(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115085
(43)【公開日】2022-08-08
(54)【発明の名称】直列接続されたブレーキアクチュエータ、およびそれを適用する自動ブレーキホールド方法
(51)【国際特許分類】
B60T 13/122 20060101AFI20220801BHJP
B60T 13/68 20060101ALI20220801BHJP
B60T 7/12 20060101ALI20220801BHJP
B60T 8/40 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
B60T13/122 D
B60T13/68
B60T7/12 B
B60T8/40 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007582
(22)【出願日】2022-01-21
(31)【優先権主張番号】17/159,861
(32)【優先日】2021-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(72)【発明者】
【氏名】マーク ケルビー
(72)【発明者】
【氏名】ジョシュ ヘイデン
(72)【発明者】
【氏名】マーク バスタ
(72)【発明者】
【氏名】▲鶴▼原 隆三
【テーマコード(参考)】
3D048
3D246
【Fターム(参考)】
3D048DD02
3D048HH15
3D048HH26
3D048HH31
3D048HH50
3D048HH53
3D048HH68
3D048KK18
3D246BA02
3D246DA01
3D246GA20
3D246GC16
3D246JB37
3D246JB43
3D246LA04Z
3D246LA33B
3D246LA40B
3D246LA52B
3D246LA59B
3D246LA72B
(57)【要約】 (修正有)
【課題】バッテリ電力を節約できるブレーキアクチュエータを提供する。
【解決手段】ブレーキシステムは、マスタシリンダにおいて生成された油圧を増減させるように構成された一次ブレーキアクチュエータと、マスタシリンダに直列および下流に、および一次ブレーキアクチュエータに直列および上流に接続され、マスタシリンダにおいて生成された油圧を増減させるように構成された二次ブレーキアクチュエータと、マスタシリンダによって生成され、一次アクチュエータまたは二次アクチュエータによって増減される油圧に基づいて、車両のホイールにブレーキトルクを加えるように構成された少なくとも1つのホイールシリンダとを含む。自動ブレーキホールド制御方法は、一次ブレーキアクチュエータによって、次に、二次ブレーキアクチュエータによって、少なくとも1つのホイールシリンダに対して、自動ブレーキホールド制御を順次実行することを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキシステムであって、
油圧を生成するように構成されたマスタシリンダと、
前記マスタシリンダにおいて生成された前記油圧を増減させるように構成された一次ブレーキアクチュエータと、
前記マスタシリンダに直列に下流に接続され、前記一次ブレーキアクチュエータに直列に上流に接続され、前記マスタシリンダにおいて生成された前記油圧を増減させるように構成された二次ブレーキアクチュエータと、
前記マスタシリンダによって生成され、前記一次アクチュエータまたは前記二次アクチュエータによって増減される前記油圧に基づいて、車両のホイールにブレーキトルクを加えるように構成された少なくとも1つのホイールシリンダとを備える、
ブレーキシステム。
【請求項2】
前記一次ブレーキアクチュエータは、第1のバッテリによって電力を供給され、前記第2のブレーキアクチュエータは、前記第1のバッテリとは異なる第2のバッテリによって電力を供給される、請求項1に記載のブレーキシステム。
【請求項3】
前記一次ブレーキアクチュエータおよび前記二次ブレーキアクチュエータはおのおの、自動ブレーキホールド制御を実行するように構成される、請求項1に記載のブレーキシステム。
【請求項4】
