(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115060
(43)【公開日】2022-08-08
(54)【発明の名称】局部洗浄装置
(51)【国際特許分類】
E03D 9/08 20060101AFI20220801BHJP
【FI】
E03D9/08 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021182596
(22)【出願日】2021-11-09
(31)【優先権主張番号】P 2021011564
(32)【優先日】2021-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上原 一人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 美翔
(72)【発明者】
【氏名】片山 透
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 正人
(72)【発明者】
【氏名】砂山 雄太
【テーマコード(参考)】
2D038
【Fターム(参考)】
2D038JA01
2D038JA05
2D038JF06
2D038JH16
2D038JH21
2D038KA02
2D038KA03
2D038KA13
2D038KA22
(57)【要約】
【課題】洗浄水や汚れの飛散を抑制しつつ洗浄ノズルを適切に洗浄する。
【解決手段】筒状の洗浄ノズル32により局部洗浄を行う局部洗浄装置は、ノズル洗浄器40が、洗浄ノズル32が挿通可能な開口41を形成する環状の内周壁部52と、供給口54を介して供給された洗浄水の環状流路42を内周壁部52との間に形成する環状の外周壁部61と、を有し、洗浄ノズル32を移動させながらノズル洗浄器40が洗浄ノズル32を洗浄するように制御する。内周壁部52は、環状流路42を流れる洗浄水を開口41内に吐出するように径方向に貫通する吐出口53が形成され、外周壁部61は、内周壁部52を覆うように前方に延びると共に前端側で洗浄ノズル32との隙間が小さくなるように径方向内側に延びる環状リブ65が設けられている。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の洗浄ノズルにより局部洗浄を行う局部洗浄装置であって、
前記洗浄ノズルを待機位置から前方の局部洗浄位置まで進退移動させる駆動部と、
洗浄水を供給する給水部と、
前記洗浄ノズルが挿通可能な開口を有し、前記給水部から供給された洗浄水を前記開口内に吐出して前記洗浄ノズルを洗浄可能なノズル洗浄器と、
前記洗浄ノズルを移動させながら前記ノズル洗浄器が前記洗浄ノズルを洗浄するように前記駆動部と前記給水部とを制御する制御装置と、
を備え、
前記ノズル洗浄器は、前記開口を形成する環状の内周壁部と、該内周壁部との間に前記給水部から供給された洗浄水が流れる環状流路を形成する環状の外周壁部と、を有し、
前記内周壁部は、前記環状流路を流れる洗浄水を前記開口内に吐出するように径方向に貫通する吐出口が形成され、
前記外周壁部は、前記内周壁部を覆うように前方に延びると共に前端側で前記洗浄ノズルとの隙間が小さくなるように径方向内側に延びる環状リブが設けられている
局部洗浄装置。
【請求項2】
請求項1に記載の局部洗浄装置であって、
前記ノズル洗浄器は、前記内周壁部を周方向に等間隔で分割した複数箇所に前記吐出口が形成されている
局部洗浄装置。
【請求項3】
請求項1に記載の局部洗浄装置であって、
前記ノズル洗浄器は、前記内周壁部として、外周面から前記環状流路内に突出する複数の受け部と前記吐出口とが形成され、該環状流路を流れる洗浄水を前記受け部で受けることにより回転可能なリング部材を有する
局部洗浄装置。
【請求項4】
請求項1に記載の局部洗浄装置であって、
前記ノズル洗浄器は、前記内周壁部として、前記環状流路を流れる洗浄水を受ける受け部と前記吐出口とが複数形成され、該環状流路を流れる洗浄水を前記受け部で受けることにより回転可能なリング部材を有し、
前記リング部材は、前記洗浄ノズルの軸中心に対して偏心して回転するように構成されている
局部洗浄装置。
【請求項5】
請求項4に記載の局部洗浄装置であって、
前記リング部材は、周方向の一部が欠けたCリング状に形成されている
局部洗浄装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の局部洗浄装置であって、
前記ノズル洗浄器は、前記給水部から供給された洗浄水を受けて前記環状流路に導くように屈曲した形状に形成された導水板を有し、
前記外周壁部は、前記導水板を覆うと共に前記導水板との合わせ面が該導水板の先端側となるように形成されている
局部洗浄装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の局部洗浄装置であって、
前記ノズル洗浄器は、前記給水部から供給された洗浄水にエジェクタ効果により吸入した空気を混入させるように構成されている
局部洗浄装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の局部洗浄装置であって、
前記ノズル洗浄器は、前記待機位置にある前記洗浄ノズルの前端面よりも前記環状リブが前方側に位置するように構成されている
