(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115253
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】被検査ギア歯面の打痕の計測装置及び打痕の計測方法
(51)【国際特許分類】
G01M 13/028 20190101AFI20220802BHJP
G01H 17/00 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
G01M13/028
G01H17/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021011769
(22)【出願日】2021-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】503279231
【氏名又は名称】株式会社ティーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松原 伸行
(72)【発明者】
【氏名】佐奈 展行
(72)【発明者】
【氏名】松原 慎治
【テーマコード(参考)】
2G024
2G064
【Fターム(参考)】
2G024AB01
2G024BA15
2G024BA21
2G024BA22
2G024BA27
2G024CA13
2G024DA09
2G024FA01
2G064AA11
2G064AB22
2G064CC54
(57)【要約】
【課題】
計測装置における計測を効率よく実施できる被検査ギア歯面の打痕の計測装置を提供する。
【解決手段】
制御部20は、加工前被検査ギア設置ステーション12に設置された加工前被検査ギア12aと噛み合わせて回転させた際に発生するマスターギア11の噛合振動成分を振動検知センサ15によって検知して第1の信号として第1の記憶手段21に記憶させ、
第1の信号を分析して所定サイズ以上の打痕を除去するよう加工指示手段25から加工機50に加工を指示し、加工後被検査ギア設置ステーション13に設置された加工後被検査ギア13aを、マスターギアと再度噛み合わせて回転させ、その際に発生するマスターギアの振動を振動検知センサによって検知して第2の信号として第2の記憶手段22に記憶させ、第2の信号が所定の範囲内かどうかを判定手段26により判定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部を有する被検査ギア歯面の打痕の計測装置であって、
前記制御部は、
加工前被検査ギア設置ステーションに設置された加工前被検査ギアと噛み合わせて回転させた際に発生するマスターギアの噛合振動成分を振動検知センサによって検知して第1の信号として記憶する第1の記憶手段と、
その第1の信号を分析して所定サイズ以上の打痕を除去するよう加工機に加工を指示する加工指示手段と、を備え、
その加工指示手段からの指示に従って加工され加工後被検査ギア設置ステーションに設置された加工後被検査ギアを、
前記マスターギアと再度噛み合わせて回転させ、
その際に発生するマスターギアの噛合振動成分を振動検知センサによって検知して第2の信号として記憶する第2の記憶手段と、
前記第2の信号が所定の範囲内かどうかを判定する判定手段と、
を有することを特徴とする被検査ギア歯面の打痕の計測装置。
【請求項2】
前記マスターギアは、加工前被検査ギア設置ステーションと加工前被検査ギア設置ステーションとの間を往復移動するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の被検査ギア歯面の打痕の計測装置。
【請求項3】
前記振動検知センサは、マスターギアの回転軸に接触させて配置したことを特徴とする請求項1又は2に記載の被検査ギア歯面の打痕の計測装置。
【請求項4】
制御部を有する被検査ギア歯面の打痕の計測方法であって、
前記制御部は、
加工前被検査ギア設置ステーションに設置された加工前被検査ギアと噛み合わせて回転させた際に発生するマスターギアの噛合振動成分を振動検知センサによって検知して第1の信号として第1の記憶手段に記憶させ、
次いで、その第1の信号を分析して所定サイズ以上の打痕を除去するよう加工指示手段 から加工機に加工を指示し、
さらに、その加工指示手段からの指示に従って加工され加工後被検査ギア設置ステーションに設置された加工後被検査ギアを、 1
前記マスターギアと再度噛み合わせて回転させ、
