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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115165
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】濃度補正プロファイル生成装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20220802BHJP
   B41J 29/393 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
B41J2/01 201
B41J2/01 451
B41J29/393 107
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021011654
(22)【出願日】2021-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128451
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 隆一
(72)【発明者】
【氏名】袴田 純一
【テーマコード(参考)】
2C056
2C061
【Fターム(参考)】
2C056EB27
2C056EB41
2C056EC75
2C056EC79
2C056HA58
2C061AQ05
2C061KK18
2C061KK25
2C061KK28
2C061KK32
(57)【要約】
【課題】風紋ムラの影響を受けていない濃度補正プロファイルを生成することができる濃度補正プロファイル生成装置を提供する。
【解決手段】複数のノズルが主走査方向に配列されたインクジェットヘッドを、印刷媒体に対して主走査方向に直交する副走査方向に相対的に移動させながら印刷した調整用パターンを読み取った画像データを取得する調整用パターン取得部61と、調整用パターン取得部61によって取得された画像データに基づいて、濃度プロファイルを取得する濃度プロファイル取得部62と、その濃度プロファイルから風紋ムラに相当する周波数成分を除去し、その周波数成分が除去された濃度プロファイルに基づいて、濃度ムラを補正するための濃度補正プロファイルを生成する濃度補正プロファイル生成部63とを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルが主走査方向に配列されたインクジェットヘッドを、印刷媒体に対して前記主走査方向に直交する副走査方向に相対的に移動させながら印刷した調整用パターンを読み取った画像データを取得する調整用パターン取得部と、
前記調整用パターン取得部によって取得された画像データに基づいて、濃度プロファイルを取得する濃度プロファイル取得部と、
前記濃度プロファイルから風紋ムラに相当する周波数成分を除去し、該周波数成分が除去された濃度プロファイルに基づいて、濃度ムラを補正するための濃度補正プロファイルを生成する濃度補正プロファイル生成部とを備えた濃度補正プロファイル生成装置。
【請求項2】
前記濃度プロファイル取得部が、前記調整用パターン取得部によって取得された画像データを前記副走査方向について複数の分割領域に分割し、該分割領域毎の画像データに基づいて、前記分割領域毎の濃度プロファイルを取得し、
前記濃度補正プロファイル生成部が、前記分割領域毎の濃度プロファイルのうち、前記風紋ムラに相当する周波数成分を含む濃度プロファイルから前記周波数成分を除去し、該周波数成分が除去された濃度プロファイルを含む、全ての前記分割領域の濃度プロファイルに基づいて、前記濃度補正プロファイルを生成する請求項1記載の濃度補正プロファイル生成装置。
【請求項3】
前記濃度補正プロファイル生成部が、前記分割領域毎の濃度プロファイルの差異が予め設定された閾値以上である場合に、前記風紋ムラに相当する周波数成分を除去する処理を行い、前記分割領域毎の濃度プロファイルの差異が予め設定された閾値未満である場合には、前記風紋ムラに相当する周波数成分を除去する処理を行うことなく、前記全ての分割領域の濃度プロファイルに基づいて、前記濃度補正プロファイルを生成する請求項2記載の濃度補正プロファイル生成装置。
【請求項4】
前記濃度補正プロファイル生成部が、前記分割領域毎の濃度プロファイルの差異が予め設定された閾値以上であり、かつ前記分割領域毎の濃度プロファイルの中に、前記風紋ムラに相当する周波数成分を含む濃度プロファイルが存在しない場合には、前記全ての分割領域の濃度プロファイルのうち、前記副走査方向について最も上流側に位置する分割領域の濃度プロファイルのみを用いて、前記濃度補正プロファイルを生成する請求項2または3記載の濃度補正プロファイル生成装置。