局部洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局部洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の局部洗浄装置としては、吐出口から洗浄水を吐出する洗浄ノズルを待機位置から局部洗浄位置へ移動させて人体局部を洗浄するものにおいて、洗浄ノズルの洗浄を行うものが提案されている。例えば、特許文献1には、洗浄ノズルを収容するケース(カバー)の前側に、洗浄ノズルの進退移動に連動して洗浄ノズルの上方に移動(回動)するノズル洗浄手段と、ノズル洗浄手段の回動に連動してケースの開口を開閉するシャッターとを設けたものが記載されている。そして、洗浄ノズルが進出する際などに、洗浄ノズルの上方に移動したノズル洗浄手段から洗浄水を吐出して洗浄ノズルを洗浄し、洗浄ノズルで跳ね返った洗浄水の飛散をシャッターにより抑制している。また、特許文献2には、待機位置にある洗浄ノズルの吐出口の位置でノズル全周を覆うカバーを設けたものが記載されている。そして、洗浄ノズルの吐出口から吐出された洗浄水が、洗浄ノズルとカバーとの環状の隙間を流れることで、洗浄ノズルの吐出口の周辺部を洗浄する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5605579号
【特許文献2】特許第5665014号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1の構成では、洗浄ノズルの上方からのみ洗浄水を吐出するから、洗浄ノズルの全周を確実に洗うことができない可能性がある。また、開状態のシャッターは洗浄ノズルの上方への洗浄水の飛散を抑制するものの、上方以外への飛散を抑えるには十分でないから、洗浄効果を上げるために洗浄水の水勢を高めると周囲に洗浄水や汚れが飛散することがある。一方で、特許文献2の構成では、洗浄ノズルとカバーとの環状の隙間に洗浄水を流すため、洗浄ノズルの全周を洗うことはできるものの、洗浄ノズルの吐出口がある先端部しか洗浄することができず、先端部以外の汚れを除去するには不十分である。したがって、洗浄ノズルを適切に洗浄するためになお改善の余地がある。
【0005】
本発明は、洗浄水や汚れの飛散を抑制しつつ洗浄ノズルを適切に洗浄することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の局部洗浄装置は、
筒状の洗浄ノズルにより局部洗浄を行う局部洗浄装置であって、
前記洗浄ノズルを待機位置から前方の局部洗浄位置まで進退移動させる駆動部と、
洗浄水を供給する給水部と、
前記洗浄ノズルが挿通可能な開口を有し、前記給水部から供給された洗浄水を前記開口内に吐出して前記洗浄ノズルを洗浄可能なノズル洗浄器と、
前記洗浄ノズルを移動させながら前記ノズル洗浄器が前記洗浄ノズルを洗浄するように前記駆動部と前記給水部とを制御する制御装置と、
を備え、
前記ノズル洗浄器は、前記開口を形成する環状の内周壁部と、該内周壁部との間に前記給水部から供給された洗浄水が流れる環状流路を形成する環状の外周壁部と、を有し、
前記内周壁部は、前記環状流路を流れる洗浄水を前記開口内に吐出するように径方向に貫通する吐出口が形成され、
前記外周壁部は、前記内周壁部を覆うように前方に延びると共に前端側で前記洗浄ノズルとの隙間が小さくなるように径方向内側に延びる環状リブが設けられている
を備えることを要旨とする。
【0008】
本発明の局部洗浄装置では、ノズル洗浄器が、環状の内周壁部と、内周壁部との間に環状流路を形成する環状の外周壁部とを有する。内周壁部は、環状流路を流れる洗浄水を開口内に吐出するように径方向に貫通する吐出口が形成される。このため、吐出口から開口内の洗浄ノズルに洗浄水が吐出されることで、洗浄ノズルの汚れを適切に除去することが可能となる。また、外周壁部は、内周壁部を覆うように前方に延びると共に前端側で洗浄ノズルとの隙間が小さくなるように径方向内側に延びる環状リブが設けられているから、洗浄水や汚れが前方に飛散するのを抑制することができる。そして、洗浄ノズルを移動させながらノズル洗浄器に洗浄ノズルを洗浄させるから、洗浄ノズルを全長にわたって洗浄することができる。したがって、洗浄水や汚れの飛散を抑制しつつ洗浄ノズルを適切に洗浄することができる。
【0009】
本発明の局部洗浄装置において、前記ノズル洗浄器は、前記内周壁部を周方向に等間隔で分割した複数箇所に前記吐出口が形成されているものとしてもよい。こうすれば、開口内の洗浄ノズルの全周に満遍なく洗浄水を吐出して、洗浄ノズルの全周を適切に洗浄することができる。
【0010】
本発明の局部洗浄装置において、前記ノズル洗浄器は、前記内周壁部として、外周面から前記環状流路内に突出する複数の受け部と前記吐出口とが形成され、該環状流路を流れる洗浄水を前記受け部で受けることにより回転可能なリング部材を有するものとしてもよい。こうすれば、リング部材を回転させながら開口内の洗浄ノズルの全周に満遍なく洗浄水を吐出して、洗浄ノズルの全周を適切に洗浄することができる。
【0011】
本発明の局部洗浄装置において、前記ノズル洗浄器は、前記内周壁部として、前記環状流路を流れる洗浄水を受ける受け部と前記吐出口とが複数形成され、該環状流路を流れる洗浄水を前記受け部で受けることにより回転可能なリング部材を有し、前記リング部材は、前記洗浄ノズルの軸中心に対して偏心して回転するように構成されているものとしてもよい。こうすれば、リング部材の内周面が洗浄ノズルの全周(外周面)に擦るように接触しながら回転するから、洗浄ノズルの外周面の汚れを掻き落として、洗浄ノズルの全周の汚れを適切に除去することができる。
