(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115254
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】焼却装置
(51)【国際特許分類】
F23G 5/00 20060101AFI20220802BHJP
F23G 5/44 20060101ALI20220802BHJP
F23H 9/00 20210101ALI20220802BHJP
【FI】
F23G5/00 119F
F23G5/44 B ZAB
F23H9/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021011770
(22)【出願日】2021-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】500427017
【氏名又は名称】伊藤レーシングサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 猛志郎
【テーマコード(参考)】
3K062
3K065
【Fターム(参考)】
3K062AA19
3K062AB01
3K062AC01
3K062EA01
3K062EB12
3K062EB46
3K065AA19
3K065AB01
3K065AC01
3K065EA16
3K065EA22
3K065EA48
3K065EA52
(57)【要約】
【課題】小型で搬送可能な焼却装置であって、かつ対象物を連続投入可能な焼却装置を提供する。
【解決手段】本開示の一態様は、焼却装置であって、焼却炉と、排出機構と、運搬装置と、を備える。焼却炉は、底部に複数の孔を有する。排出機構は、複数の孔から灰を排出するように構成される。運搬装置は、投入口から当該焼却装置に投入された燃焼の対象物を焼却炉に運搬するように構成され、焼却炉による排気を表す焼却排気の漏れを抑制する抑制機能を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部に複数の孔を有する焼却炉と、
前記複数の孔から灰を排出するように構成された排出機構と、
投入口から当該焼却装置に投入された燃焼の対象物を前記焼却炉に運搬するように構成された運搬装置であって、前記焼却炉による排気を表す焼却排気の漏れを抑制する抑制機能を有する運搬装置と、
を備える焼却装置。
【請求項2】
請求項1に記載の焼却装置であって、
前記運搬装置は、
前記投入口から前記焼却炉までの経路に配置され、前記対象物と当接可能に構成された板状の回動部と、
前記回動部が一方向に回転するために必要な回転領域に沿った内面を有する外殻部と、
前記回動部を前記外殻部の内部で前記一方向に回転させるように構成されたアクチュエータと、
を備える焼却装置。
【請求項3】
請求項2に記載の焼却装置であって、
前記運搬装置は、
前記回動部をスライド可能に保持し、回転軸を中心に前記アクチュエータによって回動するように構成された保持部、をさらに備え、
前記保持部の前記回転軸は、水平方向における前記回転領域の中心よりも前記焼却炉側に配置される
焼却装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の焼却装置であって、
前記焼却炉は、前記排出機構の一部として、
前記底部に沿って回転するように構成された少なくとも1つの内部回転体、を備え、
前記複数の孔は、前記内部回転体が回転する際の移動方向に沿って徐々に鉛直方向の高さが低くなるように構成された傾斜面を有する
焼却装置。
【請求項5】
請求項4に記載の焼却装置であって、
前記複数の孔として、第1孔部及び第2孔部を備え、
前記傾斜面として、第1傾斜面及び第2傾斜面を備え、
前記底部は、
前記第1孔部を有する板状の第1底部と、
前記第1底部に対して鉛直方向下側に予め設定された距離だけ隔てて配置され、前記第2孔部を有する板状の第2底部と、
をさらに備え、
前記内部回転体として、
前記第1底部の上面に沿って回転するように構成された上部プロペラと、
前記第1底部の下側であって前記第2底部の上面に沿って前記上部プロペラと連動して回転するように構成された下部プロペラと、
を備え、
前記第1孔部は、前記第1傾斜面を備え、
前記第2孔部は、前記第2傾斜面を備え、
前記第1傾斜面は、前記内部回転体が順方向に回転する際の移動方向に沿って徐々に低くなるように構成され、
前記第2傾斜面は、前記内部回転体が前記順方向とは逆方向に回転する際の移動方向に沿って徐々に低くなるように構成される
