(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115049
(43)【公開日】2022-08-08
(54)【発明の名称】健全度指数に基づく橋梁評価方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
E01D 22/00 20060101AFI20220801BHJP
E01D 6/00 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
E01D22/00 A
E01D6/00
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021139921
(22)【出願日】2021-08-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-25
(31)【優先権主張番号】202110109282.9
(32)【優先日】2021-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】512314075
【氏名又は名称】▲寧▼波工程学院
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】朋茜
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059BB33
2D059GG39
(57)【要約】 (修正有)
【課題】トラス橋の動的検出過程における労働力の必要を低下させるとともに、人為的要因に伴う精度誤差を回避するために、健全度指数に基づく橋梁評価方法を提供する。
【解決手段】トラス橋のロッド部材の各節点について、自然励振振動下における各データサンプリングタイミングの低周波数モーダルデータを取得するとともに、トラス橋の有限要素モデルを作成する。各節点の状態ベクトルを取得するとともに、平衡パラメータを取得し、各節点における健全度指数に基づいて健全度指数散布図を作成し、トラス橋のロッド部材を評価する。データ収集装置により、トラス橋の各節点について通常通行状態における振動データを取得するとともに、振動データに基づいてデータ算出を行うため、トラス橋の通常通行を中断する必要がない。これにより、測定がいっそう容易になるとともに、測定の継続性が一段と良好となり、長期的なリアルタイムモニタリングを実現可能となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
健全度指数に基づく橋梁評価方法であって、
S1:トラス橋のロッド部材の各節点について、自然励振振動下における各データサンプリングタイミングの低周波数モーダルデータを取得するとともに、トラス橋の有限要素モデルを作成し、
S2:低周波数モーダルデータと有限要素モデルに基づいて、各データサンプリングタイミングにおける各節点の状態ベクトルを取得するとともに、状態ベクトルに基づいて、隣り合う各データサンプリングタイミングの状態ベクトルの平衡パラメータを取得し、
S3:平衡パラメータに基づいて、各節点における自由度に対応する健全度指数を取得し、
S4:健全度指数に基づいて健全度指数散布図を作成し、トラス橋のロッド部材を評価する、とのステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記低周波数モーダルデータは、トラス橋の振動周波数の平方値λと、トラス橋の振動の振動ベクトルφを含み、このうち、振動ベクトルφはn次元列ベクトルであり、nはトラス橋の自由度数であることを特徴とする請求項1に記載の健全度指数に基づく橋梁評価方法。
【請求項3】
前記ステップS2において、状態ベクトルは第1の公式で取得され、前記第1の公式は下記であり、
【数1】
式中、tはデータサンプリングタイミング、ξ
tはtデータサンプリングタイミングの状態ベクトル、Kは有限要素モデルの剛性マトリックス、λ
tはtデータサンプリングタイミングにおける周波数の平方値、Mは有限要素モデルの質量マトリックス、φ
tはtデータサンプリングタイミングの振動ベクトル、one(n,1)は全ての要素が1のn次元列ベクトルであることを特徴とする請求項2に記載の健全度指数に基づく橋梁評価方法。
【請求項4】
前記ステップS2において、平衡パラメータは第2の公式で取得され、前記第2の公式は下記であり、
【数2】
式中、δ
t1,t2は、隣り合うt1データサンプリングタイミングとt2データサンプリングタイミングの状態ベクトルの平衡パラメータ、ξ
tはtデータサンプリングタイミングの状態ベクトル、Tはベクトルの転置、数3はtデータサンプリングタイミングの状態ベクトルの転置である、
【数3】
ことを特徴とする請求項1に記載の健全度指数に基づく橋梁評価方法。
