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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022011508
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】エキシマランプ
(51)【国際特許分類】
   H01J 65/00 20060101AFI20220107BHJP
   H01J 61/35 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
H01J65/00 B
H01J61/35 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020112696
(22)【出願日】2020-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笠木 邦雄
(72)【発明者】
【氏名】藤田 尚樹
【テーマコード(参考)】
5C043
【Fターム(参考)】
5C043DD36
(57)【要約】
【課題】エキシマランプの寿命を延長する。
【解決手段】エキシマランプは、長尺状の発光管の内部に発光ガスを有する発光部、および前記発光部の管軸方向の端に連続して形成された前記発光ガスを封止する封止部を備えるエキシマランプであって、前記エキシマランプは、前記発光部における前記発光管の外表面に、前記発光管を挟んで互いに対向して設けられる高電圧電極及び低電圧電極と、前記発光管の外表面に、前記発光部から前記封止部まで亘って設けられ、前記高電圧電極と前記封止部に位置する第一給電部材とを電気的に接続するための第一導電膜と、前記発光管の外表面に、前記発光部から前記封止部まで亘って設けられ、前記低電圧電極と前記封止部に位置する第二給電部材とを電気的に接続するための第二導電膜と、前記第一導電膜のうち、少なくとも前記発光部と前記封止部との境界領域を覆う絶縁部材と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の発光管の内部に発光ガスを有する発光部、および前記発光部の管軸方向の端に連続して形成された前記発光ガスを封止する封止部を備えるエキシマランプであって、
前記エキシマランプは、前記発光部における前記発光管の外表面に、前記発光管を挟んで互いに対向して設けられる高電圧電極及び低電圧電極と、
前記発光管の外表面に、前記発光部から前記封止部まで亘って設けられ、前記高電圧電極と前記封止部に位置する第一給電部材とを電気的に接続するための第一導電膜と、
前記発光管の外表面に、前記発光部から前記封止部まで亘って設けられ、前記低電圧電極と前記封止部に位置する第二給電部材とを電気的に接続するための第二導電膜と、
前記第一導電膜のうち、少なくとも前記発光部と前記封止部との境界領域を覆う絶縁部材と、を備えることを特徴とする、エキシマランプ。
【請求項2】
前記第一導電膜と前記第二導電膜は、それぞれ、前記管軸方向に延びる帯状を呈し、前記発光管を前記管軸方向に直交する断面で見たとき、前記第一導電膜と前記第二導電膜とは、前記高電圧電極と前記低電圧電極とが対向する方向に重ならないことを特徴とする、請求項1に記載のエキシマランプ。
【請求項3】
前記封止部は、前記管軸方向の端部が解放されている前記発光管と、前記発光部と前記封止部とを隔てる隔壁と、前記隔壁に形成された排気管と、を備え、
前記発光管を前記管軸方向に直交する断面で見たとき、前記第一導電膜、前記第二導電膜及び前記排気管は、前記高電圧電極と前記低電圧電極とが対向する方向に重ならないことを特徴とする、請求項1又は2に記載のエキシマランプ。
【請求項4】
前記発光管を前記管軸方向に直交する断面で見たとき、前記発光管は、前記高電圧電極と前記低電圧電極とが対向する方向に相対的に短く、前記高電圧電極の幅方向に相対的に長い扁平形状を呈することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のエキシマランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エキシマランプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液晶基板や半導体のプロセス装置又は光洗浄装置等に利用される紫外光を出射する光源として、例えば、下記特許文献1に記載されているようなエキシマランプが利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-033883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、半導体や液晶パネルの製造等に用いられる光照射装置の分野では、被照射物の大型化に伴いエキシマランプの高出力化が求められている。そこで、本発明者らは、上記特許文献1に記載のエキシマランプについて高出力化を検討したところ、以下に示す課題が存在することを見出した。以下、図を参照しながら説明する。