その際に発生するマスターギアの噛合振動成分を振動検知センサによって検知して第2の信号として第2の記憶手段に記憶させ、
前記第2の信号が所定の範囲内かどうかを判定手段により判定することを特徴とする被検査ギア歯面の打痕の計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相互に噛み合う一対のギアの良否を検査する計測装置及び計測方法に関し、詳しくは、一対のギアの回転に伴い発生する振動を検知して良否を検査する計測装置及び計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ギア系は、広く利用される動力伝達要素の一つであり、例えば自動車では変速機や差動装置に組込まれている。
この種のギア糸の製作は1個々のギアを歯切、熱処理、研麿等の工程を介して製作した後、それらを組合せることで完了するが、ギアの製造工程中や工程間を搬送中にギアが他のギアや加工機器等と衝突し、そのギアに打痕(凹部とその周囲に凸部ができる)ができてしまうことがある。
打痕防上のために、衝突原因の究明と対策もなされてはいるが、偶発的な原因によって発生するものまで防止することは困難である。
この打痕が問題視されるのは、打痕付のギアをギア系に組込むと、騒音を発生する原因となるためである。例えば、ATミッションのオイルポンプの駆動ギアと従動ギアを噛み合わせて回転させた場合、駆動ギアまたは従動ギアの傷、打痕に起因する騒音が発生する。
このため、自動車のギア系では、最終組立の前に個々のギアすべてについて打痕の有無を検査している。
従来は、打痕の検査方法として、ギヤースピーダと呼ばれる装置において、被検査ギアとマスターギアを噛み合わせて所定の回転数で回転させ、そのときの発生音を、検査者が評価する検査法を採用していた(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の計測装置は、例えば
図5に示すように、加工後の被検査ギアを設置する計測ステーションが一カ所であり、加工後の被検査ギアの合否を判断するだけであったので、計測装置と加工機とが有効に紐付けされていないという問題点があった。
そこで本発明は、加工前の被検査ギアを設置するステーションと、加工後の被検査ギアを設置するステーションとを、別々に設け、計測装置における計測を効率よく実施できる被検査ギア歯面の打痕の計測装置及びそれに用いる計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下の特徴を有する。
(1)制御部20を有する被検査ギア歯面の打痕の計測装置であって、
前記制御部は、
加工前被検査ギア設置ステーションに設置された加工前被検査ギアと噛み合わせて回転させた際に発生するマスターギアの噛合振動成分を振動検知センサによって検知して第1の信号として記憶する第1の記憶手段と、
その第1の信号を分析して所定サイズ以上の打痕を除去するよう加工機に加工を指示する加工指示手段と、を備え、
その加工指示手段からの指示に従って加工され加工後被検査ギア設置ステーションに設置された加工後被検査ギアを、
前記マスターギアと再度噛み合わせて回転させ、
その際に発生するマスターギアの噛合振動成分を振動検知センサによって検知して第2の信号として記憶する第2の記憶手段と、
前記第2の信号が所定の範囲内かどうかを判定する判定手段を有することを特徴とする被検査ギア歯面の打痕の計測装置。
(2)前記マスターギアは、加工前被検査ギア設置ステーションと加工前被検査ギア設置ステーションとの間を往復移動するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の被検査ギア歯面の打痕の計測装置。
(3)前記振動検知センサは、マスターギアの回転軸に接触させて配置したことを特徴とする請求項1又は2に記載の被検査ギア歯面の打痕の計測装置。
(4)制御部を有する被検査ギア歯面の打痕の計測方法であって、
前記制御部は、
加工前被検査ギア設置ステーションに設置された加工前被検査ギアと噛み合わせて回転させた際に発生するマスターギアの噛合振動成分を振動検知センサによって検知して第1の信号として第1の記憶手段に記憶させ、
次いで、その第1の信号を分析して所定サイズ以上の打痕を除去するよう加工指示手段 から加工機に加工を指示し、
さらに、その加工指示手段からの指示に従って加工され加工後被検査ギア設置ステーションに設置された加工後被検査ギアを、
前記マスターギアと再度噛み合わせて回転させ、