焼却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、対象物を連続投入可能な焼却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、対象物を連続投入可能な焼却装置として、ストーカと呼ばれる火格子を階段状に配置し、ストーカ上の対象物を移動させながら対象物を燃焼させるストーカ炉が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、対象物を連続投入可能であって、かつ小型で搬送可能な焼却装置が要求されている。しかしながら、上記ストーカ炉は、設備が大型であるため、搬送することができない。
【0005】
本開示の1つの局面は、小型で搬送可能な焼却装置であって、かつ対象物を連続投入可能な焼却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、焼却装置であって、焼却炉と、排出機構と、運搬装置と、を備える。焼却炉は、底部に複数の孔を有する。排出機構は、複数の孔から灰を排出するように構成される。運搬装置は、投入口から当該焼却装置に投入された燃焼の対象物を焼却炉に運搬するように構成され、焼却炉による排気を表す焼却排気の漏れを抑制する抑制機能を有する。
【0007】
このような構成によれば、簡素な構成であるので、小型で搬送可能な焼却装置として構成することができる。また、焼却排気の漏れを抑制しつつ対象物を投入でき、かつ複数の孔から灰を排出できるので、対象物を連続投入可能な焼却装置として構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】焼却装置のカバー部等を除去した状態での正面斜視図である。
【
図3】焼却装置のカバー部等を除去した状態での背面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[1.本開示の構成と実施形態の構成との対応関係]
実施形態での一次燃焼部30は、本開示での焼却炉の一例に相当する。実施形態での第1孔部33A及び第2孔部38Aは、本開示での複数の孔の一例に相当し、実施形態での投入モータ11は、本開示でのアクチュエータの一例に相当する。実施形態での内部回転体36、第1孔部33A、及び第2孔部38Aは、本開示での排出機構の一例に相当する。
【0010】
[2.実施形態]
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。
[2-1.概要]
図1以下に示す本開示の一態様の焼却装置1は、空気が供給される焼却炉にて、対象物を燃焼させる機能を有する装置である。焼却装置1は、低熱分解焼却炉として機能する。つまり、本実施形態中での「燃焼」とは、必ずしも炎が生じる燃焼を意味するわけではなく、炎が生じることなく、対象物が熱分解し、ガス化するような現象を含む。焼却装置1は、小型軽量化の工夫がされており、焼却炉として機能する炉部31の有効容積は1000リットル程度に設定される。
【0011】
焼却装置1で燃焼させる対象物としては、例えば、一般ごみ、生ごみ、廃プラスチック等を採用できる。ただし、対象物は、当該焼却装置1で許容される大きさに収まることが必要である。
【0012】
焼却装置1では、運搬装置10から対象物が投入されると、対象物は、運搬装置10の内部を経て、一次燃焼部30に移動する。一次燃焼部30にて、対象物は、熱分解によって火の粉の層を形成し、焼却灰に遷移する。一次燃焼部30では、第1底部32及び第2底部37を備える二重底に構成された炉部31に、第1底部32の下方から空気が供給され、この空気は炉部31の上方にて排出される。炉部31の内部では、焼却灰の厚みを制御することによって焼却灰の間を通過する空気量が制御され、良好な燃焼が行われる。その後、この焼却灰は、排出部80に移動し、焼却装置1の外部に排出される。
【0013】
一次燃焼部30では、対象物から可燃性ガスを発生させ、この際、火炎がない状態が維持される。一次燃焼部30は、低温熱分解炉として機能する。つまり、炉部31では、火の粉により対象物の熱分解が促進され、対象物は焼却灰と可燃性ガスとに分解される。対象物がガス化した可燃性ガスは、二次燃焼部50にて燃焼される。二次燃焼部50による燃焼後のガスである二次排気は、冷却部60のうちの空冷部62にて冷却され、水冷部67の熱交換器でさらに冷却され、大気温近くまで温度が下げられる。
【0014】
なお、冷却部60にて生じる結露水は、浄化部70にて回収される。浄化部70では、結露水が中和及び浄化される。