前記一次ブレーキアクチュエータおよび前記二次ブレーキアクチュエータはおのおの、前記少なくとも1つのホイールシリンダに加えられる前記油圧を増減させるためにブレーキ流体を圧送するように構成されたポンプを備える、請求項1に記載のブレーキシステム。
【請求項5】
前記少なくとも1つのホイールシリンダは、4つのホイールシリンダを備え、前記一次ブレーキアクチュエータは、前記4つのホイールシリンダのおのおのに加えられる前記油圧を個別に増減させるように構成される、請求項1に記載のブレーキシステム。
【請求項6】
前記少なくとも1つのホイールシリンダは、2ペアの2つのホイールシリンダを備え、前記二次ブレーキアクチュエータは、前記2ペアの2つのホイールシリンダのおのおのに加えられる前記油圧を個別に増減させるように構成される、請求項1に記載のブレーキシステム。
【請求項7】
前記一次ブレーキアクチュエータおよび前記二次ブレーキアクチュエータはおのおの、少なくとも1つの差圧制御弁を備える、請求項1に記載のブレーキシステム。
【請求項8】
前記一次ブレーキアクチュエータおよび前記二次ブレーキアクチュエータはおのおの、少なくとも1つの常開増圧制御弁を備える、請求項1に記載のブレーキシステム。
【請求項9】
前記一次ブレーキアクチュエータおよび前記二次ブレーキアクチュエータはおのおの、少なくとも1つの常閉減圧制御弁を備える、請求項1に記載のブレーキシステム。
【請求項10】
自動ブレーキホールド制御方法であって、
一次ブレーキアクチュエータによって少なくとも1つのホイールシリンダに対して自動ブレーキホールド制御を実行することと、
前記一次ブレーキアクチュエータによって前記少なくとも1つのホイールシリンダに対して前記自動ブレーキホールド制御を実行した後、二次ブレーキアクチュエータによって前記少なくとも1つのホイールシリンダに対して前記自動ブレーキホールド制御を実行することとを備える、自動ブレーキホールド制御方法。
【請求項11】
前記一次ブレーキアクチュエータによって、前記少なくとも1つのホイールシリンダに対して前記自動ブレーキホールド制御を実行した後、前記自動ブレーキホールド制御を停止する命令に応じて、前記一次ブレーキアクチュエータによる、前記少なくとも1つのホイールシリンダに対する前記自動ブレーキホールド制御を停止することと、
前記自動ブレーキホールド制御を再開する命令、および前記一次ブレーキアクチュエータが、前記自動ブレーキホールド制御を実行する最後のブレーキアクチュエータであるとの判定に応じて、前記二次ブレーキアクチュエータによって、前記少なくとも1つのホイールシリンダに対して前記自動ブレーキホールド制御を実行することと
をさらに備える、請求項10に記載の自動ブレーキホールド制御方法。
【請求項12】
前記一次ブレーキアクチュエータによる前記少なくとも1つのホイールシリンダに対する前記自動ブレーキホールド制御が開始された後、所定の時間の経過に応じて、前記二次ブレーキアクチュエータによる前記少なくとも1つのホイールシリンダに対する前記自動ブレーキホールド制御を実行することをさらに備える、請求項10に記載の自動ブレーキホールド制御方法。
【請求項13】
前記二次ブレーキアクチュエータは、マスタシリンダに直列に下流に接続され、前記一次ブレーキアクチュエータに直列に上流に接続される、請求項10に記載の自動ブレーキホールド制御方法。
【請求項14】
前記一次ブレーキアクチュエータは、第1のバッテリによって電力を供給され、前記二次ブレーキアクチュエータは、前記第1のバッテリとは異なる第2のバッテリによって電力を供給される、請求項10に記載の自動ブレーキホールド制御方法。
【請求項15】
前記一次ブレーキアクチュエータおよび前記二次ブレーキアクチュエータはおのおの、前記少なくとも1つのホイールシリンダに加えられる前記油圧を増減させるために、ブレーキ流体を圧送するように構成されたポンプを備える、請求項10に記載の自動ブレーキホールド制御方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つのホイールシリンダは、4つのホイールシリンダを備え、前記一次ブレーキアクチュエータは、前記4つのホイールシリンダのおのおのに加えられる前記油圧を個別に増減させるように構成される、請求項10に記載の自動ブレーキホールド制御方