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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115043
(43)【公開日】2022-08-08
(54)【発明の名称】給水装置
(51)【国際特許分類】
   F04D 15/00 20060101AFI20220801BHJP
【FI】
F04D15/00 J
F04D15/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021122434
(22)【出願日】2021-07-27
(31)【優先権主張番号】P 2021011036
(32)【優先日】2021-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000148209
【氏名又は名称】株式会社川本製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】坂谷 哲則
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 章太
(72)【発明者】
【氏名】坂野 聖治
【テーマコード(参考)】
3H020
【Fターム(参考)】
3H020BA03
3H020BA21
3H020CA04
3H020CA10
3H020DA02
3H020EA03
3H020EA05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】小水量停止制御が正常作動しない場合であっても、電動ポンプ3を停止させることが可能な給水装置を提供する。
【解決手段】吐出し側水温と吸込み側水温との温度差ΔTが停止温度差ΔTs以上となったときに電動ポンプ3を停止させる。このとき、制御部10は、流量センサFsに異常が発生した時の第1温度センサTs1の検出温度を吸込み側水温として温度差ΔTを把握する。そして、給水量が小さい状態で電動ポンプ3が稼働し続けると、当該電動ポンプ3のポンプ仕事の多くが熱として水に付与される。このため、給水量が小さい状態で電動ポンプ3が稼働し続けると、温度差ΔTが大きくなる。したがって、温度差ΔTが予め決められた値以上となったときに電動ポンプ3を停止させる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水用の電動ポンプと、
給水量を検出するための流量センサと、
前記電動ポンプの吐出し側水温と当該電動ポンプの吸込み側水温との温度差を検出するために利用される温度センサと、
前記電動ポンプの停止及び稼働を制御する制御部であって、前記流量センサの検出信号を利用した小水量停止制御、及び前記温度差を利用した異常時停止制御を実行可能な制御部とを備え、
前記小水量停止制御は、前記電動ポンプによる給水量が予め決められた流量(以下、停止流量という。)以下となったときに前記電動ポンプを停止させる制御であり、
前記異常時停止制御は、前記温度差が予め決められた値(以下、停止温度差という。)以上となったときに前記電動ポンプを停止させる制御である給水装置。
【請求項2】
前記温度センサは、前記電動ポンプの吐出し側水温を直接的又は間接的に検出し、かつ、当該温度センサが検出した水温(以下、検出水温という。)を示す検出信号が前記制御部に入力されており、
さらに、前記制御部は、前記流量センサに異常が発生しているときに前記異常時停止制御を実行し、かつ、当該異常が発生した時の検出水温を前記電動ポンプの吸込み側水温として前記温度差を把握する請求項1に記載の給水装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記電動ポンプの吐出し側水温が予め決められた水温以上となったときに前記電動ポンプを停止させる第2の異常時停止制御を実行可能である請求項1又は2に記載の給水装置。
【請求項4】
給水圧を検出するための圧力センサを備え、
前記制御部は、前記電動ポンプが停止しているときであって給水圧が予め決められた圧力以下となったときに、当該電動ポンプを起動させる正常時起動制御を実行可能であり、
さらに、前記圧力センサに異常が発生した時に前記電動ポンプを起動させる異常時起動制御を実行可能である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の給水装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記圧力センサに異常が発生しているときに前記電動ポンプを起動するための第2の異常時起動制御が実行可能であり、