【請求項5】
前記調整用パターン取得部が、前記インクジェットヘッド毎の調整用パターンの画像データを取得し、
前記濃度プロファイル取得部が、前記インクジェットヘッド毎の画像データを前記副走査方向について複数の分割領域に分割し、該分割領域毎の画像データに基づいて、前記分割領域毎の濃度プロファイルを取得する請求項2から4いずれか1項記載の濃度補正プロファイル生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドの濃度ムラを補正するための濃度補正プロファイルを生成する濃度補正プロファイル生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送経路上を搬送される印刷媒体に対して、インクを吐出するノズルを複数有するインクジェットヘッドからインクを吐出して印刷処理を行うインクジェット印刷装置が提案されている。
【0003】
このようなインクジェット印刷装置では、インクジェットヘッドのノズル毎のインク吐出量のばらつきにより濃度ムラが発生する。
【0004】
そのため、インクジェットヘッドの全てのノズルからインクと吐出させてベタ画像を印刷し、そのベタ画像をスキャナなどで読み取った画像データから濃度プロファイルを取得し、その濃度プロファイルを用いて濃度ムラの補正を行う方法が提案されている(たとえば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-115762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上述したインクジェット印刷装置では、インクジェットヘッドの直下において印刷媒体が搬送されることにより気流が発生する。
【0007】
また、インクジェットヘッドのノズルからインクが連続吐出されると、そのインク液滴は自己気流を伴い吐出され、この自己気流は、上述した印刷媒体の搬送による気流を遮る壁のように作用する。そして、印刷媒体の搬送により発生した気流が、自己気流の壁にぶつかり、複雑に気流が乱れることがある。この乱気流により、インクジェットヘッドから吐出されたインクの着弾位置が、所望の位置からずれてしまうことがあり、これにより、いわゆる風紋ムラと呼ばれる濃度ムラが生じる場合がある。
【0008】
したがって、上述した特許文献1では、インクジェットヘッドの濃度ムラ補正を行うための測定用チャートとしてベタ画像が用いられるが、この測定用チャートを印刷する際に風紋ムラが発生する場合がある。図9Aは、風紋ムラが発生したベタ画像の一例の模式図であり、図9Bは、図9Aに示すベタ画像から生成した風紋ムラの影響を受けた濃度プロファイルを示す図である。
【0009】
しかしながら、所望の印刷物を実際に印刷する際には、測定用チャートを印刷した場合と同様の風紋ムラが発生するとは限らないので、風紋ムラが発生しにくい低濃度部や高濃度部、インクが連続吐出されない領域において、図9Aに示すような風紋ムラを含む測定用チャートを用いて濃度ムラ補正を行ったのでは、逆に濃度ムラが発生してしまう。なお、低濃度部で風紋ムラが発生しにくいのは、インク吐出による気流が発生しにくいからであり、高濃度部では、インク吐出量が多いので、ドットゲインにより風紋ムラによる濃度ムラが目立たないからである。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑み、上述した風紋ムラの影響を受けていない濃度補正プロファイルを生成することができる濃度補正プロファイル生成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の濃度補正プロファイル生成装置は、複数のノズルが主走査方向に配列されたインクジェットヘッドを、印刷媒体に対して主走査方向に直交する副走査方向に相対的に移動させながら印刷した調整用パターンを読み取った画像データを取得する調整用パターン取得部と、調整用パターン取得部によって取得された画像データに基づいて、濃度プロファイルを取得する濃度プロファイル取得部と、その濃度プロファイルから風紋ムラに相当する周波数成分を除去し、その周波数成分が除去された濃度プロファイルに基づいて、濃度ムラを補正するための濃度補正プロファイルを生成する濃度補正プロファイル生成部とを備えることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の濃度補正プロファイル生成装置によれば、調整用パターンの画像データに基づいて、濃度プロファイルを取得し、その濃度プロファイルから風紋ムラに相当する周波数成分を除去し、その周波数成分が除去された濃度プロファイルに基づいて、濃度ムラを補正するための濃度補正プロファイルを生成するようにしたので、風紋ムラの影響を受けていない濃度補正プロファイルを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の濃度補正プロファイル生成装置の一実施形態を用いたインクジェット印刷装置の概略構成を示す図