[2-2.全体構成]
焼却装置1は、
図1~
図2に示すように、複数のカバー部5と、安全弁7と、運搬装置10と、配電盤21と、取出口22と、ブロア23と、操作レバー24(
図3参照)と、一次燃焼部30と、二次燃焼部50と、冷却部60と、浄化部70と、を備える。これらのうち、一次燃焼部30及び二次燃焼部50以外の構成は必須構成ではない。
【0015】
複数のカバー部5は、
図1に示すように、運搬装置10、一次燃焼部30、冷却部60、及び二次燃焼部50のうちの大部分の構成を内包した状態で、これらの外部、特に側面を覆うように配置される。
【0016】
安全弁7は、焼却装置1の上部に配置され、一次燃焼部30における炉部31に繋がる。安全弁7は、炉部31内部の圧力が所定の圧を超えた場合のみに開放され、炉部31の圧力を下げる。
【0017】
配電盤21は、ブロア23及び後述する各モータ11,36Cのスイッチ、温度等の表示器等を備え、接続された各機器に電力を供給する。ユーザは、配電盤21を操作することで、当該焼却装置1を駆動制御できる。
取出口22は、燃焼させることができなかった対象物をユーザが取り出すための開口部である。取出口22は、焼却装置1の運転停止時にのみ解放されうる。
【0018】
ブロア23は、
図2に示すように、水冷部67付近に配置され、炉部31の内部を負圧にするために排気を吸引する。ブロア23は、水冷部67にて冷却後の排気を吸い出して図示しない排気口から放出させる。なお、ブロア23が排気を吸い出すと、炉部31の内部の気圧が低下するため、後述する空気導入部40及び吸気口52A,52Bから、炉部31及び二次燃焼部50等に外気が導入される。ブロア23は、炉部31内に空気を導入し、炉部31の上部から、炉部31での排気を表す焼却排気(可燃性ガス)を二次燃焼部50に誘導する。
【0019】
操作レバー24は、例えば、排気の放出を止めるためのバルブの開度を調整する際に操作される。
[2-3.運搬装置10]
運搬装置10は、ユーザによって対象物が投入される部位であり、投入口12から当該焼却装置1に投入された燃焼の対象物を一次燃焼部30に運搬する機能を有する。また、運搬装置10は、焼却排気の漏れを抑制する抑制機能を備える。本実施形態では、回動部14が投入口12を閉塞する構成、及び蓋部13が投入口12を閉塞する構成によって抑制機能を実現する。
【0020】
運搬装置10は、
図4に示すように、回動部14と、外殻部15と、保持部16と、を備える。また、運搬装置10は、
図3に示す投入モータ11と、蓋部13と、を備える。
蓋部13は、投入口12を外部と隔てるための板状の部材である。蓋部13は、開閉可能に構成され、ユーザが対象物を投入する際に開放され、その他の場合には閉塞される。
回動部14は、投入口12から一次燃焼部30(接続口19)までの経路に配置され、対象物と当接可能に構成された板状の部材である。
【0021】
外殻部15は、運搬装置10の外殻を構成する部位であり、回動部14が一方向に回転するために必要な回転領域14Dに沿った内面を有する。つまり、外殻部15は、回動部14の回転の外周となる略楕円形の筒状の部材と、回動部14の側面の両側を塞ぐ板状の図示しない部材とを備える。
【0022】
これらの部材によって回転領域14Dは、投入口12及び接続口19以外の領域を除いて密閉される。なお、回転領域14Dは、投入口12及び接続口19と連通して構成される。接続口19は、運搬装置10と炉部31とを接続する短い通路である。
【0023】
保持部16は、回転軸16Cを中心に投入モータ11によって回動するように構成される。投入モータ11は、保持部16を回転させることによって、回動部14を外殻部15の内部で一方向に回転させるように構成される。ここでの一方向は、投入口12から回転領域14Dの下方を通過して接続口19に至る方向である。
【0024】
保持部16の回転軸16Cは、水平方向における回転領域14Dの中心O(
図5参照)よりも一次燃焼部30側(
図5では右側)、かつ鉛直方向における回転領域14Dの中心Oよりも上方側に配置される。
【0025】
保持部16は、
図5に示すように、回動部14が挿通される挿通部16Aを備えており、回動部14は挿通部16Aに挿通された状態で、挿通部16Aに対してスライド可能に保持される。つまり、回動部14は保持部16に対して固定されていない。
【0026】