前記第2の異常時起動制御は、前記温度差が前記停止温度差より小さい予め決められた値以下になったときに、前記電動ポンプを起動する制御である請求項4に記載の給水装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記圧力センサに異常が発生しているときに前記電動ポンプを起動するための第3の異常時起動制御が実行可能であり、
前記第3の異常時起動制御は、前記電動ポンプが停止した時から予め決められた時間が経過したときに、前記電動ポンプを起動する制御である請求項4又は5に記載の給水装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記圧力センサに異常が発生しているときに前記電動ポンプを起動するための第4の異常時起動制御が実行可能であり、
前記第4の異常時起動制御は、前記電動ポンプの吐出し側水温が、前記電動ポンプの吸込み側水温と予め決められた値との相加平均値以下となったときに、前記電動ポンプを起動する制御である請求項4ないし6のいずれか1項に記載の給水装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記異常時起動制御、前記第2の異常時起動制御、前記第3の異常時起
動制御又は前記第4の異常時起動制御により前記電動ポンプを起動したときは、前記電動ポンプの運転回転数を異常時運転回転数とする制御が実行可能であり、
前記異常時運転回転数は、前記電動ポンプの最大運転可能回転数と給水量が前記停止流量となる当該電動ポンプの運転回転数との相加平均値である請求項4ないし7のいずれか1項に記載の給水装置。
【請求項9】
複数の前記電動ポンプを備えており、
前記制御部は、前記小水量停止制御、前記異常時停止制御又は前記第2の異常時停止制御にて複数の前記電動ポンプのうちいずれかの電動ポンプを停止させた後、再び、電動ポンプを起動する際には、当該停止させた電動ポンプと異なる電動ポンプを起動させる請求項1ないし8のいずれか1項に記載の給水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水等の液体を送水する給水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に給水装置では、流量センサを用いて電動ポンプの停止制御を実行し、圧力センサを用いて電動ポンプの起動及び稼働の制御を実行している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6680524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
流量センサ及び圧力センサのうち少なくとも一方のセンサに異常が発生すると、電動ポンプの停止制御、並びに起動及び稼働の制御を適切に実行することができない。しかし、センサに異常が発生したときに給水装置の運転が停止すると、給水が停止するため、利用者に大きな支障が生じる可能性ある。そこで、本開示は、当該点に鑑みた給水装置の一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
給水装置は、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。すなわち、当該構成要件は給水用の電動ポンプ(3)と、給水量を検出するための流量センサ(Fs)と、電動ポンプ(3)の吐出し側水温と当該電動ポンプ(3)の吸込み側水温との温度差(ΔT)を検出するために利用される温度センサ(Ts1)と、電動ポンプ(3)の停止及び稼働を制御する制御部(10)であって、流量センサ(Fs)の検出信号を利用した小水量停止制御、及び温度差(ΔT)を利用した異常時停止制御を実行可能な制御部(10)とを備え、小水量停止制御は、電動ポンプ(3)による給水量が予め決められた流量以下となったときに電動ポンプ(3)を停止させる制御であり、異常時停止制御は、温度差(ΔT)が予め決められた値以上となったときに電動ポンプ(3)を停止させる制御であることである。
【0006】
これにより、当該給水装置では、小水量停止制御が正常作動しない場合であっても、電動ポンプ(3)を停止させることが可能である。
【0007】
すなわち、給水量が小さい状態で電動ポンプ(3)が稼働し続けると、当該電動ポンプ(3)のポンプ仕事の多くが熱として水に付与される。このため、給水量が小さい状態で電動ポンプ(3)が稼働し続けると、温度差(ΔT)が大きくなる。