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つのホイールシリンダは、2ペアの2つのホイールシリンダを備え、前記二次ブレーキアクチュエータは、前記2ペアの2つのホイールシリンダのおのおのに加えられる前記油圧を個別に増減させるように構成される、請求項10に記載の自動ブレーキホールド制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、直列接続されたブレーキアクチュエータ、および直列接続されたブレーキアクチュエータを適用する自動ブレーキホールド方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド電気自動車の時代では、車両バッテリに対する需要が劇的に増加している。他の車載電気システムの進歩も、需要の増加に寄与している。さらに、ブレーキアクチュエータなどの重要な車両システムは、バッテリ電力で動作し続ける。したがって、バッテリ電力を節約するように構成されたブレーキアクチュエータ構成が必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
ブレーキシステムは、油圧を生成するように構成されたマスタシリンダと、マスタシリンダにおいて生成された油圧を増減させるように構成された一次ブレーキアクチュエータと、マスタシリンダに直列および下流に、および一次ブレーキアクチュエータに直列および上流に接続され、マスタシリンダにおいて生成された油圧を増減させるように構成された二次ブレーキアクチュエータと、マスタシリンダによって生成され、一次アクチュエータまたは二次アクチュエータによって増減される油圧に基づいて、車両のホイールにブレーキトルクを加えるように構成された少なくとも1つのホイールシリンダとを含む。
【0004】
自動ブレーキホールド制御方法は、一次ブレーキアクチュエータによって少なくとも1つのホイールシリンダに対して自動ブレーキホールド制御を実行することと、一次ブレーキアクチュエータによって少なくとも1つのホイールシリンダに対して自動ブレーキホールド制御を実行した後、二次ブレーキアクチュエータによる少なくとも1つのホイールシリンダに対して自動ブレーキホールド制御を実行することとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】実施形態による、ブレーキシステムの全体概略図である。
【0006】
【
図2A】例示的な実施形態による、直列接続されたデュアルブレーキアクチュエータの概略図である。
【
図2B】例示的な実施形態による、直列接続されたデュアルブレーキアクチュエータの概略図である。
【0007】
【
図3】例示的な実施形態による、自動ブレーキホールド制御の方法の第1の態様を示す図である。
【0008】
【
図4】例示的な実施形態による、自動ブレーキホールド制御の方法の第2の態様を示す図である。
【0009】
【
図5】例示的な実施形態による、自動ブレーキホールド制御の方法の第3の態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
添付の図面を参照して以下に、本発明の直列接続されたデュアルブレーキアクチュエータおよび自動ブレーキホールド方法の例を表す、直列接続されたデュアルブレーキアクチュエータおよび自動ブレーキホールド方法の実施形態の詳細な説明を記載する。
【0011】
図1は、例示的な実施形態による、車両ブレーキシステムの全体概略図を示している。図示するように、たとえば、様々な車載センサに動作可能に接続されプログラムされたマイクロコンピュータとして構成された車両のメインECUは、実施形態では、マイクロコントローラとデバイスが互いのアプリケーションと通信できるように設計された既知の車両バス規格であるコントローラエリアネットワーク(CANバス)によって、一次ブレーキアクチュエータBRKpおよび二次ブレーキアクチュエータBRKsに動作可能に接続されている。メインECUは、CANバスによって、ブレーキシステムの外部の他のコンポーネントの中でも、たとえばエンジン固有の制御ユニットに動作可能に接続することもできる。さらに、一次ブレーキアクチュエータBRKpの一次ブレーキ制御ユニットECUbpは、車両の一次バッテリBATTpによって電力を供給され、二次ブレーキアクチュエータBRKsの二次ブレーキ制御ユニットECUbsは、車両の二次バッテリBATTsによって電力を供給される。
