a)のA-A’線断面図を示している。
図2】本発明のプレス成形品の製造方法に用いられるプレス装置を示す模式図である。
図3図1のプレス成形品の製造方法の保持工程を示す模式図である。
図4図1のプレス成形品の製造方法の第一成形工程を示す模式図である。
図5図1のプレス成形品の製造方法の第一成形工程を示す模式図である。
図6図1のプレス成形品の製造方法の第二成形工程を示す模式図である。
図7図1のプレス成形品の製造方法の第二成形工程を示す模式図である。
図8】従来のプレス成形品の製造方法の工程を示す参考図である。
図9】従来のプレス成形品の製造方法の工程を示す参考図である。
図10】従来のプレス成形品の製造方法により成形されたプレス成形品を示す参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明のプレス成形品の製造方法の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
プレス成形品の製造方法は、プレス装置10を用いてブランクW1を成形し、プレス成形品W2を製造する方法である。以下の説明では、プレス成形品W2の一例やプレス装置10の各構成について説明し、その後プレス成形品の製造方法について説明する。
【0021】
プレス装置10は、板状の金属材料(以下、単に「ブランクW1」と記載して説明する)を成形するものである。ブランクW1は、金属板、例えば鋼板、特にハイテン材からなる。なお、以下の説明では、ブランクW1をプレス成形して得られる成形品(プレス成形品)を、単に「プレス成形品W2」と記載して説明する場合がある。また、プレス成形品W2の余剰部分を除去した製品を、単に「部品W3」と記載して説明する場合がある。
【0022】
プレス装置10では、自動車のルーフ、フェンダー、フード、フロントドアやリアドアなど、様々な部品を成形可能とされている。図1(a)には、本実施形態のプレス成形品の製造方法により成形されたプレス成形品W2の余剰部分を除去した後の部品W3の一例を示している。なお、部品W3は、自動車のルーフ(部品W3)として用いられるものである。
【0023】
図1(b)に示すとおり、部品W3は、車両に取り付けられた状態における前後方向のうち、後方部分に内側に窪むような部分(窪み部B)を備えている。より詳細に説明すると、部品W3の後方部分に形成された窪み部Bは、断面視において上下方向に対して負角になるような窪んだ部分とされている。すなわち、部品W3は、車両の天井面(ルーフ部分)を構成するような略平坦な面を備え、当該面の縁となる部分にその面と交差する方向(上下方向)に対して負角となる部分(窪み部B)が形成されている。なお、図1(b)に示す窪み部Bは、バックドアの回転軌道を確保するために形成された部分である。
【0024】
なお、本発明のプレス成形品の製造方法は、ルーフを成形する場合に限定されず、様々な部品を製造するために用いることができる。
【0025】
図2に示すとおり、プレス装置10は、保持工程から第一成形工程までの工程で用いられる構成として、ダイ20、パンチ30、ローワーブランクホルダ40(第一保持部材)、及びアッパーブランクホルダ50(第二保持部材)を備えている。また、図6に示すとおり、プレス装置10には、第二成形工程で用いられる構成として、曲げ刃70、曲げ型72、アッパーブランクホルダ74、及びローワーブランクホルダ76が設けられている。ダイ20及びパンチ30は、近接あるいは離間するように上下方向に相対的に移動して、ブランクW1を押圧してプレス加工を行うものである。
【0026】
本実施形態のプレス装置10では、ダイ20がパンチ30に対して相対的に昇降可能とされている。より詳細に説明すると、本実施形態のプレス装置10では、ダイ20が上下方向に昇降可能とされた上型本体(図示を省略)に取り付けられている。また、パンチ30、及びローワーブランクホルダ40は下型本体(図示を省略)に取り付けられている。すなわち、本実施形態のプレス装置10では、ダイ20が可動型であり、パンチ30が固定型となっている。
【0027】
図2に示すとおり、ダイ20の下方面には、パンチ30との間でブランクW1を狭持してブランクW1の絞り加工を行う絞り成形面22が形成されている。また、パンチ30には、ダイ20の絞り成形面22とともにブランクW1の絞り加工を行う絞り成形面32が形成されている。
【0028】
なお、以下の説明では、ダイ20の昇降方向(上下方向)を、単に「昇降方向H」又は「上下方向H」と記載して説明する場合がある。
【0029】
ローワーブランクホルダ(第一保持部材)40及びアッパーブランクホルダ50(第二保持部材)は、ブランクW1の成形前にブランクW1の端部を狭持して保持するためのものである。