【0008】
したがって、温度差(ΔT)が予め決められた値以上となったときに、制御部(10)が電動ポンプ(3)を停止させれば、小水量停止制御が正常作動しない場合であっても、電動ポンプ(3)を停止させることが可能である。
【0009】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る給水装置を示す図である。
図2】第1実施形態に係る停止制御モード選択制御を示すフローチャートである。
図3】第1実施形態に係る停止制御を示すフローチャートである。
図4】第1実施形態に係る運転制御モード選択制御を示すフローチャートである。
図5】第1実施形態に係る運転制御を示すフローチャートである。
図6】第2実施形態に係る給水装置を示す図である。
図7】第2実施形態に係る停止制御モード選択制御を示すフローチャートである。
図8】第3実施形態に係る給水装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0012】
少なくとも符号が付されて説明された機器や部材等の構成要素は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該構成要素は2以上設けられていてもよい。本開示に示された給水装置は、少なくとも符号が付されて説明された構成要素等を備える。
【0013】
(第1実施形態)
<1.給水装置の概要>
本実施形態は、例えば、マンションや商業ビル等の建物に適用される給水装置に本開示に係る給水装置の一例が適用されたものである。図1に示されるように、本実施形態に係る給水装置1は、電動ポンプ3、蓄圧装置5及び制御部10等を少なくとも備える。
【0014】
電動ポンプ3は、ポンプ部3A及びモータ部3Bを有する電動式のポンプである。電動ポンプ3の吐出し側は、建物の配水管側に接続されている。そして、電動ポンプ3は、例えば受水槽7に貯留された水を配水管に供給する。
【0015】
なお、本実施形態に係るポンプ部3Aは、ターボ型ポンプ等の容積型ポンプ以外のポンプである。具体的には、当該ポンプ部3Aは、インペラ(羽根車)及び当該インペラが回転可能に収納されたケーシング等を有する。なお、電動ポンプ3の回転数とは、インペラの単位時間当たりの回転数を意味する。
【0016】
電動ポンプ3の作動は、制御部10により制御される。制御部10は、駆動部3Cを介して電動ポンプ3の停止及び稼働を制御する。なお、本実施形態に係る駆動部3Cは、インバータ方式の駆動回路にて構成されている。
【0017】
駆動部3Cは、制御部10から出力される指令周波数に応じた周波数(以下、駆動周波数という。)を有する駆動電流をモータ部3Bに供給する。これにより、モータ部3Bの回転数、つまりポンプ部3Aが制御部10により可変制御される。
【0018】
なお、制御部10は、駆動周波数、つまり指令周波数を、予め決められた周波数範囲内で制御する。つまり、当該範囲の上限周波数にて電動ポンプ3が駆動されたときの回転数が当該電動ポンプ3の最大運転可能回転数となる。
【0019】
蓄圧装置5は、電動ポンプ3の吐出し側に接続されて当該電動ポンプ3が停止しているときに給水圧を保持する。蓄圧装置5は、不活性ガスが充填されたガス室5Aの内圧により、電動ポンプ3が停止しているときの給水圧を保持する。
【0020】
制御部10には、流量センサFs、圧力センサPs、第1温度センサTs1及び第2温
度センサTs2それぞれの検出値が入力されている。流量センサFsは、電動ポンプ3の吐出し流量を検出する。圧力センサPsは、電動ポンプ3の吐出し側の圧力(以下、給水圧という。)を検出する。
【0021】
第1温度センサTs1は、電動ポンプ3の吐出し側水温を直接的又は間接的に検出する。なお、本実施形態に係る第1温度センサTs1は、流量センサFsの近傍に配置され、当該電動ポンプ3から吐き出された水の温度を直接的に検出する。
【0022】
第2温度センサTs2は、電動ポンプ3の吸込み側水温を直接的又は間接的(本実施形態では、直接的)に検出する。そして、本実施形態では、第1温度センサTs1及び第2温度センサTs2を利用して吐出し側水温と吸込み側水温との温度差ΔTを検出する。
【0023】
<2.制御部>
<2.1 制御部の概要>
制御部10は、図1に示されるように、CPU、ROM及びRAM等を有するマイクロコンピュータで構成されている。当該制御部10は、ソフトウェアが実行されることにより、電動ポンプ3を含む給水装置1を制御する。なお、当該ソフトウェアは、ROM等の不揮発性記憶部(図示せず。)に予め記憶されている。
【0024】
