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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115193
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】液圧制御装置
(51)【国際特許分類】
   F16L 55/04 20060101AFI20220802BHJP
   B60T 17/00 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
F16L55/04
B60T17/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021011693
(22)【出願日】2021-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100174713
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧川 彰人
(72)【発明者】
【氏名】藤井 賢三
【テーマコード(参考)】
3D049
3H025
【Fターム(参考)】
3D049BB22
3D049CC02
3D049HH12
3D049LL01
3D049LL05
3H025CA02
3H025CB22
(57)【要約】
【課題】所望の周波数の脈動を安定して低減させることができ、且つ装置の大型化の抑制が可能な液圧制御装置を提供する。
【解決手段】本発明の液圧制御装置1は、吐出口2aからフルードを吐出するフルード供給部2と、吐出口2aとフルード供給対象物9とを接続し第1周壁部80にて区画された第1液路3と、サイドブランチ型ダンパを形成するように第1液路3から分岐した袋小路の第2液路4と、第2液路4を区画する第2周壁部81に外周面51が当接するように第2液路4内に配置され、中央部分に第1液路3に連通してフルードが流通可能なスリーブ液路52を形成し、且つヤング率が第1周壁部80よりも低くなるように構成された筒状又は有底筒状のスリーブ部材5と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出口からフルードを吐出するフルード供給部と、
前記吐出口とフルード供給対象物とを接続し、第1周壁部にて区画される第1液路と、
サイドブランチ型ダンパを形成するように前記第1液路から分岐した袋小路の第2液路と、
前記第2液路を区画する第2周壁部に外周面が当接するように前記第2液路内に配置され、中央部分に前記第1液路に連通してフルードが流通可能なスリーブ液路を形成し、且つヤング率が前記第1周壁部よりも低くなるように構成された筒状又は有底筒状のスリーブ部材と、
を備える、液圧制御装置。
【請求項2】
前記スリーブ部材の外周面と前記第2周壁部との間、及び前記スリーブ部材の内部の少なくとも一方には、前記第2液路に対してシールされ且つ空気が充填されたエア室が形成されている、請求項1に記載の液圧制御装置。
【請求項3】
前記フルード供給部は、電動ポンプであり、
前記フルード供給対象物は、ホイルシリンダであり、
前記エア室は、ブレーキ操作における常用域の液圧変動に対して前記スリーブ部材のヤング率が維持されるように形成されている、請求項2に記載の液圧制御装置。
【請求項4】
前記第2液路の一部は、ハウジングにより構成され、
前記第2液路の終端を含む残りの部分は、前記ハウジングに固定された配管部材で構成され、
前記スリーブ部材は、前記配管部材内に配置されている、請求項1~3の何れか一項に記載の液圧制御装置。
【請求項5】
前記スリーブ部材の前記第2液路内での移動を規制する規制部を備える、請求項1~4の何れか一項に記載の液圧制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フルード供給対象物の圧力を制御する液圧制御装置には、例えば電動ポンプから吐出されるフルードの脈動を抑制するためにダンパが設けられている。フルードの脈動により音が発生するため、特に車両で用いられる液圧回路では、狙った特定の周波数の脈動を低減させることが求められる。車両用制御装置で用いられる液圧制御装置のダンパとしては、一例として金属製ダイヤフラムを使用したヘルムホルツ型のダンパが知られている。また、他に液圧回路で用いられるダンパとしては、例えば特開2007-278517号公報に記載されているように、サイドブランチ型ダンパが存在する。