【0030】
図3(a)に示すとおり、ローワーブランクホルダ40は、ブランクW1を下方から支持してブランクW1を保持する。図3(a)に示すとおり、アッパーブランクホルダ50は、ローワーブランクホルダ40と対向するように上方に設けられている。アッパーブランクホルダ50は、ローワーブランクホルダ40に対してブランクW1を押しつけて保持する(図3(b)参照)。
【0031】
言い方を換えれば、ローワーブランクホルダ40及びアッパーブランクホルダ50は、絞り加工や曲げ加工などの成形工程が行われる前段階(第一成形工程や第二成形工程の前の段階で)で、ブランクW1を保持する保持部材として機能する。ローワーブランクホルダ40は、図示を省略したシリンダを介して下型本体に取り付けられており、パンチ30に対して上下方向Hに相対的に移動可能とされている。
【0032】
このように、ローワーブランクホルダ40及びアッパーブランクホルダ50は、絞り加工や曲げ加工が行われる前にブランクW1を狭持して保持する保持部材として機能する。言い方を換えれば、ローワーブランクホルダ40の上方面(ダイフェース41)及びアッパーブランクホルダ50の下方面は、ブランクW1を狭持する狭持面Fをなしている。
【0033】
なお、以下の説明では、ローワーブランクホルダ40の上方面のうち、ブランクW1と接触する面(ブランクW1を掴む面)を、単に「ダイフェース41」と記載して説明する場合がある。
【0034】
上述のとおり、アッパーブランクホルダ50及びローワーブランクホルダ40は、第一成形工程が終了するまでの間ブランクW1を保持する。また、アッパーブランクホルダ74及びローワーブランクホルダ76は、第二成形工程においてブランクW1を保持するものとして用いられる。
【0035】
図2に示すとおり、ローワーブランクホルダ40及びアッパーブランクホルダ50には、ステップ成形部60が設けられている。ステップ成形部60は、ブランクW1の端部近傍にステップ状のビード(ステップ状ビード部Ws)を形成するために設けられている(図3(b)参照)。
【0036】
より詳細に説明すると、図2に示すとおり、ローワーブランクホルダ40の上方面(ダイフェース41)にはステップ状に形成された下方側ステップ成形部61が設けられており、アッパーブランクホルダ50の下方面には上方側ステップ成形部62が設けられている。下方側ステップ成形部61及び上方側ステップ成形部62は、これらが対となってブランクW1の端部近傍を狭持して、ステップ状の部分(ステップ状ビード部Ws)を形成するためのステップ成形部60をなしている(図3(b)参照)。
【0037】
図2に示すとおり、ステップ成形部60は、ダイ20側の狭持面FからブランクW1の外縁側の狭持面Fが一段下がるような形状とされている。すなわち、ステップ成形部60は、上下方向Hに異なる位置に形成された狭持面Fを連結するように略鉛直に形成された壁面Fa備えており、段差がある(ステップ状の)形状とされている。
【0038】
さらに、ステップ成形部60は、略水平の狭持面Fと壁面Faとがなす角度が概ね直角となるように形成されている。そのため、ステップ成形部60は、後述する曲げ刃の進入方向Xに対して負角にならないように形成されている(図6参照)。
【0039】
なお、図6に示すとおり、ローワーブランクホルダ76及びアッパーブランクホルダ74には、ステップ係止部80が設けられている。ステップ係止部80は、ステップ成形部60と略同一の形状(ステップの高さなど)とされている。ステップ係止部80は、曲げ加工の際にステップ状ビード部Wsを引っ掛けて、ブランクW1を位置決めする。
【0040】
曲げ刃70及び曲げ型72は、ブランクW1の端部に窪み部Bを成形するためのものである(図6参照)。図6(b)に示すとおり、曲げ刃70は、ダイ20の昇降方向Hに対し所定の角度(昇降方向Hに対して角度θの進入方向X)でブランクW1に対して移動可能とされており、ブランクW1に負角となる部分(窪み部B)を形成する。
【0041】
なお、曲げ刃70は、図示を省略したカムの先端に設けられており、カムに押されて曲げ型72に近接する方向に進入可能とされている。
【0042】
<プレス成形品の製造方法における各工程>
次に、本発明のプレス成形品の製造方法について説明する。
【0043】
本実施形態のプレス成形品の製造方法には、ブランクW1の一部(端部)を狭持する保持工程と、ブランクW1の絞り加工を行う第一成形工程と、ブランクW1の寄せ曲げ加工を行う第二成形工程と、が含まれる。
【0044】