<2.2 制御の概要>
制御部10は、流量センサFs、圧力センサPs、第1温度センサTs1及び第2温度センサTs2の検出値等を利用して電動ポンプ3の作動を制御する。
【0025】
すなわち、制御部10は、流量センサFsを利用して小水量停止制御を実行する。小水量停止制御は、吐出し流量が予め決められた流量(以下、停止流量Qsという。)以下となったときに電動ポンプ3を停止させる制御である。
【0026】
以下、小水量停止制御、つまり流量センサFsを利用した電動ポンプ3の停止制御モードを正常時停止制御モードという。また、流量センサFsを利用しないで電動ポンプ3の停止を制御するモードを異常時停止制御モードという。
【0027】
制御部10は、圧力センサPsを利用して起動制御及び目標圧力制御を実行する。起動制御は、電動ポンプ3が停止している状態において、給水圧が予め決められた値以下となったときに電動ポンプ3を起動させる制御である。
【0028】
目標圧力制御は、給水圧が目標とする圧力(以下、目標圧力という。)となるように電動ポンプ3の駆動周波数を調整する制御である。なお、目標圧力は、例えば、予め決められた値、又は吐出し流量等の関数として決定される値である。
【0029】
以下、起動制御(以下、正常時起動制御という。)及び目標圧力制御、つまり圧力センサPsを利用した電動ポンプ3の運転制御モードを正常時運転制御モードという。また、圧力センサPs利用しない電動ポンプ3の運転制御モードを異常時運転制御モードという。
【0030】
<2.3 異常時停止制御モード>
本実施形態に係る異常時停止制御モードは、流量センサFsに異常が発生した場合に実行される。具体的には、給水装置1の電源スイッチ(図示せず。)が投入されると、制御部10は、図2に示される制御(以下、停止制御モード選択制御という。)を予め決められた間隔で定期的に実行する。
【0031】
つまり、制御部10は、流量センサFsに異常が発生したか否かを判断する(S1)。流量センサFsに異常が発生した場合には(S1:YES)、制御部10は異常時停止制御モードを実行する(S3)。
【0032】
なお、制御部10は、S3の実行と併せて、流量センサFsに異常が発生した旨を無線又は無線通信にて給水装置1の管理者又は遠隔管理装置に送信する。流量センサFsに異常が発生していない場合には(S1:NO)、制御部10は正常時停止制御モードを実行する(S2)。
【0033】
なお、流量センサFsに異常が発生した否かの判断は、例えば、流量センサFsの検出信号が予め決められた範囲外となったか否か、又は当該出力信号が変化しない状態が予め決められた時間以上継続したか等を利用して判断される。
【0034】
そして、異常時停止制御モード(S3)では、第1異常停止制御又は第2異常停止制御が実行される。
【0035】
第1異常停止制御は、電動ポンプ3の吐出し側水温と吸込み側水温との温度差ΔTが予め決められた値(以下、停止温度差ΔTsという。)以上となったときに電動ポンプ3を停止させる制御である。
【0036】
第2異常停止制御は、電動ポンプ3の吐出し側水温、つまり第1温度センサTs1の検出温度Tdが予め決められた水温(以下、停止水温T2という。)以上となったときに電動ポンプ3を停止させる制御である。
【0037】
つまり、本実施形態に係る制御部10は、電動ポンプ3が稼働している状態で、温度差ΔTが停止温度差ΔTs以上となったとき、又は吐出し側水温が停止水温T2以上となったときに、当該電動ポンプ3を停止させる。
【0038】
具体的には、制御部10は、異常時停止制御モードの実行時においては、図3に示されるように、温度差ΔTが停止温度差ΔTs(本実施形態では、5deg)以上であるか否かを判断する(S4)。温度差ΔTが停止温度差ΔTs以上である場合には(S4:YES)、制御部10は、稼働中の電動ポンプ3を停止させる(S5)。
【0039】
温度差ΔTが停止温度差ΔTs以上でない場合には(S4:NO)、制御部10は、第1温度センサTs1の検出温度Td1が停止水温T2(本実施形態では、60℃)以上であるか否かを判断する(S6)。検出温度Td1が停止水温T2以上である場合には(S6:YES)、制御部10は、稼働中の電動ポンプ3を停止させる(S5)。
【0040】
なお、異常時停止制御モード及び正常時停止制御モード(以下、これらを総称して停止制御という。)は、稼働中の電動ポンプ3を停止させる制御である。このため、停止制御は、実質的に電動ポンプ3が稼働しているときに実行される制御である。
【0041】