図2】ヘッドユニットの上面図
図3図1に示すインクジェット印刷装置の制御系の概略構成を示すブロック図
図4】調整用パターンの一例を示す図
図5】風紋ムラの影響を受けていない調整用パターンと濃度プロファイルと濃度補正プロファイルの一例を示す図
図6】分割領域の一例を示す図
図7】本発明の濃度補正プロファイルの生成方法の一実施形態を説明するためのフローチャート
図8図6に示すように風紋ムラを発生している画像データに基づいて取得された分割領域R1~R3の濃度プロファイルの一例を示す図
図9】風紋ムラが発生したベタ画と風紋ムラの影響を受けた濃度プロファイルの一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の濃度補正プロファイル生成装置の一実施形態を用いたインクジェット印刷装置について詳細に説明する。本実施形態のインクジェット印刷装置は、インクジェットヘッドの濃度ムラを補正するための濃度補正プロファイルの生成方法に特徴を有するものであるが、まずは、その全体構成について説明する。図1は、本実施形態のインクジェット印刷装置1の概略構成を示す図である。なお、図1に示す上下左右方向が、本実施形態のインクジェット印刷装置1の上下左右方向である。また、図1の紙面手前側が前方向であり、紙面奥側が後方向であり、前後方向が、後述する主走査方向であり、左右方向は、後述する副走査方向である。
【0015】
本実施形態のインクジェット印刷装置1は、図1に示すように、サイド給紙部10と、内部給紙部20と、印刷処理部30と、排紙部40と、反転部50と、制御部60と、操作パネル70と、読取部80とを備えている。
【0016】
印刷処理部30、内部給紙部20および制御部60は、金属または樹脂などから形成された筐体内に収容されて設置されている。また、サイド給紙部10、排紙部40および反転部50は、筐体内に一部が収容され、筐体外に一部が突出する状態で設置されている。
【0017】
サイド給紙部10は、印刷媒体Pが載置される給紙台11と、給紙台11から最上位置の印刷媒体Pのみを繰り出して給紙搬送路FR上へ搬送させる1次給紙部12と、1次給紙部12によって搬送された印刷媒体Pを循環搬送路CR上へ搬送する2次給紙部14とを備えている。
【0018】
内部給紙部20は、印刷媒体Pが載置される給紙台21aと、給紙台21aから最上位置の印刷媒体Pのみを繰り出して給紙搬送路FR上へ搬送させる1次給紙部22aと、印刷媒体Pが載置される給紙台21bと、給紙台21bから最上位置の印刷媒体Pのみを繰り出して給紙搬送路FR上へ搬送させる1次給紙部22bと、印刷媒体Pが載置される給紙台21cと、給紙台21cから最上位置の印刷媒体Pのみを繰り出して給紙搬送路FR上へ搬送させる1次給紙部22cと、印刷媒体Pが載置される給紙台21dと、給紙台21dから最上位置の印刷媒体Pのみを繰り出して給紙搬送路FR上へ搬送させる1次給紙部22dとを備えている。
【0019】
このように2次給紙部14には、サイド給紙部10または内部給紙部20から印刷媒体Pが搬送されるとともに、さらに後述する反転部50からも印刷媒体Pが搬送される。
【0020】
そのため搬送方向における2次給紙部14の手前には、内部給紙部20から給紙された印刷媒体Pの搬送経路と、反転部50から搬送された一方の面が印刷された印刷媒体Pの搬送経路とが合流する合流地点が存在する。この合流地点を基準に、給紙機構側の経路を給紙搬送路FRと呼び、それ以外の経路を循環搬送路CRと呼ぶ。
【0021】
印刷処理部30は、ヘッドユニット31と、ヘッドユニット31に対向して設けられた環状の搬送ベルト133とを備えている。
【0022】
搬送ベルト133は、環状の無端ベルトから形成され、多数の吸引孔が形成されている。2次給紙部14から給紙された印刷媒体Pは、環状の搬送ベルト133まで搬送される。そして、印刷媒体Pは、搬送ベルト133の搬送路面の裏面側に設置された吸引ファン131,132の吸引によって搬送ベルト133上に吸着され、所定の搬送速度で搬送される。そして、印刷媒体Pが搬送ベルト133によって搬送されながら、ヘッドユニット31から印刷媒体Pに対してインクが吐出され、これにより印刷媒体Pに対して印刷処理が施される。
