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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115198
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】紫外線治療装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/06 20060101AFI20220802BHJP
【FI】
A61N5/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021011700
(22)【出願日】2021-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】小川 義正
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082PA03
4C082PC01
4C082PE10
4C082PG05
4C082PJ04
4C082PJ05
(57)【要約】
【課題】使用者や患者に冷却風が当たらないようにすることができる紫外線治療装置を提供する。
【解決手段】紫外線治療装置10は、患部に紫外線を含む治療光を照射する光源部20を備える。光源部20は、筐体27と、筐体27の内部に配置されて紫外線を放射する光源(LED素子22a)と、筐体27の前端部に設けられ、治療光を放射する窓部材28と、筐体27の内部に冷却風を取り込む吸気ファン25と、筐体27における光源に対して窓部材28とは反対側の底部に設けられた排気口27dと、筐体27の内部の冷却風を排気口27dから排気する排気ファン26と、を備える。
【選択図】 図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患部に紫外線を含む治療光を照射する光源部を備える紫外線治療装置であって、
前記光源部は、
筐体と、
前記筐体の内部に配置されて前記紫外線を放射する光源と、
前記筐体の前端部に設けられ、前記治療光を放射する窓部材と、
前記筐体の内部に冷却風を取り込む吸気ファンと、
前記筐体における前記光源に対して前記窓部材とは反対側の底部に設けられた排気口と、
前記筐体の内部の冷却風を前記排気口から排気する排気ファンと、を備えることを特徴とする紫外線治療装置。
【請求項2】
前記吸気ファンにより前記筐体の内部に冷却風を取り込む吸気方向と、前記排気ファンにより前記筐体の内部の冷却風を前記排気口から排気する排気方向とが交差することを特徴とする請求項1に記載の紫外線治療装置。
【請求項3】
前記光源部は、前記筐体の前記窓部材が設けられた前記前端部とは反対側に設けられた吸気口をさらに備え、
前記吸気ファンは、前記吸気口から前記筐体の内部に冷却風を取り込むことを特徴とする請求項1または2に記載の紫外線治療装置。
【請求項4】
前記吸気ファンは、前記窓部材と平行な面における前記光源の側方に配置され、前記光源に向けて冷却風を送風することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の紫外線治療装置。
【請求項5】
前記吸気ファンは、前記窓部材と平行な面において前記光源を挟んで当該光源の両側に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の紫外線治療装置。
【請求項6】
前記光源部は、
前記窓部材に対向して配置され、前記光源が実装された基板と、
前記基板の前記窓部材とは反対側の面に取り付けられ、前記基板の熱を放熱するヒートシンクと、を備え、
前記吸気ファンは、前記筐体の内部に取り込んだ冷却風を前記ヒートシンクの側面に送風し、
前記ヒートシンクは、前記吸気ファンによる前記冷却風の送風方向に延伸するフィンを備えることを特徴とする請求項4または5に記載の紫外線治療装置。
【請求項7】