これに対して、停止制御モード選択制御は、電動ポンプ3の停止及び稼働を問わず、給水装置1の電源スイッチが投入されると、定期的に実行される。なお、停止制御と停止制御モード選択制御とは、互いに並列的に実行される。
【0042】
<2.4 異常時運転制御モード>
異常時運転制御モードは、圧力センサPsに異常が発生した場合に実行される。具体的には、給水装置1の電源スイッチが投入されると、制御部10は、図4に示される制御(以下、運転制御モード選択制御という。)を予め決められた間隔で定期的に実行する。
【0043】
つまり、制御部10は、圧力センサPsに異常が発生したか否かを判断する(S11)。圧力センサPsに異常が発生した場合には(S11:YES)、制御部10は、電動ポンプ3が停止中であるか否かを判断する(S12)。
【0044】
電動ポンプ3が停止中である場合には(S12:YES)、制御部10は、電動ポンプ3を起動させた後(S13)、異常時運転制御モードを実行するとともに、圧力センサPsに異常が発生した旨を無線又は無線通信にて給水装置1の管理者に送信する(S14)。
【0045】
制御部10は、異常時運転制御モード時においては、電動ポンプ3の運転回転数を異常時運転回転数Naに保持する。異常時運転回転数Naは、電動ポンプ3の最大運転可能回転数と給水量が停止流量Qsとなるときの当該電動ポンプ3の運転回転数Nsとの相加平均値である。
【0046】
制御部10は、圧力センサPsに異常が発生していない場合には(S11:NO)、正常時運転制御モードを実行する(S15)。以下、S13の起動制御を第1異常時起動制御という。電動ポンプ3の運転回転数を異常時運転回転数Naに保持する制御を固定運転制御という。
【0047】
なお、圧力センサPsに異常が発生した否かの判断は、例えば、圧力センサPsの検出信号が予め決められた範囲外となったか否か、又は当該出力信号の変化が無い状態が予め決められた時間以上継続したか等を利用して判断される。
【0048】
<異常時運転制御モードの詳細>
圧力センサPsに異常が発生すると、制御部10は、目標圧力制御及び正常時起動制御を実行することができない。そこで、制御部10は、異常時運転制御モードにおいては、目標圧力制御に代えて、固定運転制御を実行する。
【0049】
さらに、制御部10は、正常時起動制御に代えて、第2異常時起動制御、第3異常時起動制御及び第4異常時起動制御のうちいずれかの異常時起動制御を実行する。つまり、制御部10は、異常時運転制御モードにおいては、いずれかの異常時起動制御にて電動ポンプ3を起動した後、固定運転制御を実行する。
【0050】
<第2異常時起動制御>
第2異常時起動制御は、温度差ΔTが停止温度差ΔTsより小さい予め決められた値(以下、起動温度差ΔTsuという。)以下になったときに、電動ポンプ3を起動する制御である。
【0051】
なお、本実施形態に係る起動温度差ΔTsuは約0degである。つまり、本実施形態に制御部10は、電動ポンプ3の吐出し側水温が当該電動ポンプ3の吸込み側水温と略同一温度となったときに、停止中の電動ポンプ3を起動する。
【0052】
<第3異常時起動制御>
第3異常時起動制御は、電動ポンプ3が停止した時から予め決められた時間(以下、起動時間Tssという。)が経過したときに、電動ポンプ3を起動する制御である。なお、本実施形態に係る起動時間Tssは、約1分である。
【0053】
<第4異常時起動制御>
第4異常時起動制御は、電動ポンプ3の吐出し側水温Td1が、電動ポンプ3の吸込み
側水温Tsと予め決められた値(本実施形態では、停止水温T2)との相加平均値以下となったときに、電動ポンプ3を起動する制御である。
【0054】
そして、運転制御モード選択制御により異常時運転制御モードが選択されると(図4のS14)、制御部10は、図5に示される運転制御を実行する。すなわち、制御部10は、先ず、温度差ΔTが起動温度差ΔTsu以下になったか否かを判断する(S16)。
【0055】
温度差ΔTが起動温度差ΔTsu以下になった場合には(S16:YES)、制御部10は、電動ポンプ3を起動した後(S17)、固定運転制御を実行する(S18)。温度差ΔTが起動温度差ΔTsu以下になっていない場合には(S16:NO)、制御部10は、電動ポンプ3が停止した時からの経過時間、つまり停止時間が起動時間Tssを経過したか否かを判断する(S19)。
【0056】
停止時間が起動時間Tssを経過した場合には(S19:YES)、制御部10は、S17を実行する。停止時間が起動時間Tssを経過していない場合には(S19:NO)、制御部10は、吐出し側水温Td1が、吸込み側水温Tsと停止水温T2との相加平均値以下となったか否かを判断する(S20)。
【0057】