【0023】
ヘッドユニット31は、4つのラインヘッド32a,32b,32c,32dと、4つのラインヘッド32a,32b,32c,32dが設置されるヘッドホルダ33とを備えている。各ラインヘッド32a~32dは、それぞれ印刷媒体Pの搬送方向に直交する方向に延設されるものであり、搬送ベルト133によって搬送される印刷媒体Pに対してインクを吐出するものである。4つのラインヘッド32a~32dは、図1に示すように、印刷媒体Pの搬送経路に沿って所定の間隔を空けて配列されている。4つのラインヘッド32a~32dは、それぞれ異なる色(例えばブラック、シアン、マゼンタおよびイエロー)のインクを吐出するものである。
【0024】
ヘッドホルダ33は、各ラインヘッド32a~32dが有するインクジェットヘッド34が設置される部材である。図2は、各ラインヘッド32a~32dが有するインクジェットヘッド34をヘッドホルダ33に設置した状態を上方から見た上面図である。
【0025】
ヘッドホルダ33は、箱型の支持部材から構成されており、ヘッドホルダ33の底面には、各インクジェットヘッド34が嵌め込まれて設置される複数の設置孔が形成されている。設置孔は貫通孔であって、各インクジェットヘッド34のインク吐出面がヘッドホルダ33の底面外側に露出して配置されるように形成されている。
【0026】
図2に示す点線四角は、各ラインヘッド32a~32dが有する6つのインクジェットヘッド34の配置範囲を示している。
【0027】
各ラインヘッド32a~32dは、図2に示すように、印刷媒体Pの搬送方向に直交する方向(主走査方向)に3つのインクジェットヘッド34が等間隔で配置されたヘッド列を2列有し、その2列のヘッド列が所定のノズル数だけオーバーラップするように千鳥状に配置されている。
【0028】
印刷処理部30により印刷された印刷媒体Pは、循環搬送路CR上に配置された搬送ローラ等によって循環搬送路CR上を搬送される。循環搬送路CR上には、循環搬送路CR上を搬送された印刷媒体Pを排紙部40へ案内するか、または循環搬送路CR上を再循環させるかを切り替える切り替え機構43が備えられている。切り替え機構43は、具体的には、排紙部40側の搬送経路と反転部50側の搬送経路とを切り替える。
【0029】
排紙部40は、インクジェット印刷装置1の筐体から突出したトレイ形状をした排紙台41と、排紙台41に印刷媒体Pを排紙する一対の排紙ローラ42とを有する。そして、切り替え機構43により排紙部40側の搬送経路に案内された印刷媒体Pは、排紙ローラ42により排紙台41に排紙される。
【0030】
反転部50は、印刷媒体Pを反転させる反転台51と、循環搬送路CRから反転台51へ印刷媒体Pを搬送するとともに、その反転台51に搬送された印刷媒体Pを循環搬送路CR上へ再び戻す反転ローラ52とを備えている。
【0031】
切り替え機構43により反転部50に案内された印刷媒体Pは、反転ローラ52により循環搬送路CRから反転台51に搬送され、反転台51から循環搬送路CRへ再び戻されることによって、表裏が反転した状態で循環搬送路CR上を搬送される。そして、表裏が反転された印刷媒体Pは、循環搬送路CR上に設けられた搬送ローラ53等の複数のローラによって印刷処理部30へ向かって再び搬送される。
【0032】
操作パネル70は、液晶ディスプレイを有するタッチパネルから構成されるものであり、種々の設定入力画面を表示し、印刷開始の指示入力などの種々の設定入力を受け付ける。
【0033】
読取部80は、印刷処理部30などは収容された筐体上に設置され、原稿画像を光電的に読み取ることによって画像データを取得する。読取部80によって取得された画像データは、制御部60に出力される。特に、本実施形態の読取部80は、後述する調整用パターンを読み取って、その画像データを制御部60に出力する。
【0034】
図3は、本実施形態のインクジェット印刷装置1の制御系の概略構成を示すブロック図である。
【0035】
制御部60は、インクジェット印刷装置1全体を制御するものであり、CPU(Central Processing Unit)、半導体メモリおよびハードディスクなどを備えている。制御部60は、半導体メモリまたはハードディスクなどの記憶媒体に予め記憶されたプログラムを実行し、かつ電気回路を動作させることによって、インクジェット印刷装置1の各部の動作を制御するものである。
【0036】
また、制御部60は、印刷ジョブ出力装置2の制御部90と通信を行い、制御部90から出力された印刷ジョブを受け付ける。そして、制御部60は、入力された印刷ジョブに含まれる印刷対象の印刷画像データに基づいて、印刷処理部30のヘッドユニット31を制御するが、この際、印刷画像データに対して濃度補正処理を施す。