前記光源は、LEDであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の紫外線治療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線照射によって皮膚疾患を治療する紫外線治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光線治療として、UVA(波長320nm~400nm)、UVB(波長280~320nm)といった波長域の紫外線を用いる紫外線治療が存在する。紫外線治療とは、紫外線照射により免疫抑制を図り、治療効果を得るものである。
例えば特許文献1には、紫外線光源としてLEDを用いた紫外線治療装置が開示されている。この紫外線治療装置は、光源を冷却するためのヒートシンクを備え、当該ヒートシンクに冷却風を当てて光源を冷却するようにしている。しかしながら、上記の紫外線治療装置においては、どのように筐体内に冷却風を吸引し、どのように筐体外に排気するかといった具体的な構造については開示されていない。
【0003】
例えば特許文献2には、光源に生じた熱で加熱された空気を吸引して光源を冷却する冷却ファンを備え、当該冷却ファンから排出された温風を光照射口から吐出する光照射装置が開示されている。
また、例えば特許文献3には、光源を冷却する冷却風が、光放射するヘッドの前方から取り込まれ、内部の光源を冷却して本体から使用者の方向に排気される光照射型美容装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-49142号公報
【特許文献2】特開2013-106876号公報
【特許文献3】特開2018-33923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献2、3に記載の技術では、装置内の光源を冷却する冷却風が、使用者や患者の方向に向けて排気されている。
しかしながら、紫外線治療装置において、冷却風が治療中の患者に向けて排気される構造の場合、患者に冷却風が当たり、患者に違和感を与えてしまう。また、排気される風の温度によっては、患者の風が当たる部分が火傷を起こすおそれがある。
また、紫外線治療装置において、冷却風が使用者(例えば、医者)に向けて排気される構造の場合、治療が阻害されるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、使用者や患者に冷却風が当たらないようにすることができる紫外線治療装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る紫外線治療装置の一態様は、患部に紫外線を含む治療光を照射する光源部を備える紫外線治療装置であって、前記光源部は、筐体と、前記筐体の内部に配置されて前記紫外線を放射する光源と、前記筐体の前端部に設けられ、前記治療光を放射する窓部材と、前記筐体の内部に冷却風を取り込む吸気ファンと、前記筐体における前記光源に対して前記窓部材とは反対側の底部に設けられた排気口と、前記筐体の内部の冷却風を前記排気口から排気する排気ファンと、を備える。
このように、筐体の後方の底部から冷却風を排気するので、使用者や患者に冷却風が当たらないようにすることができる。その結果、医師等の使用者による治療を阻害したり、治療中に患者が違和感を覚えたりすることを抑制することができる。
【0008】
また、上記の紫外線治療装置において、前記吸気ファンにより前記筐体の内部に冷却風を取り込む吸気方向と、前記排気ファンにより前記筐体の内部の冷却風を前記排気口から排気する排気方向とが交差していてもよい。
この場合、筐体から排気される温風を吸気しにくい構造とすることができ、冷却効果の低下を抑制することができる。
【0009】
さらに、上記の紫外線治療装置において、前記光源部は、前記筐体の前記窓部材が設けられた前記前端部とは反対側に設けられた吸気口をさらに備え、前記吸気ファンは、前記吸気口から前記筐体の内部に冷却風を取り込んでもよい。
この場合、筐体の後方から冷却風を取り込むので、窓部材前方の患者に冷却風が流れていることを感じさせないようにすることができる。また、吸気方向と排気方向とが90°異なるため、筐体から排気される温風をより吸気しにくい構造とすることができる。
【0010】
また、上記の紫外線治療装置において、前記吸気ファンは、前記窓部材と平行な面における前記光源の側方に配置され、前記光源に向けて冷却風を送風してもよい。この場合、光源により発せられる熱を適切に放熱することができる。