本実施形態で一例として示すプレス装置10は、複数の加工エリアを備えており、所定の加工エリアで保持工程及び第一成形工程が行われた後、ブランクW1が他の加工エリアに搬送されて第二成形工程が行われる。なお、本実施形態では複数の加工エリアで(別の加工エリアで)第一成形工程や第二成形工程が行われる例を示したが、本発明は本実施形態に限定されず、一つの加工エリアで保持工程、第一成形工程、及び第二成形工程を行うものとしてもよい。以下、各工程について詳細に説明する。
【0045】
<保持工程>
保持工程では、ブランクW1の一部(端部)がローワーブランクホルダ40及びアッパーブランクホルダ50により狭持され、ステップ状ビード部Wsが形成される。より詳細に説明すると、まず、図3(a)に示すように、ローワーブランクホルダ40のダイフェース41上にブランクW1を載置する。
【0046】
また、図3(b)に示すとおり、アッパーブランクホルダ50を下降させてローワーブランクホルダ40に対してアッパーブランクホルダ50を押しつけ、アッパーブランクホルダ50とローワーブランクホルダ40との間でブランクW1を保持する。これにより、ブランクW1の端部がローワーブランクホルダ40及びアッパーブランクホルダ50により狭持されて保持される。
【0047】
図3(b)に示すとおり、保持工程では、ローワーブランクホルダ40とアッパーブランクホルダ50とでブランクW1が狭持され、下方側ステップ成形部61及び上方側ステップ成形部62に押圧されてブランクW1の端部にステップ状のビード(ステップ状ビード部Ws)が形成される。
【0048】
<第一成形工程>
保持工程の後、第一成形工程が行われる。第一成形工程では、ローワーブランクホルダ40及びアッパーブランクホルダ50によりブランクW1が狭持された状態で、ダイ20がパンチ30に対して相対的に移動してパンチ30とダイ20との間でブランクW1が押圧されて絞り加工が行われる。
【0049】
より詳細に説明すると、図4(a)に示すとおり、ローワーブランクホルダ40及びアッパーブランクホルダ50によりブランクW1が挟持された状態で、ダイ20がパンチ30に向かって下降する。これにより、ブランクW1がパンチ30の絞り成形面32に押し付けられて、絞り加工が開始される。ここで、ブランクW1はローワーブランクホルダ40及びアッパーブランクホルダ50により狭持されているため、ブランクW1はテンションがかかった状態で押し込まれる。また、図4(b)に示すとおり、ダイ20の下降が進むと、絞り成形面22に形成された二つの隆起部分22a,22bにブランクW1が押される。
【0050】
図5(a)に示すとおり、その後さらにダイ20を下降させ、ダイ20が下端位置(下死点)に達すると、ブランクW1の絞り加工が終了する。このようにして、図5(b)に示すとおり、ブランクW1がダイ20の絞り成形面22に沿った形状に成形される。
【0051】
ここで、図8(a)の参考図に示すとおり、従来のプレス成形品の製造方法では、ダイ120が、絞り成形面122及びブランクW1の狭持面124と一体的に形成された構成とされていた。また、従来では、ダイ120及びブランクホルダ140でブランクW1が狭持される前にダイ120がブランクW1と接触すること(先当たり)を回避するために、ダイ120の絞り成形面122に対してブランクホルダ140の位置(ダイフェース141)を下げ、絞り成形面122の位置に対してブランクを狭持する狭持面F’の位置を下げる構成(段差部126が設けられた構成)とされていた。
【0052】
しかしながら、図10に示すとおり、段差部126に相当する部分(段差部分Wc)は最終的な製品(部品)では除去される部分(除去部E)となる。そのため、段差部126を成形するために材料(ブランクW1)を多く流入させる必要がある上、最終的に除去される部分(除去部E)が多くなり、歩留まりを低下させる要因となっていた。具体的には、図10に示すとおり、段差部126を備えるダイ120を用いて成形されたプレス成形品W2’では、段差部126に相当する部分(段差部分Wc)は除去部Eとなり、除去部Eの長さL2’が大きくなってしまう。
【0053】
これに対して本実施形態のプレス成形品の製造方法では、ダイ20がブランクW1と接触する前に(ダイヒット前に)、ローワーブランクホルダ40とアッパーブランクホルダ50とで材料を把持する。そのため、本実施形態のプレス成形品の製造方法では、ブランクW1を把持する前にダイがブランクに当たること(先当たり)を回避するとともに、アッパーブランクホルダ50の位置を上げることができる。これにより、ダイ20の絞り成形面22と狭持面Fとの間の高低差(段差部126)を設けることを要さず、ブランクW1にテンションがかかった状態でダイ20をヒットさせることができる。その結果、本実施形態のプレス成形品の製造方法は、バックリングや割れを抑制し、品質や成形性を改善することができる。
【0054】