【請求項5】
前記ステップS3において、健全度指数は第3の公式で取得され、前記第3の公式は下記であり、
【数4】
式中、η
nはn番目の自由度の健全度指数、δ
t1,t2は、隣り合うt1データサンプリングタイミングとt2データサンプリングタイミングの状態ベクトルの平衡パラメータ、ξ
tはtデータサンプリングタイミングの状態ベクトルであることを特徴とする請求項2に記載の健全度指数に基づく橋梁評価方法。
【請求項6】
前記ステップS4は、具体的に、
S41:自由度の番号及び健全度指数に基づいて、自由度番号を横座標、健全度指数を縦座標とする健全度指数散布図を作成し、
S42:健全度指数に基づいて、健全度指数散布図内に、健全度指数の平均値水平線と標準偏差水平線を作成し、
S43:散布点が平均値水平線と標準偏差水平線の区間内にあるか否かを判断し、区間内にない場合には、当該散布点における自由度に対応する節点のロッド部材の健全度指数が基準に達していないと判定する、とのステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の健全度指数に基づく橋梁評価方法。
【請求項7】
健全度指数に基づく橋梁評価システムであって、
トラス橋のロッド部材の各節点について、自然励振振動下における各データサンプリングタイミングの低周波数モーダルデータを取得するデータ収集装置と、
トラス橋の有限要素モデルを作成する有限要素作成モジュールと、
低周波数モーダルデータと有限要素モデルに基づいて、各データサンプリングタイミングにおける各節点の状態ベクトルを取得する状態算出モジュールと、
状態ベクトルに基づいて、隣り合う各データサンプリングタイミングの状態ベクトルの平衡パラメータを取得するパラメータ算出モジュールと、
平衡パラメータに基づいて、各節点における自由度に対応する健全度指数を取得する指数取得モジュールと、
健全度指数に基づいて健全度指数散布図を作成し、トラス橋のロッド部材を評価する評価出力モジュール、を含むことを特徴とするシステム。
【請求項8】
前記低周波数モーダルデータは、トラス橋の振動周波数の平方値λと、トラス橋の振動の振動ベクトルφを含み、このうち、振動ベクトルφはn次元列ベクトルであり、nはトラス橋の自由度数であることを特徴とする請求項7に記載の健全度指数に基づく橋梁評価システム。
【請求項9】
前記指数取得モジュールは、健全度指数を第3の公式で取得し、前記第3の公式は下記であり、
【数5】
式中、η
nはn番目の節点の健全度指数、δ
t1,t2は、隣り合うt1データサンプリングタイミングとt2データサンプリングタイミングの状態ベクトルの平衡パラメータ、ξ
tはtデータサンプリングタイミングの状態ベクトルであることを特徴とする請求項8に記載の健全度指数に基づく橋梁評価システム。
【請求項10】
前記評価出力モジュールは、具体的に、
自由度の番号及び健全度指数に基づいて、自由度番号を横座標、健全度指数を縦座標とする健全度指数散布図を作成する散布図作成ユニットと、
健全度指数に基づいて、健全度指数散布図内に、健全度指数の平均値水平線と標準偏差水平線を作成する水平線作成ユニットと、
散布点が平均値水平線と標準偏差水平線の区間内にあるか否かを判断し、散布点が区間内にない場合には、当該散布点における自由度に対応する節点のロッド部材の健全度指数が基準に達していないと判定する健全度判定ユニット、を含むことを特徴とする請求項7に記載の健全度指数に基づく橋梁評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁の健全度モニタリングの分野に関し、具体的に、健全度指数に基づく橋梁評価方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
トラス橋とは、トラスを上部構造の主要な耐荷部材とした橋梁のことである。一般的に、トラス橋は、主桁、上下の横構、橋門構及び中間対傾構及び床版から構成される。トラスにおいて、弦材はトラスの外周を構成するロッド部材であり、上弦材と下弦材を含んでいる。また、上下の弦材をつなぐロッド部材を腹材と称する。腹材は、方向の違いによって、更に斜材と束材に分けられる(本明細書の以下の記載ではロッド部材と総称する)。また、弦材と腹材が位置する平面を主桁平面と称する。長スパンの橋桁の場合には、高さをスパン方向に変化させて曲弦トラスを形成する。一方、中・短スパンの場合には高さを変えない。即ち、いわゆる平行弦トラス又は直弦トラスを採用する。
【0003】