なお、回動部14における略楕円形の内面は、回動部14が内面に沿って回転する際に、常時、回動部14の両端部が略楕円形の内面に接するように設計される。この構成によって、投入口12から回転領域14D内に投入された対象物は、回転する回動部14によって接続口19側に押し込まれる。この際、回動部14は炉部31側及び上方に偏心した回転軸16Cを中心に回転するので、対象物が接続口19付近で回動部14に乗り上げることが抑制され、対象物は接続口19にスムーズに搬送される。
【0027】
ここで、外殻部15には、
図4に示すように、下側孔部17C及び上側孔部17Dを備える。下側孔部17Cは、外殻部15の内面の最下部にて設けられた孔であり、対象物に含まれる水分を排出するために用いられる。下側孔部17Cは、下方にドレインパイプ17Bが接続されており、ドレインパイプ17Bは、後述する結露水管83に合流するように構成される。
【0028】
下側孔部17Cは、ドレインパイプ17Bから分岐する吸気パイプ17Aにも接続されており、回転領域14Dに空気を導入するためにも用いられる。吸気パイプ17Aは、投入口12の近傍に配置された吸気口52Aに接続される。
上側孔部17Dは、外殻部15の内面の最上部にて設けられた孔であり、回転領域14D内の空気を二次焼却部50に送るために用いられる。上側孔部17Dには、供給パイプ17Eが接続される。供給パイプ17Eは、
図3に示す他の吸気口52Bからの流路と合流するように構成され、この流路との合流後の流路は二次焼却部50に接続される。
【0029】
このような構成では、ブロア23が作動すると、炉部31だけでなく、供給パイプ17Eから回転領域14D内の空気が吸い出され、回転領域14Dが負圧になる。回転領域14Dが負圧になると、回転領域14Dには、吸気口52A及び吸気パイプ17Aから外気が導入されるため、回転領域14D内を外気によって乾燥しやすくすることができる。
【0030】
つまり、対象物に含まれる水分によって回転領域14D内に湿気が多い状態になったとしても、回転領域14D内にて通気を行うことができるので、湿気を良好に排出することができる。
また、回転領域14Dは、炉部31と連通しているため、燃焼排気の一部が回転領域14D内に流入する可能性があるが、回転領域14D内の燃焼排気は、上側孔部17Dから良好に排出されるので、運搬装置10の構成では、燃焼排気が外部に漏れにくくすることができる。
【0031】
[2-4.一次燃焼部30]
一次燃焼部30は、対象物を燃焼させる機能を備える。一次燃焼部30は、
図6に示すように、炉部31と、着火用パイプ39と、を備える。着火用パイプ39は、炉部31の下部の側面に配置されており、蓋部39Aが開放されている際に、炉部31と外気とを連通する。着火用パイプ39は、火種となる外部火炎を用いて対象物に着火する際に用いられる。なお、炉部31内の対象物への着火後は、着火用パイプ39は蓋部39Aによって密閉される。
【0032】
炉部31は、運搬装置10に接続された焼却炉である。炉部31は、外壁部31Aと、底部31Bとを備える。外壁部31Aは、炉部31における側壁及び天井を構成し、炉部31を覆うことで、焼却排気が外部に漏洩することを抑制する。
【0033】
底部31Bは、第1底部32と、拡幅部35と、内部回転体36と、第2底部37と、を備える。第1底部32及び第2底部37は、二重底を構成する。底部31Bには、対象物、及び燃焼後の対象物である焼却灰が堆積する。第2底部37は炉部31を最も下側から覆う部材であり、第1底部32は上げ底を構成する。
【0034】
第1底部32及び第2底部37は、平板にて円形に形成されている。第2底部37は、第1底部32に対して鉛直方向下側に予め設定された距離だけ隔てて配置される。外壁部31Aの内径は、第1底部32の外径よりも大きく構成されている。
【0035】
拡幅部35は、外壁部31Aの内周面と第1底部32の外周とを接続する傾斜面を有する板状の部材である。拡幅部35は、炉部31内の対象物及び焼却灰を、第1底部32の中央寄りに集める機能を備える。
【0036】
第1底部32は、第1孔部33Aを備え、第2底部37は、第2孔部38Aを備える。第1孔部33A及び第2孔部38Aは、複数の孔33A,38Aとも表記する。複数の孔33A,38Aからは、それぞれ下方に向けて焼却灰が排出される。
【0037】
内部回転体36は、
図7及び
図8に示すように、互いに連動するように構成された上部プロペラ36Aと、下部プロペラ36Bと、を備える。内部回転体36は、撹拌モータ36Cにて駆動される。上部プロペラ36Aは、第1底部32の上部にて第1底部32の上面に沿って回転するように構成される。下部プロペラ36Bは、第2底部37の上部にて第2底部37の上面に沿って回転するように構成される。