さらにまた、上記の紫外線治療装置において、前記吸気ファンは、前記窓部材と平行な面において前記光源を挟んで当該光源の両側に配置されていてもよい。この場合、より効率的に光源により発せられる熱を放熱することができる。また、光源の冷却ムラを低減することもできる。
【0011】
また、上記の紫外線治療装置において、前記光源部は、前記窓部材に対向して配置され、前記光源が実装された基板と、前記基板の前記窓部材とは反対側の面に取り付けられ、前記基板の熱を放熱するヒートシンクと、を備え、前記吸気ファンは、前記筐体の内部に取り込んだ冷却風を前記ヒートシンクの側面に送風し、前記ヒートシンクは、前記吸気ファンによる前記冷却風の送風方向に延伸するフィンを備えてもよい。
この場合、光源により発せられ基板に伝わった熱を、ヒートシンクによって効率的に放熱することができ、光源を適切に冷却することができる。
【0012】
さらに、上記の紫外線治療装置において、前記光源は、LEDであってもよい。この場合、装置の小型化、軽量化が可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、使用者や患者に冷却風が当たらないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態の紫外線治療装置の一例を示す全体構成図である。
図2】光源部の外観の一例を示す図である。
図3】光源部の具体的構成例を示す断面図である。
図4】光源部の具体的構成例を示す断面図である。
図5】光源部の具体的構成例を示す斜視図である。
図6】光源部の具体的構成例を示す斜視図である。
図7】冷却風の流れを説明する図である。
図8】冷却風の流れを説明する図である。
図9】光源部にアタッチメントを装着した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態における紫外線治療装置10の一例を示す全体構成図である。
この紫外線治療装置10は、患部に、UVA1領域にスペクトルを有する治療光を照射するUVA1療法を行う、皮膚疾患用の治療装置である。
UVA1療法は、340nm~400nmの紫外線を利用する治療法で、UV-B領域の紫外線を利用する治療法に比べ、皮膚の深部まで届くことが特徴である。そのため、真皮に病因を有する疾患に有効であり、アトピーや痒疹、強皮症に対して効果が高いことが知られている。
本実施形態では、紫外線治療装置10が、強皮症を治療するための治療装置である場合について説明する。
【0016】
図1に示すように、紫外線治療装置10は、光源部20と、光源部20を制御する制御部30と、を備える。光源部20および制御部30は、支持体11によって支持されている。
支持体11は、床面上において車輪18を介して支持される架台12と、架台12の中央部において上方に伸びる支柱13と、支柱13の上端部において当該支柱13に対して光源部20を揺動自在に支持する作動アーム14と、を備える。支持体11において、光源部20は、作動アーム14の先端部に取り付けられている。光源部20は、水平方向に設けられた回転軸27eを中心にチルト回転が可能に構成されている。
【0017】
また、制御部30は、固定部材(図示省略)によって、例えば支柱13の中央部に取り付けられている。
制御部30は、例えば直方体状の筐体37と、筐体37の側面に設けられたグラフィック操作パネル39と、を備える。グラフィック操作パネル39は、紫外線治療装置10の操作者(例えば、医者)が操作することができる。
【0018】
図2は、光源部20の外観の一例を示す図である。
図2に示すように、光源部20は、筐体27と、筐体27の前端部に設けられた例えば矩形状の窓部材28と、を備え、窓部材28から治療光を放射する。この窓部材28は、患者の疾患部位に治療光を照射するための光照射窓である。
光源部20には、図1に示すように、当該光源部20を手動によって揺動させるための手動レバー19が設けられていてもよい。
【0019】
図3および図4は、光源部20の具体的構成を示す断面図である。ここで、図3は、光源部20を上面から見た断面図、図4は、光源部20を側面から見た断面図である。
この図3および図4に示すように、光源部20は、筐体27の内部に形成された収容部27aに配置された光源ユニット21を備える。光源ユニット21は、収容部27aにおいて、窓部材28に対向するように配置されている。また、窓部材28は、収容部27aの前端部の開口29を閉塞するように配置されている。