その際に発生するマスターギアの噛合振動成分を振動検知センサによって検知して第2の信号として第2の記憶手段に記憶させ、
前記第2の信号が所定の範囲内かどうかを判定手段により判定することを特徴とする被検査ギア歯面の打痕の計測方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の被検査ギア歯面の打痕の計測装置は、制御部が、加工前被検査ギア設置ステーションに設置された加工前被検査ギアと噛み合わせて回転させた際に発生するマスターギアの噛合振動成分を振動検知センサによって検知して第1の信号として第1の記憶手段に記憶させ、
次いで、その第1の信号を分析して所定サイズ以上の打痕を除去するよう加工指示手段 から加工機に加工を指示し、
さらに、その加工指示手段からの指示に従って加工され加工後被検査ギア設置ステーションに設置された加工後被検査ギアを、前記マスターギアと再度噛み合わせて回転させ、その際に発生するマスターギアの噛合振動成分を振動検知センサによって検知して第2の信号として第2の記憶手段に記憶させ、前記第2の信号が所定の範囲内かどうかを判定手段により判定することを特徴とするので、
ギアを加工前計測及び加工後計測という2段階の計測測定を行い、前後の変化量を計測し素材に合わせた加工方法を加工機に指示することにより、加工前の計測によって、素材自体のばらつきをあらかじめ学習させておき、加工設定に反映させることで加工合格比率を高めることもできる。
また、加工前ギアと加工後ギアの計測値を紐付けすることにより、素材、完成品の比較、フィードバックなどができ、素材自体の不良検知(例えば、この素材では設計どうにギアが加工できないなど)して、素材の変更を指示することなどもできる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態の被検査ギア歯面の打痕の計測装置の概略側面図である。
【
図2】実施形態の被検査ギア歯面の打痕の計測装置の概略平面図である。
【
図3】実施形態のマスターギアの往復移動を説明する概略側面図である。
【
図4】実施形態の制御部を説明するブロック図である。
【
図5】従来の、被検査ギアを設置する計測ステーションが一カ所である計測装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
図1は本発明に係るギアの噛み合わせ検査に用いる計測装置の構成図であり、
図2は概略平面図であり、
図3はマスターギアの往復移動を説明する概略側面図である。
図示するように、ギアの噛み合わせ計測装置1は、防振構造を有するハウジング2と、ハウジング2の上方には、加工前被検査ギア12aを設置する加工前被検査ギア設置ステーション12と、ハウジング2の上方に配置されるマスターギア(駆動ギア)11と、加工後被検査ギア13aを設置する加工後被検査ギア設置ステーション13と、が備えられている。
【0009】
また、ハウジング2の下方のベース3には、マスターギア11を、加工前被検査ギア設置ステーション12と加工後被検査ギア設置ステーション13との間を、往復移動させるためのエアシリンダ4が設けられている。
このエアシリンダ4によって、基台5上に設けられたマスターギア11の回転軸11aを矢印Xのように往復移動させ、マスターギア11を、加工前被検査ギア12a及び加工後被検査ギア13aと噛み合わせることができるようになっている。
また、図示しないが、ベース3には、マスターギアを駆動させるモータと、モータの回転力をマスターギア11に伝達するプーリなどが備えられている。
【0010】
<マスターギア11>
そして、ハウジング2の内部には、加工前被検査ギア12aを設置する加工前被検査ギア設置ステーション12と、加工後被検査ギア13aを設置する加工後被検査ギア設置ステーション13と、が設けられており、
これら加工前被検査ギア設置ステーション12と加工後被検査ギア設置ステーション13との間を、マスターギア11が往復駆動されて、
加工前被検査ギア12a又は加工後被検査ギア13aの歯面と噛み合いするようになっている。
そして、加工前被検査ギア設置ステーション12に設置された加工前被検査ギア12aに噛み合って回転するマスターギア11は、回転する際に振動を発生する。
【0011】
<振動検知センサ15、制御部20>
また、
図4に示すように、ギアの噛み合わせ計測装置1は、マスターギア11と加工前被検査ギア12aとが回転することにより発生する振動を検知する振動検知センサ15と、振動検知センサ15が検知した電気的な振動信号Vを処理する制御部20を備えている。