【0038】
複数の第1孔部33Aは、第1底部32の下面側に、それぞれ第1傾斜面34Bを有する第1規制部材34を備える。第1規制部材34は、本実施形態のように第1底部32と別体に構成されていてもよいし、或いは第1底部32と一体に構成されていてもよい。第1傾斜面34Bは、内部回転体36が順方向(本実施形態では鉛直方向上方から見たときに右回り)に回転する際の移動方向に沿って徐々に面の位置が低くなる(第2底部37に接近する)ように構成される。換言すれば、第1傾斜面34Bは、第1孔部33Aの下方の一部を覆うように配置される。
【0039】
第2孔部38Aの付近には、第2底部37の上面側に、第2傾斜面38Bを有する第2規制部材38を備える。第2傾斜面38Bは、内部回転体36が順方向とは反対方向である逆方向(左回り)に回転する際の移動方向に沿って徐々に面の位置が低くなるように構成される。
【0040】
なお、第1規制部材34が第1底部32の下面から下側に突出するのに対して、第2規制部材38は、第2底部37の上面から上側に突出して配置される。そして、第2傾斜面38Bは、第2孔部38Aの上方を覆うように配置される。
【0041】
このような構成では、内部回転体36が順方向に回転した場合、第1底部32上の焼却灰は、第1孔部33Aの第1傾斜面34Bに沿って第1孔部33Aから落下しやすくなる。一方で、内部回転体36が逆方向に回転した場合、第1底部32上の焼却灰は、第1傾斜面34Bにて堰き止められやすくなり、落下しにくくなる。この際、第1底部32上の焼却灰は撹拌され、燃焼が促進される。
【0042】
また、内部回転体36が順方向に回転した場合、第2底部37上の焼却灰は、第2規制部材38の第2傾斜面38Bの上面に乗り上げ、第2孔部38Aから落下しにくくなる。一方で、内部回転体36が逆方向に回転した場合、第2底部37上の焼却灰は、第2傾斜面38Bの下面によって第2孔部38Aに誘導され、第2孔部38Aから落下しやすくなる。
【0043】
このように本実施形態の構成では、内部回転体36の回転方向に応じて焼却灰を落下させ易くするか否かを変更することができる。
なお、底部31Bは、
図7~
図9に示すように、第2底部37の上面に、多数の小孔40Aを有する筒状の空気導入部40を備える。空気導入部40の内部は、炉部31の外部と図示しないエアポンプを介して連通しており、また、空気導入部40の内部と炉部31の内部とは、小孔40Aを介して連通している。つまり、炉部31には、エアポンプによって小孔40Aを介して低圧空気が導入される。
【0044】
詳細には、ブロア23が作動することで、炉部31内は負圧となり、エアポンプを利用した際に、空気導入部40から第1底部32及び第2底部37上部に空気が導かれやすくなる。この空気は、第1孔部33Aから炉部31内に供給され、第1底部32上での燃焼が促進される。また、内部回転体36の作動によって、第2底部37での焼却灰の厚みは概ね一定に維持することができる。このように一次燃焼部30では、焼却灰の厚みを良好に制御しつつ燃焼を維持できるので、炉部31での燃焼状態を適切に制御しやすくすることができる。
【0045】
[2-5.二次燃焼部50]
二次燃焼部50は、一次燃焼部30で生じる焼却排気、つまり可燃性ガス及び有害物質を、完全燃焼させることで処理するための構成である。二次燃焼部50は、図示しない第1導通管と、
図3に示す、吸気口52A,52Bと、を備える。
【0046】
二次燃焼部50は、主要部が炉部31上方の空間に配置される。二次燃焼部50の構成は、炉部31の上部にてL型になるように並べて配置されている。二次燃焼部50の配置は、焼却装置1の小型化及び省スペース化に寄与する。
【0047】
炉部31の内部と、二次燃焼部50の内部とは、第1導通管によって連通され、一次燃焼部30で生じる焼却排気は、第1導通管から二次燃焼部50の内部に導入される。吸気口52A,52Bは、開閉可能に構成されており、開状態のときに、二次燃焼部50の内部と外気とが連通した状態になる。閉状態のときには、外気が遮断される。吸気口52A,52Bには図示しないバルブが配置されており、吸気口52A,52Bの開度は、このバルブにて調整できる。
【0048】
バルブは、例えばユーザが操作レバー24を操作することで調整される。吸気口52A,52Bの開度は、二次燃焼部50での必要空気量と炉部31での必要空気量とのバランスに応じて設定される。
なお、二次燃焼部50の内部には、図示しないバーナが備えられる。バーナは、炉部31にて生じる可燃性ガスを完全燃焼させるために用いられる。
【0049】
[2-6.冷却部60]