【0020】
光源ユニット21は、光源として複数のLED素子22aを備える。複数のLED素子22aは、例えば矩形平板状のLED基板22bに実装されている。例えば、複数のLED素子22aは、LED基板22b上に、所定の間隔で縦横に並んだ格子状に配置することができる。例えば、LED素子22aを64個用いる場合、LED素子22aは縦横8×8で格子状に配置することができる。なお、LED素子22aの個数や配置は上記に限定されない。
また、光源部20は、収容部27aの内面に、LED素子22aから放射される光を反射する反射板27bを備えていてもよい。反射板27bの一端はLED基板22bの外縁部に連結され、反射板27bの他端は窓部材28の外縁部に連結されており、反射板27bによってLED素子22aの放射光を窓部材28に導光する導光路が形成されている。なお、収容部27aの内面に鏡面加工等を施すことで、収容部27aの内面に反射特性を付与するようにしてもよい。
【0021】
複数のLED素子22aは、それぞれ365nmにピーク波長を有する紫外線を放射する。ピーク波長365nmの紫外線は、強皮症の治療光として最も有効な光である。なお、複数のLED素子22aが放射する紫外線は、波長350nm以下の光も含む。具体的には、複数のLED素子22aは、365nmにピーク波長を有し、波長340nm~400nmの範囲の紫外線(UVA1)を放射する。
LED素子22aとしては、例えばAlInGaN系半導体よりなる表面実装型LED素子を用いることができる。
【0022】
光源ユニット21には、当該光源ユニット21が備える複数のLED素子22aに電力を供給するためのケーブル(図示省略)が電気的に接続されている。このケーブルにより、光源部20(光源ユニット21)と図1に示す制御部30とが電気的に接続される。
制御部30は、筐体37の内部に、LED駆動用電源ユニットやPLC(programmable logic controller)などの制御ユニットが配設され、光源部20が備える複数のLED素子22aを駆動制御し、光源部20が放射する光の放射照度や放射時間などを制御することができる。
なお、制御部30は、複数のLED素子22aを個別に駆動制御可能であってもよい。この場合、制御部30は、患部の大きさおよび患部の形状に応じて、複数のLED素子22aの一部を選択的に点灯することができる。
【0023】
また、光源部20は、収容部27aにおいて、複数のLED素子22aと窓部材28との間に配置されたフィルタ23を備える。フィルタ23は、複数のLED素子22aの放射光のうち、波長350nm以下、好ましくは波長355nm以下の光を実質的にカットする(遮断する)。なお、複数のLED素子22aは、UVA1の波長範囲(340nm~400nm)の光を放射するため、フィルタ23は、波長340nm以上350nm以下、好ましくは波長340nm以上355nm以下の光を実質的にカットするものであってもよい。
フィルタ23は、例えば、色ガラスフィルタとすることができる。この場合、フィルタ23の材料としては、珪酸塩ガラス、リン酸塩ガラスなどを用いることができる。
【0024】
このように、光源部20は、365nmにピーク波長を有する光を放射する複数のLED素子22aを有し、フィルタ23は、複数のLED素子22aからの放射光を入射し、当該放射光のうち、波長350nm以下、好ましくは波長355nm以下の光を実質的にカットし、透過光を治療光として出射する。そして、フィルタ23の透過光である治療光は、窓部材28から放出される。
ここで、窓部材28としては、上記治療光に対する光透過性を有すると共に、高い機械的強度を有するものを用いることが好ましい。窓部材28の材質の具体例としては、例えば石英ガラスなどが挙げられる。窓部材28の材質を石英ガラスとすることで、高い機械的強度を備えることができ、衝撃による破損等を防ぐことができる。また、窓部材28に汚れが付着した際に、アルコール等で容易に清掃することが可能である。
【0025】
また、光源部20は、光源ユニット21の窓部材28とは反対側の収容部27a外方に、光源ユニット21を冷却するためのヒートシンク24を備える。