サイドブランチ型ダンパは、消音効果のある周波数が物性(ヤング率)及び形状(管径、長さ)によって決まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-278517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヘルムホルツ型ダンパでは、金属製ダイヤフラムが使用されるため、脈動低減対象となる周波数が負荷圧力(ダンパが受ける液圧)によって変化する。このことは、金属製ダイヤフラムの消費液量特性(液圧と消費液量との関係)に依存する。したがって、ヘルムホルツ型ダンパでは、例えば負荷圧力が高くなると、特定の周波数に対応する脈動の低減効果が十分に発揮されない可能性がある。つまり、圧力変動に対する脈動低減作用の安定性について改善の余地がある。
【0005】
そこで、発明者は、特に車両で用いられる液圧制御装置のダンパとしてサイドブランチ型ダンパを採用することに着想した。サイドブランチ型ダンパの原理により、主液路とブランチ液路とが分岐する分岐点で発生している脈圧は、ブランチ液路から戻ってきた逆位相の脈圧とぶつかって低減される。
【0006】
しかしながら、単純にサイドブランチ型ダンパを液圧制御装置に適用するだけでは、例えば車両で要求される性能の実現が困難である。すなわち、車両用制動装置に適した液圧制御装置のダンパには、常用域内での液圧変動に対して特定の周波数(車両では特に低周波帯域)の脈動を安定して低減させること、及び装置の大型化を抑制できることが求められる。
【0007】
本発明の目的は、所望の周波数の脈動を安定して低減させることができ、且つ装置の大型化の抑制が可能な液圧制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の液圧制御装置は、吐出口からフルードを吐出するフルード供給部と、前記吐出口とフルード供給対象物とを接続し、第1周壁部にて区画された第1液路と、サイドブランチ型ダンパを形成するように前記第1液路から分岐した袋小路の第2液路と、前記第2液路を区画する第2周壁部に外周面が当接するように前記第2液路内に配置され、中央部分に前記第1液路に連通してフルードが流通可能なスリーブ液路を形成し、且つヤング率が前記第1周壁部よりも低くなるように構成された筒状又は有底筒状のスリーブ部材と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スリーブ液路と第2液路とにより、又はスリーブ液路のみにより、サイドブランチ型ダンパ機能を発揮するブランチ液路が形成される。これにより、金属製ダイヤフラムを用いることなく、特定の周波数の脈動を安定して低減させることができる。サイドブランチ型ダンパの低減対象の周波数は、液路の長さに反比例する。したがって、例えば低周波帯域の周波数の脈動を低減させるには、第2液路を長くする必要がある。
【0010】
しかし、本発明によれば、第1液路を区画する第1周壁部よりも相対的にヤング率が低いスリーブ部材が、第2液路内でスリーブ液路を形成している。サイドブランチ型ダンパにおいて低減作用のある周波数はフルードの音速に比例し、フルードの音速は液路のヤング率に比例する。したがって、スリーブ部材により第2液路でのフルードの音速が小さくなることで、低減対象の周波数は低くなる。これにより、第2液路を長くすることなく、すなわち装置を大型化させることなく、低減対象の周波数を低くすることができる。このように、本発明によれば、所望の周波数の脈動を安定して低減させることができ、且つ装置の大型化の抑制が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態の液圧制御装置1の構成図である。
図2】第1実施形態のスリーブ部材の構成図(断面図)である。
図3】第2実施形態のスリーブ部材の構成図(断面図)である。
図4】第3実施形態のスリーブ部材の構成図(断面図)である。
図5】第4実施形態のスリーブ部材の構成図(断面図)である。
図6】本実施形態のスリーブ部材の変形態様の構成図(断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。各実施形態における説明及び図面は、他の実施形態においても参照できる。説明に用いる各図は概念図である。
【0013】
<第1実施形態>