吐出し側水温Td1が、吸込み側水温Tsと停止水温T2との相加平均値以下となった場合には(S20:YES)、制御部10は、S17を実行する。そして、第2異常時起動制御、第3異常時起動制御及び第4異常時起動制御のいずれも実行されなかった場合には(S20:NO)、制御部10は、再び、S16を実行する。
【0058】
なお、S17の実行時において、既に、電動ポンプ3が稼働している場合には、制御部10は、現時の稼働状態を維持する。さらに、停止制御、停止制御モード選択制御、運転制御、及び運転制御モード選択制御とは、互いに並列的に実行される。
【0059】
<3.本実施形態に係る給水装置(制御装置)の特徴>
本実施形態に係る給水装置1は、温度差ΔTが停止温度差ΔTs以上となったときに第1異常時停止制御を実行する。これにより、当該給水装置1では、流量センサFsに異常が発生して小水量停止制御が正常作動しない場合であっても、電動ポンプ3を停止させることが可能である。
【0060】
すなわち、ターボ型ポンプでは、例えばインペラの回転数が一定の状態で、吐出し側の負荷、つまり、給水抵抗が大きくなると、吐き出される水の流速が低下するとともに、撹拌作用が増大して吐出し側水温が吸込み側水温に比べて上昇する。
【0061】
また、例えばインペラの回転数が一定の状態で給水抵抗が小さい場合には、インペラから水に付与されたエネルギの多くが水の運動エネルギに変換されるため、吐出し側水温と吸込み側水温とが略同一温度になる。
【0062】
建物側の各蛇口の多くが閉められた状態になると、給水需要が小さくなる。そして、当該状態で電動ポンプ3が稼働し続けると、実質的に、給水抵抗が大きい状態で電動ポンプ3が稼働し続けることになる。
【0063】
そして、給水量が小さい状態で電動ポンプ3が稼働し続けると、当該電動ポンプ3のポンプ仕事の多くが熱として水に付与される。このため、給水量が小さい状態で電動ポンプ3が稼働し続けると、温度差ΔTが大きくなる。
【0064】
したがって、本実施形態のごとく、温度差ΔTが停止温度差ΔTs以上となったときに
電動ポンプ3を停止させれば、小水量停止制御が正常作動しない場合であっても、電動ポンプ3を停止させることが可能である。
【0065】
当該給水装置1は、電動ポンプ3の吐出し側水温Td1が停止水温T2以上となったときに第2異常時停止制御を実行する。これにより、電動ポンプ3を確実に保護することが可能となり得る。
【0066】
なお、停止水温T2は、ポンプ部3Aの耐熱温度に基づいて決定される温度である。具体的には、本実施形態では、パッキンやOリング等のポンプ部3A内に配置された樹脂部品の耐熱温度等によって停止水温T2が決定されている。
【0067】
当該給水装置1は、圧力センサPsに異常が発生した時に第1異常時起動制御を実行する。これにより、電動ポンプ3を起動させることができなくなる状態が回避され得るので、断水の発生を抑制でき得る。
【0068】
当該給水装置1は、温度差ΔTが起動温度差ΔTsu以下になったときに、第2異常時起動制御を実行する。これにより、電動ポンプ3を起動させることができなくなる状態が回避され得るので、断水の発生を抑制でき得る。
【0069】
当該給水装置1は、電動ポンプ3が停止した時から起動時間Tssが経過したときに、第3異常時起動制御を実行する。これにより、電動ポンプ3を起動させることができなくなる状態が回避され得るので、断水の発生を抑制でき得る。
【0070】
当該給水装置1は、電動ポンプ3の吐出し側水温が、予め決められたルールに従って決定される温度以下となったときに第4異常時起動制御を実行する。これにより、電動ポンプ3を起動させることができなくなる状態が回避され得るので、断水の発生を抑制でき得る。なお、予め決められたルールに従って決定される温度とは、例えば、上記のごとく、「電動ポンプ3の吸込み側水温Tsと停止水温T2との相加平均値」等である。
【0071】
(第2実施形態)
上述の実施形態に係る給水装置1では、第1温度センサTs1及び第2温度センサTs2にて温度差ΔTを検出する構成であった。これに対して、本実施形態に係る給水装置1では、図6に示されるように、第2温度センサTs2が廃止されている。
【0072】
そして、制御部10は、流量センサFsに異常が発生した時の第1温度センサTs1の検出温度Td1(以下、当該タイミングの検出温度Td1を検出水温Toという。)を電動ポンプ3の吸込み側水温として温度差ΔTを把握する。
【0073】
換言すれば、本実施形態に係る制御部10は、検出水温Toを吸込み側水温としてRAM等の記憶部に記憶するとともに、現時の検出温度Td1と検出水温Toとの差を温度差ΔTとし、かつ、検出水温Toを吸込み側水温として、異常時停止モード及び異常時運転モードを実行する。