現在、多くのトラス橋は耐用年数の中後期に突入しており、構造の健全度及び安全性を軽視できなくなっている。そこで、トラス橋についてオンライン健全度モニタリングを行えば、重大な危険事故の発生を回避可能となる。従来のトラス橋の検出技術において、一般的な検出方法には、静的方法と動的方法の2種類が存在する。このうち、静的方法の場合には、交通を遮断して静的載荷を行う必要があるため、リアルタイムのオンライン健全度モニタリングには適していない。一方、現在の動的方法では、一般的に、レーザデータ収集により各ロッド部材のデータ収集を行ってから、取得した検出結果を分析する。よって、コストが嵩むだけでなく、同時検出が不可能なため、迅速に橋梁全ての検出データを得ることができない。以上から、如何にしてトラス橋の日常通行中の状態データを利用して、迅速且つリアルタイムの検出を行うかが早急に解決を要する大きな課題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の課題を解決し、トラス橋の動的検出過程における労働力の必要を低下させるとともに、人為的要因に伴う精度誤差を回避するために、本発明は、健全度指数に基づく橋梁評価方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
当該方法は、以下のステップを含む。
S1:トラス橋のロッド部材の各節点について、自然励振振動下における各データサンプリングタイミングの低周波数モーダルデータを取得するとともに、トラス橋の有限要素モデルを作成する。
【0006】
S2:低周波数モーダルデータと有限要素モデルに基づいて、各データサンプリングタイミングにおける各節点の状態ベクトルを取得するとともに、状態ベクトルに基づいて、隣り合う各データサンプリングタイミングの状態ベクトルの平衡パラメータを取得する。
【0007】
S3:平衡パラメータに基づいて、各節点における自由度に対応する健全度指数を取得する。
【0008】
S4:健全度指数に基づいて健全度指数散布図を作成し、トラス橋のロッド部材を評価する。
【0009】
更に、前記低周波数モーダルデータは、トラス橋の振動周波数の平方値λと、トラス橋の振動の振動ベクトルφを含む。このうち、振動ベクトルφはn次元列ベクトルであり、nはトラス橋の自由度数である。
【0010】
更に、前記ステップS2において、状態ベクトルは第1の公式で取得される。前記第1の公式は下記である。
【0011】
【0012】
式中、tはデータサンプリングタイミング、ξtはtデータサンプリングタイミングの状態ベクトル、Kは有限要素モデルの剛性マトリックス、λtはtデータサンプリングタイミングにおける周波数の平方値、Mは有限要素モデルの質量マトリックス、φtはtデータサンプリングタイミングの振動ベクトル、one(n,1)は全ての要素が1のn次元列ベクトルである。
【0013】
更に、前記ステップS2において、平衡パラメータは第2の公式で取得される。前記第2の公式は下記である。
【0014】
【0015】
式中、δt1,t2は、隣り合うt1データサンプリングタイミングとt2データサンプリングタイミングの状態ベクトルの平衡パラメータ、ξtはtデータサンプリングタイミングの状態ベクトル、Tはベクトルの転置、数3はtデータサンプリングタイミングの状態ベクトルの転置である。
【0016】
【0017】
更に、前記ステップS3において、健全度指数は第3の公式で取得される。前記第3の公式は下記である。
【0018】
【0019】
式中、ηnはn番目の自由度の健全度指数、δt1,t2は、隣り合うt1データサンプリングタイミングとt2データサンプリングタイミングの状態ベクトルの平衡パラメータ、ξtはtデータサンプリングタイミングの状態ベクトルである。
【0020】
更に、前記ステップS4は、具体的に以下のステップを含む。
【0021】
S41:自由度の番号及び健全度指数に基づいて、自由度番号を横座標、健全度指数を縦座標とする健全度指数散布図を作成する。
【0022】
S42:健全度指数に基づいて、健全度指数散布図内に、健全度指数の平均値水平線と標準偏差水平線を作成する。
【0023】
S43:散布点が平均値水平線と標準偏差水平線の区間内にあるか否かを判断し、区間内にない場合には、当該散布点における自由度に対応する節点のロッド部材の健全度指数が基準に達していないと判定する。
【0024】
本発明は、更に、健全度指数に基づく橋梁評価システムを提供する。当該システムは、トラス橋のロッド部材の各節点について、自然励振振動下における各データサンプリングタイミングの低周波数モーダルデータを取得するデータ収集装置と、トラス橋の有限要素モデルを作成する有限要素作成モジュールと、低周波数モーダルデータと有限要素モデルに基づいて、各データサンプリングタイミングにおける各節点の状態ベクトルを取得する状態算出モジュールと、状態ベクトルに基づいて、隣り合う各データサンプリングタイミングの状態ベクトルの平衡パラメータを取得するパラメータ算出モジュールと、平衡パラメータに基づいて、各節点における自由度に対応する健全度指数を取得する指数取得モジュールと、健全度指数に基づいて健全度指数散布図を作成し、トラス橋のロッド部材を評価する評価出力モジュール、を含む。