【0012】
本発明の局部洗浄装置において、前記リング部材は、周方向の一部が欠けたCリング状に形成されているものとしてもよい。こうすれば、リング部材が偏心して回転する構成を簡易な構成で実現することができる。
【0013】
本発明の局部洗浄装置において、前記ノズル洗浄器は、前記給水部から供給された洗浄水を受けて前記環状流路に導くように屈曲した形状に形成された導水板を有し、前記外周壁部は、前記導水板を覆うと共に前記導水板との合わせ面が該導水板の先端側となるように形成されているものとしてもよい。こうすれば、合わせ面から洗浄水が漏れるのを抑えることができるから、漏れ防止のための溶着工程などを省略することが可能となる。
【0014】
本発明の局部洗浄装置において、前記ノズル洗浄器は、前記給水部から供給された洗浄水にエジェクタ効果により吸入した空気を混入させるように構成されているものとしてもよい。こうすれば、洗浄水に空気を混入させて泡沫状とすることで、洗浄水の飛散を抑えつつ汚れを除去しやすくすることができる。
【0015】
本発明の局部洗浄装置において、前記ノズル洗浄器は、前記待機位置にある前記洗浄ノズルの前端面よりも前記環状リブが前方側に位置するように構成されているものとしてもよい。こうすれば、環状リブに当たった洗浄水を洗浄ノズルの前端面に流して前端面を洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】洗浄便座装置10が取り付けられた便器1の外観斜視図である。
【
図2】洗浄便座装置10の構成の概略を示す構成図である。
【
図10】ノズル洗浄処理の一例を示すフローチャートである。
【
図11】おしり洗浄ノズル32の進出状態でノズル洗浄を行う様子を示す説明図である。
【
図12】おしり洗浄ノズル32の収容状態でノズル洗浄を行う様子を示す説明図である。
【
図13】変形例のノズル洗浄器140の外観斜視図である。
【
図14】ベース部材151とリング部材71の外観斜視図である。
【
図17】変形例のノズル洗浄器240の断面構成図である。
【
図18】変形例のノズル洗浄器340の外観斜視図である。
【
図19】ベース部材351とリング部材371の外観斜視図である。
【
図21】おしり洗浄ノズル32とリング部材371の位置関係を示す説明図である。
【
図22】おしり洗浄ノズル32とリング部材371の外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための形態について説明する。
【0018】
図1は、洗浄便座装置10が取り付けられた便器1の外観斜視図であり、
図2は、洗浄便座装置10の構成の概略を示す構成図であり、
図3,
図4は、ノズルユニット30の外観斜視図である。洗浄便座装置10は、
図1に示すように、便器1の上面に取り付けられ、便座装置本体12と、便座装置本体12に対して開閉可能に支持された便座14および便蓋16と、使用者による各種操作が可能な操作パネル18とを備える。また、
図2に示すように、便座装置本体12は、洗浄水を供給する給水路20と、局部洗浄を行う洗浄ノズルや洗浄ノズルを洗浄するノズル洗浄器40などを有するノズルユニット30と、洗浄便座装置10の全体を制御する制御装置19とを備える。なお、本実施形態において、左右方向、前後方向及び上下方向は、
図1に示した通りとする。
【0019】
給水路20には、給水源から止水電磁弁22を介して供給される洗浄水を所定圧に減圧する減圧弁23や洗浄水を加温する熱交換ユニット24、洗浄水の温度を検出する水温センサ25、洗浄水の流量を検出する流量センサ26、洗浄の強さを調整する脈動ポンプ27、バキュームブレーカ28、洗浄水の流量調整と供給先の切り替えとを行う流路切替弁29などが設けられている。なお、熱交換ユニット24は、本実施形態では、例えば1200W程度の定格出力を有するセラミックヒータ等を内蔵し、洗浄水を瞬間的に加温可能な瞬間式の熱交換ユニットとして構成されている。また、流路切替弁29は、例えばステッピングモータにより駆動するロータリディスクバルブとして構成されており、給水口を介して供給された洗浄水の流量を調整しながら供給先を切り替え可能となっている。
【0020】
ノズルユニット30は、おしり洗浄ノズル32および駆動部33と、ビデ洗浄ノズル36および駆動部37と、ノズル洗浄器40とを備え、おしり洗浄ノズル32とビデ洗浄ノズル36とを収容ケース31内に収容可能である。おしり洗浄ノズル32は、内部に洗浄水の流路が形成されると共に先端側の上面に吐出口32a(
図11参照)が形成された筒状部材である。駆動部33は、例えばモータ34とギヤ機構35とを備え、モータ34の正回転または逆回転により、おしり洗浄ノズル32を収容ケース31内の待機位置(収容位置)から前方の局部洗浄位置まで進退移動させる。ビデ洗浄ノズル36および駆動部37は、おしり洗浄ノズル32および駆動部33と同じ構成であるため、説明は省略する。以下、おしり洗浄ノズル32とビデ洗浄ノズル36とを、単に「洗浄ノズル」と称することがある。
【0021】
ノズル洗浄器40は、収容ケース31の前端部に取り付けられ、おしり洗浄ノズル32およびビデ洗浄ノズル36がそれぞれ挿通可能(移動可能)な2つの開口41を有する。ノズル洗浄器40は、給水路20から流路切替弁29を経て供給された洗浄水を、開口41内に吐出することで洗浄ノズルの外表面を洗浄する。
【0022】