【0037】
具体的には、制御部60は、図3に示すように、調整用パターン取得部61と、濃度プロファイル取得部62と、濃度補正プロファイル生成部63と、濃度補正プロファイル記憶部64と、濃度補正処理部65とを備える。
【0038】
調整用パターン取得部61は、インクジェットヘッド34のノズル毎のインク吐出量の違いに起因する濃度ムラを補正するための調整用パターンの画像データを取得する。本実施形態においては、調整用パターンの画像データとして、いわゆる一様な濃度のベタ画像の画像データを取得する。調整用パターンは、インクジェット印刷装置1によって予め印刷されるものであり、その印刷された調整用パターンが、読取部80によって読み取られることによって、調整用パターン取得部61により調整パターンの画像データが取得される。なお、上述した調整用パターンを印刷する際に用いる調整用パターンを表す印刷画像データについては、インクジェット印刷装置1に予め記憶しておくようにしてもよいし、印刷ジョブ出力装置2からインクジェット印刷装置1に出力するようにしてもよい。
【0039】
図4は、調整用パターンの一例を示す図である。図4に示す調整用パターンは、Kの調整用パターンPkと、Cの調整用パターンPcと、Mの調整用パターンPmと、Yの調整用パターンPyとから構成されている。図4に示す1つの矩形パターンPk1が、1つのKのインクジェットヘッド34によって印刷される調整用パターンである。矩形パターンPk1の副走査方向の長さとしては、たとえば2cm~3cmとすることができるが、これに限らない。
【0040】
本実施形態においては、上述したように各ラインヘッド32a~32dは、それぞれ主走査方向に配列された6つのインクジェットヘッド34を有するので、矩形パターンPk1が、インクジェットヘッド34の配置と同様に千鳥状に配置されている。なお、Cの調整用パターンPc、Mの調整用パターンPmおよびYの調整用パターンPyの構成についても同様である。
【0041】
本実施形態の調整用パターン取得部61は、各ラインヘッド32a~32dのインクジェットヘッド34毎の調整用パターンの画像データを取得するものである。すなわち、たとえば1つのKのインクジェットヘッド34に対して、矩形パターンPk1の画像データを取得する。その他のインクジェットヘッド34についても同様に、各インクジェットヘッド34に対して、それぞれ矩形パターンの画像データが取得される。すなわち、インクジェットヘッド34毎の調整用パターンの画像データが取得される。
【0042】
濃度プロファイル取得部62は、調整用パターン取得部61によって取得されたインクジェットヘッド34毎の調整用パターンの画像データに基づいて、インクジェットヘッド34毎の濃度プロファイルを取得する。
【0043】
ここで、インクジェットヘッド34毎の濃度プロファイルについて説明する。濃度プロファイルは、インクジェットヘッド34が有するノズル毎の濃度分布を表すものであり、後述する濃度補正プロファイルを生成する際に用いられるものである。図5Aは、1つのインクジェットヘッド34について取得された1つの矩形パターンの画像データの一例であり、図5Bは、図5Aに示す矩形パターンの画像データから取得される濃度プロファイルであり、図5Cは、図5Bに示す濃度プロファイルから生成される濃度補正プロファイルである。なお、図5Aに示す矩形パターンは、説明を分かりやすくするために、上述した風紋ムラの影響は受けていないものとする。
【0044】
図5Aに示す矩形パターンの画像データは、インクジェットヘッド34の各ノズルによって印字される副走査方向に延びる線パターンLの集合である。したがって、濃度プロファイル取得部62は、図5Aに示すインクジェットヘッド34の各ノズルに対応する線パターンLの平均濃度をそれぞれ算出することによって、図5Bに示すような濃度プロファイルを取得する。
【0045】
図5Cに示す濃度補正プロファイルは、図5Bに示す各ノズルの平均濃度のバラツキをキャンセルして、各ノズルの平均濃度が全て同じになるように生成されるものである。具体的には、濃度補正プロファイルは、濃度プロファイルに基づいて、各ノズルの目標濃度に対する濃度補正係数を求めることによって生成される。なお、濃度補正プロファイルの生成方法については、後で詳述する。
【0046】
そして、本実施形態の濃度プロファイル取得部62は、上述したようなインクジェットヘッド34毎の濃度プロファイルを生成する際、1つのインクジェットヘッド34に対応する1つの矩形パターンの画像データを、副走査方向について複数の分割領域に分割し、その分割領域毎の画像データに基づいて、分割領域毎の濃度プロファイルを生成する。