【0012】
図2Aおよび
図2Bは、例示的な実施形態による、直列接続されたデュアルブレーキアクチュエータの概略図である。ブレーキ動作部材BP(たとえば、ブレーキペダル)は、マスタシリンダMCおよびブレーキブースタVBに動作可能に接続され、これによって、ブレーキ動作部材BPが押し下げられると、生成された押し下げ力が、ブースタVBによってブーストされるように、マスタシリンダMCに設けられたマスタピストンが圧迫され、マスタシリンダMC内に画定された第1のチャンバおよび第2のチャンバにおいて同程度のマスタシリンダ油圧が生成される。通常の動作において、マスタシリンダの油圧は、以下に詳細に説明される、一次ブレーキアクチュエータBRKpおよび二次ブレーキアクチュエータBRKsを介して、車両の対応する前輪左ホイールWHfl、前輪右ホイールWHfr、後輪左ホイールWHrl、および後輪右ホイールWHrrのホイールシリンダWCfl、WCfr、WCrl、およびWCrrに加えられる。
【0013】
一次ブレーキアクチュエータBRKpは、差圧制御弁SS1およびSS2を含み、二次ブレーキアクチュエータBRKsは、差圧制御弁SS3およびSS4を含む。差圧制御弁SS1、SS2、SS3、およびSS4は、連通状態または差圧制御状態になるように独立して制御可能である。連通状態では、差圧を生成することなく、差圧制御弁SS1、SS2、SS3、またはSS4が配置された導管にブレーキ液が流れる。言い換えると、差圧制御弁SS1、SS2、SS3、またはSS4に対する上流側における導管の油圧の程度は、差圧制御弁SS1、SS2、SS3、またはSS4に対する下流側における油圧の程度と同じである。一方、差圧生成状態では、差圧制御弁SS1、SS2、SS3、またはSS4に対する上流側における導管内の油圧と、差圧制御弁SS1、SS2、SS3、またはSS4に対する下流側における導管における油圧との間の差圧が生成される。
【0014】
さらに、一次ブレーキアクチュエータBRKpは、増圧制御弁SZfl、SZfr、SZrl、およびSZrrを含み、二次ブレーキアクチュエータBRKsは、増圧制御弁SZfls、SZfrs、SZrls、およびSZrrsを含む。増圧制御弁SZfl、SZfr、SZrl、SZrr、SZfls、SZfrs、SZrls、およびSZrrsは、連通確立状態(すなわち、ブレーキ液が、2ポジション電磁弁を通って流れることが可能な状態)と、連通遮断状態(すなわち、ブレーキ液の流れが遮断された状態)との間を、独立して制御可能である2ポジション電磁弁である。特に、増圧制御弁SZfl、SZfr、SZrl、SZrr、SZfls、SZfrs、SZrls、またはSZrrsに供給される電流がゼロ(0)である場合、言い換えれば、電気が弁に供給されていない場合、連通確立状態が確立される(すなわち、弁が開状態になるように制御される)。一方、増圧制御弁SZfl、SZfr、SZrl、SZrr、SZfls、SZfrs、SZrls、SZrrsに電流が供給されている場合、言い換えれば、弁が通電されている場合、連通遮断状態が確立される(すなわち、弁が閉状態になるように制御される)。言い換えれば、増圧制御弁SZfl、SZfr、SZrl、SZrr、SZfls、SZfrs、SZrls、SZrrsのおのおのは、いわゆる常開型弁として構成されている。
【0015】
それに加えて、一次ブレーキアクチュエータBRKpは、減圧制御弁SGfl、SGfr、SGrlおよびSGrrを含み、二次ブレーキアクチュエータBRKsは、減圧制御弁SGfls、SGfrs、SGrls、およびSGrrsを含む。減圧制御弁SGfl、SGfr、SGrl、SGrr、SGfls、SGfrs、SGrls、およびSGrrsは、連通確立状態(すなわち、ブレーキ液が、2ポジション電磁弁を通って流れることが可能な状態)と、連通遮断状態(すなわち、ブレーキ液の流れが遮断された状態)との間を、独立して制御可能である2ポジション電磁弁である。特に、減圧制御弁SGfl、SGfr、SGrl、SGrr、SGfls、SGfrs、SGrls、またはSGrrsに供給される電流がゼロ(0)である場合、言い換えれば、電気が弁に供給されていない場合、連通遮断状態が確立される(すなわち、弁が閉状態になるように制御される)。一方、減圧制御弁SGfl、SGfr、SGrl、SGrr、SGfls、SGfrs、SGrls、またはSGrrsに電流が供給されている場合、連通確立状態が確立される(すなわち、弁が開状態になるように制御される)。言い換えれば、減圧制御弁SGfl、SGfr、SGrl、SGrr、SGfls、SGfrs、SGrls、またはSGrrsのおのおのは、いわゆる常閉型弁として構成されている。