操作パネル18には、おしり洗浄を指示するおしり洗浄スイッチ18aやビデ洗浄を指示するビデ洗浄スイッチ18b、洗浄の停止を指示する停止スイッチ18c、洗浄水の温度を調整する温度調整スイッチ18d、洗浄水の洗浄強さ(勢い)を調整する水勢調整スイッチ18e、ノズル洗浄を指示するノズル洗浄スイッチ18fなどが設けられている。
【0023】
制御装置19は、図示しないCPUやROM、RAMを備えるマイクロプロセッサとして構成されている。制御装置19には、便座14への使用者の着座を検知する着座センサ17や操作パネル18からの操作信号、水温センサ25からの検出水温、流量センサ26からの検出流量などが入力される。また、制御装置19は、止水電磁弁22への駆動信号や熱交換ユニット24への制御信号、脈動ポンプ27への駆動信号、流路切替弁29への駆動信号、おしり洗浄ノズル32の駆動部33(モータ34)への駆動信号、ビデ洗浄ノズル36の駆動部37(モータ38)への駆動信号などを出力する。
【0024】
以下、ノズル洗浄器40の構成の詳細を説明する。
図5,
図6は、ノズル洗浄器40の断面斜視図であり、
図7は、ノズル洗浄器40の外観斜視図であり、
図8は、ベース部材51の外観斜視図であり、
図9は、カバー部材61の外観斜視図である。本実施形態のノズル洗浄器40は、ベース部材51とカバー部材61の2部材(2部品)で構成され、開口41内に吐出される洗浄水が流れる環状流路(環状水路)42を形成している。なお、上述した
図4では、カバー部材61を取り外した状態のノズル洗浄器40を示す。
【0025】
ベース部材51は、開口41を形成する環状の内周壁部(環状周壁部)52と、内周壁部52を径方向に貫通する複数の吐出口53と、流路切替弁29に図示しない給水ホースを介して接続される供給口54と、供給口54を介して供給された洗浄水を導く導水板56と、内周壁部52と所定の隙間を空けて円弧状に形成された円弧状壁部58とが設けられている。ベース部材51には、2つの開口41に対応するように、内周壁部52や供給口54、導水板56、円弧状壁部58がそれぞれ2つずつ左右対称に設けられている。
【0026】
カバー部材61は、ベース部材51の内周壁部52との間に円弧状壁部58と共に環状流路42を形成する外周壁部(環状周壁部)62と、ベース部材51に係合する係合フック67と、収容ケース31に係合する係合フック69とが設けられている。カバー部材61は、外周壁部62や係合フック67、係合フック69がそれぞれ2つずつ(係合フック67は上下にそれぞれ2つずつ)、左右対称に設けられている。カバー部材61は、外周壁部62が内周壁部52と導水板56と円弧状壁部58とを覆うようにベース部材51に取り付けられ、係合フック67がベース部材51に係合されることでベース部材51と一体化する。その状態で、収容ケース31の前端部の側面に形成された係合爪31aに係合フック69を係合させることで、ノズル洗浄器40が収容ケース31に取り付けられる。
【0027】
ノズル洗浄器40では、供給口54が洗浄ノズルの軸方向(
図11,
図12参照)に沿う方向で洗浄水が供給されるように設けられている。導水板56は、供給口54と連続するようにベース部材51の前面から立設し、供給口54を介して供給された洗浄水を受けて環状流路42に向けて径方向に導くように屈曲した形状に形成されている。また、ノズル洗浄器40では、内周壁部52に形成された吐出口53が、内周壁部52の周方向に例えば90度間隔で4箇所に、環状流路42を流れる洗浄水の流量を絞って吐出するように、スリット状に貫通するように形成されている。吐出口53を通過した洗浄水は、吐出口53の幅(スリット幅)よりも広がりながら吐出されるため、周方向に4箇所設けることで洗浄ノズルの略全周に満遍なく洗浄水を吐出することができる。なお、本実施形態では、吐出口53が4箇所に形成されているものを例示するが、これに限られず、内周壁部52を周方向に等間隔で分割した複数箇所に形成されていればよい。例えば、洗浄ノズルの外径(開口41の内径)や吐出口53の幅(スリット幅)などに基づいて洗浄水を満遍なく吐出できるように、3箇所や6箇所、8箇所などに吐出口53を形成すればよい。また、吐出口53は、環状流路42の断面積よりも小さな断面積または同等の断面積で貫通するように形成されているが、これに限られず、そのような断面積よりも大きな断面積で形成されていてもよい。
【0028】
また、カバー部材61の外周壁部62には、導水板56を収めるように内面が凹むと共に導水板56の基端側まで覆うように延在した覆い部63が設けられている。本実施形態では、この覆い部63(外周壁部62)と導水板56との合わせ面mf(
図5,
図6参照)が導水板56の先端側となるように構成する。即ち、供給口54を介して供給された洗浄水を導水板56で受けて環状流路42側(径方向内側)に導いた後に、合わせ面mfが位置しているから、合わせ面mfへの洗浄水の浸入を抑えて漏れを防止することができる。また、覆い部63が導水板56の基端側まで覆うことで、合わせ面mfから洗浄水が浸入しても漏れ難くすることができる。
【0029】
また、ノズル洗浄器40では、カバー部材61の外周壁部62が、ベース部材51の内周壁部52よりも前方側に延びるように形成されており、外周壁部62の前端側に開口41内の洗浄ノズルとの隙間を小さくするように径方向内側に突出した環状リブ65が形成されている。この環状リブ65は、内径がベース部材51の内周壁部52よりも若干大きな内径に形成されている。このため、開口41内において洗浄ノズルの外周面との隙間は、後方側の内周壁部52との隙間tbよりも、前方側の環状リブ65との隙間tfの方が大きくなるから、洗浄ノズルを洗浄した洗浄水を前方側へ排出するように促すことができ、洗浄水や除去した汚れなどが残存するのを抑制することができる。