【0074】
すなわち、流量センサFsが正常である場合、つまり正常停止モードが実行されている状態では、電動ポンプ3の吐出し側水温Td1と当該電動ポンプの吸入側水温Ts2との温度差が小さいので、「吐出し側水温≒吸入側水温」となる。
【0075】
そこで、本実施形態では、流量センサFsに異常が発生した時の第1温度センサTs1の検出温度Td1を電動ポンプ3の吸込み側水温として温度差ΔTを把握する。このため、本実施形態では、第2温度センサTs2が廃止されている。
【0076】
なお、異常時停止制御モードが実行されている間は、検出水温Toを電動ポンプ3の吸込み側水温として温度差ΔTが把握される。そして、異常時停止制御モードから正常時停止制御モードに移行したときに、検出水温Toが記憶部から消去される。
【0077】
すなわち、本実施形態に係る停止制御モード選択制御では、図7に示されるように、流量センサFsに異常が発生した場合には(S1:YES)、制御部10は、流量センサFsに異常が発生した時の第1温度センサTs1の検出温度Td1を電動ポンプ3の吸込み側水温とした後(S21)、異常時停止制御モードを実行する(S3)。
【0078】
なお、本実施形態は、上記の例に限定されない。すなわち、例えば、一旦、流量センサFsに異常が発生した以降は、流量センサFsの異常を判断することなく、第1温度センサTs1の検出温度Td1を電動ポンプ3の吸込み側水温としてもよい。
【0079】
上記の説明は、上述の実施形態に係る第1実施形態に係る給水装置1との相違点に関する説明である。なお、上述の実施形態と同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号が付されている。このため、本実施形態では、重複する説明は省略されている。
【0080】
(第3実施形態)
本実施形態に係る給水装置1の電動ポンプ3は、図8に示されるように、複数の電動ポンプ3を備えている。なお、図8においては、モータ部3Bが省略され、ポンプ部3Aのみが記載されている。上述の実施形態と同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号が付されている。このため、本実施形態では、重複する説明は省略されている。
【0081】
そして、制御部10は、小水量停止制御、第1異常時停止制御又は第2異常時停止制御にて複数の電動ポンプ3のうちいずれかの電動ポンプを停止させた後、再び、電動ポンプ3を起動する際には、当該停止させた電動ポンプ3と異なる電動ポンプ3を起動させる。
【0082】
つまり、本実施形態に係る制御部10は、起動させる電動ポンプ3を予め決められたルールに従って変更させる制御(以下、先発ローテション制御という。)が実行可能である。
【0083】
本実施形態に係る先発ローテション制御では、例えば、最初に起動する電動ポンプを、第1電動ポンプ3→第2電動ポンプ3→第3電動ポンプ3→第1電動ポンプ3→第2電動ポンプ3→第3電動ポンプ3→・・・・の順に変更する。なお、上記においては、図8の左側から順に、第1電動ポンプ3、第2電動ポンプ3、第3電動ポンプ3としている。
【0084】
以上により、本実施形態では、特定の電動ポンプ3のみに給水負荷が集中することが緩和され得る。
【0085】
さらに、制御部10は、再び、電動ポンプ3を起動する際には、当該停止させた電動ポンプ3(以下、停止ポンプという。)と異なる電動ポンプ3(以下、起動ポンプという。)を起動させるので、起動ポンプの稼働時間が短くなることが抑制され得る。
【0086】
つまり、異常時停止制御モードにより停止した停止ポンプの吐出し側水温Td1は、既に上昇している。これに対して、起動ポンプは、停止ポンプの稼働時には停止していた可能性が高い。
【0087】
つまり、当該起動ポンプの吐出し側水温Td1は、停止ポンプの吐出し側水温Td1に比べて低い可能性が高い。したがって、停止ポンプと異なる電動ポンプ3である起動ポンプを起動させれば、起動ポンプの稼働時間が短くなることが抑制され得る。
【0088】
なお、図8は、第2実施形態に本実施形態を適用した給水装置1であった。しかし、本実施形態はこれに限定されない。つまり、第1実施形態(第2温度センサTs2を備える
給水装置)にも本実施形態が適用可能である。
【0089】
(その他の実施形態)
上述の実施形態に係る給水装置1は、受水槽7に貯留された水を配水管に供給する構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、受水槽が無く、電動ポンプ3の吸入側が水道に接続された構成であってもよい。