【0016】
一次ブレーキアクチュエータBRKpは、ブレーキ回路HP1、ブレーキ回路HP2、および、たとえばプログラムされたマイクロコンピュータとして構成された一次ブレーキ制御ユニットECUbpを含む前後回路システムである。ブレーキ回路HP1は、差圧制御弁SS1が設けられた導管LAを含み、この導管を介して、通常のブレーキ動作において、ブレーキペダルBPの動作によって生成されたマスタシリンダ油圧が、二次ブレーキアクチュエータBRKsを介して、ホイールシリンダWCflおよびWCfrへ伝達される。差圧制御弁SS1の弁位置は開状態に制御され、ホイールシリンダWCflおよびWCfrにおけるブレーキ制御が、一次ブレーキアクチュエータBRKpによって実行されない場合、差圧制御弁SS1において連通状態が確立される。一次ブレーキ制御ユニットECUbpによって差圧制御弁SS1に電力が供給されると、差圧制御弁SS1の弁位置が閉状態に制御され、差圧生成状態が、差圧制御弁SS1において確立される。差圧制御弁SS1の上流の油圧が、差圧制御弁SS1の下流の油圧よりも大きくなった場合に、差圧制御弁SS1をバイパスするために、差圧制御弁SS1と並列に逆止弁CV1が設けられている。
【0017】
導管LAは、差圧制御弁SS1の下流で導管LAflおよび導管LAfrに分岐する。導管LAflには、ホイールシリンダWCflに供給されるブレーキ油圧の圧力上昇を制御するための増圧制御弁SZflが設けられている。導管LAfrには、ホイールシリンダWCfrに供給されるブレーキ油圧の圧力上昇を制御するための増圧制御弁SZfrが設けられている。増圧制御弁SZflおよびSZfrは、一次ブレーキ制御ユニットECUbpによって個別に作動可能である。それぞれの増圧制御弁SZflまたはSZfrの下流の油圧が、それぞれの増圧制御弁SZflまたはSZfrの上流の油圧よりも大きくなった場合に、それぞれの増圧制御弁SZflまたはSZfrをバイパスするために、それぞれ増圧制御弁SZflまたはSZfrと並列に逆止弁cv2およびcv3が設けられている。
【0018】
ブレーキ油圧を低下させるために使用される導管LBは、調整リザーバR1から延び、導管LBflおよびLBfrに分岐する。導管LBflは、調整リザーバR1を、増圧制御弁SZflとホイールシリンダWCflとの間に延びる導管LAflの一部に接続し、導管LBfrは、調整リザーバR1を、増圧制御弁SZfrとホイールシリンダWCfrとの間に延びる導管LAfrの一部に接続する。減圧制御弁SGflは導管LBflに設けられ、減圧制御弁SGfrは導管LBfrに設けられている。減圧制御弁SGflおよびSGfrは、一次ブレーキ制御ユニットECUbpによって個別に作動可能である。
【0019】
導管LCは、調整リザーバR1と導管LAとの間に設けられ、導管LAのLAflおよびLAfrへの分岐または分岐の上流において、および差圧制御弁SS1の下流において、導管LAに接続する。導管LDは、調整リザーバR1とマスタシリンダMCとの間に(二次ブレーキアクチュエータBRKsを介して)設けられる。電気モータMT1に作動可能に接続された油圧ポンプOP1が、導管LCに設けられる。電気モータMT1が一次ブレーキ制御ユニットECUbpによって通電され、油圧ポンプOP1が電気モータMT1によって駆動されると、油圧ポンプOP1によって調整リザーバR1から吸引されたブレーキ液が、(二次ブレーキアクチュエータBRKsを介して)マスタシリンダMCへ、またはホイールシリンダWCflおよびWCfrのうちの一方または両方へ排出される。
【0020】