【0030】
次に、こうして構成された洗浄便座装置10の動作、特に洗浄ノズルを洗浄する動作について説明する。
図10はノズル洗浄処理の一例を示すフローチャートである。制御装置19は電源オンの状態でこの処理を実行する。また、
図11は、おしり洗浄ノズル32の進出状態でノズル洗浄を行う様子を示す説明図であり、
図12は、おしり洗浄ノズル32の収容状態でノズル洗浄を行う様子を示す説明図である。
図11,
図12では、おしり洗浄ノズル32を例示するが、ビデ洗浄ノズル36でも同様である。
【0031】
図10のノズル洗浄処理では、制御装置19は、操作パネル18からの操作信号により、局部洗浄(おしり洗浄やビデ洗浄)の開始操作が行われたか否か(S100)、ノズル洗浄の開始操作が行われたか否か(S110)、をそれぞれ判定する。S100の判定は、おしり洗浄スイッチ18aかビデ洗浄スイッチ18bのいずれかが操作されたか否かに基づいて行われ、S110の判定は、ノズル洗浄スイッチ18fが操作されたか否かに基づいて行われる。
【0032】
制御装置19は、S100で局部洗浄の開始操作が行われたと判定すると、今回の局部洗浄を行う洗浄ノズルを前進させながらノズル洗浄を実行する(S120)。S120の処理は、止水電磁弁22を開弁し流路切替弁29の供給先をノズル洗浄器40の供給口54のうち前進させる洗浄ノズル側の供給口54に切り替えて洗浄水を供給しながら、洗浄ノズルの駆動部(駆動部33または駆動部37)を制御して洗浄ノズルを局部洗浄位置まで前進させることにより行われる。これによりノズル洗浄器40が吐出口53から洗浄水を吐出している間に、洗浄ノズルが開口41内を挿通して前方の洗浄位置まで移動する(
図11参照)。このため、局部洗浄を開始する前に洗浄ノズルの外周面の全周を全長にわたって洗浄することができる。そして、制御装置19は、洗浄ノズルが局部洗浄位置に到達したか否かを判定し(S130)、局部洗浄位置に到達したと判定するとノズル洗浄を終了する(S140)。S140の処理は、流路切替弁29の供給先をノズル洗浄器40から局部洗浄を行う洗浄ノズルに切り替えて、ノズル洗浄器40への洗浄水の供給を停止することにより行われる。また、この処理により、洗浄ノズルから洗浄水が吐出されて局部洗浄が開始される。
【0033】
次に、制御装置19は、操作パネル18の停止スイッチ18cからの操作信号により、局部洗浄の停止操作が行われたか否かを判定する(S150)。停止操作が行われたと判定すると、制御装置19は、洗浄ノズルを後退させながらノズル洗浄を実行する(S160)。S160の処理は、流路切替弁29の供給先をノズル洗浄器40の供給口54のうち後退させる洗浄ノズル側の供給口54に切り替えて洗浄水を供給しながら、洗浄ノズルの駆動部を制御して洗浄ノズルを待機位置まで後退させることにより行われる。このため、局部洗浄を終了した後に、洗浄ノズルの外周面の全周を全長にわたって洗浄することができる。そして、制御装置19は、洗浄ノズルが待機位置に到達したか否かを判定し(S170)、到達したと判定すると、さらに数秒程度の所定時間にわたりノズル洗浄を行ってからノズル洗浄を終了して(S180)、S100に戻る。S180のノズル洗浄の終了処理は、止水電磁弁22を閉弁して、ノズル洗浄器40(供給口54)への洗浄水の供給を停止することにより行われる。
【0034】
ここで、ノズル洗浄器40は、カバー部材61の外周壁部62の環状リブ65が、待機位置にある洗浄ノズルの前端面よりも前方側となるように構成されている。このため、吐出口53から吐出されて洗浄ノズルで跳ね返り環状リブ65に当たった洗浄水を、洗浄ノズルの前端面に流して前端面を適切に洗浄することができる(
図12参照)。なお、洗浄便座装置10が、閉状態で洗浄ノズルの先端を覆い、洗浄ノズルが進出する際に開状態となる開閉式のシャッターを備える構成の場合、
図12に示す洗浄時には、閉状態のシャッターによっても洗浄水などの飛散を防止することができる。
【0035】
また、制御装置19は、S110でノズル洗浄の開始操作が行われたと判定すると、洗浄ノズルを順次前後進(進退)させながらノズル洗浄を実行する(S190)。S190の処理は、止水電磁弁22を開弁し流路切替弁29の供給先をノズル洗浄器40の2つの供給口54に順に切り替えて洗浄水を供給しながら、洗浄水が供給される供給口54側の洗浄ノズルの駆動部を制御して洗浄ノズルを前後進させることにより行われる。ここで、S120,S160,S180,S190の少なくともいずれかのノズル洗浄において、局部洗浄時よりも水勢の強い(水量の多い)洗浄水を流して洗浄効果を高めてもよい。そのようにする場合、水勢調整スイッチ18eで設定可能な最も強い水勢よりも、さらに強い水勢の洗浄水を流路切替弁29からノズル洗浄器40へ供給可能に構成すればよい。なお、上述したように、ノズル洗浄器40は洗浄水の飛散を防止する環状リブ65が設けられているから、水勢を強くしても洗浄水などが飛散するのを抑えることができる。
【0036】
