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特開2022-115228親水性グルカンコロイド含有無水物及びその製造方法
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  • 特開-親水性グルカンコロイド含有無水物及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115228
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】親水性グルカンコロイド含有無水物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08B 37/00 20060101AFI20220802BHJP
   B01J 13/00 20060101ALN20220802BHJP
   A01N 25/14 20060101ALN20220802BHJP
【FI】
C08B37/00 P
C08B37/00 Q
B01J13/00 Z
A01N25/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021011742
(22)【出願日】2021-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】503030953
【氏名又は名称】アクト中食株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132964
【弁理士】
【氏名又は名称】信末 孝之
(74)【代理人】
【識別番号】100074055
【弁理士】
【氏名又は名称】三原 靖雄
(72)【発明者】
【氏名】前川 義雄
(72)【発明者】
【氏名】南島 栄治
(72)【発明者】
【氏名】山西 修
【テーマコード(参考)】
4C090
4G065
4H011
【Fターム(参考)】
4C090AA08
4C090BA05
4C090BA91
4C090BB02
4C090BB12
4C090BC04
4C090BC10
4C090BC17
4C090BC19
4C090DA03
4C090DA09
4C090DA11
4C090DA23
4C090DA31
4C090DA40
4G065AA01
4G065AB06Y
4G065BB06
4G065CA15
4G065DA02
4G065DA03
4G065EA05
4H011BC19
4H011DA15
4H011DH10
(57)【要約】
【課題】生物体の細胞壁に多く含まれるグルカンを細胞膜透過性物質に効率的に変換させるべく、親水性グルカンコロイド含有無水物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】米籾殻類、細菌菌体類、酵母菌体類、藻類の少なくとも1つからなるグルカンを原料とする親水性グルカンコロイド含有無水物である。また、グルカン原料を加水成形する成形工程と、成形したグルカン原料に直接、過熱蒸気を接触させ親水性コロイド化する親水性コロイド化工程と、親水性コロイド化したグルカン原料を乾燥させる無水化工程とを有する親水性グルカンコロイド含有無水物の製造方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
米籾殻類、細菌菌体類、酵母菌体類、藻類の少なくとも1つからなるグルカンを原料とする親水性グルカンコロイド含有無水物。
【請求項2】
米籾殻類、細菌菌体類、酵母菌体類、藻類の少なくとも1つからなるグルカン原料を加水成形する成形工程と、成形したグルカン原料に直接、過熱蒸気を接触させ親水性コロイド化する親水性コロイド化工程と、親水性コロイド化したグルカン原料を乾燥させる無水化工程とを有することを特徴とする親水性グルカンコロイド含有無水物の製造方法。
【請求項3】
前記成形工程において、予めグルカン原料に水分を飽和させた後、成形することを特徴とする請求項1に記載の親水性グルカンコロイド含有無水物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水性グルカンコロイド含有無水物及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