ブレーキ回路HP2は、ブレーキ流体をホイールシリンダWCrlおよびWCrrに供給することを除いて、ブレーキ回路HP1と同様である。差圧制御弁SS2、増圧制御弁SZrlおよびSZrrと、減圧制御弁SGrlおよびSGrrと、逆止弁cv4、cv5、およびcv6と、調整リザーバR2と、油圧ポンプOP2と、ブレーキ回路HP2の導管LE、LErl、LErr、LF、LFrl、LFrr、LG、およびLHとは、差圧制御弁SS1と、増圧制御弁SZflおよびSZfrと、減圧制御弁SGflおよびSGfrと、逆止弁cv1、cv2、およびcv3と、調整リザーバR1と、油圧ポンプOP1と、ブレーキ回路HP1の導管LA、LAfl、LAfr、LB、LBfl、LBfr、LC、およびLDとのものに対応する方式で構成され機能する。
【0021】
二次ブレーキアクチュエータBRKsは、ブレーキ回路HP3、ブレーキ回路HP4、およびたとえばプログラムされたマイクロコンピュータとして構成された二次ブレーキ制御ユニットECUbsを含む前後回路システムである。ブレーキ回路HP3は、差圧制御弁SS3が設けられた導管LIを含み、この導管を介して、通常のブレーキ動作において、ブレーキペダルBPの動作によって生成されたマスタシリンダ油圧が、一次ブレーキアクチュエータBRKpのブレーキ回路HP1へ伝達される。差圧制御弁SS3の弁位置は開状態に制御され、ホイールシリンダWCflおよびWCfrにおけるブレーキ制御が、二次ブレーキアクチュエータBRKsによって実行されない場合、差圧制御弁SS3において連通状態が確立される。二次ブレーキ制御ユニットECUbsによって差圧制御弁SS3に電力が供給されると、差圧制御弁SS3の弁位置が閉状態に制御され、差圧生成状態が、差圧制御弁SS3において確立される。差圧制御弁SS3の上流の油圧が、差圧制御弁SS3の下流の油圧よりも大きくなった場合に、差圧制御弁SS3をバイパスするために、差圧制御弁SS3と並列に逆止弁CV7が設けられている。
【0022】
差動制御弁SS3の下流で、導管LIは、導管LlflsとLlfrsに分岐し、回路HP1の上流に再合流する。導管LlflおよびLlfrには、ブレーキ回路HP1に供給されるブレーキ油圧の圧力上昇を制御するための増圧制御弁SZflsおよびSZfrsが設けられている。増圧制御弁SZflsおよびSZfrsは、並列に設けられるため、二次ブレーキ制御ユニットECUbsによってタンデム形式に通電される。増圧制御弁SZflsまたはSZfrsそれぞれの下流の油圧が、それぞれの増圧制御弁SZflsまたはSZfrsの上流の油圧よりも大きくなった場合に、それぞれの増圧制御弁SZflsまたはSZfrsをバイパスするために、増圧制御弁SZflsまたはSZfrsと並列に逆止弁cv8およびcv9がそれぞれ設けられている。
【0023】
ブレーキ油圧を低下させるために使用される導管LJは、調整リザーバR3から延び、導管LJflおよびLJfrに分岐する。導管LJflは、調整リザーバR3を、増圧制御弁SZflsと、導管LlflおよびLIfrの再合流との間に延びる導管Llflの一部に接続し、導管LJfrは、調整リザーバR3を、増圧制御弁SZfrsと、導管LlflおよびLlfrの再合流との間に延びる導管Llfrの一部に接続する。減圧制御弁SGflsは導管LJflに設けられ、減圧制御弁SGfrsは導管LJfrに設けられている。減圧制御弁SGflsおよびSGfrsは、並列に設けられているので、二次ブレーキ制御ユニットECUbsによってタンデム形式に通電される。
【0024】
導管LKは、調整リザーバR3と導管Llとの間に設けられ、導管LlのLlflおよびLlfrへの分岐または分岐の上流において、および差圧制御弁SS3の下流において、導管Llに接続する。導管LLは、調整リザーバR3とマスタシリンダMCとの間に設けられる。電気モータMT2に作動可能に接続された油圧ポンプOP3が、導管LKに設けられる。電気モータMT2が二次ブレーキ制御ユニットECUbsによって通電され、油圧ポンプOP3が電気モータMT2によって駆動されると、油圧ポンプOP3によって調整リザーバR3から吸引されたブレーキ液が、マスタシリンダMCへ、または一次ブレーキアクチュエータBRKpのブレーキ回路HP1へ排出される。
【0025】