【0005】
まず、図11図12を参照しながらエキシマランプの概要を説明する。図11は、従来のエキシマランプ100をY方向から見たときの図である。図12は、図11のエキシマランプ100をX方向から見たときの図である。図11及び図12に示すように、エキシマランプ100は、中空で長尺状の発光管101と、発光管101の外表面に、発光管101を挟んで互いに対向するように設けられた一対の電極102と、を備える。
【0006】
以下の説明においては、エキシマランプ100の発光管101が延伸する方向(管軸方向)をZ方向、電極102が対向する方向をX方向、X方向及びZ方向に直交し、電極102の幅方向をY方向とする。そして、方向を表現する際に、正負の向きを区別する場合には、「+Z方向」、「-Z方向」のように、正負の符号を付して記載され、正負の向きを区別せずに方向を表現する場合には、単に「Z方向」と記載される。
【0007】
石英ガラスで構成される発光管101の内部の発光空間103に発光ガスG1を有する発光部110と、発光部110のZ方向の両端にそれぞれ連続して形成された、発光ガスG1を封止するための封止部120と、を有する。封止部120は、発光管101と、発光部110と封止部120とを隔てる隔壁104とを含む。発光管101のZ方向の端部は解放されているので、封止部120における内部空間105は、発光管101の外部と連通する。
【0008】
発光部110に設けられる一対の電極102は、図12に示されるような網状に形成された金属膜である。一対の電極102間に電圧を印加して、発光空間103内で誘電体バリア放電を発生させて紫外光を生成する。生成された紫外光は、網状の電極102の開口から発光管101の外部へ放射される。
【0009】
次に、エキシマランプ100の課題を説明する。図13は、図12のA1領域の拡大図である。図14図13のB1-B1線における断面図である。エキシマランプ100は、電極102に給電するための導電膜107及びこの導電膜107に給電するための給電部材108を有する。なお、図13では給電部材108及び導電膜107との接合部を図示していない。導電膜107は、発光部110から封止部120まで亘って設けられる(図13参照)。導電膜107は、発光部110に位置する電極102と封止部120に位置する給電部材108とを電気的に接続する(図14参照)。
【0010】
近年のエキシマランプの高出力化に伴い、エキシマランプの寿命が短くなる問題が生じるようになった。本発明者らが調査したところ、図14のA2領域において、導電膜107が焼損して細くなり、終には導電膜107が断線して点灯しなくなる場合があることが確認された。
【0011】
本発明者らの鋭意分析の結果、上述した導電膜107の焼損は、以下のメカニズムによって発生することが判明した。エキシマランプ100を点灯させると、両電極102にそれぞれ接続された導電膜107の間において、沿面放電C1(図14内に矢符で示す)が、誘電体として作用する隔壁104の表面に沿って発生する。沿面放電C1は、隔壁104近傍のA2領域(図14参照)の導電膜107上において、電荷量の急激な変動(電界の強い振動)を与える。そうすると、A2領域付近において、発光管101の外側の雰囲気中の気体が電離し、コロナ放電が発生する。コロナ放電のエネルギーにより、導電膜107のA2領域が焼損する。
【0012】
本発明者らは、エキシマランプの長寿命化を図るために、導電膜107の焼損を避ける方法を検討した。はじめに、導電膜107を、誘電体として作用する隔壁104から遠ざけることを試みた。斯かる試みに基づいて設計された、比較形態としてのエキシマランプを図15及び図16に示している。図15は、エキシマランプ200をX方向から見た要部拡大図である。図16は、図15のB2-B2線における断面図である。
【0013】
エキシマランプ200は、電極102のZ方向の長さを縮小し、-Z側の端部を+Z方向に移動させている。つまり、導電膜107が、隔壁104の近傍(図15及び図16ではA3領域)に位置しないように設計されている。このように設計されたエキシマランプ200は、沿面放電自体が起こりにくいため、導電膜107はコロナ放電による焼損を受けにくい。