グルカンは、D-グルコースが直線的に結合した様式を有する物質の総称であり、細菌、真菌、酵母、穀物等の細胞壁に含まれ、広く自然界に存在している。そのうち穀物については、その有用性から全粒粉や玄米、胚芽米、胚芽として食物繊維を含む穀物あるいは栄養食品として認知・流通している。しかしながら、穀物の外皮である籾殻は残渣利用としての用途にとどまっている。
【0003】
また、細菌、真菌、酵母の細胞壁利用については、キノコ類、酵母、海藻、土壌細菌の抽出物には種々の結合様式の異なるβ-グルカンが確認されており、成人病の予防効果や免疫活性等の生理活性作用が報告されている。これらの用途開発は、精製・分離された特定成分を除くと、穀物類の籾殻と同様、利用が難しい固形残渣として飼料、肥料、土壌改良資材の原材料の一つとして使用されている。
【0004】
代表的なものがイネ籾殻であり、堆肥化して農地の土壌改良や暗渠材として使用されている。また、畜糞の主成分である腸内細菌は、堆肥化して発酵肥料として使用されている。これらは、固形残渣であるため農林水産分野における土壌への直接施用あるいは飼料、資材への混合使用が主流である。
【0005】
例外的に、酵素分解や水熱反応などの技術により、藻類や酵母あるいは酵母細胞壁を原料とする液状品が製造・販売されているが製造コストに依存して高価格である。業界における副産物処理あるいはリサイクルが目的と考えられるが、製造原価を下げることが不可欠である。また、穀物類のような、有用成分の解明と技術実践との連携を目指した系統的な展開ではなく応用利用できる技術とは言い難い。細菌、真菌、酵母の細胞壁の本格利用については、根本的な技術開発が必要である。
【0006】
一方、例えば特許文献1には、微生物又は微生物の成分を含む混合物を水熱反応処理して得られる還元性肥料に関する発明が記載されており、微生物又は微生物の成分として、酵母、酵母の抽出物、又は酵母の細胞壁が例示されている。また、特許文献2には、天然原料を水熱反応させて低分子化および無害化するとともに、処理後の天然素材が酸化するのを防止するようにした低分子化天然素材及びその製造方法に関する発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5555818号公報
【特許文献2】特開2007-98367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、細菌、真菌、酵母の細胞壁の本格利用について述べる。哺乳動物や植物は、真核細胞生物であり細胞膜により細胞は保護されている。この膜は、脂質の二重構造であることが知られている。この膜により、容易に細胞内に物質が侵入できなくなっており、水溶性の電荷を有する物質は制御され、親油性の物質でも、分子サイズ等により制限されている。
【0009】
ヒトや愛玩動物、家畜には種々の投与法が適用できることから、薬理活性物質等に膜透過性を付与することの重要性は認識されなかったが、前述のような投与ができない植物に対しては、重要な課題であり、農薬メーカーは、有効成分による効果の発現や持続性を高めるため膜透過性を制御しようとした。農薬は、茎葉部に散布するケースが多く、植物の膜特性に基づき、水になじむ粉末状製剤(水和剤)を開発した。
【0010】
水和剤は水に懸濁させて用いるが、水和剤を調製後長く静置すると沈殿するため使用前に調製する。農薬には、伸展性薬剤や浸透性薬剤があり、植物体表面での伸展性や細胞への浸透性が効果を左右する。また、農薬原体は不溶性が多いため、伸展性や浸透性を機能とする各種の展着剤が開発された。
【0011】
また、細菌、真菌、酵母由来の細胞壁は、生菌ではないため水溶液では固液分離し、懸濁状態を維持できない。細菌、真菌、酵母の細胞壁に含まれるβ-グルカンについては、種々の生理活性を有することが報告されている。真菌や酵母に属する病原菌の細胞壁構造とも同一でもあり、細胞膜透過により傷害応答反応や免疫反応を誘導することは容易に類推できる。
【0012】