振動検知センサ15としては、加工前被検査ギア12aと噛み合ったマスターギア11の回転軸11aの振動を検知する加工前被検査ギア振動検知センサ15aと、加工後被検査ギア13aと噛み合ったマスターギア11の回転軸11aの振動を検知する加工後被検査ギア振動検知センサ15bとが設けられている。
これらの加工前被検査ギア振動検知センサ15a及び加工後被検査ギア振動検知センサ15bは、マスターギア11の往復移動に伴って、振動接続端子16a又は振動接続端子16bと接続される。
また、加工前被検査ギア振動検知センサ15a及び加工後被検査ギア振動検知センサ15bは、スプリング17a及びスプリング17bによって、回転軸11aに常時付勢接触されており、マスターギア11の噛み合い時の振動を、回転軸11aを介して取得できるようになっている。
なお、
図3では、振動接続端子と振動検知センサとは離れているが、これらは振動計測時には接触状態になる。
そして、加工前被検査ギア12aが加工前被検査ギア設置ステーション12にセッティングされた後、マスターギア11が加工前被検査ギア12aに噛み合わせされて、モータが駆動され、モータの回転力はプーリを介してマスターギア11を所定の回転数で回転させることにより、マスターギア11に噛み合わされた加工前被検査ギア12aも所定の回転数で回転する。
【0012】
マスターギア11と加工前被検査ギア12aの噛み合い時の回転に伴って発生する振動は、例えば、マスターギア11の回転軸11aに接触した振動検知センサ15で検知するようになっている。
【0013】
制御部20には、例えば、加工前ギアに施した熱処理の履歴(硬度、素材など)を記録しておき(計測値を制御部20内に記憶するなど)、適切な加工方法を加工機に指示する、などが考えられる。これにより、加工による不良品を削減することができる。
また、制御部20は、加工前検査ギア12aにおいては、計測値を規格データベースと照らしあわせ、加工時における取代を設定する。
加工後検査ギア13aにおいては、計測値を規格データベースと照らしあわせ、加工時における削り残しや削りすぎをチェックする(判定手段26)。
【0014】
加工前及び加工後計測における計測項目としては、OBD(オーバーボール径)、RUNOUT(振れ)、NICK(打痕)などが挙げられる。これらの計測値を用いて、加工後被検査ギア13aが、規格データベースと照らしあわせ、予め設定した出荷基準を満たしてるか、などの判断が可能となる。
所定の規定をクリアした加工前被検査ギア12aには、所定の番号を付与する。
なお、計測は±3μm以内で実施することが望ましい。
また、これらの計測値をもとに、設定した素材ごとに、加工前後の比較、フィードバック、加工履歴などと紐付けして、素材不良の検知や、素材ごとに加工機に加工補正指令を掛けることもできる。
さらに、加工後被検査ギア13aを計測することによって、加工前被検査ギア12aの計測した加工指示手段25からの指示が適切なものであったかどうかを判断することもできる。
【0015】
<計測工程>
まず、加工前被検査ギア12aは、ハウジング2に回転自在に支承された加工前被検査ギア設置ステーション12に保持され固定される。
加工前被検査ギア12aはマスターギア11と噛み合わされ、その振動から、OBD(オーバーボール径)、RUNOUT(振れ)、NICK(打痕)、などの計測値が取得され、制御部20の第1の記憶手段21に記憶する。
なお、マスターギア11の下端は、ハウジング2の下部に固定されたモータの回転軸とギア変速機を介して結合されている。
【0016】
次に、加工前被検査ギア設置ステーション12にセッティングされた加工前被検査ギア12aが、測定装置における所定の規定をクリアした場合は、加工前被検査ギア12aを加工機50へ移動させる。
所定の規定をクリアしない場合は、不良品として排出し、加工機50へ移行させない。
所定の規定とは、例えば打痕の大きさなどである。
【0017】
以上のようにして、加工前被検査ギア設置ステーション12に加工前被検査ギア12aを設置した後、マスターギア11を移動(
図3で右方向)させ、加工前被検査ギア12aと噛み合わせる。
制御部20からの指令により、モータを作動させてマスターギア11を回転させると、
それと噛み合い状態の加工前被検査ギア12aも回転する。
噛み合い状態にあるマスターギア11の振動が、マスターギア11の回転軸11aと接触させた振動検知センサ15によって取得される。