【0014】
しかしながら、エキシマランプ200には次の問題があった。すなわち、導電膜107と給電部材108との接合部109が発光部110のX方向外側に位置することになるため(図16参照)、接合部109が紫外光により生成されたオゾンに晒されて、腐食することがあった。接合部109の腐食が進むと、給電経路が接合部109で断線するため、寿命が短くなる。
【0015】
本発明は、エキシマランプの寿命延長を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
エキシマランプは、長尺状の発光管の内部に発光ガスを有する発光部、および前記発光部の管軸方向の端に連続して形成された前記発光ガスを封止する封止部を備えるエキシマランプであって、
前記エキシマランプは、前記発光部における前記発光管の外表面に、前記発光管を挟んで互いに対向して設けられる高電圧電極及び低電圧電極と、
前記発光管の外表面に、前記発光部から前記封止部まで亘って設けられ、前記高電圧電極と前記封止部に位置する第一給電部材とを電気的に接続するための第一導電膜と、
前記発光管の外表面に、前記発光部から前記封止部まで亘って設けられ、前記低電圧電極と前記封止部に位置する第二給電部材とを電気的に接続するための第二導電膜と、
前記第一導電膜のうち、少なくとも前記発光部と前記封止部との境界領域を覆う絶縁部材と、を備える。
【0017】
上述したように、沿面放電がコロナ放電を引き起こし、コロナ放電により導電膜が焼損する。詳細は後述するが、上述の比較形態のように沿面放電自体を抑えようとするのではなく、第一導電膜のうち少なくとも前記発光部と前記封止部との境界領域を絶縁部材で覆うことで、沿面放電がコロナ放電を引き起こさないようにした。これにより、第一導電膜の焼損量を低減して、給電経路の断線を抑制した。
【0018】
前記第一導電膜と前記第二導電膜は、それぞれ、前記管軸方向に延びる帯状を呈し、前記発光管を前記管軸方向に直交する断面で見たとき、前記第一導電膜と前記第二導電膜とは、前記高電圧電極と前記低電圧電極とが対向する方向に重ならない位置関係となるようにしても構わない。これにより、第一導電膜と第二導電膜間の距離を大きくして、沿面放電の発生を低減できる。
【0019】
前記封止部は、前記管軸方向の端部が解放されている前記発光管と、前記発光部と前記封止部とを隔てる隔壁と、前記隔壁に形成された排気管と、を備え、前記発光管を前記管軸方向に直交する断面で見たとき、前記第一導電膜、前記第二導電膜及び前記排気管は、前記高電圧電極と前記低電圧電極とが対向する方向に重ならない位置関係にしても構わない。詳細は後述するが、これにより、発光部の第一導電膜と第二導電膜との間で発生した紫外光が、排気管の内部に浸入しにくくなる。そして、光の照射に伴う排気管の歪みを防止して、排気管にクラックが発生しないようにする。
【0020】
前記発光管を前記管軸方向に直交する断面で見たとき、前記発光管は、前記高電圧電極と前記低電圧電極とが対向する方向に相対的に短く、前記高電圧電極の幅方向に相対的に長い扁平形状でも構わない。
【発明の効果】
【0021】
これにより、エキシマランプの寿命を延長できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第一実施形態のエキシマランプをY方向から見たときの図である。
図2図1のエキシマランプを+X方向から見たときの図である。
図3図1のエキシマランプを-X方向から見たときの図である。
図4図2のA4領域の拡大図である。
図5図4のB3-B3線における断面図である。
図6図3に示された電極の部分拡大図である。
図7図4のB4-B4線における断面図である。
図8】エキシマランプの参考形態を表す要部断面図である。
図9】第二実施形態のエキシマランプを+X方向から見たときの図である。
図10図9のB5-B5線における断面図である。
図11】従来のエキシマランプをY方向から見たときの図である。
図12図11のエキシマランプをX方向から見たときの図である。
図13図12のA1領域の拡大図である。
図14図13のB1-B1線における断面図である。
図15】比較形態としてのエキシマランプをX方向から見た要部拡大図である。
図16図15のB2-B2線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明のエキシマランプについて、図面を参照して説明する。なお、以下の各図面は、いずれも模式的に図示されたものであり、図面上の寸法比や個数は、実際の寸法比や個数と必ずしも一致していない。
【0024】
<第一実施形態>