そして、制御装置19は、ノズル洗浄の停止タイミングになったか否かを判定する(S200)。S200の判定は、操作パネル18の停止スイッチ18cからの操作信号によりノズル洗浄の停止操作がなされたか否かにより行ってもよいし、予め定められたノズル洗浄時間が経過したか否かにより行ってもよい。制御装置19は、ノズル洗浄の停止タイミングになったと判定すると、各洗浄ノズルを待機位置に戻してノズル洗浄を終了して(S210)、S100に戻る。S210のノズル洗浄の終了は、S180と同様に行われ、洗浄ノズルの前端面の洗浄も行われる。
【0037】
以上説明した洗浄便座装置10では、ノズル洗浄器40の内周壁部52に、環状流路42を流れる洗浄水を絞って開口41内に吐出する吐出口53が形成されているから、供給口54から離れた箇所(例えば最も下方位置)の吐出口53でも洗浄水の水圧(吐出圧)を維持して洗浄ノズルの全周を適切に洗浄することが可能となる。また、ノズル洗浄器40の外周壁部62は、前端側で洗浄ノズルとの隙間が小さくなるように径方向内側に延びる環状リブ65が設けられているから、洗浄水や汚れが前方に飛散するのを抑制することができる。そして、洗浄ノズルを移動させながらノズル洗浄器40に洗浄ノズルを洗浄させるから、洗浄ノズルを全長にわたって洗浄することができる。
【0038】
また、ノズル洗浄器40は、内周壁部52を周方向に等間隔で分割した複数箇所に吐出口53が形成されているから、開口41内の洗浄ノズルの全周に満遍なく洗浄水を吐出して洗浄ノズルの全周を適切に洗浄することができる。
【0039】
また、ノズル洗浄器40は、供給口54に供給された洗浄水を受けて環状流路42に導くように屈曲した導水板56を有し、導水板56を覆う覆い部63(外周壁部62)は、導水板56との合わせ面mfが導水板56の先端側となるように形成されている。このため、合わせ面mfから洗浄水が漏れるのを抑えることができるから、漏れ防止のための溶着工程などを省略することが可能となる。
【0040】
また、ノズル洗浄器40は、待機位置にある洗浄ノズルの前端面よりも環状リブ65が前方側に位置するから、環状リブ65に当たった洗浄水を洗浄ノズルの前端面に流して前端面を洗浄することができる。また、ノズル洗浄器40は、開口41内において洗浄ノズルとの後方の隙間tbよりも前方の隙間tfが大きくなるように形成されているから、洗浄水を前方側に排出しやすくして、汚れが内部に溜まるのを抑制することができる。
【0041】
上述した実施形態では、待機位置にある洗浄ノズルの前端面よりも環状リブ65が前方側に位置するものとしたが、これに限られず、待機位置にある洗浄ノズルの前端面と環状リブ65との前後方向における位置を略同じ位置としてもよい。
【0042】
実施形態では、導水板56と覆い部63との合わせ面mfが導水板56の先端側となるように構成して溶着を省略したが、これに限られず、合わせ面mfを任意の位置とし、合わせ面mfを溶着するものなどとしてもよい。
【0043】
実施形態では、内周壁部52に周方向に等間隔で吐出口53を設けたが、これに限られず、一部に偏るように周方向に異なる間隔で吐出口53が設けられてもよい。例えば、洗浄ノズルの上面側は汚れが付着しやすいため、内周壁部52の上部側(上半分)には下部側(下半分)よりも狭い間隔で吐出口53が設けられるもの即ち上部側により多くの吐出口53が設けられるものなどとしてもよい。
【0044】
実施形態では、ベース部材51に内周壁部52が設けられたが、これに限られない。
図13は、変形例のノズル洗浄器140の外観斜視図であり、
図14は、ベース部材151とリング部材71の外観斜視図であり、
図15は、リング部材71の外観斜視図であり、
図16は、ノズル洗浄器140の部分断面図である。ノズル洗浄器140は、ベース部材151と、カバー部材161と、リング部材71の3部材(3部品)で構成されている。なお、変形例では、実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付して説明を省略する。
【0045】
変形例のベース部材151は、リング部材71を回転可能に収容して支持するように、リング部材71よりも若干大きな径に形成された環状支持部157と、環状支持部157の外周縁から立設(前方に延在)する環状周壁部158とが設けられており、内周壁部52は設けられていない。リング部材71は、環状周壁部72と、環状周壁部72を径方向に貫通するように形成された複数(例えば8箇所)の吐出口73と、環状周壁部72の外周面から径方向外側に突出するように形成された複数(例えば8箇所)の受け部74とが形成されている。変形例のノズル洗浄器140では、リング部材71の環状周壁部72と、ベース部材151の環状周壁部158(環状支持部157)と、カバー部材161の外周壁部162とにより、環状流路142を形成している。このため、リング部材71は、受け部74が環状流路142内に突出するものとなり、環状流路42を流れる洗浄水を受け部74で受けることにより回転可能となる。また、リング部材71の吐出口73は、実施形態と同様に、環状流路142の断面積よりも小さな断面積で、環状周壁部72を径方向に貫通するように形成されている。
【0046】
この変形例のノズル洗浄器140では、環状流路42を流れる洗浄水を受け部74で受けることによりリング部材71を回転させながら、リング部材71の吐出口73から洗浄水を開口141内の洗浄ノズルに吐出することができる。したがって、開口141内の洗浄ノズルの全周に満遍なく洗浄水を吐出することができるため、洗浄ノズルの全周を適切に洗浄することができる。なお、リング部材71には、複数の吐出口73が形成されるものとしたが、これに限られず、吐出口73は1つであってもよい。なお、洗浄ノズルの移動速度やリング部材の回転速度(洗浄水の流量)などに基づいて、洗浄ノズルの全周に洗浄水が吐出されるように、吐出口73の必要数を決定すればよい。あるいは、吐出口73の数に基づいて、洗浄ノズルの全周に洗浄水が吐出されるように、洗浄ノズルの移動速度やリング部材の回転速度(洗浄水の流量)を決定してもよい。