第1実施形態の液圧制御装置1は、図1に示すように、車両用制動装置100に適用され、ホイルシリンダ9の液圧(以下「ホイル圧」という)を調整するアクチュエータ装置である。液圧制御装置1は、電動ポンプ(「フルード供給部」に相当する)2と、第1液路3と、第2液路4と、スリーブ部材5と、複数の電磁弁6と、ブレーキECU7と、ハウジング8と、を備えている。
【0014】
電動ポンプ2は、吐出口2aからフルードを吐出するフルード供給装置である。電動ポンプ2は、図示略の吸入口からフルードを吸入する。電動ポンプ2は、ブレーキECU7の制御により駆動する電動モータ21と、電動モータ21の駆動力で作動するポンプ22(例えばギヤポンプ)と、を備えている。
【0015】
第1液路3は、電動ポンプ2の吐出口2aとホイルシリンダ(「フルード供給対象物」に相当する)9とを接続する液路である。第1液路3は、第1周壁部80にて区画されている。本実施形態において、第1液路3は、金属製のブロックで構成されたハウジング8内に形成されている。第1液路3は、ハウジング8の一部である第1周壁部80(内壁)で区画されている。つまり、ハウジング8の一部が第1液路形成部(第1液路3の配管部分:第1周壁部80)であり、その内部のフルードが流通する空間が第1液路3である。電動ポンプ2から吐出されたフルードは、第1液路3及びハウジング8外の液路(図示略)を介してホイルシリンダ9に供給される。第1液路3は、電動ポンプ2とホイルシリンダ9とを接続する液路のうちハウジング8に形成された部分である。
【0016】
第2液路4は、サイドブランチ型ダンパを形成するように第1液路3から分岐して袋小路を形成する液路である。第2液路4は、スリーブ部材5がなくても、サイドブランチ型ダンパのブランチ液路として機能するように形成されている。第2液路4は、ハウジング8内に形成されている。第2液路4は、ハウジング8の一部である第2周壁部81(内壁)と、袋小路を形成するために液路を塞ぐ終端部(この例ではプラグ82)とにより区画されている。第2液路4は、第1液路3の延伸方向に対して垂直に延びている。
【0017】
第1実施形態において、第2液路4は、第1液路3に接続された小径路41と、小径路41に接続され小径路41よりも径(流路断面積)が大きい大径路42と、を備えている。大径路42の軸方向一端部は、プラグ82により塞がれている。プラグ82は、金属部材であって、第2液路4の行き止まりの壁を構成している。プラグ82は、ハウジング8に例えば圧入固定されている。なお、例えばハウジング8内でヘルムホルツ型ダンパに用いられていた既存の液路は、サイドブランチ型ダンパにおける第2液路4として利用できる。この場合、大径路42は、ヘルムホルツ型ダンパにおいて金属製ダイヤフラムやオリフィス板が収容される部分に相当する。
【0018】
スリーブ部材5は、図2に示すように、第2液路4を区画する第2周壁部81に外周面51が当接するように第2液路4内に配置され、中央部分に第1液路3に連通してフルードが流通可能なスリーブ液路52を形成し、且つヤング率が第1周壁部80よりも低くなるように構成された筒状又は有底筒状の部材である。第1実施形態のスリーブ部材5は、円筒状に形成されている。
【0019】
スリーブ部材5は、小径路41に設置されている。スリーブ部材5の外周面51は、小径路41を区画する第2周壁部81に当接している。スリーブ部材5は、ゴムで形成されている。スリーブ部材5は、ゴム配管部材ともいえる。スリーブ部材5は、小径路41に例えば圧入などにより固定されている。ゴム製であるスリーブ部材5のヤング率は、金属製であるハウジング8(第1周壁部80及び第2周壁部81)のヤング率よりも低い。
【0020】
スリーブ部材5は、第2液路4に同軸的に配置されている。スリーブ部材5の中央部分には、小径路41に沿って延びるスリーブ液路52が形成されている。この例において、スリーブ液路52は、小径路41と平行に形成されている。第1液路3から第2液路4に流入したフルードは、小径路41よりも小径のスリーブ液路52を介して大径路42に到達する。大径路42に到達したフルードは、プラグ82により跳ね返り、スリーブ液路52を介して第1液路3に戻る。これにより、第1液路3と第2液路4の分岐点において、特定の周波数の脈動が低減され、サイドブランチ型ダンパの作用が発揮される。スリーブ部材5を含む第2液路4全体によりサイドブランチ型ダンパが構成されているといえる。
【0021】
スリーブ部材5の外周面51と第2周壁部81との間には、第2液路4に対してシールされ且つ空気が充填されたエア室53が形成されている。エア室53は、スリーブ部材5の外周面51に形成された凹部54(例えば溝)と第2周壁部81とにより区画されている。スリーブ部材5の軸方向両端部は、第2液路4とエア室53との間をシールするシール部55といえる。