ブレーキ回路HP4は、ブレーキ流体を一次ブレーキアクチュエータBRKpのブレーキ回路HP2に供給することを除いて、ブレーキ回路HP3と同様である。差圧制御弁SS4、増圧制御弁SZrlsおよびSZrrs、減圧制御弁SGrlsおよびSGrrs、逆止弁cv10、cv11、およびcv12、調整リザーバR4、油圧ポンプOP4、およびブレーキ回路HP4の導管LM、LMrl、LMrr、LN、LNrl、LNrr、LO、およびLPは、差圧制御弁SS3、増圧制御弁SZflsおよびSZfrs、減圧制御弁SGflsおよびSGfrs、逆止弁cv7、cv8、およびcv9、調整リザーバR3、油圧ポンプOP3、およびブレーキ回路HP3の導管Ll、Llfl、Llfr、LJ、LJfl、LJfr、LK,およびLLのものに対応する方式で構成され機能する。
【0026】
実施形態では、二次ブレーキアクチュエータBRKsは、一次ブレーキアクチュエータBRKpと同じ物理的構造を有する。これにより、ブレーキシステムのブレーキアクチュエータBRKpおよびBRKsの両方をともに製造できる規模の節約が可能になり、それによってコストが削減される。しかしながら、代替実施形態では、二次ブレーキアクチュエータは、導管LI、LJ、LM、およびLNに対応する導管が分岐せず、ブレーキ回路毎に単一の増圧制御弁および減圧制御弁のみを有する異なる構造を有することができる。
【0027】
メインECUは、一次ブレーキ制御ユニットECUbpに動作可能に接続されており、差圧制御弁SS1およびSS2と、増圧制御弁SZfl、SZfr、SZrl、およびSZrrと、減圧制御弁SGfl、SGfr、SGrl、およびSGrrと、油圧ポンプOP1およびOP2を駆動するためのモータMT1へ、適切な電流を提供することによって、たとえば、既知の方式におけるアンチスキッド制御(ABS制御)、牽引制御(TCS制御)、または電子安定性制御(ESC制御)中、一次ブレーキアクチュエータBRKpに対して、ホイールシリンダWHfl、WHfr、WHrl、およびWHrrにおける油圧を個別に調整させる。さらに、メインECUは、一次ブレーキ制御ユニットECUbpと、二次ブレーキ制御ユニットECUbsとの両方に動作可能に接続され、以下で詳細に論じられるように、一次ブレーキアクチュエータBRKpおよび二次ブレーキアクチュエータBRKsに対して、自動ブレーキホールドを実行させる。
【0028】
それに加えて、一次または二次アクチュエータBRKpまたはBRKsのうちの一方が使用されている間、他方は自己診断を実行できる。また、一次または二次アクチュエータBRKpまたはBRKsのうちの一方が故障した場合、必要に応じて、他方のアクチュエータを、車両の緊急ブレーキに使用できる。それに加えて、一次または二次アクチュエータBRKpまたはBRKsは、電子パーキングブレーキ(EPB)の代わりに、またはEPBの故障の場合におけるバックアップパーキングブレーキ機能として使用できる。さらに、二次アクチュエータBRKsは、たとえば、一次アクチュエータBRKpが無効になった場合に、ペアとしての前輪、またはペアとしての後輪の油圧が低減される基本的な形態のABS制御を実行することができる。
【0029】
メインECUは、車両の動作を監視することにより、自動ブレーキホールド制御の必要性を監視する。車両がブレーキをかけて停止し、運転者がブレーキペダルを放すと、メインECUは、車両を停止状態に保つように自動的に保持するように決定する。運転者が、動作を再開するためのアクション(たとえば、アクセルペダルを踏むなど)を実行すると、ブレーキトルクが解放され、運転者の完全な制御が回復する。
【0030】
一次ブレーキアクチュエータBRKpが自動ブレーキホールド制御を開始すると、差圧制御弁SS1およびSS2が、差圧制御状態になり、各ホイールシリンダWCfl、WCfr、WCrl、およびWCrrにおいて、対応する増圧制御弁SZfl、SZfr、SZrl、またはSZrrが通電され、ホイールシリンダの油圧が保持される適切なホイールシリンダ油圧になるまで、油圧ポンプOP1およびOP2(およびモータMT1)が作動する。
【0031】
同様に、二次ブレーキアクチュエータBRKsが自動ブレーキホールド制御を開始すると、差圧制御弁SS3およびSS4が、差圧制御状態になり、各ホイールシリンダのペアWCfl/WCfrおよびWCrl/WCrrにおいて、対応する増圧制御弁のペア(SZfls/SZfrsまたはSZrls/SZrrs)が通電され、ホイールシリンダの油圧が保持される適切なホイールシリンダ油圧になるまで、油圧ポンプOP3およびOP4(およびモータMT2)が作動する。