[エキシマランプの概要]
図1は、第一実施形態のエキシマランプをY方向から見たときの図である。図2は、図1のエキシマランプ10を+X方向から見たときの図である。図3は、図1のエキシマランプ10を-X方向から見たときの図である。図1に示すように、エキシマランプ10は、長尺状の発光管1の内部に発光ガスG1を有する発光部11、および発光部11の管軸L1の延びる方向(Z方向)の端に連続して形成され、発光ガスG1を封止する封止部(12a,12b)を備える。エキシマランプ10は、発光部11における発光管1の外表面(1a,1b)に、発光管1を挟んで互いに対向するように設けられた一対の電極(2a,2b)を備える。図2には、相対的に高電圧が印加される高電圧電極2aが示されている。図3には、相対的に低電圧が印加される低電圧電極2bが示されている。この低電圧電極2bは、必要に応じて、電気的に接地又はアースされていてもよい。
【0025】
図4は、図2のA4領域の拡大図である。図5図4のB3-B3線を通るXZ平面における断面図である。図4及び図5を参照しながら、エキシマランプ10の高電圧電極2aへの給電経路を説明する。発光管1の外表面1aには、Z方向に延びる帯状の第一導電膜7aが、発光部11から封止部12aまで亘って設けられる。第一導電膜7aは、発光部11に位置する高電圧電極2aの端部と、封止部12aに位置する第一給電部材8a(図5参照)と、を電気的に接続する。第一導電膜7aは、第一給電部材8aに半田等の接合部9aで接合される。
【0026】
図5に示されるように、エキシマランプ10を点灯させると、発光空間1cを挟む両電極(2a,2b)間で誘電体バリア放電DB(図5内に矢符で示す)が発生し、紫外光を放射する。発光部11と封止部12aとの境界領域では、沿面放電C1(図5内に矢符で示す)が、それぞれ電極(2a,2b)に接続された導電膜(7a,7b)の間で、隔壁4の表面に沿って発生する。
【0027】
エキシマランプ10では、絶縁部材15が、第一導電膜7aのうち、少なくとも発光部11と封止部12aとの境界領域を覆うように設けられている(図4図5参照)。そのため、沿面放電C1は隔壁4から第一導電膜7aまで到達するが、絶縁部材15に阻まれて第一導電膜7a周辺の気体まで到達しない。よって、当該気体の電離が抑えられる。つまり、沿面放電C1が発生したとしても、絶縁部材15があることにより沿面放電C1がコロナ放電を引き起こさないようになる。第一導電膜7aの焼損はコロナ放電に因るものであるから、コロナ放電を抑えると、第一導電膜の焼損量を低減できる。
【0028】
絶縁部材15には、紫外光、熱及びオゾン雰囲気に強いセラミックス系材料を使用する。酸化アルミニウムや酸化チタンを使用しても構わない。また、絶縁部材15として、ガラス材料などの、セラミックス系材料以外の絶縁性材料を使用しても構わない。絶縁部材15はスクリーン印刷等で塗布可能な薄膜でも構わないし、テープ状の絶縁材料を張り付けても構わない。薄膜やテープよりも厚みのある板状部材を貼り付けても構わない。本実施形態では、焼損の大きい高電圧側の第一導電膜7a側のみに絶縁部材15を設けたが、低電圧側の第二導電膜7bにも絶縁部材を設けても構わない。
【0029】
以下に、エキシマランプ10の各部位及び絶縁部材15以外の構成要素について詳細に説明する。
【0030】
[発光部]
図5を参照しながら発光部について説明する。エキシマランプ10は、一対の電極(2a,2b)間に電圧を印加することで、発光部11の発光空間1c内で誘電体バリア放電DB(図5内に矢符で示す)を発生させて、紫外光(例えば、ピーク波長が200nm以下の光)を生成する。出射する紫外光の波長に応じて、発光空間1c内に封入される発光ガスG1の種類や組み合わせが選択される。生成された紫外光は、網状の低電圧電極2bの開口から出射される。電極の詳細は後述する。
【0031】
[封止部]
封止部(12a,12b)は、発光部11のZ方向両外側(+Z側及び-Z側)に存在する(図1参照)。図4及び図5を参照すると、一方の封止部12aは、-Z方向の端部が解放されている発光管1と、発光部11と封止部12aとを隔てる隔壁4と、発光管1の内部において、隔壁4に形成された排気管5と、を備える。なお、他方の封止部12bは、Z方向に延びる発光管1と、発光部11と封止部12aとを隔てる隔壁4と、を備えるが、排気管5を備えなくても構わない。封止部(12a,12b)には、エキシマランプ10を支持するための支持部材(不図示)が取り付けられても構わない。
【0032】