ヒートシンク24は、LED基板22bにおけるLED素子22aが実装された面とは反対側の面に取り付けられたベース部24aと、ベース部24aに取り付けられた多数のフィン24bとにより構成されている。フィン24bは、水平かつ平行に配置されている。ヒートシンク24(ベース部24a、フィン24b)は、熱伝導性の高いアルミや銅などにより構成することができる。
【0026】
また、図3に示すように、筐体27の後端部(窓部材28が設けられた面とは反対側の面)には、筐体27外の外気を筐体27内に吸気するための吸気口27cが形成されている。具体的には、吸気口27cは、ヒートシンク24の両側で且つヒートシンク24の後方の位置に形成されている。
また、図3および図4に示すように、ヒートシンク24の後方の筐体27の底面には、筐体27内の気体を筐体27外に排気するための排気口27dが形成されている。
【0027】
さらに、光源部20は、筐体27内におけるヒートシンク24の両側で且つ吸気口27cの前方に配置された吸気ファン25(図3参照)と、筐体27内における排気口27dの上方に配置された排気ファン26(図4参照)と、を備える。
吸気ファン25は、吸込み口を吸気口27cに対向させるとともに、吐出し口をヒートシンク24の側面に対向させて配置されている。
また、排気ファン26は、吸込み口を上方に向けるとともに、吐出し口を排気口27dに対向させて配置されている。
【0028】
図7の矢印で示すように、吸気ファン25は、吸気口27cから筐体27内に外気(冷却風)を取り込み、ヒートシンク24の側面に向けて冷却風を送風する。吸気ファン25は、例えばシロッコファンとすることができる。このように、ヒートシンク24には、図7の矢印で示すように左右両側から冷却風が導入される。このとき、ヒートシンク24のフィン24bは冷却風の送風方向に延伸しているため、ヒートシンク24に導入された冷却風は、ヒートシンク24のフィン24bと平行に流れる。
ヒートシンク24の左右両側から導入されてフィン24b間の流路を流れた冷却風は、例えばヒートシンク24の中央でぶつかり、図7および図8の矢印で示すようにヒートシンク24の後方に流れる。そして、図8の矢印で示すように、排気ファン26は、ヒートシンク24の後方に流れた冷却風を吸引し、排気口27dから筐体27外に排気する。排気ファン26は、例えば軸流ファンとすることができる。
【0029】
このように、吸気ファン25は筐体27の後方から冷却風を取り込み、排気ファン26は筐体27の下方に向けて冷却風を排気する。つまり、吸気ファン25により筐体27の内部に冷却風を取り込む吸気方向と、排気ファンにより筐体27の内部の冷却風を筐体27の外部に排気する排気方向とは異なる(交差する)。具体的には、吸気ファン25による吸気方向と排気ファン26による排気方向とは90°異なる。
ここで、吸気ファン25による吸気量と排気ファン26による排気量とは、略同じ風量である。
【0030】
なお、ヒートシンク24の両側にそれぞれ配置された2つの吸気ファン25のうち、一方(図6の手前)の吸気ファン25は、ヒートシンク24の上側側面に吐出し口を対向配置させ、ヒートシンク24の上側に冷却風を導入するようにしてもよい。また、他方(図6の奥)の吸気ファン25は、ヒートシンク24の下側側面に吐出し口を対向配置させ、ヒートシンク24の下側に冷却風を導入するようにしてもよい。
この場合、吸気ファン25から吐出された冷却風をヒートシンク24の狙った位置に導入するために、図6に示すようにガイド部材25aを設けてもよい。また、吸気ファン25によって送風され、ヒートシンク24のフィン24b間の流路を流れた冷却風を塞き止めるための風止板25bを設けてもよい。
【0031】
このように、複数の吸気ファン25を用いてヒートシンク24の異なる位置に冷却風を導入することで、各吸気ファン25の風量が弱くても、ヒートシンク24全体に冷却風を導入することが可能である。したがって、吸気ファン25の小型化やコスト削減が図れる。
また、複数の吸気ファン25をヒートシンク24の左右両側に配置し、ヒートシンク24の左右両側から冷却風を送風することで、左右どちらか一方のみが冷却されるといった冷却ムラを低減することができる。
【0032】
また、図9に示すように、窓部材28の前方(治療光の放射側)には、窓部材28に対して離間して、照射用のアタッチメント40を装着することができる。アタッチメント40は、例えば樹脂により構成することができる。また、アタッチメント40の厚みは、例えば3cmとすることができる。