【0090】
第1実施形態では、第1温度センサTs1及び第2温度センサTs2が温度差ΔTを検出するための温度センサとして機能し、第2実施形態では、第1温度センサTs1のみが温度差ΔTを検出するための温度センサとして機能した。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、ゼーベック効果(熱電効果)を利用した温度センサにて温度差ΔTを検出してもよい。
【0091】
上述の実施形態に係る異常時停止制御モードは、流量センサFsに異常が発生した場合に実行された。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、流量センサFsに異常が発生しているか否かを問わず、異常時停止制御モードが実行される構成であってもよい。
【0092】
具体的には、第1実施形態では、流量センサFsに異常が発生しているか否かを問わず、第1異常停止制御又は第2異常停止制御が実行される構成でもよい。第2実施形態では、第1実施形態では、流量センサFsに異常が発生しているか否かを問わず、第2異常停止制御が実行される構成でもよい。
【0093】
上述の実施形態に係る異常時停止制御モードでは、第1異常停止制御及び第2異常停止制御が実行された。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、第1異常停止制御又は第2異常停止制御のみが実行される構成であってもよい。
【0094】
上述の実施形態に係る第1異常時起動制御は、圧力センサPsに異常が発生した時に流量センサFsで異常が発生しているか否かを問わず、電動ポンプ3を起動させることにより、断水を抑制する制御であった。
【0095】
しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、圧力センサPsに異常が発生したときに、定期的に電動ポンプ3を起動させる制御が実行可能な構成であってもよい。
【0096】
上述の実施形態に係る固定運転制御の異常時運転回転数Naは、電動ポンプ3の最大運転可能回転数と給水量が停止流量Qsとなる当該電動ポンプ3の運転回転数との相加平均値であった。
【0097】
しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、予め決められた固定回転数、又は稼働実績を利用して「予め決められたルール」に従って決定された回転数を異常時運転回転数Naとしてもよい。
【0098】
当該「予め決められたルール」とは、例えば、過去の実績回転数の平均値、過去の実績回転数の中央値、又は過去の最大回転数に1未満の係数が乗算された値等である。なお、この構成においては、過去の稼働実績を記憶する記憶部を有することが望ましい。
【0099】
上述の実施形態に係る固定運転制御の異常時運転回転数Naは、1つの値であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、時間帯や曜日等に応じて異常時運転回転数Naが自動的に変更される構成であってもよい。
【0100】
なお、この構成における異常時運転回転数Naは、予め決められた固定回転数、又は稼働実績を利用して予め決められたルールに従って決定された回転数等とすることが望ましい。
【0101】
上述の実施形態に係る固定運転制御の異常時運転回転数Naは、給水装置1にて決定される構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、圧力センサPsの異常が給水装置1の管理者又は遠隔管理装置に送信されたときに、遠隔管理装置にて異常時運転回転数Naを決定してもよい。
【0102】
つまり、給水装置1が定期的に遠隔管理装置に稼働実績を送信し、遠隔管理装置は、当該給水装置の稼働実績を記憶する記憶部を有する。そして、圧力センサPsの異常が給水装置1の遠隔管理装置に送信されたときに、遠隔管理装置が予め決められたルールに従って異常時運転回転数Naを決定する。
【0103】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0104】
1… 給水装置
3… 電動ポンプ
5… 蓄圧装置
7… 受水槽
10… 制御部
Fs… 流量センサ
Ps… 圧力センサ
Ts1… 第1温度センサ
Ts2… 第2温度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8