グルカンで総称される物質は、生物体の細胞壁に多く分布しており、資源の有効利用の観点から、これまでも、水熱反応設備により、これらグルカンを試験的に低分子化する試みは行われてきた。しかしながら、水熱反応の基本は、固液分離であり可溶性液状有機質と不溶性無機固体に分解・分離されるものである。
【0013】
そこで、本発明者らは、真核細胞生物の細胞膜透過性に着目し、天然グルカンを固液分離しない親水性コロイドに変換し、そのまま無水物として農業分野での実用性素材及び他分野での新たな素材として提供することとした。
【0014】
すなわち、生物体の細胞壁に多く含まれるグルカンを細胞膜透過性物質に変換させることを試みた。本来、ミクロン単位以下の大きさであり、細胞壁の構成単位であるグルカンはさらに微小である。そのため、細胞壁を低分子化し、コロイド化することにより静置しても沈殿しにくい水和剤の形状に変化させることを試みた。疎水性コロイドは塩類濃度が高くなると沈殿することから、利用場面を広げるため疎水性の細胞壁グルカンを親水性コロイドに変換することにした。疎水性の細胞壁グルカンに、変換された親水性細胞壁グルカンコロイドを混在させることにより保護コロイドとする試みである。
【0015】
本発明は、生物体の細胞壁に多く含まれるグルカンを細胞膜透過性物質に効率的に変換させるべく、親水性グルカンコロイド含有無水物及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明の親水性グルカンコロイド含有無水物は、米籾殻類、細菌菌体類、酵母菌体類、藻類の少なくとも1つからなるグルカンを原料とする。
【0017】
また、本発明の親水性グルカンコロイド含有無水物の製造方法は、米籾殻類、細菌菌体類、酵母菌体類、藻類の少なくとも1つからなるグルカン原料を加水成形する成形工程と、成形したグルカン原料に直接、過熱蒸気を接触させ親水性コロイド化する親水性コロイド化工程と、親水性コロイド化したグルカン原料を乾燥させる無水化工程とを有することを特徴とする。
【0018】
また好ましくは、前記成形工程において、予めグルカン原料に水分を飽和させた後、成形することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の親水性グルカンコロイド含有無水物は、米籾殻類、細菌菌体類、酵母菌体類、藻類の少なくとも1つからなる。水和剤として使用すると加水により安定した親水性コロイドを形成するとともに、植物の細胞膜透過性に優れたものである。
【0020】
また、本発明の親水性グルカンコロイド含有無水物の製造方法は、米籾殻類、細菌菌体類、酵母菌体類、藻類の少なくとも1つからなるグルカン原料を成形する加水成形工程と、成形したグルカン原料に直接、過熱蒸気を接触させ親水性コロイド化する親水性コロイド化工程と、親水性コロイド化したグルカン原料を乾燥させる無水化工程とを有している。過熱蒸気による処理においては、加熱による物性変化機能が作用し、被処理物の中心温度が上昇し、表面温度と中心温度が同一となってから乾燥に移行することが知られている。親水性コロイド化には外皮あるいは細胞壁が強固であるため物理的破壊と破壊物の低分子化が必要となる。そのために加水成型を行う。従って、グルカン原料の親水性コロイド化及び無水化を、成形物の状態で行いながら品質の均一化を図ることができる。
【0021】
また、成形工程において、予めグルカン原料に水分を飽和させた後、成形する場合には、細胞間隙水、表面水に加え加工時に余剰水を捕捉することで過熱蒸気との熱交換が継続的に行われ連続的なキャビテーションを生じる。このキャビテーションにより、難分解性のグルカンを物理的に破砕し、破砕物の低分子化へと連動する。成形物に含まれる水分を乾燥工程まで利用しながら、低分子化効率を高めることができる。
【0022】
このように、本発明の親水性グルカンコロイド含有無水物及びその製造方法によれば、生物体の細胞壁に多く含まれるグルカンを細胞膜透過性物質に効率的に変換させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】親水性グルカンコロイド含有無水物の溶液調整後の分散状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の実施形態に係る親水性グルカンコロイド含有無水物及びその製造方法について説明する。本発明者らは、水溶液では固液分離を起こす、畜糞(腸内細菌及び嫌気発酵生産物)、乾燥酵母細胞壁、乾燥海藻残渣、乾燥キノコ菌床、イネ籾殻等のコロイド化を種々の方法で検討した。検討経緯は次の通りである。