【0025】
更に、前記低周波数モーダルデータは、トラス橋の振動周波数の平方値λと、トラス橋の振動の振動ベクトルφを含む。このうち、振動ベクトルφはn次元列ベクトルであり、nはトラス橋の節点数である。
【0026】
更に、前記指数取得モジュールは、健全度指数を第3の公式で取得する。前記第3の公式は下記である。
【0027】
【0028】
式中、ηnはn番目の節点の健全度指数、δt1,t2は、隣り合うt1データサンプリングタイミングとt2データサンプリングタイミングの状態ベクトルの平衡パラメータ、ξtはtデータサンプリングタイミングの状態ベクトルである。
【0029】
更に、前記評価出力モジュールは、具体的に、自由度の番号及び健全度指数に基づいて、自由度番号を横座標、健全度指数を縦座標とする健全度指数散布図を作成する散布図作成ユニットと、健全度指数に基づいて、健全度指数散布図内に、健全度指数の平均値水平線と標準偏差水平線を作成する水平線作成ユニットと、散布点が平均値水平線と標準偏差水平線の区間内にあるか否かを判断し、散布点が区間内にない場合には、当該散布点における自由度に対応する節点のロッド部材の健全度指数が基準に達していないと判定する健全度判定ユニット、を含む。
【発明の効果】
【0030】
従来技術と比較して、本発明は、少なくとも以下の有益な効果を有する。
【0031】
(1)本発明で記載する健全度指数に基づく橋梁評価方法及びシステムでは、データ収集装置により、トラス橋の各節点について通常通行状態における振動データを取得するとともに、振動データに基づいてデータ算出を行う。これにより、トラス橋の複数のロッド部材についてリアルタイムの同時検出が実行されるため、検出に要する全体作業時間及びコストが大幅に減少する。
【0032】
(2)データ収集装置により、トラス橋の各節点について通常通行状態における振動データを取得するとともに、振動データに基づいてデータ算出を行うため、トラス橋の通常通行を中断する必要がない。これにより、測定がいっそう容易になるとともに、測定の継続性が一段と良好となり、長期的なモニタリングを実現可能となる。
【0033】
(3)データ化による全自動処理を採用することで、手動操作が不要となる。
【0034】
(4)取得した健全度指数を平均値及び標準偏差と比較することで、健全度指数の判定がいっそう正確となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、健全度指数に基づく橋梁評価方法及びシステムの方法ステップ図である。
【
図2】
図2は、健全度指数に基づく橋梁評価方法及びシステムのシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下は、本発明の具体的実施例である。且つ、図面を組み合わせて、本発明の技術方案につき更に記載するが、本発明はこれらの実施例に限らない。
【実施例0037】
トラス橋の動的検出過程における労働力の必要を低下させるとともに、人為的要因に伴う精度誤差を回避するために、
図1に示すように、本発明は、健全度指数に基づく橋梁評価方法を提供する。当該方法は、以下のステップを含む。
【0038】
S1:トラス橋のロッド部材の各節点について、自然励振振動下における各データサンプリングタイミングの低周波数モーダルデータを取得するとともに、トラス橋の有限要素モデルを作成する。
【0039】
図3に示すように、トラス橋1は、端部が接続された複数のロッド部材2を含んでなり、各ロッド部材の間に節点3が形成されている。本発明では、各節点にデータ収集装置4を装着することで、各節点について、自然励振振動下における各データサンプリングタイミングの低周波数モーダルデータを収集するとともに、トラス橋の有限要素モデルを組み合わせる。これにより、低周波数モーダルデータに基づいて、ロッド部材のリアルタイム状態モニタリングを実現可能となる。且つ、当該方法では、トラス橋の通常通行時における環境励振下での振動を利用するため、橋梁の通常通行に支障をきたすことなく、長期的なリアルタイムモニタリングを実現可能である。
【0040】
S2:低周波数モーダルデータと有限要素モデルに基づいて、各データサンプリングタイミングにおける各節点の状態ベクトルを取得するとともに、状態ベクトルに基づいて、隣り合う各データサンプリングタイミングの状態ベクトルの平衡パラメータを取得する。
【0041】
S3:平衡パラメータに基づいて、各節点における自由度に対応する健全度指数を取得する。
【0042】
S4:健全度指数に基づいて健全度指数散布図を作成し、トラス橋のロッド部材を評価する(具体的には、後述するように、ステップS41からステップS43に分けられる)。
【0043】