冷却部60は、二次燃焼部50からの排気、すなわち二次排気を冷却する機能を有する。
冷却部60は、
図2及び
図3に示すように、第2導通管61と、空冷部62と、ラジエタ63と、ファン64と、水冷部67と、を備える。
【0050】
第2導通管61は、二次排気を空冷部62に誘導する管である。空冷部62は、二次排気を空気との熱交換によって冷却する機能を有する。空冷部62は、接続部62Aと、複数の空冷管62Bと、を備える。接続部62A及び空冷管62Bは、内部に二次排気が流通する金属製の管である。複数の空冷管62Bは、接続部62Aにて互いに連通される。二次燃焼部50による燃焼後の排気は、第2導通管61から接続部62A及び空冷管62Bに導入され、空冷管62B内の排気は、空冷管62Bの周囲を通過する空気によって冷却される。
【0051】
ラジエタ63は、空冷部62の下方であって、運搬装置10のさらに下方に位置する。ラジエタ63は、水冷部67を循環する冷却水を冷却する機能を有する。ラジエタ63は、熱交換パネルの長手方向が鉛直方向になるように配置され、水平方向に空気を通過可能に構成された、図示しない多数の熱交換フィンを備える。
【0052】
ファン64は、ラジエタ63の運搬装置10側に位置し、ラジエタ63側から運搬装置10の下部に向けて送風する。ファン64の作動によって、ラジエタ63を通過する空気がファン64にて吸い込まれ、ファン64による風は、炉部31の周囲を通過した後に、空冷部62を下方から上方に向けて通過し、焼却装置1の外部に排出される。
【0053】
つまり、焼却装置1では、ラジエタ63から空冷部62までの風の通路が形成されており、ファン64は、この通路におけるラジエタ63及び空冷部62ラジエタ63の間に配置される。このため、ファン64は、空冷部62及びラジエタ63の両方において熱交換の効率を向上させることに寄与する。
【0054】
水冷部67は、空冷部62による冷却後の排気が第3導通管67Aを介して導入され、この排気を冷却水との熱交換によって冷却する。水冷部67は、2つに分割された熱交換器が直列に接続されて構成される。水冷部67にて冷却後の二次排気は、ブロア23によって吸引され、ブロア23から下方に延びる配管67Bを通り、焼却装置1の下面に設けられた排気口から大気に放出される。
【0055】
[2-7.浄化部70]
浄化部70は、結露水を無害化する機能を有する。浄化部70は、
図2に示すように、貯留槽86と、ろ過部69Aと、浄化部69Bと、ポンプ71と、を備える。貯留槽86は、結露水を一時的に貯留する容器である。結露水は、冷却部60にて二次排気が冷却されることで生成される。結露水は、結露水管83を通過し、貯留槽86に送られる。
【0056】
なお、貯留槽86には、結露水と焼却灰の混合物である泥状物が貯留されてもよい。この場合、焼却灰は、ユーザによる手作業等によって貯留槽86に移動され、結露水と混合されるとよい。泥状物は、酸性の結露水とアルカリ性の焼却灰とが混合されて中和される。
【0057】
ポンプ71は、貯留槽86内の結露水をくみ出すように構成される。
貯留槽86には、ポンプ71が接続され、ポンプ71には、ろ過部69Aに繋がる管、及び貯留槽86内の結露水を循環させるための管が、三方バルブにより流路を選択可能に接続されている。ポンプ71からの流路が結露水を循環させるための管に接続されているときには、結露水が循環されることで結露水が撹拌される。また、ポンプ71からの流路がろ過部69Aに繋がる管に接続されているときには、結露水がろ過部69Aに供給される。なお、貯留槽86に泥状物が貯留されている場合、泥状物がろ過部69Aに供給される。
【0058】
ろ過部69Aは、フィルタとして機能する不織布の袋等を備えるろ過装置である。ろ過部69Aには、処理水管83から浄化部70に導入される水分が最初に導入される。
浄化部69Bは、牡蠣殻等の中和剤が投入された水槽を複数備えて構成される。浄化部69Bには、ろ過部69Aを通過した水分が導入される。浄化部69Bには、必要に応じて排水管が接続され、オーバーフローした浄化された水分が排水管に排出される。
【0059】
[2-8.排出部80]
排出部80は、焼却灰を外部に排出する機能を有する。排出部80は、
図6及び
図9に示すように、排出管81及び排出プロペラ82を備える。排出管81は、第2孔部38Aを介して炉部31内と連通しており、第2孔部38Aから落下する焼却灰を受け止める。排出プロペラ82は、排出管81の内部に備えられており、焼却灰を水平方向に移動させ、焼却装置1の側面から焼却灰を外部に排出する。
【0060】