アタッチメント40を装着することで、患者の治療部位が窓部材28に接触することを物理的に防止することができる。また、アタッチメント40を患者の治療部位に接触させることで、光源から治療部位までの距離を一定に保って紫外線照射を行うことができ、紫外線照度を一定にして、治療効果を一定に保つことができる。
アタッチメント40は、筐体27に対して着脱可能に構成されている。例えば、アタッチメント40は、筐体27に対してマグネット等により着脱することができる。なお、アタッチメント40の着脱方式は上記に限定されない。
【0033】
紫外線治療装置10を使用する際には、操作者が図1に示す手動レバー19を握り、光源部20を、窓部材28が患者の疾患部位と対向する位置に配置する。紫外線治療装置10は、放射照度の安定的な確保の観点から、疾患部位とアタッチメント40とが接触した状態で使用されることが好ましい。そして、操作者が、制御部30のグラフィック操作パネル39を操作することで、光源部20においては、制御部30から電力が供給されたLED素子22aが点灯され、患者の疾患部位に対して、治療光が照射(面照射)される。
【0034】
本実施形態における紫外線治療装置10においては、光源部20から放射される治療光が、365nmにピーク波長を有する光となる。そのため、当該治療光を患部に照射することにより、強皮症の皮膚硬化の原因となっているコラーゲンを分解、断片化する酵素であるコラーゲナーゼ(MMP1)を、有意差をもって発現させることができる。したがって、強皮症に対する優れた治療効果が得られる。
また、本実施形態における紫外線治療装置10においては、光源部20から放射される治療光が、波長350nm以下の光が実質的にカットされた光となる。波長340nm付近の光は、紫外線の照射直後に皮膚を黒化させる即時黒化作用を引き起こしやすい。また、波長328nm以下の光は、短波長になるほど紅斑作用を引き起こしやすい。波長350nm以下の光を治療光から実質的に取り除くことで、当該治療光を患部に照射した場合の紅斑作用や即時黒化作用を抑制することができる。
【0035】
また、本実施形態における紫外線治療装置10は、窓部材28における治療光の放射側に窓部材28に対して離間して配置された、治療光が通過する開口を有するアタッチメント40を備えることができる。
照射アタッチメントを用いない場合、治療中に窓部材28に人の皮脂が付き、油分が窓部材28に付着することにより紫外線の透過率が低下するという問題がある。また、窓部材28についた油分によって、その部分が高温となり窓部材28が劣化するという問題もある。
本実施形態のように照射アタッチメントを用いることで、患者の治療部位が窓部材28に接触することを物理的に防止することができる。また、照射アタッチメントに患者の治療部位を接触させることにより、光源から治療部位までの距離を一定に保って紫外線照射を行うことができる。
【0036】
さらに、本実施形態における紫外線治療装置10において、光源部20は、筐体27の内部に光源ユニット21を冷却するための冷却風を取り込む吸気ファン25と、光源ユニット21を冷却した冷却風を筐体27の後方底部に設けられた排気口27dから排気する排気ファン26と、を備える。
このように、光源ユニット21を冷却した冷却風は、筐体27におけるLED素子22aに対して窓部材28とは反対側の底部から排気されるので、医者等の使用者や患者に冷却風が当たらないようにすることができる。その結果、医師等による治療を阻害したり、治療中に患者が違和感を覚えたりすることを抑制することができる。
また、排気口27dは、LED素子22aを収容する収容部27aを取り囲む筐体部分よりも後方に突出した筐体部分の底部に設けられている。したがって、光源ユニット21を冷却して温まった冷却風を、収容部27aを取り囲む筐体部分に当てずに筐体27外に排気することができ、冷却効果の低下を抑制することができる。
【0037】
また、光源部20は、筐体27における窓部材28が設けられた前端部とは反対側に吸気口27cを備え、吸気ファン25は、吸気口27cから筐体27の内部に冷却風を取り込むことができる。つまり、光源ユニット21を冷却する冷却風は、筐体27の背面から筐体27内に引き込まれるので、窓部材28の前方の患者に冷却風が流れていることを感じさせないようにすることができる。