【0047】
具体的には、本実施形態の濃度プロファイル取得部62は、図6に示すように矩形パターンの画像データを3つの分割領域R1,R2,R3に分割し、分割領域R1,R2,R3の濃度プロファイルをそれぞれ取得する。
【0048】
このように、副走査方向についてそれぞれ異なる位置の3つの濃度プロファイルを取得するのは、矩形パターンを印刷する際、印刷処理を開始した当初は、インク液滴による自己気流はそれほど強くなく、印刷媒体の搬送が進み印刷処理が進行するほど、インク液滴による自己気流が強くなり、これにより風紋ムラの発生の仕方が搬送方向について変わってくるからである。
【0049】
図6は、風紋ムラの影響を受けた矩形パターンの画像データの一例を模式的に示した図である。図6に示すように、副走査方向について最も上流側の分割領域R1では風紋ムラが生じていないが、下流側の分割領域R2,R3では風紋ムラが生じている。なお、本実施形態においては、先に印字される側を副走査方向上流側とし、後から印字される側を副走査方向下流側とする。すなわち、印刷媒体Pの搬送方向と副走査方向とは逆方向の関係である。
【0050】
また、より下流側の分割領域R3の方が、分割領域2よりも風紋ムラの影響が大きい。すなわち、分割領域毎に風紋ムラの影響が異なるので、本実施形態においては、矩形パターンの画像データを3つの分割領域R1~R3に分けるようにしている。これにより、後述する濃度補正プロファイルの生成処理において、風紋ムラの影響をより適切に除去することができる。また、本実施形態においては、3つの分割領域R1~R3に分割するようにしたが、これに限らず、2つの分割領域や4つ以上の分割領域に分割するようにしてもよい。
【0051】
そして、濃度プロファイル取得部62によって取得された分割領域R1~R3毎の濃度プロファイルが、濃度補正プロファイル生成部63に出力される。
【0052】
濃度補正プロファイル生成部63は、濃度プロファイル取得部62によって取得された分割領域R1~R3の濃度プロファイルに基づいて、インクジェットヘッド34毎の濃度補正プロファイルを生成する。なお、濃度補正プロファイルの生成方法については、後で詳述する。
【0053】
濃度補正プロファイル記憶部64は、濃度補正プロファイル生成部63によって生成されたインクジェットヘッド34毎の濃度補正プロファイルを記憶する。
【0054】
濃度補正処理部65は、濃度補正プロファイル記憶部64に記憶されたインクジェットヘッド34毎の濃度補正プロファイルを用いて、印刷対象の印刷画像データに対して濃度補正処理を施すものである。具体的には、濃度補正処理部65は、各インクジェットヘッド34の濃度補正プロファイルを、各インクジェットヘッド34によって印字される印刷画像データにそれぞれ乗算することによって濃度補正処理を施す。
【0055】
図3に戻り、印刷ジョブ出力装置2は、コンピュータから構成されるものである。印刷ジョブ出力装置2には、印刷対象の印刷画像データを作成する文書作成アプリケーションおよびその印刷画像データを含む印刷ジョブを生成するプリンタドライバがインストールされている。印刷ジョブ出力装置2は、文書作成アプリケーションによって作成された印刷画像データと、プリンタドライバ上に設定された印刷部数などの印刷条件に基づいて、印刷ジョブを生成し、インクジェット印刷装置1に出力する。
【0056】
次に、本実施形態のインクジェット印刷装置1における濃度補正プロファイルの生成方法について、図7に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0057】
まず、インクジェット印刷装置1において、上述した調整用パターンの印刷が行われる(S10)。
【0058】
次に、インクジェット印刷装置1によって印刷された調整用パターンが、読取部80によって読み取られ、調整用パターン取得部61によって調整用パターンの画像データが取得される(S12)。
【0059】
そして、調整用パターンの画像データが濃度プロファイル取得部62によって取得され、濃度プロファイル取得部62は、インクジェットヘッド34毎の調整用パターンの画像データに基づいて、分割領域R1~R3の濃度プロファイルを取得し、濃度補正プロファイル生成部63に出力する(S14)。
【0060】
次いで、濃度補正プロファイル生成部63は、分割領域R1~R3の濃度プロファイルを比較し、濃度プロファイルの差異が予め設定された閾値より小さいか否かを判定する(S16)。濃度プロファイルの差異については、たとえば副走査方向について最も上流側の分割領域R1の濃度プロファイルを基準にして、分割領域R1の濃度プロファイルと分割領域R2の濃度プロファイルとで最も大きい差異を取得するとともに、分割領域R1の濃度プロファイルと分割領域R3の濃度プロファイルとで最も大きい差異を取得する。そして、濃度補正プロファイル生成部63は、全ての差異が閾値より小さいか否かを判定する。