また、本発明のプレス成形品の製造方法では、段差部126を設ける必要がない。そのため、図5(b)に示すとおり、本実施形態のプレス成形品の製造方法では、絞り成形の深さ(絞り量M、図5(b)中の部分Y1から部分Y2までの深さ)を小さくすることができる(浅絞りが可能となる)。すなわち、本実施形態のプレス成形品の製造方法では、従来設けられていた段差部126を設けず浅絞りとすることができるため、材料の流入量を少なくすることができる(絞り加工に必要なブランクW1の実長L1を少なくすることができる)。これにより、本実施形態のプレス成形品の製造方法では、歩留まり向上を実現することができる。また、本実施形態のプレス成形品の製造方法では、浅絞りとすることができるため、材料の流入量を減少させつつ従来の技術よりも成形性を改善することができる。
【0055】
また、本実施形態のプレス成形品の製造方法では、保持工程において、ブランクW1の端部近傍にステップ状のビードとされたステップ状ビード部Wsが形成される。
【0056】
これにより、従来の円弧状あるいは台形状のビード(図8(b)に示すような凹凸状のビードWb)と比較して、ビードを小さくすることができる。そのため、本実施形態のプレス成形品の製造方法では、ビードを成形するためのブランクW1の端部の長さ(図5(b)中の長さL2)を小さくして、歩留まりを向上させることができる。
【0057】
より詳細に説明すると、従来の技術では、段差部126及び凹凸状のビードWbを設け、段差部126や凹凸状のビードWbを絞り成形過程におけるブランクW1の引っ掛けとしていた(図8(b)参照)。
【0058】
これに対して、本実施形態のプレス成形品の製造方法では段差部126を設けることを要さず、かつ浅絞りとすることができる。また、ビードをステップ状のもの(ステップ状ビード部Ws)とすることで、ビードを小さくしても、絞り加工の際にブランクW1を十分に引っ掛けて止めることができる(ブランクW1の位置ズレを抑制することができる)。これにより、本実施形態のプレス成形品の製造方法では、ビードを成形するため、あるいは段差部126を成形するためのブランクW1の実長(例えば図5(b)中の部分Y1から部分Y2までのブランクW1の距離L1)を小さくすることが可能となり、歩留まりを向上させることができる。
【0059】
<第二成形工程>
第一成形工程の後、ブランクW1が他の加工エリアに搬送され、第二成形工程が行われる。第二成形工程では、第一成形工程により所定の形状に形成されたブランクW1に対し、負角となる部分を成形する寄せ曲げ加工が行われる。
【0060】
より詳細に説明すると、図6(a)に示すとおり、第二成形工程では、ブランクW1の端部近傍に形成されたステップ状ビード部Wsがローワーブランクホルダ76のステップ係止部80に引っ掛けられた状態で、ブランクW1に対して曲げ刃70が進入方向Xに向かって移動する。また、図6(b)及び図7(a)に示すとおり、曲げ刃70がブランクW1を押し込んで、窪み部Bが形成される。
【0061】
すなわち、第二成形工程では、ブランクW1に形成されたステップ状ビード部Wsが、ローワーブランクホルダ40のステップ係止部80に保持された状態(引っ掛けられた状態)で寄せ曲げ加工が行われる。言い方を換えれば、第二成形工程において、ステップ状ビード部Wsは、ブランクW1の位置決め部分として機能する。
【0062】
これにより、ステップ状ビード部Wsの形状を曲げ加工の工程(第二成形工程)の際に、ブランクW1の位置決めに利用することができる。
【0063】
以上、本発明のプレス成形品の製造方法の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されない。
【0064】
例えば、上述の実施形態で説明したプレス装置10では、ダイ20を昇降可能な可動型とし、パンチ30を固定型とした例を示したが、本発明のプレス成形品の製造方法に用いられるプレス装置はこれに限定されず、ダイ20を固定型とし、パンチ30を可動型とさせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、絞り加工によるプレス成形品を製造する方法として、好適に採用することができる。
【符号の説明】
【0066】
10 プレス装置
20 ダイ
30 パンチ
40 ローワーブランクホルダ(第一保持部材)
41 ダイフェース
50 アッパーブランクホルダ(第二保持部材)
60 ステップ成形部
61 下方側ステップ成形部(ステップ成形部)
62 上方側ステップ成形部(ステップ成形部)
70 曲げ刃
W1 ブランク
W2 プレス成形品
W3 部品
Ws ステップ状ビード部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10