[2-9.作動例]
焼却装置1の作動例を説明する。
まず、ユーザが運搬装置10の投入口12に対象物を投入する。この状態で、投入モータ11を作動させると、運搬装置10が対象物を炉部31内に移動させる。
【0061】
続いて、内部回転体36を作動させ、対象物の偏りを是正し、対象物の厚みを均一化する。続いて、ブロア23を作動させ、二次燃焼部50のバーナを点火し、二次燃焼部50内の温度をセ氏約830度にする。
【0062】
その後、一次燃焼部30の着火用パイプ39から外部バーナを挿入して対象物に着火し、着火が確認されると、蓋部39Aを閉じて炉部31を密閉する。続いて、二次燃焼部50内の温度がセ氏約830度になると、二次燃焼部50のバーナを停止させる。このとき、一次燃焼部30で生じる可燃性ガスに空気が混合されることで、二次燃焼部50では、可燃性ガスの自然発火によって自然燃焼が継続する。
【0063】
対象物の燃焼中には、ユーザは内部回転体36を順方向及び逆方向に間欠的に作動させることで、炉部31内の焼却灰の量を適宜制御する。
対象物の燃焼が終了すると、ユーザは、操作により各バルブを閉塞する。二次燃焼部50の温度がセ氏約100度以下になると、ブロア23を停止させ、運転を停止する。
【0064】
[2-9.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(2a)本開示の一態様は、焼却装置1であって、一次燃焼部30と、排出機構と、運搬装置10と、を備える。一次燃焼部30は、底部31Bに複数の孔33A,38Aを有する。
【0065】
排出機構は、複数の孔33A,38Aから灰を排出するように構成される。運搬装置10は、投入口12から当該焼却装置1に投入された燃焼の対象物を一次燃焼部30に運搬するように構成され、一次燃焼部30による排気を表す焼却排気の漏れを抑制する抑制機能を有する。
【0066】
このような構成によれば、簡素な構成であるので、小型で搬送可能な焼却装置1として構成することができる。また、焼却排気の漏れを抑制しつつ対象物を投入でき、かつ複数の孔33A,38Aから灰を排出できるので、対象物を連続投入可能な焼却装置1として構成することができる。
【0067】
(2b)本開示の一態様では、運搬装置10は、回動部14と、外殻部15と、投入モータ11と、を備える。回動部14は、投入口12から一次燃焼部30までの経路に配置され、対象物と当接可能に構成された板状の部材である。外殻部15は、回動部14が一方向に回転するために必要な回転領域に沿った内面を有する。投入モータ11は、回動部14を外殻部15の内部で一方向に回転させるように構成される。
このような構成によれば、外殻部15の内部を板状の回動部14が回転する構成によって焼却排気の漏れを抑制する機能を実現することができる。
【0068】
(2c)本開示の一態様では、運搬装置10は、回動部14をスライド可能に保持し、回転軸16Cを中心に投入モータ11によって回動するように構成された保持部16、をさらに備える。保持部16の回転軸16Cは、水平方向における回転領域の中心よりも一次燃焼部30側に配置される。
【0069】
このような構成によれば、回転領域内の中心でなく偏心して位置する回転軸16Cの周囲を回動部14が回転する構成を実現することができる。そして、保持部16の回転軸16Cが一次燃焼部30側に配置されるので、外殻部15内において、投入口12側に大きな空間を確保することができる。よって、対象物を投入しやすくすることができる。
【0070】
また、回動部14が対象物を一次燃焼部30に押し込む際に、回動部14の面がより立てられた状態(水平方向よりも鉛直方向に近い状態)にすることができる。よって、対象物が一次燃焼部30に押し込まれやすくすることができる。
【0071】
(2d)本開示の一態様では、一次燃焼部30は、排出機構の一部として、底部31Bに沿って回転するように構成された少なくとも1つの内部回転体36を備える。複数の孔33A,38Aは、内部回転体36が回転する際の移動方向に沿って徐々に鉛直方向の高さが低くなるように構成された傾斜面34B,38Bを有している。
【0072】
このような構成によれば、内部回転体36が順方向(傾斜面34B,38Bが内部回転体36の移動方向に沿って徐々に鉛直方向の高さが低くなる方向)に回転する際に、底部31Bから灰が落下しやすく構成できる。換言すれば、内部回転体36が逆方向(傾斜面34B,38Bが内部回転体36の移動方向に沿って徐々に鉛直方向の高さが高くなる方向)に回転する際に、底部31Bから灰が落下しにくくすることができる。