また、吸気ファン25により筐体27の内部に冷却風を取り込む吸気方向と、排気ファン26により筐体27の内部の冷却風を排気口27dから排気する排気方向とが交差している(90°異なる)ため、筐体27から排気される温風を吸気しない構造とすることができ、冷却効果の低下を抑制することができる。
【0038】
さらに、吸気ファン25は、窓部材28と平行な面において光源ユニット21の側方に配置することができる。具体的には、吸気ファン25は、光源ユニット21の左右両側、より具体的にはLED基板22bに取り付けられたヒートシンク24の左右両側に配置することができる。
これにより、ヒートシンク24の両側からヒートシンク24に冷却風を送風することができ、効率的に光源ユニット21の熱を放熱することができる。また、ヒートシンク24は、吸気ファンによる冷却風の送風方向である水平方向に延伸するフィン24bを備えるので、吸気ファン25により送風された冷却風をフィン24b間の流路に適切に流すことができ、冷却効果を向上させることができる。
【0039】
さらにヒートシンク24の両側から送風した冷却風が、ヒートシンク24の幅方向の中心で衝突して後方に流れるように構成すれば、筐体27の後方底部における幅方向中心位置に形成された排気口27dから冷却風を排出しやすくなる。
また、本実施形態の紫外線治療装置10において、光源部20は、筐体27の後方に設けられた回転軸27eを中心にチルト回転が可能に構成されている。そして、姿勢や動作の安定性の観点から、ヒートシンク24といった重量の大きい構成部材は、回転軸27eの近傍に配置される。つまり、光源ユニット21は、筐体27の後方に配置される。そのため、冷却風を筐体27の後方から吸い込んで筐体27の後方底部から排気する構成とすることで、筐体27内に吸い込んだフレッシュな冷却風をヒートシンク24に適切に送風することができるとともに、ヒートシンク24から熱を奪った温かい風を速やかに筐体27外に排気することができる。
【0040】
以上のように、本実施形態の紫外線治療装置10は、使用者や患者といった人がいない方向から筐体27の内部に冷却風を取り込み、人がいない方向から排気するので、人に冷却風が当たらない紫外線治療装置とすることができる。
【0041】
(変形例)
上記実施形態においては、光源ユニット21の左右両側に吸気ファン25を配置する場合について説明したが、吸気ファン25は光源ユニット21の側方に配置されていればよい。例えば、吸気ファン25は、光源ユニット21の片側のみに配置してもよい。ただし、吸気ファン25を光源ユニット21の片側のみに配置した場合、吸気ファン25の風量等によっては、吸気ファン25が配置された側のみが冷却されるといった冷却ムラが発生する場合がある。そのため、その場合には、吸気ファン25を光源ユニット21の両側に配置することが好ましい。
【0042】
また、上記実施形態においては、吸気ファン25による吸気方向と排気ファン26による排気方向とが直交する場合について説明したが、吸気方向と排気方向とは、交差していればよい。吸気方向と排気方向とが一致していなければ、筐体27の内部に取り込む冷却風に排気が混じらないようにすることができるため、交差角度は90°に限定されない。
また、上記実施形態においては、光源がLEDである場合について説明したが、光源は、例えばランプ等であってもよい。
さらに、上記実施形態においては、波長365nmにピークを有する光を治療光とする場合について説明したが、治療光の波長は疾患に応じて任意に設定することができる。
本発明の紫外線治療装置においては、上記の実施の形態に限定されず、種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0043】
10…紫外線治療装置、20…光源部、21…光源ユニット、22a…LED素子、22b…LED基板、23…フィルタ、24…ヒートシンク、25…吸気ファン、26…排気ファン、27…筐体、27a…収容部、27b…反射板、27c…吸気口、27d…排気口、28…窓部材、30…制御部、40…アタッチメント
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