排気管5は、製造時に発光空間1c内部にもともと存在していたガスを排気し、発光ガスG1を発光空間1cに供給するのに使用される。発光ガスG1を発光空間1cに供給した後は、発光ガスG1が発光空間1cから漏れないように、排気管5の先端が封止される。本実施形態において、排気管5は管軸L1と重なる位置にある。封止部12aの-Z方向の端部は解放されているので、排気管5の外部は、閉鎖空間ではなく、発光管1が配置されている雰囲気に繋がっている。隔壁4及び排気管5は、発光管1と同じ絶縁材料(例えば合成石英ガラス等)で構成されるとよい。
【0033】
[発光管]
発光管1は、Z方向における長さが1000mm以上、好ましくは、3000mm以上の長尺状である。そして、発光管1は、X方向の厚みが相対的に短く、Y方向の幅が相対的に長い扁平形状(例えば、X方向の厚みが15mm以上19mm以下、Y方向の幅が69mm以上72mm以下)を呈する。しかしながら、上記実施形態の寸法は一例であって、これに限定されない。また、発光管1は、X方向とY方向の幅が略同一の円筒形状を呈しても構わない。
【0034】
発光管1は、紫外光に対して透過性を有する絶縁材料、例えば合成石英ガラス等で構成されている。発光管1の管の厚みはエキシマランプの大きさに応じて選択される。発光管1の管の厚みは、例えば、1.5mm以上4.0mm以下であるとよく、好ましくは、2.2mm以上3.2mm以下であるとよい。
【0035】
[反射膜]
図1に示されるように、高電圧電極2aが設けられる発光管1の外表面1aに、発光管1を挟んで対向する内表面には、反射膜3が設けられている。反射膜3は、発光空間1c内で発生して+X方向に放射される紫外光を-X方向へ反射する。-X方向へ進む紫外光は、低電圧電極2bの網の開口から発光管1の外側へ出射される。高電圧電極2aではなく低電圧電極2bから紫外光を出射させることで、被処理物が高電圧電極2aよりも低電圧電極2bに近くなるように配置でき、安全性が高い。
【0036】
なお、本実施形態では、+X方向に出射する紫外光を要しないため、反射膜3を設けている。+X方向と-X方向の両方向に紫外光を出射させたい場合などには、反射膜3を設けなくてもよい。つまり、反射膜3は、エキシマランプ10にとって必須の構成でない。
【0037】
[電極]
図1に示されるように、一対の電極(2a,2b)はX方向に並んでいる。図2及び図3に示されるように、電極(2a,2b)は、いずれも網状に形成されている。電極(2a,2b)は、導電性材料(例えば、金や白金を含む物質)をスクリーン印刷等でパターン塗布することで得られる。相対的に低電圧が印加される低電圧電極2bは、基準電位(例えば、ゼロ電位)を示しても構わない。
【0038】
図6は、図3に示された低電圧電極2bの部分拡大図である。低電圧電極2bは多数の開口14を有する網状に形成されている。紫外光を取り出す面積を確保しつつ、電気抵抗の増大を抑制できるように、低電圧電極2bの網の幅及び開口の幅を設定することが求められる。これより、例えば、Y方向の網の幅d1及びZ方向の網の幅d2は、いずれも0.02mm以上であるとよく、1.0mm以下であるとよい。好ましくは、d1及びd2は、いずれも0.05mm以上であるとよく、0.4mm以下であるとよい。開口のY方向の幅d3及びZ方向の幅d4は、いずれも0.3mm以上であるとよく、12.0mm以下であるとよい。好ましくは、d3及びd4は、いずれも0.6mm以上であるとよく、2.5mm以下であるとよい。本実施形態のように、d1及びd2は同じ値に設定してもよく、d1及びd2を互いに異なる値に設定してもよい。本実施形態のように、d3及びd4は同じ値に設定してもよく、d3及びd4を互いに異なる値に設定してもよい。(d3×d4)/{(d1+d3)×(d2+d4)}×100で求められる電極の開口率(%)は、70%以上あるとよく、95%以下であるとよい。
【0039】
本実施形態の高電圧電極2a側では、上述したように、高電圧電極2aの開口部から紫外光を取り出すことをしないため、必ずしも開口を有する電極でなくても構わない。しかしながら、放電発生量の制御や放電状態の均等化、電極の印刷工程の単純化などの目的で、高電圧電極2aの寸法及び形状を、低電圧電極2bと同様に設計しても構わない。
【0040】
[導電膜]
上述したように、第一導電膜7aは、発光部11から封止部12aまで亘って設けられ、発光部11に位置する高電圧電極2aの端部と、封止部12aに位置する第一給電部材8a(図5参照)とを電気的に接続する。図5に示されるように、第二導電膜7bは、第一導電膜7aと同様の構造を呈する。
【0041】
第一導電膜7a及び第二導電膜7bは、電極(2a,2b)と同様に、スクリーン印刷等で形成される。導電膜(7a,7b)は電極(2a,2b)と同じ材料を使用しても構わない。第一導電膜7a(第二導電膜7b)及び高電圧電極2a(低電圧電極2b)を同一の印刷工程で形成しても構わない。