【0022】
第1実施形態において、外周面51には、複数の凹部54が軸方向に並んで配置されている。軸方向に並んだ各凹部54は、例えば1つの連続した環状溝であってもよいし、複数の溝が環状に配置されたものでもよい。なお、スリーブ部材5の内周面のうち、軸方向端部(シール部55)と軸方向中央部(エア室53が形成された部分)との間は、軸方向端部から軸方向中央部に向けて徐々に縮径するようにテーパ状に形成されている。このように、スリーブ部材5の軸方向端面やスリーブ液路52の段差は、フルードの流通性やエア室53のシール性を考慮して、テーパ状に形成されていてもよい。
【0023】
エア室53は、ブレーキ操作における常用域(例えば1~3MPa)の液圧変動に対してスリーブ部材5のヤング率が維持できるように形成されている。エア室53は、ブレーキ操作における常用域の最大圧力が負荷されても、スリーブ液路52がゴムの物性により拡径可能な状態を維持するように形成されている。
【0024】
電磁弁6は、ハウジング8内の液路に配置され、ブレーキECU7の制御により開閉する。ハウジング8の内部には、複数の液路、電磁弁6、及びリザーバ(図示略)等を含む液圧回路が形成されている。
【0025】
ブレーキECU7は、プロセッサやメモリを備える電子制御ユニットである。ブレーキECU7は、ブレーキ操作等に応じて電磁弁6や電動ポンプ2を制御し、ホイル圧及び制動力を制御する。ブレーキECU7は、例えば固定ケース(図示略)を介してハウジング8に固定されている。液圧制御装置1は、例えばABSアクチュエータ又はESCアクチュエータを構成する。
【0026】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態によれば、第2液路4及びスリーブ液路52によりサイドブランチ型ダンパ(ブランチ液路)が形成される。これにより、金属製ダイヤフラムを用いることなく、特定の周波数の脈動を安定して低減させることができる。サイドブランチ型ダンパの低減作用のある周波数は、液路(ブランチ液路)の長さに反比例する。したがって、例えば低周波帯域の周波数の脈動を低減させるには、第2液路4を長くする必要がある。
【0027】
しかし、第1実施形態によれば、第1液路3を区画する第1周壁部80よりも相対的にヤング率が低いスリーブ部材5が、第2液路4内でスリーブ液路52を形成している。サイドブランチ型ダンパにおいて低減対象の周波数はフルードの音速に比例し、フルードの音速は液路のヤング率に比例する。したがって、スリーブ部材5によって第2液路4でのフルードの音速が小さくなることで、低減対象の周波数は低くなる。これにより、第2液路4を長くすることなく、すなわち装置を大型化させることなく、低減対象の周波数を低くすることができる。スリーブ部材5のヤング率により、低減対象の周波数を調整することができる。このように、第1実施形態によれば、所望の周波数の脈動を安定して低減させることができ、且つ装置の大型化の抑制が可能となる。
【0028】
また、例えばスリーブ部材5を第2液路4と別体で製造することで、スリーブ部材5を既存の液路やダンパ室に後付けすることが可能となる。これにより、設計変更なく既存のハウジング8(液圧回路)に、要求を満たすサイドブランチ型ダンパを形成することができる。
【0029】
また、スリーブ部材5と第2周壁部81によりエア室53が形成されることで、スリーブ部材5のヤング率が維持されやすくなる。空気は圧縮性流体であり、エア室53の容積を小さくするようなスリーブ部材5の変形は許容される。第2液路4に高い負荷圧力が加わっても、エア室53の存在により、スリーブ部材5が圧縮変形だけでなく拡径方向に弾性変形することができ、スリーブ部材5の低いヤング率は維持されやすくなる。
【0030】
例えば常用域の液圧変動に対してヤング率が維持されるようにスリーブ部材5が形成されることで、常用域でのブレーキ操作に対して所望の周波数の低減効果を維持することができる。つまり、通常のブレーキ操作における音(乗員が気になる周波数の音)の発生を安定して抑制することができる。
【0031】
<第2実施形態>
第2実施形態と第1実施形態とは主にスリーブ部材の位置と形状の点で異なっており、以下、主に異なる点について説明する。第2実施形態のスリーブ部材5Aは、図3に示すように、第2液路4の大径路42に配置されている。スリーブ部材5Aは、有底円筒状のゴム部材である。したがって、第2液路4の終端部(プラグ82)は、スリーブ部材5により被覆されている。つまり、スリーブ部材5Aは、スリーブ液路52の終端部であって第2液路4の終端部に対向配置される底部56を備えている。