【0032】
上記で論じたように、一次バッテリのBATTpと二次バッテリのBATTsとの使用を分配することは有利である。したがって、例示的な実施形態では、自動ブレーキホールド制御が実行される場合、メインECUは、どのブレーキアクチュエータが最後に自動ブレーキホールド制御を実行したかを判定し、他のブレーキアクチュエータを選択して、自動ブレーキホールド制御を開始する。さらに、自動ブレーキホールドの切り替えは、メインECUによって実施され、ここでは、一方のアクチュエータが自動ブレーキホールド制御に使用される所定の時間(たとえば、2分または3分)の後、他方のアクチュエータが自動ブレーキホールド制御に使用される。
【0033】
図3~
図5は、前述にしたがう例示的な制御方法を示す。たとえば、ブレーキ圧力が、ブレーキペダル力/マスタシリンダ油圧によって決定される通常のブレーキモードは、通常の車両始動(ステップS1)の後、または、自動ブレーキホールドが、ステップS9において一次アクチュエータによって、またはステップS15において二次アクチュエータによって停止された後に、ステップS2に入り、これらステップは、以下で論じられる。自動ブレーキホールドを開始する命令(ステップS3)が受け取られなかった場合、通常のブレーキホールドが維持され、それ以外の場合は、カウントダウンタイマ(たとえば、2分または3分である所定の時間)が開始され(ステップS4)、最後の自動ブレーキホールド制御が、一次ブレーキアクチュエータによって実行されたか否かが判定される(ステップS5)。最後の自動ブレーキホールド制御が、一次ブレーキアクチュエータによって実行されなかった場合、一次アクチュエータによる自動ブレーキホールドが開始される(ステップS6)。それ以外の場合は、二次アクチュエータによる自動ブレーキホールドが開始される(ステップS7)。
【0034】
一次アクチュエータによる自動ブレーキホールドの開始後(ステップS6、または以下に論じられるステップS18)、自動ブレーキホールドを停止する命令が受信されたか否か(ステップS8)、またはカウントダウンタイマが、所定の時間が経過したと判定したか否か(ステップS10)が判定される。自動ブレーキホールドを停止する命令が受信されたと判定された場合(ステップS8)、一次アクチュエータによる自動ブレーキホールドが停止され(ステップS9)、通常のブレーキモードに戻る(ステップS2)。カウントダウンタイマが、所定の時間が経過したと判定した場合(ステップS10)、カウントダウンタイマが再開され(ステップS11)、二次アクチュエータによる自動ブレーキホールドが開始され(ステップS12)、一次アクチュエータによる自動ブレーキホールドが停止される(ステップS13)。
【0035】
二次アクチュエータによる自動ブレーキホールドの開始後(ステップS7またはステップS12)、自動ブレーキホールドを停止する命令が受信されたか否か(ステップS14)、または、カウントダウンタイマが、所定の時間が経過したと判定したか否か(ステップS16)が判定される。自動ブレーキホールドを停止する命令が受信されたと判定された場合(ステップS14)、二次アクチュエータによる自動ブレーキホールドが停止され(ステップS15)、通常のブレーキモードに戻る(ステップS2)。カウントダウンタイマが、所定の時間が経過したと判定した場合(ステップS16)、カウントダウンタイマが再開され(ステップS17)、一次アクチュエータによる自動ブレーキホールドが開始され(ステップS18)、二次アクチュエータによる自動ブレーキホールドが停止される(ステップS19)。
【0036】
上記の詳細な説明は、直列接続されたデュアルブレーキアクチュエータおよび自動ブレーキホールド方法の実施形態を説明する。しかしながら、本発明は、記載された正確な実施形態および変形に限定されない。様々な変更、修正および均等物が、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、当業者によって実施することができる。特許請求の範囲の範囲内にあるそのようなすべての変更、修正、および均等物が、特許請求の範囲に含まれることが明確に意図されている。