【0025】
(1)低コストでの製造が基本であり、常圧で使用する市販の設備を使用した。技術的には、天然物原料であることから酸化を軽減するため湿式破砕機、加圧成形機及び過熱蒸気発生設備を組み合わせて使用した。
(2)使用した原料の処理物(固形物)を水和剤として使用すると、親水性コロイドを形成することを確認した。この水和剤を生育している植物体の本葉に高濃度で滴下し、浸透性及び薬害の有無を検討した。水和剤は膜透過を促進することが示唆され、高濃度でも薬害を生じなかった。
(3)水和剤のEC(電気伝導率)が上昇してもコロイド状態を維持し、安定した親水性コロイドを形成することを確認した。
(4)親水性コロイド形成と電位降下との関係は、電位降下により親水性コロイド形成が阻害されることも確認され正の相関関係は認められなかった。親水性コロイドは、低分子化した不溶性成分と水溶性成分による保護コロイドと推定している。電位降下は、グルカンの結合様式の相違による水溶性成分の構造に起因していると考えられる。
【実施例0026】
以下、実施例に基づいて本実施形態に係る親水性グルカンコロイド含有無水物及びその製造方法について詳細に説明する。
【0027】
実施例における、グルカン原料、目的、製造方法、成果物を表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
グルカン原料ごとの実施結果を表2~表5に示す
【0030】
(表2:米籾殻類)
米籾殻をピンミル160Z(パウレット製)で乾式破砕、この破砕物に50~70%の水分となるように加水し、不透水材料等で包んだ。20~25℃で24時間静置後、5mmφ、50mmφの球状に回転造粒した。造粒物の水分(重量法)を測定し、回分式過熱蒸気炉(野村技工製)を使用し、炉内温度等の処理条件を変えて熱処理を行った。熱処理により無水物を得た。この無水物を10w/w%となるように加水して、EC(導電率)、ORP(酸化還元電位:銀-塩化銀電極)を各々専用メーターで測定した。以下の実施例において同専用メーターを使用した。10%懸濁液及び希薄液でチンダル現象の有無を判定した。
比較例として、水熱反応設備に籾殻と同量の水を加え、撹拌条件下、190~200℃で20min(1.98MPa~2.02MPa)処理を行い、処理後、予熱及び通風で乾燥品を得た。
【0031】
【表2】
【0032】
(表3:細菌菌体類)
発酵豚糞(豚糞のみを原料とするN:P:K=5:7:3)を回転造粒機に水分が30~35w/w%となるように加水しながら投入し、3~5mmφの球状物に成型した。この成型物を前記実施例と同じ、回分式炉で処理条件を変えて熱処理を行い無水物とした。
比較例として、発酵豚糞及び同重量の水を水熱反応装置に投入し、撹拌条件下、200℃、20min(2.02~2.03MPa)処理を行った。処理後、通風乾燥し粉状処理品を得た。無処理は、球状成型物を通風乾燥した。
各々、含水率を測定し、10w/w%となるように加水して物性等を測定した。
【0033】
【表3】
【0034】
(表4:酵母菌体類)
酵母細胞壁粉末(窒素3%)を原料として使用した。この粉末を加水して含水率が40~50w/w%になるようにミキサーで均一混合後、ミンサーを使用して外系5mmのミンチ状に成型した。また、小型パンで回転造粒して60mmφの球状に成型した。この成型物を前記実施例と同じ、回分式炉で処理条件を変えて熱処理を行い無水物とした。この無水物を加水して10w/w%溶液とした。
比較例として、外熱式の水熱反応装置を使用して、20w/w%の酵母細胞壁溶液を投入し、撹拌条件下、200℃で20min(2.02MPa~2.03MPa)処理を行った。常圧に戻した後、加水・撹拌して10w/w%酵母細胞壁溶液とした。無処理として、酵母細胞壁粉末及び外系60mmの球状成型物に加水して10w/w%酵母細胞壁溶液とした。
これら10w/w%溶液の物性及び分散性について検討した。結果を下表に示した。液分散の相違を明らかにするため下表の実施例3-1、実施例3-2、比較例3-1、比較例3-2、比較例3-3の10%溶液調製後72hrの状態を図1に示す。