【0032】
スリーブ部材5Aは、大気圧状態において、スリーブ液路52が小径路41と同径となるように形成されている。スリーブ部材5Aの外周面51には、第2周壁部81とともにエア室53を区画する凹部54が形成されている。凹部54は、例えば環状溝又は複数の溝が周方向に配置されたものである。
【0033】
スリーブ部材5Aの軸方向一端部(図3の左端部)は、プラグ82に当接している。プラグ82により、スリーブ部材5Aの軸方向一方への移動が規制される。つまり、プラグ82は、スリーブ部材5Aの第2液路4内での移動を規制する規制部として機能する。
【0034】
第2実施形態において、スリーブ部材5Aは、大径路42の軸方向全体にわたって配置されている。換言すると、スリーブ部材5Aの軸方向長さは、配置状態において、大径路42の軸方向長さ(小径路41との接続位置からプラグ82まで)と同じである。スリーブ部材5の軸方向他端部は、第2周壁部81で形成された段差に当接している。このように、第2実施形態では、プラグ82とハウジング8の段差(小径路41と大径路42との間の段差)とにより、軸方向一方及び他方への移動が規制されている。ハウジング8(第2周壁部81)も規制部といえる。プラグ82及びハウジング8の段差は、スリーブ部材5Aを第2液路4内で位置決めする位置決め部ともいえる。
【0035】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が発揮される。また、プラグ82及びハウジング8により規制部が形成されているため、スリーブ部材5Aがフルードの流通により移動することが効果的に抑制される。また、既存のプラグ82が規制部として機能するため、別途規制部を形成する必要がない。また、軸方向両側に規制部(82、8)により第2液路4にスリーブ部材5が嵌まる凹状部分87が形成されることでスリーブ部材5Aの位置決めが容易となり、スリーブ部材5Aの後付け作業も容易となる。例えば図3の構成の場合、既存のハウジング8の容積室(大径路42)に対して、スリーブ部材5Aを圧入した後、プラグ82を圧入することで、所望のサイドブランチ型ダンパを形成することができる。
【0036】
<第3実施形態>
第3実施形態と第2実施形態とは主にエア室53の構成の点で異なっており、以下、主に異なる点について説明する。図4に示すように、第3実施形態のスリーブ部材5Bの内部には、複数のエア室53が形成されている。スリーブ部材5Bは、ゴム製の発泡材である。エア室53は、ゴム内に積極的に形成された気泡により形成されている。スリーブ部材5Bは、第2実施形態同様、有底円筒状に形成されている。なお、図4では、エア室53が多数であるため、符号の表示を一部省略している。
【0037】
(第3実施形態の効果)
第3実施形態においても、第2実施形態と同様の効果が発揮される。また、エア室53がスリーブ部材5の内部に形成されているため、第2液路4とエア室53とのシールを容易に形成可能となり、設計の自由度は向上する。また、スリーブ部材5に発泡材を用いるだけで内部にエア室53が形成されるため、製造も容易となる。
【0038】
<第4実施形態>
第4実施形態は、第1実施形態と比較して、主に第2液路4の形状及びスリーブ部材の位置の点で異なっており、以下、主に異なる点について説明する。第2液路4は、図5に示すように、ハウジング8内に形成された内部液路44と、ハウジング8外の配管部材84内に形成された外部液路45と、を備えている。配管部材84の内径(外部液路45の径)は、内部液路44の径よりも大きい。配管部材84は、金属製の配管であって、例えばねじ止め等によりハウジング8の表面83に固定されている。
【0039】
第4実施形態のスリーブ部材5Cは、配管部材84内(すなわち外部液路45内)に配置されている。スリーブ部材5Cは、有底円筒状のゴム部材である。スリーブ部材5Cのヤング率は、上記実施形態同様、第1周壁部80のヤング率よりも小さい。つまり、スリーブ部材5Cのヤング率は、ハウジング8(第1周壁部80、第2周壁部81)のヤング率よりも小さい。また、スリーブ部材5Cのヤング率は、外部液路45を区画する配管部材84(第2周壁部81)のヤング率よりも小さい。
【0040】