ステップS1において、ロッド部材のリアルタイム状態モニタリングを実現することを前提に、ステップS2からステップS4では、第1の公式から第3の公式によって各パラメータの取得を実現する。低周波数モーダルデータは、トラス橋の振動周波数の平方値λと、トラス橋の振動の振動ベクトルφを含む。このうち、振動ベクトルφはn次元列ベクトルであり、nはトラス橋の自由度数である。且つ、環境励振下における振動のため、φは正規化されない振動ベクトルである。
【0044】
tタイミングにおいて取得される低周波数モーダルデータをλt及びφtとすると、状態ベクトルは第1の公式から得られる。
【0045】
【0046】
式中、tはデータサンプリングタイミング、ξtはtデータサンプリングタイミングの状態ベクトル、Kは有限要素モデルの剛性マトリックス、λtはtデータサンプリングタイミングにおける周波数の平方値、Mは有限要素モデルの質量マトリックス、φtはtデータサンプリングタイミングの振動ベクトル、one(n,1)は全ての要素が1のn次元列ベクトルである。
【0047】
状態ベクトルを取得したあと、第2の公式により平衡パラメータを取得する。
【0048】
【0049】
式中、δt1,t2は、隣り合うt1データサンプリングタイミングとt2データサンプリングタイミングの状態ベクトルの平衡パラメータ、ξtはtデータサンプリングタイミングの状態ベクトル、Tはベクトルの転置、数8はtデータサンプリングタイミングの状態ベクトルの転置(例えば、列ベクトルの行ベクトルへの転置。即ち、数8は、列ベクトルξtを転置して得られる行ベクトル)である。
【0050】
【0051】
平衡パラメータを算出し、後の健全度指数の算出に平衡化した算出基準を提供することで、最終的な評価結果をいっそう正確とする。最後に、平衡パラメータを基準とし、第3の公式で健全度指数を取得する。
【0052】
【0053】
式中、ηnはn番目の自由度の健全度指数、δt1,t2は、隣り合うt1データサンプリングタイミングとt2データサンプリングタイミングの状態ベクトルの平衡パラメータ、ξtはtデータサンプリングタイミングの状態ベクトルである。
【0054】
以上により、基本的には健全度指数に基づき、各節点のロッド部材について健全度評価を行うことが可能となる。しかし、節点から得られる低周波数モーダルデータの中心傾向と散布度の影響を考慮して、評価結果をデータセットの特性にいっそう一致させるために、
図1に示すように、ステップS4は、具体的に以下のステップに更に分けられる。
【0055】
S41:自由度の番号及び健全度指数に基づいて、自由度番号を横座標、健全度指数を縦座標とする健全度指数散布図を作成する。
【0056】
S42:健全度指数に基づいて、健全度指数散布図内に、健全度指数の平均値水平線と標準偏差水平線を作成する。
【0057】
S43:散布点が平均値水平線と標準偏差水平線の区間内にあるか否かを判断し、区間内にない場合には、当該散布点における自由度に対応する節点のロッド部材の健全度指数が基準に達していないと判定する。
【0058】
取得した健全度指数を平均値及び標準偏差と比較することで、健全度指数の判定を更に正確とする。
評価出力モジュールは、具体的に、自由度の番号及び健全度指数に基づいて、自由度番号を横座標、健全度指数を縦座標とする健全度指数散布図を作成する散布図作成ユニットと、健全度指数に基づいて、健全度指数散布図内に、健全度指数の平均値水平線と標準偏差水平線を作成する水平線作成ユニットと、散布点が平均値水平線と標準偏差水平線の区間内にあるか否かを判断し、散布点が区間内にない場合には、当該散布点における自由度に対応する節点のロッド部材の健全度指数が基準に達していないと判定する健全度判定ユニット、を含む。
以上で述べたように、本発明で記載する健全度指数に基づく橋梁評価方法及びシステムでは、データ収集装置により、トラス橋の各節点について通常通行状態における振動データを取得するとともに、振動データに基づいてデータ算出を行う。これにより、トラス橋の複数のロッド部材についてリアルタイムの同時検出が実行されるため、検出に要する全体作業時間及びコストが大幅に減少する。また、振動データに基づいてデータ算出を行うため、トラス橋の通常通行を中断する必要がない。これにより、測定がいっそう容易になるとともに、測定の継続性が一段と良好となり、長期的なモニタリングを実現可能となる。
また、データ化による全自動処理を採用することで、手動操作が不要となる。且つ、取得した健全度指数を平均値及び標準偏差と比較することで、健全度指数の判定がいっそう正確となる。
本文中で記載した具体的実施例は、一例を挙げて本発明の主旨を説明したものにすぎない。当業者であれば、ここで記載した具体的実施例について各種の修正又は補足、或いは類似の方式による置き換えが可能であるが、これらは本発明の主旨を逸脱するものでも、添付の特許請求の範囲で定義する範疇を超えるものでもない。