比較例の無処理(比較例3-3)で明らかなように、酵母細胞壁は大部分が不溶性である。また、亜臨界領域の水熱反応処理(比較例3-2、3-3)では、メイラード反応を伴う低分子化により、図中の矢印で示すように水溶液層とスラッジブランケット層に二分される。外熱式は、メイラード反応及び低分子化が内熱式よりも進行する。
酵母細胞壁を成形後に過熱蒸気処理で得た本実施形態の水和剤(実施例3-1、3-2)を所定の酵母細胞壁濃度になるように加水すると、安定した親水性コロイド溶液となる。過熱蒸気処理時の炉内温度が高くなると褐変反応を伴う。
【0035】
【表4】
【0036】
(表5:藻類)
寒天製造時の加工残渣を加熱し、含水率を50w/w%前後に調製した。ミンサーで押し出し外形5mmの棒状物に成型した。回分式の過熱蒸気処理装置を使用して炉内温度200℃で10min熱処理し、無水物を調製した。この無水物を加水して10w/w%の溶液とした。
比較例として、水熱反応装置(内熱式)に前記調製液を投入し、撹拌下、190℃~200℃で20min(1.98MPa~2.03MPa)処理を行った。無処理として、棒状成型物を使用した。
それぞれ、成分が10w/w%になるように加水して、物性等を測定した。
【0037】
【表5】
【0038】
本実施形態に係る親水性グルカンコロイド含有無水物は、米籾殻類、細菌菌体類、酵母菌体類、藻類の少なくとも1つからなる。水和剤として使用すると加水により安定した親水性コロイドを形成するとともに、植物の細胞膜透過性に優れたものである。
【0039】
また、本実施形態に係る親水性グルカンコロイド含有無水物の製造方法は、米籾殻類、細菌菌体類、酵母菌体類、藻類の少なくとも1つからなるグルカン原料を成形する加水成形工程と、成形したグルカン原料に直接、過熱蒸気を接触させ親水性コロイド化する親水性コロイド化工程と、親水性コロイド化したグルカン原料を乾燥させる無水化工程とを有している。過熱蒸気による処理においては、加熱による物性変化機能が作用し、被処理物の中心温度が上昇し、表面温度と中心温度が同一となってから乾燥に移行することが知られている。親水性コロイド化には外皮あるいは細胞壁が強固であるため物理的破壊と破壊物の低分子化が必要となる。そのために加水成型を行う。従って、グルカン原料の親水性コロイド化及び無水化を、成形物の状態で行いながら品質の均一化を図ることができる。
【0040】
また、成形工程において、予めグルカン原料に水分を飽和させた後、成形する場合には、細胞間隙水、表面水に加え加工時に余剰水を捕捉することで過熱蒸気との熱交換が継続的に行われ連続的なキャビテーションを生じる。このキャビテーションにより、難分解性のグルカンを物理的に破砕し、破砕物の低分子化へと連動する。成形物に含まれる水分を乾燥工程まで利用しながら、低分子化効率を高めることができる。
【0041】
このように、本実施形態に係る親水性グルカンコロイド含有無水物及びその製造方法によれば、生物体の細胞壁に多く含まれるグルカンを細胞膜透過性物質に効率的に変換させることができる。
【0042】
また、本実施形態に係る親水性グルカンコロイド含有無水物及びその製造方法は、電位降下と相関する親水性コロイド、電位降下とは相関のない親水性コロイドを粉末化し、水和剤として提供するものである。これらの水和剤は、周知の分野への利用が期待される。
【0043】
また、物流費を大幅に軽減し、国内では低コスト化及び輸出が可能となる。また、農産廃棄物として産生するイネ籾殻から親水性コロイドを取り出すことができ、農業分野への新素材として提供することできる。また、酵母、藻類、担子菌の細胞壁あるいは加工残渣を水和剤として提供することができ、親水性コロイドとして、農業分野以外の用途への適用も期待される。
【0044】
また、水和剤は、常圧下で既存の設備を組み合わせて製造するため低コストで製造可能である。また、水和剤は、使用時に加水するため物流費が大幅に低減、保存料などの添加を必要としないことが特徴である。
【0045】
以上、本発明の実施形態に係る親水性グルカンコロイド含有無水物及びその製造方法について説明したが、本発明は上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。
図1