【0042】
図7は、図4のB4-B4線でのXY平面に平行な面における断面図である。図7で示されるように、第一導電膜7aと第二導電膜7bとは、X方向(高電圧電極2aと低電圧電極2bとが対向する方向)に重ならない位置関係にある。これにより、第一導電膜7aと第二導電膜7bとの間隔が拡がり、沿面放電C1の発生確率を下げて、コロナ放電に伴う電極の焼損を抑制する。
【0043】
さらに、第一導電膜7a、第二導電膜7b及び排気管5は、X方向(高電圧電極2aと低電圧電極2bとが対向する方向)に重ならない位置関係にある。例えば、図8の参考形態に示されるように、第一導電膜7a、第二導電膜7b及び排気管5が、X方向(高電圧電極2aと低電圧電極2bとが対向する方向)に重なる場合には、発光部11において、第一導電膜7aと第二導電膜7bとの間のエキシマ放電(誘電体バリア放電)により発生したエキシマ光(紫外光)のうちZ方向に進行する光が、排気管5の内部に浸入する。そして、Z方向に進行する光が排気管5の先端に照射されると、当該先端はエキシマ光のエネルギーを受けて歪みを生じる。排気管5の先端に歪みが溜まると、終にはクラックが入って発光ガスG1が漏れて不点灯になることがある。
【0044】
しかしながら、図7で示されるように、第一導電膜7a、第二導電膜7b及び排気管5が、X方向(高電圧電極2aと低電圧電極2bとが対向する方向)に重ならないようにすると、発光部11において、第一導電膜7aと第二導電膜7bとの間のエキシマ放電により発生したエキシマ光が、排気管5の内部に浸入しにくい。これにより、排気管5の先端がエキシマ光に照射されにくくなって、排気管5に歪みが溜まることを防止できる。斯くして、排気管5のクラックを発生しないようにして、エキシマランプの寿命を延長できる。
【0045】
<第二実施形態>
図9は第二実施形態のエキシマランプの要部をX方向から見た図である。図10は、図9のB5-B5線を通るXZ平面での断面図である。図9及び図10を参照しながら、第二実施形態のエキシマランプについて説明する。
【0046】
図10に示されるように、エキシマランプ30の封止部12aは、発光部11と封止部12aとを隔てる隔壁4と、隔壁4に繋がる中実材35とを備える。エキシマランプ30の封止部12aは、Z方向に延びる発光管と、隔壁4に接続される発光ガスG1の排気管とを有していない。本実施形態は、封止部12aの発光管1の端部を圧潰して中実材35を形成するものであり、排気管は、不図示であるが別の部分に形成されている。なお、発光部11の+Z側端に設けられる封止部12bについても、封止部12aと同様に説明される。
【0047】
エキシマランプ30の第一導電膜7aは、発光管1の外表面上に、発光部11から封止部12aまで亘って設けられ、高電圧電極2aと封止部12aに位置する第一給電部材8aとを電気的に接続する。絶縁部材15が、第一導電膜7aのうち、少なくとも発光部11と封止部12aとの境界領域を覆う。これにより、沿面放電C1が発生したとしてもコロナ放電に移行しにくく、これにより第一導電膜7aの焼損を低減できる。絶縁部材15は、第一導電膜7aの一部領域を越えて広範囲に覆っても構わない。例えば、図9に示されるように、隔壁4の大部分を覆うように絶縁部材15をY方向に拡大しても構わない。または、絶縁部材15を、高電圧電極2aも部分的に覆うように、+Z方向に延ばしてもよい。
【0048】
本発明は、上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
上述した各実施形態のエキシマランプは、半導体や液晶パネルの製造等に用いられる光照射装置のエキシマランプだけでなく、他の用途のエキシマランプにも適用できる。
【符号の説明】
【0050】
1 :発光管
1a :(発光管の)外表面
1b :(発光管の)外表面
1c :発光空間
2a :高電圧電極
2b :低電圧電極
3 :反射膜
4 :隔壁
5 :排気管
7a :第一導電膜
7b :第二導電膜
8a :第一給電部材
8b :第二給電部材
9a :接合部
10 :エキシマランプ
11 :発光部
12a,12b:封止部
15 :絶縁部材
30 :エキシマランプ
35 :中実材
C1 :沿面放電
DB :誘電体バリア放電
G1 :発光ガス
L1 :管軸
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
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