【0047】
また、ノズル洗浄器40を、次の変形例のように構成してもよい。
図17は、変形例のノズル洗浄器240の断面構成図である。変形例のノズル洗浄器240には、洗浄水導入部259を介して洗浄水が供給口54に供給される構成となっている。この洗浄水導入部259は、給水ホースから供給された洗浄水を導入する導入口259aと、導入口259aに連通し空気を吸入する吸入口259bとが形成されている。洗浄水導入部259は、導入口259aから導入(供給)された洗浄水に、エジェクタ効果により吸入口259bから吸入した空気を混入させた泡沫流(泡沫状の洗浄水)を供給口54に導入する。これにより、ノズル洗浄器240は、洗浄水に空気を混入させた泡沫流でノズル洗浄を行うことができるから、洗浄水の飛散を抑えつつ汚れを除去しやすくすることができる。なお、供給口54に洗浄水導入部259の機能を設けてもよい。
【0048】
また、
図18は、変形例のノズル洗浄器340の外観斜視図であり、
図19は、ベース部材351とリング部材371の外観斜視図であり、
図20は、リング部材371の外観斜視図である。
図21は、おしり洗浄ノズル32とリング部材371の位置関係を示す説明図であり、
図22は、おしり洗浄ノズル32とリング部材371の外観斜視図である。ノズル洗浄器340は、
図13~
図16の変形例と同様に、ベース部材351と、カバー部材361と、リング部材371の3部材(3部品)で構成されている。ノズル洗浄器340は、供給口354がノズル洗浄器340の両外側に位置しており、ノズル洗浄器40,140の供給口54と位置が異なるが、変形例の要旨をなさないから説明は省略する。なお、供給口354が供給口54と同様の位置にあってもよいし、供給口354に洗浄水導入部259の機能を設けてもよい。
【0049】
変形例のベース部材351は、上述した変形例のベース部材151と同様に、リング部材371を回転可能に収容して支持する環状支持部357と、環状支持部157の外周縁から立設(前方に延在)する環状周壁部358とが設けられている。リング部材371は、周方向の一部が欠けたCリング状に形成されたリング本体372と、リング本体372から洗浄ノズルの軸方向に延出する複数の受け部374と、各受け部374の間の溝部として形成され径方向に貫通する複数の吐出口373とを有する。リング部材371は、受け部374が環状流路342内(
図19参照)に位置しており、環状流路342を流れる洗浄水を受け部374で受けることにより回転可能となる。
【0050】
また、リング部材371(リング本体372)は、周方向の一部が欠けたCリング状に形成されているため、遠心力が周方向に均等に作用せず、洗浄ノズルの軸中心に対して偏心して回転する。例えば
図21には、リング部材371に作用する遠心力により、洗浄ノズルの軸中心Ncに対してリング部材371の中心Rcが図中左側に偏心した状態を示す。このようにリング部材371が洗浄ノズルに対して偏心して回転するため、リング部材371の内周面の一部が、洗浄ノズルの外周面に擦るように接触しながら回転する。即ち、一部が欠けたリング部材371の両端部の内周面即ち両端の受け部374の内周側の面が洗浄ノズルに接触する(
図21の実線の丸囲み箇所)。これにより、回転中のリング部材371の内周面で洗浄ノズルの外周面の汚れを掻き落とすことができるから、汚れを適切に除去することができる。リング部材371(リング本体372)の開き角度θ(欠けた部分の角度θ)は、リング部材371が洗浄ノズルから外れることなく回転して内周面の一部(両端部の内面)が洗浄ノズルの外周面に接触するように、180度未満の任意の角度とすることができ、例えば120度程度の角度とする。なお、ノズル洗浄器340内のリング部材371は、環状周壁部358で外周を支持されるため、実際には洗浄ノズルから外れることはない。
【0051】
この変形例のノズル洗浄器340では、環状流路342を流れる洗浄水を受け部374で受けることによりリング部材371を回転させながら、リング部材371の吐出口373から洗浄水を開口341内の洗浄ノズルに吐出することができる。したがって、洗浄ノズルの全周に満遍なく洗浄水を吐出して洗浄ノズルの全周を適切に洗浄することができる。また、上述したように、リング部材371の内周面で洗浄ノズルの外周面の汚れを掻き落とすことができる。このため、洗浄ノズル(おしり洗浄ノズル32など)の進退移動中にリング部材371が回転することで(
図22参照)、洗浄ノズルの外周面の汚れを全長にわたって掻き落とすことができる。このように、変形例では、洗浄水の水流だけでなく物理的な接触によって汚れを除去できるから、洗浄ノズルの全周をさらに適切に洗浄することができる。
【0052】
変形例のノズル洗浄器340のリング部材371では、Cリング状のリング本体372における周方向の全長に亘って複数の受け部374(吐出口373)が同じ大きさで等間隔に形成されたが、これに限られず、複数の受け部374(吐出口373)が異なる大きさや異なる間隔で形成されてもよく、周方向の一部に吐出口373が形成されなくてもよい。また、リング部材371は、吐出口373即ち受け部374の間の溝が径方向に直線状に形成されたが、これに限られず、径方向に対して斜めに形成されてもよい。