スリーブ部材5Cの外周面51と配管部材84(第2周壁部81)との間には、第1実施形態同様、複数のエア室53が形成されている。スリーブ部材5Cは、配管部材84内部の軸方向全体に配置されている。配管部材84内は、スリーブ部材5で充填されている。スリーブ部材5Cは、大気圧状態において、スリーブ液路52が内部液路44と同径になるように形成されている。スリーブ液路52は、内部液路44に接続されている。つまり、サイドブランチ型ダンパとして作用するブランチ液路は、内部液路44とスリーブ液路52とで構成される。
【0041】
このように、第4実施形態において、第2液路4の一部はハウジング8により形成され、第2液路4の終端を含む残りの部分46はハウジング8に固定された配管部材84により形成されている。
【0042】
(第4実施形態の効果)
第4実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が発揮される。また、例えばスリーブ部材5Cを備えた配管部材84(以下「配管ユニット」ともいう)を準備することで、ハウジング8に外付けにより所望のサイドブランチ型ダンパを形成することができる。この配管ユニットは、ハウジング8に対して、要求に応じて取り換え可能となる。
【0043】
<その他>
本発明は、上記した第1~第4実施形態に限られない。例えば、スリーブ部材5~5Cの材料は、ゴムに限らず、他の弾性材料であってもよい。また、スリーブ部材5~5Cは、複数の材料により形成されてもよい。例えば、図6に示すように、スリーブ部材は、ヤング率の異なる2つのゴム部材501、502により形成されてもよい。例えば、内側に相対的にヤング率が低いゴム部材501が配置され、外側に相対的にヤング率が高いゴム部材502が配置されてもよい(あるいは逆でもよい)。スリーブ部材全体のヤング率が、第1液路3を区画する第1周壁部80のヤング率よりも低ければよい。また、スリーブ部材は、例えば径の異なる金属又は樹脂製の配管部材によってゴム配管部材を挟んで構成されてもよい。このように、スリーブ部材は、複数層で形成されてもよい。
【0044】
また、スリーブ部材5~5Cは、筒状でも有底筒状でもよい。また、スリーブ部材5~5Cは、軸方向において、第2液路4の少なくとも一部に配置されればよい。例えば第2液路4の軸方向全体にスリーブ部材が配置されている場合、サイドブランチ型ダンパのブランチ液路は、スリーブ液路52のみによって構成される。
【0045】
また、スリーブ部材5~5Cは、エア室53を備えていなくてもよい。つまり、スリーブ部材5~5Cは、エア室53なしで、材質や形状(厚さ等)によって使用環境で自身のヤング率を維持できるように設計されてもよい。また、エア室53が形成される場合、エア室53は、外周面51と第2周壁部81との間、及びスリーブ部材5~5Cの内部の少なくとも一方に形成されればよい。例えば、スリーブ部材5、5Cは、発泡材で形成されてもよい。この場合、凹部54はあってもなくてもよい。
【0046】
また、第2液路4は、直線状に限らず、湾曲又は屈曲していてもよい。また、第1液路3と第2液路4とのなす角は、直角でなくてもよい。また、液圧制御装置1は、車両制動装置以外の装置にも適用できる。つまり、フルード供給対象物は、ホイルシリンダ9に限られない。また、フルードを供給するフルード供給部は、電動ポンプ2に限らず、例えば電動シリンダであってもよい。また、スリーブ部材5の移動を規制する規制部は、プラグ82に限らず、例えばハウジング8に形成された段差又はハウジング8に嵌合されたスナップリング等であってもよい。
【0047】
また、第2液路4の終端部(壁)は、プラグ82や配管部材84でなくてもよく、例えばハウジング8で構成されてもよい。また、各液路の径は、互いに同じでも異なっていてもよい。ただし、フルード流通の観点では、管径の変化は少ないほうが(例えば同一であること)好ましい。本開示における「液路」は、配管や管路とも呼ぶことができ、ハウジング8内の液路であっても管状の配管部材内の液路であってもよい。また、第1液路3は主液路ともいえ、第2液路4は分岐路ともいえる。
【符号の説明】
【0048】
1…液圧制御装置、2…電動ポンプ(フルード供給部)、2a…吐出口、3…第1液路、4…第2液路、5、5A、5B、5C…スリーブ部材、51…外周面、52…スリーブ液路、53…エア室、8…ハウジング、80…第1周壁部、81…第2周壁部、82…プラグ(規制部)、84…配管部材、9…ホイルシリンダ(フルード供給対象物)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6