【0061】
濃度補正プロファイル生成部63は、S16において、濃度プロファイルの差異が閾値以上である場合には(S16,NO)、さらに下流側の分割領域R2および分割領域3のプロファイルの中に、風紋ムラに相当する周波数成分が含まれるか否かを確認する(S18)。具体的には、濃度補正プロファイル生成部63は、分割領域R2および分割領域3の濃度プロファイルをフーリエ変換して周波数成分を抽出し、その周波数成分の中に、予め設定された範囲の周波数成分が含まれるか否かを確認する。図8は、図6に示すように風紋ムラを発生している画像データに基づいて取得された分割領域R1~R3の濃度プロファイルの一例を示す図である。分割領域R1の濃度プロファイルには、風紋ムラに相当する周波数成分が含まれていないが、分割領域R2の濃度プロファイルには、影響は小さいが、風紋ムラに相当する周波数成分が含まれており、最も下流側の分割領域R3の濃度プロファイルには、分割領域R2よりも影響が大きい風紋ムラに相当する周波数成分が含まれている。
【0062】
そして、濃度補正プロファイル生成部63は、図8に示すように、分割領域R2または分割領域3のプロファイルに、風紋ムラに相当する周波数成分が含まれる場合には(S18,YES)、その周波数成分が含まれる濃度プロファイルに対してバンドパスフィルタ処理などを施すことによって、濃度プロファイルから風紋ムラに相当する周波数成分を除去する処理を行う(S20)。
【0063】
続いて、濃度補正プロファイル生成部63は、風紋ムラに相当する周波数成分を除去した分割領域R2または分割領域3の濃度プロファイルを含む、全ての分割領域R1~R3の濃度プロファイルを平均化し(S22)、その平均化した濃度プロファイルを用いて、濃度補正プロファイルを生成する(S24)。
【0064】
一方、濃度補正プロファイル生成部63は、S16において、濃度プロファイルの差異が閾値未満である場合には(S16,YES)、上述した風紋ムラに相当する周波数成分の除去処理を行うことなく、全ての分割領域R1~R3の濃度プロファイルを平均化し(S22)、その平均化した濃度プロファイルを用いて、濃度補正プロファイルを生成する(S24)。
【0065】
また、濃度補正プロファイル生成部63は、S18において、分割領域R2または分割領域3のプロファイルに、風紋ムラに相当する周波数成分が含まれない場合には(S18,NO)、最も上流側の分割領域R1の濃度プロファイルを用いて(S26)、濃度補正プロファイルを生成する(S24)。
【0066】
上記実施形態のインクジェット印刷装置1によれば、調整用パターンの画像データに基づいて、濃度プロファイルを取得し、その濃度プロファイルから風紋ムラに相当する周波数成分を除去し、その周波数成分が除去された濃度プロファイルに基づいて、濃度ムラを補正するための濃度補正プロファイルを生成するようにしたので、風紋ムラの影響を受けていない濃度補正プロファイルを生成することができる。
【0067】
また、上記実施形態のインクジェット印刷装置1においては、調整用パターンの画像データを複数の分割領域R1~R3に分割し、分割領域R1~R3毎の濃度プロファイルを取得し、分割領域R1~R3毎の濃度プロファイルのうち、風紋ムラに相当する周波数成分を含む濃度プロファイルからその周波数成分を除去し、その周波数成分が除去された濃度プロファイルを含む、全ての分割領域の濃度プロファイルに基づいて、濃度補正プロファイルを生成するようにしたので、風紋ムラに相当する周波数成分をより適切に除去することができる。
【0068】
分割しないで、風紋ムラ周波数成分(各種の周波数成分を含む)を除去した濃度プロファイルを用いて濃度補正プロファイルを作成して、印刷する画像データに適用すると、印刷画像の周波数成分に影響を与え好ましくない。分割することで、分割領域毎での風紋ムラ周波数成分は限定的になるので、 印刷画像の周波数成分への影響を抑えつつ、濃度プロファイルから風紋ムラを除去する事ができる。
【0069】
また、上記実施形態のインクジェット印刷装置1においては、分割領域R1~R3毎の濃度プロファイルの差異が予め設定された閾値以上である場合に、周波数成分を除去する処理を行い、分割領域R1~R3毎の濃度プロファイルの差異が予め設定された閾値未満である場合には、周波数成分を除去する処理を行うことなく、全ての分割領域の濃度プロファイルに基づいて、濃度補正プロファイルを生成するようにしたので、各ノズルに対応する線パターンLの平均濃度を算出する際のS/N比を上げることができ、ノイズの少ない濃度補正プロファイルを生成することができる。