【0053】
変形例のノズル洗浄器340では、リング部材371が周方向の一部が欠けたCリング状に形成されることで偏心して回転する構成としたが、これに限られない。例えば、リング部材371を
図15のリング部材71と同様に欠けのない円環状に形成し、その一部に錘を設けたり一部の厚みを変更したりすることで、偏心して回転する構成としてもよい。また、
図15のリング部材71の一部に錘を設けたり厚みを変更したりして、リング部材71を偏心して回転させる構成としてもよい。あるいは、リング部材が回転しながら洗浄ノズルの外周面と部分的に接触するように構成されていてもよい。例えば、リング部材の内周面から突出し、洗浄ノズルの外周面に擦るような凸部を1または複数設けてもよい。このような凸部を、
図15のリング部材71の内周面に設けてもよい。
【0054】
実施形態では、局部洗浄の開始前および終了後と、ノズル洗浄の開始操作が行われた場合とでノズル洗浄を行ったが、これに限られるものではない。例えば、局部洗浄の開始前および終了後の一方でノズル洗浄を行い他方でノズル洗浄を行わなくてもよい。また、局部洗浄の開始前および終了後にノズル洗浄を行わず、ノズル洗浄の開始操作が行われた場合にノズル洗浄を行ってもよい。また、使用者の入室を検知する入室検知センサからの検知信号に基づいて使用者が入室したことや退室したことを検知した場合にノズル洗浄を行ってもよいし、着座センサ17からの検知信号に基づいて使用者が脱座したことを検知した場合にノズル洗浄を行ってもよい。あるいは、局部洗浄の終了後に使用者が退室して一定時間が経過した場合にノズル洗浄を行ってもよい。
【0055】
実施形態では、ノズル洗浄器40の開口41内における洗浄ノズルとの隙間として、後方側の隙間tbよりも前方側の隙間tfを大きくしたが、これに限られるものではない。例えば、後方側の隙間tbと前方側の隙間tfとを同じとしてもよいし、前方側の隙間tfよりも後方側の隙間tbを大きくしてもよい。
【0056】
実施形態では、おしり洗浄ノズル32とビデ洗浄ノズル36の2本の洗浄ノズルを備えたが、これに限られず、3本以上の複数の洗浄ノズルを備えてもよいし、1本の洗浄ノズルを備えてもよい。
【0057】
本実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。本実施形態では、洗浄便座装置10の便座装置本体12が「局部洗浄装置」に相当し、おしり洗浄ノズル32やビデ洗浄ノズル36が「洗浄ノズル」に相当し、駆動部33,37が「駆動部」に相当し、給水路20と流路切替弁29とが「給水部」に相当し、ノズル洗浄器40が「ノズル洗浄器」に相当し、制御装置19が「制御装置」に相当し、内周壁部52が「内周壁部」に相当し、外周壁部62が「外周壁部」に相当し、環状流路42が「環状流路」に相当し、吐出口53が「吐出口」に相当し、環状リブ65が「環状リブ」に相当する。また、導水板56が「導水板」に相当する。変形例のリング部材71が「リング部材」に相当し、環状周壁部72が「内周壁部」に相当し、吐出口73が「吐出口」に相当し、受け部74が「受け部」に相当し、環状周壁部158と外周壁部162とが「外周壁部」に相当する。また、変形例のリング部材371が洗浄ノズルの軸中心に対して偏心して回転する「リング部材」に相当し、吐出口373が「吐出口」に相当し、受け部374が「受け部」に相当する。
【0058】
なお、本実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、本実施形態が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、本実施形態は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0059】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、洗浄便座装置の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 便器、10 洗浄便座装置、12 便座装置本体、14 便座、16 便蓋、17 着座センサ、18 操作パネル、18a おしり洗浄スイッチ、18b ビデ洗浄スイッチ、18c 停止スイッチ、18d 温度調整スイッチ、18e 水勢調整スイッチ、18f ノズル洗浄スイッチ、19 制御装置、20 給水路、22 止水電磁弁、23 減圧弁、24 熱交換ユニット、25 水温センサ、26 流量センサ、27 脈動ポンプ、28 バキュームブレーカ、29 流路切替弁、30 ノズルユニット、31 収容ケース、31a 係合爪、32 おしり洗浄ノズル、32a 吐出口、33,37 駆動部、34,38 モータ、35 ギヤ機構、36 ビデ洗浄ノズル、40,140,240,340 ノズル洗浄器、41,141,341 開口、42,142,342 環状流路、51,151,351 ベース部材、52 内周壁部、53 吐出口、54,354 供給口、56 導水板、58 円弧状壁部、61,161,361 カバー部材、62,162 外周壁部、63 覆い部、65 環状リブ、67,69 係合フック、71,371 リング部材、72 環状周壁部、73,373 吐出口、74,374 受け部、157,357 環状支持部、158,358 環状周壁部、259 洗浄水導入部、259a 導入口、259b 吸入口、372 リング本体、mf 合わせ面、tb,tf 隙間。