制御部20の判定手段26において、この取得された信号を分析し、打痕、振れ量の大きさを判定し、加工指示手段25を介して加工機50へ加工指示をする。
【0018】
また、制御部20は、加工前被検査ギア設置ステーション12に設置された加工前被検査ギア12aと噛み合わせて回転させた際に発生するマスターギア11の噛合振動成分を振動検知センサ15aによって検知して、第1の記憶手段21に第1の信号として記憶する。
そして、制御部20の加工指示手段25は、その第1の信号を上記制御部20において分析して、所定サイズ以上の打痕を除去するよう加工機50に加工を指示する。
加工機50は、加工指示手段25からの指示に従って加工前被検査ギア12aを加工する。
【0019】
<加工後>
加工機において、指示された内容で、打痕などの加工を終えた加工後被検査ギア13aは、加工後被検査ギア設置ステーション13に設置される。
次に、マスターギア11を加工後被検査ギア13a方向に移動させて加工後被検査ギア13aと噛み合わせさせる。
そして、モータを駆動させてスターギア11を所定の回転数で回転させると、マスターギア11に噛み合わされた加工後被検査ギア13aも所定の回転数で回転する。
その際に発生するマスターギア11の噛合振動成分を振動検知センサ15bによって検知して、制御部20の中の第2の記憶手段22に、第2の信号として記憶する。
加工後被検査ギア13aの計測項目としては、OBD(オーバーボール径)、RUNOUT(振れ)、NICK(打痕)などが挙げられ、制御部20の第2の記憶手段22に記憶する。
そして、制御部20は、紐付けした加工前データと加工後データとを比較し、加工機50が取代の設定範囲内で行ったかどうかを判断し、取代の設定範囲からずれた場合は、そのずれた数値を記憶し、次のギアの加工に生かす。
なお、加工前被検査ギア12a、加工後被検査ギア13aの取り付け、取り外しは、ロボットによることが望ましい。
【0020】
<判定部>
さらに制御部20は、判定手段26において、第2の信号が所定の範囲内かどうかを判定する。
例えば、加工前に指示したとおりの加工がされていたかどうかを判定手段26によって判定する。
この判定は、制御部20に蓄積された過去の計測値と照らし合わせることによって実行される。
すなわち、加工前被検査ギア12aとして、打痕のないもの及び打痕付きのものを、マスターギア11と噛み合わせて回転させた際の振動を、予め振動検知センサ15によって取得した信号Vとして記憶しておく。
これらの信号V中には、ギアの噛み合い振動等の比較的低周波数の成分から、歯形誤差に伴う振動や比較的高周波数の打痕による振動等、種々の周波数成分が混合されている。
これらの信号Vをみただけでは打痕の有無を判定することは困難であるが、打痕による特徴的成分を次のようにして抽出することができる。
振動検知センサ15の出力は、例えば、増幅器に送られて適宜の倍率で増幅された後、フィルタ回路に送られ、予め、例えば実験によって求められた打痕に伴う特徴的な周波数成分に相当する成分(例えば、打痕に起因した振幅の大きな成分)が抽出される。
その成分の振幅レベルを、比較回路により所定のレベル値と比較し、レベル値を越えた回数を評価する。
そして、一般的には打痕の無い被検査ギアにおける振動信号を予め計測しておき、その最大振幅値に一定値を加えたレベル値を比較回路のレベル値とし、ギアの一定回転回数あるいは一定時間において、レベル値を越えた回数から打痕の有無を判定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、ギアを加工前計測及び加工後計測という2段階の計測測定を行い、前後の変化量を計測し素材に合わせた加工方法を加工機に指示することにより、加工前の計測によって、素材自体のばらつきをあらかじめ学習させておき、加工設定に反映させることで加工合格比率を高めることができるので、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0022】
1 ギアの噛み合わせ計測装置
2 ハウジング
3 ベース
4 エアシリンダ
5 基台
11 マスターギア
11a マスターギア11の回転軸
12 加工前被検査ギア設置ステーション
12a 加工前被検査ギア
13 加工後被検査ギア設置ステーション
13a 加工後被検査ギア
15、15a、15b 振動検知センサ
20 制御部
21 第1の記憶手段
22 第2の記憶手段
25 加工指示手段
26 判定手段
50 加工機
V 振動信号