【0070】
また、上記実施形態のインクジェット印刷装置1においては、分割領域R1~R3毎の濃度プロファイルの差異が予め設定された閾値以上であり、かつ分割領域R1~R3毎の濃度プロファイルの中に、風紋ムラに相当する周波数成分を含む濃度プロファイルが存在しない場合には、全ての分割領域の濃度プロファイルのうち、副走査方向について最も上流側に位置する分割領域の濃度プロファイルのみを用いて、濃度補正プロファイルを生成するようにしたので、たとえば風紋ムラ以外の要因によって分割領域R2または分割領域R3の濃度プロファイルにノイズが発生している場合においても、このノイズの影響を受けることなく、適切な濃度補正プロファイルを生成することができる。
【0071】
また、上記実施形態のインクジェット印刷装置1においては、インクジェットヘッド34毎の調整用パターンの画像データを取得するようにしたので、インクジェットヘッド34毎の濃度ムラをより適切に除去することができる。
【0072】
本発明の濃度補正プロファイル生成装置に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記)
【0073】
本発明の濃度補正プロファイル生成装置において、濃度プロファイル取得部は、調整用パターン取得部によって取得された画像データを副走査方向について複数の分割領域に分割し、その分割領域毎の画像データに基づいて、分割領域毎の濃度プロファイルを取得することができ、濃度補正プロファイル生成部は、分割領域毎の濃度プロファイルのうち、風紋ムラに相当する周波数成分を含む濃度プロファイルからその周波数成分を除去し、その周波数成分が除去された濃度プロファイルを含む、全ての分割領域の濃度プロファイルに基づいて、濃度補正プロファイルを生成することができる。
【0074】
本発明の濃度補正プロファイル生成装置において、濃度補正プロファイル生成部は、分割領域毎の濃度プロファイルの差異が予め設定された閾値以上である場合に、風紋ムラに相当する周波数成分を除去する処理を行い、分割領域毎の濃度プロファイルの差異が予め設定された閾値未満である場合には、風紋ムラに相当する周波数成分を除去する処理を行うことなく、全ての分割領域の濃度プロファイルに基づいて、濃度補正プロファイルを生成することができる。
【0075】
また、本発明の濃度補正プロファイル生成装置において、濃度補正プロファイル生成部は、分割領域毎の濃度プロファイルの差異が予め設定された閾値以上であり、かつ分割領域毎の濃度プロファイルの中に、風紋ムラに相当する周波数成分を含む濃度プロファイルが存在しない場合には、全ての分割領域の濃度プロファイルのうち、副走査方向について最も上流側に位置する分割領域の濃度プロファイルのみを用いて、濃度補正プロファイルを生成することができる。
【0076】
また、本発明の濃度補正プロファイル生成装置において、調整用パターン取得部は、インクジェットヘッド毎の調整用パターンの画像データを取得することができ、濃度プロファイル取得部は、インクジェットヘッド毎の画像データを副走査方向について複数の分割領域に分割し、その分割領域毎の画像データに基づいて、分割領域毎の濃度プロファイルを取得することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 インクジェット印刷装置
2 印刷ジョブ出力装置
10 サイド給紙部
11 給紙台
12 1次給紙部
14 2次給紙部
20 内部給紙部
21a 給紙台
21b 給紙台
21c 給紙台
21d 給紙台
22a~22d 1次給紙部
30 印刷処理部
31 ヘッドユニット
32a~32d ラインヘッド
33 ヘッドホルダ
34 インクジェットヘッド
40 排紙部
41 排紙台
42 排紙ローラ
43 切り替え機構
50 反転部
51 反転台
52 反転ローラ
53 搬送ローラ
60 制御部
61 調整用パターン取得部
62 濃度プロファイル取得部
63 濃度補正プロファイル生成部
64 濃度補正プロファイル記憶部
65 濃度補正処理部
70 操作パネル
80 読取部
90 制御部
131,132 吸引ファン
133 搬送ベルト
CR 循環搬送路
FR 給紙搬送路
L 線パターン
P 印刷媒体
Pc Cの調整用パターン
Pk Kの調整用パターン
Pk1 矩形パターン
Pm Mの調整用パターン
Py Yの調整用パターン
R1~R3 分割領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9