【0073】
(2e)本開示の一態様は、複数の孔33A,38Aとして、第1孔部33A及び第2孔部38Aを備える。底部31Bは、第1底部32と、第2底部37と、をさらに備える。第1底部32は、第1孔部33Aを有する板状の部材である。第2底部37は、第1底部32に対して鉛直方向下側に予め設定された距離だけ隔てて配置され、第2孔部38Aを有する板状の部材である。
【0074】
内部回転体36として、上部プロペラ36Aと、下部プロペラ36Bと、を備える。上部プロペラ36Aは、第1底部32の上面に沿って回転するように構成される。下部プロペラ36Bは、第1底部32の下側であって第2底部37の上面に沿って上部プロペラ36Aと連動して回転するように構成される。第1孔部33Aは、内部回転体36が順方向に回転する際の移動方向に沿って徐々に低くなるように構成された第1傾斜面34Bを有している。第2孔部38Aは、内部回転体36が順方向とは逆方向に回転する際の移動方向に沿って徐々に低くなるように構成された第2傾斜面38Bを有している。
【0075】
このような構成によれば、内部回転体36が順方向に回転する際に、第1孔部33Aから灰が落下しやすく、内部回転体36が逆方向に回転する際に、第2孔部38Aから底部31Bから灰が落下やすくすることができる。
【0076】
なお、本実施形態では、第1孔部33A及び第2孔部38Aの周囲に、第1傾斜面34B,38Bを備えるが、第1孔部33A及び第2孔部38A自体が傾斜面を有していてもよい。この場合、第1孔部33A及び第2孔部38Aは、鉛直方向に対して所定の角度を有する孔として形成されてもよい。
【0077】
(2f)本開示の一態様では、二次燃焼部50は、炉部31からの排気及び空気が導入されるバーナを有する。
このような構成によれば、炉部31において生じる可燃性ガスを、バーナで完全燃焼させることができる。また、バーナで二次燃焼部50を予熱しておけば、その後、炉部31において生じる可燃性ガスを、バーナを点火させることなく、自然発火により完全燃焼させることもできる。
【0078】
(2g)本開示の一態様は、冷却部60は、空冷部62と、水冷部67と、をさらに備える。空冷部62は、二次排気を空気との熱交換によって冷却する。水冷部67は、空冷部62による冷却後の排気を、冷却水との熱交換によって冷却する。
【0079】
このような構成によれば、空冷によって排気の体積を減少させてから水冷を行うので、高温の排気が直接水冷部67の熱交換器に導入されることによる不具合を抑制することができる。また、熱交換器による冷却の効率を向上させることができる。
【0080】
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は前述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0081】
(3a)上記実施形態では、回動部14が投入口12を閉塞する構成、及び蓋部13が投入口12を閉塞する構成の両方によって抑制機能を実現したが、これに限定されるものではない。例えば、本実施形態のようにブロア23が炉部31を減圧させる構成であれば、蓋部13が投入口12を閉塞する構成のみを備えていてもよい。炉部31を減圧されており、投入口12から焼却排気が漏れにくいからである。
【0082】
(3b)上記実施形態では、可燃性ガスを自然燃焼させたが、必要に応じて点火プラグ等によって点火してもよい。
【0083】
(3c)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0084】
(3d)前述した焼却装置1の他、当該焼却装置1を構成要素とするシステム、炭化方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0085】
1…焼却装置、10…運搬装置、11…投入モータ、12…投入口、13…蓋部、14…回動部、14D…回転領域、15…外殻部、16…保持部、16A…挿通部、16C…回転軸、19…接続口、23…ブロア、30…一次燃焼部、31…炉部、31A…外壁部、31B…底部、32…第1底部、33A…第1孔部、34…第1規制部材、34B…第1傾斜面、35…拡幅部、36…内部回転体、36A…上部プロペラ、36B…下部プロペラ、36C…撹拌モータ、37…第2底部、38…第2規制部材、38A…第2孔部、38B…第2傾斜面、39…着火用パイプ、40…空気導入部、40A…小孔、50…二次燃焼部、51…第1導通管、52…吸気口、60…冷却部、62…空冷部、62B…空冷管、70…浄化部、80…排出部。